特許第5835150号(P5835150)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5835150
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/12 20060101AFI20151203BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   H01G4/12 349
   H01G4/12 358
   H01G4/30 301E
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-177072(P2012-177072)
(22)【出願日】2012年8月9日
(65)【公開番号】特開2014-36140(P2014-36140A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2014年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079577
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 全啓
(74)【代理人】
【識別番号】100167966
【弁理士】
【氏名又は名称】扇谷 一
(72)【発明者】
【氏名】平田 朋孝
(72)【発明者】
【氏名】西村 仁志
(72)【発明者】
【氏名】磯田 信弥
(72)【発明者】
【氏名】小倉 丈承
(72)【発明者】
【氏名】内藤 正浩
【審査官】 松田 直也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/046554(WO,A1)
【文献】 特開2007−266223(JP,A)
【文献】 特開2009−246105(JP,A)
【文献】 特開2007−123835(JP,A)
【文献】 特開平03−133114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/00− 4/22
H01G 4/255−4/40
H01G 13/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体セラミック層と内部電極とが交互に積層された内層部と、前記内層部の外側に形成される内部電極のない誘電体セラミック層からなる外層部とを含む積層セラミックコンデンサであって、
前記内層部および前記外層部を構成する前記誘電体セラミック層は、CaおよびZrを含有するペロブスカイト型化合物と、SiおよびMnとを含有し、
前記内部電極は、前記誘電体セラミック層との共材としてMn酸化物を含有し、
前記外層部を構成する誘電体セラミックの平均粒径が前記内層部を構成する誘電体セラミックの平均粒径より小さく、
前記内部電極と前記誘電体セラミック層の界面近傍における誘電体セラミック中のSi/Mnモル比が、Si/Mnモル比≦15の範囲にある、積層セラミックコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積層セラミックコンデンサに関し、特にたとえば、Ca、Zrを含有する誘電体セラミックを用いた積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサは、誘電体セラミック層と内部電極とが積層された構造を有する。このような積層セラミックコンデンサのセラミック層に用いられる誘電体セラミック材料として、たとえば、主成分を[(CaXSr1-X)O]m[(TiYZr1-Y)O2]と表したとき、X、Yおよびmの値がそれぞれ、0≦X≦1、0≦Y≦0.10、0.75≦m≦1.04の範囲にある主成分と、この主成分に対し副成分としてMn酸化物をMnOに換算して0.2〜5mol%、Al酸化物をAl23に換算して0.1〜10mol%、および[(BaZCa1-Z)O]VSiO2で表され、0≦Z≦1、0.5≦V≦4.0の範囲の成分を0.5〜15mol%含有する非還元性誘電体セラミック材料が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
このような誘電体セラミック材料を用いて誘電体ペーストを作製し、誘電体ペーストを用いてセラミックグリーンシートが形成される。このセラミックグリーンシートに内部電極材料ペーストを印刷して積層することにより内層部を形成し、さらに内層部を挟むようにして内部電極材料ペーストを印刷していないセラミックグリーンシートが積層されて外層部が形成される。得られた積層体を所定形状に切断することにより、グリーンチップが形成される。そして、グリーンチップを焼成することにより、チップ焼結体が形成される。このチップ焼結体に外部電極用ペーストを塗布し、焼き付けることによって、積層セラミックコンデンサが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−335169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CaZrO3系誘電体セラミックを用いた積層セラミックコンデンサでは、BaTiO3系誘電体セラミックを用いた積層セラミックコンデンサに比べて、耐湿負荷試験などにおいて内部電極と誘電体セラミックの界面における剥がれ不良が発生しやすい。これは、BaTiO3に比べて、CaZrO3のほうが誘電体セラミックの線膨張係数と内部電極の線膨張係数の差が大きいため、焼成後の段階で内部電極と誘電体セラミックとの間に応力が生じるためである。
【0006】
また、特許文献1に示されているような(Ca,Sr,Ba)(Zr,Ti)O3系誘電体セラミックを用いた積層セラミックコンデンサでは、グリーンチップの焼成時に誘電体内において粒成長しやすく、内部電極に拘束される内層部に比べて、外層部のほうが平均粒径が大きくなりやすい。外層部の平均粒径が大きくなると、耐湿負荷試験等において粒子間の剥がれ不良が発生しやすい。耐湿負荷試験時の不良は、めっき液や水分が外部電極の欠陥や磁器粒界を浸食して侵入することにより生じていると考えられている。ここで、粒径が大きいほうが、粒径が小さいものに比べて磁器の残留応力が大きく、粒界が侵食された際に応力の開放が進みやすく、クラックが発生しやすいものと考えられる。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、耐湿性の良好な積層セラミックコンデンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、誘電体セラミック層と内部電極とが交互に積層された内層部と、内層部の外側に形成される内部電極のない誘電体セラミック層からなる外層部とを含む積層セラミックコンデンサであって、内層部および外層部を構成する誘電体セラミック層は、CaおよびZrを含有するペロブスカイト型化合物と、SiおよびMnとを含有し、内部電極は、誘電体セラミック層との共材としてMn酸化物を含有し、外層部を構成する誘電体セラミックの平均粒径が内層部を構成する誘電体セラミックの平均粒径より小さく、内部電極と誘電体セラミック層の界面近傍における誘電体セラミック中のSi/Mnモル比が、Si/Mnモル比≦15の範囲にある、積層セラミックコンデンサである。
【0009】
一般的に、誘電体セラミック層における平均粒径が小さいほうが、磁器の残留応力が小さく、腐食溶液などに対する耐性が向上する。したがって、外層部を構成する誘電体セラミックの平均粒径を小さくすることにより、耐湿性を向上させることができるものと考えられる。しかしながら、焼成後における誘電体セラミック層の平均粒径を小さくしつつ、焼結性を確保することは難しい。特に、平均粒径が小さい場合、内層部にポアが残存しやすく、高温負荷試験や耐湿負荷試験において不良が発生しやすくなる。また、ポアは誘電率低下の原因ともなる。そのため、内層部については、高誘電率を確保するという観点から、平均粒径が大きいほうが好ましい。これらのことから、内層部の平均粒径を大きくして焼結性を確保しながら、外層部の平均粒径を小さくして耐湿性を確保することが好ましい。
【0010】
また、一般的に、ガラスにおいてSi量が多いほど化学的安定性が向上することが知られているが、Ca、Zrを含有するペロブスカイト型化合物の粒界にSiを含む酸化物が形成される場合、Si量が多いほど、粒界、二次相などの化学的安定性が増し、例えば腐食性溶液などに対するセラミックの溶出の耐性が向上する。しかしながら、粒界、二次相などを含む誘電体の化学的安定性が向上するということは、内部電極と誘電体の反応も抑制されるということであり、内部電極と誘電体セラミック層との界面における接合強度が低下する。そのため、耐湿負荷試験などを行うと、界面剥がれによる不良が発生しやすい。一方、Mnは内部電極と誘電体セラミック層との界面結合を安定させる。この場合、内部電極の主成分は、NiまたはNi合金であることが好ましい。そのため、内部電極と誘電体セラミック層の界面近傍における誘電体セラミック中のSi/Mnモル比を一定値以下に制御することにより、誘電体セラミックの化学的安定性を向上させることができるとともに、内部電極と誘電体セラミックとの間の界面剥がれを防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、耐湿性の良好な積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【0012】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の積層セラミックコンデンサの一例を示す斜視図である。
図2図1に示す積層セラミックコンデンサの内部構造を示す図解図である。
図3図1に示す積層セラミックコンデンサを作製する方法を説明するための図解図である。
図4】実施例1における内層部の観察位置を示す図解図である。
図5】実施例1における外層部の観察位置を示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1はこの発明の積層セラミックコンデンサの一例を示す斜視図であり、図2はその内部構造を示す図解図である。積層セラミックコンデンサ10は、たとえば直方体状の基体12を含む。基体12は、複数の誘電体セラミック層14と内部電極16とが交互に積層するように形成されている。複数の内部電極16は、基体12の長手方向の中央部で対向し、隣接する内部電極16が基体12の対向する端部に引き出される。したがって、複数の内部電極16は、交互に基体12の対向する端部に引き出されている。また、基体12の幅方向において、内部電極16は誘電体セラミック層14の両端部から間隔を隔てた位置に形成される。
【0015】
基体12は、内部電極16が形成された内層部18と、内部電極16の形成されていない外層部20を含む。内層部18は、基体12の積層方向の中央部に形成され、外層部20は、内層部18を挟むようにして基体12の積層方向の両外側に形成される。さらに、基体12の対向する端部には、外部電極22が形成される。外部電極22は、基体12の端面から側面に回り込むように形成される。これらの外部電極22には、基体12の端部に引き出された内部電極16が接続される。したがって、基体12の両端部に形成された2つの外部電極22間に静電容量が形成される。
【0016】
誘電体セラミック層14は、CaおよびZrを含有するペロブスカイト型化合物と、SiおよびMnとを含む。ここで、外層部20における誘電体セラミック層14の平均粒径は、内層部18における誘電体セラミック層14の平均粒径より小さくなるように形成される。さらに、内部電極16と誘電体セラミック層14の界面近傍における誘電体セラミック中のSi/Mnモル比が、Si/Mnモル比≦15の範囲となるように形成される。
【0017】
この積層セラミックコンデンサ10を作製するために、図3に示すように、基体12を得るための積層体30が作製される。積層体30は、複数の長方形状のセラミックグリーンシート32を含む。セラミックグリーンシート32は、誘電体セラミック材料で構成されるスラリーをシート状に成形することによって形成される。セラミックグリーンシート上には、導電ペーストを印刷して内部電極16の形状の内部電極パターン34が形成される。複数の内部電極パターン34は、セラミックグリーンシート32の中央部で対向し、隣接するセラミックグリーンシート32において、反対側の端部に引き出される。
【0018】
これらの内部電極パターン34が形成されたセラミックグリーンシート32を積層し、さらにその両側に内部電極パターンが形成されていないセラミックグリーンシート32を積層圧着することにより、積層体30が形成される。得られた積層体30を焼成することにより、基体12が形成される。得られた基体12にバレル研磨を施し、基体12の両端部に導電ペーストを塗布して焼き付けることによって、外部電極20が形成される。必用に応じて、外部電極20上にNiめっき層やSnめっき層が形成される。
【0019】
積層セラミックコンデンサ10の作製過程において、内部電極パターン34が形成されたセラミックグリーンシート32の積層部が基体12の内層部18となり、内部電極パターンが形成されていないセラミックグリーンシート32の積層部が基体12の外層部20となる。
【0020】
この積層セラミックコンデンサ10では、基体12の外層部20における誘電体セラミック層14の平均粒径が内層部18における誘電体セラミック層14の平均粒径より小さい。そのため、外層部20における誘電体セラミックの残留応力が小さく、腐食性溶液等に対する耐性を向上させることができる。このように、積層セラミックコンデンサ10の耐湿性を向上させるために、外層部20における誘電体セラミック層14の平均粒径を小さくすることが効果的であると考えられる。
【0021】
しかしながら、焼成後の平均粒径を小さくしつつ焼結性を確保することは難しく、特に内層部18にポアが残存しやすい。ポアが残存すると、高温負荷試験や耐湿負荷試験などにおいて、不良が発生しやすくなる。また、ポアは誘電率低下の原因ともなる。さらに、内層部18については、高誘電率を確保するという観点からは、平均粒径が大きいほうが好ましい。そのため、内層部18の平均粒径を大きくして焼結性を確保しながら、外層部20の平均粒径を小さくすることが好ましい。さらに、誘電体セラミック層14にMnを添加することにより、Mnが誘電体セラミック中に拡散し、焼結性を向上させているものと考えられる。
【0022】
また、この積層セラミックコンデンサ10では、誘電体セラミック層14にSiを含有する添加物が含まれている。一般的に、ガラスにおいてはSi量が多いほど化学的安定性が向上することが知られている。Ca、Zrを含有するペロブスカイト型化合物の粒界にSiを含む酸化物が形成される場合、ガラスと同様に、Si量が多いほど誘電体セラミックの粒界、二次相などの化学的安定性が向上し、例えば腐食性溶液等に対する溶出の耐性が向上する。
【0023】
しかしながら、Siを含有する添加物が含まれることにより誘電体セラミックの化学的安定性が向上するのに対して、内部電極16と誘電体セラミック層14との反応は抑制され、内部電極16と誘電体セラミック層14との界面の接合強度が低下する。そのため、耐湿負荷試験などにおいて、界面剥がれによる不良が発生しやすくなる。しかしながら、誘電体セラミック層14にMnが含まれていることにより、誘電体セラミック層14と内部電極16との界面結合を安定させることができる。このとき、内部電極16と誘電体セラミック層14との界面近傍の誘電体セラミックのSi/Mnモル比が、Si/Mnモル比≦15の範囲に設定される。Si/Mnモル比がこの範囲にあることによって、誘電体セラミック層14の化学的安定性を向上させるとともに、誘電体セラミック層14と内部電極16との界面結合を安定させることができる。
【実施例1】
【0024】
誘電体セラミックを構成する主成分の素材として、純度99%以上のCaCO3、SrCO3、BaCO3、TiO2、ZrO2の各粉末を準備した。これらの材料を所定量秤量した後、ボールミルにより湿式混合し、その後、乾燥、解砕した。この粉末を大気中で900〜1300℃で仮焼した後、解砕して、CaおよびZrを含有するペロブスカイト型化合物を有する主成分粉末を得た。なお、主成分の製造方法は、固相法、水熱法など特に限定されず、素材も炭酸物、酸化物、水酸化物など特に限定されない。
【0025】
次に、添加物素材として、SiO2、MnCO3、Mの酸化物(Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、Vから選ばれる元素)の粉末を準備した。そして、添加物を所定量秤量した後、主成分粉末と添加物とをボールミルにより湿式混合し、その後、乾燥、解砕して原料粉末を得た。
得られた原料粉末の組成をICP発光分光分析にて確認した結果を表1および表2に示した。表1および表2中、wはSr/(Ca+Sr+Ba)のモル比、xはBa/(Ca+Sr+Ba)のモル比、yはTi/(Zr+Ti+Hf)のモル比、zはHf/(Zr+Ti+Hf)のモル比、mはZr、Ti、Hfの合計含有量1モル部に対するCa、Sr、Baの合計含有モル部、aはZr、Ti、Hfの合計含有量100モル部に対するSiの含有モル部、bはZr、Ti、Hfの合計含有量100モル部に対するMnの含有モル部、cはZr、Ti、Hfの合計含有量100モル部に対するMの含有モル部である。また、表1および表2に、各試料におけるMの種類を示した。なお、Hfは、原料粉末の作製や、その他の積層セラミックコンデンサの製造工程のいずれかの段階において、不純物として混入するものであるが、このような不純物の混入は、積層セラミックコンデンサの電気的特性上、問題となることはない。
【0026】
なお、表1および表2の中において、試料番号に「*」印を付したものは、本発明の範囲外のものである。表1および表2の組成は、仕込み組成であり、焼成後には、例えば添加物の一部が主成分に固溶していてもかまわない。また、混合過程においてYSZ(イットリア安定化ジルコニア)ボールをメディアとして用いた場合、ジルコニアが混入する等、秤量して添加するもの以外から成分が添加される場合もある。なお、得られた原料粉末をICP発光分光分析したところ、表1に示した調合組成とほとんど同一であることが確認された。
【0027】
得られた原料粉末に、ポリビニルブチラール系バインダおよびトルエン、エタノールなどの有機溶剤を加えてボールミルにより湿式混合し、スラリーを調整した。このスラリーをドクターブレード法によりシート成形し、セラミックグリーンシートを得た。その後、セラミックグリーンシート上にNiまたはCuを主体とする導電ペーストを印刷し、積層セラミックコンデンサの内部電極を構成するための内部電極パターンを形成した。導電ペーストには、金属粉末としてNiまたはCu粉末を用い、共材としてMn酸化物または主成分粉末と同成分の誘電体粉末を添加したもの、および共材を添加しないものを用いた。共材の添加量としては、導電ペースト中の金属成分に対して、1〜20質量%の範囲であることが好ましい。今回の実施例では、導電ペースト中の金属粉末がNiの場合、金属粉末に対する共材の添加量は13〜18質量%とし、導電ペースト中の金属粉末がCuの場合、金属粉末に対する共材の添加量は8〜12質量%とした。
【0028】
次に、内部電極パターンを形成したセラミックグリーンシートを、内部電極パターンが引き出されている側が互い違いになるように複数枚積層し、それを挟んで両側に内部電極パターンの形成されていないセラミックグリーンシートを複数枚積層して、セラミックグリーンシート積層体を得た。得られた積層体を、大気中において、200〜800℃の温度で加熱してバインダを燃焼させた後、酸素分圧logPO2=−8.0〜−14.0MPaの雰囲気中で、昇温速度3.33℃/min、最高温度1200〜1300℃の条件で焼成し、焼結体(基体)を得た。
【0029】
得られた基体をバレル研磨することで、基体の端面に内部電極を露出させて、この基体に外部電極Cuペーストを塗布した。外部電極Cuペーストを乾燥させた後、還元雰囲気中において900℃で外部電極を焼き付けた。さらに、バレルめっき法によって、外部電極上にNiめっき層を形成し、さらにその上にSnめっき層を形成した。
【0030】
このようにして得られた積層セラミックコンデンサのチップの外径寸法は、幅1.2mm、長さ2.0mm、厚さ0.6mmであり、誘電体セラミック層の平均厚みは3μmであった。また、有効誘電体セラミック層の総数は100層であった。
【0031】
得られた積層セラミックコンデンサに関して、基体の内層部と外層部の平均粒径、高温負荷試験1000時間後の不良率、耐湿負荷試験1000時間後の不良率、加速耐湿負荷試験(PCBT)250時間後の不良数について評価した。なお、内層部用のセラミックグリーンシートと外層部用のセラミックグリーンシートについて、これらを作製するための原料の粉砕度を変えたり、導電ペーストに含まれる共材の種類や添加量を変えることによって、内層部と外層部の平均粒径に差をつけた。たとえば、導電ペーストに含まれる共材がMn酸化物の場合、焼結時にMnが内層部中に拡散し、外層部に比べて内層部のほうが焼結性が向上し、平均粒径に差が生じる。そして、その結果を表1に示した。
【0032】
平均粒径は、以下の方法で測定した。試料(積層セラミックコンデンサ)の長さ方向をL方向とし、幅方向をW方向とし、厚さ方向をT方向としたとき、L方向の長さの1/2程度の位置においてWT断面を露出するように試料を破断した。そして、セラミックの粒界を明確にするため、破断した試料に熱処理を施した。熱処理の温度は、粒成長しない温度で、かつ粒界が明確になる温度とし、本実施例においては1000℃で実施した。
【0033】
次に、粒径の測定を実施した。内層部の粒径については、図4に示すように、WT断面におけるW方向およびT方向のそれぞれ1/2程度の位置(チップの中央付近)で、走査型電子顕微鏡(SEM)にて誘電体セラミック層の粒径を10000倍で観察した。また、外層部の平均粒径は、図5に示すように、外層部のW方向およびT方向のそれぞれ1/2程度の位置(外層部の中央付近)で、同様の測定を行うことにより実施した。得られたSEM画像から無作為に各領域50個の粒子を抽出し、画像解析により各粒子の粒界の内側部分の面積を求めて円相当径を算出し、それを各結晶粒子の粒径と仮定した。
【0034】
このような粒径の測定を各条件につき3個の積層セラミックコンデンサについて行った。したがって、データ数は、50個の結晶粒子×3個のチップ=150データとなる。各結晶粒子の形状は前記粒径を直径とする球であると仮定し、各結晶粒子の体積を前記球の体積として算出した。各条件の平均粒径は、この粒径と体積より体積平均粒径として算出した。
【0035】
高温負荷試験は、72個の試料を用い、温度150℃の雰囲気において、試験電圧100Vを印加して1000時間試験を行い、その後の絶縁抵抗を測定した。そして、絶縁抵抗が1011Ω以下のものを不良として判定し、不良の発生率を求めた。
【0036】
耐湿負荷試験は、72個の試料を用い、温度70℃、湿度95%RHの雰囲気において、試験電圧25Vを印加して1000時間試験を行い、その後の絶縁抵抗を測定した。そして、絶縁抵抗が1011Ω以下のものを不良として判定し、不良の発生率を求めた。
【0037】
加速耐湿負荷試験(PCBT)は、100個の試料を用い、温度121℃、湿度100%RH、気圧202.65kPaの雰囲気において、試験電圧50Vを印加して250時間試験を行い、内部電極と誘電体セラミックの界面が剥がれたチップの数を測定した。剥がれの評価は、超音波探傷(85MHz)によって行った。
【0038】
また、内部電極と誘電体セラミックの界面のSi/Mnモル比の測定をXPS分析によって行った。まず、高温負荷試験等を行っていない積層セラミックコンデンサについて、内部電極の形成されていない側面部および一方の外部電極にのみ接続された内部電極が存在する端面部を乾式研磨によって除去して、全ての内部電極が積層された中央部分のみを残した。その後、研磨後に残った部分について、積層方向の中央部分において、機械的に内部電極と誘電体セラミックの界面で剥離して、剥離されたLW面を得た。その後、誘電体セラミックが露出した側の剥離面について、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)分析(PHYSICAL ELECTRONICS 社製 Quantum2000/測定領域100μmφ)のSi2p、Mn2pスキャンスペクトルからSi、Mnを定量した。本評価方法での検出深度は5nm以下である。Si/Mnモル比の測定は、各条件につき、チップ数2個、測定点はLW剥離面中央部+無作為に4箇所の計5箇所で行い、その平均値からSi/Mnモル比を算出した。そして、これらの試験の結果を表1および表2に示した。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
表1から、基体の外層部の平均粒径が内層部の平均粒径より小さく、内部電極と誘電体セラミックの界面近傍における誘電体セラミックのSi/Mnモル比がSi/Mnモル比≦15の範囲、つまり本発明の範囲内であれば、高温負荷試験での不良発生はなく、内部電極と誘電体セラミックの界面における接合性が良好で、耐湿負荷試験での不良発生数やPCBTによる剥がれ不良数が低減されることがわかる。
【0042】
それに対して、基体の外層部の平均粒径が内層部の平均粒径より大きい場合や、Si/Mnモル比が15を超える場合、高温負荷試験や耐湿負荷試験で不良率が多くなったり、PCBT後の剥がれ不良数が多くなっている。このような結果が得られるのは、上述のような理由によるものと考えられる。
【0043】
なお、本発明のような構造を実現する方法としては、内層部作製用セラミックグリーンシートおよび外層部作製用セラミックグリーンシートの原料粉粒径や組成を異なるようにするなどの方法が考えられる。
【符号の説明】
【0044】
10 積層セラミックコンデンサ
12 基体
14 誘電体セラミック層
16 内部電極
18 内層部
20 外層部
22 外部電極
図1
図2
図3
図4
図5