特許第5834905号(P5834905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5834905-加熱装置及び加熱方法 図000002
  • 特許5834905-加熱装置及び加熱方法 図000003
  • 特許5834905-加熱装置及び加熱方法 図000004
  • 特許5834905-加熱装置及び加熱方法 図000005
  • 特許5834905-加熱装置及び加熱方法 図000006
  • 特許5834905-加熱装置及び加熱方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5834905
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】加熱装置及び加熱方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/02 20060101AFI20151203BHJP
   B23K 3/04 20060101ALI20151203BHJP
   B23K 1/018 20060101ALN20151203BHJP
   B23K 101/42 20060101ALN20151203BHJP
【FI】
   H05B3/02 B
   B23K3/04 B
   B23K3/04 Y
   !B23K1/018 A
   B23K101:42
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-286260(P2011-286260)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-134958(P2013-134958A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】曽根 俊介
【審査官】 長浜 義憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−222325(JP,A)
【文献】 特開平09−196395(JP,A)
【文献】 特開2002−025755(JP,A)
【文献】 特開2000−288724(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0155262(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/02
B23K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のヒータユニットと、
前記複数のヒータユニットをそれぞれ通電するための複数の端子と、
前記複数のヒータユニット及び前記複数の端子が配置されたベースと、
加熱対象物を支持するためのピンと、
前記複数のヒータユニットのそれぞれに対応する位置において前記ピンが貫通した状態で前記ピンを配置できる支持部と、を備え、
各前記ヒータユニットは、ヒータ、前記ヒータに設けられたヒータ端子、前記端子から前記ヒータ端子が離れるように付勢され前記支持部に配置された前記ピンにより前記ヒータが押されて前記端子及びヒータ端子が当接するように前記ヒータを付勢する付勢部、を含む、加熱装置。
【請求項2】
前記ヒータ端子は、前記加熱対象物と対向し得る前記ヒータの面の反対側に設けられている、請求項1の加熱装置。
【請求項3】
前記複数のヒータユニットの少なくとも一つは、前記ヒータが前記端子に向けて平行移動するように移動方向をガイドするガイド部を含む、請求項1又は2の加熱装置。
【請求項4】
前記端子及びヒータ端子は、互いに面接触可能な傾斜部を含み、
前記傾斜部は、前記ガイド部によってガイドされる前記ヒータの移動方向に対して傾斜している、請求項3の加熱装置。
【請求項5】
前記ヒータの移動方向から見て、前記端子の少なくとも一部は前記ヒータからはみ出ている、請求項1乃至4の何れかの加熱装置。
【請求項6】
複数のヒータと対向した支持部に対して加熱対象物を支持するためのピンを配置し、
前記支持部に配置されたピンが前記複数のヒータのうち一つを押して通電用の端子に当接させて前記ヒータを通電させる、加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置及び加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
並べられた複数のヒータユニットを備えた加熱装置がある。このような加熱装置は、対象物を複数のヒータユニットに対向するように配置して、対象物を加熱する。特許文献1、2にはこのような装置に関連した装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−270061号公報
【特許文献2】特開2010−125486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対象物の形状によっては、複数のヒータユニットのうちの一部のヒータユニットのみが対象物に対向する場合がある。対象物に対向しないヒータユニットは、対象物への加熱には充分には寄与しない。このような場合でも全てのヒータユニットを通電すると、対象物の加熱には充分に寄与しないヒータユニットも通電されるので、消費電力が浪費される。
【0005】
本発明は、消費電力の浪費が抑制された加熱装置及び加熱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示の加熱装置は、複数のヒータユニットと、前記複数のヒータユニットをそれぞれ通電するための複数の端子と、前記複数のヒータユニット及び前記複数の端子が配置されたベースと、加熱対象物を支持するためのピンと、前記複数のヒータユニットのそれぞれに対応する位置において前記ピンが貫通した状態で前記ピンを配置できる支持部と、を備え、各前記ヒータユニットは、ヒータ、前記ヒータに設けられたヒータ端子、前記端子から前記ヒータ端子が離れるように付勢され前記支持部に配置された前記ピンにより前記ヒータが押されて前記端子及びヒータ端子が当接するように前記ヒータを付勢する付勢部、を含む。
【0007】
本明細書に開示の加熱方法は、複数のヒータと対向した支持部に対して加熱対象物を支持するためのピンを配置し、前記支持部に配置されたピンが前記複数のヒータのうち一つを押して通電用の端子に当接させて前記ヒータを通電させる。
【発明の効果】
【0008】
消費電力の浪費が抑制された加熱装置及び加熱方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施例の加熱装置の例示図である。
図2図2は、プリント基板及び支持板を取り外した加熱装置の例示図である。
図3図3A、3Bは、ユニットと端子ユニットとの状態の例示図である。
図4図4A、4Bは、ユニットと端子ユニットとの状態の例示図である。
図5図5は、ユニットの断面図である。
図6図6A〜6Cは、ピンの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施例の加熱装置1の例示図である。図1では、加熱対象物であるプリント基板Pを加熱する例を示している。図1では、プリント基板Pを点線で示している。例えば、加熱装置1によりプリント基板P全体を予備加熱した上でプリント基板P上の所望の半田を半田ごてで加熱し溶融させ、所望の半田を吸引して除去する際に加熱装置1を用いることができる。尚、加熱装置1の使用用途や加熱装置1による加熱対象物はこれに限定されない。例えば、ある部材に塗布された熱硬化性樹脂を硬化させるために加熱装置1を用いてもよい。また、加熱対象物は、プリント基板のように平板状のものに限定されない。また、対象物に対して熱衝撃試験を行う際に加熱装置1を用いてもよい。例えばプリント基板に対して熱衝撃試験を行う場合には、配線を介して外部機器と接続された基板を加熱装置1で加熱しながら、プリント基板の状態を検出することができる。一般的な熱衝撃試験では、密閉された恒温槽内で対象物を加熱することにより行う。このため、対象物に対して外部機器を接続することは難しい。本実施例の加熱装置1では、対象物を密閉された空間内に配置することなく加熱できるため、対象物に対して外部機器を接続した状態で熱衝撃試験を行うことができる。
【0011】
加熱装置1は、ベース10、ベース10上に複数配置された端子ユニット20a〜20c等、ベース10と対向配置された支持板80、ベース10と支持板80との間に配置された複数のヒータユニット(以下、ユニットと称する)Ua〜Uc等を含む。ベース10は平板状である。ベース10は、複数のユニット及び複数の端子が配置されたベースの一例である。支持板80は例えば金属製であり略平板状である。支持板80は、複数のユニットのそれぞれに対応する位置においてピンが貫通した状態でピンを配置できる支持部の一例である。図3は、プリント基板Pを取り外した状態の加熱装置1を示している。図2は、プリント基板P及び支持板80を取り外した加熱装置1の例示図である。
【0012】
図2に示すように、9つのユニットUa〜Uiはベース10上にマトリクス状に配列されている。また、これらユニットUa〜Uiのそれぞれに位置的に対応するように、支持板80には孔群82a〜82iが9つ設けられている。孔群82a〜82iは、複数のユニットのそれぞれに位置的に対応した複数の貫通孔の一例である。孔群82a〜82iは、孔が形成されていない部分によって互いに区画されている。各ヒータユニットは略矩形状であり、これに対応するように各孔群の形状も略矩形状である。各ヒータユニットの熱は、これら孔群82a〜82iを介してプリント基板Pに伝達される。
【0013】
支持板80は、ベース10に設けられた複数の柱13により支持されている。これによりベース10と支持板80とは一定間隔が確保され、ベース10と支持板80との間にユニットUa〜Uiが配置されている。孔群82a〜82iの各孔には、プリント基板Pを支持するためのピン90を配置することができる。ピン90は、加熱対象物を支持するためのピンの一例である。
【0014】
端子ユニット20a〜20c等はベース10に配置されている。図1、2には、全ての端子ユニット20a〜20cを示してはいないが、ユニットUa〜Uiの同様の数だけ設けられている。これら端子ユニット20a等は、ユニットUa〜Uiを通電するためのものである。これら端子ユニット20a等は、それぞれに電源ケーブルが接続される。
【0015】
端子ユニット20a〜20cは、それぞれ、ユニットUa〜Ucを通電するためのものである。詳しくは後述するが、ユニットUaの端子が端子ユニット20aの端子に当接することによりユニットUaが通電され、ユニットUaの端子が端子ユニット20aの端子に当接していない場合にはユニットUaには通電がされない。ユニットUaは、詳しくは後述するが端子ユニット20aに接離可能であり、支持板80に配置されたピン90によってユニットUaが押されることにより端子ユニット20aに当接する。図1、2に示した状態では、ユニットUa、Ud、Ug〜Uhは無通電状態であり、ユニットUb、Uc、Ud、Ufは通電状態である。
【0016】
図3A、3B、4A、4Bは、ユニットと端子ユニットとの状態の例示図である。図4A、4Bは、一部分を省略している。図3A、4Aは、ユニットUaの端子ユニット40が端子ユニット20aに当接していない状態を示している。図3B、4Bは、ユニットUbの端子ユニット40が端子ユニット20bに当接している状態を示している。
【0017】
図4Aに示すように、ユニットUaは、ヒータH、ヒータHの底面H4側に固定されたカバー30、ヒータHと導通接続しカバー30に固定された端子ユニット40、を含む。端子ユニット40は、カバー30を介してヒータHに固定されている。ヒータHの底面H4からはヒータHに電力を供給するための耐熱性を有した電線Lが引き出されている。ヒータHの上面H2は、支持板80を介して加熱対象物であるプリント基板Pと対向し得る。上面H2からプリント基板Pに向けて熱が放射される。従って、端子ユニット40は、ヒータHの上面H2とは反対側の底面H4側に設けられている。同様に端子ユニット20aも底面H4側に設けられている。
【0018】
端子ユニット40は、台42、2つの端子44、2つの端子44にそれぞれ接続される2つのコネクタ端子49を含む。端子44は、ヒータHに設けられたヒータ端子の一例である。台42は、カバー30の外側面に固定され、絶縁性を有し、例えばプラスチック製である。端子44は、台42に固定されている。コネクタ端子49の基端は、ネジにより端子44の端部と共に台42に固定されている。これにより、コネクタ端子49は端子44と導通接続している。コネクタ端子49の先端には電線Lが接続されている。コネクタ端子49の先端はカバー30内に位置し、カバー30内でコネクタ端子49と電線Lとが接続されている。
【0019】
端子44は、台42に固定され水平方向に延びた固定部441、台42から外側に突出して斜め上側に延びた傾斜部445、を含む。その他のユニットUb〜Uiの構造もユニットUaと同様である。
【0020】
図4Aに示すように、端子ユニット20aは、台22、2つの端子24、2つの端子24に接続される2つのコネクタ端子29を含む。端子ユニット20aの端子24は、ユニットUaを通電するための端子の一例である。台22は、ベース10上に固定されており、絶縁性を有し、例えばプラスチック製である。端子24は、台22に固定されている。コネクタ端子29の基端は、ネジにより端子24の端部と共に台22に固定されている。これにより、コネクタ端子29は端子24と導通接続している。コネクタ端子29の先端には電源ケーブルのコネクタCが接続される。
【0021】
端子24は、台22に固定され水平方向に延びた固定部241、固定部241から鉛直上方に延びた延在部243、延在部243から対向するヒータH側に向かって斜め下方に延びた傾斜部245、を含む。端子24の傾斜部245と端子44の傾斜部445とは略平行である。また、傾斜部245、445は共に平面状である。その他端子ユニット20b、20c等の構造も端子ユニット20aと同様である。詳しくは後述するが、図3A、4Aに示したユニットUaは付勢されているため、端子ユニット40と端子ユニット20aとは接続しない。
【0022】
図3B、4Bに示すように、ユニットUbの端子ユニット40、端子ユニット20bは当接している。詳細には、端子24の傾斜部245と、端子44の傾斜部445とが面接触している。これにより、ユニットUbのヒータHが通電されて加熱する。支持板80に配置されたピン90にユニットUbが押されることにより、ユニットUbの端子ユニット40、端子ユニット20bは当接する。詳しくは後述する。
【0023】
図5は、ユニットUaの断面図である。カバー30は、ベース10側、即ち下方側が開いた半ケース状である。カバー30の内部には、略矩形状であるヒータHの対角線上に2つの支持機構50が設けられている。支持機構50の一端はベース10に固定され、支持機構50の他端にはカバー30が固定されている。支持機構50は、軸53、可動部55、コイルバネ58を含む。軸53は、一端がベース10に固定されている。可動部55は、軸53に摺動可能に嵌合し、カバー30にネジにより固定され、略筒状である。コイルバネ58は、可動部55とベース10との間に配置され可動部55がベース10から離れるように付勢する。軸53、可動部55は、ヒータHが端子24に向けて平行移動するように移動方向をガイドするガイド部の一例である。
【0024】
コイルバネ58は、軸53の一端側の周囲に巻回されている。コイルバネ58は、前記端子から前記ヒータ端子が離れるように付勢され前記支持部に配置された前記ピンにより前記ヒータが押されて前記端子及びヒータ端子が当接するように前記ヒータを付勢する付勢部の一例であり、例えば板バネ状であってもよいし、その他の弾性部材であってもよい。また、カバー30の上部には、軸53の他端との干渉を防止するための逃げ孔33が形成されている。上述したように、可動部55にはカバー30が固定されカバー30にはヒータHが固定されている。従って、コイルバネ58は、ベース10から離れるようにヒータHを付勢している。
【0025】
図面に示したユニットUaの場合、コイルバネ58の付勢力によってヒータH、カバー30、及び端子ユニット40がベース10から離れるように付勢されている。このため、端子ユニット40は端子ユニット20aから離間しており、ユニットUaのヒータHは無通電状態である。
【0026】
一方、図4Bに示したユニットUbの場合には、ピン90が支持板80の孔群82bの何れかの孔に挿入されて支持板80上に配置されている。支持板80上に配置されたピン90は、孔を介してその下にあるユニットUbのヒータHの上面H2をベース10側に押す。換言すれば、ピン90を孔群82bの孔に挿入して支持板80上に配置した場合に、2つのコイルバネ58の付勢力は単一のピン90の自重によりヒータHがベース10側に移動する程度に設定されている。これにより、ヒータHがベース10側に移動することにより、端子ユニット40もヒータH側に移動して端子ユニット20bと当接する。これによりユニットUbのヒータHが通電される。
【0027】
以上のように、支持板80上にピン90を配置することにより、ピン90の下側に位置するヒータHがこのピン90に押されて通電される。また、それ以外のヒータHはピン90に押されずに通電はされない。このようにプリント基板Pを支持するためのピン90をプリント基板Pの形状に対応して支持板80上の任意の位置に配置する。これにより、プリント基板Pと対向するヒータHのみが通電されプリント基板Pに対向しないヒータHには通電はされない。従って、プリント基板Pへの加熱に貢献し難いヒータHには通電されない。このようにプリント基板Pの形状に応じてプリント基板Pに対向するヒータユニットは異なり、この対向するヒータユニットのみが通電される。このため、加熱装置1の全てのヒータHを一律に通電する場合と比較して、消費電力の浪費を抑制できる。
【0028】
このように支持板80に配置されたピン90が直接ヒータHを移動させて通電させる。従って、例えば複数のヒータHの通電を個別に制御するためのコントローラは不要である。よって、本実施例の加熱装置1はコストが低減され、また、コントローラに供給する電力が不要なので消費電力が抑制されている。
【0029】
また、図4Aに示したように、端子ユニット40、20aは、ヒータHの底面H4側に設けられている。このため、端子ユニット40、20aは、ヒータHからの熱の影響が受け難い位置に設けられている。換言すれば、端子ユニット40、20aは、ヒータHからのプリント基板Pへの熱の伝達を妨げない位置に設けられている。例えば、ヒータHの上面H2側にこのような端子ユニット40を設けた場合、ヒータHからのプリント基板Pへの熱を妨げることに加え、端子ユニット40が優れた耐熱性を有していることが望まれコストが増大するおそれがある。本実施例の加熱装置1では、端子ユニット40は、ヒータHからの熱の影響が受け難い位置に設けられているので、コストの増大が抑制される。
【0030】
ここで、プリント基板Pの位置を直接検出する複数のセンサを支持板80上に設けて、このセンサからの出力に基づいてプリント基板Pに対向するヒータを通電することが考えられる。この場合、ヒータHからの熱をセンサが受けるためセンサには優れた耐熱性が望まれる。またセンサの配線作業も必要となる。このためコストが増大するおそれがある。また、これらセンサがヒータHからのプリント基板Pへの熱の伝達を妨げるおそれもある。センサをプリント基板の上方側に設けてプリント基板Pの位置も検出することも考えられる。この場合、プリント基板Pを加熱装置1により加熱しながらプリント基板Pに対して何らかの作業を行う場合には、このようなセンサは作業の邪魔になるおそれがある。また、加熱装置全体が複雑化しコスト増大するおそれがある。本実施例の加熱装置1では、端子44、24同士が直接当接してヒータHに通電されるため、上記のようなセンサは不要である。従って、本実施例の加熱装置1は低コストであり、機構が簡易であり、作業性も確保されている。
【0031】
また、図5に示したように、軸53はベース10に対して垂直に延びて、可動部55に形成された貫通孔に軸53が挿入されている。このため、可動部55は、軸53の延びた方向、即ちベース10に対して垂直方向にのみ摺動する。ここで、ベース10と平行な方向を水平方向、ベース10に垂直な方向を鉛直方向と称する。可動部55はカバー30に固定されているので、カバー30に固定されたヒータH及び端子ユニット40は、鉛直方向に平行移動する。従って、カバー30に固定された端子ユニット40も同様にベース10に配置された端子ユニット20aに向かって平行移動する。例えばピン90がヒータHの上面H2の端部を押す場合には、ユニットUaがベース10に対して傾く恐れがある。このようにユニットUaが傾いてベース10側に移動した場合、端子24に対して傾いた状態で端子44が当接し接触不良となる恐れがある。しかしながら、支持機構50により端子ユニット40は平行移動させるので端子ユニット40の端子44と端子ユニット20aの端子24との接触不良を防止できる。これにより、ピン90がヒータHの上面H2の端部を押す場合であっても、ヒータHへの安定して通電させることができる。尚、一つのヒータユニットUaに対して2つの支持機構50が設けられているため、より安定して端子ユニット40を平行移動させることができる。
【0032】
図3A、3Bに示したように、一対の端子44は水平方向に並び、同様に一対の端子24も水平方向に並んでいる。支持機構50は、一対の端子44又は一対の端子24が並んだ水平方向に垂直に端子ユニット40を移動させる。このため、一対の端子44と一対の端子24とのそれぞれ水平方向に並んだ状態で両者が平行移動する。これにより、端子44、24の接触不良が防止される。
【0033】
また、図4A、4Bに示したように、端子44の傾斜部445と端子24の傾斜部245とは互いに略平行であり、鉛直方向に対して傾斜している。ここで、支持機構50により端子ユニット40は鉛直方向に移動する。従って、傾斜部445、傾斜部245は、これらが相対移動する方向に対して傾斜している。これにより、例えば端子ユニット40の鉛直下方の移動量が好適な移動量よりも少ない場合であっても、傾斜部445、245の根元部同士の当接が確保できる。また、水平方向での端子ユニット20、40間の距離が好適な距離よりも大きい場合であっても、傾斜部445、245の先端部同士の当接が確保できる。このように、端子ユニット20、40の設置位置の精度にバラつきがある場合であっても、端子44、24の接触不良が防止される。
【0034】
また、図4Aに示すように、ヒータHの移動方向から見て、即ち鉛直方向から見て端子ユニット20aの一部はヒータHからはみ出ている。具体的には、コネクタ端子29、台22、端子24のこれらの一部がヒータHからはみ出している。例えば、端子ユニット20aを、カバー30の真下の位置や、鉛直方向から見てヒータHに完全に覆われる位置に設けた場合、ベース10からのヒータHの高さの寸法が増して加熱装置1全体の高さが増すおそれがある。端子ユニット20aの一部をヒータHからはみ出した位置に設けることにより、ヒータHの高さ寸法を抑制し、加熱装置1全体の高さ寸法が抑制される。
【0035】
次にピン90について説明する。図6A〜6Cは、ピン90の説明図である。ピン90は、先端部91、フランジ部93、縮小部95、基端部97を含む。先端部91は、プリント基板Pを支持する。フランジ部93は、先端部91よりも径が大きく軸方向の長さは短い。縮小部95の径は、フランジ部93の径よりも小さく基端部97の最小部分の幅よりも小さい。図6Bに示すように、孔87は、ピン90の基端部97の形状と対応するように長孔状に形成されている。また、フランジ部93は、孔87よりも大きく形成されている。従って、基端部97の形状と孔87の形状とが対応した状態で基端部97を孔87に挿入することができる。基端部97を孔87に挿入すると、フランジ部93が孔87周辺部に当接するまでピン90の自重によって基端部97がヒータHをベース10側に押しながら下方に移動する。フランジ部93が孔87周辺部に当接すると、ピン90が支持板80に支持される。
【0036】
基端部97を孔87に挿入されフランジ部93が孔87周辺部に当接した状態で、図6Cに示すようにピン90を90度回転させることができる。フランジ部93と基端部97との間に形成された縮小部95の径は、孔87の短手方向の長さよりも小さいからである。図6Cの状態では、基端部97とフランジ部93との間に孔87周辺部が挟まれる。このため、ピン90が離脱しないように支持板80に固定される。これにより、例えば加熱装置1全体に振動が加わった場合であっても、ピン90が支持板80から浮き上がることが防止される。これにより、端子44、24の接触不良が防止される。
【0037】
以上本発明の好ましい一実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0038】
尚、各ヒータユニットに含まれるコイルバネ58の付勢力は、単一のピン90のみにヒータHが押されただけでは移動しない程度に設定されていてもよい。この場合、例えば図6Cに示したように、支持板80にピン90が固定された状態でヒータHが下方に移動して通電されるようにしてもよい。ヒータユニットの数は複数あればよく9つに限られない。
【0039】
支持機構50は、カバー30を介してヒータHに連結されているが、ヒータHに直接連結されていてもよい。端子ユニット40は、カバー30を介してヒータHに固定されているが、耐熱性を有していれば、例えばヒータHの底面H4側に直接固定されていてもよい。
【0040】
(付記1)
複数のヒータユニットと、
前記複数のヒータユニットをそれぞれ通電するための複数の端子と、
前記複数のヒータユニット及び前記複数の端子が配置されたベースと、
加熱対象物を支持するためのピンと、
前記複数のヒータユニットのそれぞれに対応する位置において前記ピンが貫通した状態で前記ピンを配置できる支持部と、を備え、
各前記ヒータユニットは、ヒータ、前記ヒータに設けられたヒータ端子、前記端子から前記ヒータ端子が離れるように付勢され前記支持部に配置された前記ピンにより前記ヒータが押されて前記端子及びヒータ端子が当接するように前記ヒータを付勢する付勢部、を含む、加熱装置。
(付記2)
前記ヒータ端子は、前記加熱対象物と対向し得る前記ヒータの面の反対側に設けられている、付記1の加熱装置。
(付記3)
前記複数のヒータユニットの少なくとも一つは、前記ヒータが前記端子に向けて平行移動するように移動方向をガイドするガイド部を含む、付記1又は2の加熱装置。
(付記4)
前記端子及びヒータ端子は、互いに面接触可能な傾斜部を含み、
前記傾斜部は、前記ガイド部によってガイドされる前記ヒータ部の移動方向に対して傾斜している、付記3の加熱装置。
(付記5)
前記ヒータの移動方向から見て、前記端子の少なくとも一部は前記ヒータからはみ出ている、付記1乃至4の何れかの加熱装置。
(付記6)
前記端子及び前記ヒータ端子は、前記支持部に配置された単一の前記ピンによって前記ヒータが押されて当接する、付記1乃至5の何れかの加熱装置。
(付記7)
前記支持部は、前記複数のヒータユニットのそれぞれに位置的に対応した複数の貫通孔を含み、
前記支持ピンは、前記貫通孔に挿入された状態で前記貫通孔に対する回転位置に応じて前記支持部に固定、又は固定が解除される、付記1乃至6の何れかの加熱装置。
(付記8)
前記支持部は、前記複数のヒータユニットのそれぞれに位置的に対応した複数の貫通孔を含み、
前記支持ピンは、前記貫通孔を貫通して前記ヒータに当接可能な当接部、前記貫通孔を貫通せずに前記貫通孔の周辺部に支持される拡大部、を含む、付記1乃至6の何れかの加熱装置。
(付記9)
複数のヒータと対向した支持部に対して加熱対象物を支持するためのピンを配置し、
前記支持部に配置されたピンが前記複数のヒータのうち一つを押して通電用の端子に当接させて前記ヒータを通電させる、加熱方法。
【符号の説明】
【0041】
1 加熱装置
10 ベース
20a〜20c 端子ユニット
22、42 台
24 端子
245、445 傾斜部
30 カバー
40 端子ユニット
44 ヒータ端子
50 ガイド部
53 軸
55 可動部
58 コイルバネ
Ua〜Ui ヒータユニット
H ヒータ
P プリント基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6