(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、背圧制御によってカソードガスの供給圧力を上昇させると、圧力上昇にともなって高温になったカソードガスが燃料電池に供給され、燃料電池が備える電解質膜が乾燥し、出力性能の低下や電解質膜の劣化が生じる虞があると指摘されていた。また、燃料電池に供給される手前で、インタークーラなどの冷却装置によってカソードガスを冷却する場合においても、背圧上昇によって急激にカソードガスが高温になった場合には、冷却装置で冷却される前に燃料電池にカソードガスが供給されてしまうといった問題も指摘されていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本発明の第一の形態は、燃料電池システムであって、燃料電池と、カソードガスを供給するガス供給部と、前記ガス供給部から前記燃料電池に前記カソードガスを流通させる供給流路と、前記燃料電池から排出されるカソードオフガスを流通させる排出流路と、前記カソードオフガスの背圧を調整する背圧調整部と、前記ガス供給部から前記燃料電池を介さずに前記排出流路に前記カソードガスを流通させるバイパス流路と、前記ガス供給部から供給されるカソードガスを、前記供給流路または前記バイパス流路のいずれか一方に流通させるように、前記二つの流路の切り替えを行う切替部と、前記ガス供給部から供給された前記カソードガスの温度を検知する温度検知部と、前記背圧調整部によって前記背圧を制御するとともに、前記温度検知部が前記カソードガスの温度が所定温度を上回ったことを検知した場合に、前記バイパス流路に前記カソードガスが流通するように前記切替部を制御する制御部と、を備える燃料電池システムとして提供される。
(
2)本発明の
第二の形態によれば、燃料電池システムが提供される。この燃料電池システムは、燃料電池と;カソードガスを供給するガス供給部と;前記ガス供給部から前記燃料電池に前記カソードガスを流通させる供給流路と;前記燃料電池から排出されるカソードオフガスを流通させる排出流路と;前記カソードオフガスの背圧を調整する背圧調整部と;前記ガス供給部から前記燃料電池を介さずに前記排出流路に前記カソードガスを流通させるバイパス流路と;前記ガス供給部から供給されるカソードガスを、前記供給流路または前記バイパス流路のいずれか一方に流通させるように、前記二つの流路の切り替えを行う切替部と;前記ガス供給部から供給された前記カソードガスの温度を検知する温度検知部と;前記背圧調整部が前記背圧を上昇させ、前記温度検知部が前記カソードガスの温度が所定温度を上回ったことを検知した場合に、前記バイパス流路に前記カソードガスが流通するように前記切替部を制御する制御部と;を備える。この形態の燃料電池システムによると、背圧を上昇させることによってカソードガスが所定温度を上回って上昇した場合に、燃料電池をバイパスさせてカソードガスを流通させる。従って、高温のカソードガスを燃料電池に供給することを回避することができる。
【0006】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、燃料電池、燃料電池の運転方法、燃料電池車両、燃料電池車両の制御方法などの形態で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
(A1)燃料電池の構成:
図1は、本発明の第1実施形態としての燃料電池システム10の構成を説明する説明図である。燃料電池システム10は、燃料電池によって発電した電力を動力源として走行する燃料電池車両(以下、単に車両とも呼ぶ)に搭載される電源供給システムである。その他、燃料電池システム10を家庭用または商業用の発電システムとして適用するとしてもよい。本説明においては、主に燃料電池システム10におけるガス供給系統について説明するとともに、特にカソードガス供給系統を中心に説明をする。
【0009】
燃料電池システム10は、燃料電池20と、カソードガス供給系統30と、アノードガス供給系統50と、冷却系統60と、制御部70とを備える。燃料電池20は、酸化ガス(カソードガス)と燃料ガス(アノードガス)とによる電気化学反応によって発電する固体高分子型の燃料電池である。燃料電池20は、電解質膜の両側に触媒電極およびセパレータを積層した燃料電池単セルを、所定の方向に複数積層したスタック構造を有する。本実施形態では、カソードガスは空気であり、アノードガスは水素ガスである。
【0010】
カソードガス供給系統30は、燃料電池20へカソードガス(空気)を供給するガス供給系統である。カソードガス供給系統30は、ガスが流通する配管として、配管32,33,36と、第1切替配管34と、第2切替配管35とを備える。また、カソードガス供給系統30は、配管に流通するガスを制御するための機器として、コンプレッサ41と、流量センサ42と、インタークーラ43と,温度センサ44と、三方弁45と、圧力センサ46と、背圧弁47とを備える。図示するように、これら機器(コンプレッサ41〜背圧弁47)は制御部70によって動作が制御されている。また、制御部70は、燃料電池20の発電による出力を監視するとともに、カソードガス供給系統30が有する各機器を制御することによって、燃料電池20の出力制御を行う。
【0011】
配管32は、外部とコンプレッサ41とを連通する配管である。コンプレッサ41は、配管32を介して外部からカソードガス(空気)を取り込み、圧縮して、配管33に供給する。流量センサ42は、コンプレッサ41によって配管33に供給されるカソードガスの流量を計測する。制御部70は、流量センサ42から流量の値を取得し、フィードバック制御によって、コンプレッサ41から配管33に供給するカソードガスの流量を制御する。
【0012】
配管33はインタークーラ43を介して三方弁45に接続されている。インタークーラ43は、配管33を流通するカソードガスを冷却する。インタークーラ43の内部には、冷却系統60から供給される冷却水が循環しており、インタークーラ43はこの冷却水によって配管33に流通するカソードガスを冷却する。また。配管33には、温度センサ44が設置されており、配管33を流通するカソードガスの温度(以下、入口ガス温度とも呼ぶ)を計測する。制御部70は、温度センサ44から入口ガス温度の値を取得し、フィードバック制御によって、インタークーラ43を制御する。このような制御によって、制御部70は、配管33を流通するカソードガスのガス温度の制御を行う。
【0013】
三方弁45は、配管33を流通するカソードガスを、第1切替配管34または第2切替配管35のいずれか一方に流通させる切替弁である。三方弁45の切替動作は、後述するカソードガス供給処理によって制御部70が行う。第1切替配管34は、カソードガスを燃料電池20に供給する配管である。第1切替配管34を介して燃料電池20に供給されたカソードガスは、アノードガス供給系統50によって燃料電池20に供給されたアノードガスとの電気化学反応によって発電に供され、カソードオフガスとして配管36、背圧弁47を介して外部に排出される。一方、第2切替配管35は、燃料電池20をバイパスして配管36に接続される配管である。第2切替配管35を流通したカソードガスは、配管36、背圧弁47を介して外部へ排出される。
【0014】
配管36に設置された圧力センサ46は、配管36を流通するカソードオフガスの背圧を計測する。背圧弁47は、弁の開度によって背圧を調整する調整弁である。制御部70は、圧力センサ46から取得した背圧の値に基づいて背圧弁47の開度を調整することによって背圧の制御を行う。一般的に、燃料電池の特性として、カソードガスの供給圧力を高くすると発電性能が高くなることが知られている。例えば、燃料電池に対する要求出力が高い場合には、背圧弁47を閉める方向に制御(以下、閉制御とも呼ぶ)することによって、カソードガスの供給圧力を上昇させ、燃料電池からの出力を増加させることができる。背圧制御によって燃料電池の出力を制御する技術については、公知の技術であるので(例えば、上記特許文献1)、説明は省略する。
【0015】
アノードガス供給系統50は、燃料電池20へアノードガスを供給するためのガス供給系統である。アノードガス供給系統50は、水素タンク51と、配管52,53とを備える。水素タンク51のアノードガス(水素ガス)は、配管52を介して燃料電池20に供給される。燃料電池20に供給されたアノードガスは、カソードガス供給系統30によって燃料電池20に供給されたカソードガスとの電気化学反応により発電に供され、アノードオフガスとして配管53を介して外部に排出される。その他、アノードガス供給系統50は、アノードオフガスに含まれる水素ガスをアノードガスとして再利用するためのガス流通システム(図示省略)を有している。
【0016】
冷却系統60は、燃料電池20およびインタークーラ43に冷却水を循環させ冷却するためのシステムである。冷却系統60は、配管61〜64と、ポンプ65と、ラジエータ66と、ロータリー弁67と、温度センサ68とを備える。配管61〜64には冷却水が流通している。ポンプ65は、冷却水に圧力を加え、各配管に冷却水を循環させる。配管61は、燃料電池20内を連通しており、配管61を循環する冷却水は燃料電池20を冷却する。配管63,64は、インタークーラ43に冷却水を循環させるための配管である。
【0017】
ラジエータ66は、燃料電池20およびインタークーラ43の冷却によって温度が上昇した冷却水を冷却する。ラジエータ66によって冷却された冷却水は、再び配管61〜64を循環する。ロータリー弁67は、その開度によって、燃料電池20およびインタークーラ43への冷却水の循環流量を調整する。ロータリー弁67の開度は制御部70によって制御される。温度センサ68は、配管61を流通する冷却水の温度を計測する。制御部70は、温度センサ68から取得した温度に基づいて、冷却水の温度を管理する。以上説明した構成によって、燃料電池システム10は発電を行う。
【0018】
(A2)カソードガス供給処理:
次に、制御部70が行うカソードガス供給処理について説明する。カソードガス供給処理は、制御部70が、カソードガス供給系統30が備える各機器を制御することによって、燃料電池20に供給されるカソードガスを制御する処理である。
図2は、カソードガス供給処理の流れについて説明するフローチャートである。運転者の操作によって車両の電源スイッチ(図示省略)がオンになると、制御部70は、カソードガス供給処理を開始する。制御部70は、カソードガス供給処理を開始すると、コンプレッサ41を動作させて、燃料電池20にカソードガスの供給を行う(ステップS102)。このとき、制御部70は、三方弁45を制御し、初期状態として第1切替配管34を用いて燃料電池20にカソードガスを供給する。
【0019】
カソードガスの供給開始後、制御部70は、車両の動力源として要求される電力量に応じて、背圧弁47の開度を制御する背圧制御を行う(ステップS104)。具体的には、車両の運転者によるアクセル踏込量に応じて背圧弁47の開度を制御し、燃料電池20の出力を制御する。制御部70は、燃料電池20の出力を上げる場合には、背圧弁47を閉制御し背圧を上げる(以下、背圧上昇制御とも呼ぶ)。逆に、燃料電池20の出力を下げる場合には、背圧弁47を開制御し背圧を下げる。
【0020】
背圧制御開始後、制御部70は、温度センサ44から入口ガス温度の値を取得する。制御部70は、入口ガス温度の値によって三方弁45を制御し、第1切替配管34を介して燃料電池20にカソードガスを供給するか、第2切替配管35によって燃料電池20をバイパスしてカソードガスを流通させるかの判断を行う。具体的には、制御部70は、取得した入口ガス温度が、所定値α以下の場合には(ステップS106:NO)、三方弁45を制御し第1切替配管34を介して燃料電池20にカソードガスを供給する(ステップS108)。本実施形態の場合、初期状態として第1切替配管34を用いるように三方弁45を制御しているので(ステップS102参照)、第1切替配管34によって供給すると判断した場合には、三方弁45の実際の動作は伴わない。
【0021】
一方、入口ガス温度が所定値αより大きい場合には(ステップS106:YES)、制御部70は、三方弁45によって、第2切替配管35によって燃料電池20をバイパスしてカソードガスを流通させる(ステップS110)。制御部70は、このようなステップS102〜ステップS110の処理を、車両の電源スイッチがオフになるまで繰り返し行う(ステップS112)。このようにして制御部70はカソードガス供給処理を行う。なお、第2切替配管35によって燃料電池20をバイパスしてカソードガスを流通させている期間は、車両に必要な電力は、車両が別途備えるバッテリー(図示省略)から供給を行う。
【0022】
次に、本実施形態におけるカソードガス供給処理を、グラフによって説明する。
図3は、カソードガス供給処理を行った際の、背圧と入口ガス温度との関係を示すグラフである。グラフの横軸は時間を表す。図示した「CA背圧」は、カソードオフガスの背圧を示す。CA背圧は圧力センサ46で計測した圧力値である。入口ガス温度は、温度センサ44で計測した値である。
【0023】
上述したように、制御部70がカソードガス供給処理を開始した初期状態は、第1切替配管34によって燃料電池20にカソードガスの供給を行う。制御部70が燃料電池20の出力を上げるために背圧上昇制御を開始すると、背圧は上昇する。背圧が上昇すると、配管33に流通するカソードガスの供給圧力も上昇する。カソードガスは、圧力の上昇によって温度が上昇する。
【0024】
制御部70は、温度センサ44によって入口ガス温度の上昇を検知し、インタークーラ43を制御することによってカソードガスの冷却を行う。このときカソードガスの温度上昇に対してインタークーラ43による冷却の応答が遅い場合、カソードガスの入口ガス温度は急上昇する。そして、制御部70は、温度センサ44によって入口ガス温度がαを上回ったことを検知した場合、三方弁45を制御し、第2切替配管35によって燃料電池20をバイパスしてカソードガスを流通させる。
【0025】
その後、インタークーラ43によって安定的にカソードガスの冷却が行われると、カソードガスの温度は下降する。制御部70は、温度センサ44によって入口ガス温度がα以下になったことを検知すると、三方弁45を制御し、第1切替配管34によって燃料電池20にカソードガスの供給を行う。
【0026】
以上説明したように、燃料電池システム10は、カソードガス供給処理における背圧上昇制御によって、カソードガスの入口ガス温度がαを上回った場合に、カソードガスの流通経路を第1切替配管34から第2切替配管35に切り替える。そして、燃料電池20をバイパスしてカソードガスを流通させる。従って、背圧上昇制御によって一時的に高温になったカソードガスを燃料電池20に供給することを回避することができる。結果として、燃料電池の劣化および性能低下を抑制することができる。
【0027】
B.変形例:
なお、この発明は上記の実施形態や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
(B1)変形例1:
上記実施形態においては、第1切替配管34と第2切替配管35との切り替えは、三方弁を1つを用いて行ったが、それに限ることなく、例えば、第2切替配管35と配管36との接続部に、さらに三方弁を備えるとしてもよい。また、逆止弁を2つを用いて切り替えるとしてもよい。このようにしても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0028】
(B2)変形例2:
上記実施形態においては、背圧調整部として、背圧弁47を採用したが、それに限ることなく、他の方法によって背圧を制御するとしてもよい。例えば、流路断面積を調整可能な配管を配管36の一部に採用するとしてもよい。その他、流路断面積が異なる複数の配管を配管36に一部に採用し、これらの配管を切り替えてカソードオフガスを流通させることによって、背圧を制御するとしてもよい。
【0029】
(B3)変形例3:
上記実施形態においては、入口ガス温度を温度センサ44によって実際に計測して、所定値αを上回ったか否かを検知したが、それに限ることなく、背圧上昇制御を開始した時点で入口ガス温度が上昇することを推定して、三方弁45を制御して、第2切替配管35にカソードガスが流通するように制御してもよい。その他、背圧上昇制御開始から所定時間経過後に、三方弁45を制御して、第2切替配管35にカソードガスが流通するように制御してもよい。
【0030】
(B4)変形例4:
上記実施形態においては、三方弁45によって、第1切替配管34か第2切替配管35のいずれか一方のみにカソードガスが流通するように制御したが、それに限ることなく、例えば、入口ガス温度がαを上回った場合に、配管33を流通するカソードガスの80%が第2切替配管35を流通し、20%が第1切替配管34を流通するように三方弁45を制御するとしてもよい。すなわち、入口ガス温度がαを上回った場合に、配管33を流通するカソードガスの少なくとも一部が第2切替配管35に流通するように三方弁45を制御するとしてもよい。