特許第5835167号(P5835167)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 5835167-パワーモジュール構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5835167
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】パワーモジュール構造
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20151203BHJP
【FI】
   H02M7/48 Z
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-197518(P2012-197518)
(22)【出願日】2012年9月7日
(65)【公開番号】特開2014-54103(P2014-54103A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2014年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116920
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 光
(72)【発明者】
【氏名】満永 智明
【審査官】 槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−042089(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0257212(US,A1)
【文献】 特開平01−194344(JP,A)
【文献】 特開2014−093421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極側入力端子電極及び負極側入力端子電極と、
前記正極側入力端子電極と前記負極側入力端子電極との間に順に直列に接続された第1及び第2のスイッチング素子と、
前記第1のスイッチング素子から前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続点に延在する第1の出力端子電極と、
前記接続点から前記第2のスイッチング素子に延在する第2の出力端子電極と、
を備え、
前記正極側入力端子電極と前記負極側入力端子電極とは、それぞれに流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように互いに対向して配置されており、
前記第1の出力端子電極は、前記負極側入力端子電極の逆側において前記正極側入力端子電極に対向するように配置されており、
前記第2の出力端子電極は、前記正極側入力端子電極の逆側において前記負極側入力端子電極に対向するように配置されている、ことを特徴とするパワーモジュール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインバータ等のパワーモジュール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電源のプラス端子とマイナス端子との間に互いに直列に接続された一対のスイッチング素子を含む単相のインバータと、その単相のインバータにおける電力配線構造が記載されている。その電力配線構造は、電源のプラス端子と一方のスイッチング素子とに接続された高電位側のP母線と、スイッチング素子同士の接続点から引き出されるU出力線と、他方のスイッチング素子と電源のマイナス端子とに接続された低電位側のN母線とをこの順に積層した3層構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−332688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電力配線構造は、上述したように、P母線とU相出力線とN母線とを順に積層することにより、スイッチンに応じて、P母線に流れる電流とU相出力線に流れる電流とが互いに逆向きとなること、及び、U相出力線に流れる電流とN母線に流れる電流とが互いに逆向きとなることを利用し、磁界の相殺効果によってインダクタンスの低減を図っている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の電力配線構造にあっては、P母線とN母線との間にU相出力線が配置されているため、その分だけP母線とN母線とが互いに離れて配置されることになる。そのため、P母線を流れる電流とN母線を流れる電流との間における磁界の相殺効果が得られず、インダクタンスの低減が十分でない。
【0006】
本発明は、そのような事情に鑑みてなされたものであり、インダクタンスを確実に低減可能なパワーモジュール構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るパワーモジュール構造は、正極側入力端子電極及び負極側入力端子電極と、正極側入力端子電極と負極側入力端子電極との間に順に直列に接続された第1及び第2のスイッチング素子と、第1のスイッチング素子から第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子との接続点に延在する第1の出力端子電極と、接続点から前記第2のスイッチング素子に延在する第2の出力端子電極と、を備え、正極側入力端子電極と負極側入力端子電極とは、それぞれに流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように互いに対向して配置されており、第1の出力端子電極は、負極側入力端子電極の逆側において正極側入力端子電極に対向するように配置されており、第2の出力端子電極は、正極側入力端子電極の逆側において負極側入力端子電極に対向するように配置されていることを特徴とする。
【0008】
このパワーモジュール構造においては、第1及び第2のスイッチング素子が、正極側入力端子電極と負極側入力端子電極との間にこの順で直列に接続されている。そして、正極側入力端子電極と負極側入力端子電極とが、それぞれに流れる電流が互いに逆向きになるように、互いに対向して配置されている。また、第1のスイッチング素子の第1の出力端子電極が、正極側入力端子電極に対向して配置されており、第2のスイッチング素子の第2の出力端子電極が、負極側入力端子電極に対向して配置されている。
【0009】
つまり、このパワーモジュール構造においては、互いに対向する正極側入力端子電極と負極側入力端子電極とが、第1及び第2の出力端子電極によって挟まれることとなる。このため、このパワーモジュール構造によれば、正極側入力端子電極に流れる電流と第1の出力端子電極に流れる電流との間、及び、第2の出力端子電極に流れる電流と負極側入力端子電極に流れる電流との間の磁界の相殺効果に加えて、正極側入力端子電極に流れる電流と負極側入力端子電極に流れる電流とによる磁界の相殺効果が得られる。よって、このパワーモジュール構造によれば、インダクタンスを確実に低減可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インダクタンスを確実に低減可能なパワーモジュール構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るパワーモジュール構造の一実施形態の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るパワーモジュール構造の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一の要素、或いは相当する要素には、互いに同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明に係るパワーモジュール構造の一実施形態の構成を示す模式図である。特に、図1の(b)は、図1の領域ARの側面図である。本実施形態に係るパワーモジュール構造1は、例えば、3相モータ等を駆動するための3相インバータ等に適用することができる(単相のインバータに適用してもよい)。
【0014】
本実施形態に係るパワーモジュール構造1は、例えば外部のバッテリ等の電源の正極端子に接続された正極側入力端子電極2と、その電源の負極端子に接続された負極側入力端子電極3と、正極側入力端子電極2と負極側入力端子電極3との間に順に直列に接続された第1のスイッチング素子(上相のスイッチング素子)及び第2のスイッチング素子(下相のスイッチング素子)と、を備えている。第1及び第2のスイッチング素子は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の任意のパワー半導体素子を用いることができる。
【0015】
正極側入力端子電極2は、第1のスイッチング素子の所定の端子(例えばコレクタ)に接続されている。つまり、正極側入力端子電極2は、例えば電源の正極端子と第1のスイッチング素子の所定の端子との間の配線として機能する。正極側入力端子電極2は、例えば幅広の平板状を呈している。
【0016】
負極側入力端子電極3は、第2のスイッチング素子の所定の端子(例えばエミッタ)に接続されている。つまり、負極側入力端子電極3は、例えば電源の負極端子と第2のスイッチング素子の所定の端子との間の配線として機能する。負極側入力端子電極3は、例えば幅広の平板状を呈している。
【0017】
第1のスイッチング素子の他の所定の端子(例えばエミッタ)は、第2のスイッチング素子の他の所定の端子(例えばコレクタ)に接続されている。第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子との接続点には、出力端子(例えばU相出力端子)が設けられている。
【0018】
パワーモジュール構造1は、第1のスイッチング素子の所定の端子と出力端子とを接続する第1の出力端子電極(上相の出力端子)5を備えている。つまり、第1の出力端子5は、例えば、第1のスイッチング素子から第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子との接続点まで延在し、第1のスイッチング素子の所定の端子と出力端子との間の配線として機能する。第1の出力端子電極5は、例えば、幅広の平板状を呈している。
【0019】
また、パワーモジュール構造1は、出力端子と第2のスイッチング素子の他の所定の端子とを接続する第2の出力端子電極(下相の出力端子)6を備えている。つまり、第2の出力端子電極6は、例えば、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子との接続点から第2のスイッチング素子まで延在し、出力端子と第2のスイッチング素子の他の所定の端子との間の配線として機能する。第2の出力端子電極6は、例えば、幅広の平板状を呈している。
【0020】
ここで、本実施形態に係るパワーモジュール構造1においては、正極側入力端子電極2、負極側入力端子電極3、第1の出力端子電極5、及び第2の出力端子電極6を積層して配置している。より具体的には、正極側入力端子電極2と負極側入力端子電極3とは、それぞれに流れる電流I2及び電流I3の向きが互いに逆向きとなるように、絶縁体を介して互いに対向して配置されている。
【0021】
また、第1の出力端子電極5は、第1の出力端子電極5に流れる電流I5と正極側入力端子電極2に流れる電流I2とが互いに逆向きとなるように、負極側入力端子電極3の逆側において、絶縁体を介して正極側入力端子電極2に対向して配置されている。さらに、第2の出力端子電極6は、第2の出力端子電極6に流れる電流I6と負極側入力端子電極3に流れる電流I3とが互いに逆向きとなるように、正極側入力端子電極2の逆側において、絶縁体を介して負極側入力端子電極3に対向して配置されている。
【0022】
したがって、パワーモジュール構造1においては、正極側入力端子電極2と負極側入力端子電極3とが互いに対向して近接配置されており、それらが、第1の出力端子電極5と第2の出力端子電極6とによって挟まれている。このため、パワーモジュール構造1においては、正極側入力端子電極2、負極側入力端子電極3、第1の出力端子電極5、及び第2の出力端子電極6は、少なくとも部分的に併走している。
【0023】
以上説明したように、本実施形態に係るパワーモジュール構造1においては、第1及び第2のスイッチング素子が、正極側入力端子電極2と負極側入力端子電極3との間にこの順で直列に接続されている。そして、正極側入力端子電極2と負極側入力端子電極3とが、それぞれに流れる電流I2,I3が互いに逆向きになるように、互いに対向して配置されている。また、第1のスイッチング素子の第1の出力端子電極5が、正極側入力端子電極2に対向して配置されており、第2のスイッチング素子の第2の出力端子電極6が、負極側入力端子電極3に対向して配置されている。
【0024】
このため、本実施形態に係るパワーモジュール構造1によれば、正極側入力端子電極2に流れる電流I2と第1の出力端子電極5に流れる電流I5との間の磁界の相殺によるインダクタンスの低減効果(図中のP1)、及び、第2の出力端子電極6に流れる電流I6と負極側入力端子電極3に流れる電流I3との間の磁界の相殺によるインダクタンスの低減効果(図中のP3)に加えて、正極側入力端子電極2に流れる電流I2と負極側入力端子電極3に流れる電流I3とによる磁界の相殺によるインダクタンスの低減効果(図中のP2)が得られる。
【0025】
よって、本実施形態に係るパワーモジュール構造1によれば、インダクタンスを確実に低減することが可能となる。また、インダクタンスを低減することにより、スイッチング時のサージ電圧を抑制することができ、高速動作が可能となり、スイッチング時の損失を低減できる。そのため、高周波動作が可能となる。さらに、このことに起因して、周辺部品であるコンデンサやリアクトルの小型化・低コスト化を実現することが可能となる。
【0026】
以上の実施形態は、本発明に係るパワーモジュール構造の一実施形態を説明したものである。したがって、本発明は、上述したパワーモジュール構造1に限定されず、請求項の要旨を変更しない範囲において、パワーモジュール構造1を任意に変形し、或いは他のものに適用することができる。例えば、上記実施形態においては、本発明のパワーモジュール構造をインバータに適用する例を説明したが、本発明のパワーモジュール構造は、その他の任意のパワーモジュールに対して適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1…パワーモジュール構造、2…正極側入力端子電極、3…負極側入力端子電極、5…第1の出力端子電極、6…第2の出力端子電極。
図1