(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
負荷に対して並列接続される平滑用コンデンサと、前記負荷に対して直流電力を付与するバッテリと、前記バッテリと前記平滑用コンデンサ間をオンオフするメインリレー部と、前記メインリレー部と並列に接続されたプリチャージ抵抗とプリチャージリレー部の直列回路を含むプリチャージ回路と、前記メインリレー部と前記プリチャージリレー部のオンオフ制御を行う制御部を備えた電源装置において、
前記メインリレー部がオフで前記プリチャージリレー部がオンのときのプリチャージ時に前記平滑用コンデンサのコンデンサ電圧を検出する電圧センサと、前記プリチャージ時に前記電圧センサが取得したコンデンサ電圧及び前記プリチャージ回路に含まれるプリチャージ抵抗の抵抗値に基づいてバッテリ電圧を算出するバッテリ電圧算出部と、算出された最新のバッテリ電圧と、前記電圧センサが取得した最新のコンデンサ電圧の電位差が第1プリチャージ終了判定閾値以下になったか否かに基づいてプリチャージの終了判定を行うプリチャージ終了判定部を備え、前記制御部は、前記プリチャージ終了判定部のプリチャージ終了判定があったときは、前記プリチャージリレー部をオフすることを特徴とする電源装置。
前記メインリレー部がオフしている状態で前記平滑用コンデンサの残電荷放電を行わせる放電処理部と、前記残電荷放電の処理後のコンデンサ電圧が溶着判定閾値以上のとき、前記メインリレー部の接点が溶着していると判定する溶着判定部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の電源装置。
前記プリチャージリレー部をオンした後、すなわちプリチャージを開始した後のコンデンサ電圧が、バッテリ電圧算出許容閾値以上になったか否かを判定し、バッテリ電圧算出許容閾値以上のとき、前記バッテリ電圧算出部のバッテリ電圧の算出を許容する算出許容判定部と、
前記プリチャージを開始した後のコンデンサ電圧がバッテリ電圧算出許容閾値以上になっていないことを前記算出許容判定部が判定したときにおいて、プリチャージを開始したときからの経過時間が異常判定時間を経過している場合にバッテリに関する異常、或いはプリチャージ回路を異常と判定する異常判定部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の電源装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、第1の従来技術では、バッテリ電圧が上昇していた場合、プリチャージ不十分の状態でメインリレー部140をオンすることになる。また、バッテリの最大電圧時を考慮してプリチャージ時間を設定した場合、逆にバッテリ電圧が通常電圧時となっているときには、長いプリチャージ時間となってしまう問題がある。第2の従来技術では、電流センサが必要となり、コストアップの問題がある。また、第3の従来技術では、インバータの制御や異常検出のために電圧センサ190が設けられていることが一般的であるが、この電圧センサとは別に電圧センサをプリチャージ用に設ける必要があるため、コストアップになる問題がある。なお、従来例としては、電源装置に接続されるものとして車両用のインバータを挙げたが、この問題は車両用のインバータに限定されるものではなく、他の用途のインバータ或いはコンバータ等においても同様の問題がある。
【0006】
本発明の目的は、プリチャージのために新たな部品や回路を追加する必要がないとともに、バッテリ電圧が変化しても、最短時間でプリチャージができる電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、負荷に対して並列接続される平滑用コンデンサと、前記負荷に対して直流電力を付与するバッテリと、前記バッテリと前記平滑用コンデンサ間をオンオフするメインリレー部と、前記メインリレー部と並列に接続されたプリチャージ抵抗とプリチャージリレー部の直列回路を含むプリチャージ回路と、前記メインリレー部と前記プリチャージリレー部のオンオフ制御を行う制御部を備えた電源装置において、前記メインリレー部がオフで前記プリチャージリレー部がオンのときのプリチャージ時に前記平滑用コンデンサのコンデンサ電圧を検出する電圧センサと、前記プリチャージ時に前記電圧センサが取得したコンデンサ電圧及び前記プリチャージ回路に含まれるプリチャージ抵抗の抵抗値に基づいてバッテリ電圧を算出するバッテリ電圧算出部と、
算出された最新のバッテリ電圧と、前記電圧センサが取得した最新のコンデンサ電圧の電位差が第1プリチャージ終了判定閾値以下になったか否かに基づいてプリチャージの終了判定を行うプリチャージ終了判定部を備え、前記制御部は、前記プリチャージ終了判定部のプリチャージ終了判定があったときは、前記プリチャージリレー部をオフすることを特徴とする電源装置を要旨としている。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、
前記プリチャージ回路は、PTCサーミスタが含まれており、前記電圧センサが取得したコンデンサ電圧に基づいて前記PTCサーミスタの抵抗値を算出する抵抗値算出部を備え、前記バッテリ電圧算出部は、前記抵抗値算出部が算出したPTCサーミスタの抵抗値を含むプリチャージ抵抗と前記電圧センサが取得したコンデンサ電圧に基づいてバッテリ電圧を算出することを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、
負荷に対して並列接続される平滑用コンデンサと、前記負荷に対して直流電力を付与するバッテリと、前記バッテリと前記平滑用コンデンサ間をオンオフするメインリレー部と、前記メインリレー部と並列に接続されたプリチャージ抵抗とプリチャージリレー部の直列回路を含むプリチャージ回路と、前記メインリレー部と前記プリチャージリレー部のオンオフ制御を行う制御部を備えた電源装置において、前記メインリレー部がオフで前記プリチャージリレー部がオンのときのプリチャージ時に前記平滑用コンデンサのコンデンサ電圧を検出する電圧センサと、前記プリチャージ時に前記電圧センサが取得したコンデンサ電圧及び前記プリチャージ回路に含まれるプリチャージ抵抗の抵抗値に基づいてバッテリ電圧を算出するバッテリ電圧算出部と、算出した前記バッテリ電圧の変化状態量に基づいてプリチャージの終了判定を行うプリチャージ終了判定部を備え、前記プリチャージ回路のプリチャージ抵抗は、PTCサーミスタであり、前記バッテリ電圧算出部は、前記PTCサーミスタのキュリー温度の抵抗値をプリチャージ抵抗とし、該プリチャージ抵抗の抵抗値と前記電圧センサが取得したコンデンサ電圧に基づいてバッテリ電圧を算出し、前記プリチャージ終了判定部は、前記バッテリ電圧算出部が算出したバッテリ電圧の前回値から今回値の差分を変化状態量として算出を行い、算出された差分と前記キュリー温度から導き出された第2プリチャージ終了判定閾値とを比較し、前記算出された差分が第2プリチャージ終了判定閾値より小さい場合、PTCサーミスタの温度がキュリー温度以上であるとしてプリチャージ終了判定し、前記制御部は、前記プリチャージ終了判定の判定があったときは、前記プリチャージリレー部をオフし、前記プリチャージ終了判定が判定なかったときは、プリチャージを開始してからの経過時間が予め設定されたプリチャージ時間を経過した場合、前記制御部は、前記メインリレー部をオンするとともに前記プリチャージリレー部をオフすることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、
負荷に対して並列接続される平滑用コンデンサと、前記負荷に対して直流電力を付与するバッテリと、前記バッテリと前記平滑用コンデンサ間をオンオフするメインリレー部と、前記メインリレー部と並列に接続されたプリチャージ抵抗とプリチャージリレー部の直列回路を含むプリチャージ回路と、前記メインリレー部と前記プリチャージリレー部のオンオフ制御を行う制御部を備えた電源装置において、前記メインリレー部がオフで前記プリチャージリレー部がオンのときのプリチャージ時に前記平滑用コンデンサのコンデンサ電圧を検出する電圧センサと、前記プリチャージ時に前記電圧センサが取得したコンデンサ電圧及び前記プリチャージ回路に含まれるプリチャージ抵抗の抵抗値に基づいてバッテリ電圧を算出するバッテリ電圧算出部と、算出した前記バッテリ電圧の変化状態量に基づいてプリチャージの終了判定を行うプリチャージ終了判定部を備え、前記プリチャージ回路のプリチャージ抵抗は、PTCサーミスタであり、前記バッテリ電圧算出部は、前記PTCサーミスタのキュリー温度の抵抗値をプリチャージ抵抗とし、該プリチャージ抵抗の抵抗値と前記電圧センサが取得したコンデンサ電圧に基づいてバッテリ電圧を算出し、前記プリチャージ終了判定部は、前記バッテリ電圧算出部が算出したバッテリ電圧
の前回値と今回値の比を変化状態量として算出を行い、
算出された前回値/今回値と前記キュリー温度から導き出された第2プリチャージ終了判定閾値と
を比較
し、前記算出された前回値/今回値が第2プリチャージ終了判定閾値より大きい場合、PTCサーミスタの温度がキュリー温度以上であるとしてプリチャージ終了判定し、前記制御部は、前記プリチャージ終了判定の判定があったときは、前記プリチャージリレー部をオフし、前記プリチャージ終了判定が判定なかったときは、プリチャージを開始してからの経過時間が予め設定されたプリチャージ時間を経過した場合、前記制御部は、前記メインリレー部をオンするとともに前記プリチャージリレー部をオフすることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項において、前記メインリレー部がオフしている状態で前記平滑用コンデンサの残電荷放電を行わせる放電処理部と、前記残電荷放電の処理後のコンデンサ電圧が溶着判定閾値以上のとき、前記メインリレー部の接点が溶着していると判定する溶着判定部を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項において、 前記プリチャージリレー部をオンした後、すなわちプリチャージを開始した後のコンデンサ電圧が、バッテリ電圧算出許容閾値以上になったか否かを判定し、バッテリ電圧算出許容閾値以上のとき、前記バッテリ電圧算出部のバッテリ電圧の算出を許容する算出許容判定部と、前記プリチャージを開始した後のコンデンサ電圧がバッテリ電圧算出許容閾値以上になっていないことを前記算出許容判定部が判定したときにおいて、プリチャージを開始したときからの経過時間が異常判定時間を経過している場合にバッテリに関する異常、或いはプリチャージ回路を異常と判定する異常判定部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、プリチャージのために新たな部品や回路を追加する必要がないとともに、バッテリ電圧が変化しても、最短時間でプリチャージができる。
また、算出された最新のバッテリ電圧と、電圧センサが取得した最新のコンデンサ電圧の電位
差が第1プリチャージ終了判定閾値以下になったか否かを判定することにより、最新のバッテリ電圧の状態に基づいてプリチャージ終了の判定を好適に行うことができる。
【0014】
請求項
2の発明によれば、プリチャージリレー部のオンオフが繰り返された際に、プリチャージ電流が頻繁に流れてPTCサーミスタの温度が上がると、その抵抗が増大することにより流れる電流も小さくなるため、過熱が抑制されて過熱によるプリチャージ回路のプリチャージ抵抗の破損が防止できるとともに、PTCサーミスタが高温になっても、プリチャージができる。
【0015】
請求項
3,4の発明によれば、PTCサーミスタの温度がキュリー温度を超えて高温になっている際に、それに応じたプリチャージの終了判定ができる。また、プリチャージのために新たな部品や回路を追加する必要がないとともに、バッテリ電圧が変化しても、最短時間でプリチャージができる。
【0016】
請求項5の発明によれば、残電荷放電処理後のコンデンサ電圧が溶着判定閾値以上のとき、メインリレー部の接点が溶着していると判定するため、メインリレー部の溶着異常の検知ができる。
【0017】
請求項6の発明によれば、プリチャージを開始した後のコンデンサ電圧がバッテリ電圧算出許容閾値以上になっていないことを算出許容判定部が判定したときにおいて、プリチャージを開始したときからの経過時間が異常判定時間を経過している場合に、バッテリに関する異常、或いはプリチャージ回路を異常と判定できるため、バッテリの未接続或いは逆接続、若しくはプリチャージ回路故障の検知ができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した一実施形態の電源装置を
図1〜
図3を参照して説明する。
電源装置は、
図1に示すように、直流電源であるバッテリ10と、このバッテリ10の出力側に接続されて、負荷11への電力供給を行うメインリレー部12と、メインリレー部12に対して並列に接続されたプリチャージ回路13を備えている。なお、本実施形態では、負荷11は、図示しない交流モータに電力を供給するインバータとしているが、限定されるものではない。プリチャージ回路13は、プリチャージ抵抗としての抵抗14とプリチャージリレー部15の直列回路からなる。本実施形態では、メインリレー部12及びプリチャージリレー部15は、それぞれ電磁開閉器(マグネットスイッチ、コンタクタともいう)からなるが、半導体からなる無接点リレーで構成してもよい。
【0020】
負荷11の入力側端子間には、大容量の電解コンデンサからなる平滑用コンデンサ16と、その両端電圧を検出する電圧センサ17が並列に接続されている。 また、電源装置は、プリチャージ時及びプリチャージ終了後に前記メインリレー部12とプリチャージリレー部15を制御する制御部20を備えている。制御部20は、ECU等のコンピュータにより構成されている。制御部20は、バッテリ電圧算出部、プリチャージ終了判定部、放電処理部、溶着判定部、算出許容判定部及び異常判定部に相当する。
【0021】
(第1実施形態の作用)
さて、上記のように構成された電源装置の作用を説明する。
図3は、制御部20が備える図示しないROM等に格納されたプリチャージ処理プログラムに従って行うプリチャージ処理のフローチャートであり、プリチャージを行う場合に実行される。
【0022】
この処理が開始されると、制御部20は、S10において、メインリレー部12、及びプリチャージリレー部15をともにオフにした状態で、負荷11を制御して、平滑用コンデンサ16の放電処理を所定時間行う。この所定時間は、平滑用コンデンサ16が通常時、すなわち、メインリレー部12、プリチャージリレー部15の溶着異常がない正常時に平滑用コンデンサ16の残電荷を処理できる時間に予め設定されている。
【0023】
制御部20は、前記所定時間で放電処理が終了した後、S12でメインリレー部12の接点の溶着異常判定処理を行う。この異常判定処理は、電圧センサ17が検出したコンデンサ電圧Vcを読み込み、当該コンデンサ電圧Vcが、予め設定されている溶着異常判定値Vcr以上か否かを判定する処理である。溶着異常判定値Vcrは溶着判定閾値に相当する。なお、コンデンサ電圧Vcは、電圧センサ17により、制御部20の制御周期Tsで検出されている。
【0024】
コンデンサ電圧Vcが溶着異常判定値Vcr以上の場合、S10の残電荷放電処理を行った後も残電荷があるため、制御部20はメインリレー部12の接点が溶着していると、判定するのである。この場合は、メインリレー部12の接点が溶着しているため、制御部20は、図示しない警告装置に溶着していることを警告報知する処理を行った後、このフローチャートの処理を終了する。
【0025】
また、コンデンサ電圧Vcが、予め設定されている溶着異常判定値Vcr未満の場合には、メインリレー部12の接点が溶着していないと制御部20は判定し、S14に移行する。
【0026】
S14では、制御部20は、プリチャージリレー部15をオン作動させた後、S16に移行する。なお、制御部20はプリチャージリレー部15をオン作動させたときと同時に、図示しないタイマのカウントを開始する。
【0027】
S16では、制御部20は、最新のコンデンサ電圧Vcを読み込みし、S18に移行する。S18では、制御部20は、読み込みしたコンデンサ電圧Vcが、バッテリ電圧を計算し始める閾値Vref1以上か否かを判定する。この閾値Vref1よりもコンデンサ電圧Vcが低い場合は、コンデンサ電圧Vcが低すぎて、後述するバッテリ電圧の算出結果である計算値と、実バッテリ電圧値の差が正確性の観点から許容できるものではないため、除外するのである。閾値Vref1は、予め試験等により得られた値である。閾値Vref1は、バッテリ電圧算出許容閾値に相当する。
【0028】
S16で、コンデンサ電圧Vcが、バッテリ電圧を計算し始める閾値Vref1未満の場合、制御部20は判定を「NO」とし、S20に移行する。
S20では、制御部20は、プリチャージリレー部15をオンにしてからの経過時間tが異常判定値tr以下であるか否かを判定する。異常判定値trは、バッテリ10が正常に接続された状態で、かつプリチャージ回路13が正常である場合(例えばプリチャージリレー部15が溶着していない場合を含む)において、コンデンサ電圧Vcが、閾値Vref1以上に達するに要する時間に予め設定されている。この異常判定値trは、予め試験等により得られた値であり、異常判定時間に相当する。
【0029】
前記経過時間tが異常判定値tr未満の場合は、S16に戻る。一方、前記経過時間t1が異常判定値trを超える場合は、コンデンサ電圧Vcが、バッテリ電圧を計算し始める閾値Vref1を超えない時間(経過時間)が長過ぎるとして、この原因が、バッテリ10が未接続、或いは、逆に正極、負極が逆に接続されている、若しくは、プリチャージ回路13が異常であるとして、制御部20はS22に移行する。S22では、制御部20は、図示しない警告装置に異常であることを警告報知する処理を行った後、このフローチャートの処理を終了する。
【0030】
S18において、制御部20は、読み込みしたコンデンサ電圧Vcが、バッテリ電圧を計算し始める閾値Vref1以上の場合は、判定を「YES」とし、S24に移行する。
S24では、制御部20はコンデンサ電圧Vcの前回読み込みから時間Ts経過しているか否かを判定し、時間Ts経過していなければ待機する。S24で、コンデンサ電圧Vcの前回読み込みから時間Ts経過した場合には、制御部20はS26に移行し、最新のコンデンサ電圧Vcを読み込む。
【0031】
次の、S28では制御部20はバッテリ電圧Vbを算出する。
ここで、S28で使用するバッテリ電圧Vbの算出式(3)について説明する。この算出式(3)の導出は、下記のようにして行われている。
【0032】
バッテリ電圧Vb[V]としたとき、バッテリ10を抵抗14を介して平滑用コンデンサ16に充電したときのt(秒)時点におけるコンデンサ電圧Vc[V]は、式(1)で表すことができる。なお、R[Ω]は抵抗14の抵抗値であり、C(F)は平滑用コンデンサ16の容量であって、ともに既知であるため、予めプリチャージ処理プログラムに記述されている。
【0033】
【数1】
オイラー法を用いると、制御n回目でのコンデンサ電圧Vcnは、式(2)で表される。
【0034】
【数2】
式(2)をVbについて解くと、
【0036】
図2は、バッテリ電圧(算出値)と、コンデンサ電圧Vcとの関係が示されている。同図の例では、バッテリ電圧を100Vとしている。同図に示すように、コンデンサ電圧Vcは、プリチャージを開始して電圧値が0から、徐々に上昇してカーブを描きながら、バッテリ電圧に収束する。この場合、時刻n−1の時のコンデンサ電圧Vcn−1と時間Ts経過後の時刻n時のコンデンサ電圧Vcnを取得して、この値に基づいて、式(3)により、バッテリ電圧が求めることができる。
【0037】
S28でバッテリ電圧Vbを算出後、制御部20は、S30に移行して、算出したバッテリ電圧VbとS28で読み込みした最新のコンデンサ電圧Vcとの電位差(Vb−Vc)が電位差閾値Vref2以下か否かを判定する。ここで、電位差閾値Vref2は第1プリチャージ終了判定閾値に相当する
。
【0038】
算出したバッテリ電圧VbとS28で読み込みした最新のコンデンサ電圧Vcとの電位差(Vb−Vc)が電位差閾値Vref2を超えている場合は、コンデンサ電圧Vcとバッテリ電圧との電位差が大きすぎて、プリチャージが十分に行われていないものとして、制御部20はS24にリターンする。
【0039】
算出したバッテリ電圧VbとS28で読み込みした最新のコンデンサ電圧Vcとの電位差(Vb−Vc)が電位差閾値Vref2以下の場合は、プリチャージが十分に行われたものとして、制御部20はプリチャージの終了判定を行いS32に移行する。
【0040】
S32では、制御部20はメインリレー部12をオンするとともにS34では、プリチャージリレー部15をオフして、このフローチャートを終了する。
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0041】
(1) 本実施形態の電源装置は、負荷11に対して並列接続される平滑用コンデンサ16と、負荷11に対して直流電力を付与するバッテリ10と、バッテリ10と平滑用コンデンサ16間をオンオフするメインリレー部12と、メインリレー部12と並列に接続された抵抗14とプリチャージリレー部15の直列回路を含むプリチャージ回路13と、メインリレー部12とプリチャージリレー部15のオンオフ制御を行う制御部20を備える。また、電源装置は、メインリレー部12がオフでプリチャージリレー部15がオンのときのプリチャージ時に平滑用コンデンサ16のコンデンサ電圧Vcを検出する電圧センサ17と、プリチャージ時に電圧センサ17が取得したコンデンサ電圧及びプリチャージ回路13に含まれる抵抗14に基づいてバッテリ電圧Vbを算出する制御部20(バッテリ電圧算出部)と、算出したバッテリ電圧Vbの変化状態量に基づいてプリチャージの終了判定を行う制御部20(プリチャージ終了判定部)を備える。そして、制御部20は、プリチャージ終了判定があったときは、プリチャージリレー部15をオフする。
【0042】
この結果、本実施形態の電源装置によれば、プリチャージのために新たな部品、すなわち、従来と異なり、電流センサやバッテリ電圧を測定する専用の電圧センサが必要でなく、そのための新たな回路を追加する必要がない。また、バッテリ電圧が算出できるため、バッテリ電圧が変化しても、最短時間でプリチャージができる。
【0043】
(2) 本実施形態の電源装置では、制御部20はプリチャージ終了判定部として、算出した最新のバッテリ電圧Vbと、電圧センサ17が取得した最新のコンデンサ電圧Vcの電位差を、バッテリ電圧の変化状態量として監視し、該電位差が電位差閾値Vref2(第1プリチャージ終了判定閾値)以下になったか否かを判定するようにした。
【0044】
この結果、本実施形態によれば、算出された最新のバッテリ電圧と、電圧センサが取得した最新のコンデンサ電圧の電位差を、バッテリ電圧の変化状態量として監視し、該電位差が電位差閾値Vref2(第1プリチャージ終了判定閾値)以下になったか否かを判定することにより、最新のバッテリ電圧の状態に基づいてプリチャージ終了の判定を好適に行うことができる。
【0045】
(3) 本実施形態の電源装置によれば、制御部20は、メインリレー部12がオフしている状態で平滑用コンデンサ16の残電荷放電を行わせる放電処理部と、残電荷放電処理後のコンデンサ電圧Vcが溶着異常判定値Vcr(溶着判定閾値)以上のとき、メインリレー部12の接点が溶着していると判定する溶着判定部としている。この結果、本実施形態によれば、残電荷放電処理後のコンデンサ電圧Vcが溶着異常判定値Vcr以上のとき、メインリレー部12が溶着していると判定するため、メインリレー部12の接点が溶着異常の検知ができる。
【0046】
(4) 本実施形態の電源装置によれば、制御部20は、プリチャージリレー部をオンした後、すなわちプリチャージを開始した後のコンデンサ電圧Vcが、閾値Vref1(バッテリ電圧算出許容閾値)以上になったか否かを判定し、閾値Vref1以上のとき、前記バッテリ電圧算出部のバッテリ電圧の算出を許容する算出許容判定部としている。また、制御部20は、プリチャージを開始した後のコンデンサ電圧Vcが閾値Vref1以上になっていないことを判定したときにおいて、プリチャージを開始したときからの経過時間が異常判定値tr(異常判定時間)を経過している場合にプリチャージ回路13を異常と判定する異常判定部としている。この結果、プリチャージを開始した後のコンデンサ電圧が閾値Vref1以上になっていないことが判定されたときにおいて、プリチャージを開始したときからの経過時間が異常判定値を経過している場合に、バッテリに関する異常、或いはプリチャージ回路を異常と判定できるため、バッテリに関する異常、若しくはプリチャージ回路故障の検知ができる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の電源装置を
図4〜
図7を参照して説明する。なお、本実施形態の構成中、第1実施形態と同一構成については同一符号を付してその説明を省略し、異なる構成について説明する。
【0048】
本実施形態では、
図4に示すようにプリチャージ回路13が、プリチャージ抵抗としてのPTCサーミスタ14Aで構成されているところが、第1実施形態と異なり、また、プリチャージリレー部として無接点リレー15A、例えばソリッドステートコンタクタの直列回路で構成されている。他の構成は第1実施形態と同様に構成されている。本実施形態の制御部20は、バッテリ電圧算出部、プリチャージ終了判定部、放電処理部、溶着判定部、算出許容判定部、異常判定部及び抵抗値算出部に相当する。
【0049】
(第2実施形態の作用)
次に、第2実施形態の作用を
図7を参照して説明する。
図7は、制御部20が備える図示しないROM等に格納されたプリチャージ処理プログラムに従って行うプリチャージ処理のフローチャートであり、プリチャージを行う場合に実行される。
【0050】
このプリチャージ処理のフローチャートにおいて、第2実施形態では、第1実施形態のフローチャートのS26とS28の間にS27の処理が追加されているところが異なっている。S10〜S26、S28〜S34の処理は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0051】
S27の処理では、制御部20は、PTCサーミスタ14Aの抵抗値を、算出式(6)を使用して算出する。
なお、算出式(6)は、前述した式(1)、式(2)、式(4)、式(5)から導出される。式(4)は、制御n−1回目でのコンデンサ電圧Vc
n−1での算出式である。
【0052】
【数4】
式(2)−式(4)にすると、式(5)が得られる。
【0053】
【数5】
この式(5)を抵抗値Rについて解くと、式(6)が得られる。
【0054】
【数6】
図5は、横軸を時間軸とし、縦軸を電圧値、及び抵抗値(計算値)とし、コンデンサ電圧(計測値)と、抵抗値(計算値)、バッテリ電圧(計算値)の関係を示している。なお、
図5では、説明の便宜上、抵抗値は直線で示しているが、PTCサーミスタの特性から
図6に示すように温度の変化により、抵抗値は変化する。
【0055】
そして、制御部20は、S28でバッテリ電圧Vbを算出する式(3)では、式(6)で算出した抵抗値Rを使用する。
本実施形態では、S10で残電荷放電処理を行っても、PTCサーミスタ14Aに温度が上昇するとプリチャージ回路13に流れるプリチャージ電流が減少することから、過熱の抑制ができる。また、仮に、PTCサーミスタ14Aが高温となっても、S30において、算出したバッテリ電圧VbとS28で読み込みした最新のコンデンサ電圧Vcとの電位差(Vb−Vc)が電位差閾値Vref2以下になるまでプリチャージが実行できる。また、バッテリ電圧が変化しても、最短時間でプリチャージできる。
【0056】
本実施形態によれば、第1実施形態の(1)〜(4)の効果の他、以下のような効果を得ることができる。
(1) 本実施形態の電源装置のプリチャージ回路13は、PTCサーミスタ14Aが含まれているとともに、制御部20を電圧センサ17が取得したコンデンサ電圧Vcに基づいてPTCサーミスタ14Aの抵抗値を算出する抵抗値算出部としている。また、制御部20は、算出したPTCサーミスタの抵抗値(プリチャージ抵抗)と電圧センサ17が取得したコンデンサ電圧Vcに基づいてバッテリ電圧を算出するようにしている。
【0057】
この結果、本実施形態によれば、無接点リレー15Aのオンオフが繰り返された際に、プリチャージ電流が頻繁に流れてPTCサーミスタ14Aの温度が上がると、その抵抗が増大することにより流れる電流も小さくなるため、過熱が抑制されて過熱によるプリチャージ回路13のプリチャージ抵抗(PTCサーミスタ)の破損が防止できるとともに、PTCサーミスタが高温になっても、プリチャージができる。
【0058】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を
図4、
図6、
図8、
図9を参照して説明する。本実施形態のハード構成は、第2実施形態と同一のためその説明を省略する。本実施形態では、プリチャージ処理プログラムが第2実施形態と異なっている。また、本実施形態では、プリチャージ回路13のプリチャージ抵抗としてPTCサーミスタ14Aを使用するが、この場合、PTCサーミスタ14Aは、
図6のキュリー温度以下の範囲で使用するものである。すなわち、PTCサーミスタ14Aは、
図6に示すようにキュリー温度を超えると急激に抵抗値が上昇する一方、キュリー温度以下では比較的安定した抵抗値を示す特性を有する。本実施形態では、この比較的安定した抵抗値の範囲を、プリチャージ抵抗の抵抗値として使用するためのものである。
【0059】
本実施形態の制御部20は、バッテリ電圧算出部、プリチャージ終了判定部、放電処理部、溶着判定部、算出許容判定部、及び異常判定部に相当する。
(第3実施形態の作用)
次に、第3実施形態の作用を
図9のフローチャートを参照して説明する。
図9は、制御部20が備える図示しないROM等に格納されたプリチャージ処理プログラムに従って行うプリチャージ処理のフローチャートであり、プリチャージを行う場合に実行される。
【0060】
このプリチャージ処理のフローチャートにおいて、第3実施形態では、第2実施形態のフローチャートのステップの中で、S10〜S26、S32,S34は第2実施形態と同様であり、第2実施形態のS27〜S30の代わりに、S40〜S48の処理を行うところが異なっている。
【0061】
制御部20は、S26からS40に移行すると、制御n回目に計算するバッテリ電圧Vbe
nを、式(7)を使用して算出する。ここで式(7)中のRc[Ω]はPTCサーミスタ14Aのキュリー温度における抵抗値であり、C(F)は平滑用コンデンサ16の容量であって、ともに既知であるため、予めプリチャージ処理プログラムに記述されている。
【0062】
式(7)は式(3)中の抵抗値RをPTCサーミスタのキュリー温度の抵抗値Rcに代えたものである。
【0063】
【数7】
S40の処理後、S42では制御部20は、バッテリ電圧Vbeの時間変化である差分ΔVbeを算出し、ΔVbeが0未満、すなわち、負か否かを判定する。このように算出されたバッテリ電圧の前回値から今回値の差分ΔVbeは、バッテリ電圧の変化状態量に相当する。
【0064】
ここで、バッテリ電圧Vbeの時間変化の差分ΔVbeについて説明する。
実際のPTCサーミスタ14Aの抵抗値をRとしたとき、該抵抗値Rがキュリー温度の抵抗値Rcよりも小さければ、バッテリ電圧Vbe
nは、実際のバッテリ電圧Vbよりも大きく計算される。また、逆に実際のPTCサーミスタ14Aの抵抗値Rが、キュリー温度の抵抗値Rcよりも大きければバッテリ電圧Vbe
nは、実際のバッテリ電圧Vbよりも小さく計算される。
【0065】
しかし、バッテリ電圧Vbe
nは、時間経過とともに、実際のバッテリ電圧Vbに収束する。このため、バッテリ電圧Vbeの時間変化の差分ΔVbeは、式(8)で算出できる。
【0066】
【数8】
この時間変化の差分ΔVbeの符号を見ると、キュリー温度の抵抗値Rcに対する実際のPTCサーミスタ14Aの抵抗値Rの大きさが分かり、同時にキュリー温度に対するPTCサーミスタの温度が分かることになる。
【0067】
具体的には下記のA〜Cの条件の場合、以下のことが分かる。
(A条件:ΔVbe>0の場合、
図8のA参照)
R>Rcであり、かつPTCサーミスタはキュリー温度未満となっている。
【0068】
(B条件:ΔVbe=0の場合、
図8のB参照)
R=Rcであり、かつPTCサーミスタはキュリー温度となっている。
ここで、「0」の値は、第2プリチャージ終了判定閾値に相当する。
(C条件:ΔVbe<0の場合(負の場合)、
図8のC参照)
R<Rcであり、かつPTCサーミスタはキュリー温度以上となっている。
【0069】
フローチャートの話に戻して、S42において、制御部20は、A条件またはB条件の場合は、S44に移行して、予め設定されているプリチャージ時間(すなわち、基準プリチャージ時間)経過しているか否かを判定する。プリチャージ時間は、S14において、無接点リレー15Aがオンされたときからの時間であり、図示しないタイマにより、無接点リレー15Aがオンした時から計時されている。制御部20は、この計時された時間と、予めプログラムに記述されている基準プリチャージ時間と比較して判定する。プリチャージ時間が基準プリチャージ時間以内である場合には、S24にリターンし、基準プリチャージ時間を超している場合には、S32に移行する。
【0070】
一方、S42において、制御部20は、C条件の場合は、S46に移行して、無接点リレー15Aをオフ作動してS48に移行する。S48では、制御部20は、図示しない警告装置に異常であることを警告報知する処理を行った後、このフローチャートの処理を終了する。
【0071】
本実施形態によれば、第1実施形態の(1)〜(4)の効果の他、以下のような効果を得ることができる。
(1) 本実施形態の電源装置は、プリチャージ回路13のプリチャージ抵抗を、PTCサーミスタ14Aとしている。また、電源装置の制御部20は、バッテリ電圧算出部として、PTCサーミスタ14Aのキュリー温度の抵抗値をプリチャージ抵抗とし、該プリチャージ抵抗と電圧センサ17が取得したコンデンサ電圧Vcに基づいてバッテリ電圧Vbe
nを算出する。また、制御部20は、プリチャージ終了判定部として、算出されたバッテリ電圧の前回値から今回値の差分(ΔVbe)を変化状態量として算出を行い、算出した差分ΔVbeとキュリー温度から導き出された第2プリチャージ終了判定閾値(0)との比較結果をPTCサーミスタの温度がキュリー温度以上であるとしてプリチャージ終了判定する。そして、制御部20は、プリチャージ終了判定と判定があったときは、無接点リレー15Aをオフし、プリチャージ終了判定の判定がなかったときは、プリチャージを開始してからの経過時間が予め設定された基準プリチャージ時間を経過した場合、メインリレー部12をオンするとともに無接点リレー15Aをオフする。この結果、本実施形態によれば、PTCサーミスタの温度がキュリー温度を超えて高温になっている際に、それに応じたプリチャージの終了判定ができる。また、プリチャージのために新たな部品や回路を追加する必要がないとともに、バッテリ電圧が変化しても、最短時間でプリチャージができる。
【0072】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 前記各実施形態において、S12を省略してもよい。
・ 前記各実施形態において、S20及びS22を省略してもよい。この場合、S18で「NO」と判定された場合、S16にリターンする。
【0073】
・ 第2実施形態の無接点リレー15Aを第1実施形態と同様に電磁開閉器からなるコンタクタに変更してもよい。
・ 第2実施形態では、PTCサーミスタ14Aを単体としたが、プリチャージ抵抗として、抵抗とPTCサーミスタ14Aを組み合わせ(直列回路または並列回路)して構成するようにしてもよい。この場合、式(6)で求められた抵抗値は、抵抗とPTCサーミスタの合成抵抗値となる。
【0074】
・ 第3実施形態では、算出されたバッテリ電圧の前回値から今回値の差分ΔVbeは、バッテリ電圧の変化状態量としたが、前回値と今回値の比を変化状態量として算出してもよい。例えば、「前回値/今回値」をhとしたとき、第3実施形態のA条件、B条件、C条件を下記のように変更する。
【0075】
(A条件:h<1の場合、
図8のA参照)
R>Rcであり、かつPTCサーミスタはキュリー温度未満となっている。
(B条件:h=1の場合、
図8のB参照)
R=Rcであり、かつPTCサーミスタはキュリー温度となっている。
【0076】
ここで、「1」の値は、第2プリチャージ終了判定閾値に相当する。
(C条件:h>1の場合、
図8のC参照)
R<Rcであり、かつPTCサーミスタはキュリー温度以上となっている。
【0077】
このようにしても、第3実施形態と同様の効果を実現できる。
具体的には、第3実施形態の
図9のフローチャート中、S42で、比hを算出し、上記A条件、B条件、C条件のいずれであるかを制御部20が判定すればよい。
【0078】
なお、比hの取り方は、「今回値/前回値」でもよい。この場合は、A条件はh>1の場合となり、C条件はh<1となる。