特許第5834808号(P5834808)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5834808
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】クロメートフリー着色塗装金属板
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20151203BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20151203BHJP
   C23C 22/48 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   B32B15/08 G
   B05D7/14 J
   C23C22/48
【請求項の数】9
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2011-251829(P2011-251829)
(22)【出願日】2011年11月17日
(65)【公開番号】特開2012-121020(P2012-121020A)
(43)【公開日】2012年6月28日
【審査請求日】2014年2月12日
(31)【優先権主張番号】特願2010-257144(P2010-257144)
(32)【優先日】2010年11月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100113918
【弁理士】
【氏名又は名称】亀松 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(72)【発明者】
【氏名】森下 敦司
(72)【発明者】
【氏名】林 公隆
(72)【発明者】
【氏名】布田 雅裕
【審査官】 横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−254759(JP,A)
【文献】 特開2010−247396(JP,A)
【文献】 特開2008−291242(JP,A)
【文献】 特開2007−269010(JP,A)
【文献】 特開2009−160768(JP,A)
【文献】 特開2004−067790(JP,A)
【文献】 特開2001−106970(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/004951(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/137726(WO,A1)
【文献】 特開2009−11950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00−7/26
B32B 1/00−43/00
C23C 22/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の少なくとも片面に、平均粒子径が10〜100nmの有機樹脂粒子(A)、着色顔料(B)、および平均粒子径が5〜50nmの球状シリカ粒子(C)を含有する水性着色組成物(X)を塗布し、加熱乾燥することで形成された着色塗膜(α)を有するクロメートフリー着色塗装金属板であって、
前記着色塗膜(α)の膜厚が2〜10μmであり、
前記着色顔料(B)がカーボンブラック(B1)であり、
前記カーボンブラック(B1)の前記着色塗膜(α)中の含有量をY質量%、前記着色塗膜(α)の厚みをZμmとしたとき、Y×Z≧20、且つ、Y≦15を満足し、
前記カーボンブラック(B1)が前記着色塗膜(α)中に平均粒子径80〜350nmの粒子で分散されている、
ことを特徴とする、クロメートフリー着色塗装金属板。
【請求項2】
前記有機樹脂粒子(A)が、樹脂構造中にスルホン酸基を含むポリエステル樹脂粒子(Ae)を含有することを特徴とする、請求項1に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂粒子(Ae)のガラス転移温度が5〜25℃であることを特徴とする、請求項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂粒子(Ae)が樹脂構造中にビスフェノール構造を更に含有することを特徴とする、請求項またはに記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
【請求項5】
前記有機樹脂粒子(A)が、樹脂構造中にウレア基を含むポリウレタン樹脂粒子(Au)を更に含有することを特徴とする、請求項のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
【請求項6】
前記水性着色組成物(X)がエチレン系不飽和二重結合を有する単量体由来の水溶性樹脂(D)を更に含有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
【請求項7】
前記水性着色組成物(X)が硬化剤(E)を更に含有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
【請求項8】
前記水性着色組成物(X)が潤滑剤(F)を更に含有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
【請求項9】
前記着色塗膜(α)の下層に下地処理層(β)を有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境負荷性の高い6価クロムを含まない着色塗膜が金属板の少なくとも片面に形成された、意匠性(加工部を含む着色性、隠蔽性)、耐湿性、耐食性、加工性、耐傷付き性、耐薬品性等に極めて優れる安価なクロメートフリー着色塗装金属板に関する。
【背景技術】
【0002】
家電用、建材用、自動車用などに、従来の成形加工後に塗装されていたポスト塗装製品に代わって、着色した有機皮膜を被覆したプレコート鋼板が使用されるようになってきた。このプレコート鋼板は、防錆処理を施した鋼板やめっき鋼板に着色した有機皮膜を被覆したもので、美麗を有しながら、加工性を有し、耐食性が良好であるという特性を有している。
【0003】
例えば、特許文献1には皮膜の構造を規定することによって加工性と耐汚染性、硬度に優れたプレコート鋼板を得る技術が開示されている。一方、特許文献2には、特定のクロメート処理液を用いることで端面耐食性を改善したプレコート鋼板が開示されている。これらのプレコート鋼板は、めっき皮膜、クロメート処理皮膜、クロム系防錆顔料を添加したプライマー(下塗り)皮膜の複合効果によって、耐食性とともに、加工性、塗料密着性を有し、加工後塗装を省略して、生産性や品質改良を目的とするものである。
【0004】
しかしながら、クロメート処理皮膜及びクロム系防錆顔料を含む有機皮膜から溶出する可能性のある6価クロムの環境への負荷を考慮し、最近ではノンクロム防錆処理、ノンクロム有機皮膜に対する要望が高まっている。これに対し、例えば、特許文献3や特許文献4に、耐食性に優れるノンクロム系プレコート鋼板が開示されており、すでに実用化されている。
【0005】
これらのプレコート鋼板に用いられる塗装は、塗装膜厚が10μm以上の厚いものである。その上、大量の溶剤系塗料を使用するため、インシネレーターや臭気対策設備等の専用の塗装設備が必要であり、塗装専用ラインで製造されることが一般的である。すなわち、塗装の原板となる鋼板の製造工程の他に余分な塗装工程を通るため、塗装に要する材料費の他にも多くの費用がかかる。したがって、得られるプレコート鋼板は高価なものになる。
【0006】
しかしながら、ユーザーニーズの多様化により、家電や内装建材等の日常使用条件での耐久性を有すれば十分に目的を達する分野での着色鋼板の需要もあり、より低価格の製品が求められている。すなわち、従来の高価なプレコート鋼板だけでは多様化した需要に応えるのに十分ではない。
【0007】
このようなニーズに対して、安価に製造ができる着色鋼板として、例えば、特許文献5に厚さ5μm以下の着色樹脂層を設けた着色鋼板が、特許文献6には特定の粗度を有する鋼板表面に発色皮膜を有する着色鋼板が開示されている。しかしながら、これらの着色鋼板はクロメート処理皮膜を設けることで耐食性を担保する設計となっているため、昨今のノンクロム化ニーズに応えることができない。加えて、加工し、着色層が伸ばされた部位の隠蔽性まで考慮した設計にはなっていないため、加工部の外観が著しく低下するという課題も有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−168723号公報
【特許文献2】特開平3−100180号公報
【特許文献3】特開2000−199075号公報
【特許文献4】特開2000−262967号公報
【特許文献5】特開平5−16292号公報
【特許文献6】特開平2−93093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、環境負荷性の高い6価クロムを含まず、優れた意匠性(加工部を含む着色性、隠蔽性)その他の特性を備えた安価なクロメートフリー着色塗装金属板が求められている。この要望に応えるのには、インシネレーターや臭気対策設備等の専用の塗装設備が必要な溶剤系塗料に替えて、水性塗料を用いるのが有効である。ところが、水性塗料により、10μm以下の薄い膜厚で意匠性、特に加工部を含む着色性、隠蔽性、に優れた着色樹脂層を形成する技術は、これまで知られていなかった。
【0010】
本発明は、この現状に鑑み、環境負荷性の高い6価クロムを含まず、意匠性(加工部を含む着色性、隠蔽性)に優れるとともに、耐湿性、耐食性、加工性、耐傷付き性、耐薬品性等にも優れた安価なクロメートフリー着色塗装金属板を提供することを目的とするものである。本発明のもう一つの目的は、そのようなクロメートフリー着色塗装金属板の提供を可能にする新しい水性着色組成物の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
安価な着色塗装金属板を製造するためには、その着色塗膜を形成するための着色組成物が水性着色組成物であること、従来のプレコート鋼板における塗膜よりも薄膜で意匠性(加工部を含む着色性、隠蔽性)を始めとする諸性能を担保すること、が重要である。前者により専用の塗装設備での製造が不要になるため、余分な塗装工程費を削減することが可能になる。後者により塗装に要する材料費を削減することが可能になる。加えて、薄膜であれば、水性着色組成物を塗布し乾燥するためのエネルギーコストを低減できると共に、厚膜で塗装した際に生じやすいワキと呼ばれる塗膜欠陥の発生を抑制することができ、高生産性の製造を確保することもできる。ここで、水性着色組成物とは、溶媒が水である組成物、または溶媒の主成分が水である組成物を意味する。溶媒の主成分が水である組成物の場合、溶媒中に占める水の量は50質量%以上であることが好ましい。水以外の溶媒は有機溶媒でもよいが、労働安全衛生法の有機溶剤中毒予防規則で定義される有機溶剤含有物(労働安全衛生法施行令の別表第六の二に掲げられた有機溶剤を重量の5%を超えて含有するもの)には該当しないものであることが好ましい。
【0012】
水性着色組成物を使用して薄膜で意匠性を担保するには、着色顔料を含有する着色組成物によって隠蔽性の高い着色塗膜を形成させることが必要である。水性着色組成物には一般に、塗膜バインダー(成膜)成分である有機樹脂を含んでいる。該有機樹脂は、耐水性や耐食性等の観点から、本来水に不溶でありながらエマルションやディスパージョンのように水中に有機樹脂粒子の形で微分散された状態になりうる水分散性樹脂を使用することが好適である。水性着色組成物による塗膜の形成は、被塗物上に塗布した組成物から加熱により水分を除去し、塗膜バインダー(成膜)成分の有機樹脂粒子を被塗物上に配列し融着させることによりなされる。その際、融着樹脂粒子間に着色顔料が分散して取り込まれることにより、塗膜の意匠性が得られる。従って、塗膜の意匠性、特に隠蔽性は、融着樹脂粒子間に位置する着色顔料の分散の均一性に左右される。
【0013】
本発明者らは、水性着色組成物により形成した、厚さが例えば10μm以下の薄い塗膜でも、融着樹脂粒子間に着色顔料が均一に分散して優れた意匠性、特に隠蔽性、を示すクロメートフリー着色塗装金属板を目標に、鋭意検討を重ねてきた。その結果として、平均粒子径が10〜100nmの有機樹脂粒子を含有する水性着色組成物を塗料として用いることにより、その目標の達成に有効であることを見いだした。更に、この平均粒子径が10〜100nmの有機樹脂粒子を含有する水性着色組成物に、塗装金属板に必要とされる意匠性を損なうことなく、意匠性以外の特性、特に耐食性、耐傷付き性を満足するために、特定のシリカ粒子を加えることによって、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の主旨とするところは、次のとおりである。
(1)金属板の少なくとも片面に、平均粒子径が10〜100nmの有機樹脂粒子(A
)、着色顔料(B)、および平均粒子径が5〜50nmの球状シリカ粒子(C)を含有す
る水性着色組成物(X)を塗布し、加熱乾燥することで形成された着色塗膜(α)を有す
るクロメートフリー着色塗装金属板であって、前記着色塗膜(α)の膜厚が2〜10μm
であり、前記着色顔料(B)がカーボンブラック(B1)であり、前記カーボンブラック(B1)の前記着色塗膜(α)中の含有量をY質量%、前記着色塗膜(α)の厚みをZμmとしたとき、Y×Z≧20、且つ、Y≦15を満足し、前記カーボンブラック(B1)が前記着色塗膜(α)中に平均粒子径80〜350nmの粒子で分散されている、ことを特徴とする、クロメートフリー着色塗装金属板。
)前記有機樹脂粒子(A)が樹脂構造中にスルホン酸基を含むポリエステル樹脂粒子(Ae)を含有することを特徴とする、上記(1)に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
)前記ポリエステル樹脂粒子(Ae)のガラス転移温度が5〜25℃であること
特徴とする、上記()に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
)前記ポリエステル樹脂粒子(Ae)が樹脂構造中にビスフェノール構造を更に含有することを特徴とする、上記()または()に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
)前記有機樹脂粒子(A)が、樹脂構造中にウレア基を含むポリウレタン樹脂粒子(Au)を更に含有することを特徴とする、上記()〜()のいずれか1つに記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
)前記水性着色組成物(X)がエチレン系不飽和二重結合を有する単量体由来の水溶性樹脂(D)を更に含有することを特徴とする、上記(1)〜()のいずれか1つに記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
)前記水性着色組成物(X)が硬化剤(E)を更に含有することを特徴とする、上記(1)〜()のいずれか1つに記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
)前記水性着色組成物(X)が潤滑剤(F)を更に含有することを特徴とする、上記(1)〜()のいずれか1つに記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
(9)前記着色塗膜(α)の下層に下地処理層(β)を有することを特徴とする、上記(1)〜()のいずれか1つに記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、金属板に塗布した水性着色組成物(X)中の有機樹脂粒子(A)が組成物の加熱乾燥過程で融着し、塗膜バインダー成分となる。有機樹脂粒子(A)が融着して形成された着色塗膜(α)において、着色組成物(X)中の着色顔料(B)は樹脂粒子の粒界に存在する。そのため、樹脂粒子(A)の粒子径を小さく制御することで、塗膜(α)中に着色顔料(B)をより均一に分散した形で存在させることができる。すなわち、着色顔料(B)の分散性が高まることで、薄膜でも隠蔽性の高い高意匠塗膜が設計できる。加えて、樹脂粒子の粒子径を10〜100nmと小さく制御することで、塗膜の造膜性(耐食性、加工性、耐傷付き性等の性能に寄与する)も改善できる。
【0016】
このように、本発明のクロメートフリー着色塗装金属板は、環境負荷性の高い6価クロムを含まず、安価で、意匠性(加工部を含む着色性、隠蔽性)、耐湿性、耐食性、加工性、耐傷付き性、耐薬品性等に極めて優れている。このため、安価な高意匠、高付加価値環境対応型素材として非常に有望であり、各産業分野への寄与は非常に大きい。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0018】
本発明のクロメートフリー着色塗装金属板は、金属板の少なくとも片面に、平均粒子径が10〜100nmの有機樹脂粒子(A)、着色顔料(B)、および平均粒子径が5〜50nmの球状シリカ粒子(C)を含有する水性着色組成物(X)を塗布し、加熱乾燥することで形成された、膜厚2〜10μmの着色塗膜(α)を有する。
【0019】
有機樹脂粒子(A)は、着色組成物の加熱乾燥過程において着色顔料(B)をそれらの粒界に存在させた状態で融着して塗膜バインダー成分となり、それにより着色塗膜を形成する。形成した塗膜の隠蔽性を高めるためには、塗膜中に着色顔料をより高い頻度で、且つより均一に分散して存在させることが重要である。そのために、本発明では、粒子径を小さく制御した有機樹脂粒子を使用し、具体的には平均粒子径が10〜100nmの有機樹脂粒子を使用する。有機樹脂粒子の平均粒子径が10nmに満たない場合には、有機樹脂粒子の水性着色組成物(X)中での安定性が著しく低下し、水性着色組成物(X)の増粘やゲル化を引き起こしたり、水性着色組成物(X)中で凝集物や沈殿物を生成したりする。100nmを超える場合には、意匠性(加工部を含む着色性、隠蔽性)、耐食性、加工性、耐薬品性等の諸性能が低下する。有機樹脂粒子のより好ましい平均粒子径は15〜80nmであり、更に好ましくは20〜60nmである。
【0020】
有機樹脂粒子の平均粒子径は、ナノレベルの粒子径や粒子径分布の測定に広く用いられている動的光散乱法により測定することができる。動的光散乱法では、分散媒中に分散しブラウン運動している微粒子にレーザー光を照射して粒子からの散乱光を観測し、光子相関法により自己相関関数を求め、キュムラント法を用いて粒子径を測定する。動的散乱法によれば、温度と粘度と屈折率が既知の分散媒中の微粒子の径を簡単に求めることができる。動的光散乱法による粒径測定装置として、例えば、大塚電子社製のFPAR−1000を使用することができる。本発明では、測定対象の樹脂粒子を含有する分散体サンプルを25℃で測定してキュムラント平均粒子径を求め、合計5回の測定の平均値を、樹脂粒子の平均粒子径とする。動的光散乱法による平均粒子径の測定については、例えば、ジャーナル・オブ・ケミカル・フィジックス(Journal of Chemical Physics)第57巻11号(1972年12月)第4814頁、に記載されている。
【0021】
前記着色塗膜(α)の塗膜厚みは2〜10μmである。塗膜厚みが2μm未満であると、充分な意匠性(着色性、隠蔽性)や耐食性が得られない。他方、塗膜厚みが10μm超であると、経済的に不利であるばかりか、ワキ等の塗膜欠陥が発生することがあり、工業製品として必要な外観を安定して得る事の困難性が増大する傾向がある。より好ましい膜厚は3〜7μmである。
【0022】
前記着色塗膜(α)の塗膜厚みは、塗膜の断面観察や電磁膜厚計等の利用により測定できる。その他に、単位面積当りに付着した塗膜の質量を、塗膜の比重又は組成物の乾燥後比重で除算して算出してもよい。塗膜の付着質量の測定は、塗装前後の質量差、塗装後の塗膜を剥離した前後の質量差、または、塗膜を蛍光X線分析して予め皮膜中の含有量が分かっている元素の存在量を測定する等、既存の手法から適切に選択すればよい。塗膜の比重又は組成物の乾燥後比重の測定は、単離した塗膜の容積と質量を測定する、適量の組成物を容器に取り乾燥させた後の容積と質量を測定する、または、塗膜構成成分の配合量と各成分の既知の比重から計算する等、既存の手法から適切に選択すればよい。上記した各種測定方法の中でも、比重等が異なる塗膜でも簡便に精度よく測定できることから、塗膜の断面観察の利用が好適である。
【0023】
着色塗膜(α)の断面観察の方法としては特に制限はないが、常温乾燥型エポキシ樹脂中に塗装金属板を塗膜厚み方向と垂直に埋め込み、その埋め込み面を機械研磨した後に、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察する方法やFIB(集束イオンビーム)装置を用いて、塗装金属板から塗膜の垂直断面が見えるように厚さ50〜100nmの観察用試料を切り出し、塗膜断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察する方法等が好適に使用可能である。
【0024】
有機樹脂粒子(A)は、着色金属板の着色塗膜を形成する加熱乾燥過程で融着して塗膜を形成できることが必要である。このような樹脂の例として、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、又はそれらの変性体などを挙げることができる。ここで変性体とは、これらの樹脂の構造中に含まれる反応性官能基に、その官能基と反応し得る官能基を構造中に含む「他の化合物」(モノマーや架橋剤など)を反応させた樹脂のことを指す。これらは1種または2種以上混合して用いてもよいし、少なくとも1種の有機樹脂存在下で、少なくとも1種のその他の有機樹脂を変性することによって得られる有機樹脂を1種または2種以上混合して用いてもよい。前記バインダー成分の含有量(前記有機樹脂粒子(A)が後述する硬化剤(E)で硬化されていない場合は有機樹脂粒子(A)のみの含有量、前記有機樹脂粒子(A)が後述する硬化剤(E)で硬化されている場合は有機樹脂粒子(A)と硬化剤(E)の合計量)は、前記着色塗膜中の55〜80質量%であることが好ましい。55質量%未満であると、着色金属板の加工部の意匠性や加工性が低下する場合があり、80質量%超であると、着色金属板の耐傷付き性が低下する場合がある。前記バインダー成分のより好ましい含有量は60〜75質量%である。
【0025】
有機樹脂粒子(A)は、構造中にスルホン酸基を含むポリエステル樹脂粒子(Ae)を含有することが、耐食性、加工性、耐傷付き性を高次元で両立させる上で好ましい。ポリエステル樹脂の構造中に含まれるエステル基は適度の凝集エネルギーを有しているため、塗膜のフィルム物性(伸びと強度のバランス)を高次元に高めることができる。すなわち、ポリエステル樹脂を塗膜の造膜成分として適用することは、加工性と耐傷付き性を高次元で両立する上で非常に有効である。加えて、ポリエステル樹脂に含まれるスルホン酸基は、基材である金属板(下地処理がある場合は下地処理層)との密着性向上にも寄与するため、加工性や耐傷付き性を高める上で好適である。また、スルホン酸基は高い親水性を有しているため、ポリエステル樹脂の水系着色組成物中での安定性を高める(着色組成物の固化、凝集物の発生等を防止する)上でも好適である。特に後述する硬化剤を併用する場合においては、着色組成物のpH変動が大きくなり、着色組成物の安定性が低下する場合があるが、スルホン酸基を含むポリエステル樹脂を用いる場合は、着色組成物のpH変動の影響を受けにくく、着色組成物の安定性の低下を抑制することができる。加えて、着色顔料(B)が後述するカーボンブラック(B1)のような疎水表面を持つ顔料である場合、顔料を水性着色組成物中で均一に分散させ、形成された着色塗膜に優れた意匠性を付与させる上でも樹脂構造中にスルホン酸基を含むポリエステル樹脂は好適である。なお、スルホン酸基を含むポリエステル樹脂は有機溶剤に溶解し難い(一部の極性溶剤にしか溶解しない)という特徴を有しているため、該樹脂は有機溶剤を溶媒とする有機溶剤系塗料組成物では実質的に使用することができない。また、硬化剤を用いる場合は、スルホン酸基含有化合物等の硬化触媒を併用することが一般的であるが、このような硬化触媒は塗膜の耐食性を低下させる懸念がある。これに対して、スルホン酸基を含むポリエステル樹脂は硬化触媒を用いなくても、低温乾燥硬化が可能であるため、硬化触媒を添加する必要がなく、硬化触媒添加による耐食性低下の懸念もない。したがって、有機溶剤を溶媒として用いた塗料にはスルホン酸基を含むポリエステル樹脂が適用できないため、これを用いて形成された塗膜の場合には、上記のスルホン酸による効果、特に耐食性と耐傷付き性を両立すると言う効果は期待できない。
【0026】
更に、前記ポリエステル樹脂粒子(Ae)は、樹脂構造中にビスフェノール構造を含有してもよい。ビスフェノール構造は、高い凝集エネルギーを持つ上に、耐水性にも優れるため、前記ポリエステル樹脂粒子(Ae)がビスフェノール構造を含むことは着色金属板の耐傷付き性、耐薬品性、耐食性を向上させる上で好ましい。
【0027】
前記ポリエステル樹脂粒子(Ae)は、例えば、ポリカルボン酸成分およびポリオール成分からなるポリエステル原料を縮重合し得られたものを、水に分散することで得られる。
【0028】
前記ポリカルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水ハイミック酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、無水コハク酸、乳酸、ドデセニルコハク酸、ドデセニル無水コハク酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、無水エンド酸等の1種又は複数種を用いることができる。
【0029】
前記ポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、トリエチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、2−メチル−3−メチル−1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノール−A、ダイマージオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の1種又は複数種を用いることができる。
【0030】
ポリエステル樹脂に前記スルホン酸基を導入する場合の方法としては特に制限はないが、例えば、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸等のジカルボン酸類、または2−スルホ−1,4−ブタンジオール、2,5−ジメチル−3−スルホ−2,5−ヘキシルジオール等のグリコール類をポリエステル原料として使用する方法が挙げられる。
【0031】
前記スルホン酸基は−SO3Hで表される官能基を指し、それがアルカリ金属類、アンモニアを含むアミン類等で中和されたものであっても構わない。中和する場合は、すでに中和されたスルホン酸基を樹脂中に組み込んでもよいし、スルホン酸基を樹脂中に組み込んだ後に中和してもよい。特にLi、Na、Kなどのアルカリ金属類で中和されたスルホン酸金属塩基が、形成した着色塗膜と基材との密着性を高める上や疎水表面を持つ着色顔料の分散性を高める上で特に好ましく、スルホン酸Na塩基が更に好ましい。
【0032】
前記スルホン酸基を含有するジカルボン酸またはグリコールの使用量は、全ポリカルボン酸成分または全ポリオール成分に対し、0.1〜10モル%であることが好ましい。0.1モル%未満であると、形成した着色塗膜と基材の密着性の向上効果が得られない場合や、有機樹脂粒子の水性溶媒に対する分散性が低下する場合や、更に、着色顔料の分散性が低下し、意匠性が低下する場合がある。10モル%超であると、着色塗装金属板の耐食性が低下する場合がある。性能のバランスを考慮すると、0.5〜7モル%の範囲にあるのがより好ましい。
【0033】
前記ビスフェノール構造を導入する場合の方法としては特に制限はないが、例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加物などのグリコール類をポリエステル原料として使用する方法が挙げられる。
【0034】
前記ビスフェノール構造を含有するグリコールの使用量は、全ポリオール成分に対し、1〜40モル%であることが好ましい。1モル%未満であると、着色塗装金属板の耐傷付き性、耐食性の向上効果が得られない場合がある。40モル%超であると、着色塗装金属板の加工性が低下する場合がある。性能のバランスを考慮すると、5〜30モル%の範囲にあるのがより好ましい。
【0035】
前記ポリエステル樹脂粒子(Ae)の含有量は、前記有機樹脂粒子(A)中の60〜100質量%であることが好ましい。60質量%未満であると、着色塗装金属板の加工性、耐傷付き性、耐食性の改善効果が得られなくなる場合がある。前記ポリエステル樹脂粒子(Ae)のより好ましい含有量は80〜100質量%である。
【0036】
前記ポリエステル樹脂粒子(Ae)は、ガラス転移温度が5〜25℃であることが好ましい。前記ポリエステル樹脂粒子(Ae)のガラス転移温度が5℃未満では、着色塗装金属板の耐傷付き性、耐薬品性が低下する場合があり、25℃を超えると、着色塗装金属板の加工性が低下する場合がある。ポリエステル樹脂粒子(Ae)のより好ましいガラス転移温度は5〜15℃である。ガラス転移温度は、示差走査熱量計によって測定することができる。
【0037】
前記有機樹脂粒子(A)が、前記ポリエステル樹脂粒子(Ae)を含有する本発明の態様においては、構造中にウレア基を含むポリウレタン樹脂(Au)を更に含有することが、耐食性、耐傷付き性を向上させる上で特に好ましい。加工性と耐傷付き性、耐食性を両立するためには、塗膜の伸びと強度の両者に優れ、且つ基材である金属板(下地処理がある場合は下地処理層)との密着性を高めることが重要であるが、非常に高い凝集エネルギーを持つウレア基を含有するポリウレタン樹脂(Au)を、前記ポリエステル樹脂(Ae)と混合して使用することで伸びと強度の両者に優れ、且つ基材との密着性にも優れる塗膜設計が可能である。
【0038】
前記有機樹脂粒子(A)に前記ポリエステル樹脂粒子(Ae)とともに前記ポリウレタン樹脂粒子(Au)を含む場合、前記ポリエステル樹脂粒子(Ae)と前記ポリウレタン樹脂粒子(Au)の合計の含有量は、前記有機樹脂粒子(A)中の60〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは80〜100質量%である。60質量%未満であると、加工性、耐傷付き性、耐食性の改善効果が得られなくなる場合がある。
【0039】
また、前記ポリエステル樹脂粒子(Ae)と前記ポリウレタン樹脂粒子(Au)の固形分質量比(Ae)/(Au)は、25/75〜90/10であることが好ましく、50/50〜75/25であることが更に好ましい。25/75未満であると加工性が低下する場合があり、90/10超であると耐食性、耐傷付き性の改善効果が得られない場合がある。
【0040】
前記ポリウレタン樹脂粒子(Au)としては、樹脂構造中にウレア基を含んでいれば特に制限はないが、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させ、その後に更に1分子当たり2個以上のアミノ基を含有する鎖伸長剤によって鎖伸長して得られるもの等を挙げることができる。前記ポリオール化合物としては、1分子当たり2個以上のヒドロキシ基を含有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール、又はそれらの混合物が挙げられる。前記ポリイソシアネート化合物としては、1分子当たり2個以上のイソシアネート基を含有する化合物であれば特に限定されず、例えば、脂肪族イソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、又はそれらの混合物が挙げられる。前記鎖伸長剤としては、分子内に1個以上のアミノ基を含有する化合物であれば特に限定されず、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族ポリアミンや、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ポリアミンや、ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン等の脂環式ポリアミンや、ヒドラジン、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド等のヒドラジン類や、ヒドロキシエチルジエチレントリアミン、2−[(2−アミノエチル)アミノ]エタノール、3−アミノプロパンジオール等のアルカノールアミン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で、又は2種類以上の混合物で使用することが出来る。
【0041】
金属板に塗布する水性着色組成物が含有する着色顔料(B)は、水性着色組成物により形成した塗膜に着色するとともに十分な隠蔽性を付与する成分である。本発明で用いることができる代表的な着色顔料の例として、カーボンブラック、二酸化チタン、グラファイト、酸化鉄、酸化鉛、コールダスト、タルク、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー等の着色無機顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン、ペリレン、アンスラピリミジン、カルバゾールバイオレット、アントラピリジン、アゾオレンジ、フラバンスロンイエロー、イソインドリンイエロー、アゾイエロー、インダスロンブルー、ジブロムアンザスロンレッド、ペリレンレッド、アゾレッド、アントラキノンレッド等の着色有機顔料;アルミニウム粉、アルミナ粉、ブロンズ粉、銅粉、スズ粉、亜鉛粉、リン化鉄粉、金属コーティングマイカ粉、二酸化チタンコーティングマイカ粉、二酸化チタンコーティングガラス粉等の光輝材などを挙げることができる。
【0042】
着色顔料としてのカーボンブラック(B1)は、特に制限はないが、例えば、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等、公知のカーボンブラックを使用することができる。また、公知のオゾン処理、プラズマ処理、液相酸化処理されたカーボンブラックも使用することができる。カーボンブラックは、水性着色組成物中での分散性や塗装性、塗膜品質を考慮して、一次粒子径で10〜120nmのものを使用するのが好ましい。薄膜、例えば10μm以下程度の薄膜での意匠性(着色性、隠蔽性)や耐食性を考慮すると、一次粒子径が10〜50nmの微粒子カーボンブラックを使用することが好ましい。一方、カーボンブラックは分散媒(水)中に分散する過程で凝集が起こるため、一次粒子径のまま分散することは一般的に難しい。すなわち、実際には、カーボンブラックは水性着色組成物中に一次粒子径よりも大きな粒子径を持った二次粒子の形態で存在し、該組成物から形成した塗膜中でも同様の形態で存在する。薄膜での意匠性(着色性、隠蔽性)や耐食性を担保するためには、塗膜中に分散したカーボンブラックの粒子径が重要であり、その二次粒子の平均粒子径が80〜350nmにあることが好ましい。
【0043】
カーボンブラックは隠蔽性に優れた着色顔料である。そのため、本発明においてカーボンブラックを着色顔料(B)として使用すると、形成した着色塗膜(α)の膜厚を薄くするのに有効である。
【0044】
カーボンブラックにより塗膜の意匠性(着色性、隠蔽性)を担保するためには、着色塗膜中に含まれるカーボンブラックの絶対量を一定量以上確保することが肝要である。カーボンブラックの絶対量は、塗膜中に含まれるカーボンブラックの含有量(Y質量%)と塗膜厚み(Zμm)の積(Y×Z)によって表すことができる。Y×Zが20未満であると、意匠性(着色性、隠蔽性)が低下することがある。Yが15超であると、塗膜の造膜性が低下し、耐食性や加工性が低下することがある。すなわち、カーボンブラックと塗膜は、Y×Z≧20、且つ、Y≦15の関係を満足することが好ましい。Y×Z≧25、且つ、Y≦15であるのがより好ましく、Y×Z≧30、且つ、Y≦12であるのが更に好ましい。
【0045】
カーボンブラック以外の着色顔料を使用する場合、塗膜中における着色顔料粒子は、それが一次粒子であるか二次粒子であるかに関わりなく、カーボンブラック二次粒子についての上述の20〜300nmの平均粒子径を有することが好ましい。より好ましい平均粒子径は30〜250nm、更に好ましくは50〜200nmである。
【0046】
金属板に塗布する水性着色組成物が含有する平均粒子径が5〜50nmの球状シリカ粒子(C)は、水性着色組成物により形成した塗膜の意匠性を損なうことなく、十分な耐食性、耐傷付き性を付与するのに有効な成分である。シリカ粒子(C)としては、平均粒子径が5〜50nmで、且つ球状であれば特に制限されないが、コロイダルシリカ等のシリカ微粒子を使用するのが好ましい。市販品としては、例えば、スノーテックスO、スノーテックスN、スノーテックスC(日産化学工業社)、アデライトAT−20N、AT−20A(旭電化工業社)等を挙げることができる。シリカ微粒子は、水性着色組成物から形成した着色塗膜中でも一次粒子径5〜50nmのままで分散されていることが、耐食性や加工性の観点で好ましい。シリカ粒子のより好ましい一次粒子径は8〜30nm、更に好ましくは10〜20nmである。本発明における「球状」とは真球のみならず、球に近似した形状のことを指し、楕円体も含まれる。ただし、楕円体の場合は長径に対する短径の比が0.7以上であることが加工性、耐食性、耐傷付き性の観点から好ましく、0.8以上であることがより好ましい。
【0047】
前記シリカ粒子(C)は、水性着色組成物(X)から形成した着色塗膜(α)中に3〜30質量%存在することが好ましい。塗膜中のシリカ粒子含有量が3質量%未満であると、塗膜の耐食性、耐傷付き性が不足することがあり、30質量%超であると、塗膜の耐湿性、耐食性、加工性が低下することがある。塗膜中のシリカ粒子のより好ましい含有量は5〜20質量%、更に好ましくは7〜15質量%である。
【0048】
水性着色組成物(X)は、前記有機樹脂粒子(A)、前記着色顔料(B)、前記シリカ粒子(C)のほかに、水溶性アクリル樹脂に代表されるエチレン系不飽和二重結合を有する単量体由来の水溶性樹脂(D)を更に含有してもよい。水溶性樹脂(D)を更に含有することで、着色塗膜を形成するための水性着色組成物(X)における着色顔料(B)の分散性を高めることができ、薄く形成した着色塗膜における意匠性(着色性、隠蔽性)を更に高めることができる。水溶性樹脂(D)の種類は、特に制限はないが、エチレン系不飽和二重結合を有する単量体を水溶液中で重合開始剤を用いてラジカル重合することによって得られるものを挙げることができる。エチレン系不飽和二重結合を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のエチレン系不飽和カルボン酸単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル等のエチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;マレイン酸エチル、マレイン酸ブチル、イタコン酸エチル、イタコン酸ブチル等のエチレン系不飽和ジカルボン酸のモノエステル単量体;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンとの反応物等のヒドロキシル基含有エチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ブチルアミノエチル等のエチレン系不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル単量体;アミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のエチレン系不飽和カルボン酸アミノアルキルアミド単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メトキシブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のその他のアミド基含有エチレン系不飽和カルボン酸単量体;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等の不飽和脂肪酸グリシジルエステル単量体;(メタ)アクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の飽和脂肪族カルボン酸ビニルエステル単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系単量体等を挙げることができる。エチレン系不飽和二重結合を有する単量体は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記重合開始剤としては特に限定されず、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスシアノ吉草酸、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等を使用することができる。
【0049】
ここでいう「水溶性」とは、樹脂(ポリマー)を1重量%の濃度で水に溶解させようとしたときに、加熱したり攪拌したりして均一化させる努力をした後に、25℃で24時間放置したときに樹脂が沈殿を生じることなく、相分離もせずに溶液が均一であることをいう。
【0050】
エチレン系不飽和二重結合を有する単量体由来の水溶性樹脂(D)の含有量は、有機樹脂粒子(A)100質量部に対し、0.5〜20質量部であることが好ましい。0.5質量部未満であると、水性着色組成物から形成した塗膜の意匠性(着色性、隠蔽性)が低下することがあり、20質量%超であると、塗膜の耐食性や加工性が低下することがある。水溶性樹脂(D)のより好ましい含有量は、有機樹脂粒子(A)100質量部に対し1〜15質量部、更に好ましくは2〜10質量部である。
【0051】
水性着色組成物(X)は、前記有機樹脂粒子(A)、前記着色顔料(B)、前記シリカ粒子(C)のほかに、硬化剤(E)を更に含有することができる。この場合、水性着色組成物(X)は、エチレン系不飽和二重結合を有する単量体由来の水溶性樹脂(D)を含有しても含有しなくてもよい。
【0052】
硬化剤(E)は、有機樹脂粒子(A)を構成する樹脂材料を硬化させるのに有効な成分である。例えば、有機樹脂粒子(A)の加熱乾燥過程での融着とともにその硬化を促進する硬化剤として、メラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物、エポキシ基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物及び架橋性チタン化合物などを用いることができる。メラミン樹脂は、例えば、メラミンとホルムアルデヒドとを縮合して得られる生成物のメチロール基の一部またはすべてをメタノール、エタノール、ブタノールなどの低級アルコールでエーテル化した樹脂である。ポリイソシアネート化合物としては、特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等を挙げることができる。また、ポリイソシアネート化合物のブロック化物を使用してもよく、例えば、前記ポリイソシアネート化合物のブロック化物であるヘキサメチレンジイソシアネートのブロック化物、イソホロンジイソシアネートのブロック化物、キシリレンジイソシアネートのブロック化物、トリレンジイソシアネートのブロック化物等を挙げることができる。硬化剤は1種で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
硬化剤を使用する場合、その含有量は、水性着色組成物(X)中の全有機樹脂(組成物(X)が有機樹脂粒子(A)の樹脂以外の有機樹脂を含む場合は、その有機樹脂も含めた全有機樹脂を指し、潤滑剤(後述)は含まない)100質量部に対し、5〜35質量部であることが好ましい。5質量部未満であると、有機樹脂粒子の硬化が不足し、形成した塗膜において所望の耐湿性、耐食性、耐傷付き性、耐薬品性が得られないことがあり、35質量部超であると、有機樹脂粒子の硬化が過剰になり、塗膜の耐食性、加工性が低下することがある。硬化剤の含有量は、水性着色組成物(X)中の全有機樹脂100質部に対し、7〜30質量部がより好ましく、10〜25質量部が更に好ましい。
【0054】
形成した塗膜の耐傷付き性、耐薬品性の観点から、硬化剤(E)はメラミン樹脂を含有することが好ましい。メラミン樹脂の含有量は、硬化剤(E)の全質量の30〜100質量%であることが好ましい。30質量%未満であると、塗膜の耐傷付き性、耐薬品性の改善効果が得られない場合がある。
【0055】
水性着色組成物(X)は、前記有機樹脂粒子(A)、前記着色顔料(B)、前記シリカ粒子(C)のほかに、潤滑剤(F)を更に含有してもよい。潤滑剤(F)を含有させることで、塗膜の耐傷付き性が向上する。潤滑剤(F)としては特に制限されず、公知の潤滑剤が使用できるが、フッ素樹脂系、ポリオレフィン樹脂系から選ばれる少なくとも一種を使用することが好ましい。フッ素樹脂系潤滑剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)などが使用可能である。これらのうち1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用しても良い。
【0056】
前記ポリオレフィン樹脂系潤滑剤としては特に限定されず、パラフィン、マイクロクリスタリン、ポリエチレン等の炭化水素系のワックス、及びこれらの誘導体等を挙げることができるが、ポリエチレン樹脂であることが好ましい。前記誘導体としては特に限定されず、例えば、カルボキシル化ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン等を挙げることができる。これらのうち1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用しても良い。前記ポリエチレン樹脂を使用する場合、前記着色塗膜(α)中に平均粒子径0.5〜2μmの粒子で分散されていることが、耐食性や耐傷付き性の観点から好ましい。
【0057】
前記潤滑剤(F)の含有量は、前記着色塗膜(α)中に0.5〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜5質量%である。0.5質量%未満であると、耐傷付き性の改善効果が得られない場合があり、10質量%超であると、耐食性、加工性が低下する場合がある。
【0058】
水性着色組成物(X)は、特定の方法に限定されず任意の方法で得ることができる。例えば、分散媒である水中に着色塗膜(α)の構成成分を添加し、ディスパーで攪拌し、溶解もしくは分散する方法が挙げられる。各構成成分の溶解性もしくは分散性を向上させるために、必要に応じて、公知の親水性溶剤等、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコールおよびプロピレングリコールなどのアルコール類、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのセロソルブ類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンなどのケトン類を添加してもよい。
【0059】
本発明のクロメートフリー着色塗装金属板は、水性着色組成物(X)を塗料として使用し、所定の金属板の少なくとも片面に塗布して、加熱乾燥することにより製造される。水性着色組成物(X)の塗布方法は、特に制限されることなく、公知の任意の方法を用いることができる。例えば、ロールコート、カーテン塗装、スプレー塗布、バーコート、浸漬、静電塗布などを利用可能である。
【0060】
水性着色組成物(X)から着色塗膜(α)を形成する加熱乾燥は、特に制限されることなく、任意の方法で行うことができる。例えば、水性着色組成物を塗布する前に予め金属板を加熱しておくか、塗布後に金属板を加熱するか、或いはこれらを組み合わせて乾燥を行うことができる。加熱方法にも特に制限はなく、熱風、誘導加熱、近赤外線、直火等を単独もしくは組み合わせて使用して、着色組成物を乾燥させて焼付けることができる。乾燥焼付温度は、到達板温で150℃〜250℃であることが好ましく、160℃〜230℃であることが更に好ましく、180℃〜220℃であることが最も好ましい。到達板温が150℃未満であると、焼付硬化が不十分で、塗膜の耐湿性、耐食性、耐傷付き性、耐薬品性が低下することがあり、250℃超であると、焼付硬化が過剰になり、耐食性、加工性が低下することがある。乾燥焼付時間(加熱時間)は1〜60秒であることが好ましく、3〜20秒であることが更に好ましい。1秒未満であると、焼付硬化が不十分で、塗膜の耐湿性、耐食性、耐傷付き性、耐薬品性が低下することがあり、60秒超であると、生産性が低下する。
【0061】
本発明のクロメートフリー着色塗装金属板は、着色塗膜(α)の下層に下地処理層(β)を有することもできる。下地処理層(β)としては、特に限定されるものではなく、例えば、シランカップリング剤、有機樹脂、ポリフェノール化合物から選ばれる少なくとも1種を含む層を使用することができる。この層を着色塗膜の下層に設けることで、金属板と着色塗膜(α)との密着性を高め、塗膜の耐食性を高めることができる。シランカップリング剤、有機樹脂、ポリフェノール化合物を全て含む下地処理層(β)を設けることで、金属板と着色塗膜(α)との密着性を最も高め、塗膜の耐食性を最も高めることができる。
【0062】
下地処理層(β)に含まれるシランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、信越化学工業社、東レ・ダウコーニング社、チッソ社、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社等から販売されているビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルエトキシシラン、N−〔2−(ビニルベンジルアミノ)エチル〕−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカブトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。シランカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
下地処理層(β)に含まれる有機樹脂は特に限定されず、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂等、公知の有機樹脂を使用することができる。着色塗膜(α)と金属板との密着性をより高めるためには、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂の少なくとも1種を使用することが好ましい。着色塗膜(α)がポリエステル樹脂を含む場合には、それとの相溶性を高め、密着性を高める意味では、下地処理層(β)はポリエステル樹脂を含有することが特に好ましい。
【0064】
下地処理層(β)に含まれるポリフェノール化合物としては、ベンゼン環に結合したフェノール性水酸基を2以上有する化合物、またはその縮合物を使用する。ベンゼン環に結合したフェノール性水酸基を2以上有する化合物としては、例えば、没食子酸、ピロガロール、カテコール等を挙げることができる。ベンゼン環に結合したフェノール性水酸基を2以上有する化合物の縮合物としては、特に限定されず、例えば、通常タンニン酸と呼ばれる植物界に広く分布するポリフェノール化合物を挙げることができる。
【0065】
タンニン酸は、広く植物界に分布する多数のフェノール性水酸基を有する複雑な構造の芳香族化合物の総称である。本発明の下地処理層(β)で使用するタンニン酸は、加水分解性タンニン酸でも縮合型タンニン酸でもよい。タンニン酸としては特に限定されず、例えば、ハマメリタンニン、カキタンニン、チャタンニン、五倍子タンニン、没食子タンニン、ミロバランタンニン、ジビジビタンニン、アルガロビラタンニン、バロニアタンニン、カテキンタンニン等を挙げることができる。市販のタンニン酸、例えば、「タンニン酸エキスA」、「Bタンニン酸」、「Nタンニン酸」、「工用タンニン酸」、「精製タンニン酸」、「Hiタンニン酸」、「Fタンニン酸」、「局タンニン酸」(いずれも大日本製薬株式会社製)、「タンニン酸:AL」(富士化学工業株式会社製)等を使用することもできる。
【0066】
ポリフェノール化合物は1種で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
下地処理層(β)に含まれる成分(シランカップリング剤、有機樹脂、ポリフェノール化合物のうちから選ばれる少なくとも1種)の含有量は特に限定されないが、下地処理層100質量部中に10質量部以上含有されることが好ましい。10質量部未満の場合、密着性や耐食性の向上効果が得られないことがある。
【0068】
下地処理層(β)の付着量は特に限定されるものではないが、10〜1000mg/m2の範囲にあることが好ましい。10mg/m2未満では十分な下地処理層(β)の効果が得られず、1000mg/m2を超えると下地処理層(β)が凝集破壊しやすくなり密着性が低下することがある。安定した効果と経済性から、より好ましい付着量範囲は50〜500mg/m2である。
【0069】
下地処理層(β)の形成方法に特に制限はなく、一般に下地処理層(β)を形成するためのコーティング剤を金属板の少なくとも片面に塗布し、加熱乾燥することで形成される。前記コーティング剤は水を媒体とする水性コーティング剤であることが工業生産性に優れるため好ましい。前記コーティング剤は、特定の方法に限定されず任意の方法で得ることができる。例えば、媒体である水中に下地処理層(β)の構成成分を添加し、ディスパーで攪拌し、溶解もしくは分散する方法が挙げられる。各構成成分の溶解性もしくは分散性を向上させるために、必要に応じて、公知の親水性溶剤等、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコールおよびプロピレングリコールなどのアルコール類、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのセロソルブ類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンなどのケトン類、のうちの1又は2種以上を添加してもよい。前記コーティング剤の塗布方法に特に制限はなく、公知のロールコート、スプレー塗布、バーコート、浸漬、静電塗布等を適宜使用することができる。加熱乾燥方法に特に制限はなく、コーティング剤塗布前に予め金属板を加熱しておくか、塗布後に金属板を加熱するか、或いはこれらを組み合わせて乾燥を行うことができる。加熱方法に特に制限はなく、熱風、誘導加熱、近赤外線、直火等を単独もしくは組み合わせて使用することができる。乾燥焼付温度は、到達板温で60℃〜150℃であることが好ましく、70℃〜130℃であることが更に好ましい。到達板温が60℃未満であると、乾燥が不十分で、着色塗膜と基材との密着性や着色塗膜の耐食性が低下することがあり、150℃超であると、着色塗膜と基材との密着性が低下することがある。
【0070】
本発明において適用可能な金属板としては特に限定されるものではなく、例えば、鉄板、鉄基合金板、アルミニウム板、アルミニウム基合金板、銅板、銅基合金板等が挙げられる。これらの金属板上にめっきしためっき金属板を使用することもできる。中でも本発明の適用において最も好適なものは亜鉛系めっき鋼板、アルミニウム系めっき鋼板である。
【0071】
亜鉛系めっき鋼板としては、亜鉛めっき鋼板、亜鉛−ニッケルめっき鋼板、亜鉛−鉄めっき鋼板、亜鉛−クロムめっき鋼板、亜鉛−アルミニウムめっき鋼板、亜鉛−チタンめっき鋼板、亜鉛−マグネシウムめっき鋼板、亜鉛−マンガンめっき鋼板、亜鉛−アルミニウム−マグネシウムめっき鋼板、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム−シリコンめっき鋼板等の亜鉛系めっき鋼板、さらにはこれらのめっき層に少量の異種金属元素または不純物としてコバルト、モリブデン、タングステン、ニッケル、チタン、クロム、アルミニウム、マンガン、鉄、マグネシウム、鉛、ビスマス、アンチモン、錫、銅、カドミウム、ヒ素等を含有したもの、シリカ、アルミナ、チタニア等の無機物を分散させたものが含まれる。
【0072】
アルミニウム系めっき鋼板としては、アルミニウムめっき鋼板、またはアルミニウムとシリコン、亜鉛、マグネシウムのうちの少なくとも1種とからなる合金をめっきした鋼板、例えば、アルミニウム−シリコンめっき鋼板、アルミニウム−亜鉛めっき鋼板、アルミニウム−シリコン−マグネシウムめっき鋼板等が挙げられる。
【0073】
更には、上記のめっきと他の種類のめっき、例えば鉄めっき、鉄−りんめっき、ニッケルめっき、コバルトめっき等とを組み合わせた複層めっき鋼板を用いることも可能である。
【0074】
めっき方法は特に限定されるものではなく、公知の電気めっき法、溶融めっき法、蒸着めっき法、分散めっき法、真空めっき法等のいずれの方法でもよい。
【実施例】
【0075】
実施例により本発明を更に説明する。しかし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0076】
(1)金属板
使用した金属板の種類を表1に示す。めっきを施した金属板の基材には、板厚0.5mmの軟鋼板を使用した。SUS板についてはフェライト系ステンレス鋼板(鋼成分:C;0.008質量%、Si;0.07質量%、Mn;0.15質量%、P;0.011質量%、S;0.009質量%、Al;0.067質量%、Cr;17.3質量%、Mo;1.51質量%、N;0.0051質量%、Ti;0.22質量%、残部Fe及び不可避的不純物)を使用した。金属板は表面をアルカリ脱脂処理、水洗乾燥して使用した。
【0077】
【表1】
【0078】
(2)下地処理層
下地処理層を形成するためのコーティング剤は、有機樹脂(表2)、シランカップリング剤(表3)、ポリフェノール化合物(表4)を表5に示す配合量(質量%)で配合し、塗料用分散機を用いて攪拌することで調製した。上記(1)で準備した金属板の表面に該コーティング剤を100mg/m2の付着量になるようにロールコーターで塗装し、到達板温度70℃の条件で乾燥させることで、必要に応じて下地処理層を形成させた。
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
【表5】
【0083】
(3)着色塗膜
着色塗膜を形成するための水性着色組成物(X)は、有機樹脂粒子(A)(下記製造例1〜7、表6のF1〜F15)、アクリル樹脂(エチレン系不飽和二重結合を有する単量体由来の水溶性樹脂)(表6のF16)、硬化剤(E)(表7)、着色顔料(B)(表8)、シリカ粒子(C)(表9)、潤滑剤(F)(表10)を表11〜13に示す配合量(固形分の質量%で記載)で配合し、塗料用分散機を用いて攪拌することで調製した。(2)で形成した下地処理層(下地処理層がない場合は金属板)の上層に、水性着色組成物(X)を所定の膜厚になるようにロールコーターで塗装し、所定の到達板焼付温度で加熱乾燥し、着色塗膜を形成させた。
【0084】
<有機樹脂粒子製造例1>
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にテレフタル酸199部、イソフタル酸232部、アジピン酸199部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸27部、エチレングリコール312部、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール125部、1,5−ペンタンジオール187部、テトラブチルチタネート0.41部を仕込み、160℃から230℃まで4時間かけてエステル化反応を行った。次いで系内を徐々に減圧していき、20分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、260℃にて40分間重縮合反応を行った。得られた共重合ポリエステル樹脂100部に、ブチルセロソルブ20部、メチルエチルケトン42部を投入した後、80℃で2時間攪拌溶解を行い、更に213gのイオン交換水を投入し、水分散を行った。その後、加熱しながら溶剤を留去、200メッシュのナイロンメッシュでろ過し、固形分濃度30%、粒子径24nm、ガラス転移温度15℃のポリエステル樹脂粒子水分散体(F1)を得た。
【0085】
以下製造例1に準じた方法で、5−ナトリウムスルホイソフタル酸の質量部を33部、20部、14部、7部に変更させた(5−ナトリウムスルホイソフタル酸の増減分はイソフタル酸で調整)ガラス転移温度15℃のポリエステル樹脂粒子水分散体を製造し、樹脂粒子の粒子径は各々、10nm(F2)、55nm(F3)、98nm(F4)、145nm(F5)であった。
【0086】
以下製造例1に準じた方法で、アジピン酸の質量部を66部、133部、232部、265部に変更させた(アジピン酸の増減分はイソフタル酸で調整)粒子径24nmのポリエステル樹脂粒子水分散体を製造し、樹脂粒子のガラス転移温度は各々、0℃(F6)、5℃(F7)、25℃(F8)、40℃(F9)であった。
【0087】
<有機樹脂粒子製造例2>
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にテレフタル酸199部、イソフタル酸266部、アジピン酸199部、エチレングリコール312部、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール125部、1,5−ペンタンジオール187部、テトラブチルチタネート0.41部を仕込み、160℃から230℃まで4時間かけてエステル化反応を行った。次いで系内を徐々に減圧していき、20分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、260℃にて40分間重縮合反応を行った。窒素気流下、220℃まで冷却し、無水トリメリット酸を23部、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート16部を投入し、30分間反応を行った。得られた共重合ポリエステル樹脂100部、ブチルセロソルブ20部、メチルエチルケトン42部を投入した後、80℃で2時間攪拌溶解を行い、イソプロピルアルコール23部、トリエチルアミン3.5部を投入し、213部のイオン交換水で水分散を行った。その後、加熱しながら溶剤を留去、200メッシュのナイロンメッシュでろ過し、固形分濃度30%、粒子径53nm、ガラス転移温度12℃のポリエステル樹脂水分散体(F10)を得た。
【0088】
<有機樹脂粒子製造例3>
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にテレフタル酸199部、イソフタル酸232部、アジピン酸199部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸33部、エチレングリコール250部、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール125部、1,5−ペンタンジオール187部、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物62部、テトラブチルチタネート0.41部を仕込み、160℃から230℃まで4時間かけてエステル化反応を行った。次いで系内を徐々に減圧していき、20分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、260℃にて40分間重縮合反応を行った。得られた共重合ポリエステル樹脂100部に、ブチルセロソルブ20部、メチルエチルケトン42部を投入した後、80℃で2時間攪拌溶解を行い、更に213gのイオン交換水を投入し、水分散を行った。その後、加熱しながら溶剤を留去、200メッシュのナイロンメッシュでろ過し、固形分濃度30%、粒子径32nm、ガラス転移温度24℃のポリエステル樹脂水分散体(F11)を得た。
【0089】
<有機樹脂粒子製造例4>
テトラメチレングリコールおよびエチレングリコールから合成された平均分子量900のポリエーテルポリオール230部、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸15部をN−メチル−2−ピロリドン100部に加え、80℃に加温して溶解させた。その後、ヘキサメチレンジイソシアネート120部を加え、110℃に加温して2時間反応させ、トリエチルアミンを11部加えて中和した。この溶液をエチレンジアミン4部とイオン交換水570部とを混合した水溶液に強攪拌下において滴下して、固形分濃度30%、粒子径21nm、ガラス転移温度15℃のポリウレタン樹脂水分散体(F12)を得た。
【0090】
<有機樹脂粒子製造例5>
テトラメチレングリコールおよびエチレングリコールから合成された平均分子量900のポリエーテルポリオール120部、平均分子量700のビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物80部、および2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸12部をN−メチル−2−ピロリドン100部に加え、80℃に加温して溶解させた。その後、ヘキサメチレンジイソシアネート100部を加え、110℃に加温して2時間反応させ、トリエチルアミンを11部加えて中和した。この溶液をエチレンジアミン5部とイオン交換水570部とを混合した水溶液に強攪拌下において滴下して、固形分濃度30%、粒子径35nm、ガラス転移温度35℃のポリウレタン樹脂(F13)を得た。
【0091】
<有機樹脂粒子製造例6>
末端にヒドロキシル基を有するアジピン酸と1,4−ブチレングリコールから合成された平均分子量900のポリエステルポリオール230部、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸15部をN−メチル−2−ピロリドン100部に加え、80℃に加温して溶解させた。その後、ヘキサメチレンジイソシアネート120部を加え、110℃に加温して2時間反応させ、トリエチルアミンを11部加えて中和した。この溶液をエチレンジアミン4部とイオン交換水570部とを混合した水溶液に強攪拌下において滴下して、固形分濃度30%、粒子径25nm、ガラス転移温度30℃のポリウレタン樹脂水分散体(F14)を得た。
【0092】
<有機樹脂粒子製造例7>
反応容器にメタクリル酸含有量20質量%で共重合させたポリオレフィン樹脂(エチレン−メタクリル酸共重合体)100g、水酸化ナトリウム5.6g、水500gを加え、95℃で2時間撹拌することで、粒子径15nm、ガラス転移点55℃のポリオレフィン樹脂粒子水分散体(F15)を得た。
【0093】
【表6】
【0094】
【表7】
【0095】
【表8】
【0096】
【表9】
【0097】
【表10】
【0098】
(4)着色塗装金属板
上記(3)で説明したように着色塗膜(α)を形成した着色塗装金属板の塗膜構成及び着色塗膜の膜厚、到達板焼付温度を表11〜14に示す。また、着色顔料(B)にカーボンブラックを使用する場合、塗膜中に分散されているカーボンブラックの粒子径も表11〜14に示す。着色塗膜中に分散されているカーボンブラックの粒子径は、FIB(集束イオンビーム)装置を用いて、塗装金属板から塗膜の垂直断面が見えるように厚さ50〜100nmの観察用試料を切り出し、塗膜の任意の10箇所の幅20μmに入る断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察し、各々任意に20箇所の粒子径を測定し、その平均値から求めた。カーボンブラック含有量(Y質量%)と着色塗膜の膜厚(Zμm)から求められるY×Zの値も表11〜14に示す。
【0099】
【表11】
【0100】
【表12】
【0101】
【表13】
【0102】
【表14】
【0103】
(5)評価試験
上記(3)で説明したように作製した着色塗装金属板(試験板)について、平面部の意匠性、耐湿性、耐食性、加工性(加工部の意匠性、加工密着性)、耐傷付き性、耐薬品性を下記に示す評価方法及び評価基準にて評価した。その評価結果を表15〜18に示す。
【0104】
(平面部の意匠性)
試験板の外観を下記の評価基準で評価した。
5:着色、表面艶ともに均一である。下地も全く透けて見えない。
4:着色は均一であるが、表面艶がやや不均一である(目を凝らして見て何とか確認できるレベル)。下地は全く透けて見えない。
3:着色、表面艶ともにやや不均一である(目を凝らして見て何とか確認できるレベル)。下地は全く透けて見えない。
2:着色、表面艶ともに不均一である(目視で容易に確認できるレベル)。下地は全く透けて見えない。
1:着色、表面艶ともに不均一である(目視で容易に確認できるレベル)。下地がやや透けて見える。
【0105】
(耐湿性)
試験板を温度40℃、湿度90%の条件下に500時間静置した後の外観を下記の評価基準で評価した。
5:外観に変化は全く認められない。
4:表面の艶が極僅かに低下した(試験前の試験板を横に並べて何とか分かるレベル)。
3:表面の艶が僅かに低下した(試験前の試験板を横に並べると容易に分かるレベル)。
2:表面の艶が低下した(試験板のみ見て何とか分かるレベル)。
1:表面の艶が著しく低下した(試験板のみ見て容易に分かるレベル)。
【0106】
(耐食性)
試験板の端面をテープシールした後、JIS Z 2371に準拠した塩水噴霧試験(SST)を72時間行い、錆発生状況を観察し、下記の評価基準で評価した。
5:錆発生なし。
4:錆発生面積が1%未満。
3:錆発生面積が1%以上、3%未満。
2:錆発生面積が3%以上、5%未満。
1:錆発生面積が5%以上。
【0107】
(加工性(加工部の意匠性))
試験板に180°折り曲げ加工を施し、折り曲げ部外側の外観を下記の評価基準で評価した。折り曲げ加工は20℃雰囲気中で、0.5mmのスペーサーを間に挟んで実施した(一般に1T曲げと呼ばれる)。
5:塗膜に亀裂等の不具合がなく、均一な着色外観である。色落ちも認められない。
4:塗膜に極僅かの亀裂が認められるため、やや色落ちが認められるが、ほぼ均一な着色外観である(試験前の試験板を横に並べて何とか分かるレベル)。
3:塗膜に僅かの亀裂が認められため、やや色落ちが認められるが、ほぼ均一な着色外観である(試験前の試験板を横に並べると容易に分かるレベル)。
2:塗膜に亀裂が認められ、色落ちが認められる(試験板のみ見て何とか分かるレベル)。
1:塗膜に亀裂が認められ、色落ちが著しい(試験板のみ見て容易に分かるレベル)。
【0108】
(加工性(加工密着性))
試験板に180°折り曲げ加工を施した後、折り曲げ加工部外側のテープ剥離試験(テープ剥離方法はJIS K 5600−5−6に準拠)を実施した。テープ剥離部の外観を下記の評価基準で評価した。なお、折り曲げ加工は20℃雰囲気中で、0.5mmのスペーサーを間に挟んで実施した(一般に1T曲げと呼ばれる)。
5:塗膜に剥離は認められない。
4:極一部の塗膜に剥離が認められる(ルーペで観察して何とか分かる程度)。
3:一部の塗膜に剥離が認められる(ルーペで観察して分かる程度)。
2:部分的な塗膜に剥離が認められる(目視で容易に分かる程度)。
1:ほとんどの塗膜に剥離が認められる(目視で容易に分かる程度)。
【0109】
(耐傷付き性)
試験板に45°の角度で鉛筆芯で5回線を引き、2回以上傷が入らない鉛筆硬度で評価した。鉛筆は三菱鉛筆社製のユニ鉛筆を使用し、20℃、4.903N(500gf)の荷重条件にて試験し、下記の評価基準で評価した。その他の試験条件はJIS K 5600−5−4に準拠した。
5:鉛筆硬度が3H以上
4:鉛筆硬度が2H
3:鉛筆硬度がH
2:鉛筆硬度がF
1:鉛筆硬度がHB以下
【0110】
(耐薬品性)
試験板をラビングテスターに設置後、エタノールを含浸させた脱脂綿を49.03kPa(0.5kgf/cm2)の荷重で10往復擦った後の皮膜状態を下記の評価基準で評価した。
5:擦り面に全く跡が付かない。
4:擦り面に極僅かに跡が付く(目を凝らして何とか擦り跡が判別できるレベル)。
3:擦り面に僅かに跡が付く(目を凝らすと容易に擦り跡が判別できるレベル)。
2:擦り面に明確な跡が付く(目視で瞬時に擦り跡が判別できるレベル)。
1:擦り面で塗膜が溶解し、下地が露出する。
【0111】
【表15】
【0112】
【表16】
【0113】
【表17】
【0114】
【表18】
【0115】
本発明の実施例はいずれの評価試験においても評点3点以上の優れた平面部意匠性、耐湿性、耐食性、加工性、耐傷付き性、耐薬品性を示した。なお、本発明の実施例に用いた着色組成物を40℃で1ヶ月静置し貯蔵安定性を調査したところ、実施例35で用いた水性着色組成物がゲル化していた。すなわち、スルホン酸基を含有しないポリエステル樹脂F10を使用したものは他の着色塗料に比べ貯蔵安定性がやや不安定である。
【0116】
一方、本発明の範囲を外れた比較例である、シリカ粒子を含有しない比較例1〜3は耐食性、耐傷付き性が劣っていた。バインダー成分である有機樹脂粒子に粒子径が145nmのポリエステル樹脂粒子を使用した比較例4〜6は平面部意匠性、加工部意匠性、耐食性が劣っていた。膜厚が1.5μmの比較例7は、平面部意匠性、耐食性、加工部意匠性、耐傷付き性が劣っていた。膜厚が12μmの比較例8は、ワキと言われる塗膜欠陥が発生すると共に、加工部意匠性が劣っていた。
【0117】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想定し得ることは明らかであり、それらについても当然に発明の技術的範囲に属するものと了解される。