(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記異常判定手段は、前記オイルポンプから吐出されるオイルの圧力脈動の変動幅が予め定められた閾値未満であることを条件として、前記内燃機関の回転数が所定回転数以上にならないように前記内燃機関の回転数を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関の異常判定装置。
【背景技術】
【0002】
従来、オイルパンに貯留されたオイルをオイルポンプから吐出して被供給部位に供給する内燃機関のオイル供給装置が知られている。
通常、内燃機関の被供給部位は、油圧式可変動弁機構や動弁系の油圧式ラッシュアジャスタ等、内燃機関に搭載される油圧駆動部品や、クランクシャフトやカムシャフト等の摺動部位を含んで構成されている。
【0003】
従来、車両に搭載される内燃機関において、内燃機関の潤滑および冷却に使用するオイルを内燃機関の被供給部位に送給するオイル供給装置として、内燃機関の回転数に比例したオイル吐出量に設定されるオイルポンプが用いられている。
【0004】
ところで、オイルパンに貯留されるオイルは、オイルポンプによって被供給部位に供給された後、オイルパンに回収される。
このとき、オイルパンに貯留されるオイル量が少ないと、オイルパンに回収されるオイルの回収効率が悪化し、オイルパン内に貯留されるオイルレベル(油面高さ)が適正量に対して低下、すなわち、不足する。
【0005】
このようにオイルレベルが低下すると、オイルパンからオイルポンプに向けてオイルを吸い上げるためのストレーナは、空気を吸い込む状態(以下、この状態をエア吸いと呼ぶ)となる可能性がある。
【0006】
オイルポンプがエア吸い状態になると、オイルポンプから吐出されるオイル吐出圧が低下してしまうため、オイルポンプから被供給部位に充分なオイル吐出量およびオイル吐出圧のオイルを供給することができず、例えば、摺動部位の潤滑性が悪化したり、油圧駆動部品の異常挙動が発生してしまうおそれがある。
このため、オイル吐出圧の異常を検知し、オイルパンに貯留されるオイルレベルが低下したことを検知する必要がある。
【0007】
従来、オイル吐出圧の異常を検知するものとしては、オイルポンプの吐出圧を油圧センサで検知し、油圧センサが検知した値が圧力低下判定値を下回っている場合に、オイルポンプにエアが吸い込まれたことに起因してオイルポンプの吐出圧が低下したものと判断するようにした内燃機関の油圧制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の内燃機関の油圧制御装置にあっては、油圧センサが検知した値が圧力低下判定値を下回っている場合に、オイルポンプの吐出圧が低下したものと判断するようになっていたため、気泡率の増大に起因してオイルの吐出圧の低下したことを確実に検知することができない。
【0010】
すなわち、オイルポンプとして多用されるトロコイドポンプやギヤポンプは、内ロータと外ロータの中心が互いに偏心しており、内ロータの歯数が外ロータの歯数より1枚少ないので、回転によってロータ間の空間が拡大および縮小することにより、ポンプ作用を行う。
【0011】
1個のロータ間の空間は、オイルを圧縮した状態で吐出口に臨むため、吐出時に高圧オイルが吐出される。次のロータ間空間が吐出口に臨むとき再び高圧オイルが吐出される。そして、高圧オイルの吐出と次の高圧オイルの吐出との間は低圧となる。
したがって、ロータの回転に伴ってオイルの圧力が高圧および低圧に交互に繰り返されることにより、オイルの圧力変動、すなわち、圧力脈動が生じる。
【0012】
また、オイルポンプがエア吸い状態になると、オイルポンプが気泡を噛み込む、所謂、エア噛みを起こしてしまい、オイルレベルが正常なときの圧力脈動と異なる圧力脈動が発生し、オイルに含まれる気泡率が増大すると圧力脈動も気泡率に応じて変化する。
【0013】
この圧力脈動は、圧力の変動幅を有するため、この圧力の変動幅に対して従来のように一定の圧力低下判定値を設定してオイルの吐出圧の低下を検知することは、困難であり、気泡率を考慮してオイルポンプの吐出圧が低下したことを確実に検知することができない。
【0014】
したがって、オイルパンに貯留されたオイルレベルが低下したことを早期に検知することができず、摺動部位の焼き付けが発生したり、油圧駆動部品の挙動が悪化してしまうおそれがある。
【0015】
例えば、油圧駆動部品を構成する油圧式可変動弁機構は、オイルの圧力が高くてもオイルに混入される気泡率が高い場合に、挙動が不安定となることがある。したがって、オイルに混入される気泡率が増大したことを早期に検知する必要がある。
【0016】
本発明は上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、オイルポンプの吐出圧の圧力脈動に大きさから気泡率が増大したことを推定することで、オイルレベルが低下したことを早期に検知することができる内燃機関の異常判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る内燃機関の異常判定装置は、上記目的を達成するため、(1)オイル貯留手段に貯留されるオイルを被供給部位に供給するオイルポンプを有する内燃機関の異常判定装置であって、前記オイルポンプから吐出されるオイルの圧力を検知する油圧検知手段と、前記油圧検知手段の検知情報に基づいて、前記オイルポンプから吐出されるオイルの圧力脈動の変動幅が予め定められた閾値未満であることを条件として、油圧異常と判定する異常判定手段とを備え
た、前記被供給部位が、内燃機関の出力軸に連結される第1の回転体の内部にカムシャフトに連結される第2の回転体を回動可能に収容し、前記第1の回転体および前記第2の回転体によって区画される進角側油圧室および遅角側油圧室の油圧が選択的に供給されることにより、前記カムシャフトと前記出力軸との相対回転位相を可変するバルブタイミング可変機構を含み、前記異常判定手段は、前記オイルポンプから吐出されるオイルの圧力脈動の変動幅が予め定められた閾値未満であることを条件として、前記第2の回転体が前記第1の回転体に対して回動するのを規制する保持制御を実施し、前記保持制御は、前記進角側油圧室に前記オイルを供給するとともに前記遅角側油圧室から前記オイルを排出することにより、前記第2の回転体を前記第1の回転体にロックすることであるものから構成されている。
【0018】
この内燃機関の異常判定装置は、オイルポンプから吐出されるオイルの圧力脈動の変動幅が予め定められた閾値未満であることを条件として、油圧異常と判定する異常判定手段を有するので、オイルの圧力脈動の大きさに基づいてオイルに混入された気泡率が増大したことを推定することができる。
【0019】
すなわち、オイル貯留手段のオイルレベルが適正でオイルポンプの吐出圧が正常である場合には、オイルの圧力脈動が大きくなる。また、オイルレベルが低下して行くに従って、オイルの気泡率が増大すると、オイルポンプが気泡を噛み込むときに発生した振動が圧力脈動となり、この圧力脈動は、オイルポンプに吸い込まれるオイル量が少ない状態での気泡の噛み込みであることから、オイルレベルが正常な場合の圧力脈動よりも小さい変動幅となる。
【0020】
したがって、油圧検知手段によって圧力脈動の変動幅を検知することにより、異常判定手段は、オイルの気泡率が増大したことを推定することができ、オイル貯留手段のオイルレベルが低下したことを早期に検知することができる。この結果、被供給部位の保護を早期に実現できる。
【0021】
上記(1)の内燃機関の異常判定装置において、(2)前記異常判定手段から出力される異常信号に基づいて警告を行う警告手段を有し、前記異常判定手段は、前記オイルポンプから吐出されるオイルの圧力脈動の変動幅が予め定められた閾値未満であることを条件として、前記警告手段に前記異常信号を出力するものから構成されている。
【0022】
この内燃機関の異常判定装置は、異常判定手段が、オイルポンプから吐出されるオイルの圧力脈動の変動幅が予め定められた閾値未満であることを条件として、警告手段に異常信号を出力するので、オイル貯留手段に貯留されるオイルレベルが低下したことを運転者に警告することができる。このため、運転者に対して、オイル貯留手段のオイルの点検またはオイル貯留手段にオイルを補充する作業を促すことができる。
【0023】
上記(1)または(2)の内燃機関の異常判定装置において、(3)前記異常判定手段は、前記オイルポンプから吐出されるオイルの圧力脈動の変動幅が予め定められた閾値未満であることを条件として、前記内燃機関の回転数が所定回転数以上にならないように前記内燃機関の回転数を制御するものから構成されている。
【0024】
この内燃機関の異常判定装置は、異常判定手段が、内燃機関の高回転時にオイル貯留手段に貯留されるオイルレベルが低下して被供給部位に供給されるオイル量が少ない場合に、内燃機関の回転数を低下させることにより、被供給部位の焼き付けが発生するのを防止して内燃機関を保護することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、オイルポンプの吐出圧の圧力脈動に大きさから気泡率が増大したことを推定することで、オイルレベルが低下したことを早期に検知することができる内燃機関の異常判定装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る内燃機関の異常判定装置の実施の形態について、図面を用いて説明する。
図1〜
図7は、本発明に係る内燃機関の異常判定装置の一実施の形態を示す図である。
まず構成を説明する。
図1において、車両1は、内燃機関としてのエンジン2と、オイル供給装置3と、内燃機関の異常判定装置4とを含んで構成されている。
【0030】
図2に示すように、エンジン2は、図示しない気筒内に往復移動可能に収容されたピストン5が2往復する間に、吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行う、所謂4サイクルのガソリンエンジンである。
【0031】
このエンジン2は、気筒およびピストン5をそれぞれ4つずつ備える直列4気筒のエンジンである。なお、気筒数は一例を示すもので4気筒に限られるものではない。また、エンジン2は、ガソリンエンジンに限らず、ディーゼルエンジンであってもよい。
【0032】
エンジン2は、ピストン5と、バルブタイミング可変機構(Variable Valve Timing:以下、VVTという)22と、出力軸を構成するクランクシャフト6と、シリンダヘッドヘッド7、シリンダブロック8およびクランクケースからなるエンジンブロック9と、気筒内に燃料を噴射する図示しない燃料噴射装置とを含んで構成されている。
【0033】
クランクシャフト6は、クランクジャーナル6aを介してエンジンブロック9に回転可能に支持されている。また、クランクシャフト6は、コネクティングロッド10を介してピストン5に連結されており、ピストン5の往復運動が伝達されて回転運動するようになっている。なお、コネクティングロッド10は、クランクシャフト6のクランクピン6bに連結されている。
【0034】
また、カムシャフトを構成する吸気カムシャフト20と、排気カムシャフト21とは、カムジャーナル19(
図3参照)を介してシリンダヘッド7に回転自在に支持されている。
吸気カムシャフト20および排気カムシャフト21は、チェーン25を介してクランクシャフト6に連結されており、クランクシャフト6の動力がチェーン25を介して伝達されることにより、吸気カム20aおよび排気カム21aを介して吸気バルブ23および排気バルブ24の開閉を行うようになっている。
【0035】
図1、
図2に示すように、オイル供給装置3は、オイルパン11と、オイルストレーナ12と、オイルポンプ13と、オイルポンプ13から吐出されたオイルを濾過するオイルフィルタ14と、オイル通路15aおよびオイル還流通路15bを含んだオイル供給経路15(
図3参照)とを含んで構成されている。
【0036】
オイルパン11にはオイルストレーナ12が浸漬されており、オイルストレーナ12は、オイルパン11に貯留されたオイルを濾過するようになっている。
オイルパン11に貯留されたオイルは、オイルストレーナ12を通してオイルポンプ13によって吸い上げられてオイルポンプ13からオイル通路15aに吐出されるようになっている。オイル通路15aにはオイルフィルタ14が介装されており、オイルフィルタ14は、オイルに混入される異物を除去するようになっている。
【0037】
オイルポンプ13は、例えば、トロコイドポンプやギヤポンプ等で構成され、チェーンを介してクランクシャフト6に連結されており、クランクシャフト6とは別軸でクランクシャフト6により等速駆動されるようになっている。なお、オイルポンプ13は、チェーンによらず、クランクシャフト6に直結されクランクシャフト6により等速駆動される構造のものでもよい。
【0038】
図2、
図3に示すように、オイル通路15aの下流にはメインギャラリ17が設けられており、メインギャラリ17は、クランクシャフト6に沿ってシリンダブロック8の壁面内に延設されている。このメインギャラリ17にはオイルポンプ13により加圧されたオイルが供給されるようになっており、メインギャラリ17に供給されたオイルは、シリンダヘッド7やシリンダブロック8に分岐して供給されるようになっている。
【0039】
シリンダヘッド7およびシリンダブロック8に分岐して供給されたオイルは、エンジン2の各被供給部位に供給される。
例えば、シリンダブロック8においては、クランクシャフト6のクランクジャーナル6a、クランクピン6bと、コネクティングロッド10等の摺動部位の潤滑用のオイルや油圧駆動部品を構成するオイルジェット18の作動油として、シリンダヘッド7においては、吸気カムシャフト20および排気カムシャフト21のカムジャーナル19の潤滑用のオイルや油圧駆動部品を構成するVVT22やラッシュアジャスタ27の作動油として用いられる。
【0040】
なお、本実施の形態では、被供給部位は、クランクジャーナル6a、クランクピン6b、コネクティングロッド10、ピストン5等の潤滑部位と、ピストン5にオイルを供給するオイルジェット18、ラッシュアジャスタ27、VVT22等の油圧駆動部品から構成されている。
【0041】
ここで、オイルジェット18は、エンジン2のピストン5の底面に向けてオイルを噴射することで、燃焼ガスに晒され熱負荷が高くなるピストン5を冷却し、例えば、高負荷運転時での異常燃焼を防止しノッキングの抑制を図るものである。
【0042】
各被供給部位に供給されたオイルは、その後、エンジンブロック9内を滴下し再度オイルパン11に戻るようになっている。オイル供給装置3のオイル供給経路15は、オイル通路15a、オイル還流通路15bおよびメインギャラリ17を含んで構成されており、オイルパン11に貯留されたオイルをエンジン2の各被供給部位に供給した後に、オイルパン11に回収する循環経路として構成されている。
【0043】
すなわち、オイル供給経路15は、オイルパン11に貯留されたオイルをオイルポンプ13によってエンジン2の各被供給部位に供給した後、オイルパン11に回収するまでのオイルの循環経路である。
【0044】
オイルポンプ13は、例えば、トロコイドポンプやギヤポンプ等から構成されており、チェーン25を介してエンジン2の出力軸であるクランクシャフト6に連結され、それぞれクランクシャフト6とは別軸でクランクシャフト6により等速駆動されるようになっている。なお、オイルポンプ13は、チェーン25を介してクランクシャフト6と同軸で駆動されてもよい。
【0045】
また、オイルポンプ13は、オイルを吐出したときに圧力の変動幅を有する圧力脈動が生じるようになっている。具体的には、オイルポンプ13がトロコイドポンプからなる場合には、オイルポンプ13は、それぞれ内ロータと外ロータの中心が互いに偏心するとともに、内ロータの歯数が外ロータの歯数より1枚少なく構成されており、内ロータの回転によって内ロータと外ロータとの間の空間が拡大および縮小することにより、ポンプ作用を行うようになっている。
【0046】
内ロータの1つの歯と外ロータの1つの歯とによって画成される空間は、オイルを圧縮した状態で吐出口に臨むため、吐出時に高圧オイルが吐出され、次の1つの内ロータの歯と外ロータの歯とによって画成される空間が吐出口に臨むとき再び高圧オイルが吐出される。そして、高圧オイルの吐出と次の高圧オイルの吐出との間は低圧となる。
このため、内ロータの回転に伴ってオイルの圧力が高圧および低圧に交互に繰り返されることにより、オイルの圧力変動、すなわち、圧力脈動が生じる。
【0047】
一方、VVT22は、吸気カムシャフト20の端部に設けられており、
図4に示すように、クランクシャフト6にチェーン25を介して連結された第1の回転体としてのハウジング31と、ハウジング31内に配置され、吸気カムシャフト20と一体に回転する第2の回転体としてのベーン体32とを備えている。
【0048】
ハウジング31の内部にはハウジング31およびベーン体32によって区画される進角側油圧室33および遅角側油圧室34が形成されており、VVT22は、進角側油圧室33および遅角側油圧室34の容積比を変化させることで、ハウジング31に対してベーン体32を回動させ、クランクシャフト6に対する吸気カムシャフト20の回転位相を変化させることができ、吸気バルブ23のバルブタイミングを変化させることができる。
【0049】
なお、進角側油圧室33の容積が増大するとともに遅角側油圧室34の容積が縮小するようにベーン体32がハウジング31に対して相対回転したときには、バルブタイミングが進角となる。
【0050】
また、遅角側油圧室34の容積が増大するとともに進角側油圧室33の容積が縮小するようにベーン体32がハウジング31に対して相対回転したときには、バルブタイミングの遅角となる。
【0051】
VVT22は、進角側油圧室33と遅角側油圧室34の何れか一方に選択的にオイル(作動油)が供給されることで、進角側油圧室33と遅角側油圧室34の容積比を変化させることができる。
【0052】
進角側油圧室33にオイルを供給する場合には、供給されたオイルの分だけ進角側油圧室33が拡大するとともに、遅角側油圧室34からは進角側油圧室33の拡大に伴ってオイルが押し出される。逆に、遅角側油圧室34にオイルを供給する場合には、供給されたオイルの分だけ遅角側油圧室34が拡大し、進角側油圧室33は、オイルが押し出されることによって縮小する。
【0053】
また、VVT22には、VVT22の動作をロックするための保持機構が設けられている。この保持機構は、VVT22のベーン体32に設けられたロックピン35と、ハウジング31に形成されたロック穴36とを含んで構成される。
【0054】
ロックピン35がロック穴36に係合することでベーン体32はハウジング31に対して所定の回転角、すなわち、所定位置で固定されることになる。
【0055】
本実施の形態ではバルブタイミングを最遅角させる位置にロック穴36が設けられており、バルブタイミングを最遅角されると、ロックピン35がロック穴36に嵌合されてベーン体32がハウジング31に対して回動することが規制される。
【0056】
すなわち、ベーン体32がハウジング31に固定され、ベーン体32がハウジング31に保持される。なお、ロックピン35は、図示しないコイルスプリング等によってロック穴36の方向に付勢されており、遅角側油圧室34に供給される油圧が所定油圧以上となると、コイルスプリングの付勢力に抗してロック穴36から抜け出るようになっている。 このとき、ベーン体32は、ハウジング31に対して相対回動自在となる。
【0057】
また、保持機構においてロックピン35を駆動する駆動力は、ベーン体32に内蔵されたスプリング(図示略)の付勢力と、VVT22に供給される油圧である。スプリングの付勢力はロックピン35をロック穴36に押し込む方向に作用し、油圧はロックピン35をロック穴36から押し出す方向に作用するようになっている。
【0058】
VVT22に供給されるオイルは、VVT通路37によってメインギャラリ17から取り出されるようになっている。
【0059】
VVT通路37の先端部にはオイルコントロールバルブ(Oil control valve、以下、単にOCVという)38が取り付けられている。OCV38とVVT22の進角側油圧室33とは油圧通路39によって接続され、OCV38とVVT22の遅角側油圧室34とは油圧通路40によって接続されている。
【0060】
OCV38は、オイルの供給先を油圧通路39と油圧通路40とで切換える通路切換弁であると同時に、その開度の制御によってオイルの供給量を調整できる流量調整弁でもある。
【0061】
詳しくは、OCV38は、電磁駆動式のスプール弁であって、スリーブ内のスプールの位置によって油圧通路39および油圧通路40に対するオイルの給排を制御することができる。スプールは移動方向の一方の端部をスプリングによって支持され、他方の端部をソレノイドによって支持されている。
【0062】
スプールの位置は、ソレノイドに供給する駆動電流のデューティ比によって制御することができる。ソレノイドへの非通電時には、スプールはスプリングの付勢力によって所定の初期位置に置かれる。この初期位置では、VVT通路37は、油圧通路40に接続されるようになっている。
【0063】
また、
図1に示すように、オイル還流通路15bは、オイルポンプ13の吐出側のオイル通路15aに接続されており、このオイル還流通路15b上にはリリーフバルブ26が設けられている。このリリーフバルブ26は、オイルポンプ13の吐出側の油圧(吐出圧)が所定値を越えたときに作動(開弁)してオイルをオイルパン11またはオイルポンプ13内にリリーフするものである。
【0064】
図1、
図4に示すように、異常判定装置4は、油圧センサ41、電子制御ユニット(Electronic Control Unit:以下、ECUという)44およびウォーニングランプ45を含んで構成されている。
【0065】
油圧センサ41は、油圧検知手段を構成しており、オイルポンプ13の吐出側のオイル通路15aに設けられている。油圧センサ41は、オイルポンプ13からVVT22等の油圧駆動部品やエンジン2の摺動部位に供給される油圧を検知して、油圧に応じた信号をECU44に出力するようになっている。なお、油圧センサ41は、メインギャラリ17に設けられていてもよい。
【0066】
また、エンジン2にはエンジン2に吸入空気を導入する吸気管46が接続されており、この吸気管46にはスロットルバルブ42が設けられている。このスロットルバルブ42は、吸気管46の開度を調整することにより、エンジン2に導入される吸入空気量を調整するようになっている。
【0067】
スロットルバルブ42は、駆動モータ43によって駆動されるようになっており、駆動モータ43は、ECU44からの駆動信号に基づいてスロットルバルブ42の開度を調整する。
【0068】
なお、吸気管46は、シリンダヘッド7に形成された吸気ポートを介してシリンダの燃焼室に吸入空気を導入するようになっており、吸気ポートは、吸気バルブ23によって開閉されるようになっている。
【0069】
ECU44は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、油圧センサ41が接続された入力インターフェースと、OCV38、駆動モータ43およびウォーニングランプ45に接続された出力インターフェースとを含んで構成されている。
【0070】
RAMは、データを一時的に記憶したり、ワークエリアとして機能する。ROMは、異常判定プログラムを含んだ各種制御プログラムや、これら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。
【0071】
また、ROMには、閾値が記憶されており、この閾値は、オイルポンプ13から吐出されるオイルの圧力脈動の変動幅の大きさに対応する値に設定されている(例えば、50kPa等)。
【0072】
ECU44は、油圧センサ41の検知情報に基づいてオイルポンプ13の吐出圧の変動幅の大きさを求め、この変動幅が予め定められた閾値未満であるものと判断した場合に、油圧異常と判定するようになっている。本実施の形態では、ECU44が異常判定手段を構成している。
【0073】
ECU44は、油圧異常と判定すると、ウォーニングランプ45に異常信号を出力するようになっている。ウォーニングランプ45は、油圧異常が発生してオイルパン11内のオイルレベルが低下したことを警告する警告灯である。
【0074】
ウォーニングランプ45は、ECU44から異常信号が入力したときに点灯あるいは点滅して油圧異常を警告することにより、オイルパン11内のオイルレベルが低下したことを運転者に警告する。
【0075】
また、ECU44は、油圧異常と判定すると、駆動モータ43に制御信号を送信するようになっており、駆動モータ43は、ECU44から制御信号が入力されると、スロットルバルブ42を閉じ側に制御することにより、エンジン2の回転数が所定回転数以上に上昇するのを抑制するようになっている。
【0076】
また、ECU44は、油圧異常と判定すると、OCV38を制御して進角側油圧室33にオイルを供給するとともに遅角側油圧室34からオイルを排出することにより、ロックピン35がロック穴36にロックされるようにベーン体32をハウジング31に対して回動させる保持制御を実施する。
【0077】
次に、
図5〜
図7に基づいてエンジン2の異常判定処理を説明する。
図5は、異常判定装置4のECU44で実行される異常判定処理について説明する。なお、
図5のフローチャートは、ROMに記憶された異常判定プログラムであり、この異常判定プログラムは、CPUによって一定時間毎に実施される。
【0078】
図5において、ECU44のCPUは、油圧センサ41の検知情報に基づいてオイルポンプ13から吐出されるオイルの圧力を検知し(ステップS1)、このオイルの変動幅PがROMに格納された閾値Pi未満であるか否かを判別する(ステップS2)。
【0079】
ECU44のCPUは、オイルの圧力脈動の変動幅Pが閾値Pi以上であるものと判断した場合には、オイルパン11のオイルレベルが適正な量であるものと判断して今回の処理を終了する。
【0080】
すなわち、
図6に示すように、オイルパン11のオイルレベルが適正な量である場合には、オイルポンプ13のエア吸いが少ない状態となるため、オイルポンプ13から吐出されるオイルの圧力脈動が大きくなる。
【0081】
したがって、ECU44のCPUは、オイルの圧力脈動の変動幅Pが閾値Pi以上であるものと判断した場合には、オイルパン11のオイルレベルが適正な量であるものと判断することができる。
【0082】
一方、ECU44のCPUは、ステップS2でオイルの圧力脈動の変動幅Pが閾値Pi未満であるものと判断した場合には、オイルパン11のオイルレベルが低下したもの、すなわち、不足したものと判断する。
【0083】
すなわち、
図7に示すように、オイルパン30内のオイルレベルが低下すると、オイルポンプ13がエア吸い状態となり、オイルに含まれる気泡が増大してオイルポンプ13が気泡を噛み込む、所謂、エア噛みを起こしてしまう。
【0084】
オイルポンプ13がエア噛みを起こしてしまうと、オイルポンプ13が気泡を噛み込むときに発生した振動が圧力脈動となる。この圧力脈動は、オイルポンプ13に吸い込まれるオイル量が少ない状態での気泡の噛み込みであることから、オイルレベルが正常な場合の圧力脈動よりも小さい変動幅となる。
【0085】
したがって、ECU44のCPUは、オイルの圧力脈動の変動幅Pが閾値Pi未満であるものと判断した場合には、オイルパン11のオイルレベルが低下したものと判断することができる。
【0086】
ECU44のCPUは、ステップS2でオイルの圧力脈動の変動幅Pが閾値Pi未満であるものと判断した場合には、ウォーニングランプ45に異常信号を出力して(ステップS3)、ウォーニングランプ45を点灯させる。
【0087】
ECU44のCPUは、ウォーニングランプ45に異常信号を出力した後、VVT22の保持制御を実施する(ステップS4)。
【0088】
具体的には、OCV38は、ソレノイドの非通電時にスプールがスプリングの付勢力によってVVT通路37が油圧通路40に接続されるようになっている。このため、ECU44のCPUは、異常信号の出力後にソレノイドを通電する。ソレノイドが通電されると、スプールがスプリングの付勢力に抗してVVT通路37を油圧通路39に接続するように移動する。
【0089】
油圧通路39は、進角側油圧室33に連通しているため、VVT通路37が油圧通路39に接続されると、オイルポンプ13から吐出されてメインギャラリ17を介してVVT通路37に供給されるオイルが、油圧通路39を介して進角側油圧室33に供給され、遅角側油圧室34内のオイルが遅角側油圧室34からOCV38に排出される。
【0090】
このため、進角側油圧室33の容積が増大されるとともに遅角側油圧室34の容積が縮小され、ロックピン35がロック穴36に嵌合されるようにベーン体32がハウジング31に対して回動し、ロックピン35がロック穴36に嵌合される。
したがって、ベーン体32がハウジング31に対して回動しないようにロックピン35がハウジング31に保持された状態となる。
【0091】
次いで、ECU44のCPUは、駆動モータ43に制御信号に出力することにより、駆動モータ43によってスロットルバルブ42を閉じ側に制御して(ステップS5)、今回の処理を終了する。
【0092】
なお、このスロットルバルブの閉じ側に制御するとは、図示しないアクセルペダルの踏み込みに応じて関連付けられたスロットルバルブの開度に対して閉じ側に制御されるものである。したがって、エンジン2の回転数が所定回転数以上に上昇しない。すなわち、ECU44のCPUは、アクセルペダルの開度とスロットルバルブの開度が関連付けられたマップを参照し、スロットルバルブの正規の開度よりも閉じ側に制御して、スロットル開度を絞る。このようにすると、エンジン2に供給される吸入空気量が減少してエンジン2の回転数の上昇が抑制される。
【0093】
このように本実施の形態のECU44は、オイルポンプ13から吐出されるオイルの圧力脈動の変動幅が予め定められた閾値未満であることを条件として、油圧異常と判定するようにしたので、オイルの圧力脈動の大きさに基づいてオイルに混入された気泡率が増大したことを推定することができる。
この結果、オイルパン11内のオイルレベルが低下したことを早期に検知することができ、被供給部位の保護を早期に実現できる。
【0094】
また、ECU44は、被供給部位の保護として、エンジン2の回転数が所定回転数以上にならないようにエンジン2の回転数を制御しているので、クランクジャーナル23a、クランクピン23b、コネクティングロッド21a、ピストン5等の焼き付けが発生するのを防止してエンジン2を保護することができる。
【0095】
また、被供給部位の保護として、ECU44は、VVT22のベーン体32がハウジング31に対して回動するのを規制する保持制御を実施しているので、ベーン体32がハウジング31に対して衝突すること等を防止することができる。
【0096】
すなわち、本実施の形態のVVT22は、オイルポンプ13から吐出されるオイルを進角側油圧室33および遅角側油圧室34に選択的に供給するOCV38を備え、VVT22が、ベーン体32がハウジング31に対して所定位置である遅角側に回動したときに、ベーン体32をハウジング31に保持するロックピン35およびロック穴36を有する。
【0097】
そして、保持制御として、ECU44がOCV38を制御することにより、ベーン体32が遅角側に回動するように進角側油圧室33および遅角側油圧室34に供給する油圧を調整することにより、ロックピン35をロック穴36に嵌合させてベーン体32をハウジング31に保持するようにしたので、ベーン体32をハウジング31に確実に保持させることができ、ベーン体32がハウジング31に衝突すること等を防止することができる。このため、VVT22の挙動が悪化するのを防止することができる。
【0098】
また、本実施の形態のECU44は、オイルポンプ13から吐出されるオイルの圧力脈動の変動幅が予め定められた閾値Pi未満であることを条件として、ウォーニングランプ45に異常信号を出力してウォーニングランプ45を点灯または点滅させるようにした。
【0099】
このため、オイルパン11内のオイルレベルが低下したことを運転者に警告することができる。このため、運転者に対して、オイルパン11内のオイルの点検またはオイルパン11にオイルを補充する作業を促すことができる。
【0100】
なお、異常判定装置4に、オイルの温度を検知する油温センサを設け、ECU44が油圧センサ41と油温センサの検知情報に基づいてオイルの圧力脈動の変動幅Pが閾値Pi未満であるものと判断した場合に、油圧異常と判定するようにしてもよい。
【0101】
すなわち、暖機運転時等のようにオイルの温度が低い場合には、オイルの粘性が高く、オイルの温度が高い場合にはオイルの粘性が低い。このため、オイルパン11内のオイルレベルが低下した場合に、オイルの温度が高い場合よりもオイルの温度が低い場合の方がオイルに混入される気泡が少ない。
【0102】
したがって、ECU44は、オイルの温度が高い場合の第1の閾値と、オイル温度が低い場合の第1の閾値よりも小さい第2の閾値とを設定し、オイルの温度に応じて閾値を変更することにより、オイルの温度に応じた閾値とオイルの圧力脈動を比較することにより、油圧異常をより正確に判定することができる。
【0103】
以上のように、本発明に係る内燃機関の異常判定装置は、オイルポンプの吐出圧の圧力脈動の大きさから気泡率が増大したことを推定することで、オイルレベルが低下したことを早期に検知することができるという効果を有し、オイルレベルの低下に起因するオイルの圧力の異常を判定する内燃機関の異常判定装置等として有用である。