特許第5834891号(P5834891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5834891
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】電動車両の電源制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20060101AFI20151203BHJP
   B60L 11/14 20060101ALI20151203BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   B60L3/00 S
   B60L11/14
   H02J7/00 P
【請求項の数】8
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2011-282848(P2011-282848)
(22)【出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2013-135487(P2013-135487A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(72)【発明者】
【氏名】小坂 裕紀
【審査官】 武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−232577(JP,A)
【文献】 特開2007−159247(JP,A)
【文献】 特開2008−105466(JP,A)
【文献】 特開2007−236109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00−3/12
B60L 7/00−13/00
B60L 15/00−15/42
H02J 7/00−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、
前記バッテリに接続されて動作する複数の負荷と、
前記バッテリ及び前記複数の負荷と通信網を介して通信を行い、前記バッテリの状態、前記負荷の動作状態、前記負荷及び前記通信網の応答性、に基づいて、前記バッテリの短時間定格を超えないように前記負荷に対して前記短時間定格の使用を許可する短時間定格使用許可通知を出力する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記バッテリの相対的に長時間低トルクの使用を可能とする基準定格出力を算出する基準定格出力算出部及び相対的に短時間高トルクの使用を可能とする短時間定格出力を算出する短時間定格出力算出部と、前記バッテリの状態を検出し通知するバッテリ状態通知部と、前記負荷の動作状態を検出し通知する負荷動作状態通知部と、を備え
前記バッテリ状態通知部は、バッテリ周囲温度、バッテリ温度、バッテリ劣化度、電流積算の大きさに基づき、前記短時間定格の使用可能な時間を算出する短時間定格使用可能残時間算出部を有することを特徴とする電動車両の電源制御装置。
【請求項2】
請求項に記載の電動車両の電源制御装置において、
前記短時間定格使用可能残時間算出部は、算出した前記短時間定格の使用可能な時間から、さらに前記通信網における通信遅れ時間及び前記短時間定格使用許可が与えられている前記負荷において指令出力から実際に動作を行うまでに要する時間である応答遅れ時間を差し引いた時間を短時間定格使用可能残時間とし、
この短時間定格使用可能残時間が無くなった時点で前短時間定格の使用を禁止することを特徴とする電動車両の電源制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電動車両の電源制御装置において、
前記通信網は通信遅れを有し、
前記負荷は、前記通信遅れよりも早い応答性を有し、
前記制御装置は、
通知部からの通知により前記バッテリの状態、前記負荷の動作状態を判断し、前記負荷及び前記通信網の応答性、に基づいて、前記短時間定格使用許可通知を出力する短時間定格使用許可通知部を備えていることを特徴とする電動車両の電源制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電動車両の電源制御装置において、
前記短時間定格使用許可通知部は、前記バッテリの状態が短時間定格を使用不可と判断したときには、全ての負荷の短時間定格の使用を禁止することを特徴とする電動車両の電源制御装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の電動車両の電源制御装置において、
前記短時間定格使用許可通知部は、
前記バッテリの状態及びドライバ要求に伴い短時間定格指令を各負荷へ割り当てる短時間定格指令生成部を有し、
前記バッテリの状態が短時間定格使用可能と判断され、かつ、既に割当て済みの短時間定格指令を他の負荷へ付け替えると判断した場合、既に割当済みの前記短時間定格使用許可通知の取り下げに遅らせて、新規の割当の前記短時間定格使用許可通知を出力することを特徴とする電動車両の電源制御装置。
【請求項6】
請求項に記載の電動車両の電源制御装置において、
前記短時間定格使用許可通知部は、前記短時間定格指令の付け替えにあたり、まず、前記割当て済みの前記短時間定格使用許可通知の取り下げのみを実行し、その取り下げ実行の制御周期から1制御周期の経過後に新規割当の他の負荷への前記短時間定格使用許可通知の出力を行うことを特徴とする電動車両の電源制御装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の電動車両の電源制御装置において、
前記複数の負荷は、エンジンの動力を電力に変換するジェネレータと、前記ジェネレータの発電電力と前記バッテリの電力とを駆動力へ変換するモータと、を有し、
前記短時間定格出力算出部は、放電側短時間定格を算出する機能を有し、
前記短時間定格指令生成部は、放電側の前記短時間定格指令を、前記エンジンが停止中のとき、前記ジェネレータに優先的に割り当て、一方、前記エンジンの動作中もしくは始動禁止のとき、前記モータに優先的に割り当てることを特徴とする電動車両の電源制御装置。
【請求項8】
請求項〜請求項のいずれか1項に記載の電動車両の電源制御装置において、
前記複数の負荷は、エンジンの動力を電力に変換するジェネレータと、前記ジェネレータの発電電力と前記バッテリの電力とを駆動力へ変換するモータと、を有し、
前記短時間定格出力算出部は、充電側短時間定格を算出する機能を有し、
前記短時間定格指令生成部は、充電側の前記短時間定格指令を、前記ジェネレータの発電中は前記ジェネレータに優先的に割り当て、一方、前記ジェネレータの非発電中は前記モータに優先的に割り当てることを特徴とする電動車両の電源制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリにより複数の負荷を動作させる電動車両の電源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の運転状態に基づいて、電動機を、短時間定格による高トルク側領域と、基準定格(長時間定格)による低トルク側領域とを含む複数の出力トルク領域とに基づいて動作させる制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−186603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来技術は、短時間定格の使用対象となる負荷が、単体であり、複数の負荷を短時間定格の使用対象とした場合、複数の負荷が同時に動作すると、全体でバッテリの短時間定格を超過してしまい、バッテリを劣化させるおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、複数の負荷の短時間定格使用が重なってバッテリの短時間定格を超える入出力がなされることを防止できる電動車両の電源制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の電動車両の電源制御装置は、バッテリの短時間定格使用許可通知を出力する制御装置が、バッテリの状態、負荷の動作状態、負荷及び通信網の応答性、に基づいて、バッテリの短時間定格を超えないように負荷に対して短時間定格使用許可通知を出力するようにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電動車両の電源制御装置は、通信網と負荷の応答性を考慮した上で短時間定格使用許可通知を出力するため、通信網と負荷との応答性に基づいて、複数の負荷による短時間定格の使用が重なることを防止可能である。これにより、複数の負荷の短時間定格使用が重なってバッテリの短時間定格を超える入出力がなされることを防止できる
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施の形態の電動車両の電源制御装置を適用したシリーズ方式のハイブリッド車両を示す全体システム構成図である。
図2図2は実施例1の実施の形態の電動車両の電源制御装置の短時間定格指令の生成及び短時間定格使用許可通知の出力の処理の流れを示すフローチャートである。
図3図3は実施の形態の電動車両の電源制御装置の基本的な動作の一例を示すタイムチャートである。
図4図4は実施の形態の電動車両の電源制御装置において、短時間定格使用許可通知の付け替え判断が成される直前にジェネレータが短時間定格による放電動作を実行した場合の動作を示すタイムチャートである。
図5図5は本発明の実施の形態との比較例により、図4に示した動作例と同様の動作を実行した場合の動作を示すタイムチャートである。
図6図6は実施の形態の電動車両の電源制御装置において、短時間定格の使用を強制終了させる際の動作の一例を示すタイムチャートである。
図7図7は実施の形態の電動車両の電源制御装置において、加速中にエンジンを始動させる際の動作の一例を示すタイムチャートである。
図8図8は実施の形態との比較例により、図7の動作例と同様に加速中にエンジンを始動させる際の動作の一例を示すタイムチャートである。
図9図9は実施の形態の電動車両の電源制御装置において、ジェネレータ3の発電中に、駆動輪7に駆動輪スリップが生じてトラクションコントロール制御を実行した場合の動作の一例を示すタイムチャートである。
図10】実施の形態の電動車両の電源制御装置の要部の構成を示すブロック図である。
図11図11は実施の形態の電動車両の電源制御装置における短時間定格使用可否判断の処理の流れを示すフローチャートである。
図12図12は実施の形態の電動車両の電源制御装置における上記短時間定格使用可否判断処理における使用許可と使用禁止の判断の流れを示すフローチャートである。
図13図13は実施の形態の電動車両の電源制御装置における放電側の短時間定格使用許可の優先判断の処理の流れを示すフローチャートである。
図14図13は実施の形態の電動車両の電源制御装置における充電側の短時間定格使用許可の優先判断の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の電動車両の電源制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施の形態に基づいて説明する。
(実施の形態)
図1は本発明の実施の形態の電動車両の電源制御装置を備えた電動車両のシステム構成図である。
【0010】
この図に示すように、電動車両は、車両制御装置1とバッテリ2と、複数の負荷としてのジェネレータ3及びモータ4と、を備えている。なお、図などにおいてバッテリ2は一部BATと省略して標記する。また、ジェネレータ3は一部GENと省略して標記する。また、モータ4は一部MOTと省略標記する。
【0011】
車両制御装置1は、センサ群100などから得られる情報に基づいて電動車両全体の動作を制御するもので、通信網5に接続されている。
バッテリ2は、電力の充電及び放電を行う。
なお、バッテリ2には、バッテリ2の状態を検出するとともに、バッテリ2の動作を制御するバッテリコントロールユニット21が設けられている。
【0012】
ジェネレータ3は、エンジン6の動力を電力に変換する発電機として設けられている。このジェネレータ3は、充放電が可能であり、放電時には電動機として駆動してエンジン6の始動を行う。なお、エンジン6は図などにおいて一部ENGと省略標記する。
また、ジェネレータ3には、ジェネレータ3の動作状態を検出するとともに、ジェネレータ3の動作を制御するジェネレータコントロールユニット31が設けられている。
【0013】
モータ4は、バッテリ2及びジェネレータ3の電力を駆動力に変換して駆動輪7を駆動させる電動機として設けられている。また、モータ4は、充放電可能であり、充電時には、駆動輪7から入力される駆動力を電力に変換する発電機として駆動可能である。
なお、モータ4には、モータ4の動作状態を検出するとともに、モータ4の動作を制御するモータコントロールユニット41が設けられている。
また、エンジン6にも、エンジン6の動作状態を検出するとともに、エンジン6の動作を制御するエンジンコントロールユニット61が設けられている。
【0014】
そして、このエンジンコントロールユニット61及び前述のバッテリコントロールユニット21、ジェネレータコントロールユニット31、モータコントロールユニット41は、通信網5を介して、車両制御装置1に接続されて、相互に通信可能となっている。また、前述のように、ジェネレータ3及びモータ4は、いずれも電動機及び発動機として駆動可能であり、電力網8を介してバッテリ2に接続されて、バッテリ2に電力を入出力できるようになっている。
【0015】
バッテリコントロールユニット21は、通常使用する基準時間定格の他に基準時間定格(数十sec)よりも継続可能時間は短いが大きな出力を許容できる短時間定格(数sec)を算出する。
【0016】
また、通信網5は、その特性として通信遅れ(数十msecであって、例えば、後述の本実施の形態の1サンプリング周期相当)を有し、ジェネレータ3及びモータ4は、前記通信遅れに対して十分早い制御応答性(数mse)を有する。
【0017】
次に、図10に基づいて、車両制御装置1および各コントロールユニット21,31,41,61について説明を加える。
バッテリコントロールユニット21は、センサ群100から得られる信号に基づいて検出されたたバッテリ2の状態を車両制御装置1へ通知するバッテリ状態通知部21aを備えている。このバッテリ状態としては、センサ群100から得られるバッテリ周囲温度、バッテリ温度に加え、バッテリ劣化度判定部21bにて得られるバッテリ2の劣化状態及び電流積算部21cにて得られる使用電流の積算値が含まれる。
なお、バッテリ劣化度判定部21bにおける劣化度の判定は、バッテリ2の電圧および充放電電流に基づいて内部抵抗を求めることによって行うことができる。
【0018】
また、バッテリコントロールユニット21は、基準定格出力算出部22及び短時間定格出力算出部23を備えている。
基準定格出力算出部22は、バッテリ2の状態に応じ、長時間連続して負荷を使用することを前提とした出力である基準定格出力を決定する。
短時間定格出力算出部23は、バッテリ2の状態に応じ、短時間で使用することを前提とした最大トルクを発揮できる短時間定格出力を決定する。
これらの基準定格出力及び短時間定格出力も、バッテリ状態通知部21aにより車両制御装置1へ通知する。
【0019】
ジェネレータコントロールユニット31は、ジェネレータ3の動作状態(少なくとも出力状態を含む)を車両制御装置1に通知するジェネレータ動作状態通知部31aを備えている。
モータコントロールユニット41は、モータ4の動作状態(少なくとも出力状態を含む)を車両制御装置1に通知するモータ動作状態通知部41aを備えている。
エンジンコントロールユニット61は、エンジン6の動作状態(少なくとも出力状態を含む)を車両制御装置1に通知するエンジン動作状態通知部61aを備えている。
【0020】
また、車両制御装置1は、短時間定格使用許可通知部11、短時間定格使用可能残時間算出部14を備えている。
短時間定格使用許可通知部11は、ジェネレータコントロールユニット31及びモータコントロールユニット41に対し、ジェネレータ3とモータ4とのいずれかが短時間定格を使用するのを許可する短時間定格使用許可通知を出力する。なお、この短時間定格使用許可通知を出力する処理の詳細については後述する。また、短時間定格使用許可通知部11は、バッテリ2の状態及びドライバ要求に伴い短時間定格指令をジェネレータ3及びモータ4へ割当てる短時間定格指令生成部11aを有している。
なお、この短時間定格指令とは、短時間定格の使用を負荷であるジェネレータ3とモータ4とのいずれに割り当てるかの指令である。この短時間指令が、ジェネレータ3とモータ4との何れか一方の負荷に割り当てられ、かつ、短時間定格使用許可通知が与えられている状態において、車両制御装置1は、その一方の負荷を必要に応じ短時間定格を使用して高トルクで駆動させることができる。
【0021】
短時間定格使用可能残時間算出部14は、ジェネレータ3及びモータ4が短時間定格を使用する際に、短時間定格を使用可能な残り時間(Tzan)を算出するもので、その詳細は後述する。
【0022】
(制御フローの説明)
次に、図2に示すフローチャートに基づいて、車両制御装置1における処理の流れを説明する。
【0023】
まず、S100では、負荷としてのジェネレータ3及びモータ4の動作状態、バッテリの状態、エンジンの動作状態、加えてドライバ要求を入力し、次のステップS101に進む。なお、各動作状態は、通信網5を介して、各コントロールユニット21,31,41,61の各通知部21a,31a,41a,61aから入力する。また、ドライバ要求は、センサ群100に含まれる図示を省略したアクセルペダルセンサから得られる入力信号であり、その踏込量および踏込速度からドライバ要求を演算する。
【0024】
ステップS101では、バッテリ2の状態、ジェネレータ3の動作状態、モータ4の動作状態などから、バッテリ2が短時間定格の使用が可能であるか否かの短時間定格使用可否判断を行うとともに、短時間定格使用の優先判断を行った後、次のステップS102に進む。
なお、短時間定格使用可否判断は、短時間定格使用許可通知部11において成され、バッテリ2などの状態が短時間定格を使用可能な状態であるか否かを判断するもので、その詳細については後述する。また、短時間定格使用の優先判断は、同様に短時間定格使用許可通知部11において成され、短時間定格の使用を負荷としてのジェネレータ3とモータ4とのいずれに優先的に割り当てるかの判断であり、その詳細についても後述する。
【0025】
ステップS102では、ステップS101における短時間定格使用可否判断及び短時間定格使用の優先判断結果に応じ、負荷としてのジェネレータ3とモータ4とのいずれか一方に与える短時間定格指令を生成した後、ステップS103に進む。
【0026】
ステップS103では、ステップS101における判断結果がバッテリ2の短時間定格使用が可能であるか否か判定し、短時間定格使用不可の場合はステップS121へ進み、短時間定格使用可能の場合はステップS104へ進む。
【0027】
ステップS104では、ステップS102で生成された短時間定格指令が付け替えか否かを判定し、付け替えの場合はステップS105へ進み、付け替えでない場合は、ステップS111へ進む。なお、短時間定格指令の付け替えとは、負荷としてのジェネレータ3とモータ4のいずれか一方に既に割当て済みの短時間定格指令を、他方へ割り当てを変えることをいう。
【0028】
ステップS105では、ステップS102で現時点よりも前に生成していた短時間定格使用許可通知が与えられた負荷に対し、既に割り当てられている短時間定格使用許可通知を取り下げる指令のみを実行し、ステップS106に進む。
【0029】
ステップS106では、制御周期の1サイクル分の時間を待って、次のステップS107に進む。なお、この制御周期の1サイクル分とは、例えば、10〜数十msecの時間であり、少なくとも通信網5において、車両制御装置1と各コントロールユニット21,31,41の通信を少なくとも1回実施することができる時間である。
【0030】
ステップS107では、ステップS102において今回生成した短時間定格指令が与えられている負荷に対して新たに短時間定格使用許可通知を割当てる指令を出力し、終了する。
【0031】
ステップS121では、両コントロールユニット21,31に対して、短時間定格の使用禁止を通知して、終了する。
ステップS111では、ステップS102で短時間定格指令が生成されている負荷に対し、これまで出力されていた短時間定格使用許可通知を継続して出力する。
【0032】
次に、ステップS101における短時間定格使用可否判断について説明する。
短時間定格使用可否判断では、図11のフローチャートに示すように、まず、ステップS201において、短時間定格使用可能時間Tlimを算出し、ステップS202に進む。この短時間定格使用可能時間Tlimは、あらかじめ把握しているバッテリ2の能力に基づいて、バッテリ周囲温度、バッテリ温度、バッテリ劣化度、電流積算の大きさ、負荷の消費電力をパラメータに算出する。したがって、バッテリ供給電力が、図3などに示す予め設定された短時間定格使用可能電力に満たない場合は、短時間定格使用可能時間Tlimは0となる。
この短時間定格使用可能時間Tlimは、充電側と放電側とでそれぞれ算出する。この算出の一例を図7のタイムチャートを用いて説明する。例えば、バッテリ状態が図7に示すバッテリ供給電力の状態である場合、現在のバッテリ供給電力と、あらかじめ設定されている短時間定格使用可能電力と、負荷が短時間定格を使用した場合の電力使用量と、その時点の電力消費特性とから、図示のような電力消費傾きSθを算出する。
よって、この電力消費傾きSθで電力消費を行った場合に、短時間定格使用可能電力まで低下するのに要する時間、すなわち、図7にあっては、t70時点からt72の時点までの時間が短時間定格使用可能時間Tlimとなる。
【0033】
図11に戻り、ステップS202では、短時間定格使用可能残時間Tzanを算出し、ステップS203に進む。この短時間定格使用可能残時間Tzanは、下記式(1)に示すように、短時間定格使用可能時間Tlimから、通信網5における通信遅れ時間Tdt及び短時間定格を使用している負荷の応答遅れ時間Tdoを差し引いた値である。
Tzan=Tlim−Tdt−Tdo ・・・(1)
また、負荷としてのジェネレータ3とモータ4のいずれかの使用を開始した後は、下記式(2)のように、短時間定格使用可能残時間Tzanは、上記(1)式の値から、短時間定格使用開始からの経過時間Tsを差し引いた値となり、時々刻々と減少する。
Tzan=Tlim−Tdt−Tdo−Ts ・・・(2)
なお、このステップS202の処理が、短時間定格使用可能残時間算出部14において実行される。また、通信遅れ時間Tdt及び応答遅れ時間Tdoは、あらかじめ実験などにより得られた値が入力された値である。これらの値は、固定値を用いてもよいし、温度などのパラメータにより変化する場合、あらかじめ入力された演算式に、検出されたパラメータの数値を入力して演算するようにしてもよい。
【0034】
ステップS203では、短時間定格使用可能残時間Tzanに基づいて短時間定格使用可否判断を行う。
この短時間定格使用可否判断は、短時間定格の使用前と使用中とで判断が異なる。
すなわち、短時間定格使用可否判断にあっては、まず、図12に示すように、短時間定格の使用時にセットされ、非使用時にリセットされる短時間定格使用フラグFtaが、セットされているか否か判定する(ステップS301)。
そして、短時間定格使用フラグ非セット時(短時間定格非使用時)は、短時間定格使用可能残時間Tzanが短時間定格使用可能閾値tsetよりも大きいか判定する(ステップS302)。そして、短時間定格使用可能残時間Tzanが短時間定格使用可能閾値tsetより大きい場合は短時間定格使用許可判定する(ステップS304)。一方、短時間定格使用可能残時間Tzanが、短時間定格使用可能閾値tset以下の場合は短時間定格使用禁止判定する(ステップS305)。なお、短時間定格使用可能閾値tsetは、あらかじめ負荷の性能に応じ、短時間定格の使用による高トルク駆動による効果が期待できる時間に設定されている。この効果が期待できる時間とは、放電の場合、例えば、ジェネレータ3の場合は、エンジン6を始動させるのに必要な駆動時間であり、モータ4では所望の加速性能を得ることができる駆動時間である。
【0035】
一方、短時間定格使用フラグFtaのセット時(短時間定格使用時)は、短時間定格使用可能残時間Tzanが0よりも大きいか否か判定する(ステップS303)。そして、短時間定格使用可能残時間Tzanが0よりも大きい場合は短時間定格使用を許可し(ステップS304)、短時間定格使用可能残時間Tzanが0以下の場合は短時間定格使用を禁止する(ステップS305)。
【0036】
次に、ステップS101における優先判断について説明する。
この優先判断とは、短時間定格指令をジェネレータ3とモータ4のいずれに優先的に割り当てるのかの判断であり、放電側と充電側とでそれぞれ独立して実行される。
放電側の優先判断は、図13に示すように、エンジン6が動作中、あるいは始動禁止中であるかに基づいて判断する(ステップS401)。すなわち、エンジン6が動作中か、始動禁止中である場合は、短時間定格指令をモータ4に優先的に割り当てる(ステップS402)。一方、エンジン6が非動作中であって始動禁止中ではない場合は、短時間定格指令をジェネレータ3に優先的に割り当てる(ステップS403)。
【0037】
次に、充電時の優先判断について説明する。
充電時は、図14のフローチャートに示すように、ジェネレータ3が発電中か否かに基づいて判断する(ステップS501)。すなわち、ジェネレータ3の発電中は、短時間定格指令をジェネレータ3に優先的に割り当てる(ステップS502)。一方、ジェネレータ3の非発電中は、短時間定格指令をモータ4に優先的に割り当てる(ステップS503)。
【0038】
次に、実施の形態の動作をタイムチャートに基づいて説明する。
<基本制御>
まず、図3のタイムチャートを用いて、実施の形態の電動車両の電源制御装置の基本的な動作を説明する。
この図3のタイムチャートではフローチャートのステップS101の処理において、短時間定格指令の割当てをジェネレータ3からモータ4へ付け替える判断が成された場合の動作を示している。
【0039】
このタイムチャートでは、t30の時点において、短時間定格使用許可通知部11において、上記の短時間指令の割当をジェネレータ3からモータ4に付け替える判断を行っている。
【0040】
この場合、短時間定格指令の優先判断に基づいて、短時間定格指令生成部11aによる短時間定格指令の割り当てを、t30の時点でジェネレータ3からモータ4へ付け替えている。また、ステップS101において、短時間定格指令の付け替え判断が成された場合、ステップS104→S105の処理に基づいて、まず、これまで与えられていたジェネレータ3に対する短時間定格使用許可通知を取り下げる。この取り下げは、上記の短時間定格指令と同様の制御周期で実行することからt30の時点で行う。
それに対して、短時間定格指令を付け替えるモータ4に対する短時間定格使用許可通知は、ステップS106→S107の処理に基づいて、制御周期の1サイクル分待った後に実行する。したがって、図3に示すように、モータ4に対する短時間定格使用許可通知はt31の時点で出力する。
【0041】
<短時間定格使用許可通知の付け替え動作例>
次に、図3で示したのと同様の付け替え動作において、短時間定格使用許可通知の付け替え判断が成される直前にジェネレータ3が短時間定格による放電動作を実行した場合の動作を、図4のタイムチャートに基づいて説明する。
すなわち、図4に示す例では、t40の時点で短時間定格指令の付け替え判断が成されている。さらに、図4に示す例では、この付け替え判断がなされる1サイクル前の制御周期に、ジェネレータ3による短時間定格の放電駆動指令が出力されている。
【0042】
この場合、通信網5による通信遅れ(1サイクル相当)のため、ジェネレータ3の短時間定格の放電駆動指令は、ジェネレータコントロールユニット31に対し1サイクル後のt40の時点で入力される。そして、ジェネレータ3自体は、応答性が高いため、放電駆動はt40の時点で開始されている。
【0043】
また、車両制御装置1は、t40の時点で、ジェネレータ3に対する短時間定格使用許可通知の取り下げ判断を行っている。そのため、t40の時点で出力した、短時間定格使用許可通知の取り下げ指令は、ジェネレータコントロールユニット31に対してt41の時点で入力される。したがって、ジェネレータ3は、t40の時点で開始した短時間定格による放電駆動を、t41の時点で中止し、t42の時点で駆動停止している。
【0044】
一方、車両制御装置1は、t40の時点における短時間定格指令の付け替え判断に応じたモータ4に対する短時間定格使用許可通知は、1サイクル待った後のt41の時点でモータコントロールユニット41に対して出力する。そして、前述のように通信網5は、通信遅れを有していることから、このモータ4に対する短時間定格使用許可通知は、モータコントロールユニット41に、t42時点で入力される。その結果、モータ4は、t42の時点で短時間定格による放電駆動を開始しており、ジェネレータ3の短時間定格の使用とモータ4の短時間定格の使用とが同時に行われない。
【0045】
本実施の形態では、このように、短時間定格指令の付け替時には、短時間定格使用許可通知の取り下げと新規に付け替える短時間定格使用許可通知とを1サイクル周期を遅らせて行うようにした。これにより、ジェネレータ3とモータ4とが同時に短時間定格を使用することが無くなり、バッテリ供給電力(BAT供給電力と表記)は、図示のように、短時間定格出力を超えることはない。このように本実施の形態では、バッテリ2の状態、負荷の動作状態、負荷及び通信網5の応答性に応じ、バッテリ2の短時間定格を超えないよう短時間定格使用許可通知の出力制御を行っている。
【0046】
(短時間定格使用許可通知の付け替え比較例)
ここで、本実施の形態との比較例の制御装置により図4のタイムチャートで示した動作例と同様の制御を行なった場合の動作例を図5のタイムチャートに基づいて説明する。この比較例は、負荷及び通信網5の応答性に応じた短時間定格の使用許可通知を行っていない従来技術と同様のものである。
【0047】
すなわち、この比較例では、t50の時点で、短時間定格指令をジェネレータ3からモータ4へ付け替える判断を行った例である。この比較例では、t50の時点で、ジェネレータ3に対して短時間定格使用許可通知の取り下げ通知を出力するとともに、モータ4に対して短時間定格使用許可通知の通知を出力している。
この場合、ジェネレータコントロールユニット31とモータコントロールユニット41とにおいて、許可通知の取り下げと新たな許可通知の入力とが、それぞれt51の時点で行なわれる。
【0048】
そこで、この比較例において、図4に示した例と同様に、t50の時点の1サイクル前にジェネレータ3に対して短時間定格による放電駆動を指令した場合、以下のような動作となる。
すなわち、ジェネレータ3は、t50の時点で駆動を開始し、t51の時点で短時間定格使用許可通知が取り下げられることにより駆動を中止し、t53の時点で駆動を停止している。この動作は、図4に示した例と同様である。
【0049】
それに対し、この比較例では、モータ4に対する短時間定格使用許可通知は、t50の時点で出力するため、通信網5の通信遅れによりt51の時点で、モータコントロールユニット41に伝達される。よって、モータ4は、t51の時点で、短時間定格による放電駆動を開始している。
【0050】
したがって、比較例では、t51の時点からt53の時点にかけて、ジェネレータ3とモータ4とが同時に短時間定格により放電駆動する結果、t52の時点で、バッテリ供給電力が短時間定格出力を超過している。これにより、バッテリ2の劣化を招くおそれがある。
【0051】
それに対し、本実施の形態は、バッテリ2の状態、負荷の動作状態、負荷及び通信網5の応答性に応じ、バッテリ2の短時間定格を超えないよう短時間定格使用許可通知の出力を行っている。このため、比較例のように、バッテリ供給電力が短時間定格出力を超過することが無く、バッテリ2の劣化を抑制できる。
【0052】
<強制終了動作例>
次に、図6のタイムチャートに基づいて、バッテリ2の保護の観点から、短時間定格の使用を強制終了させる際の動作について説明する。
【0053】
図6では、モータ4の駆動による走行中の状態を示している。この場合、放電側は、エンジン6が非駆動中であるので、短時間定格指令は、ジェネレータ3に割り当てられている(ステップS401→S403の処理に基づく)。
【0054】
この状態から、t60の時点で、例えば、ドライバ要求によりエンジン6を始動させるべく、ジェネレータ3を、短時間定格により放電駆動している。そして、図6では、何らかの理由によりエンジン6を始動できずに、ジェネレータ3の駆動が長く続いた場合を示している。
【0055】
このような場合、車両制御装置1は、ステップS101で算出している短時間定格使用可能残時間Tzanが0以下となると、ジェネレータコントロールユニット31へ短時間定格使用禁止指令を与える。これは、図12のステップS301→S303→S305の処理に基づく。
【0056】
そこで、図6に示す例では、t61の時点で、短時間定格使用禁止指令を与え、これにより、通信遅れ及び応答遅れによりジェネレータ3は、t62の時点で短時間定格を使用した放電駆動が停止されている。
ここで、本実施の形態では、短時間定格使用可能残時間Tzanとして、短時間定格使用可能時間Tlimではなく、短時間定格使用可能時間Tlimから、通信遅れ時間Tdt及び負荷(この場合、ジェネレータ3)の応答遅れ時間Tdoを差し引いた値を用いている。
【0057】
したがって、ジェネレータ3が実際に停止したt62の時点に、短時間定格使用可能時間Tlim=0となる。このように本実施の形態では、バッテリ2の状態、負荷の動作状態、負荷及び通信網5の応答性に応じ、バッテリ2の短時間定格を超えないよう短時間定格使用許可通知の出力制御を行っている。
このため、本実施の形態では、バッテリ供給電力が、バッテリ短時間定格出力を超えることがなく、バッテリ2の保護を図ることができる。
【0058】
これに対し、短時間定格使用可能時間Tlim=0となるt62の時点で短時間定格使用禁止指令を出力した場合、t62以後も、ジェネレータ3が通信遅れ時間Tdt及び応答遅れ時間Tdoの分だけ駆動する。その結果、バッテリ供給電力が、バッテリ短時間定格出力を超えるおそれがある。
【0059】
<加速中のエンジン始動時>
次に、図7のタイムチャートに基づいて、加速中にエンジン6を始動する際の動作例について説明する。
この例では、ドライバ要求に応じ、t70の時点から車両加速中であり、モータ4の出力が増加している。同時に車両制御装置1では、バッテリ2の状態などに応じて、短時間定格使用可能残時間Tzanを算出しており、この例では、t72bの時点で、短時間定格使用可能残時間Tzanが0となると計算されている。
【0060】
そして、この例では、ドライバ要求に対するバッテリ2の出力不足を補うべくエンジン6を始動させてジェネレータ3により発電を行うために、t71の時点で、ジェネレータ3を短時間定格により放電駆動させてエンジン6の始動を行っている。これにより、t72の時点で、エンジン6が始動し、ジェネレータ3が発電状態となっている。
【0061】
また、このようにエンジン6が始動してジェネレータ3の短時間定格使用による放電駆動を終了したt72の時点は、短時間定格使用可能残時間Tzanが0となるt72bの時点よりも前である。なお、この例の場合、t72の時点からt72bの時点までの時間は、短時間定格使用可能閾値tsetに満たない時間であるとする。
【0062】
このような場合、本実施の形態では、短時間定格使用可能残時間Tzanが短時間定格使用可能閾値tsetに満たずに不十分であるため、図12のフローチャートのステップS301→S302→S305の処理に基づいて短時間定格使用禁止指示を出力する。
その結果、t72の時点からt73の時点までの間、ドライバは加速要求を行なっているが、モータ4の短時間定格の使用を禁止している。
その後、ジェネレータ3の発電により、短時間定格使用可能残時間Tzanが上昇し、短時間定格使用可能残時間Tzanが短時間定格使用可能閾値tsetを超えた時点で、ステップS302においてYES判定されて、短時間定格使用許可を出力する。
この場合、エンジン6の動作中であるため、短時間定格を、モータ4に優先割り当てることになり、(図13のステップS401→S402の処理に基づく)、t73の時点で、モータ短時間定格使用許可通知を出力し、モータ4を駆動させる。
【0063】
このモータ4の駆動により、十分な加速を得ることができる。また、このときのモータ出力の変化は、図示のように、増加あるいは一定であって、増減変化が生じていないため、車両の加速度変化は安定している。
【0064】
(加速中のエンジン始動時比較例)
次に、図8のタイムチャートに基づいて、加速中のエンジン始動時の比較例について説明する。
図8は、短時間定格使用可能時間Tlimがプラスの場合に短時間定格の使用を許可している比較例の装置により、図7の場合と同様の条件で同様の動作を行った場合を示している。したがって、この比較例では、本願実施の形態のように、短時間定格使用可能残時間Tzanが、短時間定格使用可能閾値tsetよりも多いか否かの判断を行っていない。
【0065】
この図8の比較例も、モータ4による加速走行の実行中に、t81の時点で、エンジン6を始動させ、t82の時点で、ジェネレータ3による発電を開始している。
この場合、ジェネレータ3からの電力供給が開始されたため、t83の時点で、短時間定格使用可能時間Tlimがプラスとなった結果、モータ4側に短時間定格使用許可通知を出力し、モータ4を短時間定格使用により駆動している。
その後、モータ4の短時間定格を使用した駆動により電力消費が増加し、バッテリ供給電力が低下するため、t84の時点で、短時間定格使用可能時間Tlimが0となり、モータ4の駆動を停止している。
【0066】
その後、ジェネレータ3の発電による電力供給により、t85の時点で、短時間定格使用可能時間Tlimがプラスになった結果、モータ短時間定格使用許可通知を出力し、モータ4の短時間定格駆動を行って車両を加速している。
【0067】
このような動作状況では、t81の時点からt85の時点の短時間の間に、モータ4の出力が、基本定格−短時間定格−基本定格と変化するため、車両の前後加速度が非連続になり乗り心地の悪化を招くおそれがある。
それに対し、本実施の形態では、図7に示したように、車両の前後加速度がなめらかに繋がり、良好な乗り心地を得ることができる。
【0068】
<発電中の駆動輪スリップ発生時>
次に、図9のタイムチャートに基づいて、ジェネレータ3の発電中に、駆動輪7に駆動輪スリップが生じてトラクションコントロール制御を実行した場合の動作について説明する。
【0069】
トラクションコントロール制御は、駆動輪7に駆動輪スリップが生じた場合に、このスリップを抑えつつ、ドライバ要求に応じた駆動力に近付ける制御である。この制御では、駆動輪スリップが生じると、駆動輪7の駆動力を減少させ、その結果駆動輪7がグリップ状態に回復すると、ドライバ要求に応じた駆動力に回復させることを、駆動輪スリップが生じなくなるまで繰り返し行う。
【0070】
以下、図9に示す動作例について詳細に説明する。
このタイムチャートにおいて、t100の時点までは、モータ4を基本定格出力させて加速を行っている。また、このときエンジン6は駆動中でジェネレータ3による発電を行っている。なお、発電中は、図14のステップS501→S502の処理に基づいて、充電側の短時間定格はジェネレータ3に優先割当てされている。
【0071】
このような走行状態において、t100の時点で、駆動輪7に駆動輪スリップが発生して車輪速度が急増している。そこで、t90の時点で、この駆動輪スリップを抑えるためのトラクションコントロール制御が開始されている。このトラクションコントロール制御により、モータ4の出力が抑制され、その後、前述のようにモータ出力は、出力回復と、スリップ抑制とを繰り返した結果、図示のように波状に上下変化している。
【0072】
また、トラクションコントロール制御によるモータ4の出力低下に伴い、ジェネレータ3からの供給電力を低下させるべくエンジン6の出力を抑制している。この場合、エンジン6の応答性が緩やかであるため、エンジン出力(ENG出力と表記)は、モータ4の出力変化とは異なり、t90の時点からt94の時点にかけて緩やかに低下している。そして、このエンジン出力低下に応じて、ジェネレータ3の出力(発電量)も、t90の時点からt94の時点にかけて緩やかに低下している(図において、発電量が大きい程マイナス側の数値が大きくなる)。
【0073】
このように動作した場合、t90の時点以前では、ジェネレータ3ではモータ4の出力に応じた発電が行われており、バッテリ供給電力は0となっている。
【0074】
その後、t90の時点でトラクションコントロール制御が開始されることにより、モータ4の出力が急に低下される。一方、エンジン6の出力低下は緩やかでジェネレータ3における発電量の低下が緩やかであるため、発電量がモータ4の使用量を上回り、図示のようにバッテリ供給電力は、充電側(マイナス側)に大きく変化することになる。
【0075】
このとき、ステップS501→S502の処理に基づいて、ジェネレータ3の発電中は短時間定格指令をジェネレータ3に優先割り当てしているため、充電側で短時間定格を使用して、この過剰分の充電を行うことができる。
このように、本実施の形態では、ジェネレータ3の発電中は、ジェネレータ3に短時間定格指令を割り当てておくことで、トラクションコントロール制御が実行されても、エンジン6を停止させることなく回転数制御を継続することができる。
【0076】
(実施の形態の効果)
以上説明してきたように、本実施の形態の電動車両の電源制御装置は、以下に列挙する効果を有する。
1)実施の形態の電動車両の電源制御装置は、
バッテリ2と、
バッテリ2と接続されて動作する複数の負荷としてのジェネレータ3及びモータ4と、
バッテリ2、ジェネレータ3、モータ4と通信網5を介して通信を行い、バッテリ2の状態、ジェネレータ3及びモータ4の動作状態、ジェネレータ3,モータ4及び通信網5の応答性に基づいて、バッテリ2の短時間定格を超えないようにジェネレータ3及びモータ4に対してバッテリ2の短時間定格の使用許可通知を出力する車両制御装置1と、
を備えていることを特徴とする。
以上説明してきたように、本実施の形態では、ジェネレータ3及びモータ4を、短時間定格を使用して駆動させる場合、通信網5とジェネレータ3及びモータ4の応答性を考慮して上で短時間定格使用許可通知を出力する。このため、応答性を原因としてジェネレータ3とモータ4との短時間定格の使用が重なってバッテリ2の短時間定格を超える入出力がなされることを防止して、バッテリ2の保護を図ることができる。
【0077】
2)実施の形態の電動車両の電源制御装置は、
通信網5は通信遅れ(Tdt)を有し、
負荷としてのジェネレータ3及びモータ4は、通信遅れよりも早い応答性であって通信遅れ(Tdt)短い応答遅れ(Tdo)を有し、
車両制御装置1を含む制御装置は、
バッテリ2の相対的に長時間低トルクの使用を可能とする基準定格出力を算出する基準定格出力算出部22及び相対的に短時間高トルクの使用を可能とする短時間定格出力を算出する短時間定格出力算出部23と、バッテリ2の状態を検出し通知するバッテリ状態通知部21aと、ジェネレータ3の動作状態を検出し通知するジェネレータ動作状態通知部31aと、モータ4の動作状態を検出し通知するモータ動作状態通知部41aと、を備えているとともに、
各通知部21a,31a,41aからの通知によりバッテリ2の状態、ジェネレータ3及びモータ4の動作状態を判断し、負荷及び通信網の応答性(Tdt,Tdo)、に基づいて、短時間定格使用許可通知を出力する短時間定格使用許可通知部11を備えていることを特徴とする。
したがって、短時間定格使用許可通知部11は、各通知部21a,31a,41aからの通知並びに通信網5の通信遅れ(Tdt)とジェネレータ3及びモータ4の応答遅れ(Tdo)に基づいて短時間定格使用許可通知を出力する。これにより、上記1)のようにジェネレータ3とモータ4との短時間定格の使用が重なってバッテリ2の短時間定格を超える入出力がなされることを防止することを、より高い精度で行うことができる。
【0078】
3)実施の形態の電動車両の電源制御装置は、
短時間定格使用許可通知部11は、
バッテリ2の状態及びドライバ要求に伴い短時間定格指令をジェネレータ3及びモータ4へ割当てる短時間定格指令生成部11aを有し、
バッテリ2の状態が短時間定格使用可能と判断され、かつ、既に割当て済みの短時間定格指令を他の負荷へ付け替えると判断した場合、既に割当済みの短時間定格使用許可通知の取り下げに遅らせて、新規割当の短時間定格使用許可通知を出力することを特徴とする。
短時間定格指令の付け替えを行う場合、ジェネレータ3とモータ4との一方が短時間定格による駆動中に、短時間定格使用許可通知の取り下げと新たな割当とを同時に行うと、以下のよう動作となるおそれがある。すなわち、ジェネレータ3とモータ4とに対し、駆動中の一方の負荷に対する停止指示と、非駆動中の他方の負荷への駆動指示とを同時に行うと、応答遅れにより駆動中の負荷が停止する前に、停止中の負荷の動作が開始されるおそれがある。
この場合、両負荷が同時に短時間定格を使用し、バッテリ2の短時間定格を超える入出力が成されるおそれが生じる。
それに対し、本実施の形態では、短時間定格指令をジェネレータ3とモータ4との一方から他方へ付け替える場合、一方への割当済みの短時間定格使用許可通知の取り下げに遅らせて、他方への短時間定格使用許可通知の割当てを実行するようにした。
このため、駆動中の負荷に対する停止指示に遅れて、停止中の負荷に対する駆動開始指示が出されるため、駆動中の負荷に応答遅れがあっても、指示タイミングを遅らせた分だけ、両負荷が同時に短時間定格により駆動するおそれを抑制できる。
【0079】
4)実施の形態の電動車両の電源制御装置は、
短時間定格使用許可通知部11は、短時間定格指令の付け替えにあたり、まず、割当て済みの短時間定格使用許可通知の取り下げのみを実行し、その取り下げ実行の制御周期から1制御周期の経過後に新規に割り当てる他の負荷への短時間定格使用許可通知の出力を行うことを特徴とする。
上記3)のように短時間定格使用許可通知の割当において、新規割当の短時間定格使用許可通知の出力を遅らせるのにあたり、1制御周期遅らせるようにしたため、タイマをカウントするなどの制御と比較して、制御を簡略化できる。
【0080】
5)実施の形態の電動車両の電源制御装置は、
短時間定格使用許可通知部11は、バッテリ2の状態が短時間定格使用不可と判断したときには、全ての負荷(ジェネレータ3及びモータ4)の短時間定格の使用を禁止することを特徴とする(ステップS103→S121の処理)。
このように、全ての負荷の短時間定格の使用を禁止するため、バッテリ2の短時間定格の使用を確実に防止して、バッテリ2の確実な保護を行うことができる。
【0081】
6)実施の形態の電動車両の電源制御装置は、
バッテリ状態通知部21aは、バッテリ周囲温度、バッテリ温度、バッテリ劣化度、電流積算の大きさに基づき、短時間定格使用可能時間Tlimを算出する短時間定格使用可能残時間算出部14を有することを特徴とする。
この短時間定格使用可能残時間算出部14が算出する短時間定格使用可能時間Tlimに基づいて短時間定格の制御を行うことにより、バッテリ2の保護をより確実に行うことができる。
【0082】
7)実施の形態の電動車両の電源制御装置は、
短時間定格使用可能残時間算出部14は、算出した短時間定格使用可能時間Tlimから、さらに通信網5における通信遅れ時間Tdt及びジェネレータ3とモータ4との短時間定格使用許可が与えられている負荷において指令出力から実際に動作を行うまでに要する時間である応答遅れ時間Tdoを差し引いた時間を短時間定格使用可能残時間Tzanとし、この短時間定格使用可能残時間Tzanが無くなった時点で短時間定格の使用を禁止することを特徴とする。
ジェネレータ3とモータ4とのいずれかの負荷の短時間定格使用中に、短時間定格使用可能残時間Tzanが無くなった場合、短時間定格使用禁止の指示から、実際に負荷が停止動作を開始するまでに、通信遅れ時間Tdt及び応答遅れ時間Tdoを要する。
本実施の形態では、このように負荷が短時間定格使用禁止の指示を行った時点から、実際に停止するまでの間、短時間定格を使用しても、短時間定格使用可能時間Tlimを超えることが無く、バッテリ2の保護をより確実に行うことができる。
【0083】
8)実施の形態の電動車両の電源制御装置は、
複数の負荷は、エンジン6の動力を電力に変換するジェネレータ3と、ジェネレータ3の発電電力とバッテリ2の電力とを駆動力へ変換するモータ4と、を含み、
短時間定格出力算出部23は、放電側短時間定格を算出する機能を有し、
短時間定格指令生成部11aは、放電側の短時間定格指令を、エンジン6が停止中のとき、ジェネレータ3に優先的に割り当て、一方、エンジン6の動作中もしくは始動禁止のとき、モータ4に優先的に割り当てることを特徴とする。
したがって、図7に示したように、加速中にエンジン6を始動させると、放電側の短時間定格指令は、モータ4に優先的に割り当てられるため、この加速時に、短時間定格を使用したスムーズな加速が可能となる。
【0084】
9)実施の形態の電動車両の電源制御装置は、
複数の負荷は、エンジン6の動力を電力に変換するジェネレータ3と、ジェネレータ3の発電電力とバッテリ2の電力とを駆動力へ変換するモータ4と、を含み、
短時間定格出力算出部23は、充電側短時間定格を算出する機能を有し、
短時間定格指令生成部11aは、充電側の短時間定格指令を、ジェネレータ3の発電中はジェネレータ3に優先的に割り当て、一方、前記ジェネレータの非発電中はモータ4に優先的に割り当てることを特徴とする。
このように、ジェネレータ3の発電中は、放電側の短時間定格指令がモータ4に優先的に割り当てられる。このため、図9に示したように駆動輪スリップが発生して、モータ4の電力使用量に対してジェネレータ3の発電量が過剰になった場合、短時間定格を使用して充電することができ、バッテリ2の保護を図ることができる。
【0085】
以上、本発明の電動車両の電源制御装置を実施の形態に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0086】
例えば、実施の形態では、本発明の電動車両の制御装置を発電モータと駆動モータ(2モータ)を備えたシリーズ方式のハイブリッド車両に適用する例を示した。しかし、本発明の制御装置を適用する電動車両としては、負荷を複数有しているものであれば、2モータを備えたパラレル方式のプラグイン・ハイブリッド車両や発電/駆動兼用のモータジェネレータ(1モータ)を備えたパラレル方式のハイブリッド車両等に対しても適用することができる。また、いわゆるハイブリッド車両以外の電動車両にも適用することができる。
【0087】
また、実施の形態では、負荷としてジェネレータ3とモータ4とを示したが、負荷としては、これらに限定されるものではない。例えば、制御対象の負荷として、ジェネレータ3及びモータ4に、さらに他の負荷を追加して3以上の負荷を制御対象としてもよい。あるいは、負荷の数が2であっても、その制御対象は、ジェネレータ及びモータ以外のものを用いてもよい。
【0088】
また、実施の形態では、バッテリの短時間定格を超えないように負荷に対してバッテリの短時間定格の使用許可通知を出力するのにあたり、一方の負荷の短時間定格の使用許可取り下げから、他方の負荷の短時間定格の使用許可指令の出力まで、制御周期の1サイクル分遅らせるようにした例を示した。しかしながら、この遅らせる時間は、両負荷が同時に短時間定格を使用しないように遅らせることができるのであれば、1サイクル分の時間に限定されず、あらかじめ実験などにより求められた最適値を使用するようにしてもよく、この最適値は、1サイクル分の時間よりも長い場合も短い場合もあり得る。
【0089】
また、実施の形態では、ジェネレータ動作状態通知部31a、モータ動作状態通知部41a、バッテリ状態通知部21aを、それぞれ、ジェネレータコントロールユニット31、モータコントロールユニット41、バッテリコントロールユニット21に設けた。しかしながら、これらの各通知部21a,31a,41aは、それぞれ、各負荷の動作に関する情報が入力される部分であれば、その設置箇所は各コントロールユニット21,31,41に限らず、例えば、車両制御装置1内に設置することも可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 車両制御装置(制御装置)
2 バッテリ
3 ジェネレータ(負荷)
4 モータ(負荷)
5 通信網
6 エンジン
11 短時間定格使用許可通知部
11a 短時間定格指令生成部
14 短時間定格使用可能残時間算出部
21 バッテリコントロールユニット(制御装置)
21a バッテリ状態通知部
22 基準定格出力算出部
23 短時間定格出力算出部
31 ジェネレータコントロールユニット(制御装置)
31a ジェネレータ動作状態通知部(負荷動作状態通知部)
41 モータコントロールユニット(制御装置)
41a モータ動作状態通知部(負荷動作状態通知部)
61 エンジンコントロールユニット(制御装置)
61a エンジン動作状態通知部
100 センサ群
Tdo (負荷の)応答遅れ時間
Tdt 通信遅れ時間
Tlim 短時間定格使用可能時間
Tzan 短時間定格使用可能残時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14