特許第5835145号(P5835145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5835145
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】半導体積層ユニットとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/40 20060101AFI20151203BHJP
   H01L 23/473 20060101ALI20151203BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20151203BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20151203BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   H01L23/40 E
   H01L23/46 Z
   H01L25/04 C
   H05K7/20 T
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-169350(P2012-169350)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-29912(P2014-29912A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2014年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣中 良臣
(72)【発明者】
【氏名】井村 仁史
【審査官】 石坂 博明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−211853(JP,A)
【文献】 特開2011−200090(JP,A)
【文献】 特開2009−094257(JP,A)
【文献】 特開2012−099748(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0249402(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
23/34−23/36
23/373−23/427
23/44
23/467−23/473
H02M 3/00−3/44
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を収めた複数の半導体モジュールと複数の冷却プレートが交互に積層しており、冷媒供給管と冷媒排出管が積層方向の一方の端部に配置された冷却プレートから積層方向に延びている積層構造体と、
前記積層構造体を支持する筐体であって前記積層構造体の他方の端部と接するストッパを有している筐体と、
一端が前記冷媒供給管に嵌合するとともに他端が冷媒供給チューブと接続する供給側接続パイプと、
一端が前記冷媒排出管に嵌合するとともに他端が冷媒排出チューブと接続する排出側接続パイプと、
を備えており、
前記供給側接続パイプと前記排出側接続パイプが前記筐体に固定されており、
前記積層構造体が、前記供給側接続パイプ及び前記排出側接続パイプと、前記ストッパで挟持されていることを特徴とする半導体積層ユニット。
【請求項2】
前記供給側接続パイプの端部と前記排出側接続パイプの端部が前記積層構造体の前記一方の端部に配置された冷却プレートの端面を押圧していることを特徴とする請求項1に記載の半導体積層ユニット。
【請求項3】
前記供給側接続パイプと前記排出側接続パイプが連結していることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体積層ユニット。
【請求項4】
前記供給側接続パイプと前記排出側接続パイプは、前記積層方向に挿通されるボルトによって前記筐体に固定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体積層ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体積層ユニットの製造方法であり、
前記供給側接続パイプと前記排出側接続パイプをそれぞれ、前記冷媒供給管と前記冷媒排出管に嵌合させる嵌合工程と、
前記積層方向に前記ボルトを挿通して、前記冷媒供給管と前記冷媒排出管を前記筐体に固定する固定工程と、を備えており、
前記固定工程において、前記ボルトをねじ込むことで、前記供給側接続パイプと前記排出側接続パイプを前記積層方向に移動させ、前記供給側接続パイプの端部と前記排出側接続パイプの端部によって前記積層構造体の前記一方の端部に配置された冷却プレートの端面を押圧する、
ことを備えることを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を収めた平板型の複数の半導体モジュールと冷却器が一体化した半導体積層ユニットとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧を昇圧したり降圧したりする電圧コンバータや誘導モータに交流電流を供給するインバータは多数の半導体素子を備える。使われる半導体素子の典型は、スイッチング素子として用いられるトランジスタである。スイッチング素子のトランジスタとしては、代表的には、IGBTやMOSFETが使われる。半導体素子は流れる電流の大きさに応じて発熱する。電気自動車の走行用モータは出力が大きく、それゆえ、電気自動車の駆動系に用いられる半導体素子は発熱量が大きい。
【0003】
発熱量の大きい半導体素子を効率よく冷却する冷却装置であってコンパクトな冷却装置が特許文献1−4に開示されている。いずれも、半導体素子を平板型(カード型)の半導体モジュールに収め、複数の半導体モジュールと冷媒を流す平板型の複数の冷却プレートを交互に積層する構造を備えている。そのような積層体を本明細書では積層構造体と称する。また、筐体に支持された積層構造体を半導体積層ユニットと称することがある。半導体積層ユニットは、一例として、電気自動車のパワーコントロールユニットに搭載される。なお、「パワーコントロールユニット」とは、インバータ回路や電圧コンバータ、及び、モータ駆動に必要な他の周辺デバイスを含むコントローラを意味する。
【0004】
特許文献に記載された半導体積層ユニットでは、隣接する冷却プレートが半導体モジュールをその両面から冷却する。冷却プレートは冷媒を通す導管であり、隣接する冷却プレート同士が2本の接続管で接続される。また、積層構造体の一方の端部に位置する冷却プレートには、その長手方向の両端付近に2本の管が接続されている。2本の管の一方は外部から冷媒を供給する冷媒供給管であり他方は各冷却プレートを通過した冷媒を排出する冷媒排出管である。冷媒供給管から供給された冷媒は接続管を通じて各冷却プレートに行きわたり、冷却プレート内を通過しつつ半導体モジュールを冷却し、その後、他方の接続管を通じ、さらに冷媒排出管からユニット外部へと排出される。
【0005】
半導体モジュールを効率よく冷却するには、冷却プレートと半導体モジュールが密着している方がよく、そのため、積層構造体は、その積層方向に荷重を受けつつ支持される。特許文献2−4はいずれも、板バネを用いて、積層構造体をその積層方向に荷重する。
【0006】
特許文献2−4はいずれも、板バネは、冷媒供給管/冷媒排出管が接続された冷却プレートとは反対側の端面に配置される。冷媒供給管/冷媒排出管を備える冷却プレートは筐体に立設する壁に接しており、冷媒供給管/冷媒排出管に、冷媒タンクから延びる外部のチューブが接続される。筐体に立設する壁は、典型的には筐体の側壁である。なお、特許文献4では、冷媒供給管/冷媒排出管をクランプして積層構造体を筐体に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−099748号公報
【特許文献2】特開2010−259203号公報
【特許文献3】特開2011−103728号公報
【特許文献4】特開2012−016264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
積層構造体は積層方向に荷重を受けつつ筐体に固定され、冷媒供給管と冷媒排出管には別のデバイス(冷媒タンクなど)から延びるチューブが接続される。そのような半導体積層ユニットが車両に搭載されると、走行中の振動に起因してチューブが振動し、チューブを接続している冷媒供給管/冷媒排出管の付け根に繰り返し応力が作用し、劣化が促進される。本明細書は、上記課題に鑑みて創作された。本明細書は、複数の半導体モジュールと複数の冷却プレートが積層しており、積層構造体の一方の端部の冷却プレートに冷媒供給管と冷媒排出管が接続された半導体積層ユニットにおいて、冷媒供給管と冷媒排出管の付け根の劣化を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書が開示する半導体積層ユニットの一態様は次の通りである。積層構造体は、前述したように、半導体素子を収めた平板型の複数の半導体モジュールと冷媒を流す平板型の複数の冷却プレートを交互に積層したものであり、冷媒供給管と冷媒排出管が積層構造体の一方の端部の冷却プレートから積層方向に延びている。筐体には、積層構造体の他方の端部と接するストッパが設けられている。ストッパは、筐体の底面から立設する壁であってもよいし、筐体の側壁であってもよい。半導体積層ユニットは、さらに、供給側接続パイプと排出側接続パイプを備えている。供給側接続パイプは、一端が冷媒供給管に嵌合するとともに他端が冷媒供給チューブと接続する。同様に、排出側接続パイプは、一端が冷媒排出管に嵌合するとともに他端が冷媒排出チューブと接続する。そして、供給側接続パイプと排出側接続パイプが筐体に固定されており、積層構造体が、供給側接続パイプ及び排出側接続パイプとストッパで挟持/支持されている。
【0010】
上記の構造を有することによって、外部のチューブが接続される供給側/排出側接続パイプは、冷媒供給管と冷媒排出管と嵌合するものの、冷却プレートには直接は固定されない。車両振動によりチューブが振動しても、その揺れは供給側/排出側接続パイプが受け、冷却プレートへの影響が低減される。すなわち、チューブの振動(車両振動)に起因する冷媒供給管/冷媒排出管の付け根の劣化が抑制される。
【0011】
本明細書が開示する半導体積層ユニットのさらなる改良として、供給側接続パイプ及び排出側接続パイプの端部が、平板を介して積層構造体の端に位置する冷却プレートの端面を押圧していると好適である。供給側接続パイプ及び排出側接続パイプが積層構造体に荷重を加えることによって、従来技術における板バネを廃止できる。
【0012】
作業性を考慮すると、供給側接続パイプと排出側接続パイプが連結しているのがよく、また、供給側接続パイプと排出側接続パイプは、積層構造体の積層方向に挿通されるボルトによって筐体に固定されることが好ましい。
【0013】
本明細書は、また、上記した新規な半導体積層ユニットの製造方法も提供する。その方法は、供給側接続パイプと排出側接続パイプをそれぞれ、冷媒供給管と冷媒排出管に嵌合させる嵌合工程と、積層方向にボルトを挿通して、冷媒供給管と冷媒排出管を筐体に固定する固定工程と、を備える。そして、固定工程において、ボルトをねじ込むことで、供給側接続パイプと排出側接続パイプを積層方向に移動させ、供給側接続パイプの端部と排出側接続パイプの端部によって積層構造体の端に配置された冷却プレートの端面を押圧する。そのような製造方法では、積層構造体の押圧と固定が一つの工程で実現できる。それゆえ、製造コストを抑制することができる。
【0014】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例の半導体積層ユニットの分解斜視図である。
図2】実施例の半導体積層ユニットの斜視図である。
図3】半導体積層ユニットの製造工程を説明する平面図である(1)。
図4】半導体積層ユニットの製造工程を説明する平面図である(2)。
図5】半導体積層ユニットの製造工程を説明する平面図である(3)。
図6】半導体積層ユニットの製造工程を説明する平面図である(4)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して実施例の半導体積層ユニット2を説明する。図1に半導体積層ユニット2の分解図斜視図を示し、図2に完成図を示す。実施例の半導体積層ユニット2は、電気自動車のパワーコントロールユニット(PCU)に内蔵される部品であり、インバータ回路に使われる複数のスイッチング素子と、電圧コンバータに使われるスイッチング素子を集約して冷却する装置である。スイッチング素子は、半導体素子であり、典型的にはIGBTである。
【0017】
半導体積層ユニット2は、主な部品として、筐体15、積層構造体10、加圧プレート14、及び、パイプ継手9を備えている。
【0018】
積層構造体10は、複数の平板型の半導体モジュール12と、複数の平板型の冷却プレート3a〜3gを交互に積層したものである。半導体モジュール12は、1個のIGBT(半導体素子)と1個のダイオードを樹脂でモールドしたものである。ダイオードは、IGBTと逆並列に接続されている。IGBTとダイオードの逆並列回路をスイッチング回路と称することがある。良く知られているように、インバータ回路は、2個のスイッチング回路の直列接続の組を3セット並列に接続した回路構成を有する。積層構造体10に含まれる複数の半導体モジュー12が上記の3セットの回路を構成する。その他、積層構造体10に含まれる別の半導体モジュール12に内蔵されているスイッチング回路は、電圧を変える電圧コンバータにも使われる。なお、半導体モジュール12は、内部の半導体素子に繋がる端子を備えているが、その図示は省略している。
【0019】
冷却プレート3a〜3gは、内部が空洞であり、その長手方向の両端に貫通孔を有する。貫通孔には短い接続管13が接続される。2個の接続管13により、隣接する冷却プレートが接続される。積層構造体10の一方の端部に位置する冷却プレート3aには、冷媒供給管4と冷媒排出管5が接続される。積層構造体10をその積層方向(図中のX軸方向)からみると、冷媒供給管4と、各冷却プレートの一方の接続管13が重なって見え、冷媒排出管5と他方の接続管13が重なって見える。すなわち、冷媒供給管4と冷媒排出管5は、ともに、積層構造体10の積層方向に沿って延びている。
【0020】
図2に示すように、冷媒供給管4と冷媒排出管5には、それぞれ、パイプ継手9を介して冷媒供給チューブ26と冷媒排出チューブ27が接続される。冷媒供給チューブ26と冷媒排出チューブ27は、不図示の冷媒タンクに接続されている。冷媒供給チューブ26から供給される冷媒は、冷媒供給管4及びそれと一列に並ぶ接続管13を介して全ての冷却プレートに行きわたる。冷媒は、冷却プレート3a〜3gをその一端から他端へと流れる間に接している半導体モジュール12を冷却する。冷却プレート3a〜3gを通過した冷媒は、冷媒排出管5及びそれと一例に並ぶ接続管13を通じ、さらに冷媒排出チューブを通って冷媒タンクへと戻される。
【0021】
冷却プレート3a〜3g、接続管13、冷媒供給管4、冷媒排出管5は、熱伝導率の高いアルミニウムで作られている。冷却プレート3a〜3gの内部には、冷却能力を高めるためのフィンが内蔵される場合もある。加圧プレート14は、加圧プレート14は、その剛性が冷却器よりも高くなるように作られている。
【0022】
積層構造体10は、積層方向の端部の冷却プレート3aに加圧プレート14を当接して筐体15に載置される。筐体15には積層構造体10の一方の端部を受け止めるストッパ16が設けられている。ここで、「積層構造体10の一方の端部」は、冷媒供給管/排出管とは反対側の端部に位置する冷却プレート3gに相当する。ストッパ16は、筐体15の底面から立設された壁である。また、筐体15の一つの側壁には2つのU字溝15aが設けられており、積層構造体10を載置すると、2つのU字溝15aのそれぞれに冷媒供給管4と冷媒排出管5が遊嵌する。2つのU字溝15aの間には、ボルト31に螺合するネジ孔15bが設けられている。なお、「筐体15の一つの側壁」は、ストッパ16と対向する側壁に相当する。また、筐体15は、2つのU字溝15aの代わりに丸孔を有するものであってもよい。
【0023】
パイプ継手9は、2本のパイプ6、7を板材8で接続したものである。2本のパイプは、供給側接続パイプ6と排出側接続パイプ7である。板材8には、ボルト31を通す貫通孔8aが設けられている。供給側接続パイプ6は、その一端6aが冷媒供給管4に嵌合し、他端6bが冷媒供給チューブ26と接続する。排出側接続パイプ7は、その一端7aが冷媒排出管5に嵌合し、他端7bが冷媒排出チューブ27と接続する。積層構造体10を筐体15に載置した後、積層構造体10の積層方向に沿ってパイプ継手9を冷媒供給管4と冷媒排出管5に差し込み、ボルト31を貫通孔8aに通し、筐体のネジ孔15bに螺合させる。ボルト31を締め込んでいくと、パイプ継手9がストッパ16に向かって前進し、パイプ継手9の先端、即ち、供給側接続パイプ6と排出側接続パイプ7の先端が加圧プレート14を介して端部の冷却プレート3aに積層方向の荷重を加える。加圧プレート14は剛性が高いので、1本のボルト31であっても積層構造体10をその積層方向に均一の力で荷重することができる。積層構造体10は、パイプ継手9とストッパ16に挟持され、積層方向に荷重を受けつつ筐体15に支持される。別言すれば、積層構造体10は、「供給側接続パイプ6及び排出側接続パイプ7」と、ストッパ16に挟持され、積層方向に荷重を受けつつ筐体15に支持される。パイプ継手9は、供給側接続パイプ6、排出側接続パイプ7、及び、それらを連結する板材8で構成されており、供給側接続パイプ6と排出側接続パイプ7が、積層構造体10の端部に直接に接するからである。
【0024】
積層構造体10は、ストッパ16とパイプ継手9の間で積層方向の荷重を受けつつ支持される。それゆえ、各半導体モジュール12はその両面で冷却プレート3a〜3gと密着する。半導体モジュール12と冷却プレート3a〜3gが密着するので、半導体モジュール12を効率よく冷却することができる。
【0025】
パイプ継手9の利点を説明する。パイプ継手9の供給側接続パイプ6、排出側接続パイプ7、及び、板材8は、アルミニウムよりも剛性が高い金属、例えば、ステンレス鋼で作られている。半導体積層ユニット2は、電気自動車に搭載される。電気自動車が走行すると、走行振動によって冷媒供給チューブ26、冷媒排出チューブ27が揺れる。チューブは供給側接続パイプ6と排出側接続パイプ7の他端(6b、7b)に接続しているので、チューブの揺れは供給側接続パイプ6と排出側接続パイプ7が受ける。他方、積層構造体10の端部の冷却プレート3aに連なる冷媒供給管4と冷媒排出管5は、供給側接続パイプ6と排出側接続パイプ7の一端(6a、7a)に嵌合している。供給側接続パイプ6と排出側接続パイプ7を含むパイプ継手9は、冷却プレートの材料であるアルミニウムよりも剛性が高い金属(例えばステンレス)で作られているとともに、筐体15に固定されている。それゆえ、チューブの振動はパイプ継手9と筐体15が吸収し、冷媒供給管4及び冷媒排出管5と冷却プレート3aとのつなぎ目に加わる応力が低減される。ここで、冷媒供給管4及び冷媒排出管5と冷却プレート3aとのつなぎ目は、別言すれば、冷媒供給管4/冷媒排出管5の付け根である。
【0026】
また、従来は、積層構造体をその積層方向に荷重するのに板バネを用いていたが、実施例の半導体積層ユニット2では板バネを使わずに積層構造体10をその積層方向に荷重することができる。それゆえ、実施例の半導体積層ユニット2は、従来のものよりも組み立て性に優れており、また、コンパクトである。
【0027】
次に、図3図6を参照して半導体積層ユニット2の組み立て方法(製造方法)を説明する。なお、図3図6では、図を見易くするために、筐体15(ストッパ16を含む)とパイプ継手9は断面で表し、ハッチングを施してある。まず、加圧プレート14を積層構造体10の冷媒供給管4と冷媒排出管5に嵌めて積層構造体10を筐体15に載置する(図3)。冷媒供給管4と冷媒排出管5は、筐体の一つの壁面に設けられたU字溝15aに嵌合する。また、積層構造体10の一方の端面をストッパ16に当接させる。積層構造体10の一方の端面は、冷却プレート3gの端面に相当する。
【0028】
次に、パイプ継手9の供給側接続パイプ6と排出側接続パイプ7を、積層構造体の冷媒供給管4と冷媒排出管5に嵌合させつつ、パイプ継手9を積層構造体10の積層方向に沿って、ストッパ16に向けて移動させる(図4)。次にボルト31を、積層構造体の積層方向に沿って、貫通孔8aに挿通し、筐体15のネジ孔15bに螺合させる(図5)。ボルト31を締めていくと、パイプ継手9がストッパ16に向けて前進する。そうすると、供給側接続パイプ6と排出側接続パイプ7の端面(図1における端部6a、7a)が加圧プレート14を介して積層構造体10をその積層方向に荷重する。別言すれば、積層構造体10は、ストッパ16とパイプ継手9(供給側接続パイプ6と排出側接続パイプ7)に挟持され、積層方向に荷重を受けつつ支持される。この工程が、嵌合工程と固定工程に相当する。最後に、冷媒供給チューブ26を供給側接続パイプ6に連結し、冷媒排出チューブ27を排出側接続パイプ7に連結して半導体積層ユニット2が完成する。固定工程では、ボルト31を締め付けていくにつれて、積層構造体10に荷重が加わる。ボルトを締め付けるという一つの作業で荷重と固定が同時に行われる。
【0029】
なお、図5図6では、理解を助けるために、供給側接続パイプ6の内面と冷媒供給管4の外面の間に隙間を描いてある。同様に、排出側接続パイプ7と冷媒排出管5の間にも隙間を描いてある。それらの隙間はなくてもよく、供給側接続パイプ6と冷媒供給管4、及び、排出側接続パイプ7と冷媒排出管5は、しっかりと嵌合するように作られていてもよい。また、供給側接続パイプ6と冷媒供給管4の間には、冷媒が漏れないようにシール材が配置されていてもよい。排出側接続パイプ7と冷媒排出管5の間でも同様である。
【0030】
実施例で説明した技術の留意点を述べる。実施例では、パイプ継手9を1本のボルト31で筐体15に固定した。パイプ継手9を固定するボルトは何本でもよい。例えば、供給側接続パイプ6の周囲で2本、排出側接続パイプ7の周囲で2本のボルトを使ってパイプ継手9を固定してもよい。
【0031】
積層構造体の一方を受けるストッパ16は、筐体の底面から立設する独立した壁の代わりに筐体の壁面を利用してもよい。また、筐体とは、ストッパ16とパイプ継手9を固定する部材を意味するので、必ずしも容器状でなくともよい。半導体積層ユニットがパワーコントロールユニットのケースなど、他のケースに収納される場合、半導体積層ユニットの筐体とは、ストッパ16とパイプ継手9を固定する平板であってもよい。
【0032】
実施例の半導体積層ユニットでは、隣接する冷却プレートの間に2個の半導体モジュールが横並びに配置されている。半導体積層ユニットは、隣接する冷却プレートの間に半導体モジュールを一つだけ配置し、実施例の半導体積層ユニットよりも積層数を倍増させた構造であってもよい。あるいは、半導体積層ユニットは、隣接する冷却プレートの間に3個以上の半導体モジュールを配置するものであってもよい。また、一つの半導体モジュールにモールドされる素子の数は、いくつであってもよい。
【0033】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0034】
2:半導体積層ユニット
3a〜3g:冷却プレート
4:冷媒供給管
5:冷媒排出管
6:供給側接続パイプ
7:排出側接続パイプ
8:板材
8a:貫通孔
9:パイプ継手
10:積層構造体
12:半導体モジュール
13:接続管
14:加圧プレート
15:筐体
15a:U字溝
16:ストッパ
26:冷媒供給チューブ
27:冷媒排出チューブ
31:ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6