特許第5835171号(P5835171)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5835171
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】ランフラットタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 17/00 20060101AFI20151203BHJP
   B60C 15/06 20060101ALI20151203BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20151203BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20151203BHJP
   B60C 9/20 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   B60C17/00 B
   B60C15/06 B
   B60C13/00 H
   B60C1/00 Z
   B60C9/20 F
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-202342(P2012-202342)
(22)【出願日】2012年9月14日
(65)【公開番号】特開2014-54967(P2014-54967A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2014年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】堀内 研治
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−162230(JP,A)
【文献】 特開2012−116212(JP,A)
【文献】 特開2012−071709(JP,A)
【文献】 特開2011−240895(JP,A)
【文献】 特開昭62−279107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00
9/20
13/00
15/06
17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、これら一対のビード部間に少なくとも1層のカーカス層を装架し、該カーカス層を各ビード部のビードコアの廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げ、前記ビード部における各ビードコアの外周側にビードフィラーを配置し、前記トレッド部における前記カーカス層の外周側に複数層のベルト層を配置すると共に、前記サイドウォール部における前記カーカス層とインナーライナー層との間に断面三日月状のサイド補強層を配置したランフラットタイヤにおいて、
前記トレッド部の中央位置からタイヤ最大幅位置までの範囲における最小肉厚部を前記ベルト層の端部とタイヤ断面高さSHの70%の位置との間に配置し、該最小肉厚部の厚さGmin と前記サイドウォール部における最大肉厚部の厚さGmax との関係を0.5×Gmax ≦Gmin ≦0.8×Gmax とし、前記最小肉厚部との肉厚差が1mm以下となる薄肉領域のタイヤ子午線断面におけるタイヤ外表面での長さLmin とタイヤ断面高さSHとの関係を0.18×SH≦Lmin ≦0.26×SHとし、
前記サイド補強層の重量Wrとタイヤ総重量Wtとタイヤ偏平率R(%)との関係を0.08×Wt×(1−0.2×(1−R/50))≦Wr≦0.18×Wt×(1−0.2×(1−R/50))とし、
前記カーカス層よりも外側に位置する外側ゴム部分のリムチェックライン位置での厚さGaと前記外側ゴム部分の前記サイドウォール部における最大厚さGbとの関係を0.8×Gb≦Ga≦1.0×Gbとし、
前記カーカス層よりも内側に位置する内側ゴム部分のリムチェックライン位置での厚さGcと前記外側ゴム部分のリムチェックライン位置での厚さGaとの関係を0.7×Ga≦Gc≦1.0×Gaとしたことを特徴とするランフラットタイヤ。
【請求項2】
前記サイド補強層を構成するゴム組成物の60℃でのtanδを0.01〜0.08とし、前記サイド補強層を構成するゴム組成物の20℃でのJIS−A硬さを68〜80としたことを特徴とする請求項1に記載のランフラットタイヤ。
【請求項3】
前記ビードフィラーを構成するゴム組成物の60℃でのtanδを0.03〜0.08とし、前記ビードフィラーを構成するゴム組成物の20℃でのJIS−A硬さを68〜74としたことを特徴とする請求項2に記載のランフラットタイヤ。
【請求項4】
前記カーカス層よりも外側であってタイヤ断面高さSHの15%〜70%の範囲に追加補強層を埋設し、該追加補強層の幅をタイヤ断面高さSHの少なくとも35%とし、該追加補強層の最大厚さGdを2mm〜7mmとしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のランフラットタイヤ。
【請求項5】
前記追加補強層を構成するゴム組成物の60℃でのtanδを0.01〜0.08とし、前記追加補強層を構成するゴム組成物の20℃でのJIS−A硬さを68〜80としたことを特徴とする請求項4に記載のランフラットタイヤ。
【請求項6】
前記サイド補強層をタイヤ径方向に連なる内周部分と外周部分とから構成し、その外周部分を構成するゴム組成物の20℃でのJIS−A硬さを内周部分を構成するゴム組成物の20℃でのJIS−A硬さよりも小さくしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のランフラットタイヤ。
【請求項7】
前記ビードフィラーをタイヤ径方向に連なる内周部分と外周部分とから構成し、その外周部分を構成するゴム組成物の20℃でのJIS−A硬さを内周部分を構成するゴム組成物の20℃でのJIS−A硬さよりも小さくしたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のランフラットタイヤ。
【請求項8】
前記追加補強層をタイヤ径方向に連なる内周部分と外周部分とから構成し、その外周部分を構成するゴム組成物の20℃でのJIS−A硬さを内周部分を構成するゴム組成物の20℃でのJIS−A硬さよりも小さくしたことを特徴とする請求項4又は5に記載のランフラットタイヤ。
【請求項9】
前記ベルト層の外周側にベルトカバー層を配置し、該ベルトカバー層を弾性率が互いに異なる低弾性ヤーンと高弾性ヤーンとを撚り合わせた複合繊維コードで構成したことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のランフラットタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイド補強型のランフラットタイヤに関し、更に詳しくは、ランフラット走行時における耐久性と通常走行時における乗心地とを高い次元で両立させると共に、重量増加を最小限に抑えることを可能にしたランフラットタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パンク状態での走行を可能にするランフラットタイヤとして、サイドウォール部の内側に断面三日月状のサイド補強層を配置したサイド補強型のランフラットタイヤ(例えば、特許文献1〜2参照)が提案されている。
【0003】
このようなサイド補強型のランフラットタイヤでは、ランフラット走行時における耐久性を高めるために、サイド補強層の厚さを大きくしたり、サイド補強層に硬度が高いゴム組成物を使用することが一般的である。
【0004】
しかしながら、サイド補強層の厚さを大きくしたり、サイド補強層を構成するゴム組成物の硬度を高くした場合、サイドウォール部の剛性の増加に伴って通常走行時における乗心地が悪化し、或いは、タイヤ重量の増加が顕著になるという問題がある。そのため、ランフラット走行時における耐久性を改善するにあたって、乗心地の悪化やタイヤ重量の増加を回避することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−304312号公報
【特許文献2】特開2009−61866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ランフラット走行時における耐久性と通常走行時における乗心地とを高い次元で両立させると共に、重量増加を最小限に抑えることを可能にしたランフラットタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明のランフラットタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、これら一対のビード部間に少なくとも1層のカーカス層を装架し、該カーカス層を各ビード部のビードコアの廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げ、前記ビード部における各ビードコアの外周側にビードフィラーを配置し、前記トレッド部における前記カーカス層の外周側に複数層のベルト層を配置すると共に、前記サイドウォール部における前記カーカス層とインナーライナー層との間に断面三日月状のサイド補強層を配置したランフラットタイヤにおいて、
前記トレッド部の中央位置からタイヤ最大幅位置までの範囲における最小肉厚部を前記ベルト層の端部とタイヤ断面高さSHの70%の位置との間に配置し、該最小肉厚部の厚さGmin と前記サイドウォール部における最大肉厚部の厚さGmax との関係を0.5×Gmax ≦Gmin ≦0.8×Gmax とし、前記最小肉厚部との肉厚差が1mm以下となる薄肉領域のタイヤ子午線断面におけるタイヤ外表面での長さLmin とタイヤ断面高さSHとの関係を0.18×SH≦Lmin ≦0.26×SHとし、
前記サイド補強層の重量Wrとタイヤ総重量Wtとタイヤ偏平率R(%)との関係を0.08×Wt×(1−0.2×(1−R/50))≦Wr≦0.18×Wt×(1−0.2×(1−R/50))とし、
前記カーカス層よりも外側に位置する外側ゴム部分のリムチェックライン位置での厚さGaと前記外側ゴム部分の前記サイドウォール部における最大厚さGbとの関係を0.8×Gb≦Ga≦1.0×Gbとし、
前記カーカス層よりも内側に位置する内側ゴム部分のリムチェックライン位置での厚さGcと前記外側ゴム部分のリムチェックライン位置での厚さGaとの関係を0.7×Ga≦Gc≦1.0×Gaとしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明者は、ランフラットタイヤの故障原因について鋭意研究した結果、ランフラット走行時のタイヤ故障は主としてリムフランジが当接する部位で発生するカーカスコードの破断に起因し、このようなカーカスコードの破断を回避しながらタイヤの撓み特性を適正化することが耐久性と乗心地と軽量性を改善する上で最も有効な手法であることを知見し、本発明に至ったのである。
【0009】
即ち、本発明では、トレッド部の中央位置からタイヤ最大幅位置までの範囲における最小肉厚部をベルト層の端部とタイヤ断面高さSHの70%の位置との間に配置し、それに付随する薄肉領域を設けることにより、通常走行時の乗心地を改善すると共に、ランフラット走行時のトレッド部のバックリングを抑制し、更には、ランフラット走行時にバットレス部を積極的に撓ませることでリムフランジが当接するリムクッション部における歪みを低減することができる。これにより、通常走行時の乗心地とランフラット走行時の耐久性を同時に改善する効果が得られる。
【0010】
また、サイド補強層の重量Wrをタイヤ総重量Wtに対してタイヤ偏平率Rを考慮しつつ適正化することにより、通常走行時の乗心地とランフラット走行時の耐久性を犠牲にすることなくサイド補強層の重量Wrを削減し、ランフラットタイヤの重量増加を最小限に抑えることができる。
【0011】
更に、カーカス層よりも外側に位置する外側ゴム部分のリムチェックライン位置での厚さGaをその外側ゴム部分のサイドウォール部における最大厚さGbに対して十分に大きく設定することにより、カーカス層を構成するカーカスコードへの局所的な応力集中を回避し、リムクッション部におけるカーカスコードの破断を防止することができる。これにより、ランフラット走行時の耐久性を向上することができる。また、外側ゴム部分のリムチェックライン位置での厚さGaを大きくした場合、タイヤからリムを介して伝達される衝撃や振動が低減されるので、通常走行時の乗心地を改善する効果も得られる。
【0012】
また、カーカス層よりも内側に位置する内側ゴム部分のリムチェックライン位置での厚さGcを外側ゴム部分のリムチェックライン位置での厚さGaに対して十分に大きく設定することにより、カーカス層に働く剪断応力を抑制し、ランフラット走行時の耐久性を向上することができる。
【0013】
本発明において、サイド補強層を構成するゴム組成物の60℃でのtanδは0.01〜0.08とし、サイド補強層を構成するゴム組成物の20℃でのJIS−A硬さは68〜80とすることが好ましい。また、ビードフィラーを構成するゴム組成物の60℃でのtanδは0.03〜0.08とし、ビードフィラーを構成するゴム組成物の20℃でのJIS−A硬さは68〜74とすることが好ましい。更に、カーカス層よりも外側であってタイヤ断面高さSHの15%〜70%の範囲に追加補強層を埋設し、該追加補強層の幅をタイヤ断面高さSHの少なくとも35%とし、該追加補強層の最大厚さGdを2mm〜7mmとすることが好ましい。追加補強層を構成するゴム組成物の60℃でのtanδは0.01〜0.08とし、追加補強層を構成するゴム組成物の20℃でのJIS−A硬さは68〜80とすることが好ましい。これらタイヤ構成部材のtanδ及びJIS−A硬さを適正化することにより、ランフラット走行時の耐久性と通常走行時の乗心地とをより高い次元で両立させることができる。
【0014】
サイド補強層はタイヤ径方向に連なる内周部分と外周部分とから構成し、その外周部分を構成するゴム組成物の20℃でのJIS−A硬さを内周部分を構成するゴム組成物の20℃でのJIS−A硬さよりも小さくすることが好ましい。同様に、ビードフィラーをタイヤ径方向に連なる内周部分と外周部分とから構成し、その外周部分を構成するゴム組成物の20℃でのJIS−A硬さを内周部分を構成するゴム組成物の20℃でのJIS−A硬さよりも小さくすることが好ましい。更に、追加補強層をタイヤ径方向に連なる内周部分と外周部分とから構成し、その外周部分を構成するゴム組成物の20℃でのJIS−A硬さを内周部分を構成するゴム組成物の20℃でのJIS−A硬さよりも小さくしたことが好ましい。これにより、通常走行時の乗心地を更に改善することができる。
【0015】
ベルト層の外周側にはベルトカバー層を配置し、該ベルトカバー層を弾性率が互いに異なる低弾性ヤーンと高弾性ヤーンとを撚り合わせた複合繊維コードで構成することが好ましい。これにより、ランフラット走行時においてトレッド部のバックリングを防止して耐久性を改善することができる。また、このようなベルトカバー層を付加した場合、トレッド部の剛性が高くなるため通常走行時の操縦安定性や乗心地も改善することができる。
【0016】
本発明において、タイヤ断面高さSHはタイヤが基づいている規格に定められたタイヤ寸法の測定方法により測定される高さである。一方、タイヤ断面高さSHを除く各種寸法はタイヤ子午線に沿って切断されたカットサンプルから測定される寸法である。
【0017】
また、本発明において、tanδは、JIS−K6394に準拠して、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所製)を用い、周波数20Hz、初期歪み10%、動歪み±2%、温度60℃の条件にて測定されるものである。JIS−A硬さは、JIS K−6253に準拠して、Aタイプのデュロメータを用いて温度20℃の条件にて測定されるデュロメータ硬さである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態からなるランフラットタイヤを示す子午線断面図である。
図2図1のランフラットタイヤの要部を示す断面図である。
図3図1のランフラットタイヤの要部を示す他の断面図である。
図4図1のランフラットタイヤの要部を示す更に他の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1図4は本発明の実施形態からなるランフラットタイヤを示すものである。
【0020】
図1に示すように、本実施形態のランフラットタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、該トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。
【0021】
一対のビード部3,3間には少なくとも1層のカーカス層4が装架されている。このカーカス層4はタイヤ径方向に配向する複数本のカーカスコードを含んでいる。カーカス層4は各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に巻き上げられている。カーカス層4のカーカスコードとしては、有機繊維コードが好ましく使用される。各ビードコア5の外周側には断面三角形状のビードフィラー6が配置されている。また、各ビード部3にはビードコア5を包み込むようにチェーファー7が配置されている。そして、タイヤ内表面における一対のビード部3,3間の領域にはインナーライナー層8が配置されている。
【0022】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層9が埋設されている。これらベルト層9はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層9において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜40°の範囲に設定されている。ベルト層9の補強コードとしては、スチールコードが好ましく使用される。ベルト層9の外周側には、高速耐久性の向上を目的として、補強コードをタイヤ周方向に対して5°以下の角度で配列してなる少なくとも1層のベルトカバー層10配置されている。ベルトカバー層10は少なくとも1本の補強コードを引き揃えてゴム被覆してなるストリップ材をタイヤ周方向に連続的に巻回したジョイントレス構造とすることが望ましい。また、ベルトカバー層10はベルト層7の幅方向の全域を覆うように配置しても良く、或いは、ベルト層9の幅方向外側のエッジ部のみを覆うように配置しても良い。ベルトカバー層10の補強コードとしては、ナイロンやアラミド等の有機繊維コードが好ましく使用される。
【0023】
更に、トレッド部1におけるベルト層9及びベルトカバー層10の外側にはトレッドゴム層11が配置されている。サイドウォール部2におけるカーカス層4とインナーライナー層8との間にはランフラット走行を可能にするための断面三日月状のサイド補強層12が配置されている。サイドウォール部2におけるカーカス層4の外側にはサイドウォールゴム層13が配置されている。ビード部3におけるカーカス層4の外側にはリムクッションゴム層14が配置されている。そして、カーカス層4とサイドウォールゴム層13及びリムクッションゴム層14との間には追加補強層15が挿入されている。
【0024】
上記ランフラットタイヤにおいて、図1及び図2に示すように、トレッド部1の中央位置P1からタイヤ最大幅位置P2までの範囲でタイヤ肉厚が最小値となる最小肉厚部16は、ベルト層9の端部とタイヤ断面高さSHの70%の位置との間に規定される領域X内に配置されている。この最小肉厚部16の厚さGmin とサイドウォール部2においてタイヤ肉厚が最大値となる最大肉厚部17の厚さGmax との関係は0.5×Gmax ≦Gmin ≦0.8×Gmax になっている。これら最小肉厚部16の厚さGmin 及び最大肉厚部17の厚さGmax はそれぞれタイヤ内表面の法線に沿って測定される厚さであってタイヤ内表面からタイヤ外表面までの厚さである。更に、最小肉厚部16との肉厚差が1mm以下となる薄肉領域18のタイヤ子午線断面におけるタイヤ外表面での長さLmin とタイヤ断面高さSHとの関係は0.18×SH≦Lmin ≦0.26×SHとなっている。
【0025】
このようにトレッド部1の中央位置P1からタイヤ最大幅位置P2までの範囲における最小肉厚部16をベルト層9の端部とタイヤ断面高さSHの70%の位置との間に配置し、それに付随する薄肉領域18を形成することにより、通常走行時の乗心地を改善すると共に、ランフラット走行時のトレッド部1のバックリングを抑制し、更には、ランフラット走行時に最小肉厚部16を含むバットレス部を積極的に撓ませることでリムフランジが当接するリムクッション部における歪みを低減することができる。これにより、通常走行時の乗心地とランフラット走行時の耐久性を同時に改善する効果が得られる。
【0026】
ここで、最小肉厚部16の厚さGmin が0.5×Gmax よりも小さいとランフラット走行時の耐久性が低下し、逆に0.8×Gmax よりも大きいと通常走行時の乗心地が低下する。また、最小肉厚部16との肉厚差が1mm以下となる薄肉領域18の長さLmin が0.18×SHよりも小さいと通常走行時の乗心地が低下し、逆に0.26×SHよりも大きいとランフラット走行時の耐久性が低下する。
【0027】
上記ランフラットタイヤにおいて、サイド補強層12の重量Wrとタイヤ総重量Wtとタイヤ偏平率R(%)との関係は0.08×Wt×(1−0.2×(1−R/50))≦Wr≦0.18×Wt×(1−0.2×(1−R/50))となっている。サイド補強層12の重量Wrはサイド補強層12の体積と比重との積から算出することができる。
【0028】
このようにサイド補強層12の重量Wrをタイヤ総重量Wtに対してタイヤ偏平率Rを考慮しつつ適正化することにより、通常走行時の乗心地とランフラット走行時の耐久性を犠牲にすることなくサイド補強層12の重量Wrを削減し、ランフラットタイヤの重量増加を最小限に抑えることができる。
【0029】
ここで、サイド補強層12の重量Wrが大き過ぎると重量増加を招くと共に通常走行時の乗心地が低下し、逆に小さ過ぎるとランフラット走行時の耐久性が低下する。タイヤ偏平率Rを加味する理由は、タイヤ偏平率Rが相対的に小さい偏平タイヤはサイド剛性が相対的に高くなるため、少ない補強でもランフラット走行時の耐久性を確保することができるからである。例えば、偏平率Rが40%である場合、0.08×Wt×0.96≦Wr≦0.18×Wt×0.96となり、偏平率Rが60%である場合、0.08×Wt×1.04≦Wr≦0.18×Wt×1.04となる。
【0030】
上記ランフラットタイヤにおいて、図3に示すように、サイドウォール部2とビード部3との境界付近にはタイヤ周方向に沿って延長する環状のリムチェックライン19が形成されている。このリムチェックライン19はリムの嵌合状態を確認するためのラインであり、通常、タイヤ外表面から突出する突条として成形されている。カーカス層4よりも外側に位置する外側ゴム部分(サイドウォールゴム層13、リムクッションゴム層14及び追加補強層15)のリムチェックライン位置での厚さGaと上記外側ゴム部分のサイドウォール部2における最大厚さGbとの関係は0.8×Gb≦Ga≦1.0×Gbとなっている。また、カーカス層4よりも内側に位置する内側ゴム部分(インナーライナー層8及びサイド補強層12)のリムチェックライン位置での厚さGcと上記外側ゴム部分のリムチェックライン位置での厚さGaとの関係は0.7×Ga≦Gc≦1.0×Gaとなっている。これら外側ゴム部分の厚さGa及び内側ゴム部分の厚さGcはそれぞれリムチェックライン位置におけるタイヤ外表面(リムチェックライン19を除外した仮想面)の法線に沿って測定される厚さであってカーカス表面からタイヤ外表面又はタイヤ内表面までの厚さである。また、上記外側ゴム部分の最大厚さGbはカーカス層4の法線に沿って測定される厚さであってカーカス表面からタイヤ外表面までの厚さである。
【0031】
このようにカーカス層4よりも外側に位置する外側ゴム部分のリムチェックライン位置での厚さGaをその外側ゴム部分のサイドウォール部2における最大厚さGbに対して十分に大きく設定することにより、カーカス層4を構成するカーカスコードへの局所的な応力集中を回避し、リムクッション部におけるカーカスコードの破断を防止することができる。これにより、ランフラット走行時の耐久性を改善することができる。しかも、外側ゴム部分のリムチェックライン位置での厚さGaを大きくした場合、タイヤからリムを介して伝達される衝撃や振動が低減されるので、通常走行時の乗心地を改善する効果も得られる。
【0032】
ここで、カーカス層4よりも外側に位置する外側ゴム部分のリムチェックライン位置での厚さGaが0.8×Gbよりも小さいとランフラット走行時の耐久性及び通常走行時の乗心地が低下し、逆に1.0×Gbよりも大きいとカーカスラインに無理が生じたり当該部位のゴムボリュームが必要以上に大きくなることに起因して耐久性が低下する。
【0033】
また、カーカス層4よりも内側に位置する内側ゴム部分のリムチェックライン位置での厚さGcを外側ゴム部分のリムチェックライン位置での厚さGaに対して十分に大きく設定することにより、カーカス層4に働く剪断応力を抑制し、ランフラット走行時の耐久性を向上することができる。
【0034】
ここで、カーカス層4よりも内側に位置する内側ゴム部分のリムチェックライン位置での厚さGcが0.7×Gaよりも小さいとランフラット走行時の耐久性が低下し、逆に1.0×Gaよりも大きいとカーカスラインに無理が生じたり当該部位のゴムボリュームが必要以上に大きくなることに起因して耐久性が低下する。
【0035】
上記ランフラットタイヤにおいて、サイド補強層12を構成するゴム組成物の60℃でのtanδは0.01〜0.08とし、サイド補強層12を構成するゴム組成物の20℃でのJIS−A硬さは68〜80とすると良い。サイド補強層12のゴム組成物のtanδが小さ過ぎると生産性やコスト面で不利となり、逆に大き過ぎるとランフラット走行時の耐久性が低下する。サイド補強層12のゴム組成物が軟らか過ぎるとランフラット走行時の耐久性が低下し、逆に硬過ぎると通常走行時の乗心地が悪化する。
【0036】
また、ビードフィラー6を構成するゴム組成物の60℃でのtanδは0.03〜0.08とし、ビードフィラー6を構成するゴム組成物の20℃でのJIS−A硬さは68〜74とすると良い。ビードフィラー6のゴム組成物のtanδが小さ過ぎると生産性やコスト面で不利となり、逆に大き過ぎるとランフラット走行時の耐久性が低下する。ビードフィラー6のゴム組成物が軟らか過ぎるとランフラット走行時の耐久性が低下し、逆に硬過ぎると通常走行時の乗心地が悪化する。
【0037】
更に、追加補強層15を設けるにあたって、図3に示すように、追加補強層15はカーカス層4よりも外側であってタイヤ断面高さSHの15%〜70%の範囲に配置し、追加補強層15の幅Wはタイヤ断面高さSHの少なくとも35%とし、追加補強層15の最大厚さGdは2mm〜7mmとすると良い。追加補強層15の幅Wはカーカス層4に沿って測定される幅であり、追加補強層15の最大厚さGdはカーカス層4の法線に沿って測定される厚さである。
【0038】
追加補強層15は必ずしも必要ではないが、この追加補強層15を上記の如く埋設することにより、ランフラット走行時の耐久性を更に改善することができる。追加補強層15をより広い範囲に配置すると、耐久性の点では有利になるが生産性やコスト面では不利になる。追加補強層15をタイヤ断面高さSHに対して上記範囲内に配置した場合、より効果的な補強が可能となる。追加補強層15の幅Wが0.35×SHよりも小さいとランフラット走行時の耐久性が低下する。また、追加補強層15の最大厚さGdが2mmより小さいとランフラット走行時の耐久性が低下し、逆に7mmよりも大きいと重量の増加と乗心地の悪化を招くことになる。
【0039】
追加補強層15を構成するゴム組成物の60℃でのtanδは0.01〜0.08とし、追加補強層15を構成するゴム組成物の20℃でのJIS−A硬さは68〜80とすると良い。追加補強層15のゴム組成物のtanδが小さ過ぎると生産性やコスト面で不利となり、逆に大き過ぎるとランフラット走行時の耐久性が低下する。追加補強層15のゴム組成物が軟らか過ぎるとランフラット走行時の耐久性が低下し、逆に硬過ぎると通常走行時の乗心地が悪化する。
【0040】
図4に示すように、サイド補強層12はタイヤ径方向に連なる内周部分12aと外周部分12bとから構成し、その外周部分12bを構成するゴム組成物の20℃でのJIS−A硬さを内周部分12aを構成するゴム組成物の20℃でのJIS−A硬さよりも小さくすると良い。
【0041】
同様に、ビードフィラー6はタイヤ径方向に連なる内周部分6aと外周部分6bとから構成し、その外周部分6bを構成するゴム組成物の20℃でのJIS−A硬さを内周部分6aを構成するゴム組成物の20℃でのJIS−A硬さよりも小さくすると良い。
【0042】
更に、追加補強層15はタイヤ径方向に連なる内周部分15aと外周部分15bとから構成し、その外周部分15bを構成するゴム組成物の20℃でのJIS−A硬さを内周部分15aを構成するゴム組成物の20℃でのJIS−A硬さよりも小さくすると良い。
【0043】
上述のようにサイド補強層12、ビードフィラー6及び追加補強層15を必要に応じて物性が異なる複数種類のゴム組成物から構成し、ビード部3から遠い側の部分を相対的に軟らかくすることにより、通常走行時の乗心地を更に改善することができる。
【0044】
図1に示すように、ベルト層9の外周側にはベルトカバー層10が配置されているが、ベルトカバー層10の補強コードとして弾性率が互いに異なる低弾性ヤーンと高弾性ヤーンとを撚り合わせた複合繊維コードを使用すると良い。このようにベルトカバー層10を弾性率が互いに異なる低弾性ヤーンと高弾性ヤーンとを撚り合わせた複合繊維コードで構成することにより、高温の発熱に伴って歪みの回復が得難くなる低弾性繊維コードの欠点と圧縮疲労性や接着性に劣る高弾性繊維コードの欠点とを相互に補完することができる。その結果、ランフラット走行時においてトレッド部1のバックリングを防止して耐久性を改善することができる。また、このようなベルトカバー層10を付加した場合、トレッド部1の剛性が高くなるため通常走行時の操縦安定性や乗心地も改善することができる。
【実施例】
【0045】
タイヤサイズが235/50R18であって、一対のビード部間に1層のカーカス層を装架し、該カーカス層を各ビード部のビードコアの廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げ、ビード部における各ビードコアの外周側にビードフィラーを配置し、トレッド部におけるカーカス層の外周側に2層のベルト層を配置し、これらベルト層の外周側にベルトカバー層を配置すると共に、サイドウォール部におけるカーカス層とインナーライナー層との間に断面三日月状のサイド補強層を配置し、カーカス層よりも外側であってタイヤ断面高さSHの15%〜70%の範囲に追加補強層を埋設したランフラットタイヤにおいて、最小肉厚部の厚さGmin 、最大肉厚部の厚さGmax 、薄肉領域の長さLmin 、タイヤ断面高さSHと薄肉領域の長さLmin との関係、サイド補強層の重量Wrとタイヤ総重量Wtとタイヤ偏平率R(%)との関係、外側ゴム部分のリムチェックライン位置での厚さGa、外側ゴム部分のサイドウォール部における最大厚さGb、厚さGaと最大厚さGbとの関係、内側ゴム部分のリムチェックライン位置での厚さGc、厚さGaと厚さGcとの関係、サイド補強層とビードフィラーと追加補強層を構成する各ゴム組成物の60℃でのtanδ及び20℃でのJIS−A硬さ、追加補強層の幅W、追加補強層の最大厚さGd、ベルトカバー層におけるハイブリッドコードの使用の有無(ハイブリッドカバーの有無)を表1及び表2のように設定した従来例、比較例1〜4及び実施例1〜8のタイヤを製作した。
【0046】
表1及び表2において、サイド補強層のtanδを「tanδ〔RFL〕と表記し、サイド補強層のJIS−A硬さを「Hs〔RFL〕」と表記し、ビードフィラーのtanδを「tanδ〔BFL〕と表記し、ビードフィラーのJIS−A硬さを「Hs〔BFL〕」と表記し、追加補強層のtanδを「tanδ〔2FL〕と表記し、追加補強層のJIS−A硬さを「Hs〔2FL〕」と表記した。サイド補強層、ビードフィラー、追加補強層の各々を内周部分と外周部分とから構成し、これら内周部分と外周部分の物性を互いに異ならせた場合、内周部分の値と外周部分の値を「/」を挿んで併記した。
【0047】
また、ベルトカバー層に使用したハイブリッドコードはナイロン繊維ヤーンとアラミド繊維ヤーンを撚り合わせたものであり、ハイブリッドコードを適用しないタイヤについてはベルトカバー層にナイロン繊維コードを使用した。
【0048】
これら試験タイヤについて、下記の評価方法により、ランフラット耐久性、乗心地、重量を評価し、その結果を表1及び表2に併せて示した。
【0049】
ランフラット耐久性:
各試験タイヤをリムサイズ18×7.5Jのホイールに組み付けて試験車両に装着し、右側駆動輪のバルブコアを除去する一方で他のタイヤの空気圧を230kPaとし、アスファルト路面からなるテストコースを平均速度80km/hにて走行し、ドライバーがタイヤの故障による振動を感じるまで走行を継続し、その走行距離を測定した。このような測定は3名のテストドライバーにより行い、その平均走行距離を求めた。評価結果は従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどランフラット耐久性が優れていることを意味する。
【0050】
乗心地:
各試験タイヤをリムサイズ18×7.5Jのホイールに組み付けて試験車両に装着し、空気圧を230kPaとし、アスファルト路面からなるテストコースを平均速度80km/hにて走行し、ドライバーによる官能評価を行った。このような評価は3名のテストドライバーにより行い、その平均評価値を求めた。評価結果は従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど乗心地が優れていることを意味する。
【0051】
重量:
各試験タイヤの重量を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど軽量であることを意味する。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
表1及び表2から判るように、実施例1〜8のタイヤは、従来例との対比において、重量を低減しているにも拘らず、ランフラット走行時の耐久性と通常走行時の乗心地とを同時に高い次元で改善することが可能であった。これに対して、比較例1〜4のタイヤは、軽量性、ランフラット走行時の耐久性及び通常走行時の乗心地の一部について改善効果が認められるものの、その改善効果は必ずしも十分ではなかった。
【符号の説明】
【0055】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 チェーファー
8 インナーライナー層
9 ベルト層
10 ベルトカバー層
12 サイド補強層
15 追加補強層
16 最小肉厚部
17 最大肉厚部
18 薄肉領域
19 リムチェックライン
図1
図2
図3
図4