【文献】
Yasuo Hidaka et al.,A 4-Channel 1.25-10.3 Gb/s Backplane Transceiver Macro With 35 dB Equalizer and Sign-Based Zero-Forcing Adaptive Control,IEEE JOURNAL OF SOLID-STATE CIRCUITS,2009年12月,Vol. 44, No. 12,p.3547-3559
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記位相歪み検出部は、第1の時間インデックスにあるプレカーソルISI及び第2の時間インデックスにあるポストカーソルISIを検出する1又はそれ以上のフィルタパターンデコーダを有し、
前記プレカーソルISI及び前記ポストカーソルISIは、大きさが同じで極性が逆であるよう重み付けられ、
前記第1の時間インデックス及び前記第2の時間インデックスは、大きさが同じで極性が逆である、
請求項1に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
高速電気通信において、受信される信号は、例えば表皮効果及び誘電損失のような周波数依存損失によりしばしば歪み、これは符号間干渉(Inter-Symbol Interference(ISI))を引き起こす。
図1は、例となるISIを伴うチャネルのパルス応答の例を表す。パルス応答は、ピークパルス応答(カーソル)、カーソルの前のISI(プレカーソルISI)、及びカーソルの後のISI(ポストカーソルISI)を含む。プレカーソルISI及びポストカーソルISIはいずれも、隣接ビットの受信と干渉し、ビットエラーレート(bit error rate(BER))を悪化させうる。チャネル長さが増大するにつれて、パルス応答は、時間においてより幅広く広がって、より高いISIを引き起こす。データレートが増大するにつれて、送信側(すなわち、Tx)出力における理想的なパルス幅は減少するが、受信側(すなわち、Rx)入力でのパルス幅は絶対時間スケールにおいてほとんど変化しない。単位インターバル(UI)は、データレートが増大するにつれて減少するので、ISIは有効に増大する。
【0009】
等化器は、最大チャネル長さを増大させ又は通信速度を上げるようISIを補償するためにしばしば使用される。一般的に、等化器は、チャネルによる歪みを相殺するようチャネル伝達関数の逆関数を近似するフィルタである。等化器は、線形等化器(linear equalizer(LE))、判定帰還等化器(decision-feedback equalizer(DFE))、又はLE及びDFEの組み合わせであってよい。
【0010】
図2は、例となる等化器を表す。LE入力は、チャネルにおける高周波減衰に起因してプレカーソルISI及びポストカーソルISIを有しうる。LE増幅器は、プレカーソルISI及びポストカーソルISIの一部を相殺するよう、減衰された高周波成分を増幅する。DFE入力での残留ISIは、判定回路出力を用いてDFE内のフィードバックフィルタによってエミュレートされる。エミュレートされたISIはDFE入力信号から減じられ、それにより、ISIは判定回路入力で完全に相殺され得る。
【0011】
DFEがなかった場合には、LEは、特定の実施形態において、全てのポストカーソルISIを相殺しうるが、LEのみの方式は、高周波ノイズを増幅する傾向があるという欠点を有する。
図2において、LEの後にDFEを用いると、LEは、DFEによって相殺される一部のポストカーソルISIを残すことができる。判定回路はノイズを取り除くので、エミュレートされたISIは実質的にノイズレスである。従って、DFEの利点は、それがノイズを増幅することなくISIを実質的に相殺するということである。しかし、DFEは、フィードバックフィルタの各タップが唯1つの単位インターバル(UI)の時間スパンについてしかISIをエミュレートすることができないので、ISIを相殺する能力が限られている。更に、DFEは、DFEが前の判定を用いてISIをエミュレートするので、プレカーソルISIを実質的に相殺することができない。DFEの他の欠点はエラー伝搬である。すなわち、回復されたデータにエラーが存在すると、エラーは、DFEによる不適切なフィードバックにより、連続するデータにおいて再び起こる可能性がある。
【0012】
LE特性は、離散時間領域又は連続時間領域において伝達関数によって表される。離散時間領域におけるLEは、有限インパルス応答(FIR)フィルタ又は無限インパルス応答(IIR)フィルタのいずれかである。連続時間領域におけるLEは、連続時間線形等化器(continuous-time linear equalizer(CTLE))である。LEは、FIRフィルタ、IIRフィルタ、及びCTLEの組み合わせであってよい。
【0013】
LEは
図2においてRx側にあるが、それはTx側に配置されてよく、それにより、信号は送信前に予め歪ませられる。代替案として、それは、Tx側及びRx側に分割されてよい。他方で、DFEは、直前に受信されるデータ値を用いるので、Rx側にあるべきである。
【0014】
図3は、プレカーソルタップ及びポストカーソルタップを1つずつ有する3タップFIRフィルタの例を表す。
図3において、Z
−1は単位遅延を表す。C
0は、タップ係数の中で大きさが最大であるカーソルタップ係数である。カーソルタップは、センタータップ又はメインタップとも呼ばれる。C
−1は、主としてプレカーソルISIを相殺するプレカーソルタップである。C
1は、主としてポストカーソルISIを相殺するポストカーソルISIである。特定の実施形態において、チャネル特性は未知でありうるから、係数を自動的にチャネル特性に適応させることが望ましい。
【0015】
図4は、適応位相等化器システムの例を表す。
図4において、送信データは、チャネルにわたる伝送の間に位相歪みを生じることがある。特定の実施形態において、位相歪み信号は、位相等化信号を生成するよう、プレカーソルタップを備えたFIRフィルタ等の位相等化器によって、位相等化されてよい。特定の実施形態において、データ検出器は、位相等化信号から送信信号を回復してよい。特定の実施形態において、位相歪み検出器は、データ検出器入力において残留位相歪みを検出するよう、データ検出器出力によりデータ検出器入力を確認してよい。特定の実施形態において、残留位相歪みは、位相等化レベルを生成するよう、積算器によって積分されてよい。特定の実施形態において、位相等化レベルは、位相等化器の係数として使用されてよい。特定の実施形態において、適応位相等化器システムは、振幅等化器を含んでよい。特定の実施形態において、位相等化器は、位相歪みとともに振幅歪みを均等化してよく、データ検出器はDFEを含んでよい。
【0016】
特定の実施形態において、適応位相等化器システムの位相等化器は、
図5が表すように、Tx側に配置されてよい。位相等化器は、チャネルにわたる信号の伝送の前に、信号を予め歪ませるので、信号は、チャネル出力で位相等化される。バックワードチャネルは、Tx側に係数制御情報を返すために必要とされてよい。特定の実施形態において、位相等化器の機能は、TxとRxとの間で分けられてよい。
【0017】
図6は、適応位相等化器システムの他の例を表す。
図6が表すように、位相等化器回路は、Tx側にあるプレカーソルタップを備えた3タップFIRフィルタによって実現されてよい。Rx側は、線形等化器、DFEを有するデータ及びエラー検出器、デマルチプレクサ、クロック回復回路、及び等化器制御回路を有してよい。特定の実施形態において、等化器制御は、LE制御、検出器及びDFE制御、及びプリエンファシス制御を生成してよい。特定の実施形態において、プリエンファシス制御のための情報は、バックワード制御チャネルを介してTx側に返送されてよい。
図6において、Dataは、受信信号から回復されたデータであり、Errorは、クロック回復及び等化器制御のためのエラー情報である。
【0018】
図7は、3タップFIRフィルタのプリエンファシス係数及びLEゲインのための適応制御の例を表す。特定の実施形態において、ISIのためのフィルタパターンデコーダ(filter-pattern decoder(FPD))は、「Detecting Residual Intersymbol Interference (ISI) Components Using Two Data Patterns」と題された米国特許出願第2009/0316767号明細書において記載されるように、残留ISIを検出し、4回のステップでResISI信号を生成してよい。なお、この特許文献は、限定ではなく一例として参照により本願に援用される。特定の実施形態において、4回のステップにおけるResISI信号は、重み定数を乗じられ、フィルタパターン平衡器によって選択され、QRGainを生成するよう積分されてよい。QRGainは、直流(DC)に対する4分の1レートでの線形等化器のゲインを表す。特定の実施形態において、収束は、「Sign-Based General Zero-Forcing Adaptive Equalizer Control」と題された米国特許出願第2009/0316771号明細書において記載されるように、ResISI信号の平均の加重和をゼロに向かわせてよい。なお、この特許文献は、限定ではなく一例として参照により本願に援用される。特定の実施形態において、単一の制御ループは、Rx線形等化器とTxプリエンファシスとの間で、それらの強さを均等化して、2つの同じ制御ループの間のカップリングを回避するよう、共有されてよい。特定の実施形態において、QRGainは、PEGainテーブルにおいて埋め込まれるアンチディザリングを用いて、テーブル索引によってLEGain及びPEGainに変換されてよい。
【0019】
図7の下部の経路は、
図4及び
図5が表す位相歪み検出器及び積算器の例を表す。特定の実施形態において、位相歪み回路のためのFPDは、残留位相歪みを検出し、位相歪みを表すResPDを生成してよい。特定の実施形態において、ResPDは、位相等化の必要とされるレベルを表すPhaseEQに組み入れられてよい。特定の実施形態において、収束は、ResPDをゼロに向かわせてよい。
【0020】
特定の実施形態は、PEGainをC(0)/{C(0)+C(−1)+C(+1)}}と定義する。これは、DCに対する4分の1レートでの相対ゲインを近似することができる。特定の実施形態は、PhaseEQを−C(−1)/C(0)と定義する。これは、位相等化の量を近似することができる。特定の実施形態において、C(0)、C(−1)及びC(+1)は、係数符号に対する制限及び係数の大きさの一定和を用いてPEGain及びPhaseEQから導出されてよい。
【0021】
図8は、例となる位相等化の例となる効果を表す。
図8において、様々な周期を有する周期的な波形は、ナイキスト周波数で32dB損失を伴うチャネルにわたる伝送の後に、Rx側にある1タップDFEの入力で測定される。振幅等化は1タップDFEのために最適でありうるが、位相等化は異なってよい。0101の振幅パターンは回復されないが、これは、DFEがナイキスト周波数成分を回復するので、DFEを用いるデータ回復にとって必ずしも問題ではない。
【0022】
位相等化を用いないと、4UI周期パターン(00110011)は、8UI(00001111)パターン及び16UI(0×8/1×8)パターンよりも後に来る。これは、プレカーソルタップが使用されない場合である。実質的に最適な位相等化を用いると、4UI、8UI、及び16UIパターンは満足に整列される。過度の位相等化を用いると、4UIパターンは、8UI及び16UIパターンよりも先に来る。
図8において、時間線はダイアグラム間で整列されている。位相等化が増大するにつれて、4UI、8UI、及び16UIパターンは異なるレートで遅延されるが、2UI周期パターン(0101)は、プレカーソルタップがポストカーソルタップと実質的に同じであるために、遅延されない。結果として、最適な位相等化によれば、0101パターンは他のパターンとは位相がずれている。先と同じく、これは、DFEがナイキスト周波数成分を回復するので、DFEを用いるデータ回復にとって問題ではない。
【0023】
図8に基づき、特定の実施形態は、
図9が表すように、周波数依存の位相として位相歪みを定義してよい。位相等化が不十分である場合、低周波パターン(例えば、16UI又は8UI周期パターン)は早発位相(early phase)を有してよく、一方、高周波パターン(例えば、4UI周期パターン)は後発位相(late phase)を有してよい。位相等化が過度である場合、低周波パターンは後発位相を有してよく、一方、高周波パターンは早発位相を有してよい。超高周波パターン(例えば、2UI周期パターン)は、振幅が均等化されない限り、実質的に無視されてよい。
【0024】
図10は、fs/4とfs/6との間の周波数依存の位相を検出するFPDの例を表す。特定の実施形態は、FP0(000E111)及びFP1(100E110)での位相誤差を比較することによって、位相歪みを検出してよい。なお、Eは、立ち上がりの場所を表す。特定の実施形態において、立ち下がりを有する反転されたパターン、例えば、111E000及び011E001が使用されてよい。
図10において、FP0は、少なくとも6UIの周期を有する低周波パターンを表してよく、FP1は、4UIの周期を有する高周波パターンを表してよい。
【0025】
図10において、位相誤差がFP0では遅く、FP1では早い場合、ResPDは、不十分な位相等化を示す+1を割り当てられよい。位相誤差がFP0では早く、FP1では遅い場合、ResPDは、過度の位相等化を示す−1を割り当てられてよい。
【0026】
図10において、位相誤差がFP0及びFP1の両方について早く、又はFP0及びFP1の両方について遅い場合、ResPDは、ゼロ平均出力を生成するよう+1及び−1を割り当てられてよい。特定の実施形態において、平均ResPDが受信データシーケンスの統計値に関わらずそのような条件において完全にゼロになることを確かにするよう、FPDは、同じ回数だけ各フィルタパターンを交互に確認してよい。
【0027】
図10における位相歪みのためのFPDは、同時に反対の極性を用いながら、+2.5UI及び−2.5UIの時間インデックスについて2つのISI成分の検出を実行してよい。限定でなく一例として、D
0からE
2.5までの効果は、+2.5UIの時間インデックスでのポストカーソルISIであってよく、一方、D
5からE
2.5までの効果は、−2.5UIの時間インデックスでのプレカーソルISIであってよい。ResPDは、肯定的にプレカーソルISIと、及び否定的にポストカーソルISIと関連づけられてよい。特定の実施形態において、位相歪みは、+2.5UI及び−2.5UIの時間インデックス間のような、プレカーソルISIとポストカーソルISIとの間の不均衡として検出されてよい。
【0028】
特定の実施形態は、
図11が表すように、ISIのための複数のFPDを備える位相歪み検出器を実施してよい。
図11において、ResISI
−2.5のためのFPDは、−2.5UIの時間インデックスで残留プレカーソルISIを検出してよく、ResISI
+2.5のためのFPDは、+2.5UIの時間インデックスで残留ポストカーソルISIを検出してよい。特定の実施形態において、−2.5UIの時間インデックスでの残留プレカーソルISI及び+2.5UIの時間インデックスでの残留ポストカーソルISIは、信号ResPDを生成するよう、反対の極性において重み付けられ、フィルタパターン平衡器によって等しく選択されてよい。
【0029】
図12は、fs/2とfs/4との間の周波数依存の位相を検出するFPDの例を表す。
図12において、プレカーソルISIのためのFPDは、−1.5UIの時間インデックスで残留プレカーソルISIを検出してよく、ポストカーソルISIのためのFPDは、+1.5UIの時間インデックスで残留ポストカーソルISIを検出してよい。特定の実施形態は、
図13が表すように、fs/4よりも低い周波数において位相歪みを検出してよい。
図13において、位相歪みは、fs/6とfs/8との間の周波数依存の位相として検出されてよい。
【0030】
特定の実施形態は、
図14が限定ではなく一例として表すように、2又はそれ以上のプレカーソルタップを有するFIRフィルタのような多次元位相等化器を制御するために、2又はそれ以上のFPD(例えば、
図10及び
図13におけるFPD)を一緒に用いてよい。
図14において、fs/4とfs/6との間の位相歪み(すなわち、高周波位相歪み)のためのFPDは、第1のプレカーソルタップC(−1)を制御するために使用されてよく、fs/6とfs/8との間の位相歪み(すなわち、低周波位相歪み)のためのFPDは、第2のプレカーソルタップC(−2)を制御するために使用されてよい。特定の実施形態は、3次元(又はより高い)位相等化器にまで及んでよい。
【0031】
また、特定の実施形態は、エッジクロックよりむしろ、データクロックによってサンプリングされるエラー情報から位相歪みを検出してよい。
図15は、データクロックによってサンプリングされるエラーに基づくISIのために2つのFPDを用いる位相歪み検出器の例を表す。
図15において、ResISI
−2.0のためのFPDは、−2.0UIの時間インデックスで残留プレカーソルISIを検出してよく、ResISI
+2.0のためのFPDは、+2.0UIの時間インデックスで残留ポストカーソルISIを検出してよい。特定の実施形態において、−2.0UIの時間インデックスでの残留プレカーソルISI及び+2.0UIの時間インデックスでの残留ポストカーソルISIは、信号ResPDを生成するよう、反対の極性において重み付けられ、フィルタパターン平衡器によって等しく選択されてよい。
【0032】
図15の例となる位相歪み検出器に対する代替案として、FPDは、
図16が表すように、データクロックによってサンプリングされるエラー情報から直接に位相歪みを検出してよい。
図16の例となる方法は、
図16の例となる方法が反対の極性において同時にResISI
−2.0及びResISI
+2.0をともに検出することができるので、
図15の例となる位相歪み検出器と実質的に同等である。
【0033】
図8が表すように、位相は4UI、8UI、及び16UIパターンの間で整合され得るが、2UI周期パターン(例えば、0101)は、他のパターンと位相がずれていてよい。これは、DFEがナイキスト周波数成分を回復するので、DFEを用いるデータ回復にとって問題ではないが、0101パターンの位相のずれが(受信器のジッター許容を悪化させる)データ依存のジッターを引き起こすことがあるので、あらゆるデータ遷移においても位相誤差情報を用いる従来のクロック回復スキームにとっては問題である。
【0034】
図17は、DFEのためのクロック回復方法を表し、
図18は、位相誤差検出器を表す。位相誤差は、
図18において表されるように、D
2とD
3との間の誤差値E
2.5をD
2及びD
3と比較することによって、D
2からD
3へのデータ遷移があるときに検出される。
【0035】
図19は、例となるDFEのための例となるクロック回復方法のための位相誤差検出器の例を表す。特定の実施形態において、クロック回復は、00E11(又は11E00)パターンでの位相誤差情報を使用し、他のパターンでの位相誤差情報を無視してよい。例えば、
図19の例となる方法は、4分の1レート又はより低い周波数で位相誤差情報を使用してよい。特定の実施形態において、
図19の例となる方法は、(1)10E10パターンの振幅があまりに小さく、(2)10E10Eパターンの位相が他の低周波パターンと整列されず、(3)00E11パターンでのクロック位相の保持が、
図19の例となる方法により位相歪みを検出する感度を改善し、又は(4)
図19の例となる方法が、他のクロック回復方法よりもDFEエラー伝搬に対してクロック回復に耐性を持たせるので、他のクロック回復方法に対して利点を有することができる。他のクロック回復方法は、DFEエラー伝搬が1010パターンを続けて、不適切な位相誤差情報を生成するので、しばしばDFEエラー伝搬をしやすく、一方、DFEエラー伝搬は、同じ値の2又はそれ以上の連続ビット等の低周波パターンで終わる。
【0036】
図4及び
図5において、非最小位相特性を有する線形フィルタ(FIRフィルタ、CTLE、又はそれらの組み合わせ)は、位相等化器として使用されてよい。特定の実施形態において、線形フィルタは非最小位相特性を有してよく、その伝達関数は、z平面における単位円外の離散時間領域における1又はそれ以上のゼロ又は極、あるいは、s平面の右半分の連続時間領域のおける1又はそれ以上のゼロ又は極を有してよい。例えば、限定でなく一例として
図20が表すような1つのプレカーソルタップを有する2タップFIRフィルタは、離散時間領域において以下の伝達関数を有してよい:
【数1】
【0037】
限定でなく一例として、伝達関数式1は、C
0/(−C
−1)で1つのゼロを、及び原点で1つの極を有してよい。ゼロは、|C
0|>|C
−1|の場合に、z平面における単位円の外にあってよい。ここで、C
0はカーソルタップである。従って、C
−1がゼロでない限り、1つのプレカーソルタップを有する2タップFIRフィルタは、非最小位相特性を有してよく、特定の実施形態において位相等化器として使用されてよい。特定の実施形態において、2タップFIRフィルタの位相等化レベルは、大きさ|C
−1|と関連づけられる。C
−1がゼロであるとき、プレカーソルタップは無効にされ、2タップFIRフィルタは最小位相特性を有し、これは位相歪みを均等化しない。大きさ|C
−1|が増大するにつれて、位相等化レベルは増大する。
【0038】
同様に、
図3が表すような1つのプレカーソルタップを有する3タップFIRフィルタは、離散時間領域において以下の伝達関数を有してよい:
【数2】
【0039】
限定でなく一例として、伝達関数式2は、z
1で1つのゼロを、z
2でもう1つのゼロを、及び原点で2つの極を有してよい。z
1又はz
2は、|C
0|>|C
−1|+|C
1|の場合に、z平面における単位円の外にある。ここで、C
0はカーソルタップである。従って、C
−1がゼロでない限り、1つのプレカーソルタップを有する3タップFIRフィルタは、非最小位相特性を有してよく、特定の実施形態において位相等化器として使用されてよい。
図3における3タップFIRフィルタの位相等化レベルは、大きさ|C
−1|と関連づけられてよい。C
−1がゼロであるとき、プレカーソルタップは無効にされ、3タップFIRフィルタは最小位相特性を有し、これは位相歪みを均等化しない。大きさ|C
−1|が増大するにつれて、位相等化レベルは増大する。
【0040】
限定でなく一例として
図21が表すような2つのプレカーソルタップを有する4タップFIRフィルタは、非最小位相特性を有してよく、C
−1又はC
−2がゼロでない限り位相等化器として使用されてよい。C
−1及びC
−2が両方ともゼロであるとき、プレカーソルタップは無効にされ、4タップFIRフィルタは最小位相特性を有し、これは位相歪みを均等化しない。|C
−1|及び/又は|C
−2|の大きさが増大するにつれて、位相等化レベルは増大する。|C
−2|は、|C
−1|よりも低い周波数における位相等化と関連づけられる。
【0041】
特定の実施形態において、CTLEは、連続時間領域におけるゼロがs平面の右半分にある場合に、位相等化器として使用されてよい。
図22は、以下の伝達関数を有する位相等化器のための一次CTLEの例を表す:
【数3】
【0042】
特定の実施形態において、伝達関数式3は、−C
0/C
1で1つのゼロを有してよい。C
0>0及びC
1<0の場合に、ゼロはs平面の右半分にあり、このCTLEは非最小位相特性を有してよく、位相等化器として使用されてよい。
【0043】
図22の例となる一次CTLEは、C
0>0及びC
1>0の場合に、データ伝送のための共通する一次CTLEとは異なる。ゼロはそのような状況下でs平面の左半分にあるから、データ伝送のための共通一次CTLEは、s平面の左半分においてゼロを有し且つ最小位相特性を有してよく、特定の実施形態において位相等化器として使用され得ない。
【0044】
図23及び
図24は、例となる位相等化器(例えば、
図22における位相等化器)のための例となる一次CTLEの実施例を表す。DC経路及び一次導関数経路は反対の特性を有しうるから、特定の実施形態は、別個の信号経路と、出力での交差接続とを使用してよい。ゲイン段は別であっても(
図23参照)、あるいは、併合されても(
図24参照)よい。
【0045】
図25及び
図26は、DC経路及び一次導関数経路が同じ極性を有する一次CTLEの例を表す。
図26において、DC経路及び一次導関数経路は、同じ極性のために、併合されてよい。最小位相特性に起因して、
図25及び
図26における一次CTLEは、特定の実施形態において位相等化器として使用され得ない。
【0046】
図27は、以下の伝達関数を有する例となる位相等化器のための二次CTLEの例を表す:
【数4】
【0047】
特定の実施形態において、伝達関数は、z
1で1つのゼロを、及びz
2でもう1つのゼロを有してよい。C
0>0、C
1>0及びC
2<0の場合に、z
1又はz
2のいずれか一方はs平面の右半分の面上にある。
図27におけるCTLEは非最小位相特性を有し、特定の実施形態において位相等化器として使用されてよい。
図27におけるCTLEは、C
0>0、C
1>0及びC
2>0の場合に、データ伝送のための他の二次CTLEとは異なる。z
1及びz
2がs平面の左半分にある場合に、データ伝送のための他の二次CTLEは最小位相特性を有し、特定の実施形態において位相等化器として使用され得ない。
【0048】
図28及び
図29は、例となる位相等化器(例えば、
図27の位相等化器)のための例となる二次CTLEの実施例を表す。特定の実施形態は、
図28が表すように、DC経路、一次導関数経路、及び二次導関数経路を分離してよい。特定の実施形態は、DC経路及び一次導関数経路が同じ極性を有するならば、
図29が表すように、DC経路及び一次導関数経路を併合してよい。ゲイン段は別であっても(
図28参照)、あるいは、導関数段と併合されても(
図29参照)よい。
【0049】
ここで、「あるいは」、「又は」、「若しくは」(or)は、別なふうに明示的に示され、又は別なふうに文脈によって示されない限りは、包含的であり排他的でない。従って、本願では、「A又はB」は、別なふうに明示的に示され、又は別なふうに文脈によって示されない限りは、「A、B又はその両方」を意味する。更に、「且つ」、「並びに」、「及び」(and)は、別なふうに明示的に示され、又は別なふうに文脈によって示されない限りは、連帯である。従って、本願では、「A及びB」は、別なふうに明示的に示され、又は別なふうに文脈によって示されない限りは、「連帯してA及びB」を意味する。
【0050】
本開示は、当業者が理解する本願における実施例に対する全ての変更、置換、変形、代替及び修正を包含する。同様に、必要に応じて、添付の特許請求の範囲は、当業者が理解する本願における実施例に対する全ての変更、置換、変形、代替及び修正を包含する。更に、特定の機能を実行するよう適合され、構成され、配置され、動作し、又は動作可能である装置若しくはシステム又はその構成要素に対する添付の特許請求の範囲における言及は、その装置、システム又は構成要素が適合され、構成され、配置され、動作し、又は動作可能である限り、それ又はその特定の機能がアクティブにされ、オンされ、又は解除されるか否かに関わらず、その装置、システム又は構成要素を包含する。
【0051】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0052】
(付記1)
位相等化信号に含まれる送信データに基づき前記位相等化信号から回復データ信号を生成するよう構成されるデータ検出部と、
前記位相等化信号及び前記回復データ信号を互いに比較し、該比較に基づき位相歪みレベルを決定し、該位相歪みレベルに基づき位相歪みレベル信号を生成するよう構成される位相歪み検出部と、
前記位相歪みレベル信号に基づき位相等化レベル信号を生成するよう構成される積算部と、
前記位相等化レベル信号に基づき前記送信データを含む送信データ信号を調整するよう構成される位相等化部と
を有し、
前記送信データ信号の調整により、前記位相等化信号、又は通信チャネルにわたる送信によって前記位相等化信号へと歪むよう構成された位相前置歪み信号が提供される、システム。
【0053】
(付記2)
前記位相歪み検出部は、異なる周波数の間の1又はそれ以上の位相差を検出する1又はそれ以上のフィルタパターンデコーダを有する、
付記1に記載のシステム。
【0054】
(付記3)
前記位相歪み検出部は、第1の時間インデックスにあるプレカーソルISI及び第2の時間インデック
スにあるポストカーソルISIを検出する1又はそれ以上のフィルタパターンデコーダを有し、
前記プレカーソルISI及び前記ポストカーソルISIは、大きさが同じで極性が逆であるよう重み付けられ、
前記第1の時間インデックス及び前記第2の時間インデックスは、大きさが同じで極性が逆である、
付記1に記載のシステム。
【0055】
(付記4)
前記データ検出部及び前記位相歪み検出部は、異なるクロック信号により前記位相等化信号をサンプリングする、
付記1に記載のシステム。
【0056】
(付記5)
前記データ検出部及び前記位相歪み検出部は、同じクロック信号により前記位相等化信号をサンプリングする、
付記1に記載のシステム。
【0057】
(付記6)
前記位相等化部は、1又はそれ以上のプレカーソルタップを有する有限インパルス応答フィルタである、
付記1に記載のシステム。
【0058】
(付記7)
前記位相等化部が前記位相等化レベル信号に基づき前記送信データ信号を調整することは、前記位相等化部のタップ係数として位相等化レベルを組み込むことを含む、
付記1に記載のシステム。
【0059】
(付記8)
前記位相等化部は、振幅等化部を更に有する、
付記1に記載のシステム。
【0060】
(付記9)
前記データ検出部は、判定帰還等化部を更に有する、
付記1に記載のシステム。
【0061】
(付記10)
データ検出部によって、位相等化信号に含まれる送信データに基づき前記位相等化信号から回復データ信号を生成するステップと、
位相歪み検出部によって、前記位相等化信号及び前記回復データ信号を互いに比較するステップと、
前記比較に基づき、前記位相歪み検出部によって、位相歪みレベルを決定するステップと、
前記位相歪み検出部によって、前記位相歪みレベルに基づき位相歪みレベル信号を生成するステップと、
積算部によって、前記位相歪みレベル信号に基づき位相等化レベル信号を生成するステップと、
位相等化部によって、前記位相等化レベル信号に基づき前記送信データを含む送信データ信号を調整するステップと
を有し、
前記送信データ信号の調整により、前記位相等化信号、又は通信チャネルにわたる送信によって前記位相等化信号へと歪むよう構成された位相前置歪み信号が提供される、方法。
【0062】
(付記11)
前記位相歪み検出部は、異なる周波数の間の1又はそれ以上の位相差を検出する1又はそれ以上のフィルタパターンデコーダを有する、
付記10に記載の方法。
【0063】
(付記12)
前記位相歪み検出部は、第1の時間インデックスにあるプレカーソルISI及び第2の時間インデック
スにあるポストカーソルISIを検出する1又はそれ以上のフィルタパターンデコーダを有し、
前記プレカーソルISI及び前記ポストカーソルISIは、大きさが同じで極性が逆であるよう重み付けられ、
前記第1の時間インデックス及び前記第2の時間インデックスは、大きさが同じで極性が逆である、
付記10に記載の方法。
【0064】
(付記13)
前記データ検出部及び前記位相歪み検出部は、異なるクロック信号により前記位相等化信号をサンプリングする、
付記10に記載の方法。
【0065】
(付記14)
前記データ検出部及び前記位相歪み検出部は、同じクロック信号により前記位相等化信号をサンプリングする、
付記10に記載の方法。
【0066】
(付記15)
前記位相等化部は、1又はそれ以上のプレカーソルタップを有する有限インパルス応答フィルタである、
付記10に記載の方法。
【0067】
(付記16)
前記位相等化部が前記位相等化レベル信号に基づき前記送信データ信号を調整するステップは、前記位相等化部のタップ係数として位相等化レベルを組み込むことを含む、
付記10に記載の方法。
【0068】
(付記17)
前記位相等化部は、振幅等化部を更に有する、
付記10に記載の方法。
【0069】
(付記18)
前記データ検出部は、判定帰還等化部を更に有する、
付記10に記載の方法。
【0070】
(付記19)
位相等化信号に含まれる送信データに基づき前記位相等化信号から回復データ信号を生成する手段と、
前記位相等化信号及び前記回復データ信号を互いに比較する手段と、
前記比較に基づき位相歪みレベルを決定する手段と、
前記位相歪みレベルに基づき位相歪みレベル信号を生成する手段と、
前記位相歪みレベル信号に基づき位相等化レベル信号を生成する手段と、
前記位相等化レベル信号に基づき前記送信データを含む送信データ信号を調整する手段と
を有し、
前記送信データ信号の調整により、前記位相等化信号、又は通信チャネルにわたる送信によって前記位相等化信号へと歪むよう構成された位相前置歪み信号が提供される、システム。