特許第5835211号(P5835211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5835211多孔質積層フィルム、蓄電デバイス用セパレータ、および蓄電デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5835211
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】多孔質積層フィルム、蓄電デバイス用セパレータ、および蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/32 20060101AFI20151203BHJP
   B32B 27/14 20060101ALI20151203BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   B32B5/32
   B32B27/14
   H01M2/16 L
   H01M2/16 P
   H01M2/16 M
【請求項の数】11
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2012-508842(P2012-508842)
(86)(22)【出願日】2012年1月18日
(86)【国際出願番号】JP2012050925
(87)【国際公開番号】WO2012099149
(87)【国際公開日】20120726
【審査請求日】2015年1月9日
(31)【優先権主張番号】特願2011-9763(P2011-9763)
(32)【優先日】2011年1月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100113398
【弁理士】
【氏名又は名称】寺崎 直
(72)【発明者】
【氏名】若原 葉子
(72)【発明者】
【氏名】石田 康之
(72)【発明者】
【氏名】大倉 正寿
(72)【発明者】
【氏名】東大路 卓司
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−008966(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/049568(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/066768(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
H01M 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系多孔フィルムと、
前記ポリオレフィン系多孔フィルムの少なくとも一方の主面上に積層された多孔層であって、バインダーと、アスペクト比が1.5以上10以下であり、長径に垂直な断面形状について、式(1)で定義される異形度Psが1.0以上1.4以下である耐熱粒子とを含有する多孔層と、
を備えることを特徴とする多孔質積層フィルム。
Ps=Rl/Rs …(1)
Ps:異形度
Rl:最小外接円の半径
Rs:最大内接円の半径
【請求項2】
前記耐熱粒子は、炭酸カルシウムからなることを特徴とする請求項1に記載の多孔質積層フィルム。
【請求項3】
前記多孔層における前記耐熱粒子の質量比に対する前記多孔層における前記バインダーの質量比の割合が0.1以上1以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質積層フィルム。
【請求項4】
前記多孔層における前記耐熱粒子の質量比が40質量%以上90質量%未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多孔質積層フィルム。
【請求項5】
前記多孔層は、バインダーとして変性ポリオレフィンを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の多孔質積層フィルム。
【請求項6】
前記ポリオレフィン系多孔フィルムは、ポリプロピレンを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の多孔質積層フィルム。
【請求項7】
前記ポリオレフィン系多孔フィルムは、β晶形成能を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の多孔質積層フィルム。
【請求項8】
前記バインダーと前記耐熱粒子との間、および、前記バインダーとポリオレフィン系多孔フィルムとの間において、前記バインダーが溶融して結着していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の多孔質積層フィルム。
【請求項9】
前記バインダーの融点が70〜120℃であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の多孔質積層フィルム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の多孔質積層フィルムを備えることを特徴とする蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項11】
正極と負極との間に設けられ、両者の接触を防止しつつ、電解液中のイオンを透過させるセパレータを備えた蓄電デバイスにおいて、
前記セパレータは、請求項10に記載の蓄電デバイス用セパレータであることを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系多孔フィルムを基材とする多孔質積層フィルム、該多孔質積層フィルムからなる蓄電デバイス用セパレータ、および該蓄電デバイス用セパレータを備える蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリオレフィン系多孔フィルムは、電気絶縁性やイオン透過性に加えて、力学特性にも優れることから、特にリチウムイオン二次電池等の蓄電デバイスにおいてセパレータ用途に広く用いられている。近年では、電池の高出力密度、高エネルギー密度化に伴い、ポリオレフィン系多孔フィルムの大孔径化、薄膜化、高空孔率化などが検討されている(例えば、特許文献1、2参照)。また、ポリオレフィン系多孔フィルムをセパレータとして使用した蓄電デバイスの安全性を確保するために、耐熱樹脂と球状粒子からなる多孔層やバインダーと球状粒子からなる層をポリオレフィン系多孔フィルムの最表層に設ける提案がなされている(例えば、特許文献3、4参照)。さらに、バインダーと板状粒子からなる層をフィルムの最表層に設ける提案もなされている(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−302434号公報
【特許文献2】国際公開第2005/61599号
【特許文献3】特開2001−319634号公報
【特許文献4】特開2008−266593号公報
【特許文献5】国際公開第2007/66768号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、球状粒子を含む層においては粒子間の距離が長くなるため、球状粒子を含む層をポリオレフィン系多孔フィルムに積層する場合、加熱時に当該積層フィルムが容易に収縮してしまったり、カールしてしまうといった問題があった。また、板状粒子を含む層においては粒子の重なり合いにより気密性が増すので、板状粒子を含む層をポリオレフィン系多孔フィルムに積層する場合、当該積層フィルムをセパレータとして用いた際に電気抵抗が上昇するといった問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高い透気性、平面性、および耐熱性を有し、優れた加工性および蓄電デバイス用セパレータとして用いた場合の電池性能と安全性とを高いレベルで両立可能な多孔質積層フィルムと、該多孔質積層フィルムからなる蓄電デバイス用セパレータと、該蓄電デバイス用セパレータを備える蓄電デバイスとを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る多孔質積層フィルムは、ポリオレフィン系多孔フィルムと、該ポリオレフィン系多孔フィルムの少なくとも一方の主面上に積層された多孔層であって、バインダーと、アスペクト比が1.5以上10以下であり、長径に垂直な断面形状について、式(1)で定義される異形度Psが1.0以上1.4以下である耐熱粒子とを含有する多孔層とを備えることを特徴とする。
Ps=Rl/Rs …式(1)
Rl:最小外接円の半径
Rs:最大内接円の半径
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高い透気性、平面性、および耐熱性に優れた多孔質積層フィルムを得ることができる。従って、このような多孔質積層フィルムを蓄電デバイス用セパレータとして用いることにより、良好な特性を示す電池等の蓄電デバイスを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る多孔質積層フィルムの構造を示す断面図である。
図2図2は、耐熱粒子の異形度を説明する概略断面図である。
図3図3は、楕円の一例を示す概略図である。
図4図4は、紡錘形の一例を示す概略図である。
図5図5は、多角形の一例を示す概略図である。
図6図6は、星形多角形の一例を示す概略図である。
図7図7は、平面性測定のための装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る多孔質積層フィルムの実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
図1は、本実施の形態に係る多孔質積層フィルムの構造を示す断面図である。図1に示すように、本実施の形態に係る多孔質積層フィルム10は、ポリオレフィン系多孔フィルム11と、該ポリオレフィン系多孔フィルム11の少なくとも一方の主面上に積層され、耐熱粒子12aおよびバインダー12bを含有する多孔層12とを備える。ポリオレフィン系多孔フィルム11にこのような多孔層12を設けることで、耐熱寸法安定性に優れる多孔質積層フィルム10を実現することができると共に、該多孔質積層フィルム10を高出力用リチウムイオン二次電池等の蓄電デバイスにおけるセパレータとして好適に用いることができ、良好な電気特性と高い安全性とを併せ持つ蓄電デバイスを実現することが可能となる。
【0010】
本実施の形態において基材として用いるポリオレフィン系多孔フィルム11は、フィルムの両表面を貫通し、透気性を有する微細な貫通孔を多数有している。ポリオレフィン系フィルムに貫通孔を形成する方法としては湿式法および乾式法が知られており、どちらを用いても構わないが、工程を簡略化できるという観点からは乾式法が望ましい。
【0011】
ポリオレフィン系多孔フィルム11を構成するポリオレフィンとしては、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1などの単一ポリオレフィン樹脂や、これら樹脂の混合物、さらには、単量体同士をランダム共重合やブロック共重合した樹脂を用いることができる。これらの中でもポリプロピレンにより構成されていることが好ましい。
【0012】
ポリオレフィン系多孔フィルム11は、耐熱性の観点で、155〜180℃の融点を有することが好ましい。融点が155℃未満であると、多孔層12をポリオレフィン系多孔フィルム11上に積層する際に、多孔フィルムの寸法が変化してしまう場合がある。一方、ポリオレフィン系多孔フィルム11の融点が180℃を超えるようにするためには、ポリオレフィン樹脂以外の耐熱性樹脂を多量に添加する必要があり、それにより、セパレータとしての基本特性であるイオン電導性が著しく低下してしまう場合がある。なお、ポリオレフィン系多孔フィルム11の融点とは、単一の融点を示す場合はもちろんその融点のことを指すが、例えばポリオレフィン系多孔フィルム11がポリオレフィンの混合物から構成されるなどして、複数の融点を有する場合は、そのうち最も高温側に現れる融点をポリオレフィン系多孔フィルム11の融点とする。ポリオレフィン系多孔フィルム11の融点は、より好ましくは耐熱性の観点から160〜180℃、さらに好ましくは165〜180℃である。また、上述したように、ポリオレフィン系多孔フィルム11が複数の融点を示す場合は、それら全てが上記範囲内にあることが好ましい。
【0013】
ポリオレフィン系多孔フィルム11は、優れた電池特性を実現するために、ポリプロピレンにより構成されていることが好ましく、特にβ晶法と呼ばれる多孔化法を用いて製造された多孔フィルムであることが好ましい。ポリオレフィン系多孔フィルム11がβ晶形成能を有する場合、後述するβ晶法によるフィルムの多孔化によって多孔フィルムを製造することができる。β晶法によって得られるポリオレフィン系多孔フィルム11は、生産性に優れ、高い透気性を発現するのに適した表面の開孔径(表面孔径)を持つことから、多孔質積層フィルム10の基材として好適に用いることができる。
【0014】
本明細書において、β晶法とは、後述するβ晶形成能を有する樹脂をシート化した後、延伸によってフィルムに貫通孔を形成する手法をいう。β晶法を用いてフィルムに貫通孔を形成するためには、ポリプロピレンを含む樹脂組成物(以下、単にポリプロピレン樹脂ということがある)中にβ晶を多量に生成させることが重要となる。そのためには、β晶核剤と呼ばれる、ポリプロピレン樹脂中に添加することでβ晶を選択的に生成させる結晶化核剤を添加剤として用いることが好ましい。β晶核剤としては種々の顔料系化合物やアミド系化合物などを挙げることができるが、特に特開平5−310665号公報に開示されているアミド系化合物を好ましく用いることができる。β晶核剤の含有量としては、ポリプロピレン樹脂全体を100質量部とした場合、0.05〜0.5質量部であることが好ましく、0.1〜0.3質量部であればより好ましい。
【0015】
ポリオレフィン系多孔フィルム11を構成するポリプロピレン樹脂はメルトフローレート(以下、MFRと表記する、測定条件は230℃、2.16kg)が2g〜30g/10分の範囲のアイソタクチックポリプロピレン樹脂であることが好ましい。MFRが上述した好ましい範囲を外れると、延伸フィルムを得ることが困難となる場合がある。より好ましくは、MFRが3g〜20g/10分である。また、アイソタクチックポリプロピレン樹脂のアイソタクチックインデックスは90〜99.9%であれば好ましい。アイソタクチックインデックスが90%未満であると、樹脂の結晶性が低く、高い透気性を達成するのが困難な場合がある。アイソタクチックポリプロピレン樹脂は市販されている樹脂を用いることができる。
【0016】
ポリオレフィン系多孔フィルム11には、ホモポリプロピレン樹脂を用いることができるのはもちろんのこと、製膜工程での安定性や造膜性、物性の均一性の観点から、ポリプロピレンにエチレン成分やブテン、ヘキセン、オクテンなどのα−オレフィン成分を5質量%以下の範囲で共重合した樹脂を用いてもよい。なお、ポリプロピレンへのコモノマーの導入形態としては、ランダム共重合でもブロック共重合でもいずれでも構わない。また、上記のポリプロピレン樹脂は、0.5〜5質量%の範囲で高溶融張力ポリプロピレンを含有していることが製膜性向上の点で好ましい。高溶融張力ポリプロピレンとは、高分子量成分や分岐構造を有する成分をポリプロピレン樹脂中に混合したり、ポリプロピレンに長鎖分岐成分を共重合させたりすることで溶融状態での張力を高めたポリプロピレン樹脂であり、中でも長鎖分岐成分を共重合させたポリプロピレン樹脂を用いることが好ましい。この高溶融張力ポリプロピレンは市販されており、例えば、Basell社製のポリプロピレン樹脂であるPF814、PF633、PF611や、Borealis社製のポリプロピレン樹脂であるWB130HMSや、Dow社製のポリプロピレン樹脂であるD114、D206を用いることができる。
【0017】
ポリオレフィン系多孔フィルム11を構成するポリプロピレン樹脂には、延伸時の空隙形成効率を高めて孔径を拡大させることで透気性が向上することから、ポリプロピレン樹脂にエチレン・α−オレフィン共重合体を1〜10質量%添加することが好ましい。ここで、エチレン・α−オレフィン共重合体としては直鎖状低密度ポリエチレンや超低密度ポリエチレンを挙げることができ、中でも、オクテン−1を共重合したエチレン・オクテン−1共重合体を好ましく用いることができる。このエチレン・オクテン−1共重合体としては、市販されている樹脂を用いることができる。
【0018】
ポリオレフィン系多孔フィルム11の透気抵抗は、50〜500秒/100mlであることが好ましい。透気抵抗が50秒/100ml未満では、多孔質積層フィルム10をセパレータとして用いた際に絶縁を保つことが困難となる場合がある。また、500秒/100mlを超えると、多孔質積層フィルム10をセパレータとして用いた際の電池特性が低下する傾向にある。ポリオレフィン系多孔フィルム11の透気抵抗は、より好ましくは80〜400秒/100ml、さらに好ましくは100〜300秒/100mlである。
【0019】
ポリオレフィン系多孔フィルム11の空孔率は、60〜90%であることが好ましい。空孔率が60%未満であると、多孔質積層フィルム10をセパレータとして用いた際の特性が不十分となる場合がある。また、空孔率が90%を超えると、セパレータの特性、および強度の観点からの特性が不十分となる場合がある。ポリオレフィン系多孔フィルム11の空孔率は、ポリオレフィン系多孔フィルム11の比重(ρ)とポリオレフィン系樹脂の比重(d)から、式(2)より求めることができる。
空孔率(%)=[(d−ρ)/d]×100 …(2)
【0020】
透気抵抗および空孔率をかかる好ましい範囲に制御する方法としては、ポリプロピレン樹脂にエチレン・α−オレフィン共重合体を前述した特定比率で混合した樹脂を用いることで達成することができる。さらに、後述する特定の二軸延伸条件を採用することにより効果的に達成することができる。
【0021】
ポリオレフィン系多孔フィルム11は、β晶法により多孔化することが好ましいため、フィルムを構成する(含まれる)ポリプロピレン樹脂のβ晶形成能が40〜90%であることが好ましい。
【0022】
ここで、β晶形成能とは、以下の条件で測定される一定条件下におけるポリプロピレン樹脂中のβ晶の存在比率を示しており、β晶をどれだけ形成する能力があるのかを示す値である。β晶形成能の測定は、次のようにして行われる。即ち、ポリプロピレン樹脂あるいはポリプロピレンフィルム5mgを、示差走査熱量計を用いて窒素雰囲気下で室温から240℃まで10℃/分で昇温(ファーストラン)させ、10分間保持した後、30℃まで10℃/分で冷却し、5分間保持する。その後、再度10℃/分で昇温(セカンドラン)させた際に観察される融解ピークについて、145〜157℃の温度領域にピークが存在する融解をβ晶の融解ピーク、158℃以上にピークが観察される融解をα晶の融解ピークとして、それぞれ融解熱量を求める。そして、α晶の融解熱量をΔHα、β晶の融解熱量をΔHβとしたとき、以下の式(3)で計算される値をβ晶形成能とする。
β晶形成能(%)=[ΔHβ/(ΔHα+ΔHβ)]×100 …(3)
【0023】
β晶形成能が40%未満である場合、フィルム製造時におけるβ晶量が少ないために、α晶への転移を利用してフィルム中に形成される空隙数が少なくなり、その結果、透過性の低いフィルムしか得られないことがある。また、β晶形成能が90%を超える場合、粗大孔が形成され、蓄電デバイス用セパレータとしての機能を有さなくなることがある。β晶形成能を40〜90%の範囲内にするためには、アイソタクチックインデックスの高いポリプロピレン樹脂を使用し、かつ、上述のβ晶核剤を添加することが好ましい。β晶形成能としては45〜80%であればより好ましい。
【0024】
また、上記β晶法以外にポリオレフィン系多孔フィルム11を製造する方法としては、抽出法と呼ばれる方法や、ラメラ延伸法と呼ばれる方法等があり、いずれを用いても良い。ここで、抽出法とは、ポリプロピレンをマトリックス樹脂としてシート化する際、抽出可能な物質を添加物として混合し、該物質の良溶媒を使用して添加物のみを抽出することで、マトリックス樹脂中に空隙を形成する方法である。また、ラメラ延伸法とは、フィルムの溶融押出時に、低温押出および高ドラフト比を採用することにより、シート化した延伸前フィルム中のラメラ構造を制御し、これを一軸延伸することでラメラ界面での開裂を発生させ、空隙を形成する方法である。
【0025】
ポリオレフィン系多孔フィルム11は、表面孔径について、0.01μm以上0.5μm未満の孔径の孔の数(A)と0.5μm以上10μm未満の口径の孔の数(B)との比率である(A)/(B)の値が0.1〜4の範囲内であることが好ましく、0.4〜3の範囲内であることがより好ましい。(A)/(B)の値が0.1より小さいと、多孔フィルム11の表面に大径の開孔部分が多くなり、多孔層12の形成時に多孔フィルム11に塗工する塗剤が開孔部に入り込みすぎて透気性が低下し、セパレータとして使用した際に電池の性能に影響を及ぼす場合がある。一方、(A)/(B)の値が4を超えると、多孔フィルム11の表面に小径の開孔部の比率が多くなり、塗工・乾燥時に多孔層12の材料の一部が開孔部分に入り込みにくくなるため、十分な接着性が発現しなくなったり、孔の閉塞により透気性が低下したりすることがある。
【0026】
表面孔径をかかる好ましい範囲に制御する方法としては、上述のβ晶核剤を添加したポリプロプレン樹脂を延伸し、多孔化することで達成することができる。ポリオレフィン系多孔フィルム11の表面孔径は、走査型電子顕微鏡を用いて表面画像を撮影し、画像解析を行うことで確認することができる。
【0027】
ポリオレフィン系多孔フィルム11は、少なくとも一軸方向に延伸されていることが好ましい。未延伸のフィルムを用いた場合、フィルムの空孔率や機械強度が不十分となることがある。ポリオレフィン系多孔フィルム11を少なくとも一軸方向に延伸する方法としては、未延伸のフィルムの加熱後、テンター法、ロール法、インフレーション法、又はこれらの組合せにより所定の倍率で延伸する方法が好ましく用いられる。延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸、逐次延伸および多段延伸(例えば同時二軸延伸および逐次延伸の組合せ)のいずれでもよいが、逐次二軸延伸が好ましい。
【0028】
ポリオレフィン系多孔フィルム11は、組成の異なる、もしくは同一組成からなる複数の層を積層してなる積層フィルムであってもよい。積層フィルムとすると、フィルム表面特性とフィルム全体の特性を好ましい範囲に個別に制御できる場合があるので、好ましい。その場合、A|B|A型の3層積層とすることが好ましいが、A|B型の2層積層としても良いし、また、4層以上の多層積層としても問題ない。なお、積層厚み比は、本発明の効果を損なわない範囲において特に制限されない。
【0029】
ポリオレフィン系多孔フィルム11には、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤や無機あるいは有機粒子からなる滑剤、さらにはブロッキング防止剤や充填剤、非相溶性ポリマーなどの各種添加剤を含有させてもよい。特に、ポリオレフィン樹脂の熱履歴による酸化劣化を抑制する目的で、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して酸化防止剤を0.01〜0.5質量部含有せしめることは好ましいことである。
【0030】
ポリオレフィン系多孔フィルム11は、貫通孔の平均孔径が40nm〜400nmであることが好ましい。平均孔径が40nm未満では、多孔質積層フィルム10をセパレータとして用いた際の特性が不十分となるおそれがある。一方、平均孔径が400nmを超えると、多孔層12からの耐熱粒子12aの脱落や微短絡が起こりやすくなり、電池の寿命に対して影響を及ぼすおそれがある。
【0031】
貫通孔の平均孔径をかかる好ましい範囲に制御する方法としては、ポリプロピレン樹脂にエチレン・α−オレフィン共重合体を上述した特定比率で混合した樹脂を用いることで達成することができる。
【0032】
本実施の形態に係る多孔質積層フィルム10とは、上述したポリオレフィン系多孔フィルム11の少なくとも片面に多孔層12が設けられているフィルムを指す。
【0033】
本実施の形態において多孔層12とは、耐熱粒子12aとバインダー12bとから構成され、透気性を有する層を指す。多孔層12の透気性の有無は多孔質積層フィルム10の透気性を評価することで確認することができる。
【0034】
多孔質積層フィルム10は、当該多孔層12を設けることで、ポリオレフィン系多孔フィルム11に優れた平面性および耐熱性を付与することができる。以下に当該多孔層12について、詳しく説明する。
【0035】
多孔層12に用いられる耐熱粒子12aは、アスペクト比(粒子の長径/粒子の短径)が1.5以上10以下という形状の特徴を有する。
アスペクト比が上記範囲内の粒子を用いることで、多孔層12中に粒子が分散した際に粒子がさまざまな方向に配列するので、多孔質積層フィルム10に対し、フィルムの長手方向および幅方向にバランスの取れた平面性と耐熱性を付与することができる。
【0036】
アスペクト比が10より大きいと、耐熱粒子12aを塗液に添加してポリオレフィン系多孔フィルム11に塗布した際に、配向が大きくなり、耐熱性や平面性が低下する場合がある。また、アスペクト比が1.5より小さいと、塗液を塗布した後の乾燥工程において、多孔質積層フィルム10が流動しやすく、カールが発生しやすくなる場合があり、また、粒子の充填率が上がることで透気抵抗が高くなる場合がある。アスペクト比はより好ましくは2以上8以下、さらに好ましくは2以上5以下である。また、耐熱粒子12aは、全体として、例えば円柱の両端を閉じた紡錘形状のように、柱状形状の両端を閉じた形状を有しているとより好ましい。
【0037】
耐熱粒子12aの断面形状の例を図2に示す。
多孔層12に用いる耐熱粒子12aの長径に垂直な断面1は、式(1)で定義される異形度Psが1.0以上1.4以下であるという形状の特徴を有する。
Ps=Rl/Rs …(1)
Rl:最小外接円3の半径
Rs:最大内接円2の半径
【0038】
耐熱粒子12aの異形度Psが1.0以上1.4以下であり、且つ、アスペクト比が1.5以上10以下であることにより、粒子表面で平面状になる領域が小さくなり、多孔層12中において耐熱粒子12a同士が点で接触して網目のような構造を呈することにより、透気性、耐熱性、および平面性等の優れた特性を示す。
【0039】
異形度Psは1.0に近いほど円形に近い形状であることを示し、1.0より大きくなるにつれて形状が不定形になることを示す。異形度Psが1.4より大きいと、粒子の長径に垂直な断面形状に平滑な部分や凹凸が増え、粒子同士が面で接触する構造となる。この場合、透気抵抗が大きくなるため、セパレータとして使用した際に電池の性能に影響を及ぼすおそれがある。また、単位体積あたりの粒子の充填率が上がることで多孔層12の気密性が増し、多孔層12の透気抵抗が大きくなる場合がある。異形度Psは、より好ましくは1.0以上1.3以下、さらに好ましくは1.0以上1.2以下である。
【0040】
耐熱粒子12aの長径に垂直な断面の形状は、円、楕円、紡錘形の投影形状、長方形と円弧または楕円の弧とを組み合わせてなる形状、5つ以上の頂点をもつ多角形または星型多角形、およびこれらを組み合わせてなる形状のうち、少なくとも1つ以上が選ばれてなる形状であることが好ましい。
【0041】
上記において、楕円とは、例えば図3に示すように、平面上のある2定点からの距離の和が一定となるような点の集合から作られる形状を指す。紡錘形の投影形状とは、例えば図4に示すように、円柱形の両端を閉じた形状(紡錘形)を、長軸と平行な面に投影した形状を指す。多角形とは、例えば図5に示すように、平面上の閉じた単純折れ線によって囲まれた形状を指す。星型多角形とは、例えば図6に示すように、多角形の各辺を延長して得られる交点を結んだ形状を指す。なお、上記以外の形状とする場合、耐熱粒子12aの長径に垂直な断面形状の輪郭に平滑な部分や凹凸が増え、単位体積あたりの耐熱粒子12aの充填率が上がることで多孔層12の透気抵抗が大きくなることもある。
【0042】
本実施の形態において、耐熱粒子12aの断面形状は、電子顕微鏡写真の画像解析により、すなわち電子顕微鏡写真に写された個々の粒子毎に投影像を求めることにより確認することができる。
【0043】
本実施の形態において、耐熱粒子12aとは、粒子の形状が少なくとも200℃まで保持される粒子をいう。より好ましくは300℃まで形状が保持され、さらに好ましくは330℃まで形状が保持される。すなわち粒子の融点、軟化点、熱分解温度、または体積変化を伴う相転移が上記温度まで起こらないことが好ましい。具体的には、少なくとも330℃までは融点(または軟化点)を示さず、かつ少なくとも330℃までは形状が保持される粒子として、無機化合物であればチタン酸カリウム、ウォラストナイト、ガラス繊維、酸化チタン(ルチル型)、炭酸カルシウム(カルサイト、アラゴナイト)等が挙げられる。また、融点が330℃以上である熱可塑性樹脂または実質的に融点を示さない樹脂として、例えばポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどの窒化芳香族化合物の繊維状物が挙げられる。これらの中でも、電気化学的安定性および粒子の形状の観点から、炭酸カルシウムが好ましい。炭酸カルシウムを耐熱粒子12aとして用いた多孔質積層フィルム10をセパレータとして使用する場合、電場における化学変化が小さく、分解による電池反応を阻害する物質を放出することなく、当該セパレータを使用することができるからである。耐熱粒子12aの電気化学的安定性は、後述する電池評価のサイクル特性を測定することで評価することができる。
【0044】
耐熱粒子12aの平均粒子径は、多孔層12の透気性と力学特性との両立の観点から、0.1μm〜10μmが好ましく、0.5μm〜10μmであることがより好ましく、さらに好ましくは0.8μm〜8μmにすると良い。平均粒子径が0.1μm未満では、耐熱粒子12aがポリオレフィン系多孔フィルム11の開孔表面からポリオレフィン系多孔フィルム11の内部に浸透し、ポリオレフィン系多孔フィルム11の透気抵抗が高くなる場合がある。一方、平均粒子径が10μmを超えると、多孔層12の厚みを制御できなくなる場合がある。ここで、耐熱粒子12aの平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法によって測定される粒子径に対する個数基準積分曲線において、50%個数基準積算値に対応する粒子径をいう。
【0045】
本実施の形態において、多孔層12は、耐熱粒子12aの1次粒子を物理粉砕することで小径化された粒子(微細化粒子)を耐熱粒子12aとして含有せしめることができる。ここで耐熱粒子12aの1次粒子とは、耐熱粒子12aを水と混合し超音波振動により分散した分散液を上記平均粒子径の測定方法で測定した場合の粒子を指す。なお、この場合の粒径を1次粒径ともいう。微細化粒子を用いることで、多孔層12中の耐熱粒子12aおよびバインダー12bによって形成された空隙を効率的に充填することができ、多孔層12表面の平滑性および耐熱性を向上させることができる。
【0046】
多孔層12に微細化粒子を用いる際、使用粒子のすべてに微細化粒子を用いてもよいし、微細化粒子と微細化されていない1次粒子とを混合して使用してもよい。
多孔層12に耐熱多孔層として微細化粒子を含む場合、該粒子の径は0.1μm〜1μmが好ましく、0.2μm〜0.8μmがより好ましい。
【0047】
本実施の形態において、耐熱粒子12aの1次粒子を物理粉砕して微細化粒子を得る方法としては、分散装置にて分散処理を行う方法が挙げられる。分散装置の具体的な例としては、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、ホモジナイザー、超音波分散機などが挙げられ、いずれの手法を用いてもかまわない。
【0048】
多孔層12に含まれる耐熱粒子12aの濃度(即ち、多孔層12における耐熱粒子12aの質量比)は40質量%以上90質量%未満であることが好ましく、40質量%以上80質量%未満であることがより好ましく、さらに好ましくは55質量%以上80質量%未満にすると良い。耐熱粒子12aの質量比が40質量%未満であると、多孔層12の耐熱性が十分に発現せず、多孔質積層フィルムとした際に収縮が著しくなる場合がある。一方、耐熱粒子12aの質量比が90質量%以上であると、耐熱粒子12aに対して後述するバインダー12bの量が少なくなり、十分に耐熱粒子12a同士を接着することができず、多孔層および積層フィルムの平面性や耐熱性が低下する場合がある。多孔層12に含まれる耐熱粒子12aの濃度(質量比)は、多孔質積層フィルム10から多孔層12を剥離してサンプルとして回収し、回収したサンプルに対する粉末X線解析により耐熱粒子12aの種類を同定した後、燃焼分析により有機成分を除去した後の質量から無機元素の含有量を算出することで求めることができる。
【0049】
本実施の形態において、多孔層12は、耐熱粒子12a同士が点で接触する構造がバインダー12bによって固定されることで優れた特性を示す。
ここで、本明細書においてバインダー12bとは、他の材料間(粒子間、粒子−基材間など)を結着させることができる材料を指す。
【0050】
多孔層12に用いられるバインダー12bとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、アクリル、エチレンビニルアルコール(EVA:酢酸ビニル由来の構造単位が20〜35モル%のもの)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)などのエチレン−アクリル酸共重合体、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、変性ポリオレフィン、シリコンアルコキシド類、ジルコニウム化合物、コロイダルシリカ、オキシラン環含有化合物、セルロースおよび/またはセルロース塩などの水溶性樹脂が挙げられる。特に、水に分散または溶融可能な化合物がバインダー12bとして好ましく用いられる。バインダー12bは、上記例示したものを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
多孔層12において、バインダー12bと耐熱粒子12aとの間、および基材であるポリオレフィン系多孔フィルム11と多孔層12との間の密着性を向上させる観点から、バインダー12bはポリオレフィン系多孔フィルム11よりも融点または軟化点が低い材料であることが好ましい。このようなバインダー12bを用いることにより、多孔質積層フィルム10に多孔層12を設ける際の塗工時における乾燥工程において、溶融された状態のバインダー12bが他の材料(耐熱粒子12aおよび/または基材)に接触することで高い密着性を示し、多孔層12からの耐熱粒子12aの脱落や、基材からの多孔層12の剥がれを抑制することができる。
【0052】
バインダー12bの融点は、溶融して結着することによる密着性の観点から、70〜120℃であることが好ましく、80〜110℃であることがより好ましい。
融点が70℃より低いと、多孔層12にバインダー12bを用いた際に、多孔質積層フィルム10の耐熱性が低下する場合がある。また、融点が120℃より高いと、バインダー12bによって耐熱粒子12a同士の間および耐熱粒子12aと基材との間を溶融結着させる際に、高い温度での加工が必要となるため、基材であるポリオレフィン系多孔フィルム11の収縮を引き起こし、透気抵抗や平面性といった特性を低下させる場合がある。また、基材であるポリオレフィン系多孔フィルム11の上記物性の低下を抑制するために、バインダー12bの融点以下で加工を行うと、耐熱粒子12a同士の間および耐熱粒子12aと基材との間の密着性が低下する場合がある。
【0053】
バインダー12bの融点は、後述する手法にて確認することが出来る。また、多孔層12形成時のバインダー12bの溶融の有無は、後述する手法にて確認することが出来る。
【0054】
多孔層12において、バインダー12bと耐熱粒子12aとの密着性を向上させる観点から、バインダー12bは、変性ポリオレフィンを含むことが好ましい。バインダー12bが変性ポリオレフィンを含む場合、変性ポリオレフィンは耐熱粒子12aおよび基材となるポリオレフィン系多孔フィルム11の双方との馴染みがよいことから、多孔層12の造膜時に、耐熱粒子12aの脱落抑制、および多孔層12と基材であるポリオレフィン系多孔フィルム11との良好な密着性を両立することが可能となる。耐熱粒子12aとバインダー12bとの密着性が高い場合、耐熱粒子12aの脱落抑制と、多孔層12を積層することで付与できる耐熱性とを効果的に発現することができる。また、耐熱粒子12aおよび基材となるポリオレフィン系多孔フィルム11の接着性が高いと、多孔質積層フィルム10の良好な平面性と、多孔層12を積層することで付与できる耐熱性とを効果的に発現することができる。
【0055】
多孔質積層フィルム10において、式(4)で算出される多孔層12中の耐熱粒子12aの濃度とバインダー12bに濃度との濃度比(質量基準)は、0.1以上1以下であることが好ましく、0.2以上0.7以下であることがより好ましい。
濃度比=バインダー濃度/耐熱粒子濃度 ・・・(4)
【0056】
ここで、耐熱粒子12aの濃度とは、即ち、多孔層12における耐熱粒子12aの質量比のことであり、バインダー12bの濃度とは、即ち、多孔層12におけるバインダー12bの質量比のことである。そして、濃度比は、これらの質量比同士の比(耐熱粒子12aの質量比に対するバインダー12bの質量比の割合)を示す。
【0057】
濃度比が0.1を下回ると、多孔層12と基材であるポリオレフィン系多孔フィルム11との接着性が悪くなる場合や、多孔層12から耐熱粒子12aの脱落が発生する場合がある。また、濃度比が1を上回ると、ポリオレフィン系多孔フィルム11の表面にある孔が閉塞され、透気抵抗が高くなる場合がある。多孔層12に含まれる上記バインダー12bの濃度は、多孔質積層フィルム10から多孔層12を剥離してサンプルとして回収し、回収したサンプルをNMRやGC−MS等により成分分析することで求めることができる。また、成分分析で得られた濃度と塗剤の仕込み量より算出される濃度はほぼ一致する。
【0058】
多孔層12において、バインダー12bが変性ポリオレフィンを含む場合、その変性ポリオレフィンはオレフィン骨格と不飽和カルボン酸骨格からなることが好ましい。オレフィン骨格としては、プロピレン、エチレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のオレフィン類が挙げられる。また、不飽和カルボン酸骨格は、分子内に少なくとも1個のカルボキシル基または酸無水物基を有し、且つ不飽和結合を有する化合物であり、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。
【0059】
多孔層12における耐熱粒子12a間の密着性は、多孔層12の表面がロールと接触するようにしてフィルム走行試験を実施した際の摩擦係数μkの変化率Δμkによって評価することができる。
【0060】
本実施の形態において、多孔層12の表面をロールと接触するようにしてフィルム走行試験を実施した際の摩擦係数μkの変化率Δμkは、500%未満が好ましく300%未満がより好ましい。摩擦係数μkはテープ走行性試験機でフィルムを走行させ、下記式(5)より算出する。
μk=2/πln(T2/T1) …(5)
式(5)において、T1は入側張力、T2は出側張力であり、lnは自然対数を示す。
【0061】
摩擦係数μkの変化率K(%)はフィルム走行1回目の摩擦係数μk(K1とする)と50回目の摩擦係数μk(K50とする)とを下記式(6)に代入して算出する。
K(%)=(K50)/(K1)×100 …(6)
【0062】
変化率Kが500%以上になると、フィルム走行時に耐熱粒子12aの脱落が生じ、白粉が発生することがある。耐熱粒子12aの脱落は、多孔質積層フィルム10をセパレータとして使用した際、電池の組立工程の歩留まり低下や異物混入等を引き起こすおそれがある。
変化率Kを好ましい範囲とするためには、上述したバインダー12bを用いることで達成できる。
【0063】
多孔層12には、フィルムにシャットダウン性を付与する観点から、融点が110〜140℃の熱可塑性樹脂粒子を添加することができる。シャットダウン性とは、多孔質フィルムをセパレータとして使用した際、電池の異常発熱時に、フィルムに含まれる成分により多孔質フィルムの貫通孔を閉塞し、イオンの流れを遮断する特性をいう。熱可塑性樹脂粒子の融点が110℃未満であると、使用環境が蓄電デバイスの他の素材には問題のない110℃程度の低温であっても、フィルムの貫通孔が遮蔽され、シャットダウンしてしまう誤作動が発生するおそれがある。一方、融点が140℃を超えると、シャットダウンする前に蓄電デバイス内で自己発熱反応が開始してしまうことがある。シャットダウン性は、リチウムイオン電池で多く使用されているコバルト系正極の場合、正極の熱安定性の観点から125〜140℃で機能することが好ましい。このため、熱可塑性樹脂粒子の融点は120〜140℃であることがより好ましく、正極の熱安定性を考慮して融点を変更すると良い。なお、熱可塑性樹脂粒子が複数の融点を有する場合には、最も高温の融点が上記範囲内であればよい。
【0064】
多孔層12に熱可塑性樹脂粒子を添加する場合、融点が上記範囲に入る熱可塑性樹脂から構成されていれば特に限定されるものではないが、ポリオレフィン系樹脂からなる熱可塑性樹脂粒子が好ましく、特に、ポリエチレン、ポリエチレン共重合体、ポリプロピレン、ポリプロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂からなる熱可塑性樹脂粒子が好ましい。また、熱可塑性樹脂粒子の平均粒子径としては0.5μm〜5μmであれば好ましく、0.8μm〜3μmであればより好ましい。
【0065】
多孔層12に熱可塑性樹脂粒子を添加する場合、多孔層12中における濃度(即ち、多孔層12における熱可塑性樹脂粒子の質量比)は10〜40質量%であることが好ましく、15〜35質量%がより好ましい。10質量%未満であると、多孔質積層フィルム10をセパレータとして使用した際、発熱時に多孔層12中の孔を十分に塞ぐことができず、シャットダウン性が発現しない場合がある。また、40質量%を超えると、多孔質積層フィルム10をセパレータとして使用した際の耐熱性が低下する場合がある。
【0066】
多孔質積層フィルム10において、ポリオレフィン系多孔フィルム11と多孔層12との接着性向上のために、バインダー12bは、オキシラン環含有化合物を含むことが好ましい。オキシラン環含有化合物としては、各種エポキシ樹脂、グリシジル(メタ)クリレート等のエポキシ基含有(メタ)クリレート、Y−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ基含有有機ケイ素化合物が挙げられ、耐電解液性の観点からエポキシ樹脂が好ましく使用される。エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ポリエチレンオキシド型エポキシ樹脂、ポリプロピレンオキシド型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、1種あるいは2種以上の混合物として使用できる。また、耐電解液性の観点から、2官能以上のエポキシ樹脂を用いることが好ましく、可撓性の観点からは、エポキシ当量100以上がよく、300以上がさらに好ましい。2官能以上のエポキシ樹脂の具体例としては、ソルビトールポリグリシドキシエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等の2官能以上の脂肪族エポキシ樹脂が挙げられ、1種あるいは2種以上の混合物として使用できる。具体的には、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ樹脂が特に好ましい。また、可撓性付与の目的で、フェノールエチレンオキシドグリシジルエーテル(エチレンオキシド鎖の繰り返し単位が、5〜10程度のものが特に好ましい)、ラウリルアルコールエチレンオキシドグリシジルエーテル(エチレンオキシド鎖の繰り返し単位が、10〜18程度のものが特に好ましい)等のモノエポキシ化合物、エポキシ化植物油等を使用してもさしつかえなく、クレゾールノボラック型エポキシ等のエポキシエマルジョンも使用できる。
【0067】
さらに、これらオキシラン環含有化合物の硬化促進、低温硬化を目的として、各種硬化触媒を併用してもよい。硬化触媒(硬化剤)としては、ルイス酸等の酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸等の酸無水物、アルミニウムアセチルアセトネート等の各種金属錯体化合物、金属アルコキシド、アルカリ金属の有機カルボン酸塩および炭酸塩、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ジエチルアミノプロピルアミン等の脂肪族アミン、変性脂肪族ポリアミン、変性芳香族ポリアミン、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリブチルアミン、トリス(ジメチルアミノ)メチルフェノール等の第三級アミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等の芳香族アミン、アミノエチルピペラジン等の環状アミン、2−メチル−4−エチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩、三フッ化硼素、三フッ化硼素−モノエチルアミンコンプレックスなどが挙げられ、単独あるいは2種以上の混合物として使用できる。
【0068】
多孔質積層フィルム10において、多孔層12を形成する塗液に対し粒子表面に吸着して塗料組成物中で粒子を分散安定化する機能を付与できるという観点から、バインダー12bは、セルロースおよび/またはセルロース塩を含むことが好ましい。セルロースおよび/またはセルロース塩の具体例としてはヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびこれらのナトリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。なかでも、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、ならびにヒドロキシエチルセルロースおよびその塩からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが特に好ましい。
【0069】
多孔質積層フィルム10において、多孔層12を形成する方法としては、耐熱粒子12a、バインダー12b、およびその他の組成物を含有する塗液を塗布する方法が好ましく採用される。塗布する方法としては、一般に行われるどのような方法を用いてもよい。例えば、オキシラン環含有化合物をイオン交換水などに分散させて作成した塗液を、リバースコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などの塗布方法により基材であるポリオレフィン系多孔フィルム11上に塗布し、これを乾燥させて多孔層12とすればよい。また、塗液を調製する際には、多孔層12における耐熱粒子12aの偏在を防止するために、分散剤などを適宜添加してもよい。
【0070】
本実施の形態において、多孔質積層フィルム10の透気抵抗は50〜500秒/100mlであることが好ましい。透気抵抗が50秒/100ml未満の場合、当該フィルムをセパレータとして用いた際に電極間の絶縁を十分に保てず、安全性が十分でなくなるおそれがある。また、透気抵抗が500秒/100mlを超える場合、当該フィルムをセパレータとして用いた際に電池の出力特性が低下する傾向にある。多孔質積層フィルム10の透気抵抗は、用途にもよるが、好ましくは80〜350秒/100mlであり、より好ましくは150〜250秒/100mlである。
【0071】
多孔質積層フィルム10の透気抵抗を上記の範囲にする方法としては、上述した形状の耐熱粒子12aを用いることにより効果的に達成できる。
【0072】
多孔質積層フィルム10は、全体の総厚みが15μm〜40μmであることが好ましく、18μm〜35μmであればより好ましい。多孔層12の厚みは耐熱性、力学特性の観点から、1μm〜15μmであることが好ましく、3μm〜10μmであればより好ましい。
【0073】
多孔質積層フィルム10の150℃におけるフィルムの長手方向および幅方向の熱収縮率は、いずれも0〜3%であることが好ましく、いずれも0〜2%であることがより好ましい。150℃におけるフィルムの長手方向および幅方向の熱収縮率が共に3%より大きいと、当該フィルムを電池のセパレータとして使用した際に、発生した熱によって容易に収縮し短絡を引き起こす場合があり、電池の安全性を保てなくなるおそれがある。また、上記熱収縮率が0%より小さいと、当該フィルムを電池のセパレータとして使用した際に、電池自体の寸法安定性に影響を及ぼすおそれがある。
【0074】
150℃におけるフィルムの長手方向および幅方向の熱収縮率を上記の範囲にするには、アスペクト比が上記範囲に含まれる耐熱粒子12aを用いることで効果的に達成することができる。
【0075】
本実施の形態に係る多孔質積層フィルム10は、ポリオレフィン系多孔フィルム11の少なくとも片面に上記の多孔層12を積層したものである。多孔層12をポリオレフィン系多孔フィルム11の片面のみに積層する場合、多孔層12を積層する面は、ドラム面(キャストフィルムを作製した際にキャストドラムに接していた面)または非ドラム面(キャストフィルムを作製した際にキャストドラムに接していなかった面)のいずれでもよい。また、多孔層12をポリオレフィン系多孔フィルム11のドラム面および非ドラム面の両面に積層してもかまわない。
【0076】
以下に、本実施の形態に係る多孔質積層フィルム10を構成するポリオレフィン系多孔フィルム11の製造方法、および、多孔質積層フィルム10の製造方法を具体的に説明する。なお、多孔質積層フィルム10の基材として用いるポリオレフィン系多孔フィルム11の製造方法は以下の説明に限定されるものではない。以下においては、β晶法によるポリプロピレン多孔フィルムを例として説明する。
【0077】
ポリプロピレン樹脂として、MFR8g/10分の市販のホモポリプロピレン樹脂93.8質量部、同じく市販のMFR2.5g/10分の高溶融張力ポリプロピレン樹脂1質量部、さらにメルトインデックス18g/10分の超低密度ポリエチレン樹脂5質量部に、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド0.2質量部を混合し、二軸押出機を使用して予め所定の割合で混合した原料を準備する。この際、溶融温度は270〜300℃とすることが好ましい。
【0078】
次に、上記混合原料を単軸の溶融押出機に供給し、200〜230℃にて溶融押出を行う。そして、ポリマー管の途中に設置したフィルターにて、混合材料から異物や変性ポリマーなどを除去した後、当該混合原料をTダイよりキャストドラム上に吐出し、未延伸シートを得る。この際、キャストドラムの表面温度が105〜130℃であることが、キャストフィルムのβ晶分率を高く制御する観点から好ましい。また、特にシートの端部の成形が後の延伸性に影響するので、シートの端部にスポットエアーを吹き付けてキャストドラムに密着させることが好ましい。なお、シート全体のキャストドラム上への密着状態により必要に応じて、エアーナイフを用いてシート全面に空気を吹き付けたり、静電印加法を用いるなどして、キャストドラムにポリマー(未延伸シート)を密着させてもよい。
【0079】
次に、得られた未延伸シートを二軸配向させ、該シートを延伸させたフィルム中に空孔を形成する。二軸配向させる方法としては、未延伸シートをフィルム長手方向に延伸した後で幅方向に延伸するか、もしくは幅方向に延伸した後で長手方向に延伸する逐次二軸延伸法、またはフィルムの長手方向と幅方向とをほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸法などを用いることができる。高透気性フィルムを得やすいという点では、逐次二軸延伸法を採用することが好ましく、特に長手方向に延伸後、幅方向に延伸することが好ましい。
【0080】
具体的な延伸条件としては、まず未延伸シートを長手方向に延伸する温度に制御する。温度制御の方法としては、温度制御された回転ロールを用いる方法、熱風オーブンを使用する方法などを採用することができる。長手方向の延伸温度として、好ましくは90〜135℃、さらに好ましくは100〜120℃の温度を採用すると良い。好ましい延伸倍率は3〜6倍、より好ましくは4〜5.5倍である。次に、未延伸シートを長手方向に延伸させて得たフィルムをいったん冷却した後、ステンター式延伸機にフィルム端部を把持させて導入する。そして、当該フィルムを、好ましくは140〜155℃に加熱して幅方向に5〜12倍、より好ましくは6〜10倍に延伸を行う。なお、このときの横延伸速度としては300〜5,000%/分で行うことが好ましく、500〜3,000%/分であればより好ましい。次いで、そのままステンター内で熱固定を行うが、その温度は横延伸温度以上160℃以下とすることが好ましい。さらに、熱固定は、フィルムの長手方向および/もしくは幅方向に弛緩させながら行ってもよく、特に幅方向の弛緩率を5〜35%とすることが、熱寸法安定性の観点から好ましい。
【0081】
上記製造方法によって作製したポリオレフィン系多孔フィルム11に塗布する塗液を調製する。即ち、耐熱粒子12aとして炭酸カルシウム14.0質量%、バインダー12bとして変性ポリエチレンの水分散体(固形分濃度20%)24.0質量%、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル0.6質量%、カルボキシメチルセルロース0.6質量%、およびイオン交換水60.8質量%を混合する。この塗液を約4時間攪拌した後に、グラビアコーターを用いた塗布方法によりポリオレフィン系多孔フィルム11上に塗布し、100℃で1分間乾燥させて、積層厚みが3μm〜5μmの多孔層12とする。それにより、図1に示す多孔質積層フィルム10が得られる。
【0082】
本実施の形態に係る多孔質積層フィルム10は、優れた耐熱性、透気性、および平面性を有していることから、蓄電デバイスのセパレータとして好適に使用することができる。なお、多孔質積層フィルム10を蓄電デバイスのセパレータとして用いる場合、当該フィルム10にさらにコーティング層を設けたり、機械的加工を施すなどしても良い。
【0083】
ここで、蓄電デバイスとしては、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池や、リチウムイオンキャパシタなどの電気二重層キャパシタなどを挙げることができる。このような蓄電デバイスは充放電することで繰り返し使用することができるので、産業装置や生活機器、電気自動車やハイブリッド電気自動車などの電源装置として使用することができる。本発明の多孔質積層フィルム10をセパレータとして使用した蓄電デバイスは、セパレータの優れた特性から産業機器や自動車の電源装置に好適に用いることができる。
【0084】
なお、上記においては、ポリオレフィン系多孔フィルム11上に特定の多孔層12を塗布により設ける方法を説明したが、一般に多孔質のフィルム上に塗布により多孔層を設ける場合には種々の課題が存在するため、以下にそれらを解決する手法について説明する。
【0085】
例えば、蓄電デバイス用のセパレータに耐熱性を付与するため、ポリオレフィン等で構成された変形しやすい多孔質フィルム上にウェットコーティング法にて耐熱性の多孔層を形成する場合には、連続的な塗工を行うと塗工面にハジキ状の面状欠陥がたびたび発生することがある。
【0086】
このハジキ状の面状欠陥とは、塗工液を基材上に移行せしめて液膜を形成した時、あるいは移行せしめた後まもなく、液膜に点状、あるいは一定の領域の液膜がはじかれて発生するくぼみのことをいう。一般的に基材の表面が見えるほどくぼんでいるものを「ハジキ」、基材まで到達していないものを「ヘコミ」というが、ヘコミも含めてハジキという場合もある。以下においては、ヘコミも含めたくぼみをハジキ状の面状欠陥(ハジキ状欠陥)という。
【0087】
このようなハジキ状欠陥発生の原因として、例えば、コーティング編集委員会編、「コーティング」(加工技術研究会、2002年、第840頁)には、塗装直後のウェット塗膜からの局部的な溶剤の急蒸発、塗料に含まれる残留モノマー、塗料用添加剤等の影響、雰囲気からのダストのコンタミ、被塗物上の油汚れ等によって、塗膜表面に低エネルギーのトリガー部位が生じ、これが拡張するとの記載があり、そのための対策として、塗料組成物中の非相溶材料の除去や塗料組成物の基材への接触角を下げ、濡れ易くする方法などが提案されている。しかしながら、前者の方法は効果が薄く、後者の方法では、本来の目的である蓄電デバイス用セパレータに必要な透気性が大幅に低下して、蓄電デバイスの出力性能が低下するなど、課題を解決するには至っていない。
【0088】
そこで、以下、変形しやすい多孔質の基材上に耐熱性を有する多孔層を、基材の透気性を損なうことなく、ハジキ状の面状欠陥の発生が少ない状態で塗工可能な塗料組成物、およびそれを用いた蓄電デバイス用セパレータの製造方法について説明する。
【0089】
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、以下の塗料組成物およびそれを用いた蓄電デバイス用セパレータの製造方法が好適であることを見出した。
【0090】
(1)耐熱粒子、バインダーおよび溶媒を含む塗料組成物であって、25℃において次の物性を示す塗料組成物。
・溶媒成分の被塗物への接触角が80°以上
・表面張力が45×10−3N/m(以下、mN/mと記す)以下
・振動数0.1Hzでの振動測定による貯蔵弾性率G’が0.1Pa以上100Pa以下
【0091】
(2)上記塗料組成物の25℃におけるせん断速度1,000s−1での粘度が10mPa・s以上400mPa・s以下である上記(1)の塗料組成物。
【0092】
(3)上記(1)または(2)の塗料組成物を多孔質の基材上に塗工、乾燥し、耐熱性の多孔質層を形成する蓄電デバイス用セパレータの製造方法。
【0093】
上記によれば、変形しやすい多孔質の基材上に耐熱性を有する多孔層を形成する際に塗工される塗料組成物であって、基材の透気性を損なうことなく、ハジキなどの面状欠陥の発生が少ない状態で塗工可能な塗料組成物を提供することができる。また、この塗料組成物を多孔質の基材上に塗工する製造方法により、耐熱性、透気性を有する蓄電デバイス用セパレータを製造することが可能となる。
【0094】
以下、詳細に説明する。
上記塗料組成物は、耐熱粒子、バインダーおよび溶媒を含み、塗料組成物に含まれる溶媒成分の被塗被物への25℃での接触角を80°以上にすることが好ましい。ここで、被塗物とは塗料組成物を塗工する対象物を指し、蓄電デバイス用セパレータの製造方法においては多孔質の基材を指す。溶媒成分とは、塗料組成物に含まれる成分のうち、常温、定圧で液体であって、乾燥工程において除去され、最終的に形成された塗膜に残存しない成分を指し、1種類の溶媒であることもあるし、複数の混合物であることもある。溶媒の詳細については後述する。バインダーとは、その材料自身で造膜性を有し、他の材料と結着することができる材料で、多くの場合には有機、または無機の高分子化合物、およびその混合物からなる。
【0095】
なお、上述した接触角は、一般的の接触角測定装置(例えば、協和界面科学製“DM700”等)を使用し、塗料組成物に含まれる溶媒成分のみからなる液体を被塗物上に滴下し、形成された液滴形状から算出することが可能である。測定方法の詳細については後述する。
【0096】
溶媒成分の被塗物への接触角が80°より小さいと、被塗物が多孔質である場合、塗工後、溶媒成分が毛管力によって孔中に浸透し、これが蒸発時に基材の多孔部を収縮させてしまうことがある。この結果、目的とする蓄電デバイス用セパレータとしての特性(特に出力特性)が低下すると共に、塗工乾燥過程にて不均等な収縮が発生し、スジ状の欠陥が発生する。被塗物への接触角をこの範囲に適合させるには、溶媒の種類を適宜選択することにより可能である。
上述した被塗物への接触角は85°以上がより好ましく、90°以上であることが特に好ましい。
【0097】
また、塗料組成物の25℃での表面張力は40mN/m以下であることが好ましい。
塗料組成物の表面張力γは、懸滴法(ペンダント・ドロップ法)により測定可能である。ここで、懸滴とは、鉛直方向に向けた細管の先端から液体を押し出した際に、細管の先端に形成された液滴のことをいう。懸滴の形状は、押し出された液体の量、密度、表面張力に依存するため、形状の解析により表面張力を算出することができる。測定方法の詳細については後述する。
【0098】
塗料組成物の25℃での表面張力が、40mN/mより高くなると、面状欠陥、とくにハジキ状欠陥の抑制効果が不十分になることがある。塗料組成物の表面張力は低いほど好ましいが、現実的には入手可能な材料が限られることから15mN/m〜20mN/m程度が下限である。
【0099】
塗料組成物の表面張力を15mN/m〜40mN/mの範囲にするためには、塗料組成物中の気液界面に配向し易い成分(いわゆる界面活性成分)、例えば、有機バインダー、粘度調整剤、分散剤、界面活性剤等の種類、量を調節することにより達成可能である。
【0100】
塗料組成物の25℃での表面張力は、40mN/m以下が好ましいが、より好ましくは35mN/m以下であり、30mN/m以下がさらに好ましい。
【0101】
また、塗料組成物の25℃での粘弾性については、振動数0.1Hzでの振動測定による貯蔵弾性率G’が0.1Pa以上100Pa以下であることが好ましい。
ここで、塗料組成物の貯蔵弾性率とは、塗料組成物が外力を受けたときに生ずる弾性特性に起因する影響を数学的に表現したものである。すなわち、貯蔵弾性率とは、物体外力が加わった時に生ずるひずみと同位相の弾性応力との比率のことをいい、塗料組成物が受けた外力の内で、弾性的に蓄えることのできるエネルギーに相当するものをいう。ハジキ状欠陥の発生に対しては、ハジキが被塗物表面の低表面エネルギー部と液膜との界面張力差に起因する拡張力に起因する流動であると考えられるため、これに対する抵抗力の大きさが貯蔵弾性率に相当し、値が大きいほど抵抗力が大きいことを示す。
【0102】
塗料組成物の貯蔵弾性率は、一般的なレオメーターで測定することができ、好ましくはトルク分解能が0.001μN〜0.01μN程度の能力が得られるレオメーターで、直径35mm以上のコーンアンドプレートを用いることがよい。測定方法の詳細については後述する。
【0103】
貯蔵弾性率G’が0.1Paより小さいと、界面張力差に起因する拡張力による流動に塗料組成物が対抗できず、ハジキ状欠陥の抑制効果が少ない。一方、貯蔵弾性率G’が100Paより大きいと、塗膜形成後のレベリングが不十分になり、塗膜の平滑性が低下する。
【0104】
貯蔵弾性率G’を好ましい範囲にするには、塗料組成物に占める粒子成分の量、表面状態、粒子径分布、および、気液界面に配向し易い成分(いわゆる界面活性成分)、例えば、有機バインダー、粘度調整剤、分散剤、界面活性剤等の種類や量を調節することにより達成可能である。
【0105】
塗料組成物の振動数0.1Hzでの振動測定による貯蔵弾性率G’は、0.1Pa以上100Pa以下が好ましいが、より好ましくは1Pa以上80Pa以下であり、5Pa以上50Pa以下がさらに好ましい。
【0106】
なお、さらに良好な塗工面状を得るためには、塗料組成物の25℃でのせん断速度1,000s−1での粘度を10mPa・s以上400mPa・s以下にすることが好ましい。
せん断速度1,000s−1における粘度は一般的なレオメーターで測定することができる。即ち、上述した貯蔵弾性率の測定と同様の装置で測定モードを変えれば測定可能である。測定方法の詳細については後述する。
【0107】
せん断速度1,000s−1での粘度が10mPa・sより小さい場合、塗工方法によっては、連続塗工時に被塗物である基材の移動に対して塗液が追随できず、塗液の吐出部と基材との間の液絡部に塗液が滞留した結果、スジ状の欠陥が発生し、塗工面状が悪化する問題を生じることがある。
【0108】
一方、せん断速度1,000s−1での粘度が400mPa・sよりも大きい場合には、連続塗工時に基材に同伴して移動する空気層(同伴気流、随伴気流とも呼ばれる)が、塗液の吐出部と基材との間の液絡部を破壊し、ムラ状の塗工欠陥を生じることがある。
【0109】
塗料組成物のせん断速度1,000s−1での粘度を10mPa・s以上、400mPa・s以下とするには、有機バインダーや増粘剤などの塗料組成物中の高分子量成分の量、および分子量を調節することにより達成可能である。
【0110】
塗料組成物のせん断速度1,000s−1での粘度は、10mPa・s以上、400mPa・s以下とすることが好ましいが、より好ましくは15mPa・s以上、350mPa・s以下、さらに好ましくは20mPa・s以上、300mPa・s以下にすると良い。
【0111】
以下、上記塗料組成物、およびそれを用いた蓄電デバイスセパレータの製造方法について、より詳細に説明する。
【0112】
[塗料組成物]
上記塗料組成物は、塗料組成物中に粒子、溶媒およびバインダーを含んでいる。これらはいずれも個々に単一種類のもので構成されていてもよいし、それぞれ複数種のもので構成されていても構わない。この塗料組成物を後述する方法で塗工することにより、耐熱性、透気性、および平面性に優れ、面状欠陥の少ない多孔層を有する蓄電デバイス用セパレータを得ることができる。
【0113】
以下の説明において、粒子の種類は、粒子を構成する元素の種類によって区別する。例えば、酸化チタン(TiO)と酸化チタンの酸素の一部をアニオンである窒素で置換した窒素ドープ酸化チタン(TiO2−x)とでは、粒子を構成する元素が異なるために、異なる種類の粒子である。また、同一の元素、例えばZn、Oのみからなる粒子(ZnO)であれば、その粒径が異なる粒子が複数存在しても、またZnとOとの組成比が異なっていても、これらは同一種類の粒子である。また酸化数の異なるZn粒子が複数存在しても、粒子を構成する元素が同一である限りは(この例ではZn以外の元素の種類が全て同一である限りは)、これらは同一種類の粒子である。好ましい粒子の種類については後述する。
【0114】
また、以下の説明において、溶媒とは、常温、常圧にて液体で、塗工後の乾燥工程にてほぼ全量を蒸発させることが可能である物質を指す。溶媒の種類については後述する。
【0115】
以下の説明において、バインダーとは、上記溶媒に溶解、または分散可能な材料で、他の材料間(粒子間、粒子−基材間など)を結着させることができる材料を指す。一般的には、高分子材料、または重合、縮合反応により高分子量化することが可能な材料である。さらに、このバインダーは上記機能に加えて、他の機能を有してもよい。他の機能としては、例えば、粒子表面に吸着して塗料組成物中で粒子を分散安定化する機能、被塗物との密着性をより向上させる機能、塗料組成物の粘度を調整する機能、被塗物上に形成された液膜を平坦化する機能などがある。
【0116】
[粒子]
上記塗料組成物は少なくとも1種類以上の粒子を含む。この粒子の種類は特に限定されないが、耐熱性を付与する目的から耐熱粒子であることが好ましい。この耐熱粒子としては、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム(擬ベーマイトを含む)、シリカ、チタン酸カリウム、ウォラストナイト、ガラス繊維、酸化チタン(ルチル型)、炭酸カルシウム(カルサイト、アラゴナイト)等の無機粒子、およびこれらの複合酸化物または混合物や、融点が330℃以上である熱可塑性樹脂または実質的に融点を示さない樹脂、例えばポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどの窒化芳香族化合物の繊維状物が挙げられる。これらの中でも、電気的安定性および形状の観点から炭酸カルシウムが好ましい。
【0117】
さらに、上記塗料組成物は、上記耐熱粒子に加えて、一定温度で溶融する特徴を有する熱可塑性の樹脂粒子を含んでもよい。この溶融温度には好ましい範囲があり、融点が110〜140℃が好ましく、120〜140℃がより好ましい。材料は特に限定されるものではないが、ポリオレフィン系樹脂からなる熱可塑性樹脂粒子が好ましく、特に、ポリエチレン、ポリエチレン共重合体、ポリプロピレン、ポリプロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂からなる熱可塑性樹脂粒子が好ましい。
【0118】
[溶媒]
上記塗料組成物は、少なくとも1種類以上の溶媒を含む。溶媒の種類数としては1種類以上20種類以下が好ましく、より好ましくは2種類以上10種類以下、さらに好ましくは1種類以上6種類以下である。
【0119】
ここで、溶媒の種類は、溶媒を構成する分子構造によって区別する。すなわち、同一の元素組成で、かつ官能基の種類と数が同一であっても結合関係が異なるもの(構造異性体)や、上記構造異性体ではないが、3次元空間内ではどのような配座をとらせてもぴったりとは重ならないもの(立体異性体)は、種類の異なる溶媒として取り扱う。例えば、2−プロパノールと、n−プロパノールとは異なる溶媒として取り扱う。
【0120】
上記塗料組成物は、多孔性を有する基材上に塗布されて多孔層を形成するものであることから、溶媒成分の被塗物(基材)への接触角は80°以上が好ましい。これを達成できれば、特に溶媒の種類は限定しないが、例えば、水、または水と極性有機溶媒との混合物が好ましい。ここで極性有機溶媒とは、20℃における水に対する溶解度が5%以上である溶媒を指し、例えば、各種アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等)、グリコールエーテル類(エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、等)、ケトン類(メチルエチルケトン、ダイアセトンアルコール等)、エステル(酢酸エチル等)等が挙げられる。塗料組成物の溶媒としては、このような極性有機溶媒少量を水に混合した混合溶媒が適している。
【0121】
[その他の添加剤]
上記塗料組成物は、上記の粒子、バインダー、および溶媒のほかに、各種添加剤を含んでもよい。添加剤の例としては、得られた塗膜の品質を高めるために必要な硬化剤、架橋剤、硬化触媒や、安定した塗工品位を得るための界面活性剤、レベリング剤、分散剤、チキソトロピー調整剤、pH調整剤、増粘剤、保候剤、乾燥速度調整剤、酸化防止剤、安定化剤、防腐剤などがある。
【0122】
[基材]
後述する蓄電デバイス用セパレータの製造方法において、多孔層を形成する基材(被塗物)としては特に限定するものではないが、電気化学的に安定で、透気抵抗が50〜500秒/mlで、空孔率が60〜90%であることが好ましく、具体的にはポリオレフィン系多孔フィルムが好ましい。ポリオレフィン系多孔フィルムの詳細については上述した通りである。
【0123】
[塗料組成物の製造方法]
上記塗料組成物は、少なくとも粒子、バインダー、および溶媒により構成され、さらに、他の添加物を混合してもよい。その製造方法は、上記成分の処方量を質量、または体積で計量し、これらを攪拌により混合することにより得られる。この際、脱泡やろ過などを行ってもよい。
【0124】
粒子は粒子分散物、または粉体いずれの形で添加してもよい。粉体を原料としてとり扱う場合には、高圧ホモジナイザー、ディスパー、メディアミルなどの各種分散機により粒子を液中に分散する工程を経て、一旦粒子分散物を形成した方が好ましい。
【0125】
塗料組成物の調合時における攪拌条件や攪拌装置は特に限定されず、液全体が十分混合されるのに必要な装置、および回転数を実現できれば良い。特には、液中での局所的なせん断速度が10−1よりも小さく、かつレイノルズ数が1,000以上である範囲であることが、粒子分散物のせん断破壊による凝集と局所的な滞留による凝集や、混合不良を防ぐために好ましい。
【0126】
塗料組成物の調合時における粒子、溶媒、バインダー、および他の添加物の添加順および添加速度については特に限定されない。好ましくは、粒子分散物に対し、溶媒と混合して希釈したバインダー原料および他の添加物の混合物を攪拌しながら少量ずつ添加していくことが、バインダー成分の粒子表面への吸着による凝集、さらに異物発生を防ぐために好ましい。
【0127】
このようにして得られた塗料組成物に対し、塗工する前に適当なろ過処理を施してもよい。この適当なろ過処理は、例えば、溶媒および粒子の表面の極性状態に合わせたフィルター材料およびフィルター目開きを選択し、粒子分散物の分散状態を破壊しないせん断速度、およびフィルター構造に合わせた圧力条件にて行うことが好ましい。
【0128】
[多孔層を有する蓄電デバイス用セパレータの製造方法]
上記塗料組成物を用いた多孔層を有する蓄電デバイス用セパレータの製造方法としては、まず塗料組成物を、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、またはダイコート法(米国第特許2681294号明細書参照)などにより、上述した多孔質の基材上に塗工し、塗膜を形成する方法が望ましい。これらの塗工方式のうち、グラビアコート法またはダイコート法が、上記塗料組成物の塗工方法として好ましい。
【0129】
グラビアコート法は、塗工量の少ない塗料組成物を均一な膜厚で塗工することに優れている。特に、グラビアコート法の中でもダイレクトグラビア法において、グラビアロール直径の小さい小径グラビアロールを用いることが、メニスカス部の安定性確保の面からより好ましい。このような塗工方法としては、マイクログラビア法が知られている。
【0130】
また、ダイコート法は、グラビアコーターなどの後計量方式に対して、コーティングダイへの供給液量にて膜厚の制御が可能であり、また、原理的に塗料組成物の滞留部や蒸発部がないため、塗料組成物の安定性の面からも適している。なお、ダイコート法の場合、塗工する液膜厚みが薄い場合には、バックアップロールを使用せず、フリースパンの状態でダイリップをほとんど接触するぐらいまで近づける塗工方式(ウェブ加圧型スロットダイコーター)や、ビード(液絡部)の上流側に背圧を印加する塗工方式(バキュームチャンバー型ダイコーター)を採用するなどの工夫をすることが好ましい。
【0131】
次いで、塗工工程により基材上に形成された塗膜を乾燥する。乾燥条件は基材が軟化による収縮を起こさず、バインダー成分が粒子と十分に結着し、さらに、塗料組成物が熱可塑性粒子を含む場合には、熱可塑性粒子が溶融しない温度範囲であるならば、特定の風速および乾燥温度には特に限定されない。
【0132】
乾燥方法としては、伝熱乾燥(高熱物体への密着)、対流伝熱(熱風)、輻射伝熱(赤外線)、およびその他(マイクロ波、誘導加熱等)の方式が挙げられる。この中でも、上記製造方法においては、幅方向における乾燥速度を精密に均一にする必要があるため、対流伝熱、または輻射伝熱を使用した方式が好ましい。さらに、恒率乾燥期間においては、幅方向における均一な乾燥速度を達成するため、対流伝熱による乾燥方式を採用する場合には、制御可能な風速を維持しつつ、乾燥時の総括物質移動係数を下げることが可能な方法を用いることが好ましい。具体的には、支持基材に対して平行で、基材の搬送方向に対して平行、あるいは垂直な方向に熱風を送風する方式を用いると良い。
【実施例】
【0133】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
実施例1〜30および比較例1〜5として、基材であるポリオレフィン系多孔フィルム上に、後述する塗料組成物1〜34を用いて多孔層を形成した多孔質積層フィルムを作製した。また、各多孔質積層フィルムを蓄電デバイス用セパレータとして用いた蓄電デバイスを作製した。各実施例および比較例における多孔質積層フィルムおよび蓄電デバイスの特性は、以下の方法により測定または評価した。
【0134】
(1)耐熱粒子の平均粒子径
レーザー回折・散乱式粒度分布測定器((株)セイシン企業製“LMS−300”)を用いて、耐熱粒子の粒子径を測定した。得られた粒子径に対する個数基準積分曲線において、50%個数基準積算値に対応する粒子径を平均粒子径とした。
【0135】
(2)耐熱粒子のアスペクト比、断面形状および異形度
走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、無作為に抽出した耐熱粒子の観察倍率20,000倍の写真を撮影した。この写真に対する画像解析ソフトウェア((株)マウンテック製“MacView ver4.0”)を用いた画像解析により、耐熱粒子の断面投影像を作成した。
【0136】
断面投影像より、最小外接円の半径Rlおよび最大内接円の半径Rsを求め(図1参照)、式(1)で定義される異形度Psを算出した。断面投影像は無作為に抽出した耐熱粒子100個について作製し、得られた断面投影像から求めた個々の耐熱粒子の異形度Psの平均値をその耐熱粒子の異形度Psとした。
Ps=Rl/Rs …(1)
【0137】
また、20,000倍で撮影した写真および断面投影像より、各耐熱粒子における最大長さ(長径)および最小長さ(短径)を求め、式(7)で定義されるアスペクト比を算出した。アスペクト比は耐熱粒子100個について求め、その平均を耐熱粒子のアスペクト比とした。
アスペクト比=耐熱粒子における最大長さ/耐熱粒子における最小長さ
…(7)
【0138】
(3)ポリオレフィン系多孔フィルムの厚みおよび多孔層の厚み
ポリオレフィン系多孔質フィルムを走査型電子顕微鏡の試料台に固定し、スパッタリング装置を用いて、フィルム長手方向の断面がみえるように、減圧度10−3Torr、電圧0.25KV、電流12.5mAの条件にて10分間、イオンエッチング処理を施して断面を切削した後、同スパッタリング装置にて該フィルムの表面に金スパッタを施した。そして、当該フィルムを、走査型電子顕微鏡を用いて倍率3,000倍にて観察した。
【0139】
観察により得られた画像から、ポリオレフィン系多孔フィルムの厚み(la)と多孔層の厚み(lb)とを計測した。厚みの測定に用いるサンプルにおいては、フィルムの長手方向に少なくとも5cm間隔で任意の場所を合計10箇所選定し、該10箇所の計測値の平均を、そのサンプルのポリオレフィン系多孔フィルムの厚み(la)および多孔層の厚み(lb)とした。
【0140】
(4)透気抵抗
ポリオレフィン系多孔フィルムまたは多孔質積層フィルムから1辺の長さ100mmの正方形を切取りサンプルとし、JIS P 8117(2009)のB形のガーレー試験機を用いて、23℃、相対湿度65%にて、100mlの空気の透過時間の測定を3回行った。3回の測定による透過時間の平均値を、当該ポリオレフィン系多孔フィルムまたは多孔質積層フィルムの透気抵抗とした。
【0141】
なお、ポリオレフィン系多孔フィルムの透気抵抗の測定は、多孔質積層フィルムに幅65mmのPPテープ(住友3M(株)製、313D)を貼り付けた後で剥離して、多孔質積層フィルムから多孔層を除去した基材(ポリオレフィン系多孔フィルム)に対して実施した。
【0142】
(5)熱収縮率
多孔質積層フィルムを長手方向および幅方向に長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出し、サンプルとした。サンプルに100mmの間隔で標線を描き、3gの錘を吊して、150℃に加熱した熱風オーブン内に40分間設置し加熱処理を行った。熱処理後、放冷し、標線間距離を測定し、加熱前後の標線間距離の変化から熱収縮率を算出し、寸法安定性の指標とした。測定は、各多孔質積層フィルムに対し、長手方向および幅方向の各方向について5サンプルずつ実施し、平均値で評価を行った。
【0143】
(6)平面性
図7に示すように、3mの間隔で平行に配置した2本のロール4に多孔質積層フィルムを渡し、一端を固定端5に固定し、他端に1.7kgの錘6を取り付け、フィルムの幅方向に均等となるように荷重をかけた。この状態で、2本のロール4の中央部分7における幅方向の断面形状(フィルム表面を中央部分7に沿ってなぞった際の変位)を記録した。フィルムの断面形状の最高位置と最低位置との差を垂れ量として測定し、下記の基準で評価し、評価がCであるものを不合格とした。垂れ量は0に近づく程フィルムの平面性が優れていることを示す。
AA:垂れ量3mm未満
A: 垂れ量3mm以上5mm未満
B: 垂れ量5mm以上15mm未満
C: 垂れ量15mm以上
【0144】
(7)電池評価
(安全性)
厚みが40μmのニッケル(Ni)板を直径15.9mmの円形に打ち抜いた。また、多孔質積層フィルムを直径24mmの円形に打ち抜いた。次に、Ni板、1mgの金属粒子(Aesar製のアルミニウム粒子“Alfa”、平均粒子径:11μm)、多孔質積層フィルム、およびNi板を、下からこの順に重ねて、蓋付ステンレス金属製小容器(宝泉(株)製のHSセル、ばね圧:5kgf)に収納した。なお、容器と蓋とは絶縁され、容器および蓋はNi板と接している。この容器内に、プロピレンカーボネート:ジエチルカーボネート=3:7(体積比)の混合溶媒に溶質としてLiPFを濃度1モル/リットルとなるように溶解させた電解液を注入して密閉し、擬似電池を作製した。
【0145】
この擬似電池を電気抵抗測定装置(日置電機(株)製のLCRメーター“LCRハイテスタ3522−50”)、および温度計に接続された熱電対に接続し、温度を25℃から200℃まで、2℃/minの速度にて昇温させた。そして、温度および電気抵抗を連続的に測定して、電気抵抗値が0Ωとなる(即ち、破膜する)時の温度を調べ、下記の基準で評価した。なお、試験個数は10個とし、10個の測定値のその平均値で評価を行い、評価がCのものを不合格とした。
A:電気抵抗値が0Ωとなる温度が200℃以上
B:電気抵抗値が0Ωとなる温度が150℃以上、200℃未満
C:電気抵抗値が0Ωとなる温度が150℃未満
【0146】
(出力特性およびサイクル特性)
厚みが40μmのリチウムコバルト酸化物(LiCoO)の正極(宝泉(株)製)を、直径15.9mmの円形に打ち抜いた。また、厚みが50μmの黒鉛負極(宝泉(株)製)を、直径16.2mmの円形に打ち抜いた。さらに、多孔質積層フィルムを直径24mmに打ち抜いた。そして、正極活物質と負極活物質面が対向するように、負極、多孔質積層フィルム、および正極を下からこの順に重ねて、蓋付ステンレス金属製小容器(宝泉(株)製のHSセル、ばね圧:1kgf)に収納した。なお、容器と蓋とは絶縁され、容器は負極の銅箔と接し、蓋は正極のアルミ箔と接している。この容器内に、プロピレンカーボネート:ジエチルカーボネート=3:7(体積比)の混合溶媒に溶質としてLiPFを濃度1モル/リットルとなるように溶解させた電解液を注入して密閉し、電池を作製した。
【0147】
作製した電池について、25℃の雰囲気下において、充電を3mAで4.2Vまで2時間で行い、放電を3mAで2.7Vまで行う作業を4回繰り返した後、充電を3mAで4.2Vまで2時間で行い、放電を3mAで2.5Vまで行う充放電操作を行い、3mAの放電容量を調べた。さらに、充電を3mAで4.2Vまで2時間で行い、放電を40mAで2.5Vまで行う充放電操作を行い、40mAの放電容量放電容量を測定した。そして、式(8)で与えられる出力特性を以下の基準で評価した。なお、試験個数は10個とし、10個の測定値の平均値で評価を行い、評価がCのものを不合格とした。
出力特性=[(40mAの放電容量)/(3mAの放電容量)]×100
…(8)
AA:85%以上
A:70%以上85%未満
B:60%以上70%未満
C:60%未満
【0148】
また、作製した電池について、25℃の雰囲気下において、充電を3mAで4.2Vまで2時間で行い、放電を3mAで2.7Vまで行う作業を4回繰り返した後、充電を3mAで4.2Vまで2時間で行い、放電を3mAで2.7Vまで行ったときの放電容量を測定した。その後、50℃の雰囲気下において、充電を10mAで4.2Vまで30分で行い、放電を10mAで2.7Vまで行う作業を300回繰り返し、300回目の充放電時の放電容量を測定した。そして、式(9)で与えられるサイクル特性を以下の基準で評価した。なお、試験個数は10個とし、10個の測定値の平均値で評価を行い、評価がCのものを不合格とした。
サイクル特性=[(300回目の放電容量/1回目の放電容量)×300]
…(9)
A:90%以上
B:70%以上90%未満
C:70%未満または1個以上が20%未満
【0149】
(8)面状欠陥(ハジキ状)
多孔性積層フィルムをA4サイズに成形して得た蓄電デバイス用セパレータ20枚について、多孔層を形成した面を、透過光源を用いて目視で欠陥を確認し、欠陥の形状が円形で、欠陥部の塗工層が周囲に比べて薄くなっており、欠陥部の外接円の直径が1mm以上の欠陥をハジキ状欠陥としてカウントした。上記サイズのセパレータ1枚あたりの欠陥の個数を求めて下記のクラス分けを行い、3点以上を合格とした。
5点:面状欠陥の数 1個未満
4点:面状欠陥の数 1個以上3個未満
3点:面状欠陥の数 3個以上5個未満
2点:面状欠陥の数 5個以上10個未満
1点:面状欠陥の数 10個以上
【0150】
(9)面状欠陥(スジ状)
多孔性積層フィルムをA4サイズに成形して得た蓄電デバイス用セパレータ20枚について、多孔質層を形成した面を透過光源にて目視で欠陥を確認し、欠陥が塗工方向と平行な方向のスジ状になっており、欠陥部の塗工層が周囲と比べて厚く、または薄くなっており、スジの幅が1mm以上、長さが4cm以上の欠陥をスジ状欠陥としてカウントした。上記サイズのセパレータ3枚あたりの欠陥の個数を求めて下記のクラス分けを行い、3点以上を合格とした。
5点:面状欠陥の数 1個未満
4点:面状欠陥の数 1個以上3個未満
3点:面状欠陥の数 3個以上5個未満
2点:面状欠陥の数 5個以上10個未満
1点:面状欠陥の数 10個以上
【0151】
(10)塗料組成物の貯蔵弾性率(G’)
塗料組成物の貯蔵弾性率(G’)は次のように測定した。
測定装置として、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製のレオメーター“AR1000”を使用し、測定用ジオメトリーには、直径40mm、角度2°のコーンアンドプレートを使用した。装置への液のセット時の影響を除去するため、調製した塗料組成物に対して100s−1のずり速度で100秒間、ずりを与え、3分間放置する前処理を行った。
【0152】
測定は、25℃にて、装置の応力掃引モードで測定周波数を0.1Hzに設定して、応力0.01Paから300Paまでの範囲で行った。この測定結果のデータから、応力の変化に対して貯蔵弾性率(G’)の変化が3%以内の領域を線形性のある領域として判断し、線形性があると判断された領域の応力0.1Paにおける値を貯蔵弾性率(G’)の代表値とした。
【0153】
(11)塗料組成物の表面張力γ
全自動接触角計(協和界面科学株式会社製“DM−700”)を使用し、25℃の環境下にてステンレス製のシリンジニードルにより塗料組成物を1μL〜5μL押し出し、シリンジの先端に形成された液滴の形状を、付属の多機能統合解析ソフトである「FAMAS」により、「FAMAS取扱い説明書」に記載の方法に従って表面張力を算出した。算出に必要なパラメーターとして、化合物の密度が必要であるが、化合物の密度は、25℃の環境下にて密度比重計(京都電子工業株式会社製“DA−130N”)を用いて測定した値を用いた。
【0154】
(12)溶媒成分の基材への接触角
全自動接触角計(協和界面科学株式会社製“DM−700”)を使用し、25℃の環境下にて、ステンレス製のシリンジニードルにより、塗料組成物の溶媒成分を1μL〜2μLを支持基材上に滴下し、接触角を測定した。
【0155】
(13)塗料組成物のせん断粘度
塗料組成物のせん断粘度は次のように測定した。
測定装置としては、上記貯蔵弾性率(G’)の測定で用いたものと同じ装置を使用した。測定は測定温度25℃で、ステップ状にせん断速度を変化させた定常流測定にて行った。具体的には、せん断速度100s−1で10秒間予備せん断後、せん断速度1,000s−1から0.1s−1に向けて、一桁当たり対数間隔で3点のステップ測定を行った。このデータからせん断速度1,000s−1における粘度を求めた。
【0156】
(14)ポリオレフィン系多孔フィルムおよび多孔質積層フィルムのβ晶形成能
ポリオレフィン系多孔フィルムを構成する樹脂または多孔質積層フィルムおよびポリオレフィン系多孔フィルムそのもの5mgをサンプルとしてアルミニウム製のパンに採取し、示差走査熱量計(セイコー電子工業製“RDC220”)を用いて測定した。まず、窒素雰囲気下で室温から280℃まで10℃/分で昇温(ファーストラン)させ、10分間保持した後、30℃まで10℃/分で冷却した。その状態で5分間保持した後、再度10℃/分で昇温(セカンドラン)させた際に観測される融解ピークを測定してグラフを作成した。そして、145〜157℃の温度領域にピークが存在する融解をβ晶の融解ピーク、158℃以上にピークが観察される融解をα晶の融解ピークとして、高温側の平坦部を基準に引いたベースラインとピークとに囲まれる領域の面積から、それぞれの融解熱量を求め、α晶の融解熱量をΔHα、β晶の融解熱量をΔHβとしたとき、式(3)で算出される値をβ晶形成能とした。なお、融解熱量の校正はインジウムを用いて行った。
β晶形成能(%)=[ΔHβ/(ΔHα+ΔHβ)]×100 …(3)
【0157】
(15)ポリオレフィン系多孔フィルムの表面孔径および表面孔径比
走査型電子顕微鏡の試料台に固定したポリオレフィン系多孔フィルムの表面に対し、スパッタリング装置を用いて金スパッタを施し、走査型電子顕微鏡を用いて倍率10,000倍にて観察した。得られた観察像に対して画像解析装置による解析を行い、表面の孔による空隙部分の形状における最大長さおよび最小長さを求め、その平均値をその孔の孔径とした。上記の操作で観察像中の100個の孔について孔径を求めた。
【0158】
求めた孔径のうち0.01μm以上0.5μm未満の孔径の孔の数を(A)、0.5μm以上10μm未満の孔径の孔の数を(B)とし、式(10)によって与えられる表面孔径比をサンプルごとに算出した。
表面孔径比=(A)/(B) …(10)
【0159】
(16)バインダーの融点
バインダーを、粉末状の場合には未処理のまま、分散体の場合には50℃のオーブンで溶媒を乾燥除去した状態で、5mgを計量しアルミニウム製のパンに採取した。そして、示差走査熱量計(セイコー電子工業製“RDC220”)を用いて、窒素雰囲気下で室温から280℃まで10℃/分で昇温(ファーストラン)させ、10分間保持した後、20℃まで10℃/分で冷却した。その状態で5分間保持した後、再度10℃/分で昇温(セカンドラン)させた際に観測される融解ピークをバインダーの融点とした。
【0160】
(17)多孔層中のバインダーの溶融の有無
多孔質積層フィルムを、多孔層側を上面にして走査型電子顕微鏡の試料台に固定し、スパッタリング装置を用いて金スパッタを施し、走査型電子顕微鏡を用いて観察倍率70,000倍にて観察画像を撮影した。得られた観察画像のうち、耐熱粒子ではない部分について粒状の物質の有無を評価した。
A:粒状物質なし
B:粒状物質あり
【0161】
(18)耐熱粒子の脱落
多孔質積層フィルムを幅1cmのテープ状に切断してサンプルを作製した。このサンプルを、テープ走行性試験機((株)横浜システム研究所製“TBT−300”)において23℃、50%RH雰囲気で走行させることにより、摩擦係数μkを求めた。サンプルは、多孔層側が試験機のガイドに接触するように設置した。なお、ガイド径は6mmφであり、ガイド材質はSUS27(表面粗度0.2S)、巻き付け角は90°走行速度は3.3cm/秒、繰り返し1〜50回である。この測定により、繰り返し回数1回目の摩擦係数(K1)と繰り返し回数50回目の摩擦係数(K50)とを求め、式(6)によって与えられる摩擦係数の変化率K(%)を算出した。そして、繰り返し試験によるフィルム走行性を下記の基準で評価し、評価がCのものを不合格とした。
K(%)=(K50)/(K1)×100 …(6)
A:変化率300%未満
B:変化率300%以上500%未満
C:変化率500%以上
【0162】
[塗料組成物1〜34の調製]
実施例1〜30および比較例1〜5において用いる塗料組成物1〜34を、以下のとおり調製した。
【0163】
[塗料組成物1]
実施例1に用いる塗料組成物1として、下記材料のうち耐熱粒子、バインダーの一部、および溶媒成分を、遊星型ボールミル(フリッチュ社製“P−4型”)を用いて4時間分散させた。次いで、この粒子分散物に残りの原材料を加え、攪拌しながら混合した。さらに、この混合物を目開き100μmのナイロン製メッシュで粗ろ過することにより粗粒子を除去した後、粒子径20μmの粒子が99.9%のろ過効率で捕集可能なカートリッジフィルターを用いて、フィルターカートリッジの出口側と入口側の差圧0.1MPa以内でろ過して、塗料組成物1を得た。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 9.0質量%
(白石カルシウム(株)製“PC”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.6質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 40.8質量%
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンA)
49.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールS−100”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:85℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.6質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
塗料組成物1の溶媒組成は、水100%である。
【0164】
[塗料組成物2]
実施例2に用いる塗料組成物2を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 10.0質量%
(白石カルシウム(株)製“PC”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.6質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 44.8質量%
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンA)
44.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールS−100”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:85℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.6質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
塗料組成物2の溶媒組成は、水100%である。
【0165】
[塗料組成物3]
実施例3に用いる塗料組成物3を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 15.0質量%
(白石カルシウム(株)製“PC”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.9質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 17.2質量%
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンA)
66.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールS−100”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:85℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.9質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
塗料組成物3の溶媒組成は、水100%である。
【0166】
[塗料組成物4]
実施例4および30に用いる塗料組成物4を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 14.0質量%
(白石カルシウム(株)製“PC”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.6質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 60.8質量%
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンA)
24.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールS−100”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:85℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.6質量%
(ナガセ化成工業(株)製デナコール“EX−930”)
塗料組成物4の溶媒組成は、水100%である。
【0167】
[塗料組成物5]
実施例5に用いる塗料組成物5を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 14.0質量%
(白石カルシウム(株)製“PC”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.6質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 50.8質量%
溶媒成分:イソプロピルアルコール 10.0質量%
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンA)
24.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールS−100”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:85℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.6質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
塗料組成物5の溶媒組成は、イソプロピルアルコール12.5質量%、水87.5質量%である。
【0168】
[塗料組成物6]
実施例6に用いる塗料組成物6を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 14.0質量%
(白石カルシウム(株)製“PC”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.6質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 57.8質量%
溶媒成分:イソプロピルアルコール 3.0質量%
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンA)
24.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールS−100”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:85℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.6質量%
(ナガセ化成工業(株)製デナコール“EX−930”)
塗料組成物6の溶媒組成は、イソプロピルアルコール3.75質量%、水96.25質量%である。
【0169】
[塗料組成物7]
実施例7に用いる塗料組成物7を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 14.0質量%
(白石カルシウム(株)製“PC”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.6質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 57.8質量%
溶媒成分:酢酸エチル 3.0質量%
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンA)
24.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールS−100”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:85℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.6質量%
(ナガセ化成工業(株)製デナコール“EX−930”)
塗料組成物7の溶媒組成は、酢酸エチル3.75質量%、水96.25質量%である。
【0170】
[塗料組成物8]
実施例8に用いる塗料組成物8を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 14.0質量%
(白石カルシウム(株)製“PC”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.6質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 60.7質量%
界面活性剤:フッ素系界面活性剤 0.1質量%
(DIC株式会社製“メガファック F−533”)
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンA)
24.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールS−100”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:85℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.6質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
塗料組成物8の溶媒組成は、水100%である。
【0171】
[塗料組成物9]
実施例9に用いる塗料組成物9を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 14.0質量%
(白石カルシウム(株)製“PC”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.6質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 60.7質量%
界面活性剤:ポリジメチルシロキサン系界面活性剤 0.1質量%
(ビックケミー・ジャパン株式会社製“BYK 378”)
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンA)
24.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールS−100”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:85℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.6質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコール X−930”)
塗料組成物9の溶媒組成は、水100%である。
【0172】
[塗料組成物10]
実施例10に用いる塗料組成物10を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 14.0質量%
(白石カルシウム(株)製“PC”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.6質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 60.3質量%
界面活性剤:フッ素系界面活性剤 0.5質量%
(DIC株式会社製“メガファック F−533”)
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンA)
24.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールS−100”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:85℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.6質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
塗料組成物10の溶媒組成は、水100%である。
【0173】
[塗料組成物11]
実施例11に用いる塗料組成物11を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 7.0質量%
(白石カルシウム(株)製“PC”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.3質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 80.3質量%
界面活性剤:フッ素系界面活性剤 0.1質量%
(DIC株式会社製“メガファック F−533”)
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンA)
12.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールS−100”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:85℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.3質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
塗料組成物11の溶媒組成は、水100%である。
【0174】
[塗料組成物12]
実施例12に用いる塗料組成物12を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 10.5質量%
(白石カルシウム(株)製“PC”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.45質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 70.5質量%
界面活性剤:フッ素系界面活性剤 0.1質量%
(DIC株式会社製“メガファック F−533”)
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンA)
18.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールS−100”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:85℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.45質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
塗料組成物12の溶媒組成は、水100%である。
【0175】
[塗料組成物13]
実施例13に用いる塗料組成物13を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 21.0質量%
(白石カルシウム(株)製“PC”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.9質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 41.1質量%
界面活性剤:フッ素系界面活性剤 0.1質量%
(DIC株式会社製“メガファック F−533”)
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンA)
36.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールS−100”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:85℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.9質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
塗料組成物13の溶媒組成は、水100%である。
【0176】
[塗料組成物14]
実施例14に用いる塗料組成物14を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 28.0質量%
(白石カルシウム(株)製“PC”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 1.2質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 21.5質量%
界面活性剤:フッ素系界面活性剤 0.1質量%
(DIC株式会社製“メガファック F−533”)
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンA)
48.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールS−100”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:85℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 1.2質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
塗料組成物14の溶媒組成は、水100%である。
【0177】
[塗料組成物16]
実施例16に用いる塗料組成物16を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 14.0質量%
(白石カルシウム(株)製“PC”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.6質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 72.8質量%
バインダー:PVDF分散体 12.0質量%
(アルケマ社製“カイナーアクアテック”、固形分濃度40質量%、樹脂の融点:160℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.6質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
塗料組成物16の溶媒組成は、水100%である。
【0178】
[塗料組成物17]
実施例17に用いる塗料組成物17を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 14.0質量%
(白石カルシウム(株)製“PC”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.6質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 60.8質量%
バインダー:EVA水分散体 24.0質量%
(住友ケムテックス製“スミカフレックス900HL”、固形分濃度:20質量%、樹脂の融点:50℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.6質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
塗料組成物17の溶媒組成は、水100%である。
【0179】
[塗料組成物18]
実施例18に用いる塗料組成物18を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 17.0質量%
(白石カルシウム(株)製“PC”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.6質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 72.8質量%
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンA)
9.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールS−100”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:85℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.6質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
塗料組成物18の溶媒組成は、水100%である。
【0180】
[塗料組成物19]
実施例19に用いる塗料組成物19を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 8.5質量%
(白石カルシウム(株)製“PC”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.3質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 86.4質量%
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンA)
5.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールS−100”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:85℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.3質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
塗料組成物19の溶媒組成は、水100%である。
【0181】
[塗料組成物20]
実施例20に用いる塗料組成物20を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 18.0質量%
(白石カルシウム(株)製“PC”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.6質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 76.8質量%
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンA)
4.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールS−100”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:85℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.6質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
塗料組成物20の溶媒組成は、水100%である。
【0182】
[塗料組成物21]
実施例21に用いる塗料組成物21を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 9.0質量%
(白石カルシウム(株)製“PC”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.6質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 48.8質量%
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンA)
39.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールS−100”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:85℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.6質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
熱可塑性樹脂微粒子:ポリエチレン粒子水分散体 2.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールW−100”)
塗料組成物21の溶媒組成は、水100%である。
【0183】
[塗料組成物22]
実施例22に用いる塗料組成物22を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 7.4質量%
(白石カルシウム(株)製“PC”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.6質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 54.4質量%
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンA)
32.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールS−100”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:85℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.6質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
熱可塑性樹脂微粒子:ポリエチレン粒子水分散体 5.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールW−100”)
塗料組成物22の溶媒組成は、水100%である。
【0184】
[塗料組成物23]
実施例23に用いる塗料組成物23を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 14.0質量%
(奥多摩工業(株)製“タマパールTP−121”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.6質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 60.8質量%
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンA)
24.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールS−100”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:85℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.6質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
塗料組成物23の溶媒組成は、水100%である。
【0185】
[塗料組成物24]
実施例24に用いる塗料組成物24を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:擬ベーマイト(日揮触媒化成(株)製) 14.0質量%
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.6質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 60.8質量%
バインダー:変性ポリエチレン水分散体 24.0質量%
(ユニチカ(株)製“アローベースSE−1010”、固形分濃度20質量%)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.6質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
塗料組成物24の溶媒組成は、水100%である。
【0186】
[塗料組成物25]
比較例1に用いる塗料組成物25を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:ウォラスナイト(原田産業(株)製) 14.0質量%
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.6質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 60.8質量%
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンA)
24.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールS−100”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:85℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.6質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
塗料組成物25の溶媒組成は、水100%である。
【0187】
[塗料組成物26]
比較例2に用いる塗料組成物26を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:チタン酸カリウム 14.0質量%
(大塚化学(株)製“ティスモD”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.6質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 60.8質量%
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンA)
24.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールS−100”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:85℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.6質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
塗料組成物26の溶媒組成は、水100%である。
【0188】
[塗料組成物27]
比較例3に用いる塗料組成物27を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 14.0質量%
(東洋ファインケミカル(株)製“P−50”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.6質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 60.8質量%
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンA)
24.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールS−100”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:85℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.6質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
塗料組成物27の溶媒組成は、水100%である。
【0189】
[塗料組成物28]
比較例4に用いる塗料組成物28を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:シリカ 14.0質量%
(富士シリシア(株)製“サイシリア350”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.6質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 60.8質量%
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンA)
24.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールS−100”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:85℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.6質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
塗料組成物28の溶媒組成は、水100%である。
【0190】
[塗料組成物29]
比較例5に用いる塗料組成物29を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:アルミナシリケート 14.0質量%
(白石カルシウム(株)製“オプチホワイトMX”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.6質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 60.8質量%
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンA)
24.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールS−100”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:85℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.6質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
塗料組成物29の溶媒組成は、水100%である。
【0191】
[塗料組成物30]
実施例25に用いる塗料組成物30を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 14.0質量%
(白石カルシウム(株)製“PC”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.6質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 60.8質量%
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンB)
24.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールM−200”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:90℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.6質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
塗料組成物30の溶媒組成は、水100%である。
【0192】
[塗料組成物31]
実施例26に用いる塗料組成物31を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 14.0質量%
(白石カルシウム(株)製“PC”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.6質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 60.8質量%
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンC)
24.0質量%
(中京油脂(株)製、固形分濃度:20質量%、樹脂の融点:95℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.6質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
塗料組成物31の溶媒組成は、水100%である。
【0193】
[塗料組成物32]
実施例27に用いる塗料組成物32を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 14.0質量%
(白石カルシウム(株)製“PC”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.6質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 60.8質量%
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンD)
24.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールW−310”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:147℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.6質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
塗料組成物32の溶媒組成は、水100%である。
【0194】
[塗料組成物33]
実施例28に用いる塗料組成物33を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 14.0質量%
(白石カルシウム(株)製“PC”)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.6質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 60.8質量%
バインダー:変性ポリプロピレン水分散体(変性ポリプロピレン)
24.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールWP−100”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:158℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.6質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
塗料組成物33の溶媒組成は、水100%である。
【0195】
[塗料組成物34]
実施例29に用いる塗料組成物34を、塗料組成物1と同様の方法で、下記の材料を使用して調合した。
耐熱粒子:炭酸カルシウム 14.0質量%
(白石カルシウム(株)製“PC”の微細化粒子)
バインダー:カルボキシメチルセルロース 0.6質量%
(ダイセル化学工業(株)製“CMCダイセル2200”)
溶媒成分:イオン交換水 60.8質量%
バインダー:変性ポリエチレン水分散体(変性ポリエチレンA)
24.0質量%
(三井化学(株)製“ケミパールS−100”、固形分濃度20%の水希釈品、樹脂の融点:85℃)
バインダー:オキシラン環含有化合物 0.6質量%
(ナガセ化成工業(株)製“デナコールEX−930”)
塗料組成物34の溶媒組成は、水100%である。
【0196】
塗料組成物34で使用した微細化粒子の製造方法を以下に示す。
炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製“PC”、1次粒径:3.2μm)をジェットミル(アシザワファインテック(株)製“LMZ”)を用いて、分散処理を行い、平均粒径0.4μmの微細化粒子を得た。分散条件は、仕込み量:500ml、循環回数:10回/hr、ビーズ径:0.5mm(ビーズ材質:ジルコニア)にて実施した。
【0197】
[ポリオレフィン系多孔フィルムの製造方法]
実施例1〜29および比較例1〜5で使用したポリオレフィン系多孔フィルムAの製造方法を以下に示す。
【0198】
ポリオレフィン系多孔フィルムの原料樹脂として、ホモポリプロピレン(住友化学(株)製“FLX80E4”、以下、PP−1と表記)94.45質量%、エチレン−オクテン−1共重合体(ダウ・ケミカル製“Engage8411”、メルトインデックス:18g/10分、以下、PE−1と表記)5質量%、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製“Nu−100”、以下、単にβ晶核剤と表記)0.3質量%、酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製“IRGANOX1010”を0.15質量%および“IRGAFOS168”を0.1質量%、をこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてチップ原料とした。
【0199】
このチップを単軸押出機に供給して220℃で溶融押出を行い、25μmカットの焼結フィルターで異物を除去した後、溶融材料をTダイから120℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして未延伸シート(フィルム)を得た。次いで、120℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行い、該フィルムを長手方向に4.5倍に延伸した。さらに、該フィルムを一旦冷却した後、テンター式延伸機にフィルムの端部をクリップで把持させて導入し、145℃で6倍に延伸した。そのまま、幅方向に10%のリラックスを該フィルムに掛けながら155℃で6秒間の熱処理を行い、厚み23μmの多孔フィルムを得た。得られた多孔フィルムの透気度は221s/100ml、表面の平均孔径比は1.0、β晶形成能は75%であった。
【0200】
実施例30で使用したポリオレフィン系多孔フィルムBの製造方法を以下に示す。
ポリプロピレン(住友化学(株)製“FLX80E4”)51.85質量%、プロピレンコポリマー(三井化学(株)製“タフマーXM”)47.8質量%、酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製“IRGANOX1010”を0.15質量%および“IRGAFOS168”を0.1質量%、ステアリン酸カルシウムを0.1質量%、を配合し、ヘンシェルミキサー(商品名)で混合した後、計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてチップ原料とした。
【0201】
このチップ原料を、リップ幅120mmのTダイを装備した20mm押出機に供給し、押出温度280℃、吐出量4kg/hで溶融し、Tダイのリップから膜状に押出し、溶融材料の厚みをTダイのリップのクリアランスで制御し、80℃のキャストドラムにおいて、ドラムとの非接触面をエアーナイフで空冷しながら固化し、幅100mm、厚さ200μmの未延伸シートを作成した。この未延伸シートを、フィルムストレッチャーを用いて縦方向(MD方向)を拘束しながら、延伸温度23℃、変形速度200%/秒、延伸倍率5.5倍の条件で横方向(TD方向)に延伸した後、さらに、延伸温度100℃、変形速度1,000%/秒、延伸倍率5倍の条件で縦方向(MD方向)に延伸して、厚み15μmのポリオレフィン系多孔フィルムを得た。得られた多孔フィルムの透気抵抗は230s/100ml、表面の平均孔径は8.5、β晶形成能は30%以下であった。
【0202】
[多孔層を有する蓄電デバイス用セパレータの形成方法]
実施例1〜29および比較例1〜5においては、基材として上記ポリオレフィン系多孔フィルムAを用いた。また実施例30においては、基材として上記ポリオレフィン系多孔フィルムBを用いた。これらの基材に対し、塗料組成物1〜34を自転−公転型脱泡装置(株式会社シンキー製“ARE−500”)を用いて脱泡した後、搬送速度10m/minの条件でダイコーターを有する連続塗工装置を用い、乾燥後の膜厚が5μmになる条件で上記基材上に塗工した。塗工後、下記条件の下で連続的に乾燥を行い、多孔層を有する蓄電デバイス用セパレータを得た。
送風温湿度: 温度 100℃、相対湿度 1%
風速: 塗工面側 5m/s、反塗工面側 5m/s
風向: 塗工面側 基材に対して垂直、反塗工面側:基材に対して垂直
乾燥時間: 1分間
なお、風速は熱線式風速計(日本カノマックス株式会社製、アネモマスター風速・風量計 MODEL6034)による測定値を使用した。
【0203】
以上の方法により作製した実施例1〜30および比較例1〜5の多孔質積層フィルムおよび蓄電デバイス用セパレータに関する測定および評価結果は、次のとおりである。
【表1】
【0204】
【表2】
【0205】
【表3】
【0206】
【表4】
【0207】
以上説明したように、本実施の形態に係る多孔質積層フィルムにおいては、ポリオレフィン系多孔フィルムに多孔層を設けることで耐熱性を付与することができると共に、平面性および透気抵抗の低化を抑制することができる。このような多孔性積層フィルムは、例えば非水電解質二次電池であるリチウムイオン電池等の種々の蓄電デバイスのセパレータとして好適に用いることが可能となる。本実施の形態に係る多孔性積層フィルムをセパレータとして用いた場合、蓄電デバイスにおいて、優れた電池性能と安全性を高いレベルで両立することが可能となる。
【符号の説明】
【0208】
1 耐熱粒子(無機または有機粒子)の断面投影像
2 最大内接円
3 最小外接円
4 ロール
5 固定端
6 錘
7 中央部分
10 多孔質積層フィルム
11 ポリオレフィン系多孔フィルム
12 多孔層
12a 耐熱粒子
12b バインダー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7