特許第5835182号(P5835182)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オムロン株式会社の特許一覧
<>
  • 特許5835182-熱式流量計およびその異常判定方法 図000002
  • 特許5835182-熱式流量計およびその異常判定方法 図000003
  • 特許5835182-熱式流量計およびその異常判定方法 図000004
  • 特許5835182-熱式流量計およびその異常判定方法 図000005
  • 特許5835182-熱式流量計およびその異常判定方法 図000006
  • 特許5835182-熱式流量計およびその異常判定方法 図000007
  • 特許5835182-熱式流量計およびその異常判定方法 図000008
  • 特許5835182-熱式流量計およびその異常判定方法 図000009
  • 特許5835182-熱式流量計およびその異常判定方法 図000010
  • 特許5835182-熱式流量計およびその異常判定方法 図000011
  • 特許5835182-熱式流量計およびその異常判定方法 図000012
  • 特許5835182-熱式流量計およびその異常判定方法 図000013
  • 特許5835182-熱式流量計およびその異常判定方法 図000014
  • 特許5835182-熱式流量計およびその異常判定方法 図000015
  • 特許5835182-熱式流量計およびその異常判定方法 図000016
  • 特許5835182-熱式流量計およびその異常判定方法 図000017
  • 特許5835182-熱式流量計およびその異常判定方法 図000018
  • 特許5835182-熱式流量計およびその異常判定方法 図000019
  • 特許5835182-熱式流量計およびその異常判定方法 図000020
  • 特許5835182-熱式流量計およびその異常判定方法 図000021
  • 特許5835182-熱式流量計およびその異常判定方法 図000022
  • 特許5835182-熱式流量計およびその異常判定方法 図000023
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5835182
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】熱式流量計およびその異常判定方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/68 20060101AFI20151203BHJP
   G01F 1/696 20060101ALI20151203BHJP
   G01P 5/10 20060101ALI20151203BHJP
   G01P 5/12 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   G01F1/68 B
   G01F1/696 Z
   G01P5/10 A
   G01P5/12 M
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-225821(P2012-225821)
(22)【出願日】2012年10月11日
(65)【公開番号】特開2014-77711(P2014-77711A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 直亜
(72)【発明者】
【氏名】福本 昌滋
(72)【発明者】
【氏名】中尾 秀之
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−229800(JP,A)
【文献】 特許第3067883(JP,B2)
【文献】 特許第3256658(JP,B2)
【文献】 特公平7−65915(JP,B2)
【文献】 特許第3726261(JP,B2)
【文献】 特許第3527657(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
本件出願を優先基礎とする国際特許出願PCT/JP2013/075466
の国際調査報告の調査結果が利用された。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流れる流路に配置されて前記流体を加熱するヒータと、前記ヒータに対して前記流路の上流側に配置された第1の感温素子と、前記ヒータに対して前記流路の下流側に配置された第2の感温素子とを有するセンサ素子と、
前記第1の感温素子から出力される第1の出力信号と、前記第2の感温素子から出力される第2の出力信号との間の差分に基づいて、前記流体の流量を表す信号を出力する出力回路と、
前記第1の出力信号と前記第2の出力信号との間の関係の基準を定めた基準的関係を予め記憶する記憶部と、
前記第1の感温素子から出力された前記第1の出力信号と、前記第2の感温素子から出力された前記第2の出力信号との間の関係を、前記基準的関係と比較して、前記第1および第2の感温素子に関する異常の有無を判定する異常判定部とを備える、熱式流量計。
【請求項2】
前記基準的関係は、前記第1の出力信号と前記第2の出力信号とによって規定されたマップ、前記第1の出力信号と前記第2の出力信号とによって規定されたテーブル、または、前記第1の出力信号と前記第2の出力信号の一方から他方を導く関数として前記記憶部に記憶される、請求項1に記載の熱式流量計。
【請求項3】
前記センサ素子の周囲温度を検出する温度センサと、
前記温度センサにより検出された前記センサ素子の前記周囲温度に基づいて、前記基準的関係を補正する補正部とをさらに備える、請求項1または2に記載の熱式流量計。
【請求項4】
前記記憶部は、前記基準的関係として、前記センサ素子の周囲温度に各々が関連付けられた複数の基準的関係を有し、
前記熱式流量計は、
前記センサ素子の周囲温度を検出する温度センサと、
前記複数の基準的関係の中から、前記温度センサにより検出された前記センサ素子の前記周囲温度に対応する関係を選択して、前記対応する関係を前記異常判定部に与える選択部とをさらに備える、請求項1または2に記載の熱式流量計。
【請求項5】
前記記憶部は、前記基準的関係として、前記流体の種類に各々が関連付けられた複数の基準的関係を有し、
前記熱式流量計は、
前記流体の種類に関する情報を受けて、前記複数の基準的関係の中から前記流体の種類に対応する関係を選択して、前記対応する関係を前記異常判定部に与える選択部をさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の熱式流量計。
【請求項6】
前記異常判定部は、前記第1の感温素子から出力された前記第1の出力信号および前記第2の感温素子から出力された前記第2の出力信号のうちの一方と、前記基準的関係から導かれる基準値との差が予め設定された許容範囲を外れる場合に、前記第1および第2の感温素子に関する異常が有ると判定し、
前記異常判定部は、前記第1の感温素子から出力された前記第1の出力信号および前記第2の感温素子から出力された前記第2の出力信号のうちの他方を前記基準的関係に適用して、前記基準値を生成する、請求項1から5のいずれか1項に記載の熱式流量計。
【請求項7】
前記第1の感温素子から出力された前記第1の出力信号と、第1の基準値との差が予め設定された許容範囲を外れるとともに、前記第2の感温素子から出力された前記第2の出力信号と第2の基準値との差が予め設定された許容範囲を外れる場合に、前記異常判定部は、前記第1および第2の感温素子に関する異常が有ると判定し、
前記異常判定部は、前記第2の感温素子から出力された前記第2の出力信号を前記基準的関係に適用して、前記第1の基準値を生成するとともに、前記第1の感温素子から出力された前記第1の出力信号を前記基準的関係に適用して、前記第2の基準値を生成する、請求項1から6のいずれか1項に記載の熱式流量計。
【請求項8】
流体の流れる流路に配置されて前記流体を加熱するヒータと、前記ヒータに対して前記流路の上流側に配置された第1の感温素子と、前記ヒータに対して前記流路の下流側に配置された第2の感温素子とを有するセンサ素子、および、前記第1の感温素子から出力される第1の出力信号と、前記第2の感温素子から出力される第2の出力信号との間の差分に基づいて、前記流体の流量を表す信号を出力する出力回路を含む熱式流量計の異常判定方法であって、
前記第1の出力信号と前記第2の出力信号との間の関係の基準を定めた基準的関係を準備するステップと、
前記第1の感温素子から出力された前記第1の出力信号と、前記第2の感温素子から出力された前記第2の出力信号との間の関係を、前記基準的関係と比較して、前記第1および第2の感温素子に関する異常の有無を判定するステップとを備える、熱式流量計の異常判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱式流量計およびその異常判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の流量を測定するためのセンサチップがこれまでに提案されている。センサチップは、たとえばシリコン基板からなる半導体基板と、ヒータと、1対の感温素子とを有する。1対の感温素子の一方は、ヒータに対して流路の上流側に配置される。1対の感温素子の他方は、ヒータに対して流路の下流側に配置される。
【0003】
ガス等の流体が流路を流れると、ヒータにより発生した熱が下流側の感温素子に伝達される。したがって、上流側の感温素子から出力される電圧と下流側の感温素子から出力される電圧との間に差が生じる。その差電圧に基づいて流体の流量が算出される。
【0004】
上記の構成を有するセンサチップの異常を判定するための方法がこれまでに提案されている。たとえば特開2000−321107号公報(特許文献1)は、以下に説明する故障判定方法を開示する。上流側サーモパイルの電圧から、上流側サーモパイルの抵抗値が算出される。下流側サーモパイルの電圧から、下流側サーモパイルの抵抗値が算出される。それらの抵抗値のいずれかが異常な値である場合にフローセンサの故障が判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−321107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開2000−321107号公報は、フローセンサの故障を検出する方法として、サーモパイルの抵抗値を算出する方法を提案している。特開2000−321107号公報は、上記の方法によって、たとえばダストがセンサに付着した場合の故障を検出可能であると説明している。
【0007】
しかしながら、一般的にサーモパイルは絶縁膜で覆われている。したがってダストがその絶縁膜の表面に付着しても、サーモパイルの抵抗値は変化しない。つまり特開2000−321107号公報に開示された方法では、実際には、サーモパイルの損傷あるいは質的な変化のみ検出可能であると考えられる。
【0008】
さらに、特開2000−321107号公報によれば、サーモパイルの抵抗値を算出するためにヒータがオフされる。つまり、流量計の故障の有無を判定するために、流体の流量を計測するときの状態とは異なる状態を作り出さなければならない。したがって流量計の故障の有無を判定する際には、流体の流量の計測を中断しなければならない。しかしながら、流量計が通常に使用されている状態において、故障の有無の判定のための特別な状態を作り出すことは難しい。特に、流量を常時計測することが要求される場合においては、故障の有無が判定できないという課題が生じる。
【0009】
また、ヒータをオフする代わりに、流体の流量を一定に制御する、あるいは流量をゼロにするという方法も考えられる。しかしながらこの場合にも、通常の流量の検出とは異なる状態を作り出す必要がある。
【0010】
本発明の目的は、流体の流量を検出しながら、センサ素子の異常の有無を判定することが可能な熱式流量計、およびその異常判定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある局面において、熱式流量計が提供される。熱式流量計は、センサ素子と、出力回路と、記憶部と、異常判定部とを備える。センサ素子は、流体の流れる流路に配置されて流体を加熱するヒータと、ヒータに対して流路の上流側に配置された第1の感温素子と、ヒータに対して流路の下流側に配置された第2の感温素子とを有する。出力回路は、第1の感温素子から出力される第1の出力信号と、第2の感温素子から出力される第2の出力信号との間の差分に基づいて、流体の流量を表す信号を出力する。記憶部は、第1の出力信号と第2の出力信号との間の関係の基準を定めた基準的関係を予め記憶する。異常判定部は、第1の感温素子から出力された第1の出力信号と、第2の感温素子から出力された第2の出力信号との間の関係を、基準的関係と比較して、第1および第2の感温素子に関する異常の有無を判定する。
【0012】
好ましくは、基準的関係は、第1の出力信号と第2の出力信号とによって規定されたマップ、第1の出力信号と第2の出力信号とによって規定されたテーブル、または、第1の出力信号と第2の出力信号の一方から他方を導く関数として記憶部に記憶される。
【0013】
好ましくは、熱式流量計は、センサ素子の周囲温度を検出する温度センサと、温度センサにより検出されたセンサ素子の周囲温度に基づいて、基準的関係を補正する補正部とをさらに備える。
【0014】
好ましくは、記憶部は、基準的関係として、センサ素子の周囲温度に各々が関連付けられた複数の基準的関係を有する。熱式流量計は、センサ素子の周囲温度を検出する温度センサと、選択部とをさらに備える。選択部は、複数の基準的関係の中から、温度センサにより検出されたセンサ素子の周囲温度に対応する関係を選択して、対応する関係を異常判定部に与える。
【0015】
好ましくは、記憶部は、基準的関係として、流体の種類に各々が関連付けられた複数の基準的関係を有する。熱式流量計は、選択部をさらに備える。流体の種類に関する情報を受けて、複数の基準的関係の中から流体の種類に対応する関係を選択して、対応する関係を異常判定部に与える選択部をさらに備える。
【0016】
好ましくは、異常判定部は、第1の感温素子から出力された第1の出力信号および第2の感温素子から出力された第2の出力信号のうちの一方と、基準的関係から導かれる基準値との差が予め設定された許容範囲を外れる場合に、第1および第2の感温素子に関する異常が有ると判定する。異常判定部は、第1の感温素子から出力された第1の出力信号および第2の感温素子から出力された第2の出力信号のうちの他方を基準的関係に適用して、基準値を生成する。
【0017】
好ましくは、第1の感温素子から出力された第1の出力信号と、第1の基準値との差が予め設定された許容範囲を外れるとともに、第2の感温素子から出力された第2の出力信号と第2の基準値との差が予め設定された許容範囲を外れる場合に、異常判定部は、第1および第2の感温素子に関する異常が有ると判定する。異常判定部は、第2の感温素子から出力された第2の出力信号を基準的関係に適用して、第1の基準値を生成するとともに、第1の感温素子から出力された第1の出力信号を基準的関係に適用して、第2の基準値を生成する。
【0018】
本発明の他の局面において、熱式流量計の異常判定方法が提供される。熱式流量計は、センサ素子、および、出力回路を含む。センサ素子は、流体の流れる流路に配置されて流体を加熱するヒータと、ヒータに対して流路の上流側に配置された第1の感温素子と、ヒータに対して流路の下流側に配置された第2の感温素子とを有する。出力回路は、第1の感温素子から出力される第1の出力信号と、第2の感温素子から出力される第2の出力信号との間の差分に基づいて、流体の流量を表す信号を出力する。異常判定方法は、第1の出力信号と第2の出力信号との間の関係の基準を定めた基準的関係を準備するステップと、第1の感温素子から出力された第1の出力信号と、第2の感温素子から出力された第2の出力信号との間の関係を、基準的関係と比較して、第1および第2の感温素子に関する異常の有無を判定するステップとを備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、熱式流量計によって流体の流量の検出を行ないながら、熱式流量計に含まれるセンサ素子の異常を判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る熱式流量計の概略的な構成を示した機能ブロック図である。
図2図1に示したセンサ素子の概略的な構成を示した平面図である。
図3図2に示したセンサ素子の模式断面図である。
図4】上流側サーモパイルの例示的な特性を説明するためのグラフである。
図5】下流側サーモパイルの例示的な特性を説明するためのグラフである。
図6図1に示された出力回路から出力される電圧(流量出力)と流量との関係を示すグラフである。
図7】上流側サーモパイルの出力電圧と下流側サーモパイルの出力電圧との間の基準的関係の例を示した図である。
図8】上流側サーモパイルおよび下流側サーモパイルに関する異常の判定の概念を説明するための図である。
図9】ダストがセンサ素子の表面に付着した状態を説明した模式図である。
図10】本発明の第1の実施の形態に係る、サーモパイルの異常を判定する処理を説明するためのフローチャートである。
図11】本発明の第2の実施の形態に係る熱式流量計の概略的な構成を示した機能ブロック図である。
図12】上流側サーモパイルの出力電圧と下流側サーモパイルの出力電圧との間の関係の温度依存性の一例を示した図である。
図13図12に示された記憶部が記憶するデータの構成例を示した図である。
図14】本発明の第2の実施の形態に係る、サーモパイルの異常を判定する処理を説明するためのフローチャートである。
図15】本発明の第2の実施の形態に係る熱式流量計の変形例の概略構成を示した機能ブロック図である。
図16図15に示された記憶部が記憶するデータの構成例を示した図である。
図17】本発明の第2の実施の形態の変形例に係る、サーモパイルの異常を判定する処理を説明するためのフローチャートである。
図18】本発明の第3の実施の形態に係る熱式流量計の変形例の概略構成を示した機能ブロック図である。
図19図18に示された記憶部が記憶するデータの構成例を示した図である。
図20】本発明の第3の実施の形態に係る、サーモパイルの異常を判定する処理を説明するためのフローチャートである。
図21】本発明の第3の実施の形態に係る熱式流量計の別の構成例を示した図である。
図22】本発明の各実施の形態に係る熱式流量計の1つの適用例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0022】
[実施の形態1]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る熱式流量計の概略的な構成を示した機能ブロック図である。図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る熱式流量計101は、センサ素子10と、出力回路11と、ヒータ駆動回路16と、記憶部20と、異常判定部22とを備える。
【0023】
センサ素子10は、上流側サーモパイル1と、ヒータ2と、下流側サーモパイル3とを含む。上流側サーモパイル1および下流側サーモパイル3の各々は、温度に応じて変化する電圧を出力する感温素子である。電圧Vuは、上流側サーモパイル1から出力される電圧である。電圧Vdは、下流側サーモパイル3から出力される電圧である。
【0024】
図1では、流体の流れる方向が点線の矢印によって示されている。上流側サーモパイル1は、ヒータ2に対して流路の上流側に配置される。下流側サーモパイル3は、ヒータ2に対して流路の下流側に配置される。
【0025】
ヒータ2は、ヒータ駆動回路16によって駆動されて熱を発する。流路を流れる流体(たとえばガス等)はヒータ2によって加熱される。ヒータ駆動回路16は、ヒータ2に電流を供給してヒータ2を駆動する。
【0026】
出力回路11は、上流側サーモパイル1の出力電圧Vuと下流側サーモパイル3の出力電圧Vdとの間の差電圧に基づいて、流量を表す信号(流量出力)を出力する。出力回路11は、差動アンプ12と、補正回路14とを含む。差動アンプ12は、上流側サーモパイル1の出力電圧Vuと下流側サーモパイル3の出力電圧Vdとの間の差電圧を増幅する。補正回路14は、差動アンプ12からの出力電圧を補正して、流体の流量に応じて変化する電圧を出力する。なお、補正回路14が必要であると限定されるものではない。補正回路14を省略した構成も出力回路11として適用可能である。
【0027】
記憶部20は、上流側サーモパイル1の出力電圧Vuと下流側サーモパイル3の出力電圧Vdとの間の関係の基準を定めた基準的関係を予め記憶する。記憶部20において、この「基準的関係」は、たとえば、上流側サーモパイル1の出力電圧Vuと、下流側サーモパイル3の出力電圧Vdとによって規定された二次元のマップとして記憶される。ただし記憶部20に記憶される「基準的関係」の形式はマップに限定されない。たとえば「基準的関係」はテーブルの形式で記憶部20に記憶されていてもよい。別の形態では、「基準的関係」は、出力電圧Vu,Vdの一方を変数として他方を導く関数として記憶部20に記憶されていてもよい。
【0028】
異常判定部22は、上流側サーモパイル1の出力電圧Vuと、下流側サーモパイル3の出力電圧Vdとを受ける。異常判定部22は、記憶部20に記憶されている、出力電圧Vu,Vdの間の基準的関係、および、上流側サーモパイル1の出力電圧Vuと下流側サーモパイル3の出力電圧Vdとに基づいて、上流側サーモパイル1および下流側サーモパイル3に関する異常の有無を判定する。
【0029】
たとえば、異常判定部22は、上流側サーモパイル1の出力電圧Vuと下流側サーモパイル3の出力電圧Vdとのうちの一方(たとえば電圧Vu)と、その基準値とを比較する。異常判定部22は、上流側サーモパイル1の出力電圧Vuと下流側サーモパイル3の出力電圧Vdとのうちの他方(たとえば電圧Vd)を基準的関係に適用することにより、基準値を導く。
【0030】
上流側サーモパイル1および下流側サーモパイル3のうちの少なくとも一方の感度が変化した場合には、たとえば、実際の電圧Vdと、その電圧Vdの基準値との間の差が変化する。同様に、実際の電圧Vuと、その電圧Vuの基準値との間の差が変化する。これらの差のうちのいずれかが予め定められた許容範囲を外れる場合に、異常判定部22は、上流側サーモパイル1および下流側サーモパイル3に関する異常があったと判定する。許容範囲は、固定されていてもよく、調整可能であってもよい。
【0031】
異常が判定された場合、異常判定部22は、上流側サーモパイル1または下流側サーモパイル3に関する異常を示す信号(異常出力)を出力する。異常出力は、たとえば、熱式流量計101の異常を報知するための回路(図示せず)に送られる。報知回路は異常出力に応じて作動する。報知回路は、たとえばLED、ブザーなどであるがこれらに限定されない。
【0032】
図2は、図1に示したセンサ素子10の概略的な構成を示した平面図である。図3は、図2に示したセンサ素子10の模式断面図である。図2および図3を参照して、センサ素子10は、キャビティ5が形成されたシリコン基板4と、上流側サーモパイル1と、ヒータ2と、下流側サーモパイル3と、温度センサ6とを有する。シリコン基板4の表面上に絶縁膜7が形成されている。上流側サーモパイル1と、ヒータ2と、下流側サーモパイル3と、温度センサ6とは、絶縁膜7内に配置される。
【0033】
上流側サーモパイル1および下流側サーモパイル3の各々は、熱電対により構成されている。この熱電対は、たとえば互いに接続されたポリシリコン(p−Si)の配線およびアルミニウム(Al)の配線によって構成され、冷接点と温接点とを有する。上流側サーモパイル1の温接点1aおよび下流側サーモパイル3の温接点3aは、キャビティ5の上方に配置される。一方、上流側サーモパイル1の冷接点1bおよび下流側サーモパイル3の冷接点3bは、シリコン基板4上に配置される。シリコン基板4の高い熱伝導性により、冷接点1b,3bの温度は、センサ素子10の周囲温度と同じである。センサ素子10の周囲温度は、ヒータ2によって加熱される前の流体の温度に等しい。
【0034】
図4は、上流側サーモパイル1の例示的な特性を説明するためのグラフである。図5は、下流側サーモパイル3の例示的な特性を説明するためのグラフである。図4および図5を参照して、グラフの横軸は流体の流量を示し、グラフの縦軸はサーモパイルの出力電圧を示す。
【0035】
上流側サーモパイル1は、加熱される前の流体の温度を検出する。上流側サーモパイル1は、ヒータ2によって加熱される前の流体の熱により、冷接点1bと温接点1aとの間に熱起電力を発生させる。したがって上流側サーモパイル1は電圧Vu(図1を参照)を出力する。
【0036】
一方、ヒータ2が発生した熱は、流体を媒体として下流側サーモパイル3に伝達される。下流側サーモパイル3の温接点3aと冷接点3bとの間の温度差により、下流側サーモパイル3は、熱起電力を発生させる。したがって下流側サーモパイル3は電圧Vd(図1を参照)を発生させる。
【0037】
流量が0であればヒータ2の周囲の熱分布が対称的になるので、電圧Vuと電圧Vdとが等しくなる。流体が流れることにより、ヒータ2の周囲の熱分布の対称性が崩れる。これにより、図4および図5に示されるように、電圧Vuと電圧Vdとの間に差が生じる。電圧Vuと電圧Vdとの間の差は、流体の流量に応じて変化する。
【0038】
図6は、図1に示された出力回路11から出力される電圧(流量出力)と流量との関係を示すグラフである。図6を参照して、流体の流量に応じて出力回路からの電圧(流量出力)が変化する。したがって、流量出力の電圧を検出することによって流体の流量を把握することができる。
【0039】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る熱式流量計の異常判定方法を詳細に説明する。図7は、上流側サーモパイル1の出力電圧Vuと下流側サーモパイル3の出力電圧Vdとの間の基準的関係の例を示した図である。図7を参照して、電圧Vu,Vdは流体の流量に応じて変化する。
【0040】
図7に示された電圧Vuと電圧Vdとの間の基準的関係が、たとえばマップとして記憶部20に予め記憶される。記憶部20に記憶されるマップは、たとえば、基準となるセンサ素子の測定によって予め決定される。これにより、電圧Vuと電圧Vdとの間の基準的関係が予め準備される。
【0041】
図8は、上流側サーモパイルおよび下流側サーモパイルに関する異常の判定の概念を説明するための図である。図8を参照して、電圧Vu,Vdの間の基準的関係が曲線(「基準曲線」と呼ぶ)としてマップ内に定義されている。マップ内にプロットされた点P1,P2の各々は、実際の出力電圧(Vu,Vd)を示す。
【0042】
点P1は、基準曲線に対して比較的近い位置にある。この場合には、上流側サーモパイル1および下流側サーモパイル3が正常であると判定される。一方、点P2は、点P1よりも基準曲線に対して離れた位置にある。
【0043】
差分ΔVdは、実際の電圧Vdと基準曲線上の電圧Vd(基準値)との間の差分を示す。差分ΔVdが予め定められた許容範囲を外れる場合に、上流側サーモパイル1および下流側サーモパイル3に関する異常が判定される。
【0044】
このような異常が判定される要因としては、サーモパイルの感度の変化が考えられる。たとえば流体に含まれる異物(ダストあるいはミストなど)がセンサ素子10の表面に付着した場合には、上流側サーモパイル1あるいは下流側サーモパイル3の感度が変化しうる。
【0045】
図9は、ダストがセンサ素子の表面に付着した状態を説明した模式図である。図9を参照して、たとえば流体に含まれるダスト31が、絶縁膜7の表面に付着する。ダスト31は、下流側サーモパイル3の上(たとえば温接点3aの上)に位置する。ダスト31によって、ヒータ2で発生した熱の伝導が変化する。たとえば、ダスト31を介して下流側サーモパイル3の温接点3aに熱が伝わりやすくなる。このために、下流側サーモパイル3の出力電圧Vdが変化する。
【0046】
このような場合には、図8で示されるように、実際の出力電圧(Vu,Vd)を示す点が基準曲線から外れた位置にある。したがって、サーモパイルの感度に関する異常を検出することができる。
【0047】
図10は、本発明の第1の実施の形態に係る、サーモパイルの異常を判定する処理を説明するためのフローチャートである。このフローチャートに示された処理は、たとえば異常判定部22が、一定の周期ごとに繰り返して実行する。
【0048】
図10を参照して、ステップS1において、異常判定部22は、上流側サーモパイル1の出力電圧Vuおよび下流側サーモパイル3の出力電圧Vdの値を取得する。たとえば異常判定部22は、電圧Vu,Vdを受けて、それらの電圧をA/D変換する。これにより異常判定部22は、電圧Vu,Vdの値を取得する。この取得された電圧Vu,Vdの値を、以下では、「実際のVu値」および「実際のVd値」と呼ぶ。
【0049】
ステップS2において、異常判定部22は、記憶部20から、電圧Vu,Vdの関係を定義した基準曲線(図7を参照)を読み出す。
【0050】
ステップS3において、異常判定部22は、実際のVu値に対応する基準曲線上のVd値を取得する。このVd値を以下では「基準Vd値」と呼ぶ。
【0051】
ステップS4において、異常判定部22は、実際のVd値に対応する基準曲線上のVu値を取得する。このVu値を以下では「基準Vu値」と呼ぶ。
【0052】
ステップS5において、異常判定部22は、基準Vd値と実際のVd値とを比較する。具体的には、異常判定部22は、基準Vd値と実際のVd値との差が予め定められた許容範囲内であるかどうかを判定する。なお、「基準Vd値と実際のVd値との差」とは、図8に示した差分ΔVdに対応する。
【0053】
差分ΔVdが許容範囲内である場合(ステップS5においてYES)、処理はステップS6に進む。一方、差分ΔVdが許容範囲外である場合(ステップS5においてNO)、処理はステップS8に進む。
【0054】
ステップS6において、異常判定部22は、基準Vu値と実際のVu値とを比較する。ステップS5の処理と同じく、異常判定部22は、基準Vu値と実際のVu値との差が予め定められた許容範囲内であるかどうかを判定する。
【0055】
基準Vu値と実際のVu値との差が許容範囲内である場合(ステップS6においてYES)、処理はステップS7に進む。一方、基準Vu値と実際のVu値との差が許容範囲外である場合(ステップS6においてNO)、処理はステップS8に進む。
【0056】
ステップS7において、異常判定部22は、上流側サーモパイル1の感度および下流側サーモパイル3の感度がともに正常であると判定する。すなわち異常判定部22は、上流側サーモパイル1の感度および下流側サーモパイル3の感度に異常がないと判定する。
【0057】
実際のVu値および実際のVd値が、図8の点P1として表される場合、基準Vu値と実際のVu値との差、および、基準Vd値と実際のVd値との差がともに許容範囲内にある。したがって、この場合には、上流側サーモパイル1の感度および下流側サーモパイル3の感度がともに正常であると判定される。
【0058】
一方、ステップS8において、異常判定部22は、上流側サーモパイル1および下流側サーモパイル3の少なくとも一方の感度が異常であると判定する。実際のVu値および実際のVd値が、図8の点P2として表される場合、たとえば、基準Vd値と実際のVd値との差が許容範囲外にある。また、基準Vu値と実際のVu値との差も許容範囲外にある。したがって、この場合には、上流側サーモパイル1および下流側サーモパイル3の少なくとも一方の感度が異常であると判定される。
【0059】
ステップS9において、異常判定部22は、サーモパイルの異常を示す信号(異常出力)を出力する。
【0060】
なお、処理の順序は、図10に示されるように限定されるものではなく、いくつかの処理の順序を適宜入れ替えてもよい。また、複数の処理が並行して実行されてもよい。
【0061】
さらに、図10に示されたフローによれば、実際のVu値に関する判定および実際のVd値に関する判定は、ともに1回のみ行なわれる。しかしながら、たとえば実際のVu値に関する異常(実際のVu値と基準Vu値との差分が許容範囲外)が判定された場合には、さらに実際のVu値に関する判定を繰返してもよい。異常判定部22は、異常を示す判定結果が複数回連続して発生する場合に、サーモパイルの感度が異常であると判定してもよい。
【0062】
また、実際のVu値および実際のVd値の組を複数回取得して、マップ上に複数の点をプロットしてもよい。たとえばその複数の点の分布に基づいて、サーモパイルの感度に関する異常の有無を判定することができる。
【0063】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態によれば、熱式流量計101は、上流側サーモパイル1の出力電圧Vuと下流側サーモパイル3の出力電圧Vdとの間の関係を、基準曲線によって定義される基準的関係と比較して、上流側サーモパイル1あるいは下流側サーモパイル3の異常を検出する。本発明の第1の実施の形態によれば、たとえばヒータをオフするといった、流量の検出時の状態と異なる状態を作り出す必要なく、サーモパイルの異常の有無を判定することができる。したがって、本発明の第1の実施の形態によれば、流体の流量を検出しながら、サーモパイルの異常の有無を判定することができる。
【0064】
たとえば、サーモパイルの異常の有無を判定するためにヒータをオフする場合、熱的な平衡状態が得られるまで判定処理の開始を待つ必要がある。さらに、ヒータをオンした場合にも、熱的な平衡状態が得られるまで流量の検出を待つ必要がある。本発明の実施の形態によれば、ヒータのオンオフ後の熱的な平衡状態を待つ必要なく、サーモパイルの異常の有無を判定することができる。図1に示すように、本発明の第1の実施の形態によれば、上流側サーモパイル1の出力電圧Vuと下流側サーモパイル3の出力電圧Vdとを用いて、通常の流量検出処理と、異常の有無の判定処理とを並行して実行できる。したがって、判定処理に要する時間を短くすることができる。
【0065】
さらに、判定処理に要する時間を短くすることができるので、連続的に異常の有無を判定することができる。たとえば上記のように、異常を示す判定結果が複数回連続して生じる場合に、サーモパイルの異常が判定される。これにより、ノイズによる瞬間的な誤動作により誤判定が生じるのを防ぐこともできる。
【0066】
なお、連続的に得られる判定結果を、たとえば記憶部20あるいは、上位の処理部に記憶させておいてもよい。たとえば故障後の上流側サーモパイル1の出力電圧Vuと下流側サーモパイル3の出力電圧Vdとを測定することにより、故障要因を推定することができる。
【0067】
さらに本発明の第1の実施の形態によれば、サーモパイルの感度の変化を検出することにより、センサ素子へのダスト、オイル等といった異物の付着による異常を検出することができる。また、たとえばサーモパイルが劣化あるは損傷した場合にも、サーモパイルの感度が変化する。したがって、サーモパイルの劣化あるいは損傷等に起因する異常も検出することができる。
【0068】
[実施の形態2]
第2の実施の形態は、流体の温度が変化する場合においてもサーモパイルの異常を判定可能な熱式流量計を提供する。
【0069】
図11は、本発明の第2の実施の形態に係る熱式流量計の概略的な構成を示した機能ブロック図である。図11を参照して、第2の実施の形態に係る熱式流量計102は、温度補正部24をさらに備える点で、図1に示した熱式流量計101(図1参照)と異なる。
【0070】
センサ素子10は、温度センサ6を備える(図2参照)。温度センサ6は、センサ素子10の周囲温度を測定して、その測定された温度Taを示す信号を温度補正部24に出力する。
【0071】
温度補正部24は、記憶部20から、上流側サーモパイル1の出力電圧Vuと下流側サーモパイル3の出力電圧Vdとの間の基準的関係を読み出すとともに、この「基準的関係」を、温度センサ6により測定された温度Taに基づいて補正する。異常判定部22は、出力電圧Vu,Vdの関係と、補正された基準的関係とを対比して、上側サーモパイル1および下側サーモパイル3の少なくとも一方に異常があるかどうかを判定する。なお、図12に示された構成の他の部分は図1の対応する部分の構成と同じであるので以後の説明を繰り返さない。
【0072】
図12は、上流側サーモパイル1の出力電圧Vuと下流側サーモパイル3の出力電圧Vdとの間の関係の温度依存性の一例を示した図である。図12を参照して、電圧Vuと電圧Vdとの間の関係は、センサ素子10の周囲温度Taに依存して変化する。したがって、この実施の形態では、記憶部20に記憶された基準的関係がセンサ素子10の周囲温度Taに応じて補正される。補正の方法は特に限定されるものではなく、たとえば以下の方法を適用して、電圧Vuと電圧Vdとの間の基準的関係を補正することができる。
【0073】
図13は、図12に示された記憶部20が記憶するデータの構成例を示した図である。図13を参照して、たとえば25℃を基準温度としたときの電圧Vu,Vdの値(Vu1,Vd1,Vu2,Vd2,・・・)が記憶部20に記憶される。この電圧Vu,Vdの値によって、基準温度における基準曲線が定義される。さらに、基準温度と異なる温度(A[℃],B[℃],C[℃],・・・)における、電圧Vdの補正係数(α1,α2,α3,β1,β2,β3,・・・)が記憶部20に記憶される。
【0074】
温度補正部24は、検知された温度Taに基づいて、記憶部20に記憶されている電圧Vdの各値に対応する補正係数を決定する。温度補正部24は、記憶部20に記憶されている電圧Vdの値に補正係数を乗じる。これにより、電圧Vuと電圧Vdとの間の基準的関係が補正される。言い換えると、基準曲線が補正される。
【0075】
なお、温度センサ6によって検知された周囲温度Taが、記憶部20に記憶されている温度のいずれにも一致しない可能性がある。この場合には、温度補正部24は、たとえば補間によって補正係数を生成する。補間の方法は特に限定されるものではなく、公知の種々の方法を適用することができる。
【0076】
図13では、補正係数は電圧Vdの値に対して設定されている。ただし、補正係数をこのように限定する必要はない。補正係数は電圧Vuの各値に対して設定されていてもよい。すなわち図13に示されたデータ構成から電圧Vuと電圧Vdとを入れ替えた構成も、本発明の第2の実施の形態に適用可能である。
【0077】
図14は、本発明の第2の実施の形態に係る、サーモパイルの異常を判定する処理を説明するためのフローチャートである。図10および図14を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る異常判定処理は、ステップS1A,S2Aの処理が追加される点において第1の実施の形態に係る異常判定処理と異なる。第2の実施の形態では、ステップS1A,S2A,S2の処理は、温度補正部24によって実行される。
【0078】
ステップS1Aの処理は、たとえば、ステップS1の処理に続いて実行される。ステップS1Aにおいて、温度補正部24は、温度センサ6からセンサ素子10の周囲温度Taの値を取得する。
【0079】
ステップS2において、温度補正部24は、記憶部20から基準曲線を読み出す。ステップS2Aにおいて、温度補正部24は、上記の方法に従って基準曲線を補正する。
【0080】
他のステップの処理は、本発明の第1の実施の形態に係る異常判定処理の対応するステップの処理と同じであるので以後の詳細な説明は繰り返さない。なお、本発明の第2の実施の形態では、ステップS3において取得される基準Vd値、およびステップS4において取得される基準Vu値は、いずれも、補正された値(補正された基準曲線上の値)である。
【0081】
たとえば流体の温度が変化した場合に、センサ素子10の周囲温度が変化する可能性がある。周囲温度の変化によってサーモパイルの感度が変化した場合、サーモパイルの異常を正しく検出できない可能性がある。本発明の第2の実施の形態によれば、センサ素子10の周囲温度に応じて、記憶部20に記憶された基準的関係が補正される。したがって、本発明の第2の実施の形態によれば、センサ素子10の周囲温度が変化した場合であっても、サーモパイルの異常の有無を正確に判定することができる。たとえば流体の温度が変化することによりセンサ素子10の周囲温度が変化しうる。本発明の第2の実施の形態によれば、このような場合にもサーモパイルの異常の有無を正確に判定することができる。
【0082】
(変形例)
図12に示されるように、電圧Vuと電圧Vdとの間の相関関係を示す基準曲線は、周囲温度に応じて異なる。したがって、記憶部20は、異なる温度に対応した複数の基準曲線を記憶してもよい。
【0083】
図15は、本発明の第2の実施の形態に係る熱式流量計の変形例の概略構成を示した機能ブロック図である。図11および図15を参照して、熱式流量計102Aは、温度補正部24に代えて選択部24Aを備える点で熱式流量計102と異なる。熱式流量計102Aの他の部分の構成は、熱式流量計102に対応する部分の構成と同様であるので以後の説明は繰り返さない。
【0084】
上記のとおり、記憶部20は、異なる温度に対応した複数の基準曲線を記憶する。選択部24Aは、温度センサ6により検知された周囲温度Taに基づいて、複数の基準曲線の中から、周囲温度Taに対応する基準曲線を選択する。選択部24Aにより選択された基準曲線は、異常判定部22に与えられる。
【0085】
図16は、図15に示された記憶部20が記憶するデータの構成例を示した図である。図16を参照して、温度ごとに、電圧Vuに対する電圧Vdの値が定義される。各温度での複数の(Vu,Vd)の組によって、温度ごとの基準曲線が定義される。温度センサ6によって検知された周囲温度TaがA[℃]とB[℃]との間にある場合、たとえば、選択部24Aは、A[℃]の場合の基準曲線、B[℃]の場合の基準曲線のいずれか一方を選択してもよい(たとえば、測定された温度により近い温度での基準曲線が選択される)。
【0086】
図17は、本発明の第2の実施の形態の変形例に係る、サーモパイルの異常を判定する処理を説明するためのフローチャートである。図14および図17を参照して、変形例に係る異常判定処理では、ステップS2A,S2の処理に代えてステップS2Bの処理が実行される。ステップS2Bにおいて、選択部24Aは、記憶部20に記憶されている複数の基準曲線の中から、周囲温度Taに対応した基準曲線を選択する。他のステップの処理は、図10あるいは図14の対応するステップの処理と同様であるので以後の説明は繰り返さない。
【0087】
この構成によれば、センサ素子10の周囲温度に応じた基準的関係が選択される。したがって、センサ素子10の周囲温度が変化した場合であっても、サーモパイルの異常の有無を正確に判定することができる。
【0088】
なお、選択部24Aの後段に温度補正部24を設けてもよい。この構成の場合、温度補正部24は、選択部24Aによって選択された基準曲線を周囲温度Taに応じて補正する。補正後の基準曲線が異常判定部22に与えられる。このような構成によっても、周囲温度の変化に関わらず、サーモパイルの異常の有無を正確に判定することができる。
【0089】
[実施の形態3]
第3の実施の形態は、異なる種類の流体の流速を計測する場合においてもサーモパイルの異常を判定可能な熱式流量計を提供する。
【0090】
図18は、本発明の第3の実施の形態に係る熱式流量計の変形例の概略構成を示した機能ブロック図である。図1および図18を参照して、熱式流量計103は、選択部26をさらに備える点で熱式流量計101と異なる。熱式流量計103の他の部分の構成は、熱式流量計101に対応する部分の構成と同様であるので以後の説明は繰り返さない。
【0091】
記憶部20は、異なる流体の種類に対応した複数の基準曲線を記憶する。選択部26は、流体の種類に関する流体種類情報を受ける。選択部26は、複数の基準曲線の中から、流体種類情報によって示された流体に対応する基準曲線を選択する。
【0092】
流体種類情報を選択部26に与えるための方法は、特に限定されるものではない。たとえば熱式流量計103の外部から選択部26に流体種類情報が与えられてもよい。あるいは、たとえばスイッチ等の部品によって、流体種類情報を示す信号を発生させてもよい。
【0093】
図19は、図18に示された記憶部20が記憶するデータの構成例を示した図である。図19を参照して、流体として、複数種類のガス(たとえばガスGasA,GasB,GasC,・・・)が定義される。ガスの種類ごとに、電圧Vuに対するVdの値が定義される。ガスの種類ごとに定義された複数(Vu,Vd)の組によって、ガスの種類ごとの基準曲線が定義される。
【0094】
図20は、本発明の第3の実施の形態に係る、サーモパイルの異常を判定する処理を説明するためのフローチャートである。図10および図20を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る異常判定処理では、ステップS1の処理に続いてステップS1Bの処理が実行される。さらにステップS2の処理に代えてステップS2Cの処理が実行される。
【0095】
ステップS1Bにおいて、選択部26は、流体種類情報を受ける。これにより選択部26は、流体の種類の情報を取得する。ステップS2Cにおいて、選択部26は、記憶部20に記憶されている複数の基準曲線の中から、流体の種類に対応した基準曲線を選択する。他のステップの処理は、図10の対応するステップの処理と同様であるので以後の説明は繰り返さない。
【0096】
本発明の第3の実施の形態によれば、本発明の第1の実施の形態による効果と同じ効果を得ることができる。特に本発明の第3の実施の形態によれば、流体の種類が異なる場合であっても、サーモパイルの異常の有無を判定することができる。
【0097】
なお、本発明の第3の実施の形態と本発明の第2の実施の形態とを組み合わせてもよい。図21は、本発明の第3の実施の形態に係る熱式流量計の別の構成例を示した図である。図18および図21を参照して、熱式流量計103Aは、温度補正部24をさらに備える。温度補正部24は、選択部26によって選択された基準曲線を周囲温度Taに応じて補正する。
【0098】
記憶部20は、図19に示されたデータに加えて、流体の各種類に対応して、温度ごとの補正係数を記憶する。温度補正部24は、その補正係数を記憶部20から読み出して、基準曲線を補正する。この構成によれば、流体の種類あるいは温度が変化した場合にも、サーモパイルの感度に関する異常の有無を判定することができる。
【0099】
(適用例)
本発明の各実施の形態に係る熱式流量計は、民生用途、産業用途を問わず、流体の計測に用いることができる。上記の各実施の形態に係る熱式流量計は、たとえばガスメータ、ガスボイラ等のガス流量測定あるいは差圧測定などに用いることができる。
【0100】
図22は、本発明の各実施の形態に係る熱式流量計の1つの適用例を示した図である。図22を参照して、熱式流量計101は、ガスライン111の途中に設けられて、ガスライン111を流れるガス(気体燃料)の流量を検出する。ガスライン111を流れるガスは、空気ライン112を流れる空気と合流して、燃焼装置115に送られる。なお、熱式流量計101に代えて、熱式流量計102,102A,103,103Aのいずれかを用いてもよい。
【0101】
ガスライン111にはガスの流量を調整するための制御弁113が設けられる。制御装置114は、制御弁113を制御して、ガスの流量が最適となる(たとえば最適な空燃比が得られる)ようにガスの流量を制御する。制御装置114は、熱式流量計101からの信号(流量出力)に応じて制御弁113を制御する。なお、熱式流量計101は、たとえば、ガスライン111を流れるガスの圧力と大気圧との間の差圧、もしくはガスライン111を流れるガスの圧力と空気ライン112を流れる空気の圧力との間の差圧を検出するように配置されてもよい。
【0102】
なお、上記の各実施の形態では、感温素子としてサーモパイルを用いたセンサ素子が示されている。しかしながら感温素子は、温度に応じて出力電圧を変化させる素子であればサーモパイルに限定されるものではない。そのような感温素子として、たとえばサーミスタを用いることもできる。
【0103】
また、上記の各実施の形態では、感温素子(サーモパイル)の出力電圧を、感温素子(サーモパイル)から出力される出力信号として用いた。しかしながら、感温素子から出力される出力信号として、感温素子の出力電流を使用する実施形態も、本発明の実施の形態に含むことができる。この形態の場合には、上記の各実施の形態における「出力電圧」が「出力電流」に置き換えられるとともに、「基準的関係」が、上流側の感温素子の出力電流と下流側の感温素子の出力電流との間の関係に置き換えられる。これにより、上流側の感温素子および下流側の感温素子の感度に関する異常を検出することができる。なお、出力回路は、上流側の感温素子の出力電流と下流側の感温素子の出力電流との差分を増幅して流体の流量を表す信号を出力してもよい。あるいは、出力回路は、各々の感温素子の出力電流を電圧に変換した上で、2つの電圧の差分を増幅して流体の流量を表す信号を出力してもよい。
【0104】
また、図10図14図17図20に示されたフローチャートでは、上流側サーモパイル1から出力された電圧Vuおよび下流側サーモパイル3から出力された電圧Vdのうちの一方と、基準的関係から導かれる基準値(基準Vu値または基準Vd値)との差が予め設定された許容範囲を外れる場合に、上流側サーモパイル1および下流側サーモパイル3に関する異常が判定される(ステップS5においてNOの場合、またはステップS6においてNOの場合)。しかしながら、実際のVu値と基準Vu値(第1の基準値)との差が予め定められた許容範囲外であり、かつ、実際のVd値と基準Vd値(第2の基準値)との差が予め定められた許容範囲外である場合に、異常判定部22は、上流側サーモパイル1の感度および下流側サーモパイル3の感度に異常が有ると判定してもよい。
【0105】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0106】
1 上流側サーモパイル、1a,3a 温接点、1b,3b 冷接点、2 ヒータ、3 下流側サーモパイル、4 シリコン基板、5 キャビティ、6 温度センサ、7 絶縁膜、10 センサ素子、11 出力回路、12 差動アンプ、14 補正回路、16 ヒータ駆動回路、20 記憶部、22 異常判定部、24 温度補正部、24A,26 選択部、31 ダスト、101,102,102A,103,103A 熱式流量計、111 ガスライン、112 空気ライン、113 制御弁、114 制御装置、115 燃焼装置、P1,P2 点。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22