【実施例】
【0038】
上記本発明の浸漬ノズルの使用による、スリバー欠陥の抑制効果を確認するために、下記条件で試験を行った結果を下記(表1)に示している。
(1)270トンの極低炭素鋼を転炉−RHで溶製し、タンディッシュ内溶鋼温度を1560〜1580℃とし、垂直曲げタイプの連続鋳造機を用いて、鋳造速度1.0〜2.5m/minで厚さ250mm、幅1000〜2000mmの鋳片を製造した。メニスカス下150mmまでを印加推力110mmFe/mの移動磁界で電磁攪拌しながら鋳造した。
(2)浸漬ノズルは内径90mmφ、外径170mmφで吐出孔径70mmφ、下向き45度の2孔ノズルを使用し、溶鋼中に400mm浸漬させた。浸漬ノズルは上記実施形態1〜3(
図2、
図4または
図5)、
図6に示す従来品の何れかを使用した。不活性ガスとしてArを使用し、本発明品では浸漬ノズル内圧力に応じて、また従来品の流量制御方式では2〜5NL/minのArを浸漬ノズル内壁の多孔質体を通して供給した。
図2に示す実施形態1では、
不活性ガス吹出し内部貫通孔10および外部貫通孔11は不活性ガス導入孔として使用した。
図4に示す実施形態2では、上部の
不活性ガス吹出し内部貫通孔10および外部貫通孔11を浸漬ノズル内の内圧測定に用い、下部の第2外部貫通孔13および第2の不活性ガス滞留空間12の内壁8を不活性ガス導入孔として使用した。
図5に示す実施形態3では、上部の
不活性ガス吹出し内部貫通孔10および外部貫通孔11を浸漬ノズル内の内圧測定に用い、下部の第2外部貫通孔13および第2
不活性ガス吹出し内部貫通孔14を不活性ガス導入孔として使用した。尚、表1のA7〜A12、B4〜B5、B7は、不活性ガス滞留空間が上と下で合計二つあるものであるが、前記空間の高さは上も下も同じで、表1の値とした。
(3)得られた鋳片を通常の方法で、熱間圧延、酸洗、冷延、焼鈍して自動車用鋼板(板厚0.7〜1.2mm)とし、スリバー発生状況を観察した。
【0039】
図6に示す従来品は、外壁7と内壁8に囲まれた不活性ガス滞留空間9を形成している点は、本発明と同様であるが、不活性ガス滞留空間9は、連続鋳造時の鋳型内の溶鋼の湯面高さ位置(=溶鋼メニスカス15)を挟んで上下に渡って形成されている点、および、
内壁8に
不活性ガス吹出し内部貫通孔を有さない多孔質体から形成し、不活性ガス滞留空間9における不活性ガスの圧力が所定値を超えると浸漬ノズル内に不活性ガスを吹き込む構造を採用している点で相違している。
【0040】
【表1】
【0041】
上記表1において「*2」は、 溶鋼メニスカスから不活性ガス滞留空間下端までの距離を意味し、プラスがメニスカスより上方、マイナスがメニスカスより下方への距離を示している。「*3」は 浸漬ノズル上端から不活性ガス滞留空間上端までの距離を意味している。「*4」の形状等に関し、
図4に示す実施形態2については、上部の
不活性ガス吹出し内部貫通孔10および外部貫通孔11の形状等を意味している。「*5」において、0度は水平、マイナスがノズル内部に向かって下向き、プラスが上向きを意味している。「*6」は、 全長2000〜3000mにおける鋼帯コイル表裏面でのコイル片面あたりの平均スリバー発生個数である。
【0042】
(表1の考察)
比較例について:
B1は従来タイプの
不活性ガス吹出し内部貫通孔を有さない多孔質体からなる内壁で囲まれた不活性ガス滞留空間を2次メニスカスを挟むように上下方に設け、Arガスを吹き込みながら鋳造した場合であり、Arガスを溶鋼中に直接吹き込んだため、アルミナクラスターを伴うAr気泡が鋳片表層に多く捕捉され鋼帯コイルのスリバー欠陥が多くなった。
B2、B3は従来タイプの
不活性ガス吹出し内部貫通孔を有さない多孔質体からなる内壁で囲まれた不活性ガス滞留空間を本発明の実施形態1と同一の条件になるように、メニスカス上方に1段配置した場合であるが、内壁の多孔質体の流通抵抗が大きく、ノズル内が負圧となったため、ノズルの接合部からノズル内に空気が巻込まれ、ノズル閉塞が発生するとともに、鋼帯コイルのスリバー品位が悪化した。
B4、B5は、従来タイプの
不活性ガス吹出し内部貫通孔を有さない多孔質体からなる不活性ガス滞留空間を本発明の実施形態2または3条件になるように、メニスカス上方に2段配置した場合であるが、この場合も
不活性ガス吹出し内部貫通孔を有さない多孔質体の流通抵抗が大きく、内圧測定はできなかった。結果として、Arガス吹込みが不十分でノズル内が負圧となり、ノズルの接合部からノズル内に空気が巻込まれたため、ノズル閉塞が発生するとともに、鋼帯コイルのスリバー品位が悪化した。
B6は、本発明の実施形態1と同様の
不活性ガス吹出し内部貫通孔、不活性ガス滞留空間、外部貫通孔を有しているが、内部圧力制御用の
不活性ガス吹出し内部貫通孔の大きさを本発明の下限より小さい0.7mmφとした浸漬ノズルを使用した場合である。鋳造中に内部圧力制御用の
不活性ガス吹出し内部貫通孔が閉塞し、ノズル内が負圧となったため、ノズルの接合部からノズル内に空気が巻込まれ、ノズル閉塞が発生するとともに、鋼帯コイルのスリバー品位が悪化した。
B7は、本発明の実施形態1と同様の
不活性ガス吹出し内部貫通孔、不活性ガス滞留空間、外部貫通孔を有しているが、内部圧力制御用の
不活性ガス吹出し内部貫通孔の大きさを本発明の上限より大きい3.5mmφとした浸漬ノズルを使用した場合であるが、鋳造中に内部圧力制御用の
不活性ガス吹出し内部貫通孔から溶鋼が侵入し、内圧測定が不能になった。結果として、Arガス吹込みが不十分でノズル内が負圧となり、ノズルの接合部からノズル内に空気が巻込まれたため、ノズル閉塞が発生するとともに、鋼帯コイルのスリバー品位が悪化した。
B8は、本発明の実施形態1と同様の
不活性ガス吹出し内部貫通孔、不活性ガス滞留空間、外部貫通孔を有しているが、内部圧力制御用の
不活性ガス吹出し内部貫通孔をノズル内部方向へ上向きとした浸漬ノズルを使用した場合であるが、鋳造中に内部圧力制御用の
不活性ガス吹出し内部貫通孔を溶鋼が閉塞し、浸漬ノズル内部へのArガス導入が遮断された。その結果、Arガス供給が不十分でノズル内が負圧となり、ノズル閉塞が発生するとともに、鋼帯コイルのスリバー品位が悪化した。
本発明の実施例について:
上記比較例と比較して、本発明の実施例A1〜A12によれば、浸漬ノズル内圧が負圧になることを十分に抑制でき、鋼帯コイルのスリバー品位が大きく改善されることが確認された。