特許第5834968号(P5834968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5834968
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】十字軸式自在継手
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/38 20060101AFI20151203BHJP
【FI】
   F16D3/38 Z
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-17148(P2012-17148)
(22)【出願日】2012年1月30日
(65)【公開番号】特開2013-155806(P2013-155806A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 誠一
(72)【発明者】
【氏名】前田 篤志
(72)【発明者】
【氏名】重田 泰志
(72)【発明者】
【氏名】定方 清
【審査官】 久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−181016(JP,A)
【文献】 特開2006−160245(JP,A)
【文献】 実開昭55−130929(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0152526(US,A1)
【文献】 特開2005−344857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 1/00− 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが二股状に形成された1対のヨークと、
これら両ヨークの両端部に互いに同心に形成された4個の円孔と、
互いの開口を対向させた状態でこれら各円孔の内側に内嵌固定された、それぞれが有底円筒状である4個の軸受カップと、
結合基部の外周面に4本の軸部を放射状に固設して成り、これら各軸部をこれら各軸受カップ内に挿入した状態で前記両ヨークと組み合わされた十字軸と、
これら各軸部の外周面とこれら各軸受カップの内周面との間に設けられた4組のラジアル軸受と
を備えた十字軸式自在継手に於いて、
前記十字軸を構成する前記各軸部の基端部外周面と前記結合基部の外面である段差面とを、それぞれ断面形状が部分円弧形である凹曲面により連続させており、これら各凹曲面のうちの少なくとも一部を、前記段差面のうちでこれら各凹曲面の周囲部分よりも、前記各軸部の軸方向に関し、この結合基部の中心寄りに存在させて、前記段差面のうちで前記各軸部の基端部の周囲部分にそれぞれ環状凹部を形成しており、
前記十字軸を構成する前記各軸部と前記各軸受カップとが、これら各軸部の軸方向に関する相対変位を実質的に抑えた状態で組み合わされており、
これら各軸部の基端部にそれぞれの基部を外嵌支持された状態で、これら各軸部の基端部と前記各軸受カップの開口部との間に4個のシールリングが設けられており、
これら各シールリングは、金属製で円環状の芯金と、この芯金を包埋する事でこの芯金により補強された基部及びこの基部から延出したシールリップを備えた弾性材とから成るものであり、
前記各シールリングは、前記基部を前記各軸部の基端部に締り嵌めで外嵌支持すると共に、前記各シールリップを前記各軸受カップの外面に全周に亙って当接させた状態で、前記十字軸と前記両ヨークとの間に組み付けられており、
前記各環状凹部の開口を前記各シールリングの基部の軸方向端面により塞いだ環状空間内に、グリースが封入されている、
事を特徴とする十字軸式自在継手。
【請求項2】
それぞれが二股状に形成された1対のヨークと、
これら両ヨークの両端部に互いに同心に形成された4個の円孔と、
互いの開口を対向させた状態でこれら各円孔の内側に内嵌固定された、それぞれが有底円筒状である4個の軸受カップと、
結合基部の外周面に4本の軸部を放射状に固設して成り、これら各軸部をこれら各軸受カップ内に挿入した状態で前記両ヨークと組み合わされた十字軸と、
これら各軸部の外周面とこれら各軸受カップの内周面との間に設けられた4組のラジアル軸受と
を備えた十字軸式自在継手に於いて、
前記十字軸を構成する前記各軸部の基端部外周面と前記結合基部の外面である段差面とを、それぞれ断面形状が部分円弧形である凹曲面により連続させており、これら各凹曲面のうちの少なくとも一部を、前記段差面のうちでこれら各凹曲面の周囲部分よりも、前記各軸部の軸方向に関し、この結合基部の中心寄りに存在させて、前記段差面のうちで前記各軸部の基端部の周囲部分にそれぞれ環状凹部を形成しており、
前記十字軸を構成する前記各軸部と前記各軸受カップとが、これら各軸部の軸方向に関する相対変位を実質的に抑えた状態で組み合わされており、
これら各軸部の基端部にそれぞれの基部を外嵌支持された状態で、これら各軸部の基端部と前記各軸受カップの開口部との間に4個のシールリングが設けられており、
これら各シールリングは、金属製で円環状の芯金と、この芯金を包埋する事でこの芯金により補強された基部及びこの基部から延出したシールリップを備えた弾性材とから成るものであり、
前記各シールリングは、前記基部を前記各軸部の基端部に締り嵌めで外嵌支持すると共に、前記各シールリップを前記各軸受カップの外面に全周に亙って当接させた状態で、前記十字軸と前記両ヨークとの間に組み付けられており、
前記各凹曲面が、断面形状の曲率半径が互いに異なる複数の曲面同士を滑らかに連続させた複合曲面であり、これら各複合曲面を構成するそれぞれ複数の曲面のうち、前記各軸部に連続する内径側曲面の曲率半径が、これら各内径側曲面の周囲に存在する外径側曲面の曲率半径よりも大きく、前記芯金は、円輪部と、この円輪部の内周縁側から前記各軸部の先端側に向けて折れ曲がった円筒部とから成る断面L字形で、前記円輪部のうちの少なくとも外径寄り部分が、前記段差面に当接している、
事を特徴とする十字軸式自在継手。
【請求項3】
それぞれが二股状に形成された1対のヨークと、
これら両ヨークの両端部に互いに同心に形成された4個の円孔と、
互いの開口を対向させた状態でこれら各円孔の内側に内嵌固定された、それぞれが有底円筒状である4個の軸受カップと、
結合基部の外周面に4本の軸部を放射状に固設して成り、これら各軸部をこれら各軸受カップ内に挿入した状態で前記両ヨークと組み合わされた十字軸と、
これら各軸部の外周面とこれら各軸受カップの内周面との間に設けられた4組のラジアル軸受と
を備えた十字軸式自在継手に於いて、
前記十字軸を構成する前記各軸部の基端部外周面と前記結合基部の外面である段差面とを、それぞれ断面形状が部分円弧形である凹曲面により連続させており、これら各凹曲面のうちの少なくとも一部を、前記段差面のうちでこれら各凹曲面の周囲部分よりも、前記各軸部の軸方向に関し、この結合基部の中心寄りに存在させて、前記段差面のうちで前記各軸部の基端部の周囲部分にそれぞれ環状凹部を形成しており、
前記十字軸を構成する前記各軸部と前記各軸受カップとが、これら各軸部の軸方向に関する相対変位を実質的に抑えた状態で組み合わされており、
これら各軸部の基端部にそれぞれの基部を外嵌支持された状態で、これら各軸部の基端部と前記各軸受カップの開口部との間に4個のシールリングが設けられており、
これら各シールリングは、金属製で円環状の芯金と、この芯金を包埋する事でこの芯金により補強された基部及びこの基部から延出したシールリップを備えた弾性材とから成るものであり、
前記各シールリングは、前記基部を前記各軸部の基端部に締り嵌めで外嵌支持すると共に、前記各シールリップを前記各軸受カップの外面に全周に亙って当接させた状態で、前記十字軸と前記両ヨークとの間に組み付けられており、
前記各シールリングを構成する弾性材の一部で、前記各基部の軸方向端面の内径寄り部分に、前記十字軸の結合基部の側に突出する凸部を設け、これら各凸部を前記各環状凹部内に進入させている、
事を特徴とする十字軸式自在継手。
【請求項4】
それぞれが二股状に形成された1対のヨークと、
これら両ヨークの両端部に互いに同心に形成された4個の円孔と、
互いの開口を対向させた状態でこれら各円孔の内側に内嵌固定された、それぞれが有底円筒状である4個の軸受カップと、
結合基部の外周面に4本の軸部を放射状に固設して成り、これら各軸部をこれら各軸受カップ内に挿入した状態で前記両ヨークと組み合わされた十字軸と、
これら各軸部の外周面とこれら各軸受カップの内周面との間に設けられた4組のラジアル軸受と
を備えた十字軸式自在継手に於いて、
前記十字軸を構成する前記各軸部の基端部外周面と前記結合基部の外面である段差面とを、それぞれ断面形状が部分円弧形である凹曲面により連続させており、これら各凹曲面のうちの少なくとも一部を、前記段差面のうちでこれら各凹曲面の周囲部分よりも、前記各軸部の軸方向に関し、この結合基部の中心寄りに存在させて、前記段差面のうちで前記各軸部の基端部の周囲部分にそれぞれ環状凹部を形成しており、
前記十字軸を構成する前記各軸部と前記各軸受カップとが、これら各軸部の軸方向に関する相対変位を実質的に抑えた状態で組み合わされており、
これら各軸部の基端部にそれぞれの基部を外嵌支持された状態で、これら各軸部の基端部と前記各軸受カップの開口部との間に4個のシールリングが設けられており、
これら各シールリングは、金属製で円環状の芯金と、この芯金を包埋する事でこの芯金により補強された基部及びこの基部から延出したシールリップを備えた弾性材とから成るものであり、
前記各シールリングは、前記基部を前記各軸部の基端部に締り嵌めで外嵌支持すると共に、前記各シールリップを前記各軸受カップの外面に全周に亙って当接させた状態で、前記十字軸と前記両ヨークとの間に組み付けられており、
前記各シールリングを構成する弾性材の基部の一部で、前記芯金よりも径方向外側部分に、前記十字軸の結合基部の側に突出する第二シールリップを全周に亙って形成し、これら各第二シールリップの先端縁を、前記段差面のうちで前記環状凹部の周囲部分に、全周に亙って当接させている、
事を特徴とする十字軸式自在継手。
【請求項5】
前記段差面のうちで前記環状凹部の周囲部分と、前記芯金を構成する円輪部のうちでこの周囲部分と当接する部分の軸方向片側面とが、平坦面若しくは部分円すい面状の傾斜面であって、前記周囲部分とこの軸方向片側面とが面同士で当接している、請求項1〜4のうちの何れか1項に記載した十字軸式自在継手。
【請求項6】
それぞれが二股状に形成された1対のヨークと、
これら両ヨークの両端部に互いに同心に形成された4個の円孔と、
互いの開口を対向させた状態でこれら各円孔の内側に内嵌固定された、それぞれが有底円筒状である4個の軸受カップと、
結合基部の外周面に4本の軸部を放射状に固設して成り、これら各軸部をこれら各軸受カップ内に挿入した状態で前記両ヨークと組み合わされた十字軸と、
これら各軸部の外周面とこれら各軸受カップの内周面との間に設けられた4組のラジアル軸受と
を備えた十字軸式自在継手に於いて、
前記十字軸を構成する前記各軸部の基端部外周面と前記結合基部の外面である段差面とを、それぞれ断面形状が部分円弧形である凹曲面により連続させており、これら各凹曲面のうちの少なくとも一部を、前記段差面のうちでこれら各凹曲面の周囲部分よりも、前記各軸部の軸方向に関し、この結合基部の中心寄りに存在させて、前記段差面のうちで前記各軸部の基端部の周囲部分にそれぞれ環状凹部を形成しており、
前記十字軸を構成する前記各軸部と前記各軸受カップとを、これら各軸部の軸方向に関する相対変位を可能に組み合わせており、
これら各軸部に、弾性材製のシールリングを外嵌し、これら各シールリングを、前記各軸受カップの開口部側端面と、前記十字軸の段差面との間で、軸方向に関して弾性的に圧縮した状態で挟持しており、
前記各凹曲面が、断面形状の曲率半径が互いに異なる複数の曲面同士を滑らかに連続させた複合曲面であり、これら各複合曲面を構成するそれぞれ複数の曲面のうち、前記各軸部に連続する内径側曲面の曲率半径が、これら各内径側曲面の周囲に存在する外径側曲面の曲率半径よりも大きい、
事を特徴とする十字軸式自在継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばステアリングシャフトの動きをステアリングギヤに伝達する為、自動車のステアリング装置に組み込んだ状態で使用する十字軸式自在継手の改良に関する。具体的には、十字軸を構成する4本の軸部の基端部の疲労強度を向上させる事により、この十字軸を組み込んだ十字軸式自在継手の信頼性及び耐久性の向上、或いは小型・軽量化を可能にするものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のステアリング装置は、例えば特許文献1に記載されている如く、図7に示す様に構成している。運転者が操作するステアリングホイール1の動きは、ステアリングシャフト2、自在継手3、中間シャフト4、別の自在継手3を介して、ステアリングギヤユニット5の入力軸6に伝達される。そして、このステアリングギヤユニット5に内蔵したラック&ピニオン機構により左右1対のタイロッド7、7を押し引きし、左右1対の操舵輪(一般的には前輪)に、前記ステアリングホイール1の操作量に応じて、適切な舵角を付与する様に構成している。
【0003】
この様なステアリング装置に組み込む自在継手として一般的には、カルダン継手と呼ばれる十字軸継手が、広く使用されている。図8〜9は、前記特許文献1に記載される等により、従来から広く知られている自在継手の1例を示している。尚、図8〜9に示した構造は、振動の伝達を防止する、所謂防振継手であるが、本発明の対象となる自在継手は、必ずしも防振構造を具備する必要はない。そこで、以下の説明は防振構造を省略して、自在継手3の本体部分の構造に就いて行う。
【0004】
この自在継手3は、十分な剛性を有する金属材によりそれぞれが二又状に形成された1対のヨーク8a、8bと、軸受鋼の如き合金鋼等の硬質金属により造られた十字軸9とから構成される。これら両ヨーク8a、8bの両端部には、互いに同心の円孔10、10を形成している。そしてこれら各円孔10、10に、やはり軸受鋼、肌焼鋼等の硬質金属製の板材により有底円筒状に造られた軸受カップ11、11を、互いの開口を対向させた状態で内嵌固定している。又、前記十字軸9は、1対の柱部の中間部同士を互いに直交させた如き形状を有し、それぞれが円柱状である、4箇所の軸部12、12を有する。即ち、中心部に設けた結合基部13の円周方向等間隔4箇所位置に、それぞれ前記各軸部12、12の基端部を結合固定している。これら各軸部12、12の中心軸は、同一平面上に存在する。
【0005】
この様な各軸部12、12の軸方向中間部乃至先端部は、前記各軸受カップ11、11内に挿入している。そして、これら各軸受カップ11、11の内周面と前記各軸部12、12の先半部外周面との間に、ニードル軸受等のラジアル軸受14、14を設け、前記十字軸9に対して前記両ヨーク8a、8bが、軽い力で揺動変位する様にしている。この様に構成する為、これら両ヨーク8a、8bの中心軸同士が一致しない状態でも、これら両ヨーク8a、8bの間で回転力の伝達を、伝達ロスを僅少に抑えた状態で行える。
【0006】
上述の様な自在継手3、3のうち、車室外に設置する(図7で下側の)自在継手3の場合には、前記十字軸9を構成する前記各軸部12、12の基端部(前記結合基部13側の端部)と前記各軸受カップ11、11の開口部との間に、それぞれシールリング15、15を設けている。そして、これら各シールリング15、15により、前記各ラジアル軸受14、14の設置部分に泥水等が進入するのを防止し、前記自在継手3の耐久性の確保を図っている。前記各シールリング15、15はそれぞれ、金属製で円環状の芯金16と、ゴムの如きエラストマー製の弾性材17とから成る。このうちの芯金16は、軟鋼板等の金属板を曲げ形成する事により、断面L字形で全体を円環状に形成したもので、円輪部18と、この円輪部18の内周縁側から前記各軸部12、12の先端側に向けて折れ曲がった円筒部19とから成る、断面L字形としている。又、前記弾性材17は、前記芯金16を包埋する事でこの芯金16により補強された基部20と、この基部20から延出した、それぞれが特許請求の範囲に記載したシールリップである、ラジアルシールリップ21とスラストシールリップ22とから成る。
【0007】
それぞれがこの様な構成を有する、前記各シールリング15、15は、前記芯金16を包埋した基部を前記各軸部12、12の基端部に締り嵌めで(弾性材17の一部を弾性変形させた状態で)外嵌する事により、これら各軸部12、12の基端部に、嵌合部のシール性を確保した状態で支持している。この様にこれら各軸部12、12の基端部に前記各シールリング15、15を支持し、前記十字軸9と前記各軸受カップ11、11とを組み合わせた状態で、前記各シールリップ21、22のうちのラジアルシールリップ21のシール縁は、前記各軸受カップ11、11の外周面のうちで開口寄り端部に、全周に亙り弾性的に当接する。又、前記スラストシールリップ22のシール縁は、前記各軸受カップ11、11の開口部に形成された内向鍔部23の外面(前記結合基部13に対向する面)に、全周に亙り弾性的に当接する。
【0008】
更に、前記各軸部12、12の中心部にはそれぞれ有底の挿入孔24、24を、これら各軸部12、12の先端面に開口する状態で、前記各軸部12、12の軸方向に形成している。そして、これら各挿入孔24、24の内側に、合成樹脂製のピン25、25を挿入している。これら各ピン25、25は、前記各軸受カップ11、11と前記各軸部12、12との間で突っ張る事により、これら各軸受カップ11、11の開口端部と前記基部13との距離が縮まり過ぎる事を防止する。そして、前記各シーリング15、15のスラストシールリップ22が過度に圧縮されたり、反対に圧縮量が低下し過ぎる事を防止する。即ち、自在継手3の使用時に前記十字軸9と前記各軸受カップ11、11との間に加わるスラスト荷重に基づき、スラスト荷重作用側(アンカ側)のシールリング15が過度に圧縮されて耐久性が損なわれ、反対側(反アンカ側)のシールリング15の圧縮量が低下し過ぎて、このシールリング15によるシール性が損なわれる事を防止する。
【0009】
但し、上述の様なピン25、25を設けない、十字軸式の自在継手に就いても、従来から広く知られている。即ち、図10に示した従来構造の第2例の如く、軸受カップ11aの底部26の内面中央寄り部分に突条27、27を形成し、これら各突条27、27の先端縁を、十字軸9を構成する軸部12の先端面に当接させている。この様な構造によっても、自在継手の構成部材の寸法精度及び組立精度を確保さえすれば、前記軸受カップ11aと前記軸部12との間に設けるシールリング15の圧縮量を適性範囲に保持できる。
【0010】
何れの構造の場合でも、十字軸9を構成する軸部12、12の基端部にシールリング15、15を、締り嵌めで外嵌支持する。そして、これら各軸部12、12に対するこれら各シールリング15、15の位置決めを適正にする事が、十字軸式の自在継手3の変位抵抗を抑えると共に、これら各シールリング15、15のシール性能を確保する面から重要になる。これらの事を考慮すると、図8〜10に示した従来構造では、十字軸式自在継手に関して、十分な信頼性及び耐久性を確保しつつ、小型・軽量化を図る事が難しい。この点に就いて、図11を参照しつつ説明する。
【0011】
十字軸9を構成する軸部12のうち、軸方向中間部乃至先端部である、図11のL範囲部分は、ラジアル軸受14(図8〜10参照)の内輪軌道としての役目を有する為、超仕上等の研削加工を施す。十字軸式自在継手によるトルク伝達は、前記ラジアル軸受14を介して行うので、伝達可能なトルク(トルク容量)を確保する必要上、前記L範囲の長さ寸法は或る程度必要である。又、このL範囲で表された内輪軌道部分よりも基端寄り部分には、シールリング15の基部20を外嵌支持する。この支持力を十分に確保する為、及び、この嵌合部のシール性を確保する為には、前記軸部12と前記基部20との嵌合幅Wを、或る程度以上確保する必要がある。又、これら基部20と軸部12とを嵌合させた状態で、この基部20に包埋した芯金16の円輪部18の片面を、前記十字軸9を構成する、前記結合基部13の外面である段差面38に当接させて、前記軸部12の軸方向に関する、前記シールリング15の位置決めを図る。この位置決めの精度を確保する為には、前記円輪部18の片面と前記段差面38との当接状態を安定させる必要上、これら両面同士を均一に当接させる必要がある。
【0012】
以上の事を考慮し、しかも、前記十字軸9の全長を少しでも短く抑えて、この十字軸9を組み込んだ自在継手3(図7〜10参照)の小型・軽量化を図る為に従来は、図11に示す様に、前記軸部12の外周面と前記段差面38とを連続させる凹曲面28の曲率半径を小さくしていた。一方、前記自在継手3によりトルクを伝達する際に、前記軸部12と前記結合基部13との連続部には、この結合基部13に対しこの軸部12を倒す方向のモーメントが、繰り返し加わる。そして、このモーメントにより、前記凹曲面28部分に応力が加わる。この応力の大きさは、この凹曲面28の断面形状の曲率半径が小さい程、又、前記軸部12の外径が小さい程、それぞれ大きくなる。従って、前記凹曲面28部分に亀裂等の損傷が発生するのを防止すべく、この凹曲面28部分に加わる応力を低く抑える為には、前記凹曲面28の断面形状の曲率半径を大きくするか、又は、前記軸部12の外径を大きくする必要があり、自在継手3の小型・軽量化を図る面からは不利になる。
【0013】
特許文献2には、十字軸の軸部の全長を確保して、この軸部がヨークの円孔から抜け出難くする為、この軸部の先端部に面取り部を設ける発明が記載されている。この様な特許文献2に記載された発明の構造によれば、大きなトルク伝達時に於ける、十字軸とヨークとの分離防止を図るべく、この十字軸を構成する各軸部の全長を長くした場合でも、この十字軸をヨークに組み込む事ができる。但し、前記特許文献2に記載された発明の構造にしても、前記図11により説明した様な理由で、大きな負荷が加わった場合に於ける破壊強度(大負荷時破壊強度)を大きくし難く、信頼性及び耐久性の確保と、小型・軽量化との両立を図り難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2010−181016号公報
【特許文献2】特開平11−037171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、大負荷時破壊強度を大きくして、信頼性及び耐久性の確保と、小型・軽量化との両立を図り易い構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の十字軸式自在継手は何れも、1対のヨークと、4個の円孔と、4個の軸受カップと、十字軸と、4組のラジアル軸受とを備える。
このうちの1対のヨークは、それぞれが二股状に形成されている。
又、前記各円孔は、これら両ヨークの両端部に、互いに同心に形成されている。
又、前記各軸受カップは、それぞれが有底円筒状で、互いの開口を対向させた状態で、前記各円孔の内側に内嵌固定されている。
又、前記十字軸は、結合基部の外周面に4本の軸部を放射状に固設して成る。そして、これら各軸部を前記各軸受カップ内に挿入した状態で、前記両ヨークと組み合わされている。
更に、前記各ラジアル軸受は、前記各軸部の外周面と前記各軸受カップの内周面との間に設けられている。
【0017】
特に、本発明の十字軸式自在継手に於いては、前記十字軸を構成する前記各軸部の基端部外周面と前記結合基部の外面である段差面とを、それぞれ断面形状が部分円弧形である凹曲面により連続させている。又、これら各凹曲面のうちの少なくとも一部を、前記段差面のうちでこれら各凹曲面の周囲部分よりも、前記各軸部の軸方向に関して、この結合基部の中心寄りに存在させている。そして、前記段差面のうちで前記各軸部の基端部の周囲部分に、それぞれ環状凹部を形成している。
【0018】
又、本発明を実施する場合、前記十字軸を構成する前記各軸部と前記各軸受カップとを、これら各軸部の軸方向に関する相対変位を実質的に抑えた状態で(構成部材の弾性変形に基づく僅かな相対変位を除き阻止した状態で)組み合わせる。又、4個のシールリングを、前記各軸部の基端部にそれぞれの基部を外嵌支持した状態で、これら各軸部の基端部と前記各軸受カップの開口部との間に設ける。前記各シールリングは、金属製で円環状の芯金と、この芯金を包埋する事でこの芯金により補強された基部及びこの基部から延出したシールリップを備えた弾性材とから構成する。そして、前記各シールリングを、前記基部を前記各軸部の基端部に締り嵌めで外嵌支持すると共に、前記各シールリップを前記各軸受カップの外面に全周に亙って当接させた状態で、前記十字軸と前記両ヨークとの間に組み付ける
【0019】
特に請求項1に記載した発明の場合には、前記各環状凹部の開口を前記各シールリングの基部の軸方向端面により塞いだ環状空間内に、グリースを封入する。
【0020】
これに対し、請求項2に記載した発明の場合には、前記各凹曲面を、断面形状の曲率半径が互いに異なる複数の曲面同士を滑らかに連続させた複合曲面とする。そして、これら各複合曲面を構成するそれぞれ複数の曲面のうち、前記各軸部に連続する内径側曲面の曲率半径を、これら各内径側曲面の周囲に存在する外径側曲面の曲率半径よりも大きくする。又、前記芯金を、円輪部と、この円輪部の内周縁側から前記各軸部の先端側に向けて折れ曲がった円筒部とから成る断面L字形とする。そして、前記円輪部のうちの少なくとも外径寄り部分を、前記十字軸の結合基部の外面である段差面に当接させる。
【0021】
又、請求項3に記載した発明の場合には、前記各シールリングを構成する弾性材の一部で、前記各基部の軸方向端面の内径寄り部分に、前記十字軸の結合基部の側に突出する凸部を設ける。そして、これら各凸部を前記各環状凹部内に進入させる。
【0022】
又、請求項4に記載した発明の場合には、前記シールリングを構成する弾性材の基部の一部で、前記芯金よりも径方向外側部分に、前記十字軸の結合基部の側に突出する第二シールリップを全周に亙って形成する。そして、これら各第二シールリップの先端縁を、前記段差面のうちで前記環状凹部の周囲部分に、全周に亙って当接させる。
【0023】
上述の様な請求項1〜4に記載した発明を実施する場合に好ましくは、例えば請求項5に記載した発明の様に、前記段差面のうちで前記環状凹部の周囲部分と、前記芯金を構成する円輪部のうちでこの周囲部分と当接する部分の軸方向片側面とを、平坦面若しくは部分円すい面状の傾斜面とする。そして、前記周囲部分とこの軸方向片側面とを面同士で当接させる。
【0024】
又、請求項6に記載した本発明の場合には、前記十字軸を構成する前記各軸部と前記各軸受カップとを、これら各軸部の軸方向に関する相対変位を可能に組み合わせる。そして、これら各軸部に、弾性材製のシールリングを外嵌し、これら各シールリングを、前記各軸受カップの開口部側端面と、前記十字軸の段差面との間で、軸方向に関して弾性的に圧縮した状態で挟持する。
更に、前記各凹曲面を、断面形状の曲率半径が互いに異なる複数の曲面同士を滑らかに連続させた複合曲面とする。そして、これら各複合曲面を構成するそれぞれ複数の曲面のうち、前記各軸部に連続する内径側曲面の曲率半径を、これら各内径側曲面の周囲に存在する外径側曲面の曲率半径よりも大きくする。
【発明の効果】
【0025】
上述の様に構成する本発明の十字軸式自在継手によれば、大負荷時破壊強度を大きくして、信頼性及び耐久性の確保と、小型・軽量化との両立を図り易い構造を実現できる。
即ち、本発明の十字軸式自在継手の場合には、十字軸を構成する結合基部の外面である段差面のうちで各軸部の基端部の周囲部分にそれぞれ環状凹部を形成し、この環状凹部を利用して、これら各軸部の基端部外周面と段差面とを、それぞれ断面形状が部分円弧形である凹曲面により連続させている。従って、前記各軸部の軸方向中間部乃至先端部に存在する内輪軌道の軸方向長さ、及び、シールリングを装着可能な部分の軸方向幅を確保し、しかも、前記凹曲面の断面形状の曲率半径を大きくできる。この為、トルク伝達時に前記各軸部に加わる、倒れ方向のモーメントに拘らず、これら各軸部の基端部外周面と段差面との連続部に発生する応力を低く抑えられる。この結果、前記各軸部の長さ寸法や外径を特に大きくしなくても、前記連続部に亀裂等の損傷を発生し難くできて(大負荷時破壊強度を大きくして)、前記十字軸を組み込んだ十字軸式自在継手の信頼性及び耐久性を確保できる。言い換えれば、必要とする信頼性及び耐久性を同じとした場合には、前記十字軸の寸法を小さく抑えて、この十字軸を組み込んだ、十字軸式自在継手の小型・軽量化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に関する参考例を、十字軸及びシールリングを取り出した状態で示す部分断面図。
図2本発明の実施の形態の第1例を示す、図1と同様の図(A)と、環状凹部の断面形状の別例を示す部分断面図(B)。
図3】同第2例を示す、図1と同様の図。
図4】同第3例を示す、図1と同様の図。
図5】同第4例を示す、図1と同様の図(A)及び第二シールリップの形状の別例を示す部分断面図(B)。
図6】同第5例を示す、図1と同様の図(A)及びシールリングの別例を示す部分断面図(B)。
図7】自在継手を組み込んだステアリング装置の1例を示す斜視図。
図8】従来から知られている自在継手の第1例を示す、部分切断側面図。
図9】一部を省略して示す、図8の拡大X−X断面図。
図10】従来から知られている自在継手の第2例を示す、図9のY−Y断面に相当する図。
図11】従来構造の場合に生じる問題を説明する為の、図1と同様の図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
参考例
図1は、本発明に関する参考例を示している。尚、本参考例の特徴は、十字軸を構成する各軸部の基端部外周面と結合基部の外面である段差面との連続部の形状を工夫する事により、前記十字軸の寸法を大きくせずに、前記各軸部に加わるモーメントに基づいて前記連続部に発生する応力を低く抑えられる構造を実現する点にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図10〜11に示した従来構造の第2〜3例とほぼ同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本参考例の特徴部分を中心に説明する。
【0028】
本参考例の場合には、十字軸式の自在継手を構成する十字軸9aを構成する各軸部12の基端部外周面と、結合基部13の外面の一部で、これら各軸部12の基端部の周囲部分である段差面38とを、それぞれ断面形状が部分円弧形である凹曲面28aにより連続させている。又、これら各凹曲面28aのうちの一部を、前記段差面38のうちでこれら各凹曲面28aの周囲部分よりも、前記各軸部12の軸方向に関して、前記結合基部13の中心寄り(図1の左寄り)に存在させている。そして、前記段差面38のうちで前記各軸部12の基端部の周囲部分に、それぞれ環状凹部29を形成している。前記各凹曲面28aの内外両周縁部のうち、内周縁は、前記各軸部12と滑らかに連続している。言い換えれば、これら各軸部12の母線は、前記各凹曲面28aの内周縁の接線方向に存在する。一方、前記段差面38とこれら各凹曲面28aの外周縁側との連続部の断面形状は、微分不能な(単一の接線を描けない)、少しだけ尖った形状としている。
【0029】
又、前記各軸部12の基端部に、芯金16と弾性材17aとから成るシールリング15aを外嵌支持している。このシールリング15aの構成は、ラジアルシールリップ21aの先端部が二股になっている点以外、前述の図9〜10に示した従来構造とほぼ同様である。前記シールリング15aは、前記弾性材17aの基部20を前記各軸部12の基端部に締り嵌めで外嵌すると共に、前記芯金16の円輪部18の軸方向片側面(図1の左側面)の外径寄り部分を、前記段差面38のうちで前記環状凹部29の周囲部分に突き当てた状態で、前記各軸部12の基端部に組み付けている。この状態で、前記円輪部18の軸方向片側面と前記段差面38のうちで前記環状凹部29の周囲部分とが、面同士で当接する。尚、この段差面38のうちでこの環状凹部29の周囲部分と、前記円輪部18の軸方向片側面とは、前記各軸部12の中心軸に対し直交する方向に存在する平坦面とする事が、各部の加工を容易にする面からは好ましい。但し、当接状態を安定させる為に、前記段差面38のうちでこの環状凹部29の周囲部分と前記円輪部18の軸方向片側面とのうちの一方を部分円すい状の凸面とし、他方を同じ角度だけ傾斜した部分円すい状の凹面とする事もできる。何れの場合でも、十字軸式の自在継手を組み立てた状態では、前記弾性材17aのラジアルシールリップ21aの先端縁が軸受カップ11aの端部外周面に、同じくスラストシールリップ22が内向鍔部23の外面に、それぞれ全周に亙って弾性的に当接する。
【0030】
前記自在継手の伝達効率を良好にすると共に、前記各シールリング15aによるシール性能を確保する為には、前記各シールリップ21a、22の弾性変形量を適正に規制する必要がある。そして、この為には、前記各シールリング15aと前記各軸受カップ11aとの位置関係を適正に規制する必要がある。このうちの各シールリング15aの軸方向位置は、前記円輪部18の軸方向片側面と前記段差面38との当接により、適正に規制できる。又、前記各軸受カップ11aの軸方向位置は、ヨーク8aの円孔10(図10参照)に対する嵌合位置を調節し、座部26aの内面中央部と前記軸部12の端面中央部とを当接させる事により規制できる。この為、本参考例の構造によれば、前記各シールリップ21a、22の弾性変形量を適正に規制して、前記自在継手の伝達効率を良好にすると共に、前記各シールリング15aによるシール性能を確保できる。
【0031】
更に、前記各環状凹部29の存在により、前記各軸部12の軸方向寸法を大きくしなくても、これら各軸部12の基端部外周面と前記段差面38との連続部に存在する凹曲面部28aの断面形状の曲率半径を大きくできる。この為、前記自在継手によるトルク伝達時に、前記各軸部12に加わる、倒れ方向のモーメントに拘らず、これら各軸部12の基端部外周面と前記段差面38との連続部に発生する応力を低く抑えられる。この結果、前記各軸部12の長さ寸法や外径を特に大きくしなくても、大負荷時破壊強度を大きくして、前記連続部に亀裂等の損傷を発生し難くできて、前記十字軸9aを組み込んだ十字軸式自在継手の信頼性及び耐久性を確保できる。逆に、必要とする大負荷時破壊強度、延いては信頼性及び耐久性を同じとした場合には、前記十字軸9aの寸法を小さく抑えて、この十字軸9aを組み込んだ、十字軸式自在継手の小型・軽量化を図れる。何れにしても、前記凹曲面部28aの断面形状の曲率半径を大きくする為に、前記各軸部12の軸方向中間部乃至先端部に存在するラジアル軸受14の為の内輪軌道の軸方向長さ、及び、前記各シールリング15aを構成する弾性材17aの基部20を外嵌する部分の軸方向幅を確保できる。従って、前記十字軸式自在継手のトルク容量を確保すると共に、前記各シールリング15aの位置決め性(姿勢の安定化)も図れる。
【0032】
[実施の形態の第1例
図2は、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例の場合には、十字軸9bを構成する段差面38のうちで、各軸部12の基端部を囲む部分に形成した各凹曲面28bの断面形状を、曲率半径が互いに異なる複数の曲面同士を滑らかに連続させた複合曲面としている。そして、これら各複合曲面を構成するそれぞれ複数の曲面のうち、前記各軸部12に連続する内径側曲面30の曲率半径を、これら各内径側曲面30の周囲に存在する外径側曲面31の曲率半径よりも大きくしている。これら内径側、外径側両曲面30、31のうち、内径側曲面30に関する曲率半径は、上述した参考例の凹曲面28a{図2の(A)の鎖線参照}の曲率半径と同じとし、外径側曲面31に関する曲率半径を、この凹曲面28aの曲率半径よりも十分に小さくしている。又、前記各内径側曲面30の外周縁と前記各外径側曲面31の内周縁とを、互いに接線方向で滑らかに連続させている。
【0033】
上述の様に構成する本例の構造によれば、前記各軸部12の基端部の断面形状の曲率半径を大きくし、十字軸式自在継手によるトルク伝達時にこの基端部に大きな応力が発生するのを防止しつつ、図2の(A)に鎖線で示した参考例の構造に比べて、環状凹部29aの外径を小さくできる。そして、この外径を小さくできる分、シールリング15aを構成する芯金16の円輪部18の軸方向片側面と、前記段差面38との接触面積を広くし、前記シールリング15aの姿勢をより安定させて、このシールリング15aによるシール性能の向上を図れる。
【0034】
尚、本例の如く、前記各凹曲面28bの断面形状を複合曲面とする場合に、この複合曲面を構成する曲面の種類は2種類に限らない。3種類以上であっても良いし、内周縁側から外周縁側に向けて曲率半径を連続的に変化させても良い。更には、図2の(B)に示す様に、環状凹部29bの外径側端部を、各軸部12の中心軸をその中心とする円筒面32としても良い。
その他の部分の構成及び作用は、上述した参考例と同様であるから、同等部分に関する説明は省略する。
【0035】
[実施の形態の第2例
図3は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合も、十字軸9aを構成する各軸部12の基端部にシールリング15aの基部20を、締り嵌めで外嵌支持している。そして、この基部20により、段差面38のうちで、前記各軸部12の基端部を囲む部分に形成した各環状凹部29の開口を塞いでいる。特に、本例の場合には、これら各環状凹部29の開口を塞ぐ事で画成した環状空間33内に、グリース34を封入している。
【0036】
この様な本例の構造によれば、前記基部20の端面と前記段差面38との突合せ部のシール性を向上させて、外部空間に存在する泥水等の異物が、この突合せ部を通じて、ラジアル軸受14側に入り込む事を防止できる。尚、本例の様にグリースによりシール性を向上させる構造は、上述の図2に示した実施の形態の第1例の構造と組み合わせて実施する事もできる。
その他の部分の構成及び作用は、前述した参考例と同様であるから、同等部分に関する説明は省略する。
【0037】
[実施の形態の第3例
図4は、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合も、十字軸9aを構成する各軸部12の基端部にシールリング15bの基部20aを、締り嵌めで外嵌支持している。特に、本例の場合には、これら各シールリング15bを構成する弾性材17bの一部で、前記各基部20aの軸方向端面の内径寄り部分に、十字軸9aの結合基部13の側に突出する凸部35を、全周に亙って設けている。そして、これら各凸部35を、前記十字軸9aを構成する段差面38のうちで、前記各軸部12の基端部の周囲部分に形成した、各環状凹部29内に進入させている。そして、前記基部20aによりこれら各環状凹部29の開口を塞ぐ事で画成した環状空間33の容積を、実質的に低減している。
【0038】
この様な本例の構造によれば、温度変化に基づく前記各環状空間33内の圧力変化に伴って外部空間に存在する泥水等の異物が、前記各基部20aの端面と前記段差面38との突合せ部を通じて、前記各環状空間33内に入り込む事を抑えられる。即ち、これら各環状空間33内に存在する空気の容積が多いと、温度変化(温度上昇後の低下)に伴ってこれら各環状空間33内に外気が吸入され易くなる。そして、この外気と共に外部空間に浮遊する異物が、これら各環状空間33を通じて各ラジアル軸受14側に入り込むと、これら各ラジアル軸受14の耐久性が損なわれる。これに対して本例の構造によれば、前記各凸部35の分だけ、前記各環状隙間33の容積を低減し、温度変化に伴う、これら各環状隙間33内と前記外部空間との間での空気の出入りを少なく抑えて、これら各環状隙間33を通じ、この外部空間に浮遊する異物(周囲に存在する水滴等を含む)が、前記各ラジアル軸受14側に入り込む事を防止できる。尚、この様な機構による異物進入防止効果(シール性)を確保する為には、前記各凸部35により、前記各環状空間33全体を塞ぐ事が好ましい。この様な本例の構造に関しても、前述の図2に示した実施の形態の第1例の構造と組み合わせて実施する事もできる。
その他の部分の構成及び作用は、前述した参考例と同様であるから、同等部分に関する説明は省略する。
【0039】
[実施の形態の第4例
図5は、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例の場合には、各シールリング15cを構成する弾性材17cの基部20bの一部で、芯金16の円輪部18の外周縁よりも径方向外側部分に、十字軸9aの結合基部13の側に突出する第二シールリップ36を、それぞれ全周に亙って形成する。そして、これら各第二シールリップ36の先端縁を、前記十字軸9aを構成する段差面38のうちで環状凹部29の周囲部分に、全周に亙って当接させている。この様な、前記各第二シールリップ36により、前記環状凹部29の存在に拘らず、前記各シールリング15cによるシール性能の確保を図っている。
【0040】
尚、図5のうちの(A)に示した構造の場合には、前記各第二シールリップ36の方向を、先端縁に向かうに従って径方向外側に向かう方向に傾斜させている。そして、前記基部20と前記環状凹部29とにより画成された環状空間33内に存在する余分なグリースや空気を、温度上昇時に外部空間に逃がすが、温度低下時にこの外部空間に浮遊する異物を前記環状空間内に吸い込み難くして、必要とするシール性の確保を図っている。但し、各第二シールリップの形状は、上述の様な形状に限定するものではない。例えば図5の(B)に示す様な形状の、第二シールリップ36aを採用する事もできる。尚、この図5の(B)に示した第二のシールリップ36aは、長さ寸法を大きくする事で、段差面38との当接に基づく締め代の変化に追従し易く(撓み易く)している。要は、前記各シールリング15cを、前記十字軸9aを構成する各軸部12の基端部に外嵌支持した状態で、前記各第二シールリップ36、36aの先端縁が、前記段差面38のうちで環状凹部29の周囲部分に、全周に亙って弾性的に当接できる形状であれば良い。この様な本例の構造に関しても、前述の図2に示した実施の形態の第1例の構造と組み合わせて実施する事もできる。
その他の部分の構成及び作用は、前述した参考例と同様であるから、同等部分に関する説明は省略する。
【0041】
[実施の形態の第5例
図6は、本発明の実施の形態の第5例を示している。先に述べた実施の形態の第1〜4例及び参考例の構造が何れも、シール性能の高いシールリングを組み込んで成り、車室外(エンジンルーム内)に設置するのに適切な構造であるのに対して、本例の構造は、車室内に設置するのに適切な構造である。この様な本例の十字軸式自在継手の場合には、十字軸9aを構成する各軸部12と各軸受カップ11bとを、これら各軸部12の軸方向に関する相対変位を可能に組み合わせている。そして、これら各軸部12に、弾性材製のシールリングであるOリング37を外嵌し、これら各Oリング37を、前記各軸受カップ11bの開口部側端面である、この開口部に形成した内向鍔部23の外側面と、前記十字軸9aを構成する段差面38との間に挟持している。十字軸式自在継手を組み立てた状態で前記Oリング37は、この段差面38と前記内向鍔部23の外側面との間で、軸方向に関して弾性的に圧縮する。又、前記各軸部12の先端部と前記各軸受カップ11bの内面とは離隔したままとなる。前記十字軸式自在継手によるトルク伝達時に、これら各軸部12の先端部と各軸受カップ11bとの間に作用するスラスト荷重は、前記各Oリング37が支承する。尚、これら各Oリング37の断面形状は、図6の(A)に示した様な円形に限らず、(B)に示した様な角形でも良い。又、本例の構造と、前記図2に示した、断面形状の曲率半径が互いに異なる複数の曲面同士を滑らかに連続させた複合曲面である、環状凹部29a、29bとを組み合わせて実施する事もできる。この様にすれば、前記段差面38のうちで、前記Oリング37を当接させられる部分の幅寸法を確保し易い。
その他の部分の構成及び作用は、前述した参考例と同様であるから、同等部分に関する説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の十字軸式自在継手は、ステアリング装置に限らず、各種トルク伝達機構に組み付けた状態で使用できる。
【符号の説明】
【0043】
1 ステアリングホイール
2 ステアリングシャフト
3 自在継手
4 中間シャフト
5 ステアリングギヤユニット
6 入力軸
7 タイロッド
8a、8b ヨーク
9、9a、9b 十字軸
10 円孔
11、11a、11b 軸受カップ
12 軸部
13 結合基部
14 ラジアル軸受
15、15a、15b、15c シールリング
16 芯金
17、17a、17b、17c 弾性材
18 円輪部
19 円筒部
20、20a、20b 基部
21、21a ラジアルシールリップ
22 スラストシールリップ
23 内向鍔部
24 挿入孔
25 ピン
26、26a 底部
27 突条
28、28a、28b 凹曲面
29、29a、29b 環状凹部
30 内径側曲面
31 外径側曲面
32 円筒面
33 環状空間
34 グリース
35 凸部
36、36a 第二シールリップ
37 Oリング
38 段差面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11