特許第5835075号(P5835075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5835075
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】膨張圧の推定方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 57/00 20060101AFI20151203BHJP
【FI】
   C10B57/00
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-92463(P2012-92463)
(22)【出願日】2012年4月13日
(65)【公開番号】特開2013-221056(P2013-221056A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2014年8月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100067541
【弁理士】
【氏名又は名称】岸田 正行
(74)【代理人】
【識別番号】100103506
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 弘晋
(72)【発明者】
【氏名】林崎 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】窪田 征弘
(72)【発明者】
【氏名】野村 誠治
【審査官】 ▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−306294(JP,A)
【文献】 特開平07−278562(JP,A)
【文献】 軟化状態にある石炭の膨張圧評価法,燃料協会誌 第68巻 第3号 (1989),p210-216
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B,G01N
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉に装入される石炭のビトリニット組織の反射率およびイナート組織の総量を測定し、この測定結果と、ビトリニット組織の反射率としてピークが1つの石炭を用いて予め取得されたビトリニット組織の反射率及びイナート組織の総量と膨張圧との相関関係から、前記コークス炉に装入される石炭の膨張圧を推定する方法において、前記コークス炉に装入される石炭は、ビトリニット組織の反射率として複数のピークを含んでおり、前記各ピークに対応する前記反射率分布をそれぞれ正規分布にして、各正規分布における前記反射率の平均値およびイナート組織の総量を用いて、前記各ピークに対応する各膨張圧の推定を実施し、前記各ピークに含まれるビトリニット組織の前記石炭全体に含まれるビトリニット組織全体に対する含有割合を用いて、前記推定した各膨張圧を加重平均することにより、石炭全体での膨張圧を推定する方法。
【請求項2】
前記ビトリニット組織の反射率分布およびイナート組織の総量は、JIS M8816に規格された方法により測定されることを特徴とする請求項1に記載の膨張圧の推定方法。
【請求項3】
前記ビトリニット組織の反射率分布およびイナート組織の総量は、A工程〜C工程を有する石炭組織自動分析方法により測定されることを特徴とする請求項1に記載の膨張圧の推定方法。
A工程;対象とする石炭に可視光を照射し、反射率を測定させる。
B工程;ビトリニット組織を測定可能に近接した2点間の反射率の差が、一定範囲内にある測定点をビトリニット組織として集計する。
C工程;前記の近接した2点間の反射率の差が前記の一定範囲外にあり、反射率が所定値よりも高い測定点をイナート組織として認識して集計する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉に装入される石炭の膨張圧を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉の炭化室で石炭を乾留してコークスを製造する過程で、石炭は加熱されることにより膨張し、コークス炉の炉壁に圧力を及ぼすが、この圧力のことを一般に膨張圧と呼んでいる。この膨張圧が異常に高くなると、コークス炉の炉壁が損傷して操業不能になったり、炭化室から炉外にコークスを押し出す際の押し出し負荷が増大し、炉壁に過大な負荷が加わることにより、炉壁損傷の原因となる。このため、コークス炉の操業において膨張圧をコークス炉損傷の許容限界値以下に管理することは、重要な課題である。特に、近年コークス炉の老朽化が進み、炉体強度が低下することにより許容限界値が低下するとともに、近年の調湿炭法などの石炭事前処理技術の導入によりコークス炉炭化室内の石炭装入嵩密度が上昇し、膨張圧は増加傾向にあり、コークス炉の延命のために膨張圧管理はますます重要な課題となっている。
【0003】
コークス炉の損傷を避けるため、コークス炉で使用する前に試験炉で石炭を実際に乾留して膨張圧を測定する必要がある。膨張圧測定には、通常KoppersとJenkner (H.Koppersand A.Jenkner,Fue
l,10(1931),232、 H.Koppers and A.Jenkner,Fuel,10(1931),273)によって開発された可動壁炉(片側の壁が可動式の特殊な試験乾留炉)が用いられており、この可動壁炉で測定された膨張圧で10〜15kPaがコークス炉の炉体強度許容限界値とされている。
【0004】
しかしこの試験乾留炉はたいへん高価であり、しかも必要とされる石炭試料量が多く(約400kg)、簡便な測定方法ではない。また、測定結果の再現性が乏しく、原料石炭の配合の変更やコークス炉の操業条件の変更を行う時に、迅速な対応ができない。そのため、試験乾留炉で石炭の膨張圧を実測することなく、簡便な方法で膨張圧を推定する方法が従来より提案されてきた。
【0005】
特許文献1は、揮発分、炭素含有率、ビトリニット平均反射率等で表わされる石炭化度と不活性成分量により膨張圧を推定する方法に基づき、石炭の石炭化度と不活性成分量を調整して、膨張圧が許容限界値以下になるように制御する石炭膨張圧の制御方法を開示する。特許文献2は、軟化溶融状態にある石炭層のガス透過係数を測定し、あるいは石炭性状(石炭組織中の不活性成分量と最高流動度)から、あるいは乾留条件から推定する方法に基づいてガス透過係数を推算し、このガス透過係数、軟化溶融状態にある石炭層の炉幅方向厚み、および軟化溶融層からの単位体積当たり熱分解ガス発生速度を用いて、石炭乾留過程における膨張圧の経時変化の推定を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−306294号公報
【特許文献2】特開平5−340937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1で開示されている様な、揮発分、炭素含有率、ビトリニット平均反射率等で表わされる石炭化度と不活性成分量により膨張圧を推定する方法で推定される値と実測値とが乖離する入荷炭が存在することがわかった。
【0008】
また、特許文献2で開示されている様な、ガス透過係数、軟化溶融状態にある石炭層の炉幅方向厚み、および軟化溶融層からの単位体積当たり熱分解ガス発生速度を用いて、石炭乾留過程における膨張圧を推定する方法で推定される値も、石炭性状(石炭組織中の不活性成分量と最高流動度)を用いてガス透過係数を推算する場合、実測値と膨張圧の推定値が乖離する入荷炭が存在することがわかった。
【0009】
本発明は、ビトリニット反射率分布を用いて、試験乾留炉で石炭の膨張圧を実測することなく、極めて簡便な方法で膨張圧を精度良く推定する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を鋭意検討した結果、膨張圧の推定精度を低下させる原因として、ビトリニット反射率分布が複数のピークを有することにあることを見出した。図1は、ビトリニット平均反射率に複数のピークを有する入荷炭のビトリニット反射率分布を示しており、横軸がビトリニット反射率、縦軸が割合(体積%)である。図1のビトリニット反射率分布は、高反射率の部分と低反射率の部分とに分かれる。
【0011】
この場合、特許文献1に開示された方法でビトリニット平均反射率を求めると、ビトリニット平均反射率と各ピーク値との差が大きくなり、ビトリニット平均反射率が石炭の代表性状から乖離した値になってしまう。すなわち、図2に図示するように、入荷炭のビトリニット平均反射率が1つのピークしか有していない場合、ビトリニット平均反射率は入荷炭の代表性状を表すことになるから、ビトリニット平均反射率から精度よく膨張圧を推定することができる。
【0012】
しかしながら、図1に図示するような入荷炭では、ビトリニット平均反射率が入荷炭の代表性状から乖離するため、ビトリニット平均反射率から精度よく膨張圧を推定することができないことが判明した。
【0013】
また、特許文献2に開示された方法では、石炭性状(石炭組織中の不活性成分量と最高流動度)を用いた場合、最高流動度という入荷炭全体の平均的な値しか求めることが出来ないため、図1に図示するような入荷炭の場合、精度よく膨張圧を推定することができないことが判明した。
【0014】
本発明者は、上記課題を解決するために、
(1)コークス炉に装入される石炭のビトリニット組織の反射率およびイナート組織の総量を測定し、この測定結果と、ビトリニット組織の反射率としてピークが1つの石炭を用いて予め取得されたビトリニット組織の反射率及びイナート組織の総量と膨張圧との相関関係から、前記コークス炉に装入される石炭の膨張圧を推定する方法において、前記コークス炉に装入される石炭は、ビトリニット組織の反射率として複数のピークを含んでおり、前記各ピークに対応する前記反射率分布をそれぞれ正規分布にして、各正規分布における前記反射率の平均値およびイナート組織の総量を用いて、前記各ピークに対応する各膨張圧を推定し、前記各ピークに含まれるビトリニット組織の前記石炭全体に含まれるビトリニット組織全体に対する含有割合を用いて、前記推定した各膨張圧を加重平均することにより、石炭全体での膨張圧を推定する方法を創作した。
【0015】
(2)上記(1)の膨張圧の推定方法において、前記ビトリニット組織の反射率分布およびイナート組織の総量は、JIS M8816に規格された方法により測定することができる。
【0016】
(3)上記(1)の膨張圧の推定方法において、前記ビトリニット組織の反射率分布およびイナート組織の総量は、A工程〜C工程を有する石炭組織自動分析方法により測定することができる。
A工程;対象とする石炭に可視光を照射し、反射率を測定させる。
B工程;ビトリニット組織を測定可能に近接した2点間の反射率の差が一定範囲内にある測定点をビトリニット組織として集計する。
C工程;前記の近接した2点間の反射率の差が前記の一定範囲外にあり、反射率が所定値よりも高い測定点をイナート組織として認識して集計する。
【0017】
上記の石炭組織自動測定方法としては、例えば、小島(鉄と鋼 vol.64, No.12 pp.1661-1670(1978))によって開発された方法が推奨される。ちなみに、上記のB工程における「ビトリニット組織を測定可能に近接した2点間の反射率の差が一定範囲内」という記載の「近接した2点間」および「一定範囲内」について説明する。
【0018】
ビトリニット組織は、光学的に均質でほかの組織より大きな形で存在していることを利用して測定しており、すなわち、近接した2点間の反射率の差がほとんどないということを利用して測定している。従って、「近接した2点間」の距離は、ビトリニット組織が測定可能であれば、適宜、設定すれば良く、例えば、10μmが例示できる。
【0019】
また、「一定範囲内」というのは、ビトリニット組織の場合、上記の通り、光学的に均質でほかの組織より大きな形で存在しているため、原則として、2点間の反射率が同一である。しかし、2点間の一方が他の組織にかかっている場合等は、同一の反射率にはならず、多少の相違が生じる場合がある。そこで、過去のデータ等や許容される測定精度に基き、「一定範囲」を、設定すれば良く、例えば、2点間の反射率の差としては0.075%以内が例示できる。
【0020】
また、C工程における「反射率が所定値よりも高い測定点をイナート組織」という記載の「所定値」とは、ビトリニット組織を代表する反射率であれば良いが、例えば、平均反射率を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ビトリニット平均反射率が実際の石炭性状から乖離することを抑制できる。その結果、膨張圧の推定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】単味炭A及びBからなる入荷炭のビトリニット反射率分布である。
図2】一種の単味炭からなる入荷炭のビトリニット反射率分布である。
図3図1のビトリニット反射率分布を波形分離した正規分布である。
図4】膨張圧とビトリニット反射率との関係を示したグラフである。
図5】実施例の方法により推定された膨張圧と、実測膨張圧とのズレ量を定量的に示したグラフである。
図6】比較例の方法により推定された膨張圧と、実測膨張圧とのズレ量を定量的に示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本実施形態に係る石炭の膨張圧の推定方法について、詳細に説明する。近年、石炭価格の高騰に伴い新規炭鉱の開発が活発であるが、新規石炭(後述する、入荷炭に相当する)において、ビトリニット反射率分布に複数のピークを有するものが存在していることが判った。
【0024】
この原因は明確ではないが、一つの採掘地から採掘される石炭の採掘量が少ない場合、この採掘地において採掘された単味炭Aと、他の採掘地において採掘された単味炭Bとが洗炭工場や出荷港において混ぜ合わされる場合や、同一の採掘地であっても炭層の違いにより、ビトリニット平均反射率が異なることが考えられる。
【0025】
ビトリニット反射率分布が複数のピークを有する石炭は、上述の通り、膨張圧の推定精度を低下させるという問題が発生した。そこで、本実施形態における入荷炭には、ビトリニット反射率分布に複数のピークを有するものを対象としている。
【0026】
最初に、入荷炭に含まれるビトリニット組織の反射率分布を測定する。ここで、反射率分布の測定方法は、JIS M8816に規定されているため、詳細な説明を省略する。なお、上述したように、A工程〜C工程を有する石炭組織自動分析方法により、反射率部分を測定してもよい。本実施形態の入荷炭では、反射率分布は図1に図示するように二つのピーク値を有しており、図中右側の波形が高反射率の部分に対応し、図中左側の波形が低反射率の部分に対応している。
【0027】
次に、図1の反射率分布のデータを処理して、高反射率部分に対応する正規分布と、低反射率部分に対応する正規分布とに波形分離する。データ処理は、コンピュータがソフトウェアに記録された公知のプログラムを読み出すことにより実行される。図3は、波形分離後の正規分布を示している。右側の波形が高反射率部分に対応しており、左側の波形が低反射率部分に対応している。
【0028】
次に、図3に基づき、高反射率部分及び低反射率部分のビトリニット平均反射率をそれぞれ求め、求めたそれぞれのビトリニット平均反射率を用いて、後述の方法により膨張圧を推定し、入荷炭に含まれるビトリニット組織全体に対する含有割合によって推定した膨張圧を加重平均することにより入荷炭全体での膨張圧を求める。すなわち、本実施形態のビトリニット平均反射率は、従来のようにビトリニット反射率分布から単純に平均値を求めるものではなく、各ピークに対応したビトリニット反射率分布を正規化し、各ピークのビトリニット反射率分布毎にビトリニット反射率分布を平均化することで求められる。
【0029】
本実施形態では、高反射率部分のビトリニット平均反射率は1.45(%)であり、低反射率部分のビトリニット平均反射率は1.02(%)である。また、入荷炭に含まれる高反射率部分及び低反射率部分のうち高反射率部分に含まれるビトリニット組織の含有割合は59.1(体積%)であり、低反射率部分に含まれるビトリニット組織の含有割合は40.9(体積%)である。なお、波形分離をせず単純に平均化した入荷炭のビトリニット平均反射率は、1.28(%)である。
【0030】
次に、図4のグラフ(相関関係に相当する)に、波形分離により求めたそれぞれのビトリニット平均反射率を当てはめることにより、膨張圧を求め、ビトリニット組織全体に対するそれぞれのピークの含有割合で推定膨張圧を加重平均することにより石炭全体の膨張圧を推定求めることができる。
【0031】
ここで、図4は、反射率と膨張圧との相関関係を示している。相関関係は、入荷炭に含まれるイナート組織の総量(以下、トータルイナート量という)によって異なる。図4では、トータルイナート量が15%、25%、35%の場合のみを図示しているが、他のトータルイナート量についても適宜追加することができる。なお、トータルイナート量は、ビトリニット反射率分布を測定する際に、取得することができる(JIS M8816参照)。また、上述したように、A工程〜C工程を有する石炭組織自動分析方法により、トータルイナート量を測定してもよい。
【0032】
図4のグラフは、予め試験コークス炉を用いた試験を行うことにより取得することができる。なお、その際には、ビトリニット組織の反射率としてピークが1つの石炭を選定する必要がある。ちなみに、ビトリニット組織の反射率のピークが1つの石炭であれば、各種の石炭を用いることができる。本実施形態では、炉幅が420mmの乾留炉を有する試験コークス炉に石炭を装入して膨張圧を測定し、この様な測定を複数種の石炭を用いて行った。
【0033】
3mm以下の粒子が85質量%となるような粉砕粒度で粉砕される石炭を、試験コークス炉に装入した。また、装入密度は乾炭ベースで0.85t/mに設定し、水分は3質量%に設定した。測定された膨張圧を、石炭のビトリニット平均反射率、トータルイナート量及び膨張圧により整理することにより、図4のグラフを得た。
【0034】
また、入荷炭のビトリニット組織の反射率のピークが3つ以上の場合にも、上記方法を用いてビトリニット平均反射率を算出することにより、精度よく膨張圧を推定することができる。
【0035】
次に、実施例を示して本発明についてより具体的に説明する。表1は、実施例の推定方法により推定された膨張圧を示している。表2は、比較例の推定方法により推定された膨張圧を示している。表3は、参考例の推定方法により推定された膨張圧を示している。
【表1】
【表2】
【表3】
実施例1では、上記実施形態と同様の入荷炭を使用した。実施例2、4では、石炭のビトリニット組織の反射率のピークが3つの入荷炭を使用した。Ro1〜Ro3は、各ビトリニット反射率のピークのビトリニット平均反射率を示している。割合1〜3は、入荷炭に含まれるビトリニット組織全体を100体積%としたときに各ピークに含まれるビトリニット組織の割合を示している。実施例3、5では、石炭のビトリニット組織の反射率のピークが2つの入荷炭を使用した。
【0036】
比較例1〜5はそれぞれ、実施例1〜5と同じ入荷炭を使用した。実施例1〜5では、上記実施形態の方法により各ビトリニット反射率のピークのビトリニット平均反射率を測定した。比較例1〜5では、従来の方法、つまり、取得したビトリニット反射率の分布を波形分離せずに入荷炭のビトリニット平均反射率を測定した。参考例1〜6では、石炭のビトリニット組織の反射率のピークが1つの入荷炭を使用した。参考例1及び4では、同一の入荷炭を使用した。参考例2及び5では、同一の入荷炭を使用した。参考例3及び6では、同一の入荷炭を使用した。参考例1〜3では、実施例と同様の方法で入荷炭のビトリニット反射率分布を正規分布化し、ビトリニット平均反射率を算出した。参考例4〜6では、比較例と同様の方法で入荷炭のビトリニット平均反射率を測定した。
【0037】
実施例1及び比較例1を比較参照して、実施例1では実測値と推定値との差が僅か4.9(kPa)であったが、比較例1では実測値と推定値との差が31.1(kPa)に拡大した。実施例2及び比較例2を比較参照して、実施例2では実測値と推定値との差が僅か4.4(kPa)であったが、比較例2では実測値と推定値との差が14.7(kPa)に拡大した。実施例3及び比較例3を比較参照して、実施例3では実測値と推定値との差が僅か4.9(kPa)であったが、比較例3では実測値と推定値との差が34.4(kPa)に拡大した。実施例4及び比較例4を比較参照して、実施例4では実測値と推定値との差が僅か4.1(kPa)であったが、比較例4では実測値と推定値との差が29.2(kPa)に拡大した。実施例5及び比較例5を比較参照して、実施例5では実測値と推定値との差が僅か2.5(kPa)であったが、比較例5では実測値と推定値との差が9.5(kPa)に拡大した。これらの結果から、本発明の膨張圧推定方法を用いることにより、膨張圧の推定精度が向上することが証明された。
【0038】
参考例1及び参考例4を比較参照して、石炭のビトリニット組織の反射率のピークが1つである入荷炭の膨張圧を推定する際に、本発明の方法を適用しても、従来の方法を適用しても、膨張圧の推定精度に大きな差がないことが証明された。参考例2及び参考例5を比較参照して、石炭のビトリニット組織の反射率のピークが1つである入荷炭の膨張圧を推定する際に、本発明の方法を適用しても、従来の方法を適用しても、膨張圧の推定精度に大きな差がないことが証明された。参考例3及び参考例6を比較参照して、石炭のビトリニット組織の反射率のピークが1つである入荷炭の膨張圧を推定する際に、本発明の方法を適用しても、従来の方法を適用しても、膨張圧の推定精度に大きな差がないことが証明された。
【0039】
図5は、実施例及び参考例1〜3の方法により推定した膨張圧と、実測膨張圧とのズレ量を定量的に示したグラフであり、横軸が推定膨張圧、縦軸が実測膨張圧である。図6は、図5に対応しており、比較例及び参考例4〜6の方法により推定した膨張圧と、実測膨張圧とのズレ量を定量的に示したグラフである。これらの図から明らかなように、実施例及び参考例1〜3の推定値は、実測値の近くにプロットされており、膨張圧の推定精度が極めて高いことがわかる。
【0040】
本発明により、膨張圧を精度良く測定できる。これにより、実炉炭化室内に石炭を装入する前に膨張圧を推定し、膨張圧による炉壁損傷を回避することが可能となる。その結果、コークス炉炉壁補
修費用の低減および炉寿命の延長が達成でき、その経済的な効果は大きい。
【0041】
また、通常、膨張圧で10-15kPaがコークス炉の炉体強度からの許容限界値とされているが、本発明により、許容限界値以下で精度よく石炭配合条件を組むことが出来ることとなり、使用可能な炭種の拡大および良質石炭の使用削減によるコストの削減が可能となる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6