特許第5834863号(P5834863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5834863プログラマブルロジックコントローラによる最小自乗パラメータ演算方法、プログラマブルロジックコントローラ及びそのプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5834863
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】プログラマブルロジックコントローラによる最小自乗パラメータ演算方法、プログラマブルロジックコントローラ及びそのプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/05 20060101AFI20151203BHJP
   G06F 17/18 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   G05B19/05 F
   G06F17/18 Z
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-270998(P2011-270998)
(22)【出願日】2011年12月12日
(65)【公開番号】特開2013-122687(P2013-122687A)
(43)【公開日】2013年6月20日
【審査請求日】2014年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100113918
【弁理士】
【氏名又は名称】亀松 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100122965
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 好男
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】高橋 健一郎
【審査官】 川東 孝至
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−091301(JP,A)
【文献】 特開平05−257964(JP,A)
【文献】 特開2010−134593(JP,A)
【文献】 特開平3−193276(JP,A)
【文献】 矢沢 久雄,動いて楽しいアルゴリズム!,日経ソフトウエア 第12巻 第12号 NIKKEI SOFTWARE,日本,日経BP社 Nikkei Business Publications,Inc.,第12巻,第116頁〜第119頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/05
G06F 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラダー図により構成されるシーケンス回路で表現されるプログラムにより、冷間タンデム圧延機で圧延される鋼板の板厚を補正する演算処理を実行するプログラマブルロジックコントローラが、2以上の自然数であるn個の第1データ及び第2データからなるデータ対から最小自乗パラメータを演算する方法であって、ここで、前記第1データは圧延される前の鋼板の板厚と板速度とにより推定される板厚であり、前記第2データは板厚検出器で検出される板厚であり、
前記プログラマブルロジックコントローラが、n個目の第1データ及び第2データを記憶部から読み取る工程と、
前記プログラマブルロジックコントローラが、n−1個目までの第1データの値の総和に前記n個目の第1データの値を加算してn個目までの第1データの値の総和を演算し、前記記憶部に記憶する工程と、
前記プログラマブルロジックコントローラが、n−1個目までの第2データの値の総和に前記n個目の第2データの値を加算してn個目までの第2データの値の総和を演算し、前記記憶部に記憶する工程と、
前記プログラマブルロジックコントローラが、前記n個目の第1データの値を自乗した値をn個目の第1データ自乗値として演算し、前記記憶部に記憶する工程と、
前記プログラマブルロジックコントローラが、n−1個目までの第1データ自乗値の総和に前記n個目の第1データ自乗値を加算してn個目までの第1データ自乗値の総和を演算し、前記記憶部に記憶する工程と、
プログラマブルロジックコントローラが、前記n個目の第1データの値と前記n個目の第2データの値とを乗算した値をn個目の相互データ乗算値として演算し、前記記憶部に記憶する工程と、
前記プログラマブルロジックコントローラが、n−1個目までの相互データ乗算値の総和に前記n個目の相互データ乗算値を加算してn個目までの相互データ乗算値の総和を演算し、前記記憶部に記憶する工程と、
前記プログラマブルロジックコントローラが、前記n個目までの第1データの値の総和、前記n個目までの第2データの値の総和、前記n個目までの第1データ自乗値の総和及びn個目までの相互データ乗算値の総和を所定の演算式を使用して演算して最小自乗パラメータを演算し、前記記憶部に記憶する工程と、
前記プログラマブルロジックコントローラが、前記演算された最小自乗パラメータを、前記板速度を制御するために使用される板厚のパラメータとして出力する工程と、
を有することを特徴とする演算方法。
【請求項2】
前記最小自乗パラメータは、1次式の傾きに対応するパラメータanと1次式の切片に対応するパラメータbnとからなり、
前記傾きに対応するパラメータanを演算する演算式は、
【数1】
であり、前記切片に対応するパラメータbnを演算する演算式は、
【数2】
であり、Xn、Yn、X2n及びXYnはそれぞれ、
【数3】
で示され、xnはn番目の第1データの値であり、ynはn番目の第2データの値である請求項1に記載の演算方法。
【請求項3】
前記n個目の第1データ及び第2データの値のいずれかが所定の範囲外である場合は、前記プログラマブルロジックコントローラは、前記n個目の第1データ及び第2データを演算処理しない請求項1又は請求項2に記載の演算方法。
【請求項4】
前記n個目までの第1データの値の総和を演算する工程は、m個前の第1データの値を減算する工程をさらに含み、
前記n個目までの第2データの値の総和を演算する工程は、m個前の第2データの値を減算する工程をさらに含み、
前記n個目までの第1データ自乗値の総和を演算する工程は、m個前の第1データ自乗値を減算する工程をさらに含み、
前記n個目までの相互データ乗算値の総和を演算する工程は、m個前の相互データ乗算値を減算する工程をさらに含み、
前記mは、前記nよりも小さい自然数である請求項1〜3のいずれか一項に記載の演算方法。
【請求項5】
冷間タンデム圧延機で圧延される鋼板の板厚を補正するために、2以上の自然数であるn個の第1データ及び第2データからなるデータ対から最小自乗パラメータを演算するプログラムであって、ここで、前記第1データは圧延される前の鋼板の板厚と板速度とにより推定される板厚であり、前記第2データは板厚検出器で検出される板厚であり、
n個目の第1データ及び第2データを読み取る工程と、
n−1個目までの第1データの値の総和に前記n個目の第1データの値を加算してn個目までの第1データの値の総和を演算する工程と、
n−1個目までの第2データの値の総和に前記n個目の第2データの値を加算してn個目までの第2データの値の総和を演算する工程と、
前記n個目の第1データの値を自乗した値をn個目の第1データ自乗値として演算する工程と、
n−1個目までの第1データ自乗値の総和に前記n個目の第1データ自乗値を加算してn個目までの第1データ自乗値の総和を演算する工程と、
前記n個目の第1データの値と前記n個目の第2データの値とを乗算した値をn個目の相互データ乗算値として演算する工程と、
n−1個目までの相互データ乗算値の総和に前記n個目の相互データ乗算値を加算してn個目までの相互データ乗算値の総和を演算する工程と、
前記n個目までの第1データの値の総和、前記n個目までの第2データの値の総和、前記n個目までの第1データ自乗値の総和及びn個目までの相互データ乗算値の総和を所定の演算式を使用して演算して最小自乗パラメータを演算する工程と、
前記演算された最小自乗パラメータを、前記板速度を制御するために使用される板厚のパラメータとして出力する工程と、
をラダー図により構成されるシーケンス回路で表現されるプログラムにより演算処理を実行するプログラマブルロジックコントローラに実行させることを特徴とする演算プログラム。
【請求項6】
冷間タンデム圧延機で圧延される鋼板の板厚を補正するために、2以上の自然数であるn個の第1データ及び第2データからなるデータ対から最小自乗パラメータを演算する演算処理をラダー図により構成されるシーケンス回路で表現されるプログラムにより実行するプログラマブルロジックコントローラであって、ここで、前記第1データは圧延される前の鋼板の板厚と板速度とにより推定される板厚であり、前記第2データは板厚検出器で検出される板厚であり、
n個目の第1データ及び第2データを入力する入力部と、
入力された前記n個目の第1データ及び第2データを記憶する記憶部と、
入力された前記n個目の第1データ及び第2データに基づいて最小自乗パラメータを演算する演算部と、
前記演算された最小自乗パラメータを、前記板速度を制御するために使用される板厚のパラメータとして出力する出力部と、
を有し、前記演算部は、n−1個目までの第1データの値の総和に前記n個目の第1データの値を加算してn個目までの第1データの値の総和を演算し、
n−1個目までの第2データの値の総和に前記n個目の第2データの値を加算してn個目までの第2データの値の総和を演算し、
前記n個目の第1データの値を自乗した値をn個目の第1データ自乗値として演算し、
n−1個目までの第1データ自乗値の総和に前記n個目の第1データ自乗値を加算してn個目までの第1データ自乗値の総和を演算し、
前記n個目の第1データの値と前記n個目の第2データの値とを乗算した値をn個目の相互データ乗算値として演算し、
n−1個目までの相互データ乗算値の総和に前記n個目の相互データ乗算値を加算してn個目までの相互データ乗算値の総和を演算し、
前記n個目までの第1データの値の総和、前記n個目までの第2データの値の総和、前記n個目までの第1データ自乗値の総和及びn個目までの相互データ乗算値の総和を所定の演算式を使用して演算して前記最小自乗パラメータを演算し、
前記記憶部は、演算された前記第1データの総和、前記第2データの総和、前記第1データ自乗値の総和及び前記相互データ乗算値の総和を記憶することを特徴とするプログラマブルロジックコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラマブルロジックコントローラによる最小自乗パラメータ演算方法、プログラマブルロジックコントローラ及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、FA(Factory Automation)システムにおいて、スイッチ及びセンサなどの状態検出機器、アクチュエータ及び温度調節機器などの制御対象機器、並びに状態検出機器及び制御対象機器を制御する制御装置などの各種機器及び装置が通信ネットワークで接続される。また、FAシステムでは、制御装置の動作は、リレー回路を記号化したラダー図により構成されるシーケンス回路で表現される。
【0003】
シーケンス回路を構成する場合、可変プログラム方式又は固定プログラム方式のいずれかの方式が採用可能である。可変プログラム方式は、接点及びリレーなどの機能をコンピュータに持たせ、プログラム上でシーケンス回路を構成するプログラマブルロジックコントローラ(PLC(Programmable Logic Controller))により構成される。一方、固定プログラム方式は、機械的接点を備えた有接点リレーや半導体スイッチ素子を組み合わせて構成される。
【0004】
PLCに内蔵されるシーケンス回路プログラムは、ユーザがラダーエディタなどのプログラム作成ソフトウェアを使用して自在に編集可能である。PLCには、状態検出機器からの入力信号の状態を示す状態データ、制御対象機器への出力信号の状態を示す状態データ、及びPLC内部の動作状態を示す状態データなどの多数の状態データが保持される。PLCの制御プログラムが実行されると、入力機器の状態データを参照して、所定の演算処理を実行し、出力機器の状態データを変更する処理が行われる。
【0005】
また、PLCは、シーケンス制御を主たる用途として設計されるため、所定の処理を高速で繰り返しする処理を多く含むFAシステムにおいて、高速且つ安定的な制御処理が可能である。
【0006】
一方、特許文献1に示されるように、FAシステムにおいて、最小自乗法により種々の状態データを求めることが知られる。最小自乗法は、測定値xiの理論値が未知母数θ1、θ2・・・θpの関数fi(θ1、θ2・・・θp)であるときに、式(1)が最小になるように未知母数θ1、θ2・・・θpを定めるものである。
【数1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−326057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
可変プログラム方式のFAシステムにおいて、最小自乗法により状態データを求めるためには、PLCにおいて式(1)に基づいて最小自乗パラメータを演算させることが要求される。しかしながら、式(1)に基づいて最小自乗パラメータの演算のためには非常に多くの演算処理を実行する必要があるため、PLCにおいて最小自乗パラメータを演算させることは容易ではない。
【0009】
例えば、最小自乗法によりn個のデータ対を式(2)に示す一次式として表す場合、一次式の傾きa及び切片bに相当する最小自乗パラメータはそれぞれ、式(3)及び(4)に示すように求められる。
【数2】
【数3】
ここで、nは、データ対の数である。
【0010】
式(3)及び(4)の演算を全て実行して最小自乗法パラメータである傾きa及び切片bを演算する場合、(5n+10)回の乗除算と、(12n+4)回の加減算とが必要になる。このため、例えばn=20の場合、110回の乗除算と224回の加減算が必要になり、式(2)の傾きa及び切片bを演算するためにPLCへの負荷が大きくなり、PLCが処理すべき他の制御処理に影響を与えるおそれがある。さらに、PLCにおける最小自乗パラメータの演算のための演算処理回数が増大するに従って全体の演算時間が大きくなる。このため、高速でフィードバック制御を行うFAシステムにおいては、最小自乗パラメータである傾きa及び切片bを演算するために必要な演算時間がフィードバック制御の制御周期よりも大きくなり、演算された最小自乗パラメータをフィードバック制御に反映できないおそれがある。
【0011】
また、式(3)及び(4)を使用して傾きa及び切片bを演算する場合、PLC10は、演算するn個のデータ対を全て記憶する必要があり、演算処理のために必要な記憶量が大きくなる。
【0012】
そこで、本発明は、PLCにおいて、より少ない演算処理量及び記憶量で、n個のデータ対から最小自乗パラメータを演算する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係るn最小自乗パラメータ演算法は、ラダー図により構成されるシーケンス回路で表現されるプログラムにより、冷間タンデム圧延機で圧延される鋼板の板厚を補正する演算処理を実行するプログラマブルロジックコントローラが、2以上の自然数であるn個の第1データ及び第2データからなるデータ対から最小自乗パラメータを演算する方法であって、ここで、前記第1データは圧延される前の鋼板の板厚と板速度とにより推定される板厚であり、前記第2データは板厚検出器で検出される板厚であり、
前記プログラマブルロジックコントローラが、n個目の第1データ及び第2データを記憶部から読み取る工程と、
前記プログラマブルロジックコントローラが、n−1個目までの第1データの値の総和に前記n個目の第1データの値を加算してn個目までの第1データの値の総和を演算し、前記記憶部に記憶する工程と、
前記プログラマブルロジックコントローラが、n−1個目までの第2データの値の総和に前記n個目の第2データの値を加算してn個目までの第2データの値の総和を演算し、前記記憶部に記憶する工程と、
前記プログラマブルロジックコントローラが、前記n個目の第1データの値を自乗した値をn個目の第1データ自乗値として演算し、前記記憶部に記憶する工程と、
前記プログラマブルロジックコントローラが、n−1個目までの第1データ自乗値の総和に前記n個目の第1データ自乗値を加算してn個目までの第1データ自乗値の総和を演算し、前記記憶部に記憶する工程と、
プログラマブルロジックコントローラが、前記n個目の第1データの値と前記n個目の第2データの値とを乗算した値をn個目の相互データ乗算値として演算し、前記記憶部に記憶する工程と、
前記プログラマブルロジックコントローラが、n−1個目までの相互データ乗算値の総和に前記n個目の相互データ乗算値を加算してn個目までの相互データ乗算値の総和を演算し、前記記憶部に記憶する工程と、
前記プログラマブルロジックコントローラが、前記n個目までの第1データの値の総和、前記n個目までの第2データの値の総和、前記n個目までの第1データ自乗値の総和及びn個目までの相互データ乗算値の総和を所定の演算式を使用して演算して最小自乗パラメータを演算し、前記記憶部に記憶する工程と、
前記プログラマブルロジックコントローラが、前記演算された最小自乗パラメータを、前記板速度を制御するために使用される板厚のパラメータとして出力する工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、最小自乗パラメータは、漸化式を使用して演算されるため、PLCにおいて、より少ない演算処理量及び記憶量で、n個のデータ対の値から最小自乗パラメータを演算することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る実施形態に従う制御システムのブロックの一例を示す図である。
図2】本発明に係る実施形態に従う演算処理のフローの一例を示す図である。
図3】本発明に係る実施形態に従う演算処理のフローの他の例を示す図である。
図4】本発明に係る実施形態に従う演算処理のフローの他の例を示す図である。
図5】冷間タンデム圧延機における膜厚制御のブロックの一例を示す図である。
図6図5に示す膜厚制御のフローを示す図である。
図7図5に示す膜厚制御における推定値の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態に従って最小自乗パラメータを演算する方法について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明の開示において提供される図は、本発明の説明を意図したものであり、適当な縮尺を示すことを意図したものではないことを理解すべきである。また、それぞれの図面において、同一又は類似する機能を有する構成要素には、同一又は類似する符号が付される。したがって、先に説明した構成要素と同一又は類似する機能を有する構成要素に関しては、改めて説明をしないことがある。
【0017】
以下、本発明に係る実施形態に従って最小自乗パラメータを演算する方法について図1〜4を参照して詳細に説明する。図1は、制御システム1のブロックを示す図である。制御システム1は、PLC10と、PLC10により制御される制御対象装置20とを有する。
【0018】
PLC10は、演算部11と、記憶部12と、入力部13と、出力部14と、PLC10が有する装置を相互に接続するバス回路部15とを有する。演算部11は、制御対象装置20から入力部13を介して受信される状態データを記憶部12に記憶されるシーケンスプログラムに記述されるシーケンス回路に基づいて演算して、演算結果に対応する状態データを出力部14を介して制御対象装置20に出力する。記憶部12は、演算部11で実行されるシーケンスプログラムが記憶されるとともに、シーケンスプログラムを実行するために必要なOSなどの基本ソフト、制御対象装置20に関する各種の状態データなどが記憶される。
【0019】
制御対象装置20は、単数又は複数の状態検出部22a〜22nと、単数又は複数の制御対象機器23a〜23nとを有する。状態検出部22a〜22nは、制御対象装置20の状態を検出して、その状態に対応する信号をPLC10に出力する。状態検出部22a〜22nは、各種のスイッチ又はセンサなどである。制御対象機器23a〜23nは、PLC10から出力される信号に基づいて制御対象装置10の物理的な状態を変化させる。状態検出22a〜22nは、アクチュエータ、モータ又は温度調節機器などである。
【0020】
制御対象装置20は、PLC10の入力部13及び出力部14を介してPLC10の演算部11とフィードバック系を構成し、PLC10の記憶部12に記憶されるプログラムにより実現されるシーケンス回路に基づいてシーケンス制御される。
【0021】
次に、図2を参照して、制御システム1において、PLC10が、最小自乗パラメータ演算方法を実行する処理の第1の実施形態について説明する。図2は、最小自乗パラメータ演算方法を実行する処理の第1の実施形態の演算処理のフローを示す図である。
【0022】
図2に示すように、最小自乗パラメータ演算方法を実行する処理は、ステップS101から開始する。しかしながら、図2に示す処理は、n−1回の同様な処理が既に実行された後に実行される処理である。これは、図2に示す処理が、所定のデータの総和を漸化式に基づいて演算するためである。
【0023】
すなわち、図2に示す処理は、n個のデータ対(xk、yk)(1≦k≦n)の関係を傾きan及び切片bnを有する一次式で表すときに、傾きan及び切片bnを以下の式(5)〜(10)に基づいて演算するものである。
【数4】
ここで式(5)は傾きanを示す式であり、式(6)は切片bnを示す式である。式(7)〜(10)は、式(5)及び(6)の変数Xn、Yn、X2n及びXYnをそれぞれ演算する漸化式である。より具体的には、式(7)は第1データの値のn個目までの総和Xnを演算し、式(8)は第2データの値のn個目までの総和Ynを演算し、式(9)は第1データの値を自乗した値である第1自乗データ値のn個目までの総和X2nを演算し、式(10)は第1データの値と第2データの値とを乗算した値である相互データ乗算値のn個目までの総和XYnを演算する。
【0024】
図2に示す処理では、まず、ステップS101において、PLC10は、制御対象装置20の所定の状態検出部22a〜22nから出力されるn個目の第1データ及び第2データを読み取る。例えば、第1データは、ある状態検出部22aで検出される状態データであり、第2データは、他の状態検出部22bで検出された状態データに基づいて推定される推定データにすることができる。次いで、PLC10は、読み取ったn個目の第1データ及び第2データを記憶部12に記憶する。
【0025】
次に、ステップS102において、PLC10は、n−1個目までの第1データの値の総和Xn-1にn個目の第1データの値xnを加算してn個目までの第1データの値の総和Xnを演算する。この工程は、PLC10が式(7)の演算を実行することに相当する。
【0026】
次に、ステップS103において、PLC10は、n−1個目までの第2データの値の総和Yn-1にn個目の第2データの値ynを加算してn個目までの第2データの値の総和Ynを演算する。この工程は、PLC10が式(8)の演算を実行することに相当する。
【0027】
次に、ステップS104において、PLC10は、n個目の第1データの値xnを自乗した値をn個目の第1データ自乗値xn2として演算する。次いで、ステップS105において、PLC10は、n−1個目までの第1データ自乗値の総和X2n-1にn個目の第1データ自乗値xn2を加算してn個目までの第1データ自乗値の総和X2nを演算する。ステップS104及びS105の処理は、PLC10が式(9)の演算を実行することに相当する。
【0028】
次に、ステップS106において、PLC10は、n個目の第1データの値xnとn個目の第2データの値ynとを乗算した値をn個目の相互データ乗算値xnnとして演算する。次いで、ステップS107において、PLC10は、n−1個目までの相互データ乗算値の総和XYn-1にn個目の相互データ乗算値xnnを加算してn個目までの第1データ自乗値XYnの総和を演算する。ステップS106及びS107の処理は、PLC10が式(10)の演算を実行することに相当する。
【0029】
次に、ステップS108において、PLC10は、ステップS102〜S107で演算した変数Xn、Yn、X2n及びXYnを式(5)及び(6)にそれぞれ代入して、傾きan及び切片bnをそれぞれ演算する。
【0030】
そして、ステップS109において、PLC10は、S108で演算された傾きan及び切片bnをそれぞれ出力する。
【0031】
以上、図2を参照して、PLC10が、最小自乗パラメータ演算方法を実行する処理の第1の実施形態について説明した。図2に示す実施形態では、式(5)〜(10)に示す漸化式を使用して最小自乗パラメータである一次式の傾きan及び切片bnを演算するため、式(3)及び(4)の演算を全て実行する場合と比較して、計算量を非常に少なくすることができる。具体的には、図2に示す実施形態では、12回の乗除算と8回の加減算とにより、一次式の傾きan及び切片bnを演算することができる。このため、制御対象装置20の状態態検出部22a〜22nからの状態データに基づく最小自乗パラメータ演算を実行して、その結果を制御対象装置20の制御対象機器23a〜23nにリアルタイムにフィードバックすることが可能になる。また、図2に示す実施形態では、演算式が簡明なため、PLC10に実行させるためにシーケンスプログラムも簡明になる。
【0032】
さらに、図2に示す実施形態では、PLC10の記憶部12が記憶しておく必要がある変数はXn-1、Yn-1、X2n-1及びXYn-1のみであり、第1データx1〜xnと第2データy1〜ynとを全て記憶する必要がある式(3)及び(4)の演算を全て実行する場合と比較して、必要な記憶量を少なくすることができる。
【0033】
次に、図3を参照して、制御システム1において、PLC10が、最小自乗パラメータ演算方法を実行する処理の第2の実施形態について説明する。図3は、最小自乗パラメータ演算方法を実行する処理の第2の実施形態の演算処理のフローを示す図である。
【0034】
図3に示す実施形態は、ステップS201において、PLC10が制御対象装置20の所定の状態検出部22aから出力されるn個目の第1データ及び第2データを読み取った後に実行されるステップS202を有することのみが図2に示す実施形態と相違する。すなわち、図3に示すステップS201は、図2に示すステップS101に相当し、図3に示すステップS203〜S210はそれぞれ、図2に示すステップS102〜S109に相当する。
【0035】
ステップS202において、PLC10は、第1データ及び第2データの値のいずれかが所定の範囲外であるか否かを判定する。第1データ及び第2データ値のいずれかが所定の範囲外であると判定された場合は、PLC10は、処理を終了する。一方、第1データ及び第2データの値のいずれもが所定の範囲外でないと判定された場合は、PLC10は、次いでステップS203の処理を実行する。
【0036】
図3に示す実施形態では、第1データ又は第2データの値が所定の範囲を超える異常値である場合には、一次式の傾きan及び切片bnを演算しないため、異常値を演算するおそれが少ない。
【0037】
次に、図4を参照して、制御システム1において、PLC10が、最小自乗パラメータ演算方法を実行する処理の第3の実施形態について説明する。図4は、最小自乗パラメータ演算方法を実行する処理の第3の実施形態の演算処理のフローを示す図である。
【0038】
図4に示す実施形態は、漸化式の計算を所定の個数であるm個の第1データ及び第2データにより実行することが図2に示す実施形態と相違する。具体的には、図4に示す実施形態では、式(7)〜(10)ではなく、式(11)〜(14)を使用することが図2に示す実施形態と相違する。
【数5】
式(11)〜(14)において、xn-mはm個前の第1データの値であり、yn-mはm個前の第2データの値であり、xn-m2はm個前の第1データ自乗値であり、xn-mn-mはm個前の相互データ乗算値である。
【0039】
式(11)〜(14)に示すように、図4に示す実施形態では、m個前のデータの値を減算するために、それぞれの漸化式は、最新のm個のデータの値で演算されることになる。このため、図4に示す実施形態では、PLCが異常値を読み取った場合でもm回処理を実行した後は、その異常値の影響を除去することができる。
【0040】
図4に示す実施形態は、まず、ステップS301において、PLC10は、制御対象装置20の所定の状態検出部22aから出力されるn個目の第1データ及び第2データを読み取る。
【0041】
次に、ステップS302において、PLC10は、m個の第1データの値の総和Xn-1にn個目の第1データの値xnを加算し且つm個前の第1データの値xn-mを減算してm個の第1データの値の総和Xnを演算する。この工程は、PLC10が式(11)の演算を実行することに相当する。
【0042】
次に、ステップS303において、PLC10は、m個の第2データの値の総和Yn-1にn個目の第2データの値ynを加算し且つm個前の第1データの値yn-mを減算してm個の第2データの値の総和Ynを演算する。この工程は、PLC10が式(12)の演算を実行することに相当する。
【0043】
次に、ステップS304において、PLC10は、n個目の第1データの値xnを自乗した値をn個目の第1データ自乗値xn2として演算する。次いで、ステップS305において、PLC10は、m個の第1データ自乗値の総和X2n-1にn個目の第1データ自乗値xn2を加算し且つm個前の第1データ自乗値xn-m2を減算してn個目までの第1データ自乗値の総和X2nを演算する。ステップS304及びS305の処理は、PLC10が式(13)の演算を実行することに相当する。
【0044】
次に、ステップS306において、PLC10は、n個目の第1データの値xnとn個目の第2データの値ynとを乗算した値をn個目の相互データ乗算値xnnとして演算する。次いで、ステップS307において、PLC10は、m個の相互データ乗算値の総和XYn-1にn個目の相互データ乗算値xnnを加算し且つm個前の第1データ自乗値xn-mn-mを減算してm個の第1データ自乗値XYnの総和を演算する。ステップS306及びS307の処理は、PLC10が式(14)の演算を実行することに相当する。
【0045】
次に、ステップS308において、PLC10は、ステップS302〜S307で演算した変数Xn、Yn、X2n及びXYnを式(5)及び(6)にそれぞれ代入して、傾きan及び切片bnをそれぞれ演算する。
【0046】
そして、ステップS309において、PLC10は、S308で演算された傾きan及び切片bnをそれぞれ出力する。
【実施例1】
【0047】
次に、図5〜7を参照して、本発明に係る最小自乗パラメータ演算方法を使用するフィードバック制御の一例を説明する。図5は、冷間タンデム圧延機120、及び冷間タンデム圧延機120をフィードバック制御するPLC110を含む制御システム100のブロックを示す図である。
【0048】
冷間タンデム圧延機120は、6スタンドの冷間タンデム圧延機である。図5では、6つのスタンドのミルの中で、第2ミル232〜第6ミル236が示され、第1ミルは省略される。冷間タンデム圧延機120は、圧延素材4を第1ミル(図示せず)から第6ミル236までの6つのミルで順に圧延する。
【0049】
第1板速度検出器22a1は、第1ミル(図示せず)の出側であり且つ第2ミル232の入側である位置における圧延素材4の速度を検出する。また、第2板速度検出器22a2は、第2ミル232の出側であり且つ第3ミル233の入側である位置における圧延素材4の速度を検出する。また、第3板速度検出器22a3は、第3ミル233の出側であり且つ第4ミル234の入側である位置における圧延素材4の速度を検出する。また、第4板速度検出器22a4は、第4ミル234の出側であり且つ第5ミル235の入側である位置における圧延素材4の速度を検出する。また、第5板速度検出器22a5は、第5ミル235の出側であり且つ第6ミル236の入側である位置における圧延素材4の速度を検出する。そして、第6板速度検出器22a6は、第6ミル236の出側である位置における圧延素材4の速度を検出する。
【0050】
第1板厚検出器22b1は、第1ミル(図示せず)の出側であり且つ第2ミル232の入側である位置における圧延素材4の板厚を検出する。また、第4板厚検出器22b4は、第4ミル234の出側であり且つ第5ミル235の入側である位置における圧延素材4の板厚を検出する。そして、第6板厚検出器22b6は、第6ミル236の出側である位置における圧延素材4の板厚を検出する。
【0051】
次に、図6を参照して、冷間タンデム圧延機120における第4ミル234の板厚を推定する処理について説明する。図6は、冷間タンデム圧延機120の第4ミル234の板厚の推定処理のフローを示す図である。
【0052】
まず、ステップS401において、PLC110は、第1板速度検出器22a1及び第2板速度検出器22a2でそれぞれ検出される板速度並びに第1板厚検出器22b1で検出される板厚を使用してマスフロー一定則に基いて第2ミル232の出側板厚ハットhout2を推定する。このとき、第1板厚検出器22b1で検出される板厚は、トラッキングされる。第1板厚検出器22b1で検出される板厚をトラッキングすることにより、第1板速度検出器22a1で検出される板速度、及び第1板厚検出器22b1と第2ミル232との間の位置関係を考慮して決定される時定数T1DXを勘案して第2ミル232の出側板厚ハットhout2を推定することができる。
【0053】
次に、ステップS402において、PLC110は、第2板速度検出器22a2及び第3板速度検出器22a3で検出される板速度、並びにステップS401で推定された第2ミル232の出側板厚ハットhout2を使用してマスフロー一定則に基いて第3ミルの出側板厚ハットhout3を推定する。このとき、ステップS401で推定された第2ミル232の出側板厚は、トラッキングされる。ステップS401で推定された第2ミルの出側板厚ハットhout2をトラッキングすることにより、第2板速度検出器22a2で検出される板速度、及び第2ミル232と第3ミル233との間の位置関係を考慮して決定される時定数T23を勘案して第3ミル233の出側板厚ハットhout3を推定することができる。
【0054】
次に、ステップS403において、PLC110は、第3板速度検出器22a3及び第4板速度検出器22a4で検出される板速度、並びにステップS402で推定された第3ミル233の出側板厚ハットhout3を使用してマスフロー一定則に基いて第4ミル234の出側板厚ハットhout4を推定する。このとき、ステップS402で推定された第3ミル233の出側板厚ハットhout3は、トラッキングされる。ステップS402で推定された第3ミル233の出側板厚ハットhout3をトラッキングすることにより、第3板速度検出器22a3で検出される板速度、及び第3ミル233と第4ミル234との間の位置関係を考慮して決定される時定数T34を勘案して第4ミル234の出側板厚ハットhout4を推定することができる。
【0055】
次に、ステップS404において、PLC110は、ステップS403で推定された第4ミル234の出側板厚ハットhout4を最小自乗法により一次式に補正して学習板厚ハットhout4_learnを演算する。ステップS401〜S403までのそれぞれの処理において推定が重ねられた結果、ステップS403で推定される第4ミル234の出側板厚ハットhout4と、第4板厚検出器22b4で検出される第4ミルの出側板厚H4DXとの間で差異が生じる可能性があるためである。
【0056】
そして、ステップS405において、PLC110は、ステップS404で補正された第4ミル234の学習板厚hout4_learnを使用して、冷間タンデム圧延機120の制御条件を変更する。例えば、第1スタンドのミルを駆動するモータ(図示せず)の速度を変更することができる。
【0057】
ステップS404の補正は、式(15)〜(17)に示すような演算に基いて実行される。
【数6】
ここで、H4DXは、第4板厚検出器22b4で検出される第4ミルの出側板厚であり、ハットhout4は、ステップS403で推定される第4ミルの出側板厚であり、ハットhout4_learnは、ステップS404で補正された第4ミルの出側板厚である。また、Nmは、演算されるH4DX及びhout4の数であり、Ndは、第4ミル234から第4板厚検出器22b4まで圧延素材4が搬送される間の時間である搬送時間T4-4dxに相当するサンプリング数である。
【0058】
PLC110が式(15)〜(17)に示される演算を実施するときに、図1〜4を参照して説明した最小自乗パラメータ演算方法のいずれかを使用することにより、PLC110は演算処理を高速に実行することができる。
【0059】
図7に、ステップS404の処理により、第4板厚検出器22b4により検出される板厚H4DXとステップS403で推定された板厚ハットhout4とに基いて補正された第4ミルの学習板厚ハットhout4_learnの一例を示す。
【0060】
以上、図1〜7を参照して、本発明に係る実施形態及び実施例を説明してきたが、本発明は、本明細書で説明された実施形態に限定して解釈すべきではない。例えば、図3に示される実施形態と図4に実施形態とを併せて実施してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1、100 制御システム
4 圧延素材
10、110 PLC
11 演算部
12 記憶部
13 入力部
14 出力部
20 制御対象装置
22a〜22n 状態検出部
23a〜23n 制御対象機器
120 冷間タンデム圧延機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7