特許第5834844号(P5834844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5834844
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】車両のエンジン自動制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20151203BHJP
   F02D 17/00 20060101ALI20151203BHJP
   F02N 15/00 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   F02D29/02 341
   F02D29/02 321A
   F02D17/00 Q
   F02N15/00 E
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-262817(P2011-262817)
(22)【出願日】2011年11月30日
(65)【公開番号】特開2013-113280(P2013-113280A)
(43)【公開日】2013年6月10日
【審査請求日】2014年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119644
【弁理士】
【氏名又は名称】綾田 正道
(72)【発明者】
【氏名】森 浩一
(72)【発明者】
【氏名】服部 元之
【審査官】 藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−035175(JP,A)
【文献】 特開2002−221059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/00 〜 29/02
F02D 17/00
F02N 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者のブレーキ操作量を検出するブレーキ操作量検出手段と、
コースト走行中、検出されたブレーキ操作量に基づきエンジンを停止し、エンジン停止後に、検出されたブレーキ操作量が第1の閾値を下回るとエンジンを再始動するエンジン停止再始動手段と、
車速が低いほど前記第1の閾値を小さく設定する第1の閾値設定手段と、を設けた
ことを特徴とする車両のエンジン自動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両のエンジン自動制御装置において、
前記第1の閾値設定手段は、車速が低いほど小さくなるよう、前記第1の閾値を複数設定することを特徴とする車両のエンジン自動制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両のエンジン自動制御装置において、
前記第1の閾値設定手段は、前記第1の閾値を所定のマップに基づき設定することを特徴とする車両のエンジン自動制御装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の車両のエンジン自動制御装置において、
前記第1の閾値設定手段は、前記第1の閾値を所定の計算式に基づき設定することを特徴とする車両のエンジン自動制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の車両のエンジン自動制御装置において、
前記エンジン停止再始動手段は、コースト走行中、エンジン停止後に、検出されたブレーキ操作量が前記第1の閾値より大きい第2の閾値以上になるとエンジンを再始動する ことを特徴とする車両のエンジン自動制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両のエンジン自動制御装置において、
車速が低いほど前記第2の閾値を小さく設定する第2の閾値設定手段を設けたことを特徴とする車両のエンジン自動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中にエンジンを自動的に停止、再始動するエンジン自動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジン自動制御装置として、特許文献1に記載の技術が開示されている。この装置は、車両走行中であっても、ブレーキ操作量がエンジン停止判定閾値以上となったときはエンジンを停止して燃費の向上を図ると共に、ブレーキ操作量がエンジン始動判定閾値以下となったときはエンジンを再始動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4374805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の装置は、車両が走行状態であると判定される所定車速以上では、車速に関わらずエンジン(再)始動判定閾値が固定される構成であるため、停車に向けた減速走行中、運転者の意図に反してエンジンが再始動され、燃費を十分に向上することができないおそれがあった。例えば、停車に向けた減速走行中、運転者のブレーキ操作量は変動し、車速が低くなるほどブレーキ操作量は小さくなりがちである。しかし、車速に関わりなくエンジン始動判定閾値が設定されていると、ブレーキ操作量が容易にエンジン始動判定閾値以下となってエンジンが再始動するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、燃費をより向上できる車両のエンジン自動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両のエンジン自動制御装置では、車速が低いほどエンジン始動判定閾値を小さく設定することとした。
【発明の効果】
【0007】
よって、車速に応じてブレーキ操作量が変化しても、より適切なタイミングでエンジンを再始動することができるため、燃費をより向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の車両のエンジン自動制御装置の構成を表すシステム図である。
図2】実施例1のエンジン自動停止再始動制御処理を表すフローチャートである。
図3】実施例1のコースト走行時におけるコーストストップ許可下限値の設定処理の作用を表すタイムチャートである。
図4】実施例2のエンジン自動停止再始動制御処理を表すフローチャートである。
図5】実施例2のコースト走行時におけるコーストストップ許可上限値及び下限値の設定処理の作用を表すタイムチャートである。
図6】実施例3のエンジン自動停止再始動制御処理を表すフローチャートである。
図7】実施例3のコースト走行時におけるコーストストップ許可上限値及び下限値の設定処理の作用を表すタイムチャートである。
図8】実施例4のエンジン自動停止再始動制御処理を表すフローチャートである。
図9】実施例4のコースト走行時におけるコーストストップ許可上限値及び下限値の設定処理の作用を表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施例1]
図1は実施例1の車両のエンジン自動制御装置の構成を表すシステム図である。内燃機関であるエンジン1の出力側にはトルクコンバータ2が設けられている。トルクコンバータ2の出力側にはベルト式無段変速機3が接続されている。エンジン1から出力された回転駆動力は、トルクコンバータ2を介してベルト式無段変速機3に入力され、所望の変速比によって変速された後、駆動輪4に伝達される。
エンジン1には、エンジン始動を行う始動装置1aと、発電を行うオルタネータ1bとが備えられている。始動装置1aにはスタータモータが備えられている。始動装置1aは、エンジン始動指令に基づき、車載バッテリ1cの供給する電力を用いてスタータモータを駆動し、エンジンクランキングを行う。また、燃料を噴射し、その後、エンジン1が自立回転可能となると、スタータモータを停止する。オルタネータ1bは、エンジン1により回転駆動されることで発電し、発電した電力をバッテリ1c等に供給する。
【0010】
トルクコンバータ2は、低車速時にトルク増幅を行うと共に、ロックアップクラッチを有しており、所定車速CSVSP1(例えば14km/h程度)以上では、ロックアップクラッチを締結してエンジン1の出力軸とベルト式無段変速機3の入力軸との相対回転を規制する。
ベルト式無段変速機3は、発進クラッチと、プライマリプーリ及びセカンダリプーリと、これらプーリに掛け渡されたベルトから構成され、プーリ溝幅を油圧制御によって変更することで所望の変速比を達成する。また、ベルト式無段変速機3内には、エンジン1によって駆動されるオイルポンプ30が設けられ、エンジン作動時には、このオイルポンプ30を油圧源としてトルクコンバータ2のコンバータ圧やロックアップクラッチ圧を供給し、また、ベルト式無段変速機3のプーリ圧やクラッチ締結圧を供給する。
更に、ベルト式無段変速機3には電動オイルポンプ31が設けられており、エンジン自動停止によって上記オイルポンプ30による油圧供給ができない場合には、電動オイルポンプ31が作動し、必要な油圧を各アクチュエータに供給可能に構成されている。よって、エンジン停止時であっても、作動油のリークを補償し、また、クラッチ締結圧を維持することができる。
【0011】
エンジン1は、エンジンコントロールユニット10によって作動状態が制御される。エンジンコントロールユニット10には、運転者のブレーキペダル操作によりオン信号を出力するブレーキスイッチ11からのブレーキ信号と、運転者のアクセルペダル操作量を検出するアクセルペダル開度センサ12からのアクセル信号と、ブレーキペダル操作量に基づいて生じるマスタシリンダ圧を検出するマスタシリンダ圧センサ13からのブレーキ操作量信号(マスタシリンダ圧)と、各輪に備えられた車輪速センサ14からの車輪速(車輪速から車速を検出する場合には車速信号と同義)と、後述するCVTコントロールユニット20からのCVT状態信号と、エンジン水温、クランク角、エンジン回転数等の信号とを入力する。エンジンコントロールユニット10は、上記各種信号に基づいてエンジン1の始動または自動停止を実施する。
尚、マスタシリンダ圧センサ13に代えてブレーキペダルストローク量やブレーキペダル踏力を検出するセンサ、またはホイルシリンダ圧を検出するセンサ等を用い、これによりブレーキペダル操作量(ブレーキ操作量)を検出することで運転者の制動操作意図を検出してもよく、特に限定しない。
【0012】
CVTコントロールユニット20は、エンジンコントロールユニット10との間でエンジン作動状態とCVT状態の信号を送受信し、これら信号に基づいてベルト式無段変速機3の変速比等を制御する。具体的には、走行レンジが選択されているときは、発進クラッチの締結を行うと共に、アクセルペダル開度と車速とに基づいて変速比マップから変速比を決定し、各プーリ圧を制御する。また、車速が所定車速CSVSP1未満のときは、ロックアップクラッチを解放し、所定車速CSVSP1以上のときはロックアップクラッチを締結し、エンジン1とベルト式無段変速機3とを直結状態とする。更に、走行レンジ選択中におけるエンジン自動停止時には、電動オイルポンプ31を作動させ、必要な油圧を確保する。
【0013】
(エンジン自動制御処理)
次に、エンジン自動制御処理について説明する。本実施例1の車両のエンジン自動制御装置(エンジンコントロールユニット10)は、車両停止時に、所定の条件(ブレーキペダルが十分に踏み込まれているといった各種条件)が成立したときは、エンジンアイドリングを停止する所謂アイドリングストップ制御を行う。尚、アイドリングストップ制御については周知の構成を適宜実施すればよいため、詳細な説明は省略する。加えて、車両走行中であっても、減速中であり、減速燃料カット制御を経て、このまま車両停止してアイドリングストップ制御に移行する可能性が高いと判断したときは、エンジン1を停止するコーストストップ制御を行う。
【0014】
すなわち、運転者がアクセルペダルを操作することなく惰性走行している所謂コースト走行状態(ブレーキペダル操作をしている状態を含む)のときには、燃料噴射を停止する。この減速燃料カット制御中は、燃料噴射を停止する一方、駆動輪4から伝達されるコーストトルクによってロックアップクラッチを介してエンジン回転数を維持する。しかし、所定車速CSVSP1まで減速するとロックアップクラッチは解放されるため、燃料噴射しなければエンジン1は停止してしまう。そこで、従来は、ロックアップクラッチが解放されるタイミングで減速燃料カット制御を中止して燃料噴射を再開し、エンジン自立回転を維持すると共に、その後、車両が完全停止した後、エンジンアイドリングを停止するようにしていた。しかし、このように燃料噴射を停止した走行状態から、一旦燃料噴射を再開し、再度エンジン停止を行う上記過程において、燃料噴射再開時の燃料を更に抑制することができれば、燃費を改善することが可能となる。そこで、本実施例1のコーストストップ制御では、所定の条件が成立すると、燃料噴射を再開することなく、エンジン1を停止したままとし(燃料噴射等を行わず)、車両停止後は通常のアイドリングストップ制御にそのまま移行可能とした。
【0015】
コーストストップ制御を行う際の1つの条件は、運転者のブレーキペダル操作量が所定範囲内であることとした。ブレーキペダル操作量を条件の1つとした理由は、コーストストップ制御の開始または終了(中止)は、運転者の制動意図に基づいて行うべきものだからである。すなわち、ブレーキペダル操作量が所定値以上であれば、運転者の制動意図を推認でき、このまま車両停止してアイドリングストップ制御に移行する可能性が高いため、作動中のエンジン1を停止してコーストストップ制御を開始する。コーストストップ制御開始後、ブレーキペダル操作量が減少して上記所定値を下回ると、運転者の非制動意図(走行継続の意図)を推認できるため、停止中のエンジン1を再始動してコーストストップ制御を終了(中止)する。
また、実施例1では、エンジン停止後にエンジン再始動を行う(コーストストップ制御を終了する)ためのブレーキペダル操作量の閾値として、上記所定値(ブレーキペダル操作量の減少側の閾値)のみを設けるのではなく、上記所定値よりも大きな第2の閾値(ブレーキペダル操作量の増加側の閾値)を設けた。すなわち、コーストストップ制御開始後、ブレーキペダル操作量が増加して第2の閾値以上になると、エンジン1を再始動する。このように、コーストストップ制御を開始・終了する条件としてのブレーキペダル操作量の閾値を、ブレーキペダル操作量の減少側と増加側とで別々に設け、ブレーキペダル操作量が上記2つの閾値に挟まれる所定範囲内(第2の閾値=上限値と上記所定値=下限値との間)であるときにコーストストップ制御を行うこととした。
【0016】
第2の閾値(上限値)を設けたのは以下の諸理由による。
(1) エンジン1の回転により発生する負圧を利用してブレーキペダルの操作力を倍力するブレーキマスターバックを備える車両においては、コーストストップ制御中にブレーキペダル操作量が増大した場合、エンジン停止を継続すると、エンジン回転による負圧を利用できないため、運転者が意図する制動力を十分に得られないおそれがある。
(2)ブレーキペダルを強く踏んでいるときは、急減速しているときであり、車両停止に至るまでの時間が短いと考えられる。このとき、車両が停止するまでの間(すなわち駆動輪4が回転しており、変速機が変速可能な間)に変速機(ベルト式無段変速機3)の変速比を発進時の低速段(最Low側)まで変速する必要がある。エンジン1により駆動されるオイルポンプ30の吐出圧を利用して変速を行う変速機を備えた車両においては、上記のように車両が停止するまでの間に素早く変速するために、オイルポンプ30の吐出量を確保する必要がある。特に、ベルト式無段変速機3の変速には比較的高いプーリ圧の供給を要する。したがって、オイルポンプ30の駆動源であるエンジン1の停止は好ましくない。尚、電動オイルポンプ31が供給する油圧により変速を行うことも考えられるが、変速を素早く行うためには電動オイルポンプ31を大型化する必要があり、好ましくない。
(3)急減速時には車両挙動を安定化するための各種の制御が介入することも考えられる。例えば、車輪ロックを回避するためのABS制御では、車輪に作用するブレーキ液圧を増減するにあたり、エンジン1側からのトルク入力も加味した上で種々のゲイン等が制御ロジックに設定される。また、スリップ量が多い場合には、エンジントルクを抑制するトラクションコントロールシステム等が作動するおそれもある。よって、不用意にエンジン停止を行うと、これら制御への影響も懸念される。
よって、上記諸事情(全てに限らず一部でもよい)を考慮したエンジン停止判定閾値(コーストストップ制御を許可するブレーキペダル操作量の上限値BRKIN)が設定され、ブレーキペダル操作量が上記閾値(上限値BRKIN)を下回るとエンジン1を停止し、ブレーキペダル操作量が上記閾値(上限値BRKIN)以上になるとエンジン1を再始動する。
【0017】
減少側の閾値(上記所定値=下限値)についてみると、ブレーキペダルを緩やかに踏み込んでいる緩減速時には、そのまま車両停止する場合と、再度ブレーキペダルを解放し、再発進する場合とが考えられる。例えば、渋滞を走行しているときに、ブレーキペダルを緩やかに操作して走行状態を継続することなどが考えられる。この場合、不用意にエンジン1を停止すると、エンジン1が発生するクリープトルクを利用することができず、またエンジン停止と再始動とが繰り返され、運転者に違和感を与えるおそれがある。
また、エンジン停止後、ブレーキペダルが緩やかに踏まれた状態でエンジン再始動すると、エンジントルクが駆動輪4に出力されることで飛び出し感を与えるおそれもある。一方、上り勾配では、エンジン再始動するブレーキペダル操作量の閾値が低すぎると、ブレーキペダルによる制動力が小さくなってからエンジン再始動するため、車両が若干後退するおそれがある。
更に、停車に向けた減速走行中、運転者のブレーキペダル操作量は変動し、車速が低くなるほどブレーキペダル操作量は小さくなりがちである。例えば、赤信号で止まろうとするとき等、ゆっくり停車したい場合には、低車速になるほど減速に必要なブレーキ液圧は小さくなるため、運転者はブレーキペダルを緩め勝手にする。ここで、ブレーキペダル操作量の減少に応じて不用意にエンジン1を再始動すると、運転者の停車意図に反してエンジン1を再始動することとなり、燃費を十分に向上することができないおそれがある。
よって、上記諸事情を考慮したエンジン始動判定閾値(コーストストップ制御を許可するブレーキペダル操作量の下限値BRKOUT)が設定され、ブレーキペダル操作量が上記閾値(下限値BRKOUT)以上になるとエンジン1を停止し、ブレーキペダル操作量が上記閾値(下限値BRKOUT)を下回るとエンジン1を再始動する。
尚、エンジン停止と再始動の切換えが頻繁に行われることを抑制するため、上記上限値BRKINと下限値BRKOUTにそれぞれヒステリシスを設けることとしてもよい。
【0018】
〔エンジン自動停止再始動制御処理〕
図2は、実施例1のエンジンコントロールユニット10にて実行されるエンジン自動停止再始動制御処理を表すフローチャートである。この処理は、走行中、所定周期毎に繰り返し実行される。車両が走行中であるか否かは、例えば、車速VSPが車両停止状態を表す所定値VSP0以下か否かにより判断する。所定値VSP0はゼロでもよいし、1〜2km/h程度の極低車速領域であってもよく、ほぼ車両停止と判断できる値であればよい。尚、本フローチャートに現れない他の条件等を適宜追加設定してもよい。
ステップS101では、エンジン自動停止再始動制御の許可条件を満たすか否か、具体的には、コースト走行状態(アクセルペダル操作量がゼロ)であり、かつブレーキペダルが操作されているか否かを判断する。アクセルペダル操作量がゼロであり、かつブレーキペダルが操作されているときはステップS102へ進み、それ以外のときはステップS112へ進んでエンジン作動状態を継続する。
【0019】
ステップS102では、車速VSP、ブレーキペダル操作量(マスタシリンダ圧)BRKP、アイドリングストップ制御を許可するブレーキペダル操作量BRKPの上限値(アイドリングストップ許可上限値)と下限値(アイドリングストップ許可下限値)、及びコーストストップ制御を許可するブレーキペダル操作量BRKPの上限値(コーストストップ許可上限値BRKIN)と下限値(コーストストップ許可下限値BRKOUT)の読み込みを行い、ステップS103へ進む。
車速VSPは、車輪速センサ14により検出された各車輪速の平均値でもよいし、従動輪車輪速の平均値でもよく、特に限定しない。
アイドリングストップ許可上限値は、システム内に予め設定した値であり、実施例1では固定値とする。
コーストストップ許可上限値BRKINは、システム内に予め設定した値であり、実施例1では固定値BRKINHに設定する。
コーストストップ許可下限値BRKOUTは、車速VSPが低いほど小さく設定する。実施例1では、コーストストップ許可下限値BRKOUTは、車速VSPが高い(CSVSP2≦VSP<CSVSP1)ときに用いる高車速帯コーストストップ許可下限値BRKOUTHと、車速VSPが低い(VSP0<VSP<CSVSP2)ときに用いる低車速帯コーストストップ許可下限値BRKOUTLを有し、低車速帯コーストストップ許可下限値BRKOUTLを高車速帯コーストストップ許可下限値BRKOUTHよりも小さい値に設定する(BRKOUTL<BRKOUTH<BRKINH)。
アイドリングストップ許可下限値はコーストストップ許可下限値BRKOUT(例えばBRKOUTL)よりも大きな値に設定する。これは、アイドリングストップが行われる状態は車両停止状態であり、この状態でエンジン始動をすると、クリープトルクが出力されるが、ブレーキによる制動力が低い状態では、このクリープトルクによって不用意に車両が移動するおそれがあるからである。また、コーストストップが行われる状態は車両減速中(すなわち走行中)であり、この状態では極力エンジン停止を行うことで燃費を改善することが狙いであり、仮に車両停止前にエンジン1が再始動したとしても、走行中であればクリープトルクによる飛び出し感を運転者が感じにくいことによる。
【0020】
ステップS103では、車速VSPがコーストストップ制御を許可する上限値CSVSP1を下回るか否かを判断する。上限値CSVSP1を下回るときはステップS104へ進み、それ以外のときはステップS112へ進んでエンジン作動状態を継続する。
【0021】
ステップS104では、ブレーキペダル操作量BRKPがコーストストップ許可上限値BRKINHを下回るか否かを判断する。上限値BRKINHを下回るときはステップS105へ進み、それ以外のときはステップS112へ進んでエンジン作動状態を継続する。
【0022】
ステップS105では、車速VSPが、コーストストップ許可上限値CSVSP1よりも小さく設定された所定値CSVSP2を下回るか否かを判断する。車速VSPが所定値CSVSP2を下回るときは低車速であると判断してステップS106へ進み、それ以外のときは高車速であると判断してステップS107へ進む。すなわち、所定値CSVSP2は、高車速であるか低車速であるかを判断して、高車速帯コーストストップ許可下限値BRKOUTHと低車速帯コーストストップ許可下限値BRKOUTLとを切替えるための車速の閾値である。
【0023】
ステップS106では、ブレーキペダル操作量BRKPが低車速帯コーストストップ許可下限値BRKOUTLを下回るか否かを判断する。低車速帯コーストストップ許可下限値BRKOUTLを下回るときはステップS109へ進んでエンジン再始動を行い、それ以外のときはステップS108へ進んでエンジン停止を行う。
【0024】
ステップS107では、ブレーキペダル操作量BRKPが高車速帯コーストストップ許可下限値BRKOUTHを下回るか否かを判断する。高車速帯コーストストップ許可下限値BRKOUTHを下回るときはステップS111へ進んでエンジン再始動を行い、それ以外のときはステップS110へ進んでエンジン停止を行う。
【0025】
〔作用〕
次に、上記制御処理に基づく作用について、比較例を用いて説明する。図3は実施例1のコースト走行時におけるコーストストップ許可下限値BRKOUTの設定処理の作用を表すタイムチャートである。このタイムチャートの最初の時刻における走行状態(前提条件)は、走行中に運転者がアクセルペダルから足を放したコースト走行状態であるものとする。
【0026】
(コーストストップ許可下限値BRKOUTを車速に応じて変化させた場合:実施例1)
まず、実施例1の作用を説明する。
時刻t11以前、運転者がブレーキペダルを踏み込んでおり、エンジン自動停止再始動制御の許可条件を満たすが、車速VSPがコーストストップ許可上限値CSVSP1以上である。よって、図2の制御処理でステップS101→S102→S103→S112へ進む流れとなり、コーストストップ制御を行わない。エンジン1は作動状態を継続する。運転者のブレーキペダル操作量BRKP(図3の実線)は徐々に減少する。
時刻t11において、車速VSPがコーストストップ許可上限値CSVSP1を下回る(CSVSP2<VSP<CSVSP1)。また、ブレーキペダル操作量BRKPが、コーストストップ許可上限値BRKINH(図3の二点鎖線)を下回る(BRKOUTH≦BRKP<BRKINH)。よって、ステップS101→S102→S103→S104→S105→S107→S110へ進む流れとなり、エンジン1(燃料噴射)を停止する。このようにコーストストップを開始する時刻t11後、エンジン回転数はゼロに向けて急速に減少する。
時刻t12において、エンジン回転数はほぼゼロとなる。
時刻t13において、車速VSPが所定値CSVSP2を下回る(VSP0<VSP<CSVSP2)。よって、ステップS101→S102→S103→S104→S105→S106へ進む流れとなり、コーストストップ許可下限値BRKOUT(図3の一点鎖線)が高車速帯コーストストップ許可下限値BRKOUTHから低車速帯コーストストップ許可下限値BRKOUTLへ切り替わる。ブレーキペダル操作量BRKPが低車速帯コーストストップ許可下限値BRKOUTL以上である(BRKOUTL≦BRKP<BRKOUTH)ため、ステップS106→S108へ進む流れとなり、エンジン停止を継続する。
時刻t14〜t15において、運転者がブレーキペダルの踏み込みをステップ状に緩める(ブレーキペダル操作量BRKPが急速に小さくなる)。これに伴い、時刻t14〜t15以後、車速VSPの低下勾配(時間当たりの低下量)が減少する。
時刻t15以後、ブレーキペダル操作量BRKPの減少勾配が再び小さくなる。ブレーキペダル操作量BRKPが依然として低車速帯コーストストップ許可下限値BRKOUTL以上である(BRKOUTL≦BRKP<BRKOUTH)ため、ステップS106→S108へ進む流れとなり、エンジン停止を継続する。
【0027】
(コーストストップ許可下限値BRKOUTを車速に関わらず固定値とした場合:比較例)
次に、コーストストップ許可下限値BRKOUTを車速VSPに応じて変化させずに固定値(例えばBRKOUTH)とした比較例の作用を説明する。
時刻t13までは本実施例1と同様である。
時刻t13において、車速VSPが所定値CSVSP2を下回る(VSP0<VSP<CSVSP2)。しかし、コーストストップ許可下限値BRKOUTは、時刻t13後も、時刻t13までと同様、高車速帯コーストストップ許可下限値BRKOUTHに設定される(図3の破線)。
時刻t16において、ブレーキペダル操作量BRKPが高車速帯コーストストップ許可下限値BRKOUTHを下回るため、エンジン1を再始動する。図3の破線に示すように、時刻t16後、エンジン回転数は上昇する。よって、比較例では、運転者が停車を意図しており、コーストストップ制御の実行により燃料噴射を停止することが可能であるにも関わらず、エンジン1を再始動することとなるため、燃費の向上を十分に図ることができない。
【0028】
これに対し、実施例1では、上記のように、車速VSPが低いほどコーストストップ許可下限値BRKOUTを小さく設定する(ステップS103〜S107)。よって、車速VSPに応じてブレーキ操作量が変化しても、運転者の意図に応じたより適切なタイミングでエンジン1を再始動することができるため、燃費をより向上することができる。
【0029】
以上説明したように、実施例1にあっては下記の効果を得ることができる。
(1)運転者のブレーキ操作量(マスタシリンダ圧)を検出するブレーキ操作量検出手段(マスタシリンダ圧センサ13)と、コースト走行中、検出されたブレーキ操作量に基づきエンジン1を停止し、エンジン停止後に、検出されたブレーキ操作量が第1の閾値(コーストストップ許可下限値BRKOUT)を下回るとエンジン1を再始動するエンジン停止再始動手段(エンジンコントロールユニット10) と、車速VSPが低いほど第1の閾値を小さく設定する第1の閾値設定手段(ステップS103〜S107)と、を設けた。
よって、車速VSPに応じてブレーキ操作量が変化しても、運転者の意図に応じたより適切なタイミングでエンジン1を再始動することができるため、燃費をより向上することができる。
【0030】
(2)エンジン停止再始動手段(エンジンコントロールユニット10)は、コースト走行中、エンジン停止後に、検出されたブレーキ操作量(マスタシリンダ圧)が第2の閾値(コーストストップ許可上限値BRKIN)以上になるとエンジン1を再始動する。
よって、コーストストップ制御(エンジン停止)中にブレーキペダル操作量が増大した場合、エンジン1を再始動することで、車両の制動性能等を向上し、制動を円滑化することができる。
【0031】
[実施例2]
次に、実施例2について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。図4は、実施例2のエンジンコントロールユニット10にて実行されるエンジン自動停止再始動制御処理を表すフローチャートである。
実施例2では、コーストストップ許可下限値BRKOUTと同様に、コーストストップ許可上限値BRKINを、車速VSPが低いほど小さく設定する。コーストストップ許可上限値BRKINは、車速VSPが高い(CSVSP2≦VSP<CSVSP1)ときに用いられる高車速帯コーストストップ許可上限値BRKINHと、車速VSPが低い(VSP0<VSP<CSVSP2)ときに用いられる低車速帯コーストストップ許可上限値BRKINLを有し、低車速帯コーストストップ許可上限値BRKINLを高車速帯コーストストップ許可上限値BRKINHよりも小さい値に設定する(BRKOUTH<BRKINL<BRKINH)。
【0032】
ステップS201〜S205は、図2のステップS101〜S105と同様である。ステップS204では、ブレーキペダル操作量BRKPが高車速帯コーストストップ許可上限値BRKINHを下回るか否かを判断する。
ステップS206では、ブレーキペダル操作量BRKPが低車速帯コーストストップ許可上限値BRKINLを下回るか否かを判断する。上限値BRKINLを下回るときはステップS208へ進み、それ以外のときはステップS210へ進んでエンジン再始動を行う。ステップS208は、図2のステップS106と同様である。
ステップS207、S209〜S213は、それぞれ図2のステップS107、S108〜S112と同様である。
【0033】
〔作用〕
次に、上記制御処理に基づく作用について、比較例を用いて説明する。図5は、実施例2のコースト走行時におけるコーストストップ許可上限値BRKIN及び下限値BRKOUTの設定処理の作用を表す、実施例1(図3)と同様のタイムチャートである。
【0034】
(コーストストップ許可上限値BRKINを車速に応じて変化させた場合:実施例2)
時刻t23までは、図3の実施例1の時刻t13までと同様である。
時刻t23において、車速VSPが所定値CSVSP2を下回る(VSP0<VSP<CSVSP2)。よって、図4の制御処理でステップS201→S202→S203→S204→S205→S206へ進む流れとなり、コーストストップ許可下限値BRKOUTが低車速帯コーストストップ許可下限値BRKOUTLへ切り替わると共に、コーストストップ許可上限値BRKINが高車速帯コーストストップ許可上限値BRKINHから低車速帯コーストストップ許可上限値BRKINLへ切り替わる。ブレーキペダル操作量BRKPが低車速帯コーストストップ許可上限値BRKINLより小さく、低車速帯コーストストップ許可下限値BRKOUTL以上である(BRKOUTL≦BRKP<BRKINL)ため、ステップS206→S208→S209へ進む流れとなり、エンジン停止を継続する。
時刻t23から時刻t26の直前までは、図3の実施例1の時刻t13〜t16と同様である。
時刻t26で、運転者がブレーキペダルを急速に踏み込む。時刻t26後、ブレーキペダル操作量BRKPが増大する。
時刻t27で、ブレーキペダル操作量BRKPが低車速帯コーストストップ許可上限値BRKINL以上となる(BRKINL≦BRKP<BRKINH)。よって、ステップS201→S202→S203→S204→S205→S206→S210へ進む流れとなり、エンジン再始動を行うため、時刻t27以降、エンジン回転数が上昇する。また、エンジン回転数の上昇に伴い、エンジン負圧が発生してブレーキマスターバックを利用した制動力が発生するため、車速VSPはより大きな勾配で減少して車両が急減速する。また、時刻t11〜t17でのエンジン停止中、オルタネータ1bが駆動されないことにより中断されていた電力供給、例えば車載バッテリ1cの充電が再開する。また、エンジン回転数の上昇に伴い、オイルポンプ30の吐出量が確保されてベルト式無段変速機3の変速制御性が向上するため、素早く変速可能となる。
時刻t29で、車速VSPはほぼゼロないしVSP0となり、車両が停止する。時刻t29までの間に、ベルト式無段変速機3の変速比は最Low側まで変速される。
【0035】
(コーストストップ許可上限値BRKINを車速に関わらず固定値とした場合:比較例)
次に、コーストストップ許可上限値BRKINを車速VSPに応じて変化させずに固定値(例えばBRKINH)とした比較例の作用を説明する。
時刻t23までは実施例2と同様である。
時刻t23において、車速VSPが所定値CSVSP2を下回る(VSP0<VSP<CSVSP2)。しかし、コーストストップ許可上限値BRKINは、時刻t23後も、時刻t23までと同様、高車速帯コーストストップ許可上限値BRKINHに設定される(図5の破線)。
時刻t26後、ブレーキペダル操作量BRKPが増大する。コーストストップ許可上限値BRKINが高車速帯コーストストップ許可上限値BRKINHに設定されているため、時刻t27(実施例2のエンジン再始動時刻)よりも遅い時刻t28で、ブレーキペダル操作量BRKPは高車速帯コーストストップ許可上限値BRKINH以上となり、エンジン1を再始動する。図5の破線に示すように、時刻t28後、エンジン回転数は上昇する。
【0036】
このように、比較例では、エンジン回転数の上昇開始が時刻t27よりも遅れるため、エンジン負圧発生の確保(ブレーキマスターバックによる倍力)が遅れ、車速VSPは時刻t28後に急減少を開始する。また、オイルポンプ30の吐出量の確保が遅れるため、ベルト式無段変速機3の変速制御性を十分に確保できず、車両停止までの間に、ベルト式無段変速機3の変速比を最Low側まで変速できないおそれがある。これは、コーストストップ許可下限値BRKOUTを車速VSPに応じて下げた場合に、より低車速の時点で、すなわち車両停止までの時間が短い時点でエンジン1を再始動することとなるため、特に問題となりうる。
【0037】
これに対し、実施例2では、上記のように、車速VSPが低いほどコーストストップ許可上限値BRKINを小さく設定する(ステップS203〜S206)。よって、車速VSPが低いときにブレーキ操作量が増大しても、より速やかにエンジン1を再始動することができるため、エンジン1の負圧発生を速やかに確保し、ブレーキマスターバックを利用して車両の制動性能を向上することができる。
また、ベルト式無段変速機3の変速制御性を向上することができる。実施例1のようにコーストストップ許可下限値BRKOUTを車速VSPに応じて下げた場合、より低車速の時点で、すなわち車両停止までの時間が短い時点でエンジン1を再始動することとなるため、変速制御性の向上は特に効果的である。尚、変速機として例えば有段変速機を用いてもよく、エンジン1により駆動されるポンプ(オイルポンプ30)の吐出圧を利用して変速を行う変速機であれば上記作用効果を得ることができる。実施例1では、変速のために比較的高い吐出圧(プーリ圧)の供給を要するベルト式無段変速機3を用いるため、変速制御性の向上にとって特に効果的である。
また、急減速時に車両挙動安定化のための各種制御が介入しても、エンジン1を早めに作動することで、これら制御への影響を抑制することができる。
さらに、オルタネータ1bを早期に駆動することで、車載バッテリ1c等への電力の供給を増大することができる。
【0038】
以上説明したように、実施例2にあっては、上記(1)(2)に加え、下記に示す効果を得ることができる。
(3)車速VSPが低いほど第2の閾値(コーストストップ許可上限値BRKIN)を小さく設定する第2の閾値設定手段(ステップS203〜S206)を設けた。
よって、車速VSPが低いときにブレーキ操作量が増大しても、より速やかにエンジン1を再始動することができるため、車両制動をより円滑化することができる。
【0039】
[実施例3]
次に、実施例3について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。図6は、実施例3のエンジンコントロールユニット10にて実行されるエンジン自動停止再始動制御処理を表すフローチャートである。
実施例3では、実施例2と同様に、コーストストップ許可上限値BRKIN及びコーストストップ許可下限値BRKOUTを、車速VSPが低いほど小さく設定する。エンジンコントロールユニット10は、コーストストップ許可上限値BRKINと車速VSPとの関係を示すマップ1、及び、コーストストップ許可下限値BRKOUTと車速VSPとの関係を示すマップ2を有する。
【0040】
マップ1は、図6のステップS303に示すように、車速VSPが高い側から低い側へ変化するのに応じてコーストストップ許可上限値BRKINが段階的に(ステップ状に)減少するように境界線が引かれ、この境界線によりコーストストップ許可(OK)領域とコーストストップ禁止(NG)領域が区分される。そのときの運転状態(車速VSP及びブレーキペダル操作量BRKP)がどちらの領域に属するかにより、コーストストップ(エンジン停止)の許否を判断する。
マップ2もマップ1と同様の形状であり、車速VSPが高い側から低い側へ変化するのに応じてコーストストップ許可下限値BRKOUTが段階的に(ステップ状に)減少するように境界線が引かれ、この境界線によりコーストストップ許可(OK)領域とコーストストップ禁止(NG)領域が区分される。
【0041】
ステップS301では、エンジン自動停止再始動制御の許可条件を満たすか否か、具体的には、コースト走行状態であり、かつブレーキペダルが操作されている等の条件を満たすか否かを判断する。許可条件を満たすときはステップS302へ進み、それ以外のときはステップS307へ進んでエンジン作動状態を継続する。
ステップS302では、車速VSP、ブレーキペダル操作量(マスタシリンダ圧)BRKP、アイドリングストップ制御を許可するブレーキペダル操作量BRKPの上限値・下限値、及びマップ1,2の読み込みを行い、ステップS303へ進む。
ステップS303では、そのときの運転状態(車速VSP及びブレーキペダル操作量BRKP)がマップ1のコーストストップ許可領域とコーストストップ禁止領域のどちらに属するかを判断する。コーストストップ許可領域に属すると判断したときはステップS304 へ進み、コーストストップ禁止領域に属すると判断したときはステップS307へ進んでエンジン作動状態を継続する。
ステップS304では、そのときの運転状態(車速VSP及びブレーキペダル操作量BRKP)がマップ2のコーストストップ許可領域とコーストストップ禁止領域のどちらに属するかを判断する。コーストストップ許可領域に属すると判断したときはステップS305へ進んでエンジン停止を行い、コーストストップ禁止領域に属すると判断したときはステップS306へ進んでエンジン再始動を行う。
【0042】
〔作用〕
次に、上記制御処理に基づく作用について説明する。図7は実施例3のコースト走行時におけるコーストストップ許可上限値BRKIN及び下限値BRKOUTの設定処理の作用を表す、実施例1(図3)と同様のタイムチャートである。
【0043】
時刻t31以前、運転者がブレーキペダルを踏み込んでいるが、エンジン自動停止再始動制御の許可条件を満たさないため、図6の制御処理でステップS301→S307へ進む流れとなり、エンジン1の作動を継続する。運転者のブレーキペダル操作量BRKPは徐々に減少する。
時刻t31において、エンジン自動停止再始動制御の許可条件が満たされる。また、運転状態(車速VSP及びブレーキペダル操作量BRKP)がマップ1におけるコーストストップ許可領域及びマップ2におけるコーストストップ許可領域に属する。よって、ステップS301→S302→S303→S304→S305へ進む流れとなり、エンジン1(燃料噴射)を停止する。コーストストップを開始する時刻t31後、エンジン回転数はゼロに向けて急速に減少する。
時刻t32において、車速VSPの低下に応じて、マップ1におけるコーストストップ許可上限値BRKIN及びマップ2における下限値BRKOUTがそれぞれ段階的に(ステップ状に)減少する。
時刻t33において、エンジン回転数はほぼゼロとなる。
時刻t34〜t35において、運転者がブレーキペダルの踏み込みをステップ状に緩める。これに伴い、時刻t34〜t35以後、車速VSPの低下勾配(時間当たりの低下量)が減少する。
時刻t36及び時刻t37において、車速VSPの低下に応じて、マップ1,2におけるコーストストップ許可上限値BRKIN及び下限値BRKOUTがそれぞれ段階的に(ステップ状に)減少する。
時刻t31以後、運転者のブレーキペダル操作量BRKPは減少する。並行して、車速VSPの低下に応じて、マップ2におけるコーストストップ許可下限値BRKOUTが減少するため、ブレーキペダル操作量BRKPがコーストストップ許可下限値BRKOUTを下回ることが抑制される。言換えると、運転状態(車速VSP及びブレーキペダル操作量BRKP)がマップ2におけるコーストストップ許可領域にとどまる。よって、ステップS301→S302→S303→S304→S305へ進む流れとなり、エンジン停止を継続する。
また、時刻t31以後、車速VSPの低下に応じて、マップ1におけるコーストストップ許可上限値BRKINが減少するため、仮に、運転者がブレーキペダルを踏み込むと、その後、ブレーキペダル操作量BRKPが比較的早くコーストストップ許可上限値BRKIN以上となりやすい。言換えると、運転状態(車速VSP及びブレーキペダル操作量BRKP)がマップ1におけるコーストストップ許可領域から禁止領域へ移行しやすい。よって、エンジン再始動がより速やかに行われる。
【0044】
実施例3では、車速VSPが低いほど小さくなるよう、コーストストップ許可下限値BRKOUTを複数設定する。具体的には、コーストストップ許可下限値BRKOUTを、実施例1,2(高車速帯コーストストップ許可下限値BRKOUTHと低車速帯コーストストップ許可下限値BRKOUTLの2つ)とは異なり、3以上設定する。このように、コーストストップ許可下限値BRKOUTを車速VSPに合わせてより細かく設定することで、コーストストップ許可下限値BRKOUTが急激に変化することを抑制し、より適切なタイミングでエンジン1を再始動することができる。したがって、燃費をより向上することができる。
また、コーストストップ許可下限値BRKOUTをマップ2に基づき設定する。よって、コーストストップ許可下限値BRKOUTの設定自由度を向上することができると共に、例えば計算式に基づきコーストストップ許可下限値BRKOUTを設定する場合に比べ、エンジンコントロールユニット10の演算負荷を軽減することができる。
【0045】
また、車速VSPが低いほど小さくなるよう、コーストストップ許可上限値BRKINを複数設定する。具体的には、コーストストップ許可上限値BRKINを、実施例2(高車速帯コーストストップ許可上限値BRKINHと低車速帯コーストストップ許可上限値BRKINLの2つ)とは異なり、3以上設定する。このように、コーストストップ許可上限値BRKINを車速VSPに合わせてより細かく設定することで、コーストストップ許可上限値BRKINが急激に変化することを抑制し、より適切なタイミングでエンジン1を再始動することができる。したがって、車両の制動性能とベルト式無段変速機3の変速制御性をより向上することができる。また、マップ1に基づきコーストストップ許可上限値BRKINを設定することで、エンジンコントロールユニット10の演算負荷を軽減しつつ、コーストストップ許可上限値BRKINの設定自由度を向上することができる。
【0046】
以上説明したように、実施例3にあっては、上記(1)〜(3)に加え、下記に示す効果を得ることができる。
(4)第1の閾値設定手段(ステップS304)は、車速VSPが低いほど小さくなるよう、第1の閾値(コーストストップ許可下限値BRKOUT)を複数設定する。
よって、より適切なタイミングでエンジン1を再始動することができるため、燃費をより向上することができる。
【0047】
(5)第1の閾値設定手段(ステップS304)は、第1の閾値(コーストストップ許可下限値BRKOUT)を所定のマップ(マップ2)に基づき設定する。
よって、第1の閾値(コーストストップ許可下限値BRKOUT)の設定自由度を向上することができる。
【0048】
(6)第2の閾値設定手段(ステップS303)は、車速VSPが低いほど小さくなるよう、第2の閾値(コーストストップ許可上限値BRKIN)を複数設定する。
よって、より適切なタイミングでエンジン1を再始動することができるため、車両制動をより円滑化することができる。
【0049】
(7)第2の閾値設定手段(ステップS303)は、第2の閾値(コーストストップ許可上限値BRKIN)を所定のマップ(マップ1)に基づき設定する。
よって、第2の閾値(コーストストップ許可上限値BRKIN)の設定自由度を向上することができる。
【0050】
[実施例4]
次に、実施例4について説明する。基本的な構成は実施例3と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。図8は、実施例4のエンジンコントロールユニット10にて実行されるエンジン自動停止再始動制御処理を表すフローチャートである。
エンジンコントロールユニット10は、車速VSPが低くなるほどコーストストップ許可上限値BRKINを小さく算出する計算式1と、車速VSPが低くなるほどコーストストップ許可下限値BRKOUTを小さく算出する計算式2とを用いて、車速VSPに基づきコーストストップ許可上限値BRKIN及び下限値BRKOUTを演算する。計算式1,2は、例えば、車速VSPの低下に応じて上限値BRKIN又は下限値BRKOUTが線形的に小さくなる特性とすることができる。
【0051】
ステップS401は、図6のステップS301と同様である。
ステップS402では、車速VSP、ブレーキペダル操作量(マスタシリンダ圧)BRKP、及びアイドリングストップ制御を許可するブレーキペダル操作量BRKPの上限値・下限値の読み込みを行い、ステップS403へ進む。
ステップS403では、読み込んだ車速VSPと計算式1に基づきコーストストップ許可上限値BRKINを算出し、読み込んだブレーキペダル操作量BRKPが上記コーストストップ許可上限値BRKINを下回るか否かを判断する。言換えると、そのときの運転状態(車速VSP及びブレーキペダル操作量BRKP)が、コーストストップ許可上限値BRKINの(計算式1に表される)特性により区分されるコーストストップ許可(OK)領域とコーストストップ禁止(NG)領域のどちらに属するかを判断する。ブレーキペダル操作量BRKPがコーストストップ許可上限値BRKINを下回る(コーストストップ許可領域に属する)と判断したときはステップS404へ進み、ブレーキペダル操作量BRKPがコーストストップ許可上限値BRKIN以上である(コーストストップ禁止領域に属する)と判断したときはステップS407へ進んでエンジン作動状態を継続する。
ステップS404では、読み込んだ車速VSPと計算式2に基づきコーストストップ許可下限値BRKOUTを算出し、読み込んだブレーキペダル操作量BRKPが上記コーストストップ許可下限値BRKOUTを下回るか否かを判断する。言換えると、そのときの運転状態(車速VSP及びブレーキペダル操作量BRKP)が、コーストストップ許可下限値BRKOUTの(計算式2に表される)特性により区分されるコーストストップ許可(OK)領域とコーストストップ禁止(NG)領域のどちらに属するかを判断する。ブレーキペダル操作量BRKPがコーストストップ許可下限値BRKOUTを下回る(コーストストップ禁止領域に属する)と判断したときはステップS406へ進んでエンジン再始動を行い、ブレーキペダル操作量BRKPがコーストストップ許可下限値BRKOUT以上である(コーストストップ許可領域に属する)と判断したときはステップS405へ進んでエンジン停止を行う。
【0052】
〔作用〕
次に、上記制御処理に基づく作用について説明する。図9は実施例4のコースト走行時におけるコーストストップ許可上限値BRKIN及び下限値BRKOUTの設定処理の作用を表す、実施例1(図3)と同様のタイムチャートである。
【0053】
時刻t41以前、運転者がブレーキペダルを踏み込んでいるが、エンジン自動停止再始動制御の許可条件を満たさないため、図8の制御処理でステップS401→S407へ進む流れとなり、エンジン1は作動状態を継続する。運転者のブレーキペダル操作量BRKPは徐々に減少する。
時刻t41において、エンジン自動停止再始動制御の許可条件が満たされる。また、ブレーキペダル操作量BRKPが、車速VSPと計算式1により算出されるコーストストップ許可上限値BRKINを下回り、かつ、車速VSPと計算式2により算出されるコーストストップ許可下限値BRKOUT以上である。よって、ステップS401→S402→S403→S404→S405へ進む流れとなり、エンジン停止を行う。コーストストップを開始する時刻t41後、エンジン回転数はゼロに向けて急速に減少する。
時刻t42において、エンジン回転数はほぼゼロとなる。
時刻t43〜t44において、運転者がブレーキペダルの踏み込みをステップ状に緩める。これに伴い、時刻t43〜t44以後、車速VSPの低下勾配(時間当たりの低下量)が減少する。また、車速VSPに基づき算出されるコーストストップ許可上限値BRKIN及び下限値BRKOUTの低下勾配が減少する。
時刻t41以後、ブレーキペダル操作量BRKPは減少する。並行して、車速VSPの低下に応じて、コーストストップ許可下限値BRKOUTが減少するため、ブレーキペダル操作量BRKPがコーストストップ許可下限値BRKOUTを下回ることが抑制される。言換えると、運転状態(車速VSP及びブレーキペダル操作量BRKP)がコーストストップ許可領域にとどまる。よって、ステップS401→S402→S403→S404→S405へ進む流れとなり、エンジン停止を継続する。
また、時刻t41以後、車速VSPの低下に応じて、コーストストップ許可上限値BRKINが減少するため、仮に、運転者がブレーキペダルを踏み込むと、その後、ブレーキペダル操作量BRKPが比較的早くコーストストップ許可上限値BRKIN以上となりやすい。言換えると、運転状態(車速VSP及びブレーキペダル操作量BRKP)がコーストストップ許可領域から禁止領域へ移行しやすい。よって、エンジン再始動がより速やかに行われる。
【0054】
以上のように、実施例4では、コーストストップ許可上限値BRKIN及びコーストストップ許可下限値BRKOUTをそれぞれ計算式1,2に基づき設定する。よって、例えばマップを用いて上限値BRKIN及び下限値BRKOUTを設定する場合よりも、エンジンコントロールユニット10において記憶するデータ量を縮小することができる。すなわち、上限値BRKIN及び下限値BRKOUTを車速VSPに合わせてより細かく設定しようとすると、マップを用いた場合にはデータ量が増大するが、計算式を用いれば、データ量の増大を抑制することができる。
【0055】
以上説明したように、実施例4にあっては、上記(1)〜(4)(6)に加え、下記に示す効果を得ることができる。
(8)第1の閾値設定手段(ステップS404)は、第1の閾値(コーストストップ許可下限値BRKOUT)を所定の計算式(計算式2)に基づき設定する。
よって、データの記憶量を節減することができる。
【0056】
(9)第2の閾値設定手段(ステップS403)は、第2の閾値(コーストストップ許可上限値BRKIN)を所定の計算式(計算式1)に基づき設定する。
よって、データの記憶量を節減することができる。
【0057】
[他の実施例]
以上、本願発明を実施例1〜4に基づいて説明してきたが、上記実施例に限らず、他の構成であっても本願発明に含まれる。
例えば、実施例1〜4では、ベルト式無段変速機を採用した例を示したが、他の有段式自動変速機や手動変速機等を備えた構成であってもよい。また、トルクコンバータを備えた例を示したが、トルクコンバータを備えていない車両であっても適用できる。これらの場合、コーストストップ制御(エンジン自動停止)を許可する条件のパラメータとして、所定車速CSVSP1ではなく、エンジン自立回転の維持の可否を示す他のパラメータ(車速と変速比の組合せやエンジン回転数)を用いることができる。
また、実施例2,3で、コーストストップ許可上限値BRKINを変化させる閾値となる車速VSPは、コーストストップ許可下限値BRKOUTを変化させる閾値となる車速VSPと同じである必要はなく、両車速VSPを異ならせることとしてもよい。
また、実施例3,4で、車速VSPに応じてコーストストップ許可上限値BRKINを変化させないこととしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 エンジン
1a 始動装置
2 トルクコンバータ
3 ベルト式無段変速機
30 オイルポンプ
4 駆動輪
10 エンジンコントロールユニット
11 ブレーキスイッチ
12 アクセルペダル開度センサ
13 マスタシリンダ圧センサ
14 車輪速センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9