特許第5835141号(P5835141)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5835141二次電池用負極活物質、その製造方法、二次電池用負極、二次電池、及びSi−酸化物固体電解質複合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5835141
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】二次電池用負極活物質、その製造方法、二次電池用負極、二次電池、及びSi−酸化物固体電解質複合体
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20151203BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   H01M4/38 Z
   H01M4/36 B
【請求項の数】4
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2012-162840(P2012-162840)
(22)【出願日】2012年7月23日
(65)【公開番号】特開2014-22319(P2014-22319A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2014年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 渚
【審査官】 瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−119263(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/114168(WO,A1)
【文献】 特開2003−059492(JP,A)
【文献】 特開2007−087940(JP,A)
【文献】 特開2013−069415(JP,A)
【文献】 特開2013−073818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si粉末と、酸化物固体電解質と、に機械的エネルギーを加え、
該Si粉末を、CuKα線を用いたX線粉末回折(XRD)測定により測定された結晶子サイズが100nm以下となるまで粉砕し、かつ粉砕されたSi粉末と該酸化物固体電解質とを複合化する複合化工程を有する二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項2】
前記複合化工程において、該酸化物固体電解質は、非晶質または低結晶性となるまで粉砕される請求項に記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項3】
前記複合化工程は密閉空間内で行われる請求項またはに記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項4】
前記Si粉末は、平均粒径が1μm以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用負極活物質、その製造方法、二次電池用負極、二次電池、及びSi−酸化物固体電解質複合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二次電池は繰り返し充放電が出来る電池のことで、鉛蓄電池、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素蓄電池、ニッケルカドミウム蓄電池、ナトリウム硫黄電池、レドックスフロー電池などが知られている。
【0003】
これらの二次電池は正極及び負極を有し、電極をつなぐ電解質を有する。電解質には水系電解質、非水系電解質、溶融塩電解質、固体電解質(たとえば高分子固体電解質、βアルミナ固体電解質)、イオン液体電解質などが用いられる。近年二次電池としてリチウムイオン二次電池がよく知られている。リチウムイオン二次電池は非水電解質を用いる非水電解質リチウムイオン二次電池、水系電解質を用いる水系リチウムイオン二次電池、固体電解質を用いる全固体系リチウムイオン二次電池等があり、これらのリチウムイオン二次電池は、充放電容量が高く、高出力化が可能な二次電池である。リチウムイオン二次電池は、主として携帯電子機器用の電源として用いられており、更に、今後普及が予想される電気自動車用の電源として期待されている。
【0004】
上記リチウムイオン二次電池は、Liイオンを吸蔵および放出することが出来る活物質を正極及び負極にそれぞれ有する。そしてこれらリチウムイオン二次電池は、両極間に設けられた電解質内をリチウムイオンが移動することによって動作する。
【0005】
上記リチウムイオン二次電池では、正極の活物質として主にリチウムコバルト複合酸化物等のリチウム含有金属複合酸化物が用いられ、負極の活物質としては炭素材料が主に用いられている。正、負極の極板は、これらの活物質とバインダー樹脂と導電助剤とを溶媒に分散させてスラリーとしたものを集電体である金属箔上に塗布し、溶媒を乾燥除去して合剤層を形成後、これをロールプレス機で圧縮成形して作製されている。
【0006】
近年リチウムイオン二次電池の負極活物質として、炭素材料の理論容量を大きく超える充放電容量を持つ材料の開発が進められている。例えば炭素材料よりも高容量な珪素、珪素合金、珪素酸化物などの珪素系材料が検討されている。
【0007】
珪素系材料は、リチウムと合金化することで、1000mAh/g以上の高容量をもつ。しかし、珪素系材料を負極活物質として用いると、充放電サイクルにおいてリチウム(Li)の吸蔵および放出に伴って、負極活物質が膨張および収縮することが知られている。負極活物質が膨張あるいは収縮することで、負極活物質を集電体に保持する役割を果たす結着剤に負荷がかかり、負極活物質と集電体との密着性が低下する、電極内の導電パスが破壊されて容量が著しく低下する、あるいは膨張と収縮の繰り返しにより負極活物質に歪が生じて微細化して電極から脱離する。従って、珪素系材料を負極活物質として用いることには、負極活物質の膨張、収縮により、電池の充放電効率が本来有するはずのものより下がり、電池の容量が本来有するはずのものより下がり、電池のサイクル特性が本来有するはずのものより劣化するという問題点がある。
【0008】
この問題点を解決するために、Siをナノ粒子化する検討が行われている。例えば引用文献1には、SiO中にSiが分散した粒子を含む非水電解質二次電池用負極が開示されている。SiOと表記される負極材料は、X線回折による分析では数nm〜数十nm程度のナノシリコンが酸化珪素中に微分散している構造をとっていることが記載されている。
【0009】
しかし、SiOにおいて、マトリックスの成分であるSiO及びSiOがLiを吸蔵した状態であるLiSiOと表記される物質は、Liイオン伝導度が低い。そのため、SiOの本来持っている容量が発揮されない。そこで、Siを用いた十分な電池容量と良好なサイクル特性を有する負極活物質が求められている。
【0010】
また一般的にナノ材料は、条件の管理をしっかりしないと粒子成長が進んでしまうなど合成するのが難しい。またナノ材料は、取り扱い時に発火や爆発のおそれがあり、人体の呼吸器系に有害であるおそれがある。またナノ材料は静電気によって、空中に舞ういわゆる粉立ちがおこる、容器などに付着する、など取り扱いが難しい。そのため、ナノ材料の合成工程には、集塵、防護、雰囲気制御などの安全上の設備が必要である。このようなことからナノ材料を合成するのは高価な費用がかかる。そこで、ナノ材料を含む複合体を簡便に製造でき、なおかつ安全に安価に製造する方法も合わせて求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011−60676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、Siを負極活物質に用い、十分な容量と良好なサイクル特性を有することが出来る二次電池用負極活物質、その製造方法、二次電池用負極、二次電池、及びSi−酸化物固体電解質複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等が鋭意検討した結果、酸化物固体電解質からなるマトリックスと、マトリックス中に分散された、CuKα線を用いたX線粉末回折(XRD)測定により測定された結晶子サイズが100nm以下であるSi粒子と、を含むSi−酸化物固体電解質複合体からなる負極活物質を用いることにより、二次電池の出力特性を向上させうることを見いだした。
【0014】
すなわち、本発明の二次電池用負極活物質は、酸化物固体電解質からなるマトリックスと、マトリックス中に分散された、CuKα線を用いたX線粉末回折(XRD)測定により測定された結晶子サイズが100nm以下であるSi粒子と、を含むSi−酸化物固体電解質複合体からなることを特徴とする。
【0015】
結晶子サイズは65nm以下であることが好ましい。
【0016】
酸化物固体電解質は非晶質または低結晶性であることが好ましい。
【0017】
Si−酸化物固体電解質複合体を100質量%としたときに、Si粒子の含有率は5質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
【0018】
Si−酸化物固体電解質複合体は、Si粉末及び酸化物固体電解質に機械的エネルギーを加えて、粉砕し、複合化して作製されたものであることが好ましい。
【0019】
またSi粉末は平均粒径が1μm以上であることが好ましい。
【0020】
本発明の二次電池用負極は、上記二次電池用負極活物質を含む。
【0021】
本発明の二次電池は上記二次電池用負極を含む。
【0022】
本発明の二次電池用負極活物質の製造方法は、Si粉末と、酸化物固体電解質と、に機械的エネルギーを加え、Si粉末を、CuKα線を用いたX線粉末回折(XRD)測定により測定された結晶子サイズが100nm以下となるまで粉砕し、かつ粉砕されたSi粉末と酸化物固体電解質とを複合化する複合化工程を有する。
【0023】
複合化工程において、酸化物固体電解質は、非晶質または低結晶性となるまで粉砕されることが好ましい。
【0024】
複合化工程は密閉空間内で行われることが好ましい。
【0025】
Si粉末は、平均粒径が1μm以上であることが好ましい。
【0026】
本発明のSi−酸化物固体電解質複合体は、酸化物固体電解質からなるマトリックスと、マトリックス中に分散された、CuKα線を用いたX線粉末回折(XRD)測定により測定された結晶子サイズが100nm以下であるSi粒子と、を含む。
【発明の効果】
【0027】
本発明の二次電池用負極活物質は、酸化物固体電解質をマトリックスとし、マトリックス中にCuKα線を用いたX線粉末回折(XRD)測定により測定された結晶子サイズが100nm以下であるSi粒子を分散させたSi−酸化物固体電解質複合体からなることにより、二次電池の出力特性を向上出来る。
【0028】
本発明の二次電池は上記二次電池用負極活物質を有する二次電池用負極を有するので、十分な容量と良好なサイクル特性を有する電池とすることが出来る。
【0029】
本発明の二次電池用負極活物質の製造方法によれば、容易にSi−酸化物固体電解質複合体を作製することが出来る。またSi粉末の平均粒径が1μm以上のものを用いれば、Siのナノ化と複合化処理を同時に行うことが出来る。またナノ粒子を取り扱うための特別な設備が不要になり、設備コストも優れる。
【0030】
本発明のSi−酸化物固体電解質複合体は、二次電池用負極活物質として用いると、二次電池の出力特性を向上出来る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】粒径と結晶子を説明する説明図である。
図2】本実施形態の二次電池用負極活物質を説明する模式断面図である。
図3】実施例1及び実施例2のSi−酸化物固体電解質複合体の粉末X線回折結果である。
図4】実施例1のSi−酸化物固体電解質複合体の断面のSEM写真である。
図5】実施例1のSi−酸化物固体電解質複合体の表面のSEM写真と実施例3のSi−酸化物固体電解質複合体の表面のSEM写真を比較したものである。
図6】実施例2のSi−酸化物固体電解質複合体の表面のSEM写真と実施例4のSi−酸化物固体電解質複合体の表面のSEM写真を比較したものである。
図7】実施例1〜4のモデル電池及び比較例1のモデル電池のサイクルごとの容量維持率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<二次電池用負極活物質>
本発明の二次電池用負極活物質は、酸化物固体電解質からなるマトリックスと、マトリックスに分散されるSi粒子と、を含むSi−酸化物固体電解質複合体からなる。
【0033】
一般に、電解質とは、イオンが移動する物質のことである。よく知られている電解質として、塩化ナトリウム(NaCl)があげられるが、塩化ナトリウムは溶液になって初めてイオンが移動するものである。固体状態のままでイオンが移動する物質が一般的に「固体電解質」と呼ばれている。つまり固体電解質とは、外部から加えられた電場によって固体状態のままイオン(帯電した物質)を移動させることができる電解質である。固体電解質は、一般的に室温付近で例えばLiイオン伝導度が1.0×10−6S/cm以上であるものを指す。固体電解質には一般的に酸化物からなるもの、有機物ポリマーからなるもの及び硫化物からなるものがあるが、有機物ポリマー固体電解質及び硫化物固体電解質のヤング率が1GPaより小さいのに対し、酸化物固体電解質のヤング率は50GPa〜400GPaである。
【0034】
本発明の二次電池用負極活物質は、Si−酸化物固体電解質複合体からなる。Si−酸化物固体電解質複合体は、マトリックス中にSi粒子が分散されている複合体となっている。Si−酸化物固体電解質複合体は、マトリックスとSi粒子の他に、たとえば導電助剤や他のSi合金粒子のような添加物を含んでもよい。
【0035】
マトリックスは酸化物固体電解質からなる。本発明におけるマトリックスはイオン伝導体であるため、イオンがマトリックス内を通る際に、マトリックスがイオンの伝導を妨げることはない。またマトリックスは充放電時にイオンを吸蔵することはないため、例えばLiをマトリックスが吸蔵することによるLiの不可逆容量は発生しない。また本発明におけるマトリックスはヤング率が大きいため、マトリックスに分散されるSi粒子のLiの吸蔵、放出に伴う膨張、収縮を効果的に抑制することが出来る。
【0036】
酸化物固体電解質は非晶質または低結晶性であることが好ましい。非晶質とは、構成原子の配列に結晶構造のような長距離規則性を持たない固体状態のことを指す。低結晶性とは非晶質と結晶の中間に位置するような存在で、異なる方位を有する単結晶の粒「結晶粒」からなり、結晶構造の規則性が比較的短距離(たとえば100nm未満)になっている状態を指す。低結晶性であることは、X線回折結果のピークが低くなる、あるいは幅広化することによってわかる。ここで、ピークが低くなる、あるいは幅広化するとは、たとえば、シェラーの式D=(Kλ)/(βcosθ)、(λ:測定X線波長(Å)、β:半価幅(rad)、θ:回折線のブラッグ角度、K:原子形状因子(ここでは0.9とする))において、Dが1000Å(100nm)以下であるような場合である。
【0037】
酸化物固体電解質が非晶質または低結晶性であると、酸化物固体電解質の粒界の成長が抑制される。それによって固体電解質材料の主な抵抗の原因である粒界での界面抵抗が低減されるため、非晶質または低結晶性である酸化物固体電解質はイオン伝導性が高い。
【0038】
酸化物固体電解質として、Liイオン伝導性の酸化物固体電解質が好ましい。Liイオン伝導性の酸化物固体電解質として、例えばLiO−SiO−P系多成分ガラス、Li4−xSi1−x(0≦x≦1)、LiLa2−x/3TiO(x=0.1〜0.5)、Li7+xLaZr12+(x/2)(−5≦x≦3,好ましくは−2≦x≦2)、Li1+x+y(Al,Ga)(Ti,Ge,Zr)2−xSi3−y12(0≦x≦1、0≦y≦1)、LiO−5Al、LiO−11Al、LiLa(Nb,Ta)12、Li14ZnGe16、LiSiAlOがLi1.5Al0.5Ge1.5(POが挙げられる。酸化物固体電解質の組成は上記に限定されるものでなく、例えばLiイオン伝導性を損なわない範囲で上記組成の一部または全てを他の成分で置換した酸化物固体電解質であってもよい。
【0039】
特に、LiLa2−x/3TiO(x=0.1〜0.5)、Li7+xLaZr12+(x/2)(−5≦x≦3,好ましくは−2≦x≦2)、Li1+x+y(Al,Ga)(Ti,Ge,Zr)2−xSi3−y12(0≦x≦1、0≦y≦1)、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO(LAGP)はLiイオン伝導度が高いので好ましい。特にLi7+xLaZr12+(x/2)(−5≦x≦3,好ましくは−2≦x≦2)は電気化学的耐久性が高く、好ましい。
【0040】
リチウムイオン伝導性の酸化物固体電解質は、その室温でのLiイオン伝導度が1.0×10−4S/cm以上であるものを用いることが好ましい。イオン伝導性が高いほど、SiとLiの合金化反応を均等かつ効率的に進めることができるため、Si粒子の持つ容量を効率的に引き出すことが出来る。
【0041】
Si粒子は、CuKα線を用いたX線粉末回折(XRD)測定により測定された結晶子サイズが100nm以下である。CuKα線を用いたX線粉末回折(XRD)測定により測定された結晶子サイズとは、個々の結晶子の大きさの平均を示す。
【0042】
図1に粒径と結晶子を説明する説明図を示す。結晶子は結晶を作っている最少微結晶単位である。図1に見られるように、単結晶粒子の場合は、粒径と結晶子サイズは同じであるが、多結晶粒子の場合は、多結晶粒子が粒子より小さい結晶の集合体なので、結晶子サイズと粒径は異なる。複合体中では個々の結晶が多結晶になっているところも単結晶になっているところもあると考えられる。
【0043】
本発明において、結晶子サイズはCuKα線を用いたX線粉末回折(XRD)測定により測定されたものを用いる。CuKα線を用いたX線粉末回折(XRD)測定により測定された結晶子サイズとは、個々の結晶子の大きさの平均となる。
【0044】
X線粉末回折(XRD)測定により得られたSiのXRDピークの半値幅から結晶子サイズを求める。半値幅はピーク強度の高さの半分の高さにあたる箇所の幅である。半値幅が広くなると結晶子サイズが小さくなる。
【0045】
図2に本実施形態の二次電池用負極活物質の模式断面図を示す。図2に示すように、Si粒子1は酸化物固体電解質からなるマトリックス2に分散している。また図2に示すように、Si粒子1の粒径の範囲は大きい。本実施形態では、Si粒子は、CuKα線を用いたX線粉末回折(XRD)測定により測定された結晶子サイズが100nm以下であることが規定されており、そのため個々のSi粒子の粒径はまちまちである。
【0046】
Si粒子の結晶子サイズは、100nm以下である。結晶子サイズは65nm以下であることが好ましく、53nm以下であることがより好ましく、1nm以上40nm以下であることがさらに好ましい。SiはLiの吸蔵、放出により体積が膨張、収縮する。そのため結晶子サイズをナノサイズとすることにより、Siの膨張、収縮もナノサイズでおこるので、Si粒子の膨張、収縮をマトリックスで容易に抑制することが出来る。マトリックスによるSi粒子の膨張、収縮の抑制効果が高いので、Si粒子の結晶子サイズは小さい方がより好ましい。
【0047】
またSi粒子はマトリックスに分散している。ここで、マトリックスにSi粒子が分散しているとは、Si粒子の外表面の少なくとも一部がマトリックスに接触していることをいう。Si粒子の外表面の全部がマトリックスに接触していることが望ましい。Si粒子の外表面の一部が、隣接する他のSi粒子の外表面の一部と接触していてもよい。
【0048】
Si粒子同士が非接触状態にあれば、Si粒子の周囲にあるマトリックスがSi粒子の個々の膨張、収縮を抑制するため、Si粒子同士が接触して塊状態になっている場合と比較して、負極活物質全体での膨張、収縮を抑制することが出来る。
【0049】
Si−酸化物固体電解質複合体を100質量%としたとき、Si粒子の含有率は、5質量%以上95質量%以下であることが好ましい。Si粒子の含有率が5質量%より少ないと所望の電池容量を得ることが出来ず、95質量%より多いと、Si粒子の膨張、収縮を酸化物固体電解質で効率的に抑制することが出来ない。Si−酸化物固体電解質複合体を100質量%としたときにSi粒子の含有率は、20質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
【0050】
Si−酸化物固体電解質複合体は、そのメディアン径が200nm以上20μm以下であることが好ましい。Si−酸化物固体電解質複合体は、そのメディアン径が2μm以上10μm以下であることがより好ましい。Si−酸化物固体電解質複合体のメディアン径が200nmより小さいとハンドリング性が悪く扱いにくい。Si−酸化物固体電解質複合体のメディアン径が20μmより大きいと、電極作成時に集電体に塗布しづらい。メディアン径とは粉末粒子の50%径のことであるが、例えばレーザー回折法(Microtruc3300MTII)で、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.2質量%水溶液を分散媒として、メディアン径を測定することができる。
【0051】
Si−酸化物固体電解質複合体の合成方法は特に限定されるものではないが、Si粉末及び酸化物固体電解質に機械的エネルギーを加えて、粉砕し、複合化して作製されたものであることが好ましい。
【0052】
このように作製されたSi−酸化物固体電解質複合体は、比表面積を小さくして作製できる。比表面積が小さいと、活物質表面に形成されるSEI(Solid Electrolyte Interface)と呼ばれる表面皮膜の量を低減できる。SEIは抵抗となるため、SEIは少ないほうが望ましい。
【0053】
またSi粉末は平均粒径が1μm以上であることが好ましい。このときに用いる平均粒径はメディアン径50%を指す。ミクロンサイズのSiを原料とし、ナノ化と複合化処理を同時に行うことで、容易にSiをナノ状態にしてSi−酸化物固体電解質複合体を作製することが出来る。
【0054】
<二次電池用負極活物質の製造方法>
上記した二次電池用負極活物質は以下の製造方法で好適に製造できる。
【0055】
本発明の二次電池用負極活物質の製造方法は、Si粉末と、酸化物固体電解質と、に機械的エネルギーを加え、Si粉末を、CuKα線を用いたX線粉末回折(XRD)測定により測定された結晶子サイズが100nm以下となるまで粉砕し、かつ粉砕されたSi粉末と酸化物固体電解質とを複合化する複合化工程を有する。
【0056】
複合化工程において、Si粉末と酸化物固体電解質とは同時に粉砕され、Si粉末はSi粒子となり、かつ粉砕過程で加えられる機械的エネルギーを利用してSi粒子と酸化物固体電解質が複合化され、Si−酸化物固体電解質複合体が合成される。このような複合化方法はメカノケミカル法またはメカニカルミリングと称される。
【0057】
Si粉末は、平均粒径が1nm以上100μm以下である粉末を用いることが出来る。Si粉末は、市販品を用いることが出来る。Si粉末が1μm以上の粉末であれば秤量などの作業中に飛散しにくく、ハンドリングおよび安全衛生の点で好ましい。一方、1μm未満の粉末であれば、均一な複合体が得られやすく、サイクル特性向上の点から好ましい。
また、100μmを超える粉末は乳鉢及び乳棒や各種ミリング装置などで、100μm以下に予備粉砕して用いることができる。
【0058】
酸化物固体電解質は、固相法、共沈法、水熱法、ゾルゲル法、ガラス結晶化法などの方法で準備する。酸化物固体電解質は、市販品を用いることも出来る。市販品としてLATP系酸化物固体電解質シート(オハラ社製、組成式Li1+x+y(Al,Ga)(Ti,Ge)2−xSi3−y12(ただし、0≦x≦1、0≦y≦1))、Li1.3Al0.35Ti1.7(PO(LATP、豊島製作所製)、アルミニウム置換リン酸ゲルマニウムリチウム(Li1.5Al0.5Ge1.5(PO(LAGP、豊島製作所製))、Li0.33La0.55TiO(LLT、豊島製作所製)、LiLaZr12(LLZ、豊島製作所製)、LiLaTa12(豊島製作所製)、LiPO(和光純薬製、関東化学製、高純度化学製、アルドリッチ製などの試薬)が使用できる。
【0059】
準備した酸化物固体電解質を乳鉢やボールミル、ビーズミルなどで予備的に粉砕してもいい。
【0060】
また酸化物固体電解質原料をそのままメカノケミカル法に使用してもよい。酸化物固体電解質原料は特に限定されず、たとえば酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、燐酸塩、複合酸化物、金属アルコキシドなどを使用することができる。
【0061】
複合化は、乳鉢及び乳棒を用いて行ってもよいし、ボールミリング装置などの粉砕混合装置を用いて行ってもよい。
【0062】
乳鉢及び乳棒を用いる場合はメカノケミカル反応が小さいため、10時間以上混合粉砕することでSi−酸化物固体電解質複合体が合成される。合成には手混合の他、自動乳鉢やスタンプミルなどを用いることができる。乳鉢及び乳棒はムライト製、アルミナ製、ジルコニア製、メノウ製、ガラス製、磁製、鉄製、ステンレス製などを用いることができる。また、乳鉢の内側にスリット(例えば幅0.1mm、深さ0.2mm)などの凹凸を設けることでメカノケミカル効果を高めることができる。
【0063】
粉砕混合装置は例えば遊星ボールミル装置およびメカノフュージョンシステムなどが使用できる。
【0064】
ボールミリング装置として例えば遊星ボールミル装置が使用できる。ボールミリング装置を用いれば、ナノ化及び複合化処理を密閉した容器内で行うことが出来る。そのため、ナノサイズのSi粒子を直接取り扱う必要がなく、危険性が少ない。またナノサイズのSi粒子を取り扱うための設備が不要であるため、設備コストが安くできる。
【0065】
ボールミル装置の粉砕容器内の雰囲気は大気や乾燥空気の他、窒素、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガスを封入してもいい。
【0066】
遊星ボールミル装置の粉砕容器の1/10〜1/2体積量の酸化物固体電解質または酸化物固体電解質原料およびSi粉末を、粉砕容器の1/5〜2/3体積量の粉砕用ボールとともに粉砕容器内へ投入する。次いで、以下の粉砕条件で粉砕することで、Si−酸化物固体電解質複合体の合成を行うことが出来る。
【0067】
粉砕条件は300rpm〜2000rpmが好ましく、450rpm〜1100rpmがより好ましい。一般的な無機材料の合成で行われている粉砕条件(たとえば60rpm)よりも高速粉砕することで、材料に機械的エネルギーを加え、Si粒子と酸化物固体電解質を複合化させることができる。粉砕が低速だとメカノケミカル反応が生じにくく、2000rpmを超えると粉砕時の発熱が大きくなりすぎ、メカノケミカル反応の制御が困難となる。粉砕時間は10分〜72時間が好ましく、15分〜24時間が特に好ましい。粉砕時の発熱が大きすぎる場合は、粉砕時間を区切り、冷却時間を設けてもよい。
【0068】
粉砕容器の制限はなく、ジルコニア製、アルミナ製、ステンレス製、メノウ製、ガラス製、樹脂製などのポットを用いることができるが、メカノケミカル法では粉砕エネルギーが高いため、粉砕容器はジルコニア製、アルミナ製、ステンレス製のポットが特に好ましい。
【0069】
粉砕用ボールの制限はなく、ジルコニア製、アルミナ製、ステンレス製、メノウ製、ガラス製、樹脂製などのボールを用いることができるが、メカノケミカル法では粉砕エネルギーが高いため、粉砕用ボールはジルコニア製、アルミナ製、ステンレス製のボールが特に好ましい。粉砕用ボールの大きさは、たとえば直径0.1mm〜20mmであるが、粉砕用ボールの大きさは、所望の複合体サイズによって自由に選択することができる。
【0070】
乳鉢及び乳棒を用いる場合、粉砕混合装置を用いる場合のいずれの場合でも、複合化は乾式でも湿式でも行うことができるが、メカノケミカル反応が強い乾式で行うことが望ましい。複合化合成時の発熱が大きい場合には湿式を用いてもよく、湿式の場合、酸化物固体電解質または酸化物固体電解質原料の溶解度が低い溶媒を用いることができる。溶媒として、例えば水やエタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ヘキサンなどを用いることができる。
【0071】
複合化工程において、酸化物固体電解質は、非晶質または低結晶性となるまで粉砕されることが好ましい。酸化物固体電解質を非晶質または低結晶性とするためには、乳鉢の場合、10時間以上より好ましくは24時間以上粉砕混合すればよい。粉砕混合装置の場合、粉砕速度を大きくすることでメカノケミカル反応が進行しやすくなるため、遊星ボールミルの場合には回転数を大きくすればよい。
【0072】
複合化工程は密閉空間内で行われることが好ましい。密閉空間内で行われることによって原料粉末が大気中に飛び散ることを防止できる。例えば粉砕混合装置の密閉容器内で複合化工程を行えばよい。
【0073】
複合化工程の後、熱処理を加えることができる。熱処理により、酸化物固体電解質からなるマトリックスの骨格構造が強固になるともに、Si粒子と酸化物固体電解質の結合が強固になる。そのため、Si−酸化物固体電解質複合体の強度が高まる。しかしながら、熱処理を行うとSi粒子の結晶子サイズが大きくなってしまう。Si粒子の結晶子サイズが大きくなるとSiの膨張及び収縮をマトリックスが抑制できなくなり、二次電池のサイクル特性が劣化する。
【0074】
熱処理するならば、得られた複合体に100℃〜800℃で熱処理を行う。熱処理することによって、余分な有機物が分解蒸発する。熱処理によって酸化物固体電解質からなるマトリックスの骨格構造が強固になるともに、Si粒子と酸化物固体電解質の結合が強固になる。そのため、Si−酸化物固体電解質複合体の強度が高まり、Si−酸化物固体電解質複合体を用いた負極活物質は、二次電池の充放電のサイクル特性を向上させる。また、Si−酸化物固体電解質複合体の高密度化が進み、Si−酸化物固体電解質複合体を用いた負極活物質は、単位体積あたりの容量が増加する。
【0075】
800℃より高い温度で熱処理を行うと、Si粒子と酸化物固体電解質マトリックスが反応してしまい二次電池の初回容量が低下する問題やSi粒子がナノサイズ以上に成長して二次電池のサイクル特性が低下する問題が生じてしまうので好ましくない。熱処理工程において100℃より低い温度で熱処理を行うと、余分な水分や有機物が除去される効果が少なく、Si粒子表面を酸化させ容量が低下する影響が大きくなるため好ましくない。
【0076】
熱処理時の雰囲気は大気または不活性ガスとすることができ、必要により加圧または減圧下とすることができる。不活性雰囲気はSi粒子の酸化を防ぐことができるので好ましい。
【0077】
特に酸化物固体電解質原料のままメカノケミカル法を行った場合は熱処理を行ったほうがいい。
【0078】
<二次電池用負極>
本発明の二次電池用負極は上記二次電池用負極活物質を含むことを特徴とする。上記二次電池用負極活物質を有する負極とすれば、二次電池は、十分な容量と良好なサイクル特性を有する。
【0079】
負極は、上記負極活物質が結着剤で結着されてなる負極活物質層が集電体に付着してなる。
【0080】
集電体は、二次電池の放電又は充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子高伝導体をいう。集電体に用いられる材料として、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、アルミニウム、銅などの金属材料または導電性樹脂を挙げることが出来る。また集電体は、箔、シート、フィルムなどの形態をとることが出来る。そのため、集電体として、例えば銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることが出来る。
【0081】
集電体は、その膜厚が5μm〜200μmであることが好ましい。
【0082】
上記負極活物質層はさらに導電助剤を含んでもよい。負極は、負極活物質および結着剤、必要に応じて導電助剤を含む負極活物質層形成用組成物を調製し、さらに上記組成物に適当な溶媒を加えてペースト状にしてから、集電体の表面に塗布後、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成することができる。
【0083】
負極活物質層形成用組成物の塗布方法としては、ロールコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いればよい。
【0084】
粘度調整のための溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、メタノール、メチルイソブチルケトン(MIBK)などが使用可能である。
【0085】
結着剤は、負極活物質及び導電助剤を集電体に繋ぎ止める役割を果たすもので、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)などを用いることができる。
【0086】
導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。導電助剤として、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber:VGCF)等を単独でまたは二種以上組み合わせて添加することが出来る。導電助剤の使用量については、特に限定的ではないが、例えば、負極に含有される活物質100質量部に対して、1質量部〜95質量部程度とすることができる。
【0087】
<二次電池>
本発明の二次電池は、電池構成要素として、上記した二次電池用負極に加えて、正極、及び電解質を用いる。必要に応じてセパレータを用いてもよい。
【0088】
正極は、集電体と、集電体の表面に結着させた正極活物質層を有する。正極活物質層は、正極活物質、結着剤を含み、必要に応じて導電助剤を含む。集電体、結着剤、導電助剤は負極で説明したものと同様である。
【0089】
正極活物質としては、リチウム含有化合物が適当である。例えばリチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物、リチウム鉄リン酸複合酸化物などのリチウム含有金属複合酸化物などを用いることが出来る。また正極活物質として他の金属化合物あるいは高分子材料を用いることも出来る。他の金属化合物としては、例えば酸化チタン、酸化バナジウムあるいは二酸化マンガンなどの酸化物、または硫化チタンあるいは硫化モリブデンなどの硫化物が挙げられる。高分子材料としては例えばポリアニリンあるいはポリチオフェンなどの導電性高分子が挙げられる。リチウムを含有しない金属化合物または高分子材料を正極に用いる場合は、正極及び/または負極及び/または電池構成体にLiイオンをドープする。ドープ方法は特に規定されないが、電極へのLiスパッタ、対極Liでの予備充放電などがある。
【0090】
正極活物質として、一般式: LiCoNiMn (p+q+r=1、0<p<1、0≦q<1、0≦r<1)で表される複合金属酸化物が用いられることが多い。複合金属酸化物として、例えばLiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMnO、LiFePO、LiMnPO、LiFeP、LiFeSiO、LiMnSiO、LiNi0.8Co0.2、および前述の酸化物のいずれかを含む酸化物固溶体を用いることができる。正極活物質として、硫黄または硫黄含有有機物、酸素、有機ポリマーなどの非金属系正極活物質を用いることもできる。
【0091】
セパレータは正極と負極とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータとしては、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、あるいはポリエチレンなどの合成樹脂製またはセルロースなど天然高分子製の多孔質膜または不織布、またはセラミックス製の多孔質膜が使用できる。
【0092】
電解質は移動可能なLiイオンを含むものである。電解質として、非水電解液、水系電解液、あるいは固体電解質などを用いることができる。固体電解質の場合は必ずしもセパレータを必要としない。
【0093】
非水電解液は、有機溶媒とこの有機溶媒に溶解された電解質塩とを含んでいる。
【0094】
有機溶媒として例えば環状エステル類、鎖状エステル類、エーテル類が使用できる。環状エステル類として、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ガンマブチロラクトン、ビニレンカーボネート、2−メチル−ガンマブチロラクトン、アセチル−ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトンが使用できる。鎖状エステル類として、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステルが使用できる。エーテル類として、例えばテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンが使用できる。
【0095】
また上記有機溶媒に溶解させる電解質塩として、例えば、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO等のリチウム塩を使用することが出来る。
【0096】
非水電解液として、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどの有機溶媒にLiClO、LiPF、LiBF、LiCFSOなどのリチウム塩を0.5mol/lから2mol/l程度の濃度で溶解させた溶液を使用することが出来る。
【0097】
水系電解液として、各種の水溶性リチウム塩の水溶液を用いることが出来る。好ましい水溶性リチウム塩として、LiSO、LiNO、LiCl、CHCOOLi、もしくはLiOH、またはこれらのものの組み合わせが挙げられる。
【0098】
固体電解質は、例えば、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO等のリチウム塩を含むゲル電解質を用いることが出来る。
【0099】
固体電解質としては、例えば硫化リチウム、硫化珪素、硫化燐及びこれらの複合体、窒化リチウム、ヨウ化リチウム、LiPON(LiPO4−x)、Li4−xSi1−x(0≦x≦1)、LiLa2−x/3TiO(x=0.1〜0.5)、Li7+xLaZr12+(x/2)(−5≦x≦3,好ましくは−2≦x≦2)、Li1+x+y(Al,Ga)(Ti,Ge,Zr)2−xSi3−y12(0≦x≦1、0≦y≦1)、LiO−5Al、LiO−11Al、LiLa(Nb,Ta)12、Li14ZnGe16、LiSiAlOなどを用いることが出来る。
【0100】
上記二次電池用負極を有するため、本発明の二次電池は、十分な容量と良好なサイクル特性を有する。
【0101】
本発明の二次電池は車両に搭載することが出来る。上記二次電池は、十分な容量と良好なサイクル特性を有するため、その二次電池を搭載した車両は、高性能の車両とすることが出来る。
【0102】
車両としては、電池による電気エネルギーを動力源の全部または一部に使用する車両であればよく、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド鉄道車両、電動フォークリフト、電気車椅子、電動アシスト自転車、電動二輪車が挙げられる。
【0103】
<Si−酸化物固体電解質複合体>
本発明のSi−酸化物固体電解質複合体は、酸化物固体電解質からなるマトリックスと、マトリックス中に分散された、CuKα線を用いたX線粉末回折(XRD)測定により測定された結晶子サイズが100nm以下であるSi粒子と、を含む。
Si−酸化物固体電解質複合体は二次電池用負極活物質として用いると、二次電池の出力特性を向上出来る。
【0104】
以上、本発明の二次電池用負極活物質、その製造方法、二次電池用負極、二次電池、及びSi−酸化物固体電解質複合体の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【実施例】
【0105】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
【0106】
<材料の準備>
Siとして、メディアン径50%が5μmのSi粉末(高純度化学社製、3N)とD50が50nmのSiナノ粉末(Nanostructured&Amorphous Materials inc.製)を準備した。
【0107】
酸化物固体電解質として、LATP系酸化物固体電解質シート(オハラ社製、組成式Li1+x+y(Al,Ga)(Ti,Ge)2−xSi3−y12(ただし、0≦x≦1、0≦y≦1))及びアルミニウム置換リン酸ゲルマニウムリチウム(Li1.5Al0.5Ge1.5(PO(以下LAGPと称す)結晶粉末(豊島製作所社製)を準備した。
【0108】
<Si−酸化物固体電解質複合体の作製>
(実施例1)
LATP系酸化物固体電解質シートを瑪瑙乳鉢及び瑪瑙乳棒で予備粉砕した粉末と平均粒径が5μmのSi粉末を1:1(質量比)で粉砕用ボールをジルコニア製5mmボールとした遊星ボールミルに入れ、600rpmで30分混合、粉砕し、実施例1のSi−酸化物固体電解質複合体を得た。実施例1のSi−酸化物固体電解質複合体における酸化物固体電解質のしめる割合は50質量%であった。
【0109】
(実施例2)
300rpmで30分混合、粉砕した以外は、実施例1と同様にして実施例2のSi−酸化物固体電解質複合体を得た。
【0110】
(実施例3)
実施例1のSi−酸化物固体電解質複合体をAr雰囲気中、500℃で5時間熱処理して、実施例3のSi−酸化物固体電解質複合体を得た。
【0111】
(実施例4)
実施例2のSi−酸化物固体電解質複合体をAr雰囲気中、500℃で5時間熱処理して、実施例4のSi−酸化物固体電解質複合体を得た。
【0112】
(実施例5)
実施例1のLATP系酸化物固体電解質シートを瑪瑙乳鉢及び瑪瑙乳棒で予備粉砕した粉末に代えてLAGPを使用した以外は実施例1と同様にして、実施例5のSi−酸化物固体電解質複合体を得た。
【0113】
(実施例6)
実施例5のSi−酸化物固体電解質複合体をAr雰囲気中、500℃で5時間熱処理して、実施例6のSi−酸化物固体電解質複合体を得た。
【0114】
(実施例7)
実施例1の平均粒径が5μmのSi粉末に代えてD50が50nmのSiナノ粉末を使用した以外は実施例1と同様にして実施例7のSi−酸化物固体電解質複合体を得た。
【0115】
(実施例8)
300rpmで30分混合、粉砕した以外は、実施例7と同様にして実施例8のSi−酸化物固体電解質複合体を得た。
【0116】
(実施例9)
実施例7のSi−酸化物固体電解質複合体をAr雰囲気中、500℃で5時間熱処理して、実施例9のSi−酸化物固体電解質複合体を得た。
【0117】
(実施例10)
実施例8のSi−酸化物固体電解質複合体をAr雰囲気中、500℃で5時間熱処理して、実施例10のSi−酸化物固体電解質複合体を得た。
【0118】
(実施例11)
実施例7のLATP系酸化物固体電解質シートに代えてLAGPを使用した以外は実施例7と同様にして、実施例11のSi−酸化物固体電解質複合体を得た。
【0119】
(実施例12)
実施例11のSi−酸化物固体電解質複合体をAr雰囲気中、500℃で5時間熱処理して、実施例12のSi−酸化物固体電解質複合体を得た。
【0120】
<粉末X線回折(XRD)測定結果>
上記実施例1及び実施例2のSi−酸化物固体電解質複合体を粉末X線回折(XRD)(リガク製 SmartLab)で分析した。この分析結果をLATPの分析結果と合わせて図3に示す。実施例1のSi−酸化物固体電解質はLATPの結晶相が消失しており、酸化物固体電解質は非晶質であることが確認できた。実施例2の酸化物固体電解質は、LATPとSiのピークが確認でき、LATPの結晶は残っていることが確認できた。
【0121】
ここで600rpmの粉砕条件で粉砕した実施例1、実施例3、実施例5及び実施例6は酸化物固体電解質が非晶質又は低結晶性であったことがXRD測定でわかった。
【0122】
<結晶子サイズ測定>
またSiのXRDのピークの半値幅より結晶子サイズを求めた。原料となるSi粉末の結晶子サイズも同様にXRDのピークから求めた。原料である平均粒径が5μmであるSi粉末の結晶子サイズは107nmであり、原料であるD50が50nmのSiナノ粉末の結晶子サイズは38nmであった。
【0123】
実施例1〜12のSiの結晶子サイズを表1に記載した。Siの結晶子サイズの測定結果から、Si粉末と酸化物固体電解質とを遊星ボールミルを用い、600rpmで高速回転することによって、Siの結晶子サイズは8nm〜53nmとなり、原料であるSi粉末の大きさに関わらず、Siの結晶子サイズを非常に小さくすることが出来ることがわかった。
【0124】
実施例3は実施例1を熱処理して得られたものであり、実施例4は実施例2を熱処理して得られたものであり、実施例9は実施例7を熱処理して得られたものであり、実施例10は実施例8を熱処理して得られたものであり、実施例12は実施例11を熱処理して得られたものである。これらの結果を比較すると、Siの結晶子サイズは熱処理をすることによって大きくなることがわかった。
【0125】
<走査型電子顕微鏡(SEM)観察>
実施例1及び実施例2のSi−酸化物固体電解質複合体をSEM(日立ハイテク社製S−4800)で観察した。
【0126】
図4に実施例1のSi−酸化物固体電解質複合体の断面SEM写真を示す。図4の断面SEM写真から実施例1のSi−酸化物固体電解質複合体の断面には数十nm〜1μm程度の大きさの濃い色むらが複数観察された。この濃い色むらがSi粒子である。図4からSi粒子はマトリックスに分散されており、Si粒子と酸化物固体電解質とは一体化していることが観察された。
【0127】
図5に実施例1のSi−酸化物固体電解質複合体の表面のSEM写真と実施例3のSi−酸化物固体電解質複合体の表面のSEM写真を比較したものを示す。図5より、実施例1のSEM写真では表面の粒がはっきり観察できないが、実施例3のSEM写真においては、表面の粒が観察され、熱処理によって粒が成長したことがわかった。
【0128】
図6に実施例2のSi−酸化物固体電解質複合体の表面のSEM写真と実施例4のSi−酸化物固体電解質複合体の表面のSEM写真を比較したものを示す。図6より、実施例2のSEM写真では表面の粒がはっきり観察できないが、実施例4のSEM写真においては、表面の粒が観察され、熱処理によって粒が成長したことがわかった。また実施例4のSi−酸化物固体電解質複合体の表面には、直径が3μm程度の大きなSi粒子が観察された。
【0129】
図5及び図6から、実施例3と実施例4のSEM写真を比較すると、遊星ボールミルの粉砕条件が300rpm、30分の実施例4では一部にミクロンサイズのSiが残存しており、Si粒子のナノ化が充分でないとわかった。一方、遊星ボールミルの粉砕条件が600rpm、30分の実施例3では大きなSi粒子が確認されず、ナノ化が充分進行しているとわかった。
【0130】
<コイン型リチウムイオン二次電池作製>
(実施例1〜実施例12)
上記実施例1〜実施例12のSi−酸化物固体電解質複合体を負極活物質として以下のようにコイン型リチウムイオン二次電池を作製した。
【0131】
各Si−酸化物固体電解質複合体を乳鉢にて粉砕後、Si−酸化物固体電解質複合体/天然黒鉛(SMG)/アセチレンブラック(導電助剤)/ポリアミドイミド樹脂(バインダ−)=45/40/5/10(質量比)で混合し、この混合物を適量のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させて、スラリーを作製した。
【0132】
厚さ20μmの銅箔に上記スラリーを乗せて、ドクターブレードを用いて銅箔上に成膜した。得られたシートを80℃で20分間乾燥してNMPを揮発させて除去した後、ロ−ルプレス機により、電解銅箔からなる集電体と上記混合物からなる負極層を強固に密着接合させた。これを0.95cmの円形ポンチで抜き取り、200℃で2時間、真空乾燥させて各電極を得た。目付け量が2mg程度(1.5mg〜2.5mg)となるように塗工量を調製した。
【0133】
上記した電極を評価極とし、金属リチウムを対極として、ハーフセルでの評価を行った。1モルのLiPF6/エチレンカーボネ−ト(EC)+ジエチルカーボネート(DEC)(EC:DEC=1:1(体積比))溶液を電解液として、ドライルーム内でコイン型モデル電池(CR2032タイプ)を作製した。コイン型モデル電池は、スペーサー、対極となる厚み500μmのLi箔、セパレータ(セルガード社製 商標名Celgard #2400)、および評価極を順に重ね、かしめ加工して、実施例1〜実施例12のモデル電池を作製した。
【0134】
(比較例1)
Si−酸化物固体電解質複合体に代えてSi粉末を用いた以外は実施例のモデル電池と同様にして比較例1のモデル電池を作製した。
【0135】
<充放電特性測定>
実施例1〜12及び比較例1のコイン型モデル電池の充放電試験を行った。充放電試験は、電極材料1mgに対し、0.1mAの定電流で0.01Vに達するまで放電し、0.1mAの定電流で2.0Vに達するまで充電することによって行った。この充放電を1サイクルとして50サイクルまで繰り返した。初回の充電容量を測定し、電極合剤あたりの初回容量を計算した。50サイクル目の充電容量から同様に計算して、電極合剤あたりの50サイクル目の容量を計算した。容量維持率は以下の式で求めた。容量維持率(%)=(50回目の容量/初回容量)×100。
【0136】
Si利用効率は、以下の式から求めた。Si利用効率(%)=((初回充電容量)−(SMG由来の容量))/((Si理論容量)×(Si質量割合)×(負極活物質質量))×100。なお、Si質量割合は、1−(マトリックス割合)で計算した。
【0137】
<レート特性測定>
充電を0.5Cおよび10Cとした以外は充放電特性測定と同様に初回充電容量を測定した。このときの充電レートは充放電特性測定での初回充電容量からそれぞれの電流値を求めた。従って充放電特性測定の充電は1Cにあたる。
【0138】
レート特性は(10Cの充電容量)/(0.5Cの充電容量)×100として評価した。
【0139】
Siの結晶子サイズ、充放電特性測定結果、レート特性測定結果を表1に示した。
【0140】
【表1】
【0141】
表1の結果から、比較例1はマトリックスを用いていないため換算上、比較例1の初回容量を1/2(1704/2=852)にして実施例と比較した。実施例1〜実施例4のモデル電池は、いずれも、Si―酸化物固体電解質に代わってSi粉末を用いた比較例1のモデル電池と比べて、初回容量が比較例1より高いかそれほど変わらず、かつ50サイクル目の容量維持率が向上したことがわかった。サイクル特性については、特に比較例1のモデル電池の50サイクル目の容量維持率が10%であったのに対し、実施例1及び実施例3のモデル電池の50サイクル目の容量維持率は36%〜50%であり、大幅にサイクル特性が向上した。
【0142】
また、図7にも示すように実施例1〜4及び比較例1のモデル電池のSiの結晶子サイズと50サイクル目の容量維持率を比較すると、結晶子サイズが小さい方が50サイクル目の容量維持率が高かった。特にSi結晶子サイズが65nm以下とすると大幅に50サイクル目の容量維持率が向上した。
【0143】
また実施例1、実施例3及び実施例5はXRD結果より酸化物固体電解質が非晶質または低結晶性であることがわかっている。酸化物固体電解質が非晶質または低結晶性であるため、酸化物固体電解質の粒界抵抗が小さくなり、初回容量が向上したと推測する。
【0144】
実施例7〜実施例12はいずれも原料Si粉末をD50が50nmのSiナノ粉末を用いたものである。実施例7〜実施例12の初回容量は、いずれも比較例1に比べて低かった。Siナノ粉末は、もともと表面に表面酸化皮膜(酸化珪素層)が形成されている。酸化珪素層は電極内の抵抗成分となっていることが考えられる。そのため、原料としてSiナノ粉末を用いると、複合体となっても本来の容量が出なかったのではないかと推察される。
【0145】
Si利用効率を比較すると、Siナノ粉末を利用した実施例はいずれもSi粉末を利用した実施例に比べてSi利用効率が低かった。
【0146】
しかしながら実施例7〜実施例12の50サイクル目の容量維持率は比較例1に比べて大幅に向上した。なおSiナノ粉末の表面の酸化珪素は充放電を繰り返すことで、リチウムシリケート非晶質相に変化し、電極内の導電性が向上する。そのため実施例11及び実施例12の50サイクル目の容量維持率が100より大きいのは見かけ上の容量が高くなったためと考えられる。
【0147】
このことから、初回容量が高いものを望むならば、原料のSi粉末はナノサイズでなくミクロンサイズのものを用いてSi−酸化物固体電解質複合体を複合化した方がいいことがわかった。
【0148】
酸化物固体電解質がLAGPである実施例5、実施例6、実施例11及び実施例12も酸化物固体電解質がLATPである実施例1と同様に、比較例1に比べてサイクル特性が向上した。
【0149】
実施例5の場合、実施例1と同様の方法で作成したが実施例1の結晶子サイズ8nmと違って実施例5のSiの結晶子サイズは32nmであった。実施例においてLATPとしてガラス結晶化法で合成され不純物相を含み結晶性が低い原料を用いたのに比べてLAGPとして結晶性が高い原料を用いた。そのため、実施例5の場合、酸化物固体電解質として結晶性が高いLAGPを用いたため、粉砕エネルギーの一部がLAGPの粉砕に消費され、同様に作成してもSiの結晶子サイズが小さくならなかったものと推測される。
【0150】
実施例6は実施例5を熱処理したものである。熱処理を行うとSiの結晶子サイズは39nmと大きくなったが、大幅な増加ではなかった。実施例6のモデル電池では実施例5のモデル電池に比べて初回容量は下がったが、50サイクル目の容量維持率が向上した。このことから熱処理によって酸化物固体電解質からなるマトリックスの骨格構造が強固になるともに、Si粒子と酸化物固体電解質の結合が強固になり、サイクル特性が向上したものと推察される。
【0151】
なお実施例6は実施例5より初回容量が下がった。実施例5及び実施例6の粉砕条件は、600rpm、30分のボールミル処理でSiのナノ化及び複合化が行われた。実施例5及び実施例6において、原料のSi粒子およびLAGP粒子の結晶性が大きいため、一部では反応が充分でなく、Si粒子の表面が複合体表面に露出した部位があったと考えられる。実施例6は実施例5をさらに熱処理を行っている。熱処理によって、Si粒子の表面の複合体表面に露出した部位においてSi粒子が酸化されたことが考えられ、そのため実施例6の初回容量は実施例5より下がったと推測される。
【0152】
LAGPを用いる場合、LATPを用いる場合より混合・粉砕速度を大きくする及び/または混合・粉砕時間を長くすることで充分な複合化が行われると推測する。
【0153】
実施例1、3、7、9は固体電解質LATPを用いて混合・粉砕速度600rpmで複合化したものである。実施例2、4、8、10の混合・粉砕速度300rpmで複合化したものより50サイクル目の容量維持率が向上した。このことから複合化処理において混合・粉砕速度を大きくする方がよいとわかった。
【0154】
表1に記載のレート特性測定結果から実施例1〜12は比較例1と比較して高いレート特性を示すことがわかった。酸化物固体電解質と複合化することで、複合化していないSiよりも高出力な電池を提供できることがわかった。
【符号の説明】
【0155】
1:Si粒子、2:マトリックス。
図1
図2
図3
図7
図4
図5
図6