特許第5834924号(P5834924)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5834924
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】触媒付パティキュレートフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20151203BHJP
   B01J 27/224 20060101ALI20151203BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20151203BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20151203BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20151203BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   B01J23/63 A
   B01J27/224 AZAB
   B01J37/02 301L
   B01J35/04 301E
   B01D53/94 241
   F01N3/10 A
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-3570(P2012-3570)
(22)【出願日】2012年1月11日
(65)【公開番号】特開2013-141649(P2013-141649A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2014年11月20日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 刊行物名;第108回触媒討論会 討論会A予稿集 発行者;一般社団法人 触媒学会 発行日;平成23年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】馬場 誉士
(72)【発明者】
【氏名】山田 啓司
(72)【発明者】
【氏名】重津 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見 明秀
【審査官】 安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−221204(JP,A)
【文献】 特開2009−106858(JP,A)
【文献】 特開2007−069076(JP,A)
【文献】 特開2009−039633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
B01D 53/86−53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中のパティキュレートを捕集するフィルタの排ガス通路壁に、ZrNd複合酸化物と、ZrNdPr複合酸化物と、触媒金属としての貴金属とを含む触媒層が設けられている触媒付パティキュレートフィルタにおいて、
前記ZrNd複合酸化物中のNdの含有率が5モル%以上30モル%以下であり、前記ZrNdPr複合酸化物中のPrの含有率が10モル%以上35モル%以下であり、前記ZrNd複合酸化物と前記ZrNdPr複合酸化物との混合割合が質量比で70:30から10:90の範囲であることを特徴とする触媒付パティキュレートフィルタ。
【請求項2】
排ガス中のパティキュレートを捕集するフィルタの排ガス通路壁に触媒層が設けられている触媒付パティキュレートフィルタにおいて、
前記触媒層は、触媒金属としての貴金属を担持したZrNdPr複合酸化物を含有し前記排ガス通路壁の上に設けられた下層と、触媒金属としての貴金属を担持したZrNd複合酸化物を含有し前記下層の上に設けられた上層とを備え、
前記ZrNd複合酸化物中のNdの含有率が5モル%以上30モル%以下であり、前記ZrNdPr複合酸化物中のPrの含有率が10モル%以上35モル%以下であることを特徴とする触媒付パティキュレートフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンより排出されるパティキュレートを捕集するとともに、捕集したパティキュレートを燃焼除去する触媒を備えた触媒付パティキュレートフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の希薄燃焼エンジンを搭載した自動車の排ガス通路には、排ガス中のパティキュレート(炭素質微粒子等のPM:Particulate matter)を捕集するフィルタが設けられている。このフィルタのPM堆積量が多くなると、フィルタの目詰まりを招く。そのため、フィルタの前後に設けられた圧力センサの圧力差等に基いてPM堆積量を推定し、その堆積量が所定値になった時点で、エンジンの燃料噴射制御(燃料増量や後噴射等)によってフィルタに到達する排ガスの温度を高め、PMを燃焼除去するようにされている。そして、このPMの燃焼を促進するために、フィルタの排ガス通路壁に触媒を担持することが一般に行なわれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、フィルタの排ガス通路壁に、Zrと、Ndと、Ce及びNd以外の希土類金属Rとを含有する複合酸化物に触媒金属を担持させてなる触媒材を設けることが記載されている。また、希土類金属RとしてPrを採用すると、当該複合酸化物は高温雰囲気に晒された後も酸素イオン伝導性を維持すること、優れた酸素吸蔵放出性能を有すること、PMの燃焼に有利であることが同文献に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−221204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の触媒付パティキュレートフィルタでは、触媒層表面のPM堆積量が少ないときは、そのPMが比較的効率良く燃焼除去されるが、PM堆積量が多くなると、PMの燃焼除去に時間がかかる傾向がみられる。その理由は、本発明者の実験・研究に基づく知見によれば、次のとおりである。
【0006】
すなわち、図1のグラフは触媒層に堆積したPMが燃焼していくときのPM残存割合の経時変化を模式的に示す。当初はPMの燃焼が急速に進むが、その急速燃焼域(例えば、PM残存割合が100%から50%なるまでの燃焼前期)を経た後、PMの燃焼が緩慢になる緩慢燃焼域(PM残存割合が50%から0%なるまでの燃焼後期)に移る。この点を以下詳述する。
【0007】
図2の写真に示すように、燃焼当初はPMがフィルタの表面に担持された触媒層に接触している。このため、例えば触媒層がCe系酸化物粒子やZr系酸化物粒子を含んでいる場合、図3に模式的に示すように、それら酸化物粒子から放出される活性な内部酸素が触媒層に接触しているPMに高活性状態で供給される。その結果、触媒層表面のPMが急速に燃焼していく。
【0008】
しかし、上述の如く、触媒層表面のPMが燃焼除去される結果、図4の写真に示すように、触媒層とPM堆積層との間に数十μm程度の隙間を部分的に生ずる。そのため、図5に模式的に示すように、酸化物粒子内部から放出される活性酸素は、ごく短時間であれば活性を維持するが、隙間を通る間に活性が低下し、例えば、気相中の酸素と同じ通常の酸素となる。その結果、PMの燃焼が緩慢になる。もちろん、図5左上及び左下に示すように排ガス中の酸素もPMの燃焼に寄与するが、上述の活性酸素による燃焼に比べると、その燃焼は緩慢である。
【0009】
これに対して、触媒層をその内部空隙が大きな多孔質に形成し、PMを触媒層内に入りやすくすることが考えられる。これによれば、PMが触媒層の表面だけでなく触媒層内部にも分散して堆積し、PMの多くが触媒に接触した状態になり、燃焼しやすくなる。しかし、大きな内部空隙を形成する結果、触媒層が嵩高になるため、フィルタの排ガス通路壁中の連通孔の閉塞が起こりやすくなり、フィルタを通過する排ガスの流通抵抗が大きくなるという問題がある。また、そのような触媒層の形成のために製造コストが高くなる問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、フィルタに堆積したPMの急速燃焼域及び緩慢燃焼域双方において、その燃焼が効率良く進むようにする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために、所定組成範囲のZrNd複合酸化物と所定組成範囲のZrNdPr複合酸化物とを組み合わせた。
【0012】
すなわち、請求項1に係る発明は、排ガス中のパティキュレートを捕集するフィルタの排ガス通路壁に、ZrNd複合酸化物と、ZrNdPr複合酸化物と、触媒金属としての貴金属とを含む触媒層が設けられている触媒付パティキュレートフィルタにおいて、
前記ZrNd複合酸化物中のNdの含有率が5モル%以上30モル%以下であり、前記ZrNdPr複合酸化物中のPrの含有率が10モル%以上35モル%以下であり、前記ZrNd複合酸化物と前記ZrNdPr複合酸化物との混合割合が質量比で70:30から10:90の範囲であることを特徴とする。
【0013】
本発明者の実験・研究によれば、ZrNd複合酸化物及びZrNdPr複合酸化物は共に、高い酸素イオン伝導性を持ち、酸素交換反応によって周囲から酸素を内部に取り込んで活性な酸素を放出する。特に、ZrNdPr複合酸化物は酸素が多い雰囲気での酸素交換反応特性が優れ、活性な酸素を多量に放出する。これに対して、ZrNd複合酸化物は、ZrNdPr複合酸化物に比べると、単独では活性な酸素の放出量が少ないものの、活性酸素を利用したPMの燃焼、特にPMが酸化物表面に接触している状態での燃焼に優れている。
【0014】
具体的なメカニズムは定かでないが、本発明の触媒付パティキュレートフィルタにおけるPMの燃焼は次のように考えられる。
【0015】
ZrNd複合酸化物とZrNdPr複合酸化物とが混合され、その結果、両者が部分的に接触しているため、酸素放出量が多いZrNdPr複合酸化物がZrNd複合酸化物に対する酸素供給源となり易い。すなわち、ZrNdPr複合酸化物から放出される酸素がZrNd複合酸化物に取り込まれる。或いはZrNdPr複合酸化物から放出される酸素がZrNd複合酸化物の粒子表面にスピルオーバーして供給される。その結果、PMが触媒に接触している条件下(急速燃焼域)では、ZrNd複合酸化物粒子表面において活性酸素によるPMの燃焼が効率良く進む。
【0016】
一方、PM堆積層と触媒層との間に部分的に隙間を生じてくる上述の緩慢燃焼域になると、PMとZrNd複合酸化物との接触が少なくなる。しかし、少ないながらも、その接触界面では、ZrNdPr複合酸化物が酸素供給源となる上述の効果によって、ZrNd複合酸化物の粒子表面においてPMの燃焼が進む。さらに、ZrNdPr複合酸化物はZrNd複合酸化物に対し比較的、酸化物表面との接触が乏しいPMに対しても活性な酸素を供給する能力を有しており、上述の如く隙間を生じても、急速燃焼域からの継続的なPMの燃焼が確保される。
【0017】
ここに、ZrNd複合酸化物はNdの含有率が5モル%以上30モル%以下であるときに、ZrNdPr複合酸化物はPrの含有率が10モル%以上35モル%以下であるときにそれぞれPMを効率良く燃焼する。そして、上述の如く、ZrNdPr複合酸化物がZrNd複合酸化物に対する酸素供給源となるところ、このZrNd複合酸化物とZrNdPr複合酸化物との混合割合が質量比で70:30から10:90の範囲であるときに、PMの燃焼が効率良く進む。
【0018】
貴金属としては、特にPtを採用することが好ましい。
【0019】
請求項2に係る発明は、排ガス中のパティキュレートを捕集するフィルタの排ガス通路壁に触媒層が設けられている触媒付パティキュレートフィルタにおいて、
前記触媒層は、触媒金属としての貴金属を担持したZrNdPr複合酸化物を含有し前記排ガス通路壁の上に設けられた下層と、触媒金属としての貴金属を担持したZrNd複合酸化物を含有し前記下層の上に設けられた上層とを備え、
前記ZrNd複合酸化物中のNdの含有率が5モル%以上30モル%以下であり、前記ZrNdPr複合酸化物中のPrの含有率が10モル%以上35モル%以下であることを特徴とする。
【0020】
本発明の場合、触媒金属を担持したZrNd複合酸化物が上層に含まれているから、排ガス中のPMはZrNd複合酸化物に接触した状態でフィルタに堆積し易い。先に説明したように、ZrNd複合酸化物が放出する酸素は該ZrNd複合酸化物に接触しているPMとの反応性が高いから、本発明の層構成によれば、PMの効率的な燃焼に有利になる。この場合も、下層のZrNdPr複合酸化物が上層のZrNd複合酸化物に対する酸素供給源となり、PMとの反応性が高い活性な酸素がZrNd複合酸化物から活発に放出されることになる。そして、ZrNd複合酸化物はNdの含有率が5モル%以上30モル%以下であるときに、ZrNdPr複合酸化物はPrの含有率が10モル%以上35モル%以下であるときに、それぞれPM燃焼性が良いから、PMの燃焼が効率良く進むことになる。
【0021】
貴金属としては、特にPtを採用することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る発明によれば、フィルタの排ガス通路壁に、Nd含有率が5モル%以上30モル%以下であるZrNd複合酸化物と、Pr含有率が10モル%以上35モル%以下であるZrNdPr複合酸化物と、貴金属とを含む触媒層が設けられ、ZrNd複合酸化物とZrNdPr複合酸化物との混合割合が質量比で70:30から10:90の範囲であるから、また、請求項2に係る発明によれば、排ガス通路壁の触媒層が下層と上層とを備え、下層ではPr含有率が10モル%以上35モル%以下であるZrNdPr複合酸化物に貴金属が担持され、上層ではNd含有率が5モル%以上30モル%以下であるZrNd複合酸化物に貴金属が担持されているから、ZrNd複合酸化物とZrNdPr複合酸化物とが相俟ってPMの燃焼が効率良く進むという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】触媒層に堆積したPMが燃焼していくときのPM残存割合の経時変化を模式的に示すグラフ図である。
図2】触媒層にPM堆積層が接触している状態(図1の急速燃焼域における状態)を示す顕微鏡写真である。
図3】急速燃焼域におけるPMの燃焼メカニズムを示す模式図である。
図4】触媒層と煤の堆積層との間に隙間ができた状態(図1の緩慢燃焼域における状態)を示す顕微鏡写真である。
図5】緩慢燃焼域におけるPMの燃焼メカニズムを示す模式図である。
図6】パティキュレートフィルタをエンジンの排ガス通路に配置した状態を示す図である。
図7】同フィルタを模式的に示す正面図である。
図8】同フィルタを模式的に示す縦断面図である。
図9】同フィルタの排ガス通路壁を模式的に示す拡大断面図である。
図10】カーボン堆積用の器具を示す斜視図である。
図11】ZrNd複合酸化物のNd含有率とカーボン燃焼速度との関係を示すグラフ図である。
図12】ZrNdPr複合酸化物のPr含有率とカーボン燃焼速度との関係を示すグラフ図である。
図13】ZrNd複合酸化物とZrNdPr複合酸化物との混合割合とカーボン燃焼速度との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
<パティキュレートフィルタの構造>
図6はディーゼルエンジンの排ガス通路11に配置されたパティキュレートフィルタ(以下、単に「フィルタ」という。)1を示す。フィルタ1よりも排ガス流の上流側の排ガス通路11には、活性アルミナ等のサポート材にPt、Pd等に代表される触媒金属を担持した酸化触媒(図示省略)を配置することができる。このような酸化触媒をフィルタ1の上流側に配置するときは、該酸化触媒によって排ガス中のHC、COを酸化させ、その酸化燃焼熱でフィルタ1に流入する排ガス温度を高めてフィルタ1を加熱することができ、PMの燃焼除去に有利になる。また、NOが酸化触媒でNOに酸化され、該NOがフィルタ1にPMを燃焼させる酸化剤として供給されることになる。
【0026】
図7及び図8に模式的に示すように、フィルタ1は、ハニカム構造をなしており、互いに平行に延びる多数の排ガス通路2,3を備えている。すなわち、フィルタ1は、下流端が栓4により閉塞された排ガス流入路2と、上流端が栓4により閉塞された排ガス流出路3とが交互に設けられ、排ガス流入路2と排ガス流出路3とは薄肉の隔壁5を介して隔てられている。なお、図7においてハッチングを付した部分は排ガス流出路3の上流端の栓4を示している。
【0027】
フィルタ1は、前記隔壁5を含むフィルタ本体がコージェライト、SiC、Si、サイアロンのような無機多孔質材料から形成されている。排ガス流入路2内に流入した排ガスは図8において矢印で示したように周囲の隔壁5を通って隣接する排ガス流出路3内に流出する。すなわち、図9に示すように、隔壁5は排ガス流入路2と排ガス流出路3とを連通する微小な細孔(排ガス通路)6を有し、この細孔6を排ガスが通る。PMは主に排ガス流入路2と細孔6の壁部に捕捉され堆積する。
【0028】
上記フィルタ本体の排ガス通路(排ガス流入路2、排ガス流出路3及び細孔6)を形成する壁面には触媒層7が形成されている。なお、排ガス流出路3側の壁面に触媒層を形成することは必ずしも要しない。
【0029】
<実施形態1>
実施形態1は、図9の触媒層7が、Nd含有率が5モル%以上30モル%以下のZrNd複合酸化物と、Pr含有率が10モル%以上35モル%以下のZrNdPr複合酸化物と、触媒金属としての貴金属とを含有し、ZrNd複合酸化物とZrNdPr複合酸化物との混合割合が、質量比で70:30から10:90の範囲であることを特徴とする。
【0030】
触媒層7は次の方法で形成することができる。すなわち、ZrNd複合酸化物粉末とZrNdPr複合酸化物粉末とを均一に混合する。貴金属としてPtを採用する場合、当該混合物に所定のPt担持量となるようにジニトロジアミン白金硝酸溶液をイオン交換水で希釈した溶液を加え、蒸発乾固を行なう。この乾固物を大気中において150℃で乾燥させ、粉砕後、大気中において500℃で2時間焼成することにより、触媒粉末を得る。この触媒粉末及びバインダを含むスラリーをミリングした後にフィルタにコーティングし、乾燥及び焼成を施す。以上により触媒層7が形成される。この触媒層7では、貴金属を担持したZrNd複合酸化物粒子と貴金属を担持したZrNdPr複合酸化物粒子とが混ざり合った状態になっている。
【0031】
ZrNd複合酸化物粉末は共沈法によって調製することができる。すなわち、オキシ硝酸ジルコニル溶液と硝酸ネオジム6水和物とイオン交換水とを混合した硝酸溶液に、塩基性溶液として28質量%アンモニア水の8倍希釈液を混合することにより、中和によって共沈物を得る。この共沈物を含む溶液を遠心分離器にかけて上澄み液を除去する(脱水)、そこにさらにイオン交換水を加えて撹拌する(水洗)、という脱水・水洗の操作を必要回数繰り返すことで、余剰な塩基性溶液を除去する。最終的に脱水を行なった後の共沈物について、大気中において150℃で乾燥させ、粉砕後、大気中において500℃で2時間焼成する。これにより、ZrNd複合酸化物粉末を得ることができる。ZrNdPr複合酸化物粉末も、オキシ硝酸ジルコニル溶液と硝酸ネオジム6水和物と硝酸プラセオジウムとを含有する硝酸溶液から、上述の共沈法によって得ることができる。
【0032】
以下、本実施形態を実施例等に基いて具体的に説明する。
【0033】
[テスト1;ZrNd複合酸化物の好適Nd含有率の策定]
−テストサンプルの調製−
Nd含有率が異なる複数のZrNd複合酸化物を調製し、各々にPtを2.4質量%となるように担持した。得られた各触媒粉末をフィルタにコーティングすることよってサンプルフィルタ(触媒付パティキュレートフィルタ)を得た。フィルタとしては、セル壁厚さ16mil(4.064×10−1mm)、1平方インチ(645.16mm)当たりのセル数178個のSiC製ハニカム状フィルタ(容量11.3mL(直径17mm×長さ50mm)を採用した。フィルタ1L当たりの触媒粉末のコーティング量は20.5g/L(そのうちのPt量が約0.5g/L)とした。また、サンプルフィルタの上流端及び下流端には図7及び図8に示す栓4による目封じを施した。
【0034】
−カーボン燃焼速度の測定−
サンプルフィルタのPM燃焼性能をみるために、エージング後の各サンプルフィルタにカーボン(カーボンブラック)を堆積させてカーボン燃焼速度を測定した。エージングはサンプルフィルタを大気中で800℃の温度に24時間保持する熱処理である。
【0035】
図10はカーボン堆積用の器具を示す。同図において、11はカーボン粉末を入れる容器であり、これにエア供給管12とカーボン粉末圧送管13が接続されている。カーボン粉末を容器11に入れ、圧送管13の先端にサンプルフィルタ14を嵌めて、エア供給管12からエアを容器11に吹き込む。これにより、カーボン粉末が容器11中で巻き上がり拡散しながら、エアと共に圧送管13を流れてサンプルフィルタ14に堆積していく。
【0036】
使用するカーボン粉末は超音波処理によって凝集した部分がなくなるように解砕しておく。また、容器11には、サンプルフィルタ1L当たりの堆積量が7g/Lとなる量のカーボン粉末を入れる。すなわち、事前にスリップ量(サンプルフィルタ14に堆積されずにすり抜けてしまうカーボン量)を把握しておき、容器11には堆積量(7g/L)とスリップ量とを合算した量のカーボン粉末を入れる。エアの吹き込みはSV=12000/hで3分間とすればよい。
【0037】
得られた各サンプルフィルタを模擬ガス流通反応装置に取り付け、Nガスを流通させながらそのガス温度を上昇させた。フィルタ入口温度が580℃で安定した後、Nガスから模擬排ガス(O;7.5%,残N)に切り換え、該模擬排ガスを空間速度40000/hで流した。そして、カーボンが燃焼することにより生じるCO及びCOのガス中濃度をフィルタ出口においてリアルタイムで測定し、それらの濃度から、下記の計算式を用いて、所定時間ごとに、カーボン燃焼速度(単位時間当たりのPM燃焼量)を計算した。
【0038】
カーボン燃焼速度(g/h)
={ガス流速(L/h)×[(CO+CO)濃度(ppm)/(1×10)]}×12(g/mol)/22.4(L/mol)
【0039】
上記所定時間毎のカーボン燃焼速度に基いてカーボン燃焼量積算値の経時変化を求め、カーボン燃焼率が0%から90%に達するまでに要した時間とその間のカーボン燃焼量の積算値とからカーボン燃焼速度(フィルタ1Lでの1分間当たりのPM燃焼量(mg/min-L))を求めた。結果を表1及び図11に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
カーボン燃焼速度は、Nd含有率が増大するにつれて増大し、15モル%で最大となり、その後は低下していく傾向を示している。これは、ZrNd複合酸化物では、4価のZrに対する3価のNdの割合が増えるに従って酸素欠陥が増え酸素イオン伝導性が高くなっていくところ、酸素欠陥が増えすぎると、その酸素欠陥が逆に酸素イオンの移動を妨げるためと考えられる。表1及び図11から、ZrNd複合酸化物中のNd含有率を5モル%以上30モル%以下にするとZrOよりもカーボン燃焼速度が大きくなることがわかる。より好適なNd含有率は10モル%以上25モル%以下である。
【0042】
[テスト2;ZrNdPr複合酸化物の好適Pr含有率の策定]
Pr含有率が異なる複数のZrNdPr複合酸化物(Nd含有率はいずれも15モル%)を調製し、各々にPtを2.4質量%となるように担持した。得られた各触媒粉末をテスト1と同様のフィルタにコーティングすることよってサンプルフィルタ(触媒付パティキュレートフィルタ)を得た。テスト1と同じく、触媒粉末のコーティング量は20.5g/L(そのうちのPt量が約0.5g/L)であり、サンプルフィルタの上流端及び下流端には目封じを施した。そうして、テスト1と同じ方法でエージング後の各サンプルフィルタにカーボンを堆積させてカーボン燃焼速度を測定した。結果を表2及び図12に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
ZrNdPr複合酸化物の場合、カーボン燃焼速度は、Pr含有率が増大するにつれて増大して20モル%で最大となり、その後は低下していく傾向を示している。表2及び図12から、ZrNdPr複合酸化物中のPr含有率を5モル%以上40モル%以下にすると、Nd含有率を15モル%のZrNd複合酸化物よりもカーボン燃焼速度が大きくなることがわかる。好適なPr含有率は10モル%以上35モル%以下である。
【0045】
[テスト3;ZrNd複合酸化物とZrNdPr複合酸化物の好適混合割合の策定]
テスト1及びテスト2の結果を踏まえて、Nd含有率15モル%のZrNd複合酸化物粉末と、Nd含有率15モル%、Pr含有率20モル%のZrNdPr複合酸化物粉末とを準備した。そして、ZrNd複合酸化物とZrNdPr複合酸化物の混合割合が異なる複数の混合粉末を調製し、各々にPtを2.4質量%となるように担持した。得られた各触媒粉末をテスト1と同様のフィルタにコーティングすることよってサンプルフィルタ(触媒付パティキュレートフィルタ)を得た。
【0046】
テスト1と同じく、触媒粉末のコーティング量は20.5g/L(そのうちのPt量が約0.5g/L)であり、サンプルフィルタの上流端及び下流端には目封じを施した。そうして、テスト1と同じ方法でエージング後の各サンプルフィルタにカーボンを堆積させてカーボン燃焼速度を測定した。その結果を、先のテスト1のZrNd複合酸化物単独のケース及びテスト2のZrNdPr複合酸化物単独のケースの結果と併せて、表3及び図13に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
カーボン燃焼速度は、ZrNd複合酸化物とZrNdPr複合酸化物の混合割合が30:70で最大となっている。その混合割合を70:30から10:90の範囲にすると、ZrNd複合酸化物単独及びZrNdPr複合酸化物単独の場合よりも、カーボン燃焼速度が大きくなることがわかる。ZrNdPr複合酸化物が酸素供給源となってZrNd複合酸化物からの活性酸素の放出が活発になった結果と考えられる。より好適な混合割合は50:50から10:90の範囲である。
【0049】
<実施形態2>
実施形態2は、図9の触媒層7が下層と上層を備え、下層は触媒金属としての貴金属を担持したPr含有率が10モル%以上35モル%以下のZrNdPr複合酸化物を含有し、上層は触媒金属としての貴金属を担持したNd含有率5モル%以上30モル%以下のZrNd複合酸化物を含有することを特徴とする。
【0050】
触媒層7は次の方法で形成することができる。すなわち、貴金属としてPtを採用する場合、ZrNd複合酸化物粉末及びZrNdPr複合酸化物粉末各々に所定のPt担持量となるようにジニトロジアミン白金硝酸溶液をイオン交換水で希釈した溶液を加え、蒸発乾固を行なう。この乾固物を大気中において150℃で乾燥させ、粉砕後、大気中において500℃で2時間焼成することにより、Pt担持ZrNd複合酸化物粉末及びPt担持ZrNdPr複合酸化物粉末を得る。そうして、まず、Pt担持ZrNdPr複合酸化物粉末及びバインダを含むスラリーをフィルタにコーティングし、乾燥及び焼成を施し、次いで、Pt担持ZrNd複合酸化物粉末及びバインダを含むスラリーをコーティングし、乾燥及び焼成を施すことにより触媒層7を形成する。
【0051】
以下、本実施形態を実施例に基いて具体的に説明する。
【0052】
テスト1及びテスト2の結果を踏まえて、Nd含有率15モル%のZrNd複合酸化物粉末と、Nd含有率15モル%、Pr含有率20モル%のZrNdPr複合酸化物粉末とを準備した。それら複合酸化物粉末の各々にPtを2.4質量%となるように担持してPt担持ZrNd複合酸化物粉末及びPt担持ZrNdPr複合酸化物粉末を得た。
【0053】
まず、Pt担持ZrNdPr複合酸化物粉末をバインダと共にフィルタにコーティングし、乾燥・焼成することよって下層を形成した。次いで、Pt担持ZrNd複合酸化物粉末をバインダと共にフィルタにコーティングし、乾燥・焼成することよって上層を形成した。これにより、実施例に係るサンプルフィルタ(触媒付パティキュレートフィルタ)を得た。下層及び上層各々のコーティング量は10.25g/L(そのうちのPt量が約0.25g/L)である。サンプルフィルタの上流端及び下流端には目封じを施した。そうして、テスト1と同じ方法でエージング後のサンプルフィルタにカーボンを堆積させてカーボン燃焼速度を測定した。
【0054】
比較例として、上層と下層を実施例とは逆にした、つまり、上層がPt担持ZrNdPr複合酸化物を含有し、下層がPt担持ZrNd複合酸化物を含有するサンプルフィルタを調製し、実施例と同様の条件・方法でカーボン燃焼速度を測定した。下層及び上層各々のコーティング量は10.25g/L(そのうちのPt量が約0.25g/L)である。
【0055】
実施例及び比較例の結果を、先のテスト1のZrNd複合酸化物単独のケース、テスト2のZrNdPr複合酸化物単独のケース、及びテスト3のPt担持ZrNd複合酸化物・Pt担持ZrNdPr複合酸化物混合ケース(混合割合50:50)の結果と併せて、表4に示す。
【0056】
【表4】
【0057】
カーボン燃焼速度は実施例のサンプルフィルタ(ZN上層+ZNP下層)が最も大きくなっている。上層と下層とが実施例とは逆になった比較例は、混合ケース(ZN+ZNP混合)よりもカーボン燃焼速度が低くなっている。実施例(ZN上層+ZNP下層)の場合、カーボンが上層のZrNd複合酸化物に接触した状態で堆積され、その結果、ZrNd複合酸化物が放出する酸素がカーボンの燃焼に効果的に働いたと考えられる。
【0058】
本発明は、ディーゼルエンジンに限らず、希薄燃焼ガソリンエンジンの排ガス中のパティキュレートを捕集するフィルタにも適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 フィルタ
2 排ガス流入路(排ガス通路)
3 排ガス流出路(排ガス通路)
5 隔壁
6 細孔(排ガス通路)
7 触媒層
図1
図3
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図2
図4