特許第5835165号(P5835165)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5835165スチールコードおよびゴム製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5835165
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】スチールコードおよびゴム製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D07B 1/16 20060101AFI20151203BHJP
   B65G 15/34 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   D07B1/16
   B65G15/34
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-196760(P2012-196760)
(22)【出願日】2012年9月7日
(65)【公開番号】特開2014-51758(P2014-51758A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2014年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】末藤 亮太郎
【審査官】 佐藤 玲奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−017388(JP,A)
【文献】 特開2005−248374(JP,A)
【文献】 特開2008−285785(JP,A)
【文献】 特開2003−294024(JP,A)
【文献】 特表2004−522864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D07B 1/00 − D07B 9/00
B65G 15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯ストランドの外周面に複数本の側ストランドを撚り合わせた状態のストランド構造のスチールコードにおいて、前記芯ストランドの外周面が不織布からなる緩衝材により覆われた状態であり、この不織布の目付け量が10g/m2以上40g/m2以下であることを特徴とするスチールコード。
【請求項2】
前記緩衝材の融点が160℃以下である請求項1に記載のスチールコード。
【請求項3】
前記緩衝材が芯ストランドにスパイラル状に巻き付けられた状態になっている請求項1または2に記載のスチールコード。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のスチールコードが未加硫ゴム部材に埋設された状態のゴム成形体を、前記緩衝材の融点以上の温度で加硫することを特徴とするゴム製品の製造方法。
【請求項5】
前記ゴム製品がコンベヤベルトであり、前記スチールコードが心体として前記未加硫ゴム部材に埋設される請求項4に記載のゴム製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチールコードおよびゴム製品の製造方法に関し、さらに詳しくは、加硫工程での加熱によるコード強力の低下を抑制することができるスチールコードおよびゴム製品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤ、コンベヤベルト、ゴムホース等のゴム製品には、補強材としてスチールワイヤを撚り合わせたスチールコードが使用されている。例えば、芯ストランドの外周面に複数本の側ストランドを撚り合わせたストランド構造のスチールコードが使用される(例えば、特許文献1参照)。これらゴム製品を製造する際には、補強材となるスチールコードが未加硫ゴム部材に埋設された成形体を形成し、次いで、この成形体を加硫工程において所定温度で加熱しつつ所定圧力で加圧して未加硫ゴムを加硫する。
【0003】
ストランド構造のスチールコードの場合、加硫工程での加熱によって脆くなると、せん断切れが生じ易くなり、コード強力が低下するという問題があった。このコード強力の低下に対応するためにコードを大径化すると、コードの重量アップ、屈曲性の低下等の新たな問題が生じる。そのため、加硫工程での加熱によるコード強力の低下を抑制できるストランド構造のスチールコードが要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−36539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、加硫工程での加熱によるコード強力の低下を抑制することができるスチールコードおよびゴム製品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明のスチールコードは、芯ストランドの外周面に複数本の側ストランドを撚り合わせた状態のストランド構造のスチールコードにおいて、前記芯ストランドの外周面が不織布からなる緩衝材により覆われた状態であり、この不織布の目付け量が10g/m2以上40g/m2以下であることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のゴム製品の製造方法は、上記スチールコードが未加硫ゴム部材に埋設されたゴム成形体を、前記緩衝材の融点以上の温度で加硫することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のスチールコードによれば、芯ストランドの外周面が不織布からなる緩衝材により覆われた状態になっているので、芯ストランドと側ストランドとの間に緩衝材が介在して両者間に作用するせん断応力が緩衝材によって吸収されて低減する。それ故、加硫工程での加熱によってコードが脆くなっても、せん断切れが生じ難くなり、コード強力の低下を抑制できる。
【0009】
ここで、例えば、前記緩衝材の融点が160℃以下である仕様にする。前記緩衝材が芯ストランドにスパイラル状に巻き付けられた状態になっている仕様にすることもできる。
【0010】
本発明のゴム製品の製造方法によれば、上記のスチールコードが未加硫ゴム部材に埋設されたゴム成形体を、前記緩衝材の融点以上の温度で加硫するので、上記したスチールコードにより得られる効果に加えて、加硫後には緩衝材が溶融して加硫ゴムと渾然一体となり、良好な相溶性が得られる。それ故、加硫ゴムとスチールコードの接着性や接着部分の耐久性が良好に保たれる。
【0011】
ここで、例えば、前記ゴム製品がコンベヤベルトであり、前記スチールコードが心体として前記未加硫ゴム部材に埋設されたゴム成形体を、前記緩衝材の融点以上の温度で加硫する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のスチールコードを例示する横断面図である。
図2図1に示すスチールコードに作用するせん断応力を例示する説明図である。
図3】芯ストランドの外周面を緩衝材により被覆する工程を例示する説明図である。
図4】本発明のゴム製品の製造方法を例示する説明図である。
図5図4により製造されたコンベヤベルトの平面図である。
図6図5のスチールコード周辺を模式的に例示する拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のスチールコードおよびゴム製品の製造方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0014】
図1に例示するように、本発明のスチールコード1は、芯ストランド2の外周面に複数本の側ストランド3を撚り合わせたストランド構造である。芯ストランド2は複数本のスチールワイヤからなる素線2aを撚り合わせて形成されている。それぞれの側ストランド3は、複数本のスチールワイヤからなる素線3aを撚り合わせて形成されている。それぞれの素線2a、3aの外径は0.2mm〜1.0mm程度である。
【0015】
この実施形態のスチールコード1は7×7構造になっている。スチールコード1は7×7構造に限らずストランド構造であればよく、その他に例えば、7×19構造、19+7×7構造、7×W(19)構造等を用いることもできる。
【0016】
芯ストランド2の外周面は不織布からなる緩衝材4により覆われている。不織布の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン酢酸ビニルを例示できる
【0017】
ストランド構造のスチールコード1では、図2に例示するように、芯ストランド2と側ストランド3の対向する素線2a、3aどうしの間でせん断応力Fが作用する。本発明では、芯ストランド2の外周面は全面的に緩衝材4により被覆されている。そのため、芯ストランド2と側ストランド3との間に緩衝材4が介在して両者が直接接触しない。この構造により、対向する両者の素線2a、3aの間に作用するせん断応力Fが緩衝材4によってある程度吸収されて低減する。
【0018】
緩衝材4は、芯ストランド2の外周面を全面的に覆うことができれば、被覆形態は特に限定されない。例えば、図3に示すように、長尺の緩衝材4を芯ストランド2の外周面にスパイラル状に巻き付けて被覆すると製造効率がよい。その他に、所定長さの緩衝材4を海苔巻の海苔のように芯ストランド2の外周面に巻き付けることもできる。
【0019】
このスチールコード1を用いてゴム製品を製造する方法を、コンベヤベルトを製造する場合を例にして説明する。
【0020】
まず、図4に例示するゴム成形体7を成形する。このゴム成形体7では、上カバーゴム6a(未加硫ゴム部材)と下カバーゴム6b(未加硫ゴム部材)の間に心体9となるスチールコード1が挟まれている。多数のスチールコード1は、ゴム成形体7の長手方向に引き揃えられた状態で、上カバーゴム6aと下カバーゴム6bの間に埋設されている。一般的には、スチールコード1を引き揃えて形成された心体9の層と、上カバーゴム6aおよび下カバーゴム6bとの層間には、接着用未加硫ゴムが介設される。
【0021】
このゴム成形体7を、加硫モールド10の上型10aおよび下型10bの間に配置して、所定温度で加熱しつつ所定圧力で加圧して未加硫ゴム部材を加硫する。この加硫工程を行なうことにより、図5に例示するコンベヤベルト8が製造される。コンベヤベルト8では、ベルト幅方向に所定間隔で配置された多数のスチールコード1がベルト長手方向に延設される。
【0022】
この加硫工程での加熱によって、スチールコード1は当初よりも脆くなる。そのため、緩衝材4を設けていない場合は、芯ストランド2と側ストランド3との間に作用するせん断応力Fによって、スチールコード1の破壊モードとしてはせん断切れが支配的になり、コード強力が低下する。本発明では、加硫工程での加熱によってスチールコード1が脆くなっても、作用するせん断応力Fが緩衝材4によってある程度吸収されて低減する。これによりコード強力の低下を抑制することが可能になっている。
【0023】
これに伴って、同じコード強力を得る場合にはスチールコード1のコードを小径化することが可能になる。それ故、スチールコード1、ひいては、ゴム製品の軽量化に寄与することになる。コンベヤベルト8の場合では、張設される際のテンションを負担する心体9のコード強力の低下が抑制されるので極めて有益である。また、スチールコード1の小径化によって耐屈曲性(繰り返し屈曲に対する耐久性)が向上する。
【0024】
不織布からなる緩衝材4の場合、その不織布の目付け量は、例えば、10g/m2以上40g/m2以下にすることが好ましい。目付け量が10g/m2未満では、せん断応力Fの緩衝効果が小さくなってコード強力の低下を十分に抑制し難くなる。目付け量が40g/m2超では、スチールコード1(芯ストランド2)と加硫ゴムとの接着性に悪影響が生じ易くなる。また、加硫工程において、芯ストランド2と側ストランド3とのすき間に未加硫ゴムが浸透し難くなる。
【0026】
また、加硫工程での加熱温度は、緩衝材4の融点以上の温度にすることが好ましい。これにより、図6に例示するように、加硫後には緩衝材4が溶融して加硫ゴムRと渾然一体となり、良好な相溶性が得られる。それ故、加硫ゴムRとスチールコード1の接着性や接着部分の耐久性が良好に保たれる。また、芯ストランド2と側ストランド3とのすき間に未加硫ゴムが浸透し易くなって、このすき間を加硫ゴムRによって充填するには有利になる。
【0027】
緩衝材4として不織布を用いると、未加硫ゴムが緩衝材4を通過して、比較的、芯ストランド2と側ストランド3とのすき間に浸透し易くなる
【0028】
加硫工程での加熱温度は、ゴム製品の大きさ等によって異なるが、一般的にゴム製品を加硫する際の加熱温度は140℃〜160℃程度である。したがって、緩衝材4の融点が160℃以下であれば、緩衝材4を加硫工程での加熱によって溶融させることができる。
【0029】
本発明により製造するゴム製品としては、コンベヤベルト8に限らず、タイヤ、ゴムホース、マリンホース、防舷材など、スチールコード1が補強材として埋設される種々のゴム製品を例示できる。スチールコード1のコード強力の重要度が相対的に高いコンベヤベルト8や重荷重用タイヤ(大型の建設機械用タイヤ等)の製造に本発明を適用するのは特に好適である。
【実施例】
【0030】
図1に例示した構造と同構造のスチールコード(実施例1〜5)と、このスチールコードから緩衝材をなくしたスチールコード(従来例)とをそれぞれ、同条件で未加硫ゴム(NR/SBR系)に埋設して20分間加硫し、加硫後にスチールコードを取出して試験サンプルとし、コード強度、切断伸び、空気透過性を測定した。その結果を表1に示す。表1には、従来例のスチールコードの加硫する前のデータを参考例として記載した。それぞれの試験サンプルのコード外径は4mmであり、緩衝材にはポリプロピレン製の不織布(融点160℃)を用いた。この不織布の緩衝材は芯ストランドの外周面にスパイラル状に巻き付けられものである。
【0031】
[コード強力] [切断伸び]
それぞれの試験サンプルをJIS G3510:1992に準拠して破断するまで長手方向に引張り、破断時における荷重をコード強力、破断時における伸びを切断伸びとした。
【0032】
[空気透過性]
それぞれの試験サンプルをオーストラリア規格(AS−1333)による「空気透過性試験方法」に準拠して、試験サンプルの長手方向の一端部から100kPaの空気圧を圧入し、空気圧を圧入した後の60秒間に他端部側に透過した空気圧を測定し、その結果を表1に記載した。この空気圧が小さいほど耐空気透過性に優れ、スチールコードに対するゴム浸透性が優れていることを示す。尚、5kPa未満であれば十分な耐空気透過性を有していると判断できる。
【0033】
【表1】
【0034】
表1の結果から、実施例1〜5は従来例に比してコード強力の低下を抑制できることが分かる。また、空気透過性も実用上問題がないレベルを有していることが分かる。
【符号の説明】
【0035】
1 スチールコード
2 芯ストランド
2a 素線
3 側ストランド
3a 素線
4 緩衝材
5 コンベヤベルト
6a 上カバーゴム
6b 下カバーゴム
7 ゴム成形体
8 コンベヤベルト(ゴム製品)
9 心体
10 加硫モールド
11a 上型
11b 下型
R 加硫ゴム
図1
図2
図3
図4
図5
図6