特許第5835131号(P5835131)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5835131
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】浸漬ノズル
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/10 20060101AFI20151203BHJP
   B22D 41/58 20060101ALI20151203BHJP
   B22D 41/50 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   B22D11/10 330E
   B22D11/10 360B
   B22D41/58
   B22D41/50 520
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-151106(P2012-151106)
(22)【出願日】2012年7月5日
(65)【公開番号】特開2014-12292(P2014-12292A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2014年8月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】溝口 利明
(72)【発明者】
【氏名】末松 芳章
(72)【発明者】
【氏名】宮原 正年
(72)【発明者】
【氏名】三木 大輔
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04588112(US,A)
【文献】 特開昭58−151948(JP,A)
【文献】 特開平09−308950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00−11/22
B22D 41/50−41/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル本体に外壁と内壁に囲まれた不活性ガス滞留空間を形成し、該不活性ガス滞留空間からノズル内に向けて不活性ガスを吹出す不活性ガス吹出し内部貫通孔を有する浸漬ノズルであって、
該不活性ガス滞留空間は、浸漬ノズルの上端から30mm以上下方、かつ、連続鋳造時の鋳型内の湯面高さ位置から30mm以上上方に形成され、
該不活性ガス滞留空間に囲まれた内壁には、該不活性ガス滞留空間に向けて貫通させた口径1〜3mmφの不活性ガス吹出し内部貫通孔を複数備え、
該不活性ガス滞留空間を囲む外壁には、該不活性ガス滞留空間に向けて貫通させた口径3mmφ超の外部貫通孔を備え、
外部貫通孔の総断面積(SOUT)>不活性ガス吹出し内部貫通孔の総断面積(SIN
とし、
不活性ガス吹出し内部貫通孔のガス吹出し角度を、水平〜下向き45°としたことを特徴とする浸漬ノズル。
【請求項2】
外部貫通孔は、外壁に一個、
不活性ガス吹出し内部貫通孔は、内壁の高さ方向および円周方向に複数個、各々配置し、下記数1を満足することを特徴とする請求項1記載の浸漬ノズル。
【数1】
【請求項3】
不活性ガス滞留空間は、50mm以上の高さを有することを特徴とする請求項1または2記載の浸漬ノズル。
【請求項4】
該不活性ガス滞留空間と、該不活性ガス滞留空間を囲む外壁と内壁は、同心円状に配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の浸漬ノズル。
【請求項5】
該不活性ガス滞留空間の下部に更に、第2の不活性ガス滞留空間を形成し、
該第2の不活性ガス滞留空間は、上側の不活性ガス滞留空間の下端から20mm以上下方、かつ、連続鋳造時の鋳型内の湯面高さ位置から30mm以上上方に形成され、
該第2の不活性ガス滞留空間に囲まれた内壁は、第2の不活性ガス滞留空間における不活性ガスの圧力が所定値を超えると浸漬ノズル内に不活性ガスを吹き込む多孔質体からなり、
該第2の不活性ガス滞留空間を囲む外壁には、該不活性ガス滞留空間に向けて貫通させた口径3mmφ超の第2外部貫通孔を備える
ことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の浸漬ノズル。
【請求項6】
該不活性ガス滞留空間の下部に更に、第2の不活性ガス滞留空間を形成し、
該第2の不活性ガス滞留空間は、上側の不活性ガス滞留空間の下端から20mm以上下方、かつ、連続鋳造時の鋳内の湯面高さ位置から30mm以上上方に形成され、
該第2の不活性ガス滞留空間に囲まれた内壁には、該不活性ガス滞留空間に向けて貫通させた口径1〜3mmφの第2不活性ガス吹出し内部貫通孔を複数備え、
該第2の不活性ガス滞留空間を囲む外壁には、該不活性ガス滞留空間に向けて貫通させた口径3mmφ超の第2外部貫通孔を備え、
第2外部貫通孔の総断面積(SOUT)>第2不活性ガス吹出し内部貫通孔の総断面積(SIN
としたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の浸漬ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼の連続鋳造に用いる浸漬ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、各種実験に基づく知見から、鋳片の表面に発生するスリバー欠陥は、連続鋳造工程において浸漬ノズルから吹き込まれる気泡に溶鋼中のアルミナクラスターが捕捉されることに起因するものと推察している。
【0003】
当該推察によれば、浸漬ノズルから吹き込むアルゴン量を絞り込んで鋳片の表面の気泡数を減少させ、これによりアルミナクラスターの捕捉量を低減させることで、容易にスリバー欠陥を抑制することが可能と推測される。
【0004】
しかしながら、現在、鋼の連続鋳造では、いわゆるスライディングノズルと呼ばれ、接合部を有するタイプの外挿式浸漬ノズル(例えば、特許文献1)が主に使用されており、この外挿式浸漬ノズルを用いた検討結果は、上記推測とは合致せず、図7に示すように、アルゴンの吹込み量が所定値以下となると、再度、鋳片の表面の気泡数が増加に転じている。
【0005】
すなわち、現在の主流である「浸漬ノズル外挿式」を用いた鋼の連続鋳造において、浸漬ノズルから吹き込むアルゴン量の単純な絞り込みでは、鋳片の表面の気泡数を減少させてアルミナクラスターの捕捉量を低減してスリバー欠陥を抑制することができないという問題や、鋳片の表面のアルゴン気泡数が最小となる最適なアルゴンの吹込み量となるように常時確実に制御することは困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−58161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は前記問題を解決し、「外挿式浸漬ノズル」を用いた鋼の連続鋳造においても、アルゴンの吹込み量の複雑な制御によらず、またアルゴン吹込みが低量であってもスリバー欠陥を抑制することができる浸漬ノズルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の浸漬ノズルは、ノズル本体に外壁と内壁に囲まれた不活性ガス滞留空間を形成し、該不活性ガス滞留空間からノズル内に向けて不活性ガスを吹出す不活性ガス吹出し内部貫通孔を有する浸漬ノズルであって、該不活性ガス滞留空間は、浸漬ノズルの上端から30mm以上下方、かつ、連続鋳造時の鋳型内の湯面高さ位置から30mm以上上方に形成され、該不活性ガス滞留空間に囲まれた内壁には、該不活性ガス滞留空間に向けて貫通させた口径1〜3mmφの不活性ガス吹出し内部貫通孔を複数備え、該不活性ガス滞留空間を囲む外壁には、該不活性ガス滞留空間に向けて貫通させた口径3mmφ超の外部貫通孔を備え、外部貫通孔の総断面積(SOUT)>不活性ガス吹出し内部貫通孔の総断面積(SIN)とし、不活性ガス吹出し内部貫通孔のガス吹出し角度を、水平〜下向き45°としたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の浸漬ノズルにおいて、外部貫通孔は、外壁に一個、不活性ガス吹出し内部貫通孔は、内壁の高さ方向および円周方向に複数個、各々配置し、下記数1を満足することを特徴とする。
【数1】
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の浸漬ノズルにおいて、不活性ガス滞留空間は、50mm以上の高さを有することを特徴とするものである。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1または2記載の浸漬ノズルにおいて、該不活性ガス滞留空間と、該不活性ガス滞留空間を囲む外壁と内壁は、同心円状に配置されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の浸漬ノズルにおいて、該不活性ガス滞留空間の下部に更に、第2の不活性ガス滞留空間を形成し、該第2の不活性ガス滞留空間は、上側の不活性ガス滞留空間の下端から20mm以上下方、かつ、連続鋳造時の鋳型内の湯面高さ位置から30mm以上上方に形成され、該第2の不活性ガス滞留空間に囲まれた内壁は、第2の不活性ガス滞留空間における不活性ガスの圧力が所定値を超えると浸漬ノズル内に不活性ガスを吹き込む多孔質体からなり、該第2の不活性ガス滞留空間を囲む外壁には、該不活性ガス滞留空間に向けて貫通させた口径3mmφ超の第2外部貫通孔を備えることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の浸漬ノズルにおいて、該不活性ガス滞留空間の下部に更に、第2の不活性ガス滞留空間を形成し、該第2の不活性ガス滞留空間は、上側の不活性ガス滞留空間の下端から20mm以上下方、かつ、連続鋳造時の鋳内の湯面高さ位置から30mm以上上方に形成され、該第2の不活性ガス滞留空間に囲まれた内壁には、該不活性ガス滞留空間に向けて貫通させた口径1〜3mmφの第2不活性ガス吹出し内部貫通孔を複数備え、該第2の不活性ガス滞留空間を囲む外壁には、該不活性ガス滞留空間に向けて貫通させた口径3mmφ超の第2外部貫通孔を備え、第2外部貫通孔の総断面積(SOUT)>第2不活性ガス吹出し内部貫通孔の総断面積(SIN)としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明者らは、前記のように、外挿式浸漬ノズルを用いた検討結果は、図7に示すように、アルゴンの吹込み量が所定値以下となると、再度、鋳片の表面の気泡数が増加に転じる原因につき検討を行い、下記の推論に至った。
【0015】
推論:
鋼の連続鋳造工程において、浸漬ノズル内を溶鋼が通過していくと、これに伴い浸漬ノズル内のアルゴンガスが消費される。アルゴンガスの吹込み量を絞っていくと、アルゴンガスの吹込み量と比べて、アルゴンガスの消費量が過剰となって、浸漬ノズル内が負圧となる。内部が負圧となった浸漬ノズルでは、浸漬ノズルとタンディッシュ下ノズルとの嵌合部、および、スライディングノズルと下ノズル間との嵌合部でエアリークが発生し、溶鋼中に巻き込まれる気泡数が増加する。
【0016】
本発明は上記推論に基づきなされたものであり、ノズル本体に外壁と内壁に囲まれた不活性ガス滞留空間を形成し、該不活性ガス滞留空間からノズル内に向けて不活性ガスを吹出す不活性ガス吹出し内部貫通孔を有する浸漬ノズルにおいて、該不活性ガス滞留空間に囲まれた内壁には、該不活性ガス滞留空間に向けて貫通させた不活性ガス吹出し内部貫通孔を備え、該不活性ガス滞留空間を囲む外壁に外部貫通孔を備える構成により、ノズル内外の圧力を常時均一に維持可能としている。すなわち、当該構成によれば、浸漬ノズル内が負圧となる現象が回避できるため、従来、浸漬ノズル内が負圧となってエアリークが発生する結果、溶鋼中に巻き込まれる気泡数が増加していた現象を効果的に回避することができる。前記のように、スリバー欠陥は、溶鋼中のアルミナクラスターが溶鋼中の気泡に捕捉されることに起因するものと考えられるため、溶鋼中に巻き込まれる気泡数を抑制することにより、スリバー欠陥を抑制することができる。
【0017】
また、本発明では、不活性ガス滞留空間を、連続鋳造時の鋳型内の湯面高さ位置から30mm以上上方に形成しているため、不活性ガスは、溶鋼中に吹き込まれることなく、専ら、浸漬ノズル内の湯面の上部空間に吹き込まれ、浸漬ノズル内の圧力を確実に制御することができる。また、不活性ガス滞留空間を、浸漬ノズルの上端から30mm以上下方に形成することにより、必要な強度を確保することができる。
【0018】
さらに、不活性ガス吹出し内部貫通孔を複数設けることにより、浸漬ノズルの耐用期間中には、少なくとも何れかの不活性ガス吹出し内部貫通孔は溶鋼で閉塞されることなく残存し、前記の圧力調整機能を維持可能としている。また、不活性ガス吹出し内部貫通孔の口径を1〜3mmφに抑制することにより、不活性ガス吹出し内部貫通孔からの溶鋼流出を防止するとともに、外部貫通孔の総断面積(SOUT)>不活性ガス吹出し内部貫通孔の総断面積(SIN)とすることにより、外部貫通孔が流量ネックになることを回避可能としている。
【0019】
また、不活性ガス吹出し内部貫通孔のガス吹出し角度を、水平〜下向き45°とすることにより、溶鋼による不活性ガス吹出し内部貫通孔の閉塞を回避可能としている。
【0020】
請求項2記載の発明のように、不活性ガス吹出し内部貫通孔は、内壁の高さ方向および円周方向に複数個、各々配置することにより、いずれかの不活性ガス吹出し内部貫通孔が溶鋼で閉塞した場合であっても、残りの不活性ガス吹出し内部貫通孔によって、ノズル内圧を大気圧と同程度に制御する効果を維持することができる。
【0021】
請求項3記載の発明のように、不活性ガス滞留空間の高さを50mm以上確保することにより、不活性ガス吹出し内部貫通孔を複数備えた浸漬ノズルにおいても、ノズル本体の強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態1の浸漬ノズルを用いた連続鋳造用ノズルの垂直断面図である。
図2】実施形態1の浸漬ノズルの要部垂直断面図である。
図3】実施形態1の浸漬ノズルの要部水平断面図である。
図4】実施形態2の浸漬ノズルの要部垂直断面図である。
図5】実施形態3の浸漬ノズルの要部垂直断面図である。
図6】従来の浸漬ノズルを用いた連続鋳造用ノズルの垂直断面図である。
図7】浸漬ノズルから吹き込まれるアルゴン量と、鋳片の表面の気泡数との関係について検討を行った結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
【0024】
(実施形態1)
本実施形態の浸漬ノズル1は、図1に示すように、上部ノズル2、スライディングノズル3、下部ノズル4とともに、分割構造の連続鋳造用ノズル5を構成するものである。
【0025】
本実施形態の浸漬ノズル1は、図2図3に示すように、ノズル本体6に、外壁7と内壁8に囲まれた不活性ガス滞留空間9を形成している。不活性ガス滞留空間9は、連続鋳造時の鋳型内の溶鋼の湯面高さ位置(=溶鋼メニスカス)15から30mm以上上方に形成しているため、不活性ガスは、溶鋼中に吹き込まれることなく、専ら、浸漬ノズル内の湯面の上部空間に吹き込まれ、浸漬ノズル内の圧力を確実に制御することができる。
【0026】
不活性ガス滞留空間9に囲まれた内壁8には、該不活性ガス滞留空間9に向けて貫通させた口径1〜3mmφの不活性ガス吹出し内部貫通孔10を複数備えている。また、該不活性ガス滞留空間9を囲む外壁7には、該不活性ガス滞留空間に向けて貫通させた口径3mmφ超の外部貫通孔11を一つ備えている。この不活性ガス吹出し内部貫通孔により、不活性ガス吹き込み量が低量(例えば1〜5NL/min)の場合でも、溶鋼落下中の浸漬ノズルの内部圧力が負圧を回避するように制御することが可能となる。
【0027】
外部貫通孔11は不活性ガス供給手段(図示しない)に接続され、常時必要量の不活性ガスが不活性ガス滞留空間9に供給されている。本発明では、外部貫通孔11の総断面積(SOUT)>不活性ガス吹出し内部貫通孔10の総断面積(SIN)とすることにより、外部貫通孔11が流量ネックになることを回避可能としている。
【0028】
内壁8に不活性ガス吹出し内部貫通孔10を複数形成したことに起因してノズル本体の強度が低下する危険性を回避するために、不活性ガス滞留空間の高さは50mm以上確保することが好ましい。
【0029】
本発明では、不活性ガス吹出し内部貫通孔10と不活性ガス滞留空間9と外部貫通孔11を介して、浸漬ノズル1内の圧力を常時均一に維持可能としている。浸漬ノズル1内の圧力は溶鋼落下時の動圧により負圧に傾く傾向があるが、浸漬ノズル内圧制御用の不活性ガス吹出し内部貫通孔10と不活性ガス滞留空間9と外部貫通孔11を介して、浸漬ノズル1内の圧力を常時均一に維持することにより、浸漬ノズル内が負圧となってエアリークが発生する現象およびエアリークによって溶鋼中に巻き込まれる気泡数が増加する現象を回避可能としている。前記のように、スリバー欠陥は、溶鋼中のアルミナクラスターが溶鋼中の気泡に捕捉されることに起因するものと考えられるため、溶鋼中に巻き込まれる気泡数を抑制することにより、スリバー欠陥を抑制することができる。
【0030】
浸漬ノズル内圧制御用の不活性ガス吹出し内部貫通孔10は、浸漬ノズル内での溶鋼の落下に伴い閉塞することがあるが、本発明では、複数の不活性ガス吹出し内部貫通孔10を備えることにより、少なくとも同一の浸漬ノズルの使用期間内においては、何れかの不活性ガス吹出し内部貫通孔10が閉塞せず前記の圧力調整機能を維持できるように担保している。また、本発明では、不活性ガス吹出し内部貫通孔の口径を1〜3mmφに抑制することにより、不活性ガス吹出し内部貫通孔からの溶鋼流出を防止している。
【0031】
なお、浸漬ノズル内での溶鋼の落下に伴う不活性ガス吹出し内部貫通孔10の閉塞を防止する観点から、不活性ガス吹出し内部貫通孔のガス吹出し角度は、水平〜下向き45°とする。
【0032】
不活性ガス滞留空間9は、連続鋳造時の鋳型内の溶鋼の湯面高さ位置から30mm以上上方に形成されているため、不活性ガスは、溶鋼中に吹き込まれることなく、専ら、浸漬ノズル内の溶鋼湯面の上部空間に吹き込まれ、浸漬ノズル内の圧力を確実に制御することができる。
【0033】
また、不活性ガス滞留空間を、浸漬ノズルの上端から30mm以上下方に形成することにより、浸漬ノズルの取り付け時に必要な強度を確保することができる。
【0034】
(実施形態2および実施形態3)
図4および図5に示すように、上記実施形態1の不活性ガス滞留空間9の下部に更に、第2の不活性ガス滞留空間12を形成することもできる。
【0035】
第2の不活性ガス滞留空間12は、上側の不活性ガス滞留空間の下端から20mm以上下方、かつ、連続鋳造時の鋳型内の溶鋼の湯面高さ位置から30mm以上上方に形成されている。第2の不活性ガス滞留空間12を囲む外壁には、該不活性ガス滞留空間に向けて貫通させた口径3mmφ超の第2外部貫通孔13を備えている。
【0036】
図4に示す実施形態2では、第2の不活性ガス滞留空間12に囲まれた内壁8を多孔質体から形成し、第2の不活性ガス滞留空間12における不活性ガスの圧力が所定値を超えると浸漬ノズル内に不活性ガスを吹き込む構造を採用している。この多孔質体は、内壁までの貫通孔を有しない多孔質で良い。
【0037】
図5に示す実施形態3では、第2の不活性ガス滞留空間12に囲まれた内壁8に上記実施形態1の内壁と同様の構造、すなわち、不活性ガス滞留空間に向けて貫通させた口径1〜3mmφの第2不活性ガス吹出し内部貫通孔14を複数備え、第2外部貫通孔の総断面積(SOUT)>第2不活性ガス吹出し内部貫通孔の総断面積(SIN)を満足する構造を採用している。
【実施例】
【0038】
上記本発明の浸漬ノズルの使用による、スリバー欠陥の抑制効果を確認するために、下記条件で試験を行った結果を下記(表1)に示している。
(1)270トンの極低炭素鋼を転炉−RHで溶製し、タンディッシュ内溶鋼温度を1560〜1580℃とし、垂直曲げタイプの連続鋳造機を用いて、鋳造速度1.0〜2.5m/minで厚さ250mm、幅1000〜2000mmの鋳片を製造した。メニスカス下150mmまでを印加推力110mmFe/mの移動磁界で電磁攪拌しながら鋳造した。
(2)浸漬ノズルは内径90mmφ、外径170mmφで吐出孔径70mmφ、下向き45度の2孔ノズルを使用し、溶鋼中に400mm浸漬させた。浸漬ノズルは上記実施形態1〜3(図2図4または図5)、図6に示す従来品の何れかを使用した。不活性ガスとしてArを使用し、本発明品では浸漬ノズル内圧力に応じて、また従来品の流量制御方式では2〜5NL/minのArを浸漬ノズル内壁の多孔質体を通して供給した。図2に示す実施形態1では、不活性ガス吹出し内部貫通孔10および外部貫通孔11は不活性ガス導入孔として使用した。図4に示す実施形態2では、上部の不活性ガス吹出し内部貫通孔10および外部貫通孔11を浸漬ノズル内の内圧測定に用い、下部の第2外部貫通孔13および第2の不活性ガス滞留空間12の内壁8を不活性ガス導入孔として使用した。図5に示す実施形態3では、上部の不活性ガス吹出し内部貫通孔10および外部貫通孔11を浸漬ノズル内の内圧測定に用い、下部の第2外部貫通孔13および第2不活性ガス吹出し内部貫通孔14を不活性ガス導入孔として使用した。尚、表1のA7〜A12、B4〜B5、B7は、不活性ガス滞留空間が上と下で合計二つあるものであるが、前記空間の高さは上も下も同じで、表1の値とした。
(3)得られた鋳片を通常の方法で、熱間圧延、酸洗、冷延、焼鈍して自動車用鋼板(板厚0.7〜1.2mm)とし、スリバー発生状況を観察した。
【0039】
図6に示す従来品は、外壁7と内壁8に囲まれた不活性ガス滞留空間9を形成している点は、本発明と同様であるが、不活性ガス滞留空間9は、連続鋳造時の鋳型内の溶鋼の湯面高さ位置(=溶鋼メニスカス15)を挟んで上下に渡って形成されている点、および、
内壁8に不活性ガス吹出し内部貫通孔を有さない多孔質体から形成し、不活性ガス滞留空間9における不活性ガスの圧力が所定値を超えると浸漬ノズル内に不活性ガスを吹き込む構造を採用している点で相違している。
【0040】
【表1】
【0041】
上記表1において「*2」は、 溶鋼メニスカスから不活性ガス滞留空間下端までの距離を意味し、プラスがメニスカスより上方、マイナスがメニスカスより下方への距離を示している。「*3」は 浸漬ノズル上端から不活性ガス滞留空間上端までの距離を意味している。「*4」の形状等に関し、図4に示す実施形態2については、上部の不活性ガス吹出し内部貫通孔10および外部貫通孔11の形状等を意味している。「*5」において、0度は水平、マイナスがノズル内部に向かって下向き、プラスが上向きを意味している。「*6」は、 全長2000〜3000mにおける鋼帯コイル表裏面でのコイル片面あたりの平均スリバー発生個数である。
【0042】
(表1の考察)
比較例について:
B1は従来タイプの不活性ガス吹出し内部貫通孔を有さない多孔質体からなる内壁で囲まれた不活性ガス滞留空間を2次メニスカスを挟むように上下方に設け、Arガスを吹き込みながら鋳造した場合であり、Arガスを溶鋼中に直接吹き込んだため、アルミナクラスターを伴うAr気泡が鋳片表層に多く捕捉され鋼帯コイルのスリバー欠陥が多くなった。
B2、B3は従来タイプの不活性ガス吹出し内部貫通孔を有さない多孔質体からなる内壁で囲まれた不活性ガス滞留空間を本発明の実施形態1と同一の条件になるように、メニスカス上方に1段配置した場合であるが、内壁の多孔質体の流通抵抗が大きく、ノズル内が負圧となったため、ノズルの接合部からノズル内に空気が巻込まれ、ノズル閉塞が発生するとともに、鋼帯コイルのスリバー品位が悪化した。
B4、B5は、従来タイプの不活性ガス吹出し内部貫通孔を有さない多孔質体からなる不活性ガス滞留空間を本発明の実施形態2または3条件になるように、メニスカス上方に2段配置した場合であるが、この場合も不活性ガス吹出し内部貫通孔を有さない多孔質体の流通抵抗が大きく、内圧測定はできなかった。結果として、Arガス吹込みが不十分でノズル内が負圧となり、ノズルの接合部からノズル内に空気が巻込まれたため、ノズル閉塞が発生するとともに、鋼帯コイルのスリバー品位が悪化した。
B6は、本発明の実施形態1と同様の不活性ガス吹出し内部貫通孔、不活性ガス滞留空間、外部貫通孔を有しているが、内部圧力制御用の不活性ガス吹出し内部貫通孔の大きさを本発明の下限より小さい0.7mmφとした浸漬ノズルを使用した場合である。鋳造中に内部圧力制御用の不活性ガス吹出し内部貫通孔が閉塞し、ノズル内が負圧となったため、ノズルの接合部からノズル内に空気が巻込まれ、ノズル閉塞が発生するとともに、鋼帯コイルのスリバー品位が悪化した。
B7は、本発明の実施形態1と同様の不活性ガス吹出し内部貫通孔、不活性ガス滞留空間、外部貫通孔を有しているが、内部圧力制御用の不活性ガス吹出し内部貫通孔の大きさを本発明の上限より大きい3.5mmφとした浸漬ノズルを使用した場合であるが、鋳造中に内部圧力制御用の不活性ガス吹出し内部貫通孔から溶鋼が侵入し、内圧測定が不能になった。結果として、Arガス吹込みが不十分でノズル内が負圧となり、ノズルの接合部からノズル内に空気が巻込まれたため、ノズル閉塞が発生するとともに、鋼帯コイルのスリバー品位が悪化した。
B8は、本発明の実施形態1と同様の不活性ガス吹出し内部貫通孔、不活性ガス滞留空間、外部貫通孔を有しているが、内部圧力制御用の不活性ガス吹出し内部貫通孔をノズル内部方向へ上向きとした浸漬ノズルを使用した場合であるが、鋳造中に内部圧力制御用の不活性ガス吹出し内部貫通孔を溶鋼が閉塞し、浸漬ノズル内部へのArガス導入が遮断された。その結果、Arガス供給が不十分でノズル内が負圧となり、ノズル閉塞が発生するとともに、鋼帯コイルのスリバー品位が悪化した。
本発明の実施例について:
上記比較例と比較して、本発明の実施例A1〜A12によれば、浸漬ノズル内圧が負圧になることを十分に抑制でき、鋼帯コイルのスリバー品位が大きく改善されることが確認された。
【符号の説明】
【0043】
1 浸漬ノズル
2 上部ノズル
3 スライディングノズル
4 下部ノズル
5 連続鋳造用ノズル
6 ノズル本体
7 外壁
8 内壁
9 不活性ガス滞留空間
10 不活性ガス吹出し内部貫通孔
11 外部貫通孔
12 第2の不活性ガス滞留空間
13 第2外部貫通孔
14 第2不活性ガス吹出し内部貫通孔
15 溶鋼メニスカス
図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6