特許第5835076号(P5835076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5835076高炉炉底部の装入物及び残留物の昇温方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5835076
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】高炉炉底部の装入物及び残留物の昇温方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 5/00 20060101AFI20151203BHJP
【FI】
   C21B5/00 314
   C21B5/00 315
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-93943(P2012-93943)
(22)【出願日】2012年4月17日
(65)【公開番号】特開2013-221184(P2013-221184A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2014年8月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100113918
【弁理士】
【氏名又は名称】亀松 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100140121
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 朝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(72)【発明者】
【氏名】西河 良諭
(72)【発明者】
【氏名】熊岡 尚
(72)【発明者】
【氏名】坂本 愛一郎
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−211511(JP,A)
【文献】 特開平08−060211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉炉底部に低温状態又は凝固状態で存在する装入物及び残留物を、出銑口から可燃性ガス及び酸素の1種又は2種を吹き込んで加熱して昇温する方法において、
(a)羽口より炉内ガスを採取して、CO2濃度を測定し、
(b)CO2が検知された場合、吹込みガスを、(b1)可燃性ガスと酸素に切り替えて吹込み、CO2が検知されない場合、吹込みガスを、(b2)酸素のみに切り替えて吹き込む
ことを特徴とする高炉炉底部の装入物及び残留物の昇温方法。
【請求項2】
前記装入物及び残留物中のコークスが赤熱している状態下では、酸素の吹込み量のみを調整することを特徴とする請求項1に記載の高炉炉底部の装入物及び残留物の昇温方法。
【請求項3】
前記高炉炉底部が、火入れ高炉の炉底部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高炉炉底部の装入物及び残留物の昇温方法。
【請求項4】
前記高炉炉底部が、長時間休風した高炉、又は、長時間操業を停めた高炉の炉底部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高炉炉底部の装入物及び残留物の昇温方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉炉底部の装入物及び残留物を加熱して昇温する方法、特に、高炉の建設・改修立上げや、長時間の休風後、又は、バンキング・炉トラブル等の長時間の操業停止後、高炉を立上げるとき、高炉炉底部の装入物及び残留物を加熱して昇温する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火入れ高炉や、長時間休風した高炉、又は、バンキング及び炉冷トラブル等で長時間操業を停止した高炉においては、炉底部の装入物及び残留物が、低温状態又は凝固状態にある。この状態から高炉を立ち上げ、通常の操業状態に戻すためには、炉底部の装入物及び残留物を加熱して昇温しなければならない。
【0003】
通常、コークスや微粉炭などの燃料の燃焼や、炉下部から滴下する銑鉄により、炉底部の装入物及び残留物は加熱される。しかし、この方法は、炉内の熱レベルを徐々に上げていく方法であるので、炉内が所要の熱レベルに達し、所要の生産量に到達するまでには、多量のコークス(エネルギー)と時間を必要とする。
【0004】
特許文献1には、大型高炉の長期休風後の立ち上げを容易にするため、休風時に、炉芯にむけ通気孔を開け、羽口熱風を炉芯に供給する方法が開示されている。しかし、この方法では、羽口〜出銑口間の昇温効率は低く、多量の羽口熱風を必要とするので、エネルギー効率が非常に悪い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平03−260004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高炉立ち上げの上記実情に鑑み、羽口より下部の炉底部の装入物及び残留物の加熱を効率良く行い、高炉立ち上げに要する時間を短縮することを課題とし、該課題を解決する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決する手法について鋭意検討した。その結果、本発明者らは、次の知見を見いだした。
【0008】
可燃性ガス(炭化水素ガス)の燃焼には、炭素の一次燃焼(生成物:CO)と二次燃焼(生成物:CO2)がある。二次燃焼で生成する燃焼ガスの温度は、ブタンの場合、約2800℃であるのに対し、一次燃焼で生成する燃焼ガスの温度は約1150℃である。それ故、一次燃焼が支配的な燃焼状態では、燃焼による炉底部昇温効果は小さい。
【0009】
一般に、コークスが赤熱している状態下(約800℃以上)では、可燃性ガスの一次燃焼が支配的に起こる。それ故、この燃焼状態で、さらに可燃性ガスを燃焼させても、燃焼による昇温効果を享受し難く、時間・燃料の浪費につながる。
【0010】
この場合、可燃性ガスと酸素を同時に吹き込んで燃焼させるよりも、酸素を単独で吹き込んで、コークスを燃焼させるほうが、昇温効果の点で有利である。つまり、炉内のコークスの状態に応じて、吹き込みガスを変えれば、効率良く炉底部を加熱して昇温することができる。
【0011】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
【0012】
(1)高炉炉底部に低温状態又は凝固状態で存在する装入物及び残留物を、出銑口から可燃性ガス及び酸素の1種又は2種を吹き込んで加熱して昇温する方法において、
(a)羽口より炉内ガスを採取して、CO2濃度を測定し、
(b)CO2が検知された場合、吹込みガスを、(b1)可燃性ガスと酸素に切り替えて吹込み、CO2が検知されない場合、吹込みガスを、(b2)酸素のみに切り替えて吹き込む
ことを特徴とする高炉炉底部の装入物及び残留物の昇温方法。
【0013】
(2)前記装入物及び残留物中のコークスが赤熱している状態下では、酸素の吹込み量のみを調整することを特徴とする前記(1)に記載の高炉炉底部の装入物及び残留物の昇温方法。
【0014】
(3)前記高炉炉底部が、火入れ高炉の炉底部であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の高炉炉底部の装入物及び残留物の昇温方法。
【0015】
(4)前記高炉炉底部が、長時間休風した高炉、又は、長時間操業を停めた高炉の炉底部であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の高炉炉底部の装入物及び残留物の昇温方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高炉炉底部の装入物及び残留物の加熱を効率良く行い、高炉立ち上げに要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】CO2濃度測定−吹込みガス切替えの仕組みを模式的に示す図である。
図2】高炉炉底部へのガス吹込み態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、高炉炉底部に低温状態又は凝固状態で存在する装入物及び残留物を、出銑口から可燃性ガス及び酸素の1種又は2種を吹き込んで加熱して昇温する方法において、
(a)羽口より炉内ガスを採取して、CO2濃度を測定し、
(b)CO2が検知された場合、吹込みガスを、(b1)可燃性ガスと酸素に切り替えて吹込み、CO2が検知されない場合、吹込みガスを、(b2)酸素のみに切り替えて吹き込む
ことを特徴とする。
【0019】
即ち、本発明においては、出銑口から吹込みランスを挿入し、可燃性ガスと酸素を同時に吹き込んで燃焼させ、炉底部を直接加熱するが、羽口から炉内ガスを採取して、CO2濃度を測定し、CO2濃度に応じて、吹き込みガスを“可燃性ガスと酸素”又は“酸素のみ”のいずれかに切り替える。
【0020】
図1に、CO2濃度測定−吹込みガス切替えの仕組みを模式的に示す。この仕組みは、基本的には、出銑口から可燃性ガス(C410[ブタン])と酸素を吹き込む系と、羽口から炉内ガスを採取して分析する系を組み合せたものである。
【0021】
高炉1の炉底部に、出銑口2から吹込みランス4を挿入し、可燃性ガス(C410)と酸素を吹き込み、可燃性ガス(C410)の燃焼熱と、炉底部に存在するコークスの燃焼熱で、炉内装入物及び炉内残留物を直接加熱して昇温する。
【0022】
しかし、前述したように、コークスが赤熱している状態下(約800℃以上)では、可燃性ガスの一次燃焼が支配的に起きるので、さらに可燃性ガスを吹き込んで燃焼させても、昇温効果は小さい。このような場合、可燃性ガスと酸素を同時に吹き込んで燃焼させるよりも、酸素を単独で吹き込んで、コークスを燃焼させたほうが、昇温効果の点で有利である。
【0023】
そこで、羽口3にガス採取管5を挿入して採取した炉内ガス(CO、CO2、H2)を分析して得たCO2濃度に基づいて、炉底部におけるガス燃焼が、一次燃焼優位の燃焼か、二次燃焼優位の燃焼かを推定する。即ち、炉底部におけるコークスの状態(赤熱状態(800℃以上)か否か)を推定する。
【0024】
羽口3より採取した炉内ガス中に、CO2が検知された場合、可燃性ガスの燃焼は、二次燃焼が優位の燃焼と判断し、可燃性ガスと酸素の吹き込みを継続する。一方、炉内ガス中に、CO2が検知されない場合、可燃性ガスの燃焼は、一次燃焼が優位の燃焼と判断し、酸素のみを吹き込んで、コークスの燃焼に切り替える。このように、吹き込むガスを切り替えることにより、可燃性ガスの一次燃焼(無駄な燃焼)を抑制することができる。
【実施例】
【0025】
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0026】
(実施例1)
出銑口に、吹込みランスを挿入し、最初、酸素のみを200Nm3/hr吹き込んで、吹込みを開始した。その後、酸素を200Nm3/hrずつ増し、異常が発生しないことを確認した。図2に、高炉炉底部へのガス吹込み態様を示す。
【0027】
酸素の吹き込みを一旦停止し、初期段階のガス吹込みを終了し、第2段階で、ブタンガス(C410)と酸素を完全燃焼比率となる1:6.5の比率で吹き込んだ。最初は、ブタンガス(C410)を20Nm3/hr(酸素130Nm3/hr)で吹き込み、5分/1ステップで、ブタンガス(C410)を20Nm3/hr(酸素130Nm3/hr)ずつ増加し、30分で吹込み量の上限まで増加した。
【0028】
この間、羽口にガス採取管を挿入して採取した炉内ガス(CO、CO2、H2)を分析して、炉底部におけるガス燃焼が、一次燃焼優位の燃焼か、二次燃焼優位の燃焼かを推定した。
【0029】
CO2が検出されなくなったこと、即ち、燃焼が、二次燃焼から一次燃焼に変化したことを確認した後、第3段階として、ブタンガス(C410)の吹込みを停止し、酸素のみを1000Nm3/hr吹き込んだ。
【0030】
このようにして、高炉炉底部の装入物及び残留物の加熱を効率良く行うことができた。
【産業上の利用可能性】
【0031】
前述したように、本発明によれば、高炉炉底部の装入物及び残留物の加熱を効率よく行い、高炉立ち上げに要する時間を短縮することができる。よって、本発明は、鉄鋼産業において利用可能性が高いものである。
【符号の説明】
【0032】
1 高炉
2 出銑口
3 羽口
4 吹込みランス
5 ガス採取管
図1
図2