特許第5835143号(P5835143)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5835143
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】樹脂ケースの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/72 20060101AFI20151203BHJP
【FI】
   B29C65/72
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-163884(P2012-163884)
(22)【出願日】2012年7月24日
(65)【公開番号】特開2014-24197(P2014-24197A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2014年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】アンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 晋
(72)【発明者】
【氏名】塚田 康一
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−007420(JP,A)
【文献】 特開2012−253251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/72
H05K 5/00−5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の2つのケース部材(1、2)を溶着により接合する樹脂ケースの製造方法において、
前記2つのケース部材のうち一方のケース部材は当該樹脂ケースの外方に向かって突出する嵌合突起部(14)を備え、他方のケース部材は前記嵌合突起部と嵌合される嵌合フック部(21)を備え、前記2つのケース部材が対向する面を対向面(10、20)としたとき、一方のケース部材は、他方のケース部材の対向面側に向かって突出し且つ接合時に先端部が溶融する溶着突起部(12)と、前記溶着突起部の先端部が溶融後に前記他方のケース部材の対向面に当接するストッパ面(13)とを備え、
前記2つのケース部材溶着により接合し、
この接合後に前記嵌合フック部を延ばして前記嵌合突起部と嵌合させ、前記嵌合フック部の復元力により、溶着部に対して常に加圧力が作用するようにすることを特徴とする樹脂ケースの製造方法
【請求項2】
前記嵌合フック部は、前記ケース部材の本体部(22)から平行に延びる2つの脚部(210)と、前記2つの脚部を連結するとともに前記嵌合突起部に当接する連結部(211)とを備え、
前記2つの脚部は、一方の脚部と他方の脚部の形状が異なっていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂ケースの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の2つのケース部材を溶着により接合する樹脂ケースの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の樹脂ケースとして、樹脂製の2つのケース部材を溶着により接合するものが提案されている。そして、一方のケース部材に、他方のケース部材側に向かって突出する溶着突起部を設け、溶着突起部の先端部を溶融させて2つのケース部材を接合することにより、強固な溶着部を得るようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−302700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば車両に搭載される樹脂ケースにおいて、車両振動により溶着部を引き剥がす力が作用することにより、溶着部が一部剥がれて気密性が保たれなくなったり、或いは、溶着部が全て剥がれて2つのケース部材が分解してしまう虞があった。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、樹脂製の2つのケース部材を溶着により接合する樹脂ケースにおいて、溶着部の剥がれや2つのケース部材の分解を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、樹脂製の2つのケース部材(1、2)を溶着により接合する樹脂ケースの製造方法において、2つのケース部材のうち一方のケース部材は当該樹脂ケースの外方に向かって突出する嵌合突起部(14)を備え、他方のケース部材は嵌合突起部と嵌合される嵌合フック部(21)を備え、2つのケース部材溶着により接合し、この接合後に嵌合フック部を延ばして嵌合突起部と嵌合させ、嵌合フック部の復元力により、溶着部に対して常に加圧力が作用するようにすることを特徴とする。
【0007】
これによると、溶着部に作用する加圧力は溶着部を引き剥がす力に対抗するため、溶着部の剥がれや2つのケース部材の分解を防止することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の樹脂ケースにおいて、嵌合フック部は、ケース部材の本体部(22)から平行に延びる2つの脚部(210)と、2つの脚部を連結するとともに嵌合突起部に当接する連結部(211)とを備え、2つの脚部は、一方の脚部と他方の脚部の形状が異なっていることを特徴とする。
【0009】
ところで、嵌合フック部が左右対称形状である場合は、第2ケース部材を成形する際に嵌合フック部の中心部にウェルドが形成され易い。そして、ウェルド部は他の部位よりも強度が低いため、ウェルド部が嵌合突起部に当接することは望ましくない。
【0010】
これに対し、請求項2に記載の発明では、一方の脚部と他方の脚部の形状が異なっているため、第2ケース部材を成形する際に溶融樹脂の流動バランスが崩れ、嵌合フック部の中心部に位置して嵌合突起部に当接する連結部には、ウェルドが形成されにくい。
【0011】
また、請求項に記載の発明では、2つのケース部材が対向する面を対向面(10、20)としたとき、一方のケース部材は、他方のケース部材の対向面側に向かって突出し且つ接合時に先端部が溶融する溶着突起部(12)と、溶着突起部の先端部が溶融後に他方のケース部材の対向面に当接するストッパ面(13)とを備えることを特徴とする。
【0012】
ところで、接合時に溶着突起部等が溶融するため、接合後の2つのケース部材は、対向面に対して直交する方向の相対位置関係が大きくばらついてしまう。
【0013】
これに対し、請求項に記載の発明では、溶着突起部の先端部が溶融すると、他方のケース部材の対向面と一方のケース部材のストッパ面とが当接して、対向面に対して直交する方向の2つのケース部材の相対位置が決められるため、2つのケース部材の相対位置関係のばらつきを小さくすることができる。
【0014】
したがって、嵌合突起部と嵌合フック部の相対位置関係のばらつきも小さくすることができ、嵌合フック部の復元力により溶着部に対して確実に加圧力を作用させることができる。
【0015】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂ケースを採用したスピーカーの斜視図である。
図2図1のスピーカーの正面図である。
図3図2のA−A断面図である。
図4】接合前の状態を示す図2のB−B断面図である。
図5】接合後の状態を示す図2のB−B断面図である。
図6図1のスピーカーにおける第2ケース部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1〜3に示すように、スピーカーは、樹脂製の第1ケース部材1、樹脂製の第2ケース部材2、および樹脂製のカバー3によって、筐体が構成されている。そして、このスピーカーは、車両の警報器として用いられ、車室外(例えば車両のフロントバンパー内)に配置される。
【0018】
第1ケース部材1は、略円筒状の筒部11と、筒部11内の空間を軸方向に2分割するようにして筒部11内に設けられた隔壁12とを備えている。筒部11の一端に、円板状の第2ケース部材2が溶着にて気密的に接合されている。筒部11の他端に、円板状のカバー3が嵌合されている。そして、第1ケース部材1と第2ケース部材2とによって内部空間としての第1空間4が形成され、第1ケース部材1とカバー3とによって外部空間としての第2空間5が形成されている。
【0019】
隔壁12には、第1空間4と第2空間5とを連通させる円形の貫通孔120が形成されている。そして、電気信号に基づいて音を発生させる発音体6が、貫通孔120を塞ぐようにして第1空間4内に配置されている。発音体6は、隔壁12に接着にて気密的に接合されている。第1ケース部材1には、発音体6と図示しない外部ハーネスとを接続する接続端子7が圧入されている。
【0020】
第2空間5は、筒部11に設けられた放音孔(図示せず)、およびカバー3に設けられた放音孔(図示せず)を介して、外部に連通している。そして、発音体6が発した音が放音孔を介して外部に放出されるようになっている。
【0021】
第1ケース部材1と第2ケース部材2は、それらの軸方向に重ねられてレーザ溶着により接合される。なお、レーザ溶着の際、第1ケース部材1と第2ケース部材2は、それらの軸方向に沿って治具(図示せず)により加圧力を加えられる。以下、その加圧力の作用方向を溶着時加圧方向という。
【0022】
第1ケース部材1は、レーザ光に対して吸収率が高い吸収性樹脂材よりなる。一方、レーザ光が照射される側の第2ケース部材2は、レーザ光に対して透過率が高い透過性樹脂材よりなる。
【0023】
図4図5に示すように、第1ケース部材1における溶着時加圧方向の一端面、換言すると、第1ケース部材1における第2ケース部材2に対向する対向面10には、第2ケース部材2における第1ケース部材1に対向する対向面20に向かって突出する溶着突起部12が形成されている。この溶着突起部12は、断面形状は3角形で、環状に連続している。また、溶着突起部12は、接合時に先端部が溶融する。
【0024】
第1ケース部材1の対向面10には、溶着突起部12の先端部が溶融後に第2ケース部材2の対向面20に当接するストッパ面13が形成されている。このストッパ面13は、環状に連続している。
【0025】
第1ケース部材1における筒部11の外周面には、外方に向かって突出する嵌合突起部14が形成されている。この嵌合突起部14は、筒部11の周方向に沿って4個設けられている。
【0026】
図4〜6に示すように、第2ケース部材2には、嵌合突起部14と嵌合される嵌合フック部21が4個形成されている。この嵌合フック部21は、略U字状になっており、第2ケース部材2の本体部22から平行に延びる2つの脚部210と、2つの脚部210を連結し且つ嵌合突起部14に当接する連結部211とを備えている。
【0027】
また、2つの脚部210は、一方の脚部と他方の脚部の形状が異なっている。より詳細には、一方の脚部と他方の脚部は、断面形状および断面積が異なっている。このため、第2ケース部材2を成形する際に溶融樹脂の流動バランスが崩れ、嵌合フック部21の中心部に位置する連結部211には、ウェルドが形成されにくくなっている。
【0028】
なお、嵌合突起部14および嵌合フック部21のうち、それらが嵌合した状態のときに互いに当接する部位を、以下、突起部側当接部140およびフック側当接部212という。
【0029】
また、嵌合突起部14のうち、嵌合突起部14と嵌合フック部21が嵌合する前の時点で嵌合フック部21の連結部211が当接する部位を、以下、ガイド面141という。このガイド面141は、第1ケース部材1の軸線に対して傾斜しており、より詳細には、第1ケース部材1における対向面10側から他端側に向かって第1ケース部材1の軸線に近づくように傾斜している。
【0030】
ここで、第1ケース部材1のストッパ面13から突起部側当接部140までの、自由状態での溶着時加圧方向の寸法は、第2ケース部材2の対向面20からフック側当接部212までの、溶着時加圧方向の寸法よりも、約0.2mm長くなっている。因みに、嵌合フック部21の溶着時加圧方向の寸法は、約10mmである。
【0031】
第1ケース部材1と第2ケース部材2を一体化する際には、まず、第1ケース部材1と第2ケース部材2を重ね合わせ、治具により加圧力を加えた状態で第1ケース部材1と第2ケース部材2を保持する(図4参照)。
【0032】
続いて、第2ケース部材2側から溶着突起部12に向かってレーザ光を照射する。このレーザ光の照射により、溶着突起部12の先端部が溶融し、また第2ケース部材2における溶着突起部12の先端部と接触している部位が溶融して、第1ケース部材1と第2ケース部材2が接合される。
【0033】
このとき、溶着突起部12の先端部等が溶融すると、第1ケース部材1と第2ケース部材2はそれらが近接する向きに相対移動する。そして、ストッパ面13と第2ケース部材2の対向面20とが当接して、第1ケース部材1と第2ケース部材2の、溶着時加圧方向の相対位置が決められるため、第1ケース部材1と第2ケース部材2の相対位置関係のばらつきを小さくすることができる。
【0034】
前述したように、第1ケース部材1のストッパ面13から突起部側当接部140までの、自由状態での溶着時加圧方向の寸法は、第2ケース部材2の対向面20からフック側当接部212までの溶着時加圧方向の寸法よりも長いため、第1ケース部材1と第2ケース部材2の接合が完了した時点では、嵌合突起部14と嵌合フック部21は嵌合しておらず、嵌合フック部21の連結部211が嵌合突起部14のガイド面141に当接している。
【0035】
続いて、嵌合フック部21を溶着時加圧方向に沿って延ばして、嵌合フック部21の連結部211を嵌合突起部14に嵌合させる。すなわち、突起部側当接部140とフック側当接部212が当接した状態にする(図5参照)。
【0036】
この際、嵌合突起部14のガイド面141は、第1ケース部材1における対向面10側から他端側に向かって第1ケース部材1の軸線に近づくように傾斜しているため、嵌合フック部21の連結部211を嵌合突起部14にスムーズに嵌合させることができる。
【0037】
このように、嵌合フック部21を変形させて嵌合突起部14に嵌合すれば、嵌合フック部21の復元力により、溶着部に対して加圧力が作用する。そして、この溶着部に作用する加圧力は、溶着部を引き剥がす力に対抗するため、溶着部の剥がれや、第1ケース部材1と第2ケース部材2の分解を防止することができる。
【0038】
(他の実施形態)
上記実施形態では、第1ケース部材1に嵌合突起部14を設け、第2ケース部材2に嵌合フック部21を設けたが、第1ケース部材1に嵌合フック部を設け、第2ケース部材2に嵌合突起部を設けてもよい。
【0039】
上記実施形態では、本発明をスピーカーのケースに適用したが、本発明はECU等のケースにも適用することができる。
【0040】
上記実施形態では、第1ケース部材1と第2ケース部材2をレーザ溶着により接合したが、第1ケース部材1と第2ケース部材2は熱板溶着や超音波溶着等により接合してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 第1ケース部材
2 第2ケース部材
14 嵌合突起部
21 嵌合フック部
図1
図2
図3
図4
図5
図6