特許第5834855号(P5834855)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5834855
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】車両のエンジン自動制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20151203BHJP
   F02D 17/00 20060101ALI20151203BHJP
   F02N 15/00 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   F02D29/02 341
   F02D29/02 321A
   F02D17/00 Q
   F02N15/00 E
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-266601(P2011-266601)
(22)【出願日】2011年12月6日
(65)【公開番号】特開2013-119774(P2013-119774A)
(43)【公開日】2013年6月17日
【審査請求日】2014年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119644
【弁理士】
【氏名又は名称】綾田 正道
(72)【発明者】
【氏名】森 浩一
(72)【発明者】
【氏名】服部 元之
【審査官】 藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−035175(JP,A)
【文献】 特開2002−221059(JP,A)
【文献】 特開2008−045446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/00 〜 29/02
F02D 17/00
F02N 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者のブレーキ操作量を検出するブレーキ操作量検出手段と、
コースト走行中、検出されたブレーキ操作量が第1の閾値を上回ったときにエンジンを停止し、エンジン停止後、検出されたブレーキ操作量が前記第1の閾値以下となったときにエンジンを再始動するエンジン停止再始動手段と、
減速度が低いほど前記第1の閾値を小さく設定する閾値設定手段と、
を設けたことを特徴とする車両のエンジン自動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両のエンジン自動制御装置において、
前記閾値設定手段は、前記減速度が低いほど前記第1の閾値が小さくなるように前記第1の閾値を複数設定することを特徴とする車両のエンジン自動制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両のエンジン自動制御装置において、
前記閾値設定手段は、前記第1の閾値を所定のマップに基づき設定することを特徴とする車両のエンジン自動制御装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の車両のエンジン自動制御装置において、
前記閾値設定手段は、前記第1の閾値を所定の計算式に基づき設定することを特徴とする車両のエンジン自動制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車両のエンジン自動制御装置において、
前記エンジン停止再始動手段は、コースト走行中、検出されたブレーキ操作量が前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値を下回ったときにエンジンを停止し、検出されたブレーキ操作量が前記第2の閾値以上のときにはエンジンを運転し、
前記閾値設定手段は、前記減速度が高いほど前記第2の閾値を小さく設定することを特徴とする車両のエンジン自動制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両のエンジン制御装置において、
前記閾値設定手段は、前記減速度が高いほど前記第2の閾値が小さくなるように前記第2の閾値を複数設定することを特徴とする車両のエンジン自動制御装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の車両エンジン制御装置において、
前記閾値設定手段は、前記第2の閾値を所定のマップに基づき設定することを特徴とする車両のエンジン自動制御装置。
【請求項8】
請求項5または請求項6に記載の車両のエンジン制御装置において、
前記閾値設定手段は、前記第2の閾値を所定の計算式に基づき設定することを特徴とする車両のエンジン自動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中にエンジンを自動的に停止、再始動するエンジン自動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジン自動制御装置として、特許文献1に記載の技術が開示されている。この装置は、車両走行中であっても、ブレーキ操作量がエンジン停止判定閾値以上となったときはエンジンを停止して燃費の向上を図ると共に、ブレーキ操作量がエンジン始動判定閾値以下となったときはエンジンを再始動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4374805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の装置は、車両が走行状態であると判定される所定車速以上では、減速度に関わらずエンジン(再)始動判定閾値が固定される構成であるため、停車に向けた減速走行中、運転者の意図に反してエンジンが再始動され、燃費を十分に向上することができないおそれがあった。例えば、停車に向けた減速走行中、運転者のブレーキ操作量は変動し、停車直前には減速度を小さくしてスムーズに停車できるようにブレーキ操作量は小さくなりがちである。しかし、減速度に関わりなくエンジン始動判定閾値が設定されていると、ブレーキ操作量が容易にエンジン始動判定閾値以下となってエンジンが再始動するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、燃費をより向上できる車両のエンジン自動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両のエンジン自動制御装置では、減速度が低いほどエンジン始動判定閾値を小さく設定することとした。
【発明の効果】
【0007】
よって、減速度に応じてブレーキ操作量が変化しても、より適切なタイミングでエンジンを再始動することができるため、燃費をより向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の車両のエンジン自動制御装置の構成を表すシステム図である。
図2】実施例1のエンジン自動停止再始動制御処理を表すフローチャートである。
図3】実施例1のコースト走行時におけるコーストストップ許可閾値の設定処理の作用を表すタイムチャートである。
図4】実施例1のコースト走行時におけるコーストストップ許可閾値の設定処理の作用を表すタイムチャートである。
図5】実施例2のエンジン自動停止再始動制御処理を表すフローチャートである。
図6】実施例2のコースト走行時におけるコーストストップ許可閾値の設定処理の作用を表すタイムチャートである。
図7】実施例3のエンジン自動停止再始動制御処理を表すフローチャートである。
図8】実施例3のコースト走行時におけるコーストストップ許可閾値の設定処理の作用を表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施例1〕
[システム構成]
図1は実施例1の車両のエンジン自動制御装置の構成を表すシステム図である。内燃機関であるエンジン1の出力側にはトルクコンバータ2が設けられている。トルクコンバータ2の出力側にはベルト式無段変速機3が接続されている。エンジン1から出力された回転駆動力は、トルクコンバータ2を介してベルト式無段変速機3に入力され、所望の変速比によって変速された後、駆動輪4に伝達される。
【0010】
エンジン1には、エンジン始動を行う始動装置1aと、発電を行うオルタネータ1bとが備えられている。始動装置1aにはスタータモータが備えられている。始動装置1aは、エンジン始動指令に基づき、車載バッテリ1cの供給する電力を用いてスタータモータを駆動し、エンジンクランキングを行う。また、燃料を噴射し、その後、エンジン1が自立回転可能となると、スタータモータを停止する。オルタネータ1bは、エンジン1により回転駆動されることで発電し、発電した電力を車載バッテリ1c等に供給する。
【0011】
トルクコンバータ2は、低車速時にトルク増幅を行うと共に、ロックアップクラッチを有しており、所定車速CSVSP(例えば14km/h程度)以上では、ロックアップクラッチを締結してエンジン1の出力軸とベルト式無段変速機3の入力軸との相対回転を規制する。
【0012】
ベルト式無段変速機3は、発進クラッチと、プライマリプーリ及びセカンダリプーリと、これらプーリに掛け渡されたベルトから構成され、プーリ溝幅を油圧制御によって変更することで所望の変速比を達成する。また、ベルト式無段変速機3内には、エンジン1によって駆動されるオイルポンプ30が設けられ、エンジン作動時には、このオイルポンプ30を油圧源としてトルクコンバータ2のコンバータ圧やロックアップクラッチ圧を供給し、また、ベルト式無段変速機3のプーリ圧やクラッチ締結圧を供給する。
【0013】
さらに、ベルト式無段変速機(CVT)3にはオイルポンプ30とは別に電動オイルポンプ31が設けられており、エンジン自動停止によって上記オイルポンプ30による油圧供給ができない場合には、電動オイルポンプ31が作動し、必要な油圧を各アクチュエータに供給可能に構成されている。よって、エンジン停止時であっても、作動油のリークを補償し、また、クラッチ締結圧を維持することができる。
【0014】
エンジン1は、エンジンコントロールユニット10によって作動状態が制御される。エンジンコントロールユニット10には、運転者のブレーキペダル操作によりオン信号を出力するブレーキスイッチ11からのブレーキ信号と、運転者のアクセルペダル操作量を検出するアクセルペダル開度センサ12からのアクセル信号と、ブレーキ操作量(ブレーキペダル操作量)に基づいて生じるマスタシリンダ圧を検出するマスタシリンダ圧センサ13からのブレーキ操作量信号(マスタシリンダ圧)と、各輪に備えられた車輪速センサ14からの車輪速(車輪速から車速を検出する場合には車速信号と同義)と、後述するCVTコントロールユニット20からのCVT状態信号と、エンジン水温、クランク角、エンジン回転数等の信号とを入力する。エンジンコントロールユニット10は、上記各種信号に基づいてエンジン1の始動または自動停止を実施する。
【0015】
なお、マスタシリンダ圧センサ13に代えてブレーキペダルストローク量やブレーキペダル踏力を検出するセンサ、またはホイルシリンダ圧を検出するセンサ等を用い、これによりブレーキ操作量を検出することで運転者の制動操作意図を検出してもよく、特に限定しない。
【0016】
CVTコントロールユニット20は、エンジンコントロールユニット10との間でエンジン作動状態とCVT状態の信号を送受信し、これら信号に基づいてベルト式無段変速機3の変速比等を制御する。具体的には、走行レンジが選択されているときは、発進クラッチの締結を行うと共に、アクセルペダル開度と車速とに基づいて変速比マップから変速比を決定し、各プーリ圧を制御する。また、車速が所定車速CSVSP未満のときはロックアップクラッチを解放しているが、所定車速CSVSP以上のときはロックアップクラッチを締結してエンジン1とベルト式無段変速機3とを直結状態としている。さらに、走行レンジ選択中におけるエンジン自動停止時には、電動オイルポンプ31を作動させ、必要な油圧を確保する。
【0017】
[エンジン自動停止再始動制御]
次に、エンジン自動停止制御処理について説明する。本実施例1の車両のエンジン自動制御装置(エンジンコントロールユニット10)は、車両停止時に、所定の条件(ブレーキペダルが十分に踏み込まれているといった各種条件)が成立したときは、エンジンアイドリングを停止する所謂アイドリングストップ制御を行う。なお、アイドリングストップ制御については周知の構成を適宜実施すればよいため、詳細な説明は省略する。加えて、車両走行中であっても、減速中であり、減速燃料カット制御を経て、このまま車両停止してアイドリングストップ制御に移行する可能性が高いと判断したときはエンジン1を停止するコーストストップ制御を行う。すなわち、運転者がアクセルペダルを操作することなく惰性走行している所謂コースト走行状態(ブレーキペダル操作をしている状態を含む)のときには、燃料噴射を停止する。
【0018】
減速燃料カット制御中は、燃料噴射を停止する一方、駆動輪4から伝達されるコーストトルクによってロックアップクラッチを介してエンジン回転数を維持する。しかし、所定車速CSVSPまで減速するとロックアップクラッチは解放されるため、燃料噴射しなければエンジン1は停止してしまう。そこで、従来は、ロックアップクラッチが解放されるタイミングで減速燃料カット制御を中止して燃料噴射を再開し、エンジン自立回転を維持すると共に、その後、車両が完全停止した後、エンジンアイドリングを停止するようにしていた。しかし、このように燃料噴射を停止した走行状態から、一旦燃料噴射を再開し、再度エンジン停止を行う上記過程において、燃料噴射再開時の燃料をさらに抑制することができれば、燃費を改善することが可能となる。そこで、本実施例1のコーストストップ制御では、所定の条件が成立すると、燃料噴射を再開することなく、エンジン1を停止したままとし(燃料噴射等を行わず)、車両停止後は通常のアイドリングストップ制御にそのまま移行可能とした。
【0019】
コーストストップ制御を行う際の1つの条件は、運転者のブレーキ操作量が所定範囲内であることとした。ブレーキ操作量を条件の1つとした理由は、コーストストップ制御の開始または終了(中止)は、運転者の制動意図に基づいて行うべきものだからである。
【0020】
すなわち、ブレーキ操作量が下限閾値を上回れば、運転者の制動意図を推認でき、このまま車両停止してアイドリングストップ制御に移行する可能性が高いため、作動中のエンジン1を停止してコーストストップ制御を開始する。コーストストップ制御開始後、ブレーキ操作量が減少して下限閾値以下となると、運転者の非制動意図(走行継続の意図)を推認できるため、停止中のエンジン1を再始動してコーストストップ制御を終了(中止)する。
【0021】
さらに実施例1では、走行中にエンジン停止/再始動を行う(コーストストップ制御を開始/終了する)ためのブレーキ操作量の閾値として、下限閾値のみを設けるのではなく、下限閾値よりも大きな上限閾値を設けた。すなわち、車速が所定車速CSVSP未満であったとしてもブレーキ操作量が上限閾値以上であるときにはコーストストップ制御を中止する。また、エンジン1の停止後、ブレーキ操作量が増加して上限閾値以上になると、停止中のエンジン1を再始動してコーストストップ制御を終了(中止)する。
【0022】
このように、エンジン1を停止・再始動する条件としてのブレーキ操作量の閾値を、ブレーキ操作量の大きい側と小さい側とで別々に設け、ブレーキ操作量が上記2つの閾値に挟まれる所定範囲内(上限閾値と下限閾値との間)であるときにエンジン1の停止を行うこととした。
【0023】
上限閾値を設けたのは以下の諸理由による。
1. エンジン1の回転により発生する負圧を利用してブレーキペダルの操作力を倍力するブレーキマスターバックを備える車両においては、エンジン停止中にブレーキ操作量が増大した場合、エンジン停止を継続すると、エンジン回転による負圧を利用できないため、運転者が意図する制動力を十分に得られないおそれがある。
【0024】
2. ブレーキペダルを強く踏んでいるときは、急減速しているときであり、車両停止に至るまでの時間が短いと考えられる。このとき、車両が停止するまでの間(すなわち駆動輪が回転しており、変速機が変速可能な間)に変速機(ベルト式無段変速機3)の変速比を発進時の低速段(最Low側)まで変速する必要がある。エンジン1により駆動されるオイルポンプ30の吐出圧を利用して変速を行う変速機を備えた車両においては、上記のように車両が停止するまでの間に素早く変速するために、オイルポンプ30の吐出量を確保する必要がある。特に、ベルト式無段変速機3の変速には比較的高いプーリ圧の供給を要する。したがって、オイルポンプ30の駆動源であるエンジン1の停止は好ましくない。なお、電動オイルポンプ31が供給する油圧により変速を行うことも考えられるが、変速を素早く行うためには電動オイルポンプ31を大型化する必要があり、好ましくない。
【0025】
3. 急減速時には車両挙動を安定化するための各種の制御が介入することも考えられる。例えば、車輪ロックを回避するためのABS制御では、車輪に作用するブレーキ液圧を増減するにあたり、エンジン1側からのトルク入力も加味した上で種々のゲイン等が制御ロジックに設定される。また、スリップ量が多い場合には、エンジントルクを抑制するトラクションコントロールシステム等が作動するおそれもある。よって、不用意にエンジン停止を行うと、これら制御への影響も懸念される。
よって、上記諸事情(全てに限らず一部でもよい)を考慮したエンジン停止判定閾値(コーストストップ制御を許可するブレーキ操作量の上限閾値BRKIN)が設定され、ブレーキ操作量が上限閾値BRKINを下回るとエンジン1を停止し、ブレーキ操作量が上限閾値BRKIN以上になるとエンジン1を再始動する。
【0026】
下限閾値についてみると、ブレーキペダルを緩やかに踏み込んでいる緩減速時には、そのまま車両停止する場合と、再度ブレーキペダルを解放し、再発進する場合とが考えられる。例えば、渋滞を走行しているときに、ブレーキペダルを緩やかに操作して走行状態を継続することなどが考えられる。この場合、不用意にエンジン1を停止すると、エンジン1が発生するクリープトルクを利用することができず、またエンジン停止と再始動とが繰り返され、運転者に違和感を与えるおそれがある。
【0027】
また、エンジン停止後、ブレーキペダルが緩やかに踏まれた状態でエンジン再始動すると、エンジントルクが駆動輪に出力されることで飛び出し感を与えるおそれもある。一方、上り勾配では、エンジン再始動するブレーキ操作量の閾値が低すぎると、ブレーキペダルによる制動力が小さくなってからエンジン再始動するため、車両が若干後退するおそれがある。
【0028】
さらに、停車に向けた減速走行中、運転者のブレーキ操作量は変動し、車速が低くなるほどブレーキ操作量は小さくなりがちである。例えば、赤信号で止まろうとするとき等、ゆっくり停車したい場合には、低車速になるほど減速に必要なブレーキ液圧は小さくなるため、運転者はブレーキペダルを緩め勝手にする。ここで、ブレーキ操作量の減少に応じて不用意にエンジン1を再始動すると、運転者の停車意図に反してエンジン1を再始動することとなり、燃費を十分に向上することができないおそれがある。
【0029】
よって、上記諸事情を考慮したエンジン始動判定閾値(コーストストップ制御を許可するブレーキ操作量の下限閾値BRKOUT)が設定され、ブレーキ操作量が下限閾値BRKOUTを上回るとエンジン1を停止し、ブレーキ操作量が下限閾値BRKOUTを下回るとエンジン1を再始動する。
なお、エンジン停止と再始動の切換えが頻繁に行われることを抑制するため、上限閾値BRKINと下限閾値BRKOUTにそれぞれヒステリシスを設けることとしてもよい。
【0030】
[エンジン自動停止再始動制御処理]
図2は、実施例1のエンジンコントロールユニット10にて実行されるエンジン自動停止再始動制御処理を表すフローチャートである。この処理は、走行中、所定周期毎に繰り返し実行される。車両が走行中であるか否かは、例えば、車速VSPが車両停止状態を表す所定値VSP0以下か否かにより判断する。所定値VSP0はゼロでもよいし、1〜2km/h程度の極低車速領域であってもよく、ほぼ車両停止と判断できる値であればよい。なお、本フローチャートに表れない他の条件等を適宜追加設定してもよい。
【0031】
ステップS101では、エンジン自動停止再始動制御の許可条件を満たすか否か、具体的には、コースト走行状態(アクセルペダル操作量がゼロ)であり、かつブレーキペダルが操作されているか否かを判断する。アクセルペダル操作量がゼロであり、かつブレーキペダルが操作されているときはステップS102へ進み、それ以外のときはステップS113へ進んでエンジン運転状態を継続する。
【0032】
ステップS102では、車速VSP、減速度DVSP、ブレーキ操作量(マスタシリンダ圧)BRKP、アイドリングストップ制御を許可するブレーキ操作量BRKPの上限閾値(アイドリングストップ許可上限閾値)と下限閾値(アイドリングストップ許可下限閾値)、及びコーストストップ制御を許可するブレーキ操作量BRKPの上限閾値(コーストストップ許可上限閾値BRKIN)と下限閾値(コーストストップ許可下限閾値BRKOUT)の読み込みを行い、ステップS103へ進む。
【0033】
車速VSPは、車輪速センサ14により検出された各車輪速の平均値でもよいし、従動輪車輪速の平均値でもよく、特に限定しない。
アイドリングストップ許可上限閾値は、システム内に予め設定した値であり、実施例1では固定値とする。
【0034】
コーストストップ許可上限閾値BRKINは、減速度DVSPが高いほど小さく設定する。実施例1では、コーストストップ許可上限閾値BRKINは、減速度DVSPが高い(DVSP > CSDSP)ときに用いる高減速帯コーストストップ許可上限閾値BRKINLと、減速度DVSPが低い(DVSP ≦ CSDSP)ときに用いる低減速帯コーストストップ許可上限閾値BRKINHを有し、高減速帯コーストストップ許可上限閾値BRKINLを低減速帯コーストストップ許可上限閾値BRKINHよりも小さい値に設定する。
【0035】
コーストストップ許可下限閾値BRKOUTは、減速度DVSPが高いほど大きく設定する。実施例1では、コーストストップ許可下限閾値BRKOUTは、減速度DVSPが高い(DVSP > CSDSP)ときに用いる高減速帯コーストストップ許可下限閾値BRKOUTHと、減速度DVSPが低い(DVSP ≦ CSDSP)ときに用いる低減速帯コーストストップ許可下限閾値BRKOUTLを有し、低減速帯コーストストップ許可下限閾値BRKOUTLを高減速帯コーストストップ許可下限閾値BRKOUTHよりも小さい値に設定する。
【0036】
なお、コーストストップ許可上限閾値BRKINはコーストストップ許可下限閾値BRKOUTよりも大きく設定されており、閾値の関係はBRKINH > BRKINL > BRKOUTH > BRKOUTLとなっている。
【0037】
アイドリングストップ許可下限閾値はコーストストップ許可下限閾値BRKOUTよりも大きな値に設定する。これは、アイドリングストップが行われる状態は車両停止状態であり、この状態でエンジン始動をすると、クリープトルクが出力されるが、ブレーキによる制動力が低い状態では、このクリープトルクによって不用意に車両が移動するおそれがあるからである。また、コーストストップが行われる状態は車両減速中(すなわち走行中)であり、この状態では極力エンジン停止を行うことで燃費を改善することが狙いであり、仮に車両停止前にエンジン1が再始動したとしても、走行中であればクリープトルクによる飛び出し感を運転者が感じにくいことによる。
【0038】
ステップS103では、車速VSPがエンジン停止を許可する所定車速CSVSPを下回るか否かを判断する。所定車速CSVSPを下回るときはステップS104へ進み、それ以外のときはステップS113へ進んでエンジン運転状態を継続する。
ステップS104では、減速度が所定減速度CSDVSPを上回るか否かを判断する。所定減速度CSDVSPを上回るときはステップS105へ進み、それ以外のときはステップS109へ進む。
【0039】
ステップS105では、ブレーキ操作量BRKPが高減速帯コーストストップ許可上限閾値BRKINLを下回るか否かを判断する。上限閾値BRKINLを下回るときはステップS106へ進み、それ以外のときはステップS108へ進んでエンジン始動または運転状態を継続する。
【0040】
ステップS106では、ブレーキ操作量BRKPが高減速帯コーストストップ許可下限閾値BRKOUTHを上回るか否かを判断する。下限閾値BRKOUTHを上回るときはステップS107へ進んでエンジン停止を行い、それ以外のときはステップS108へ進んでエンジン始動または運転状態を継続する。
【0041】
ステップS109では、ブレーキ操作量BRKPが低減速帯コーストストップ許可上限閾値BRKINHを下回るか否かを判断する。上限閾値BRKINHを下回るときはステップS110へ進み、それ以外のときはステップS112へ進んでエンジン始動または運転状態を継続する。
【0042】
ステップS110では、ブレーキ操作量BRKPが低減速帯コーストストップ許可下限閾値BRKOUTLを上回るか否かを判断する。下限閾値BRKOUTLを上回るときはステップS111へ進んでエンジン停止を行い、それ以外のときはステップS112へ進んでエンジン始動または運転状態を継続する。
【0043】
[作用]
次に、上記制御処理に基づく作用について比較例を用いて説明する。
(コーストストップ許可上限/下限閾値を減速度に応じて変化させた場合:実施例1)
まず、実施例1の作用を説明する。
図3は実施例1のコースト走行時におけるコーストストップ許可下限閾値BRKOUTおよびコーストストップ許可上限閾値BRKINの設定処理の作用を表すタイムチャートである。図3(a)はブレーキ操作量BRKP、図3(b)は減速度DVSP、図3(c)はエンジン回転数Ne、図3(d)は車速VSPの変化を示す。このタイムチャートの最初の時刻における走行状態(前提条件)は、走行中に運転者がアクセルペダルから足を放したコースト走行状態であるものとする。
【0044】
時刻t11以前、車速VSPが所定車速CSVSP以上である。よって、図2の制御処理でステップS101→S102→S103→S113へ進む流れとなり、エンジン1は運転状態を継続する。また、運転者のブレーキ操作量BRKPは徐々に減少している。
【0045】
時刻t11において、減速度DVSPは所定減速度CSDVSPを上回っているため、コーストストップ許可上限閾値BRKINは高減速帯コーストストップ許可上限閾値BRKINLが選択され、コーストストップ許可下限閾値BRKOUTは高減速帯コーストストップ許可下限閾値BRKOUTHが選択される。このとき、車速VSPが所定車速CSVSP未満となるが、ブレーキ操作量BRKPは高減速帯コーストストップ許可上限閾値BRKINL以上である。よって、図2の制御処理でステップS101→S102→S103→S104→S105→S108へ進む流れとなり、エンジン1は運転状態を継続する。
【0046】
時刻t12において、ブレーキ操作量BRKPは高減速帯コーストストップ許可上限閾値BRKINLを下回るが、高減速帯コーストストップ許可下限閾値BRKOUTH以上である。よって、図2の制御処理でステップS101→S102→S103→S104→S105→S106→S107へ進む流れとなり、エンジン1を停止する。エンジン停止を開始する時刻t12後、エンジン回転数はゼロに向けて急速に減少する。
【0047】
時刻t13において、減速度DVSPは所定減速度CSDVSP以下となるため、コーストストップ許可上限閾値BRKINは低減速帯コーストストップ許可上限閾値BRKINHが選択され、コーストストップ許可下限閾値BRKOUTは低減速帯コーストストップ許可下限閾値BRKOUTLが選択される。この時刻t13以降、ブレーキ操作量BRKPは低減速帯コーストストップ許可上限閾値BRKINHを下回り、低減速帯コーストストップ許可下限閾値BRKOUTL以上である。よって、図2の制御処理でステップS101→S102→S103→S104→S109→S110→S111へ進む流れとなり、エンジン1の停止を継続する。
【0048】
(コーストストップ許可下限閾値を減速度に関わらず固定値とした場合:比較例1)
次に、コーストストップ許可下限閾値BRKOUTを減速度DVSPに応じて変化させずに固定値(例えばBRKOUTH)とした比較例1の作用を説明する。
比較例1においても、時刻t13までの作用は実施例1と同様である。
【0049】
時刻t13において、減速度DVSPが所定減速度CSDVSPを下回る。しかし、コーストストップ許可下限閾値BRKOUTは、時刻t13後も、時刻t13までと同様、高減速帯コーストストップ許可下限閾値BRKOUTHに設定される(図3(a)の一点鎖線)。
時刻t14において、ブレーキ操作量BRKPが高減速帯コーストストップ許可下限閾値BRKOUTHを下回るため、エンジン1を再始動する(図3(d)の一点鎖線)。よって、比較例では、運転者が停車を意図しており、エンジン停止を継続することが可能であるにも関わらずエンジン1を再始動することとなるため、燃費の向上を十分に図ることができない。
【0050】
これに対し実施例1では、上記のように減速度DVSPが低いほどコーストストップ許可下限閾値BRKOUTを小さく設定する。よって、減速度DVSPに応じてブレーキ操作量が変化しても、運転者の意図に応じたより適切なタイミングでエンジン1を再始動することができるため、燃費をより向上することができる。
【0051】
(コーストストップ許可上限閾値を減速度に関わらず固定値とした場合:比較例2)
次に、コーストストップ許可上限閾値BRKINを車速DVSPに応じて変化させずに固定値(例えばBRKINH)とした比較例2の作用を説明する。
【0052】
図4は実施例1のコースト走行時におけるコーストストップ許可下限閾値BRKOUTおよびコーストストップ許可上限閾値BRKINの設定処理の作用を表すタイムチャートである。図4(a)はブレーキ操作量BRKP、図4(b)は減速度DVSP、図4(c)はエンジン回転数Ne、図4(d)は車速VSPの変化を示す。図4で示す実施例1の作用は図3のものと同一であるので説明を省略する。
【0053】
比較低2では、時刻t13までの減速度DVSPが所定減速度CSDVSP以上である範囲であっても、低減速帯コーストストップ許可下限閾値BRKOUTHに設定される(図4(a)の一点鎖線)。
【0054】
時刻t15において、ブレーキ操作量BRKPは低減速帯コーストストップ許可上限閾値BRKINHを下回るため、エンジン1を停止する。エンジン停止を開始する時刻t15後、エンジン回転数はゼロに向けて急速に減少する(図4(c)の一点鎖線)。エンジン1が停止しエンジン回転による負圧が利用できないため、ブレーキペダル反力が増大し、ブレーキ操作量が低下する(図4(a)の一点鎖線)。そのため、減速度DVSPが低下して(図4(c)の一点鎖線)、運転者が意図する制動力を十分に得られない(図4(d)の一点鎖線)。
【0055】
これに対し実施例1では、上記のように減速度DVSPが高いほどコーストストップ許可上限閾値BRKINを小さく設定する。よって、減速度DVSPが高いときはブレーキ操作量がエンジン停止許可範囲に入りにくくして、エンジン1の運転を継続するため制動力を確保することができる。
【0056】
[効果]
以上説明したように、実施例1にあっては下記の効果を得ることができる。
(1)運転者のブレーキ操作量(マスタシリンダ圧)を検出するマスタシリンダ圧センサ13(ブレーキ操作量検出手段)と、コースト走行中、検出されたブレーキ操作量BRKPが下限閾値BRKOUT(第1の閾値)を上回ったときにエンジン1を停止し、エンジン停止後、検出されたブレーキ操作量BRKPが下限閾値BRKOUT以下となったときにエンジン1を再始動し、減速度DVSPが低いほど下限閾値BRKOUTを小さく設定するエンジンコントロールユニット10(エンジン停止再始動手段、閾値設定手段)を設けた。
よって、減速度DVSPに応じてブレーキ操作量BRKPが変化しても、運転者の意図に応じたより適切なタイミングでエンジン1を再始動することができるため、燃費をより向上することができる。
【0057】
(2)エンジンコントロールユニット10は、コースト走行中、検出されたブレーキ操作量BRKPが下限閾値BROUTよりも大きい上限閾値BRKIN(第2の閾値)を下回ったときにエンジン1を停止し、検出されたブレーキ操作量BRKPが上限閾値BRKIN以上のときにはエンジン1を運転し、減速度DVSPが高いほど上限閾値BRKINを小さく設定するようにした。
よって、減速度DVSPが高いときはブレーキ操作量BRKPがエンジン停止許可範囲に入りにくくして、エンジン1の運転を継続するため制動力を確保することができる。
【0058】
〔実施例2〕
次に、実施例2について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。図5は、実施例2のエンジンコントロールユニット10にて実行されるエンジン自動停止再始動制御処理を表すフローチャートである。
実施例2では、コーストストップ許可上限閾値BRKINを減速度DVSPが高いほど小さく設定し、コーストストップ許可下限閾値BRKOUTを減速度DVSPが低いほど小さく設定する。エンジンコントロールユニット10は、コーストストップ許可上限閾値BRKINと減速度DVSPとの関係を示すマップ1、およびコーストストップ許可下限閾値BRKOUTと減速度DVSPとの関係を示すマップ2を有する。
【0059】
マップ1は、図5のステップS204に示すように、減速度DVSPが低い側から高い側へ変化するのに応じてコーストストップ許可上限閾値BRKINが段階的に(ステップ状に)減少するように境界線が引かれている。この境界線よりブレーキ操作量が小さい領域をコーストストップ許可(OK)領域とし、境界線よりブレーキ操作量が大きい領域をコーストストップ禁止(NG)領域として区分している。そのときの運転状態(減速度DVSP及びブレーキ操作量BRKP)がどちらの領域に属するかにより、コーストストップ(エンジン停止)の許否を判断する。
【0060】
マップ2は、図5のステップS205に示すように、減速度DVSPが低い側から高い側へ変化するのに応じてコーストストップ許可下限閾値BRKOUTが段階的に(ステップ状に)増加するように境界線が引かれている。この境界線よりブレーキ操作量が大きい領域をコーストストップ許可(OK)領域とし、境界線よりブレーキ操作量が小さい領域をコーストストップ禁止(NG)領域として区分している。そのときの運転状態(減速度DVSP及びブレーキ操作量BRKP)がどちらの領域に属するかにより、コーストストップ(エンジン停止)の許否を判断する。
【0061】
[エンジン自動停止再始動制御処理]
図5に示す処理は、走行中、所定周期毎に繰り返し実行される。車両が走行中であるか否かは、例えば、車速VSPが車両停止状態を表す所定値VSP0以下か否かにより判断する。所定値VSP0はゼロでもよいし、1〜2km/h程度の極低車速領域であってもよく、ほぼ車両停止と判断できる値であればよい。なお、本フローチャートに表れない他の条件等を適宜追加設定してもよい。
【0062】
ステップS201では、エンジン自動停止再始動制御の許可条件を満たすか否か、具体的には、コースト走行状態であり、かつブレーキペダルが操作されている等の条件を満たすか否かを判断する。許可条件を満たすときはステップS302へ進み、それ以外のときはステップS208へ進んでエンジン運転状態を継続する。
【0063】
ステップS202では、車速VSP、減速度DVSP、ブレーキ操作量(マスタシリンダ圧)BRKP、アイドリングストップ制御を許可するブレーキ操作量BRKPの上限閾値・下限閾値、及びマップ1,2の読み込みを行い、ステップS203へ進む。
【0064】
ステップS203では、車速VSPがエンジン停止を許可する所定車速CSVSPを下回るか否かを判断する。所定車速CSVSPを下回るときはステップS204へ進み、それ以外のときはステップS208へ進んでエンジン運転状態を継続する。
【0065】
ステップS204では、そのときの運転状態(減速度DVSP及びブレーキ操作量BRKP)がマップ1のコーストストップ許可領域とコーストストップ禁止領域のどちらに属するかを判断する。コーストストップ許可領域に属すると判断したときはステップS205へ進み、コーストストップ禁止領域に属すると判断したときはステップS207へ進んでエンジン始動または運転状態を継続する。
【0066】
ステップS205では、そのときの運転状態(減速度DVSP及びブレーキ操作量BRKP)がマップ2のコーストストップ許可領域とコーストストップ禁止領域のどちらに属するかを判断する。コーストストップ許可領域に属すると判断したときはステップS206へ進んでエンジン停止を行い、コーストストップ禁止領域に属すると判断したときはステップS207へ進んでエンジン始動または運転状態を継続する。
【0067】
[作用]
次に、上記制御処理に基づく作用について説明する。図6は実施例2のコースト走行時におけるコーストストップ許可上限閾値BRKIN及び下限閾値BRKOUTの設定処理の作用を表すタイムチャートである。図6(a)はブレーキ操作量BRKP、図6(b)は減速度DVSP、図6(c)はエンジン回転数Ne、図6(d)は車速VSPの変化を示す。
【0068】
時刻t11以前、車速VSPが所定車速CSVSP以上である。よって、図5の制御処理でステップS201→S202→S203→S208へ進む流れとなり、エンジン1は運転状態を継続する。また、運転者のブレーキ操作量BRKPは徐々に減少している。
【0069】
時刻t11において、車速VSPが所定車速CSVSP未満となり、エンジン自動停止再始動制御の許可条件が満たされる。このとき、運転状態(減速度DVSP及びブレーキ操作量BRKP)がマップ1におけるコーストストップ禁止領域に属する。よって、図5の制御処理でステップS201→S202→S203→S204→S207へ進む流れとなり、エンジン1は運転状態を継続する。
【0070】
以降、減速度DVSPの低下に応じて、マップ1におけるコーストストップ許可上限閾値BRKINは段階的に(ステップ状に)増加し、マップ2における下限閾値BRKOUTは段階的に(ステップ状に)減少する。
【0071】
時刻t12において、運転状態(減速度DVSP及びブレーキ操作量BRKP)がマップ1におけるコーストストップ許可領域に属し、またマップ2におけるコーストストップ許可領域に属する。よって、ステップS201→S202→S203→S204→S205→S207へ進む流れとなり、エンジン1(燃料噴射)を停止する。エンジン停止を開始する時刻t12後、エンジン回転数はゼロに向けて急速に減少する。
【0072】
実施例2では、減速度DVSPが低いほど小さくなるよう、コーストストップ許可下限閾値BRKOUTを複数設定する。具体的には、コーストストップ許可下限閾値BRKOUTを、実施例1(高減速帯コーストストップ許可下限閾値BRKOUTHと低減速帯コーストストップ許可下限閾値BRKOUTLの2つ)とは異なり、3以上設定する。このように、コーストストップ許可下限閾値BRKOUTを車速VSPに合わせてより細かく設定することで、コーストストップ許可下限閾値BRKOUTが急激に変化することを抑制し、より適切なタイミングでエンジン1を再始動することができる。したがって、燃費をより向上することができる。
【0073】
また、コーストストップ許可下限閾値BRKOUTをマップ2に基づき設定する。よって、コーストストップ許可下限閾値BRKOUTの設定自由度を向上することができると共に、例えば計算式に基づきコーストストップ許可下限閾値BRKOUTを設定する場合に比べ、エンジンコントロールユニット10の演算負荷を軽減することができる。
【0074】
また、減速度DVSPが低いほど大きくなるよう、コーストストップ許可上限閾値BRKINを複数設定する。具体的には、コーストストップ許可上限閾値BRKINを、実施例1(高減速帯コーストストップ許可上限閾値BRKINLと低減速帯コーストストップ許可上限閾値BRKINHの2つ)とは異なり、3以上設定する。このように、コーストストップ許可上限閾値BRKINを減速度DVSPに合わせてより細かく設定することで、コーストストップ許可上限閾値BRKINが急激に変化することを抑制し、より適切なタイミングでエンジン1を再始動することができる。したがって、車両の制動性能とベルト式無段変速機3の変速制御性をより向上することができる。また、マップ1に基づきコーストストップ許可上限閾値BRKINを設定することで、エンジンコントロールユニット10の演算負荷を軽減しつつ、コーストストップ許可上限閾値BRKINの設定自由度を向上することができる。
【0075】
[効果]
以上説明したように、実施例2にあっては下記の効果を得ることができる。
(3)エンジンコントロールユニット10(は、減速度DVSPが低いほど下限閾値BRKOUTが小さくなるように下限閾値を複数設定するようにした。
よって、より適切なタイミングでエンジン1を再始動することができるため、燃費をより向上することができる。
【0076】
(4)エンジンコントロールユニット10は、下限閾値BRKOUTを所定のマップに基づき設定するようにした。
よって、コーストストップ許可下限閾値BRKOUTの設定自由度を向上することができる。
【0077】
(5)エンジンコントロールユニット10は、減速度DVSPが高いほど上限閾値BRKINが小さくなるように上限閾値BRKINを複数設定するようにした。
よって、より適切なタイミングまでエンジン1の運転を継続するため制動力を確保することができる。
【0078】
(6)エンジンコントロールユニット10は、上限閾値BRKINを所定のマップに基づき設定するようにした。
よって、コーストストップ許可上限閾値BRKINの設定自由度を向上することができる。
【0079】
〔実施例3〕
次に、実施例3について説明する。基本的な構成は実施例1,2と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。図7は、実施例3のエンジンコントロールユニット10にて実行されるエンジン自動停止再始動制御処理を表すフローチャートである。
エンジンコントロールユニット10は、減速度DVSPが低くなるほどコーストストップ許可上限閾値BRKINを大きく算出する計算式1と、減速度DVSPが高くなるほどコーストストップ許可下限閾値BRKOUTを大きく算出する計算式2とを用いて、減速度DVSPに基づきコーストストップ許可上限閾値BRKIN及び下限閾値BRKOUTを演算する。計算式1,2は、例えば、減速度DVSPの変化に応じて上限閾値BRKINまたは下限閾値BRKOUTが線形的に変化する特性とすることができる。
【0080】
[エンジン自動停止再始動制御処理]
図7に示す処理は、走行中、所定周期毎に繰り返し実行される。車両が走行中であるか否かは、例えば、車速VSPが車両停止状態を表す所定値VSP0以下か否かにより判断する。所定値VSP0はゼロでもよいし、1〜2km/h程度の極低車速領域であってもよく、ほぼ車両停止と判断できる値であればよい。なお、本フローチャートに表れない他の条件等を適宜追加設定してもよい。
【0081】
ステップS301では、エンジン自動停止再始動制御の許可条件を満たすか否か、具体的には、コースト走行状態であり、かつブレーキペダルが操作されている等の条件を満たすか否かを判断する。許可条件を満たすときはステップS302へ進み、それ以外のときはステップS310へ進んでエンジン運転状態を継続する。
【0082】
ステップS302では、車速VSP、ブレーキ操作量(マスタシリンダ圧)BRKP、及びアイドリングストップ制御を許可するブレーキ操作量BRKPの上限閾値・下限閾値の読み込みを行い、ステップS303へ進む。
【0083】
ステップS303では、車速VSPがエンジン停止を許可する所定車速CSVSPを下回るか否かを判断する。所定車速CSVSPを下回るときはステップS304へ進み、それ以外のときはステップS310へ進んでエンジン運転状態を継続する。
【0084】
ステップ304では、減速度DVSPと計算式1に基づきコーストストップ許可上限閾値BRKINを算出し、ステップS305へ移行する。
ステップS305では、ブレーキ操作量BRKPが、算出したコーストストップ許可上限閾値BRKINを下回るか否かを判断する。ブレーキ操作量BRKPがコーストストップ許可上限閾値BRKINを下回ると判断したときはステップS306へ進み、ブレーキ操作量BRKPがコーストストップ許可上限閾値BRKIN以上であると判断したときはステップS309へ進んでエンジン始動または運転状態を継続する。
【0085】
ステップ306では、減速度DVSPと計算式2に基づきコーストストップ許可下限閾値BRKOUTを算出し、ステップS307へ移行する。
ステップS307では、ブレーキ操作量BRKPが、算出したコーストストップ許可下限閾値BRKOUTを上回るか否かを判断する。ブレーキ操作量BRKPがコーストストップ許可下限閾値BRKOUTを下回ると判断したときはステップS308へ進み、ブレーキ操作量BRKPがコーストストップ許可下限閾値BRKOUT以下であると判断したときはステップS309へ進んでエンジン始動または運転状態を継続する。
【0086】
[作用]
次に、上記制御処理に基づく作用について説明する。図8は実施例3のコースト走行時におけるコーストストップ許可上限閾値BRKIN及び下限閾値BRKOUTの設定処理の作用を表すタイムチャートである。図8(a)はブレーキ操作量BRKP、図8(b)は減速度DVSP、図8(c)はエンジン回転数Ne、図8(d)は車速VSPの変化を示す。
【0087】
時刻t11以前、車速VSPが所定車速CSVSP以上である。よって、図8の制御処理でステップS301→S302→S303→S310へ進む流れとなり、エンジン1は運転状態を継続する。また、運転者のブレーキ操作量BRKPは徐々に減少している。
【0088】
時刻t11において、車速VSPが所定車速CSVSP未満となり、エンジン自動停止再始動制御の許可条件が満たされる。このとき、ブレーキ操作量BRKPが、車速VSPと計算式1により算出されるコーストストップ許可上限閾値BRKINを上回っている。よって、ステップS301→S302→S303→S304→S305→S309へ進む流れとなり、エンジン1は運転状態を継続する。
以降、減速度DVSPの低下に応じて、計算式1におけるコーストストップ許可上限閾値BRKINは線形的に増加し、計算式2における下限閾値BRKOUTは線形的に減少する。
【0089】
時刻t12において、ブレーキ操作量BRKPが、減速度DVSPと計算式1により算出されるコーストストップ許可上限閾値BRKINを下回り、かつ、減速度DVSPと計算式2により算出されるコーストストップ許可下限閾値BRKOUTを上回る。よって、ステップS301→S302→S303→S304→S305→S306→S307→S308へ進む流れとなり、エンジン停止を行う。エンジン停止をする時刻t12後、エンジン回転数はゼロに向けて急速に減少する。
【0090】
実施例3では、コーストストップ許可上限閾値BRKIN及びコーストストップ許可下限閾値BRKOUTをそれぞれ計算式1、計算式2に基づき設定する。よって、例えばマップを用いて上限閾値BRKIN及び下限閾値BRKOUTを設定する場合よりも、エンジンコントロールユニット10において記憶するデータ量を縮小することができる。すなわち、上限閾値BRKIN及び下限閾値BRKOUTを減速度DVSPに合わせてより細かく設定しようとすると、マップを用いた場合にはデータ量が増大するが、計算式を用いれば、データ量の増大を抑制することができる。
【0091】
[効果]
以上説明したように、実施例3にあっては下記の効果を得ることができる。
(7)エンジンコントロールユニット10は、下限閾値BRKOUTを所定の計算式に基づき設定するようにした。
よって、データの記憶量を節減することができる。
【0092】
(8)エンジンコントロールユニット10は、上限閾値BKRINを所定の計算式に基づき設定するようにした。
よって、データの記憶量を節減することができる。
【0093】
〔他の実施例〕
以上、本願発明を実施例1ないし実施例3に基づいて説明してきたが、上記実施例に限らず、他の構成であっても本願発明に含まれる。
例えば、実施例1ないし実施例3では、ベルト式無段変速機を採用した例を示したが、他の有段式自動変速機や手動変速機等を備えた構成であってもよい。また、トルクコンバータを備えた例を示したが、トルクコンバータを備えていない車両であっても適用できる。これらの場合、コーストストップ制御(エンジン自動停止)を許可する条件のパラメータとして、所定車速CSVSPではなく、エンジン自立回転の維持の可否を示す他のパラメータ(車速と変速比の組合せやエンジン回転数)を用いることができる。
【0094】
また、実施例1および実施例2で、コーストストップ許可上限閾値BRKINを変化させる閾値となる減速度DVSPは、コーストストップ許可下限閾値BRKOUTを変化させる閾値となる減速度DVSPと同じである必要はなく、両減速度DVSPを異ならせることとしてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 エンジン
4 駆動輪
10 エンジンコントロールユニット(エンジン停止再始動手段、閾値設定手段)
13 マスタシリンダ圧センサ(ブレーキ操作量検出手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8