(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
場所打ち杭を構築するために掘削孔に挿入される鉄筋籠であって、その外周又は外周側に地中との熱交換を行う複数個の熱交換用配管を保持し、かつ、前記熱交換用配管を前記掘削孔の内壁面側に移動可能とする、弾性体を用いた熱交換用配管保持手段が取り付けられていることを特徴とする鉄筋籠。
前記複数個の熱交換用配管の少なくとも一部が、前記掘削孔への挿入前に前記掘削孔の長軸方向に垂直な断面の外周上又はそれよりも外側に配置し得ることを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の鉄筋籠。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、地中との熱交換を効率的に行うためには、例えば、熱交換器として機能する熱交換用配管の数を増やし、各熱交換用配管をより掘削孔の内壁面に近づけるとよい。
【0005】
ところが、従来技術1の場合、偏心防止用スペーサー105に熱交換用配管106が取り付けられるので、熱交換用配管を掘削孔の内壁面に更に近づけることができず、しかも熱交換用配管の数は偏心防止用スペーサーの数により規制されてしまうという問題がある。
【0006】
これに対して従来技術2の場合には、偏心防止用スペーサー105により鉄筋籠102の外周側に設けた支持材108に、しかもその支持材108の外周側に熱交換用配管106を取り付けるので、熱交換用配管の数が偏心防止用スペーサーの数により規制されることはなく、熱交換用配管を、掘削孔の内壁面に、より近づけることができる。しかしながら、支持材を構成する鉄筋等は基本的に硬質なので、そのような支持材に取り付けられた熱交換用配管は、鉄筋籠を掘削孔に挿入する際に掘削孔の内壁面に接触すると、変形又は破損するおそれがあり、その結果機能不全に陥るおそれがあるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、場所打ち杭を構築するために掘削孔に挿入される鉄筋籠に取り付けられていても、その挿入の際に掘削孔の内壁面に接触しても破損し難い若しくは機能不全に陥り難い熱交換用配管又は掘削孔に挿入された鉄筋籠の側から掘削孔の内壁面又は内壁面の側により近い位置に配置させることができる熱交換用配管、そのような熱交換用配管を備える鉄筋籠、そのような鉄筋籠により構築される場所打ち杭を用いる地中熱利用システムに関する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するための、本発明の第1の形態に係る熱交換用配管は、地中との熱交換を行う熱交換用配管であって、場所打ち杭を構築する際に掘削孔に挿入される鉄筋籠の外周又は外周側に
弾性部材を介して取り付けられており、前記掘削孔の内壁面から前記鉄筋籠の側に移動可能に構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の第
2の形態に係る熱交換用配管は、第
1の形態に係る熱交換用配管であって、前記鉄筋籠の外周に偏心防止用スペーサーが取り付けられており、前記弾性部材が前記偏心防止用スペーサーとは異なる部材であることを特徴とする。
【0011】
本発明の第
3の形態に係る熱交換用配管は、
地中との熱交換を行う熱交換用配管であって、場所打ち杭を構築する際に掘削孔に挿入される鉄筋籠の外周又は外周側にヒンジを介して取り付けられて
おり、前記掘削孔の内壁面から前記鉄筋籠の側に移動可能に構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の第
4の形態に係る熱交換用配管は、第
3の形態に係る熱交換用配管であって、前記鉄筋籠の外周に偏心防止用スペーサーが取り付けられており、前記ヒンジが前記偏心防止用スペーサーとは異なる部材であることを特徴とする。
【0013】
本発明の第
5の形態に係る鉄筋籠は、場所打ち杭を構築するために掘削孔に挿入される鉄筋籠であって、その外周又は外周側に地中との熱交換を行う複数個の熱交換用配管を保持し、かつ、前記熱交換用配管を前記掘削孔の内壁面側に移動可能とする
、弾性体を用いた熱交換用配管保持手段が取り付けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明の第
6の形態に係る鉄筋籠は、第
5の形態に係る鉄筋籠であって、前記鉄筋籠の外周に偏心防止用スペーサーが取り付けられており、前記熱交換用配管保持手段が前記偏心防止用スペーサーとは異なる部材であることを特徴とする。
【0016】
本発明の第
7の形態に係る鉄筋籠は、
場所打ち杭を構築するために掘削孔に挿入される鉄筋籠であって、その外周又は外周側に地中との熱交換を行う複数個の熱交換用配管を保持し、かつ、前記熱交換用配管を前記掘削孔の内壁面側に移動可能とする、ヒンジを用いた
熱交換用配管保持手段が取り付けられていることを特徴とする。
【0017】
本発明の第
8の形態に係る鉄筋籠は、第
7の形態に係る鉄筋籠であって、前記鉄筋籠の外周に偏心防止用スペーサーが取り付けられており、前記熱交換用配管保持手段が前記偏心防止用スペーサーとは異なる部材であることを特徴とする。
【0018】
本発明の第
9の形態に係る鉄筋籠は、第
5又は第
7の形態に係る鉄筋籠であって、外周に偏心防止用スペーサーが複数個取り付けられており、前記掘削孔の長軸方向に垂直な断面上において前記複数個の偏心防止用スペーサーを内包する最小半径の円を包絡円と定義するとき、前記複数個の熱交換用配管の少なくとも一部が、前記掘削孔への挿入完了後に前記包絡円上又はその外側に配置していることを特徴とする。
【0019】
本発明の第
10の形態に係る鉄筋籠は、第
9の形態に係る鉄筋籠であって、前記複数個の熱交換用配管の少なくとも一部が、前記掘削孔への挿入直前又は挿入過程で前記包絡円上又はその内側に配置していることを特徴とする。
【0020】
本発明の第
11の形態に係る鉄筋籠は、第
9の形態に係る鉄筋籠であって、前記複数個の熱交換用配管の少なくとも一部が、前記掘削孔への挿入過程で前記包絡円上又はその外側に配置していることを特徴とする。
【0021】
本発明の第
12の形態に係る鉄筋籠は、第
9乃至第
11のいずれかの形態に係る鉄筋籠であって、前記複数個の熱交換用配管の少なくとも一部が、前記掘削孔への挿入前に前記包絡円上又はその外側に配置し得ることを特徴とする。
【0022】
本発明の第
13の形態に係る鉄筋籠は、第
9乃至第
11のいずれかの形態に係る鉄筋籠であって、前記複数個の熱交換用配管の少なくとも一部が、前記掘削孔への挿入前に前記掘削孔の長軸方向に垂直な断面の外周上又はそれよりも外側に配置し得ることを特徴とする。
【0023】
本発明の第
14の形態に係る地中熱利用システムは、地中との熱交換を行う熱交換用配管を備える鉄筋籠を掘削孔に挿入して構築された場所打ち杭を用いる地中熱利用システムであって、前記熱交換用配管が第1乃至第
4のいずれかの形態に係る熱交換用配管である、或いは、前記鉄筋籠が第
5乃至第
13のいずれかの形態に係る鉄筋籠であることを特徴とする。
【0024】
なお、本発明において、「鉄筋籠の外周側」とは、鉄筋籠の内側から外側に向かう方向において、当該鉄筋籠外周上又は外周から離隔した位置を意味する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の第1の形態においては、熱交換用配管は、掘削孔の内壁面から鉄筋籠の側に移動可能に構成されている。そのため、この第1の形態によれば、鉄筋籠を掘削孔に挿入する際に掘削孔の内壁面に接触しても破損し難い若しくは機能不全に陥り難い熱交換用配管を実現することができる。また、掘削孔に挿入された鉄筋籠の側から掘削孔の内壁面又は内壁面の側により近い位置に配置させることができる熱交換用配管を実現することができる。
【0026】
本発明の第
5の形態においては、鉄筋籠は、複数個の熱交換用配管を備えており、場所打ち杭を構築するために掘削孔に挿入される鉄筋籠であって、その外周又は外周側に地中との熱交換を行う複数個の熱交換用配管を保持し、かつ、前記熱交換用配管を前記掘削孔の内壁面側に移動可能とする熱交換用配管保持手段が取り付けられている。そのため、この第
5の形態によれば、鉄筋籠を掘削孔に挿入する際又は挿入過程で熱交換用配管が掘削孔の内壁面に接触してもそれが破損し難い若しくは機能不全に陥り難い鉄筋籠を実現することができる。また、掘削孔の内壁面の側により近い位置に熱交換用配管を配置させることができる鉄筋籠を実現することができる。
【0027】
熱交換用配管を掘削孔の内壁面から鉄筋籠の側に移動可能にする構成は、熱交換用配管を鉄筋籠の外周又は外周側に弾性部材を介して取り付ける(本発明の第
1及び第
5の各形態)、鉄筋籠の外周又は外周側にヒンジを介して取り付ける(本発明の第
3及び第
7の各形態)、などにより実現することができる。このとき、弾性部材やヒンジを偏心防止用スペーサーとは異なる部材すれば(本発明の第
2、第
4、第
6及び第
8の各形態)、偏心防止用スペーサーのみに取り付ける場合より多くの熱交換用配管を鉄筋籠に取り付けることができるので、地中との熱交換を効率的に行うために有益である。
【0028】
鉄筋籠の外周に複数個の偏心防止用スペーサーも取り付けられており、しかもその鉄筋籠の外周又は外周側に複数個の偏心防止用スペーサーが取り付けられている場合において、その熱交換用配管が掘削孔の内壁面から鉄筋籠の側に移動可能に構成されていれば、既述のとおり、掘削孔の内壁面の側により近い位置に熱交換用配管を配置させることができる鉄筋籠を実現することができる。そのように熱交換用配管を配置している鉄筋籠の具体例が、本発明の第
9の形態に係るものであり、掘削孔の長軸方向に垂直な断面上において当該複数個の偏心防止用スペーサーを内包する最小半径の円を包絡円と定義するとき、当該複数個の熱交換用配管の少なくとも一部が、掘削孔への挿入完了後に当該包絡円上又はその外側に配置している鉄筋籠である。
【0029】
この場合、特に、熱交換用配管を鉄筋籠の外周又は外周側に弾性部材を介して取り付ける場合には、鉄筋籠を掘削孔に挿入する際又は挿入直前に、弾性部材を外力により変形(圧縮、湾曲等)させて熱交換用配管を包絡円内に収容させておき、挿入過程で又は挿入完了後に当該外力を弱める又はなくすことにより弾性体の形状を復元させ、これにより包絡円上又はその外側に、場合によっては掘削孔の内壁面に接触又は接触するほどに近接させることができる。熱交換用配管を鉄筋籠の外周又は外周側にヒンジを介して取り付ける場合も概ね同様であり、鉄筋籠を掘削孔に挿入する際又は挿入直前に、熱交換用配管が鉄筋籠に近づく方向に移動するようにヒンジを回動させて熱交換用配管を包絡円内に収容させておき、挿入過程で又は挿入完了後に熱交換用配管の自重により又は外力によりヒンジを逆方向に回動させて、熱交換用配管を元の位置に復帰させ、これにより包絡円上又はその外側に、場合によっては掘削孔の内壁面に接触又は接触するほどに近接させることができる。
【0030】
熱交換用配管が掘削孔の内壁面から鉄筋籠の側に移動可能に構成されていれば、複数個の当該熱交換用配管の少なくとも一部が、鉄筋籠を掘削孔に挿入しようとするときに、たとえ包絡円の外側に配置していたとしても、掘削孔への挿入直前に又は挿入過程で包絡円上又はその内側に収容させることができるので、鉄筋籠の掘削孔への挿入が当該一部により阻害することがなく、挿入を円滑に完了させることができる(本発明の第
10の形態)。
【0031】
また、複数個の熱交換用配管の少なくとも一部が掘削孔への挿入過程で包絡円上又はその外側に配置していると、鉄筋籠を掘削孔への挿入過程で熱交換用配管が掘削孔の内壁面と接触し易くなる。しかし、熱交換用配管が掘削孔の内壁面から鉄筋籠の側に移動可能に構成されていれば、掘削孔の内壁面との接触により破損し難い又は機能不全に陥り難いので、挿入を過度に神経質に行う必要がなくなり、円滑に完了させることができる(本発明の第
11の形態)。
【0032】
複数個の熱交換用配管の少なくとも一部が、掘削孔への挿入前に包絡円上又はその外側に配置し得るような場合であっても、熱交換用配管が掘削孔の内壁面から鉄筋籠の側に移動可能に構成されていれば、挿入直前に又は挿入過程で包絡円上又はその内側に収容させることができるし、挿入過程で掘削孔の内壁面との接触により破損し難い又は機能不全に陥り難いので、挿入を円滑に完了させることができる(本発明の第
12の形態)。複数個の熱交換用配管の少なくとも一部が、前記掘削孔への挿入前に前記掘削孔の長軸方向に垂直な断面の外周上又はそれよりも外側に配置し得る場合も、同様である(本発明の第
13の形態)。
【0033】
本発明の第
14の形態によれば、上記の効果を奏する熱交換用配管を備える鉄筋籠又は上記の効果を奏する鉄筋籠を用いて場所打ち杭を構築することができ、その場所打ち杭を用いる地中熱利用システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明に係る地中熱利用システムの一例である地中熱利用ヒートポンプシステムの基本構成の説明図
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る熱交換用配管及び鉄筋籠を掘削孔に設置してなる設置構造の概略を示す縦断面図
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る熱交換用配管及び鉄筋籠を掘削孔に挿入する前の当該熱交換用配管及び鉄筋籠の一例の概略を示す横断面図
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る熱交換用配管及び鉄筋籠を掘削孔に挿入する前の当該熱交換用配管及び鉄筋籠の別の例の概略を示す横断面図
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る熱交換用配管及び鉄筋籠を掘削孔に挿入する前の当該熱交換用配管及び鉄筋籠の更に別の例の概略を示す横断面図
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る熱交換用配管及び鉄筋籠を掘削孔に挿入する途中又は挿入した後の当該熱交換用配管及び鉄筋籠の一例の概略を示す横断面図
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る熱交換用配管及び鉄筋籠を掘削孔に挿入する途中又は挿入した後の当該熱交換用配管及び鉄筋籠の別の例の概略を示す横断面図
【
図9】本発明の第1の実施形態に係る熱交換用配管及び鉄筋籠を掘削孔に挿入する途中又は挿入した後の当該熱交換用配管及び鉄筋籠の更に別の例の概略を示す横断面図
【
図10】本発明の第1の実施形態に係る熱交換用配管及び鉄筋籠を掘削孔に入れ込むための操作の説明図
【
図11】本発明の第1の実施形態に係る取付部材と偏心防止用スペーサーの高さを比較して示す側面図
【
図12】本発明の第1の実施形態に係る取付部材と偏心防止用スペーサーの一例を示す(a)側面図及び(b)正面図
【
図13】本発明の第1の実施形態に係る取付部材と偏心防止用スペーサーの他の例を示す(a)側面図及び(b)正面図
【
図14】
図12や
図13に示す取付部材に熱交換用配管を固定するための熱交換用配管受座を示す正面図
【
図15】
図12に示す取付部材に熱交換用配管を固定した状態を示す側面図
【
図16】
図13に示す取付部材に熱交換用配管を固定した状態を示す側面図
【
図17】本発明の第2の実施形態に係る熱交換用配管及び鉄筋籠を掘削孔に設置してなる設置構造の概略を示す縦断面図
【
図18】本発明の第2の実施形態に係る熱交換用配管の鉄筋籠への取付部材の要部の概要を示す説明図
【
図19】本発明の第2の実施形態に係る熱交換用配管及び鉄筋籠を掘削孔に挿入する前の当該熱交換用配管及び鉄筋籠の一例の概略を示す横断面図
【
図20】本発明の第2の実施形態に係る熱交換用配管及び鉄筋籠を掘削孔に挿入する前の当該熱交換用配管及び鉄筋籠の別の例の概略を示す横断面図
【
図21】本発明の第2の実施形態に係る熱交換用配管及び鉄筋籠を掘削孔に挿入する前の当該熱交換用配管及び鉄筋籠の更に別の例の概略を示す横断面図
【
図22】本発明の第2の実施形態に係る熱交換用配管及び鉄筋籠を掘削孔に挿入する途中又は挿入した後の当該熱交換用配管及び鉄筋籠の一例の概略を示す横断面図
【
図23】本発明の第2の実施形態に係る熱交換用配管及び鉄筋籠を掘削孔に挿入する途中又は挿入した後の当該熱交換用配管及び鉄筋籠の別の例の概略を示す横断面図
【
図24】本発明の第2の実施形態に係る熱交換用配管及び鉄筋籠を掘削孔に挿入する途中又は挿入した後の当該熱交換用配管及び鉄筋籠の更に別の例の概略を示す横断面図
【
図25】特許文献1に記載された、従来の、熱交換用配管及び鉄筋籠を掘削孔に設置してなる設置構造の概略を示す縦断面図
【
図26】同じく従来の、熱交換用配管及び鉄筋籠を掘削孔に設置してなる設置構造の概略を示す横断面図
【
図27】同じく従来の、熱交換用配管及び鉄筋籠を掘削孔に設置してなる別の設置構造の概略を示す横断面図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。その際、各図面において同じ部分又は相当する若しくは共通する部分には同じ符号を付し、その説明を省略する場合がある。なお、各図面は原寸大ではなく、原寸比通りでもない。
【0036】
[実施形態1]
<地中熱利用システム>
図1は、本発明に係る地中熱利用システムの一例である地中熱利用ヒートポンプシステム50の基本構成の説明図である。
【0037】
図1中、地中熱利用ヒートポンプシステム(以下、地中熱利用システムと称する)50は、少なくとも、掘削孔1に設置された杭に取り付けられ、地中との熱交換を行う熱交換用配管6と、凝縮器、膨張弁、蒸発器、圧縮機を内蔵するヒートポンプ503と、建築物501の室内と熱交換を行う室内空調機502と、熱交換用配管6とヒートポンプ503の凝縮器との間で熱伝達を行う第1の熱伝達物質Xと、室内空調機502とヒートポンプ503の蒸発器との間で熱伝達を行う第2の熱伝達物質Yとを備えている。第1の熱伝達物質X及び第2の熱伝達物質Yは、図示しないポンプにより駆動され、移動する。
【0038】
なお、多くの場合、掘削孔1は地面Sに対して鉛直下方に形成され、建築物501は地面S上に建築されるが、本発明における掘削孔1は地面Sに鉛直に形成されるものに限定されず、建築物501も地面S上に建築されるものに限定されない。
【0039】
第1の熱伝達物質Xは、掘削孔1に設置された杭に取り付けられた熱交換用配管6を通過することにより、地中と熱のやりとりを行い、配管接合部を収容する杭頭504を通過して、ヒートポンプ503に到達して、凝縮器と熱のやりとりを行い、その後杭頭504を通過して、再び熱交換用配管6に戻り、以後循環して同様の熱の伝達を繰り返す。第2の熱伝達物質Yは、室内空調機502において室内と熱のやりとりを行い、ヒートポンプ503に到達して、蒸発器と熱のやりとりを行い、再び室内空調機502に戻り、以後循環して同様の熱の伝達を繰り返す。なお、室内空調機502とヒートポンプ503の蒸発器との間に熱交換器を介在させ、第2の熱伝達物質Yを当該熱交換器と室内空調機502との間で循環させ、第3の熱伝達物質を当該熱交換器と蒸発器との間で循環するように構成してもよい。
【0040】
上記のような構成により、地中熱を、ヒートポンプ503を介して、建築物501の室内空調に利用することができる。
【0041】
<熱交換用配管及び鉄筋籠の設置構造(その1)>
本発明の第1の実施形態に係る熱交換用配管及び鉄筋籠について、
図2乃至
図16を参照して説明する。
【0042】
図2乃至
図16において、符号1は掘削孔、符号2は基礎杭(コンクリート杭)を場所打ち工法により構築するための鉄筋籠、符号3は鉄筋籠2の主筋、符号4は鉄筋籠2のフープ筋、符号5及び5a、5b、5c、5dは偏心防止用スペーサー(単にスペーサーとも称する)、符号6は熱交換用配管、符号7は、鉄筋籠2の外周側から掘削孔1の内壁面までの間の空隙、符号C(
図3参照)は包絡円、符号Eは、熱交換用配管保持手段である弾性部材を備えた取付部材(弾性取付部材とも称する)である。
【0043】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る熱交換用配管6及び鉄筋籠2を掘削孔1に設置してなる設置構造の概略を示す縦断面図である。
図3は、包絡円Cの説明図である。
図4、
図5及び
図6は、それぞれ、本発明の第1の実施形態に係る熱交換用配管6及び鉄筋籠2を掘削孔1に挿入する前の当該熱交換用配管6及び鉄筋籠2の一例、別の例及び更に別の例の概略を示す横断面図であり、
図7、
図8及び
図9は、それぞれ、本発明の第1の実施形態に係る熱交換用配管6及び鉄筋籠2を掘削孔1に挿入する途中又は挿入した後の当該熱交換用配管6及び鉄筋籠2の一例、別の例及び更に別の例の概略を示す横断面図である。
図2中の上下方向の矢印Aは、第1の熱伝達物質Xの移動方向を示している。
【0044】
鉄筋籠2は、多数の長さ方向の主筋3のまわりに多数のフープ筋4を配筋した構成であり、その上部側の外周に偏心防止用スペーサー5を備えている。偏心防止用スペーサー5は、鉄筋籠2、従って構築される基礎杭が掘削孔1内で偏って設置することを防止するための部材である。第1の実施の形態では、偏心防止用スペーサー5は
図2によく示されるように、外側が狭い台形板状で、鉄筋籠2の外周に90度の等間隔で4個取り付けられている。
【0045】
熱交換用配管6は、一対のパイプの下端部が互いに連なって成る全体としてU字状の配管であり、当該一対のパイプにより偏心防止用スペーサー5とは別の弾性取付部材Eを挟んだ形で鉄筋籠2に取り付けられ、当該一対のパイプは弾性取付部材Eに樹脂製のバンド・針金等により又はクランプ等を用いて取り付けられている。こうして鉄筋籠2の外周には、軸方向に沿って、4本のU字状の熱交換用配管6が弾性取付部材Eを介して設置される。
【0046】
弾性部材を備える取付部材Eは、それが備える弾性部材の弾性変形により、熱交換用部材6を、少なくとも、鉄筋籠2の横断面上において鉄筋籠2の内側から外側又は外側から内側に向かう方向(たとえば半径方向)に移動可能にする部材である。弾性部材は、弾性変形する部材であればよく、コイルバネ、板バネ、樹脂製の弾性円柱などがその代表例である。弾性部材の取付部材Eへの組み込み方は設計次第であり、場合によっては弾性部材又は弾性変形する部材そのものにより取付部材E又はその要部の一部又は全部を構成していてもよい。
【0047】
上記のような熱交換用配管6を備える鉄筋籠2を準備して、これを掘削孔1内に挿入した後、コンクリートを打設して基礎杭の本体を構築する。すると、熱交換用配管6と土(掘削孔)との間にはコンクリートが充填されてしまうものの、熱交換用配管6が鉄筋籠2の外周側に突出している部材(弾性取付部材E)に取り付けられている分だけ熱交換用配管6を杭内部に設置する場合よりも掘削孔1の内壁面により近い位置に配置させることができ、熱交換用配管6と掘削孔1の内壁面との間のコンクリート厚を小さくすることができ、従って熱交換を効率よく行うことができる。
【0048】
ここで、前記弾性取付部材Eの高さH1は、
図11に示す如く、偏心防止用スペーサー5の高さHより高くされ、偏心防止用スペーサー5より外側へ突出するようにされている。
【0049】
前記弾性取付部材Eは、
図12に一例を示す如く、偏心防止用スペーサー5と同じ形状であっても剛性の低い材料を用いることができる。例えば、スペーサー材質が鉄の場合、スペーサー厚みを薄くすることにより剛性を低くする。または、アルミや銅などのヤング係数の小さい材料を使用し剛性を低くすることができる。
【0050】
また、前記弾性取付部材Eは、
図13に他の例を示す如く、偏心防止用スペーサー5と同じ材質であっても、捻りeを設けることにより剛性の低い構造E’とすることもできる。
【0051】
図12や
図13に示した弾性取付部材Eには、
図14に示すような、配管固定用結束バンド取付穴61が形成された熱交換用配管受座60を用いて熱交換用配管6が固定される。即ち、
図12に示した弾性取付部材Eには、
図15に示すように結束バンド70を用いて熱交換用配管6が固定され、
図13に示した弾性取付部材E’には、
図16に示すように結束バンド70を用いて熱交換用配管6が固定される。
【0052】
なお、
図14では配管固定用結束バンド取付穴61の数が熱交換用配管6毎に上下2対とされていたが、熱交換用配管6毎に上下1対又は3対以上でも良い。
【0053】
<弾性取付部材Eの役割>
図3に示すように、掘削孔1の軸方向に垂直な断面(横断面)上において複数個の偏心防止用スペーサー5(5a、5b、5c、5d)を内包する最小半径の円を包絡円Cと定義するとき、掘削孔1に鉄筋籠2を挿入する前に弾性取付部材Eを圧縮変形させて高さ(鉄筋籠2の横断面上において当該鉄筋籠2の内側から外側又は外側から内側に向かう方向における弾性取付部材Eの高さ)H1を縮めて、熱交換用配管6を包絡円Cの内側に配置しておけば、鉄筋籠2を掘削孔1に挿入する際(特に挿入途中から挿入完了までの間)、熱交換用配管6の存在が邪魔にならないので、挿入を円滑に行うことができる。
【0054】
つまり、鉄筋籠2を掘削孔1に挿入する前の熱交換用配管6の配置状態としては、横断面上において、熱交換用配管6の少なくとも一部が、(1)
図4に示すように包絡円Cの内側又は包絡円C上に配置している状態、(2)
図5に示すように、包絡円Cの外側と掘削孔1の開口上との間に配置している状態、(3)
図6に示すように、掘削孔1の開口の外側に配置している状態などが考えられ、鉄筋籠2を掘削孔1に挿入する途中又は挿入後(特に設置後)の熱交換用配管6の配置状態としては、横断面上において、熱交換用配管6の少なくとも一部が、(ア)
図7に示すように包絡円Cの内側又は包絡円C上に配置している状態、(イ)
図8に示すように包絡円Cの外側と掘削孔1の内壁面との間に配置している状態、(ウ)弾性取付部材Eが空隙7内で掘削孔1の内壁面に接触して変形するほどに弾性部材が伸長した結果、
図9のように掘削孔1の内壁面に接触する位置又は逆に内壁面から多少離隔した位置(それでもなお内壁面にかなり近接した位置)に配置している状態などが考えられるところ、熱交換用配管6を鉄筋籠2に弾性取付部材Eを介して取り付けているので、鉄筋籠2を掘削孔1に挿入する前に弾性取付部材Eを縮めておくことにより、上記(2)又は(3)の状態にあった熱交換用配管6を上記(1)の配置状態にすることができる。それ故、鉄筋籠2を掘削孔1に挿入する際、熱交換用配管6の存在が邪魔にならないので、挿入作業を円滑に行うことができる。
【0055】
なお、鉄筋籠2を掘削孔1に挿入した後に弾性取付部材Eを圧縮力から開放させて伸長させれば、熱交換用配管6を上記(イ)又は(ウ)の配置状態にすることができる。それ故、熱交換用配管6を掘削孔1の内壁面に更に近い位置に配置させることができ、従って熱交換を効率よく行うことができる。
【0056】
無論、挿入した後も弾性取付部材Eを圧縮力から開放させずに、これを縮めたままにすれば、熱交換用配管6を上記(ア)の配置状態にすることもできる。
【0057】
更に、掘削孔1に鉄筋籠2を挿入する際に熱交換用配管6が掘削孔1の内壁面に接触しても、その接触の際に受ける外力は弾性取付部材Eの変形(主として圧縮変形)を通じて弱める又は吸収することができるので、熱交換用配管6は、破損し難い若しくは機能不全に陥り難いものになる。それゆえ、上記のような熱交換用配管6を備える鉄筋籠2を用いれば、地中との熱交換機能が健全に維持される基礎杭を構築することができる。
【0058】
つまり、仮に、鉄筋籠2を掘削孔1に挿入する前において包絡円Cの外側と掘削孔1の開口上との間又は掘削孔1の外側に配置している熱交換用配管6を、弾性取付部材Eではなく、剛性の高い部材を介して鉄筋籠2に取り付けたとすると、鉄筋籠2を掘削孔1に挿入する際、当該熱交換用配管6、特にそのU字状の下端部は、地面Sと衝突又は激しく接触するはずである(
図10(a)参照)。
【0059】
しかし、そのような配置状態にある熱交換用配管6を、
図5又は
図6に示すように弾性取付部材Eを介して鉄筋籠2に取り付けておけば、鉄筋籠2の軸方向に延設された熱交換用配管6と鉄筋籠2との距離が下方にゆくほど小さくなるように弾性取付部材Eを変形させることにより(
図10(b)の矢印P1、P2)、熱交換用配管6の∪字状の下端部を鉄筋籠2側に移動させ(
図10(b)の矢印Q1)、横断面上において熱交換用配管6のU字状の下端部を掘削孔1の開口の内側に入るようにすることができる(
図10(b)参照)。
【0060】
すると、鉄筋籠2を掘削孔1に挿入する前において上記(2)又は(3)の状態にあった熱交換用配管6であっても、そのU字状の下端部を鉄筋籠2とともに掘削孔1に入れ込むことができ、鉄筋籠2とともに掘削孔1に挿入することができるようになる(
図10(c)参照)。そして、その挿入の過程では、熱交換用配管6が当該内壁面に概ね倣うように弾性取付部材Eが変形し(
図10(b)の矢印P3、P4)、それに伴いU字状の下端部が掘削孔1の内壁面により近づく方向(
図10(c)の矢印Q2)に戻る。その結果、熱交換用配管6は掘削孔1の内壁面に接触し擦過を受けることになるが、その接触により熱交換用配管6が受ける外力を弾性取付部材Eの変形を通じて弱める又は吸収することができるので、熱交換用配管6が大きな損傷を受けたり、事後に機能不全に陥ったりする事態を避けることができる(
図10(c)参照)。
【0061】
なお、掘削孔1に挿入する前において上記(2)又は(3)の状態にあった熱交換用配管6は、
図10に示すようにして挿入することにより、掘削孔1内で、上記(イ)又は(ウ)の配置状態になる。それ故、熱交換用配管6を掘削孔1の内壁面に更に近い位置に配置させることができ、従って熱交換を効率よく行うことができる。
【0062】
一方、鉄筋籠2を掘削孔1に挿入する前において包絡円Cの内側又は包絡円C上に配置している熱交換用配管6は、鉄筋籠2とともに掘削孔1に挿入する際に掘削孔1の開口部や内壁面と接触することはないはずである。偏心防止用スペーサー5がその接触を防止するからである。それ故、熱交換用配管6を鉄筋籠2に取り付ける際、弾性取付部材Eを使用せずに、剛性の高い部材を使用しても、鉄筋籠2とともに掘削孔1に挿入することにより、熱交換用配管6が大きな損傷を受けたり、事後に機能不全に陥ったりする事態が起こる心配はないはずである。
【0063】
ところが、現実には、熱交換用配管6は、包絡円Cの内側又は包絡円C上に配置していても、掘削孔1の開口部(特に地面Sにおける掘削孔1の開口と内壁面との境界である角張った縁部)や内壁面と接触してしまう場合がある。例えば、鉄筋籠2の周のまわりに取り付けられている偏心防止用スペーサー5の数が少ない場合には、
図3に示すように、隣接する偏心防止用スペーサー(5aと5b、5bと5c、5cと5d、5dと5a)の間が開き過ぎてしまい、その間の鉄筋籠2に取り付けられた熱交換用配管6が、掘削孔1への挿入の際には掘削孔1の開口部に接触したり、掘削孔1への挿入途中では掘削孔1の内壁面により近接し、ときには接触するという事態が起こり得る。このような接触は、偏心防止用スペーサー5の高さ(鉄筋籠2の横断面上において当該鉄筋籠2の内側から外側又は外側から内側に向かう方向における偏心防止用スペーサー5の高さ)H(
図3参照)が鉄筋籠2の径(即ち、フープ筋の外周径)R(
図3参照)に比べて小さい場合や、逆に鉄筋籠2の径Rが偏心防止用スペーサー5の高さHに比べて大きい場合に特に起こりやすい。
【0064】
しかし、
図4に示すように、熱交換用配管6を弾性取付部材Eを介して鉄筋籠2に取り付けておけば、そのような接触により熱交換用配管6が受ける外力を弾性取付部材Eの変形を通じて弱める又は吸収することができるので、熱交換用配管6が大きな損傷を受けたり、事後に機能不全に陥ったりする事態を避けることができる。
【0065】
なお、掘削孔1に挿入する前において
図4に示すような配置状態にあった、従って上記(1)の状態にあった熱交換用配管6は、挿入後においては、掘削孔1内で、上記(ア)の配置状態になることは言うまでもない。
【0066】
以上の説明から明らかなとおり、弾性取付部材Eは、基本的には、鉄筋籠2の軸方向又は掘削孔1の掘削方向に直角な方向に弾性変形する部材を備える部材である。
【0067】
しかし、弾性取付部材Eは、鉄筋籠2の軸方向又は掘削孔1の掘削方向にも弾性変形するものであってもよい。ただし、その変形量は小さいほど好ましい。鉄筋籠2の軸方向又は掘削孔1の掘削方向の変形量が大きいと、熱交換用配管6を備える鉄筋籠2を掘削孔1内に挿入する過程で掘削孔1の内壁面との接触により圧力を受けて或いは挿入し設置した後にコンクリートを打設して基礎杭の本体を構築する際、充填されるコンクリートから圧力を受けて引き摺られて、熱交換用配管6が掘削孔1内の望ましくない又は予期せぬ位置に移動してしまうおそれがあるからである。それ故、必要に応じて、弾性取付部材Eや熱交換用配管6が鉄筋籠2の軸方向に変形することを阻止又は一定範囲内に制限する工夫(例えば、図示しない移動規制部材を取り付けるなどの工夫)を施すようにする。
【0068】
[実施形態2]
<熱交換用配管及び鉄筋籠の設置構造(その2)>
次に、
図1に示す地中熱利用システムに適用可能な熱交換用配管及び鉄筋籠の別の設置構造について、
図17乃至
図24を参照して説明する。
【0069】
図17乃至
図24において、符号Fは、ヒンジ機構f(f1〜f3)を備える取付部材である。
【0070】
図17は、本発明の第2の実施形態に係る熱交換用配管6及び鉄筋籠2を掘削孔1に設置してなる設置構造の概略を示す縦断面図である。
図18は、取付部材Fの要部の説明図である。
図19、
図20及び
図21は、それぞれ、本発明の第2の実施形態に係る熱交換用配管6及び鉄筋籠2を掘削孔1に挿入する前の当該熱交換用配管6及び鉄筋籠2の一例、別の例及び更に別の例の概略を示す横断面図であり、
図22、
図23及び
図24は、それぞれ、本発明の第2の実施形態に係る熱交換用配管6及び鉄筋籠2を掘削孔1に挿入する途中又は挿入した後の当該熱交換用配管6及び鉄筋籠2の一例、別の例及び更に別の例の概略を示す横断面図である。
【0071】
図17に示す設置構造は、鉄筋籠2の外周に、その軸方向に沿って、4本のU字状の熱交換用配管6が、熱交換用配管保持手段である取付部材Fを介して設置される点を除き、
図1に示すものと同じである。
【0072】
取付部材Fは、熱交換用配管6を、少なくとも、鉄筋籠2の横断面上において鉄筋籠2の内側から外側又は外側から内側に向かう方向(たとえば半径方向)に、移動可能に保持する部材である。
【0073】
上記のような熱交換用配管6を備える鉄筋籠2を準備して、これを掘削孔1内に挿入した後、コンクリートを打設して基礎杭の本体を構築する。すると、熱交換用配管6と土(掘削孔)との間にはコンクリートが充填されてしまうものの、熱交換用配管6が鉄筋籠2の外周側に突出している部材(取付部材F)に取り付けられている分だけ熱交換用配管6を杭内部に設置する場合よりも掘削孔1の内壁面により近い位置に配置させることができ、熱交換用配管6と掘削孔1の内壁面との間のコンクリート厚を小さくすることができ、従って熱交換を効率よく行うことができる。
【0074】
取付部材Fは、第1の実施形態の弾性取付部材Eと同様な方法で、熱交換用配管6を保持する。
【0075】
<取付部材Fの役割>
取付部材Fは、
図18によく示される如く、主筋3又は鉄筋籠2、その他の場所に固定される第1の固定部f1と、熱交換用配管6に固定される第2の固定部f2と、第1の固定部f1と第2の固定部f2との間を結合するヒンジ部f3とを備えるヒンジ機構fを要部とする部材である。
【0076】
ヒンジ部f3は、第1の固定部f1及び第2の固定部f2のそれぞれに対して、制限された範囲内で回動自在に取り付けられている。このため、熱交換用配管6は、
図18(a)に示すような鉄筋籠2により近い位置や、
図18(c)に示すような鉄筋籠2からより離れた位置や、
図18(b)に示すような、
図18(a)に示す位置と
図18(c)に示す位置の間の位置に配置することができる。そして、掘削孔1に鉄筋籠2を挿入する前に取付部材Fを鉄筋籠2の側に寄せて高さ(鉄筋籠2の横断面上において当該鉄筋籠2の内側から外側又は外側から内側に向かう方向における取付部材Fの高さ)H1を縮めて、熱交換用配管6を包絡円Cの内側に配置しておけば、鉄筋籠2を掘削孔1に挿入する際(特に挿入途中から挿入完了までの間)、熱交換用配管6の存在が邪魔にならないので、挿入を円滑に行うことができる。
【0077】
つまり、鉄筋籠2を掘削孔1に挿入する前の熱交換用配管6の配置状態としては、横断面上において、熱交換用配管6の少なくとも一部が、(A)
図19に示すように包絡円Cの内側又は包絡円C上に配置している状態、(B)
図20に示すように、包絡円Cの外側と掘削孔1の開口上との間に配置している状態、(C)
図21に示すように、掘削孔1の開口の外側に配置している状態などが考えられ、鉄筋籠2を掘削孔1に挿入する途中又は挿入後(特に設置後)の熱交換用配管6の配置状態としては、横断面上において、熱交換用配管6の少なくとも一部が、(x)
図22に示すように包絡円Cの内側又は包絡円C上に配置している状態、(y)
図23に示すように、掘削孔1の内壁面に接触することなく包絡円Cの外側と掘削孔1の内壁面との間に配置している状態、(z)
図24に示すように掘削孔1の内壁面に接触する位置に配置している状態などが考えられるところ、熱交換用配管6を鉄筋籠2に取付部材Fを介して取り付けているので、鉄筋籠2を掘削孔1に挿入する前にヒンジ機構f又は取付部材Fにより熱交換用配管6を鉄筋籠2の側に寄せておき(
図18(a)又は(b)参照)、これにより、上記(B)又は(C)の状態にあった熱交換用配管6を上記(A)の配置状態にすることができる。それ故、鉄筋籠2を掘削孔1に挿入する際、熱交換用配管6の存在が邪魔にならないので、挿入作業を円滑に行うことができる。
【0078】
なお、鉄筋籠2を掘削孔1に挿入した後にヒンジ機構f又は取付部材Fにおいて熱交換用配管6を鉄筋籠2の側から離せば(
図18(b)又は(c)参照)、熱交換用配管6を上記(y)又は(z)の配置状態にすることができる。
【0079】
無論、挿入した後もヒンジ機構f又は取付部材Fにおいて熱交換用配管6を鉄筋籠2の側に寄せたままにすれば、熱交換用配管6を上記(x)の配置状態にすることもできる。
【0080】
更に、鉄筋籠2を掘削孔1に挿入する前に、
図18(a)に示すように第1の固定部f1と第2の固定部f2とを密着させるのではなく、
図18(b)又は(c)に示すように第1の固定部f1と第2の固定部f2との間に相対的な移動余裕(隙間)を設けておけば、挿入する際に熱交換用配管6が掘削孔1の内壁面に接触しても、その接触の際に受ける外力はヒンジ機構f又は取付部材Fの変形(主として第1の固定部f1と第2の固定部f2との距離が小さくなるような移動)を通じて弱める又は吸収することができるので、熱交換用配管6は、破損し難い若しくは機能不全に陥り難いものになる。それ故、上記のような熱交換用配管6を備える鉄筋籠2を用いれば、地中との熱交換機能が健全に維持される基礎杭を構築することができる。
【0081】
つまり、仮に、鉄筋籠2を掘削孔1に挿入する前において包絡円Cの外側と掘削孔1の開口上との間又は掘削孔1の外側に配置している熱交換用配管6を、取付部材Fではなく、剛性の高い部材を介して鉄筋籠2に取り付けたとすると、鉄筋籠2を掘削孔1に挿入する際、当該熱交換用配管6、特にそのU字状の下端部は、地面Sと衝突又は激しく接触するはずである。
【0082】
しかし、そのような配置状態にある熱交換用配管6を、
図20又は
図21に示すように取付部材Fを介して鉄筋籠2に取り付けておけば、熱交換用配管6を鉄筋籠2の側に移動させることにより、上記(B)又は(C)の状態を上記(A)の状態にすることができる。
【0083】
そこで、第1の固定部f1と第2の固定部f2との間の距離の変動がヒンジ機構fの動作範囲内で自在にしたままで、一旦上記(A)の状態になるように熱交換用配管6の位置を拘束し、
図22に示すように鉄筋籠2を掘削孔1に挿入し、挿入が完了するまで当該拘束を解かずにおけば、挿入過程で熱交換用配管6が掘削孔1の内壁面に接触する機会が減るので、熱交換用配管6が大きな損傷を受けたり、事後に機能不全に陥ったりする事態を避けることができる。
【0084】
この場合、挿入完了後に当該拘束を解けば、熱交換用配管6は、掘削孔1内で、上記(y)又は(z)の状態になるので、熱交換用配管6を掘削孔1の内壁面に更に近い位置に配置させることができ、従って熱交換を効率よく行うことができる。
【0085】
また、第1の固定部f1と第2の固定部f2との間の距離の変動がヒンジ機構fの動作範囲内で自在にしたままで、一旦上記(A)の状態になるように熱交換用配管6の位置を拘束し、
図22に示すように鉄筋籠2を掘削孔1に挿入し、その直後に当該拘束を解くと、その挿入の過程で、熱交換用配管6が当該内壁面に概ね倣うようにヒンジ機構f又は取付部材Fが変形し、それに伴い、
図23又は
図24に示すように熱交換用配管6が掘削孔1の内壁面により近づく方向に戻る。その結果(
図24に示すような場合には特に顕著に)、熱交換用配管6は掘削孔1の内壁面に接触し擦過を受けることになるが、その接触により熱交換用配管6が受ける外力をヒンジ機構f又は取付部材Fの変形を通じて弱める又は吸収することができるので、熱交換用配管6が大きな損傷を受けたり、事後に機能不全に陥ったりする事態を避けることができる。
【0086】
この場合、熱交換用配管6は、掘削孔1内で、上記(y)又は(z)の状態になるので、熱交換用配管6を掘削孔1の内壁面に更に近い位置に配置させることができ、従って熱交換を効率よく行うことができる。
【0087】
更に、既述のとおり、鉄筋籠2を掘削孔1に挿入する前において包絡円Cの内側又は包絡円C上に配置している熱交換用配管6であっても、鉄筋籠2とともに掘削孔1に挿入する際に掘削孔1の開口部や内壁面と接触することがあり得る。
【0088】
しかし、第1の固定部f1と第2の固定部f2との間の距離の変動がヒンジ機構fの動作範囲内で自在にしたままで、一旦上記(A)の状態になるように熱交換用配管6の位置を拘束し、
図22に示すように鉄筋籠2を掘削孔1に挿入すれば、挿入が完了するまで当該拘束を解かずにおくか、途中で当該拘束を解くかに拘らず、挿入過程で熱交換用配管6が掘削孔1の内壁面に接触する機会が減るので、熱交換用配管6が大きな損傷を受けたり、事後に機能不全に陥ったりする事態を避けることができる。なお、言うまでもなく、挿入が完了するまで当該拘束を解かずにおいた方が、挿入過程で熱交換用配管6が掘削孔1の内壁面に接触する機会が減るので好ましい。
【0089】
上記の第2の実施形態の説明において、一旦上記(A)の状態になるように熱交換用配管6の位置を拘束する場合について言及したが、その拘束の方法については特に制限はない。ただし、鉄筋籠2の掘削孔1への挿入完了後にその拘束を解く場合においては、事後においてその拘束を解くことが可能なものである必要がある。
【0090】
[関連事項]
図18において熱交換用配管6を破線で描いているのは、分かり易さのためである。
【0091】
本発明のいずれの実施形態においても、鉄筋籠2を熱交換用配管6とともに掘削孔1に設置して(建て込んで)場所打ちの基礎杭を構築する際には、アースドリル工法、リバースサーキュレーション工法、オールケーシング工法等の適宜の工法を適用することができる。
【0092】
本発明は、以上に記載されている実施形態に限定されず、本発明の技術的思想や目的の範囲から逸脱することなく、以上に記載されている実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができる。
【0093】
例えば、
図2には、鉄筋籠2の軸方向の上下に弾性取付部材Eが取り付けられているが、上下のいずれか一方を取付部材Fに置き換えることも可能であり、また同様に、
図17には、鉄筋籠2の軸方向の上下に取付部材Fが取り付けられているが、上下のいずれか一方を弾性取付部材Eに置き換えることも可能であり、これらはいずれも、本発明の技術的思想や目的の範囲から逸脱するものではない。
【0094】
また、ヒンジ機構fにおいて、第1の固定部f1とヒンジ部f3との結合部及び/又は第2の固定部f2とヒンジ部f3との結合部に弾性機構を組み込んで、第1の固定部f1及び/又は第2の固定部f2に対してヒンジ部f3が弾性的に変形するように構成してもよい。この場合、取付部材Fは弾性取付部材Eであるといえる。このような変形例も、本発明の技術的思想や目的の範囲から逸脱するものではない。