(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、第一実施形態の軸力測定方法について説明する。
【0015】
図1に示すように、軸力測定方法は、被締結物Wに締結されたボルト10の軸力を測定するものである。
【0016】
第一実施形態のボルト10は、頭部11の重心(中心)に凹部11aが形成されるとともに、外側の端部が平らな頂部11bとして形成される六角ボルトであるものとする。また、ボルト10には、頭部11の下側にフランジ12が形成されているものとする。
凹部11aは、頂部11bよりも低位置に位置している。
【0017】
ボルト10は、締結時に重心を中心として凹部11aが窪み、軸力が大きくなるにつれて、頭部11の変位量が大きくなる(
図1に二点鎖線で示す締結前の状態の凹部11a参照)。つまり、軸力と締結前後の頭部11の変位量との間には、相関がある(
図13参照)。
【0018】
軸力測定方法では、頭部11の変位量を測定し、当該測定結果と前記相関とに基づいて軸力を測定する。
このとき、軸力測定方法は、画像処理を用いて頭部11の変位量を測定する点が、従来技術と比較して大きく異なる点である。
【0019】
なお、本発明に係る軸力測定方法の測定対象となるボルトは、第一実施形態のボルト10に限定されるものでなく、例えば、頭部が平らなボルト等であっても構わない。このような頭部が平らなボルトの軸力を測定する場合、頭部の頂部は、締結後も窪まない部分、すなわち、頭部の外縁部近傍となる。
また、本発明に係る軸力測定方法の測定対象となるボルトは、フランジの形成有無を問わない。
【0020】
まず、軸力測定方法を行うために用いられる装置の構成について説明する。
【0021】
軸力測定方法では、距離センサ20とパーソナルコンピュータ30とを用いて軸力を測定する。
【0022】
距離センサ20は、ボルト10の上方、すなわち、頭部11側の一側方に配置され、ボルト10の頭部11までの距離を測定する。これにより、距離センサ20は、頭部11の高さを測定する。
距離センサ20は、頭部11までの距離の測定結果に対して画像処理(後述する平滑化処理等)を実行するためのプログラムを記憶する記憶装置および前記プログラムを実行するための演算装置等を備える。
距離センサ20は、パーソナルコンピュータ30と電気的に接続され、測定結果をパーソナルコンピュータ30に入力する。
【0023】
パーソナルコンピュータ30は、軸力測定方法を行うための画像処理(後述する二値化処理およびマスク処理等)、および演算処理を実行するためのプログラム等を記憶する記憶装置および前記プログラムを実行するための演算装置等を備える。
パーソナルコンピュータ30は、軸力と頭部11の変位量との間の相関、すなわち、
図13にあるような相関の関係式を、記憶装置に記憶している。また、パーソナルコンピュータ30は、締結前の凹部11a(
図1に二点鎖線で示す凹部11a参照)の窪み量を、記憶装置に記憶している。
【0024】
次に、軸力測定方法の手順について説明する。
【0025】
図1および
図2に示すように、軸力測定方法では、まず、距離センサ20によって、被締結物Wに締結されたボルト10の頭部11の距離画像21を取得する工程を行う(ステップS10)。
このとき、軸力測定方法では、例えば、距離センサ20を水平方向に移動させながらボルト10の頭部11の高さを測定する等して、ボルト10の頭部11の高さを測定する。
【0026】
これにより、
図3に示すように、軸力測定方法では、高さを画素値とした距離画像21を取得する。
【0027】
このような距離画像21は、ボルト10の頭部11、フランジ12、および被締結物Wの上面の高さを画素値として示す画像となる。
なお、
図3に示す符号Aは、埃等の影響で実際の高さよりも高い測定結果となってしまった部分である。
【0028】
図2および
図3に示すように、距離画像21を取得した後で、軸力測定方法では、距離センサ20によって距離画像21の中から外れ値を除去する(ステップS20)。
このとき、軸力測定方法では、例えば、距離画像21の中から所定の範囲の画素を抽出し、抽出した各画素の画素値に基づいて前記所定の範囲の高さの単純平均を算出する。そして、軸力測定方法では、前記所定の範囲の画素の中から、画素値が前記単純平均の算出結果より大きく離れているものを、外れ値であると判断して除去する。
【0029】
なお、
図3に示す距離画像21は、説明の便宜上、このような外れ値を除去したものを記載している。
【0030】
外れ値を除去した後で、軸力測定方法では、外れ値を除去した距離画像21に対して、距離センサ20によって平滑化処理を施す(ステップS30)。平滑化処理は、画素値を平らにする処理である。
【0031】
軸力測定方法では、例えば、注目画素の画素値およびその周囲の画素の画素値の重み付き平均値をフィルタ処理後の画素値とする、いわゆるガウスフィルタ処理を、平滑化処理として距離画像21に施す。
【0032】
なお、軸力測定方法では、注目画素の画素値およびその周囲の画素の画素値における中央値をフィルタ処理後の画素値とする、いわゆるメディアンフィルタ処理を、平滑化処理として採用しても構わない。
【0033】
これにより、軸力測定方法は、頭部11の表面粗さ(微細な凹凸)および測定誤差等を、ノイズ成分として除去した距離画像21を取得する。
図1に示すように、距離センサ20は、平滑化処理を施した距離画像21をパーソナルコンピュータ30に入力する(
図1に示す矢印21参照)。
【0034】
なお、軸力測定方法は、ステップS20・S30をパーソナルコンピュータによって行っても構わない。
【0035】
図2および
図4に示すように、距離画像21に対して平滑化処理を施した後で、軸力測定方法では、パーソナルコンピュータ30によって、平滑化処理を施した距離画像21に対して二値化処理を施す(ステップS40)。二値化処理は、画素値の閾値を基準として距離画像21を二色の色に分ける処理である。
【0036】
軸力測定方法では、頭部11が一方の色(例えば、白色)となるとともに、フランジ12および被締結部Wが他方の色(例えば、黒色)となるように画素値の閾値を設定し、平滑化処理を施した距離画像21に対して二値化処理を施す。
このような画素値の閾値は、実際に軸力を測定する前に行った実験等に基づいて設定される。
【0037】
これにより、軸力測定方法では、頭部11と頭部11以外の部分とで二色に分けられた
二値化画像31を取得する。
【0038】
第一実施形態において、埃等の影響で実際の高さより高い測定結果となってしまった部分Aは、二値化処理によって頭部11と同じ白色になったものとする。
【0039】
図2および
図5に示すように、二値化処理を行った後で、軸力測定方法では、パーソナルコンピュータ30によって二値化画像31に対してラベリング処理を施す(ステップS50)。ラベリング処理は、同じ画素値が連続する画素に同じ番号を割り振って、番号毎に(面積によって)画素を色分けする処理である。
【0040】
軸力測定方法では、二値化画像31に対して、このようなラベリング処理を施すことにより、埃等の影響で実際の高さより高い測定結果となってしまった部分Aと頭部11とそれ以外の部分とで三色の色に分けたラベリング画像32を作成する。
【0041】
図2および
図6に示すように、ラベリング処理を施した後で、軸力測定方法では、パーソナルコンピュータ30によって、ラベリング画像32より頭部11を抽出する(ステップS60)。
【0042】
このとき、軸力測定方法では、ラベリング画像32より色分けした画素群の面積を算出し、当該算出結果が所定の面積よりも小さくなった色の画素群を除去する。
そして、軸力測定方法では、画素群の面積および画素群の位置等に基づいて、頭部11に対応する画素群を判断する。
軸力測定方法では、頭部11と判断した画素群の画素値を白色(つまり、255)等に変更するとともに、それ以外の画素群の画素値を黒色(つまり、0)に変更する処理を、ラベリング画像32に対して行う。
【0043】
軸力測定方法では、このようにして頭部11とそれ以外の部分とで二色の色に分けた頭部抽出画像33を作成する。
【0044】
これにより、軸力測定方法は、例えば、頭部11に埃等が付着した場合でも、埃等が付着した部分を除外して頭部11を抽出できるため、正確に頭部11を抽出できる。
【0045】
ここで、
図7に示すように、高さ方向において、フランジ12と被締結物Wとの間で距離センサ20の測定範囲を超えてしまった場合、つまり、フランジ12の高さ位置は距離センサ20の測定範囲内にあるが、被締結物Wの高さ位置が距離センサ20の測定範囲外にある場合には、被締結物Wの高さが逆転してしまう(実際の高さよりも高くなってしまう)可能性がある。
軸力測定方法では、このような距離画像21に対して二値化処理を施した場合に、頭部11と被締結物Wとが同じ色となった二値化画像31を作成してしまう可能性がある。
【0046】
このような場合においても、軸力測定方法は、二値化画像31に対してラベリング処理を施すことで、頭部11と頭部11以外の部分とを色分けできる。
従って、軸力測定方法は、フランジ12と被締結物Wとの間で距離センサ20の測定範囲を超えてしまった場合でも、正確に頭部11を抽出できる。
【0047】
図2および
図8に示すように、頭部11を抽出した後で、軸力測定方法では、パーソナルコンピュータ30によって、頭部抽出画像33より頭部11の重心位置C(すなわち、頭部11の重心に対応する画素)を算出する(ステップS70)。
【0048】
このとき、軸力測定方法では、例えば、頭部11の形状である六角形の、対向する頂点を結ぶ三つの直線を頭部抽出画像33に引き、前記各直線の交点を、頭部11の重心位置Cとして算出する。
【0049】
なお、軸力測定方法では、必ずしも三つの直線を引く必要はなく、対向する頂点を結ぶ
二つの直線の交点を、頭部の重心位置として算出しても構わない。
【0050】
このように、軸力測定方法では、頭部抽出画像33の中からボルト10の頭部11を抽出し、ボルト10の頭部11の重心位置Cを算出する工程を行う。
【0051】
なお、軸力測定方法では、必ずしも二値化画像に対してラベリング処理を施す必要はない。つまり、軸力測定方法では、ステップS40で作成した二値化画像31またはステップS60で作成した頭部抽出画像33の中から、ボルトの頭部を抽出すればよい。
【0052】
ただし、軸力測定方法では、第一実施形態のように、ボルトの頭部を抽出するときに頭部抽出画像33を用いることが好ましい。
これにより、軸力測定方法は、埃等の影響で実際の高さより高い測定結果となってしまった部分を除外して頭部の重心位置を算出できるため、頭部の重心位置をより正確に算出できる。
【0053】
図2および
図9に示すように、重心位置Cを算出した後で、軸力測定方法では、平滑化処理を行った距離画像21に対して、パーソナルコンピュータ30によってマスク処理を施す(ステップS80)。マスク処理は、画像の一部を表示するとともに、他部を表示しない、すなわち、他部を隠す処理である。
【0054】
軸力測定方法では、頭部11の重心位置Cを中心とする最小円K10が描かれた基準画像K1を作成する。ステップS80における基準画像K1は、最小円K10の外側が黒く塗りつぶされた画像である。
つまり、ステップS80における基準画像K1は、最小円K10の外側を隠すための画像である。
【0055】
このような基準画像K1の最小円K10は、凹部11aよりも小さい円である。
【0056】
なお、
図9に示す基準画像K1において、重心位置Cを示す黒塗りの丸は、重心位置Cを示すために便宜上記載したものである。つまり、実際の基準画像は、
図9に示す基準画像K1から、重心位置Cを示す黒塗りの丸を除いたものとなる。
【0057】
軸力測定方法では、平滑化処理を施した距離画像21に基準画像K1を重ねて、平滑化処理を行った距離画像21の中で、最小円K10の内側に位置する画素だけが表示されるマスク画像34を作成する。
【0058】
これにより、軸力測定方法では、平滑化処理を行った距離画像21の中から、最小円K10の内側に位置する画素だけを抽出する。
【0059】
マスク処理を施した後で、軸力測定方法では、パーソナルコンピュータ30によって、マスク処理を施して抽出した、すなわち、マスク画像34に引き続き表示されている距離画像21の各画素の画素値より最小点を算出する(ステップS90)。
【0060】
第一実施形態において、最小点は、頭部11の重心周辺の高さ、すなわち、締結時に頭部11の中で最も窪む(低位置に位置する)部分の高さである。
【0061】
前述のように、基準画像K1の最小円K10は、頭部11の重心位置Cを中心とする円である。
従って、マスク画像34に引き続き表示されている距離画像21の各画素は、頭部11の重心周辺の高さの測定結果に対応する画素である。
【0062】
そこで、軸力測定方法では、マスク画像34に引き続き表示されている距離画像21の各画素、すなわち、最小円K10内に位置する各画素の高さの単純平均を算出する。
軸力測定方法では、このような単純平均の算出結果を最小点とする。
【0063】
つまり、軸力測定方法では、頭部11の重心、すなわち、一点だけの高さを算出するのではなく、頭部11の重心周辺を最小点の算出対象としているのである。
【0064】
これによれば、軸力測定方法は、算出した重心位置Cが実際の重心位置に対してずれてしまった場合でも、最小点の算出誤差を低減できる。
また、軸力測定方法は、頭部11の重心周辺に小さな凹凸が形成されている場合でも、前記凹凸に起因する最小点のばらつきを低減できる。
つまり、軸力測定方法は、正確に最小点の高さを測定できるとともに、安定して最小点の高さを測定できる。
【0065】
このように、軸力測定方法では、最小円K10の内側に位置する画素の高さの平均値を最小点として算出する工程を行う。
【0066】
なお、ステップS80における最小円の大きさは、頭部の範囲を超える程度に大きなものでなければ、特に限定されるものでないが、凹部の内側に配置される円、例えば、半径が数mm程度の大きさであることが好ましい。
これにより、軸力測定方法は、重心位置周辺の高さをより正確に算出できる。
【0067】
図2および
図10に示すように、最小点を算出した後で、軸力測定方法では、平滑化処理を行った距離画像21に対して、パーソナルコンピュータ30によってステップS80とは処理内容が異なるマスク処理を施す(ステップS100)。
【0068】
このとき、軸力測定方法では、頭部11の重心位置Cを中心として基準画像K1の最小円K10よりも大きい第一の円K21と、頭部11の重心位置Cを中心として第一の円K21よりも大きい第二の円K22とが描かれた基準画像K2を作成する。ステップS100における基準画像K2は、第一の円K21の内側が黒く塗りつぶされているとともに、第二の円K22の外側が黒く塗りつぶされている。
つまり、ステップS100における基準画像K2は、第一の円K21の内側と第二の円K22の外側とを隠すための画像である。
【0069】
第一の円K21は、頭部11よりも小さい円である。つまり、第一の円K21は、頭部11全体を黒く塗りつぶさない程度に小さい円である。
このような第一の円K21の大きさは、凹部11aと同程度であることが特に好ましい。
【0070】
第二の円K22は、頭部11よりも大きく、かつ、フランジ12よりも小さい円である。
このような第二の円K22の大きさは、頭部11の外接円となる程度であることが特に好ましい。
【0071】
なお、
図10に示す基準画像K2において、重心位置Cを示す白塗りの丸は、重心位置Cを示すために便宜上記載したものである。つまり、実際の基準画像は、
図10に示す基準画像K2から、重心位置Cを示す白塗りの丸を除いたものとなる。
【0072】
軸力測定方法では、平滑化処理を行った距離画像21に基準画像K2を重ねて、平滑化処理を行った距離画像21の中で、各円K21・K22の間に位置する画素のみが表示されるマスク画像35を作成する。
【0073】
このように、軸力測定方法では、平滑化処理を行った距離画像21の中から、第一の円K21の外側に位置するとともに、第二の円K22の内側に位置する画素を抽出する。
【0074】
マスク処理を施した後で、軸力測定方法では、マスク処理を施して抽出した、すなわち、マスク画像35に引き続き表示されている距離画像21より、パーソナルコンピュータ30によって最大点を算出する(ステップS110)。
【0075】
第一実施形態において、最大点は、頭部11の頂部11b、すなわち、締結時に窪まない部分の高さである。
【0076】
前述のように、第一の円K21は、マスク画像34における最小円K10よりも大きく、かつ、頭部11の内側に配置される円である。第二の円K22は、頭部11の外側に配置される円である。
従って、マスク画像35に引き続き表示されている距離画像21の各画素は、凹部11aの外縁部、頂部11b、およびフランジ12等の高さの測定結果に対応する画素である。
【0077】
図11に示すように、軸力測定方法では、重心位置Cから外側に向けて伸びる仮想直線L上に位置する画素を、マスク処理を施して抽出した各画素の中から抽出する。
そして、軸力測定方法では、抽出した各画素の画素値に基づいて、高さが相対的に高い複数個(例えば、30個)の画素を抽出する(
図11の下側のマスク画像35の下方に示す丸参照)。この場合、高さが高い画素としては、抽出した仮想直線L上の各画素のうち、高さが最も高い画素から順に複数個の画素を抽出することができる。
【0078】
なお、
図11の下端部に示す曲線は、仮想直線L上に位置する画素値の高さを示すものであり、
図11における上方向に向かうにつれて高さが高いことを示している。
【0079】
図12に示すように、軸力測定方法では、一定の角度(例えば、1°)毎に伸びる複数の仮想直線L上に位置する画素を抽出し、前述の「抽出した仮想直線L上に位置する画素の中から高さが相対的に高い複数個の画素を抽出する」処理を、各仮想直線Lについて実施する。
【0080】
なお、
図12では、マスク画像35を見やすくするために、仮想直線Lの間隔を20°毎にしている。
【0081】
このように、軸力測定方法では、一定の角度毎に伸びる複数の仮想直線Lについて、当該仮想直線L上に位置する高さの高い画素を複数個抽出することにより、マスク画像35の中から、頂部11bの画素を抽出する。
軸力測定方法では、抽出した各画素の高さの単純平均を算出し、当該算出結果を最大点とする。具体的には、各仮想直線Lにおいて抽出された各画素の高さの単純平均(仮想直線L毎の各画素の単純平均)を算出し、各仮想直線Lにおける単純平均の単純平均をさらに算出することにより、最大点を算出する。
【0082】
つまり、軸力測定方法では、頂部11bの一点または二点といった少ない箇所の高さを算出するのではなく、頂部11bの全周を最大点の算出対象としているのである。
【0083】
これによれば、軸力測定方法は、頭部11の位相が異なる場合や頂部11bに小さな凹凸が形成されている場合でも、最大点のばらつきを低減できる。
つまり、軸力測定方法は、正確に最大点の高さを測定できるとともに、安定して最大点の高さを測定できる。
【0084】
このように、軸力測定方法は、距離画像21の各画素の画素値に基づいて高さが高い画素を抽出し、抽出した高さが高い各画素の高さの平均値を最大点として算出する工程を行う。
【0085】
なお、軸力測定方法は、必ずしも最大点を算出するときに距離画像21に対してマスク処理を施す必要はない。つまり、軸力測定方法は、各仮想直線L上に位置する画素を、距離画像21の中から抽出しても構わない。
【0086】
だたし、軸力測定方法では、第一実施形態のように、各仮想直線L上に位置する画素を、マスク画像の中から抽出することが好ましい。これにより、軸力測定方法は、最大点の算出時に、凹部の外縁部近傍に形成された小さい凸部等を抽出してしまうことを防止できるため、最大点をより正確に算出できる。
従って、軸力測定方法は、特に、頭部が平らなボルトの軸力を測定する場合において、より正確に最大点の高さを測定できるとともに、より安定して最大点の高さを測定できる。
【0087】
図2に示すように、最大点を算出した後で、軸力測定方法では、パーソナルコンピュータ30によって、最小点の算出結果と最大点の算出結果との差に基づいて、頭部11の変位量を算出する工程を行う(ステップS120)。
【0088】
このとき、軸力測定方法では、最小点の算出結果と最大点の算出結果との差を算出し、最小点および最大点の差の算出結果と、予め算出した締結前の頭部11の窪み量(頂部11bから凹部11aの底部までの高さ方向の寸法)との差を算出することで、頭部11の変位量を算出する。
【0089】
軸力測定方法は、正確に、かつ、安定して算出される最小点および最大点に基づいて、頭部11の変位量を算出できる。このため、軸力測定方法は、正確に、かつ、安定して頭部11の変位量を算出できる。
【0090】
図2および
図13に示すように、頭部11の変位量を算出した後で、軸力測定方法では、パーソナルコンピュータ30によって、軸力を算出する工程を行う(ステップS130)。
このとき、軸力測定方法では、頭部11の変位量の算出結果を、予め算出した軸力と頭部11の変位量との関係式に代入して軸力を算出する。
【0091】
軸力測定方法は、正確に、かつ、安定して算出される頭部11の変位量を、軸力と頭部11の変位量との関係式に代入できる。
従って、軸力測定方法は、頭部11の重心の周囲および頂部11bに小さな凹凸が形成されている場合でも、実際とは大きく異なる変位量を、軸力と頭部11の変位量との関係式に代入してしまうことを防止できる。
このため、軸力測定方法は、正確に軸力を測定できるとともに、安定して軸力を測定できる。
【0092】
なお、最小点と最大点を算出する順番は、第一実施形態に限定されるものでなく、最大点を算出した後で最小点を算出しても構わない。
【0093】
次に、軸力と頭部11の変位量との関係式を算出するための手順について説明する。
まず、軸力と頭部11の変位量との関係式を算出するために用いられる装置の構成について説明する。
【0094】
図14に示すように、軸力測定方法では、距離センサ20とパーソナルコンピュータ30とロードセル40とを用いて軸力と頭部11の変位量との関係式を算出する。
距離センサ20およびパーソナルコンピュータ30は、軸力を測定するときに用いられる距離センサ20およびパーソナルコンピュータ30である。パーソナルコンピュータ30は、軸力と頭部11の変位量との関係式を算出する演算処理を実行するためのプログラム等を、記憶装置に記憶している。
【0095】
ロードセル40は、ボルト10と被締結物Wとの間に介在し、軸力を測定する。ロードセル40は、パーソナルコンピュータ30と電気的に接続され、軸力の測定結果をパーソナルコンピュータ30に入力する(
図14のロードセル40に示す矢印参照)。
【0096】
次に、軸力と頭部11の変位量との関係式を算出する手順について説明する。
【0097】
軸力測定方法では、軸力の測定対象となるボルトの頭部の変位量と軸力との関係式が変動する可能性があるタイミング、例えば、ボルトの材料および種類が変わったとき等に、軸力と頭部の変位量との関係式を算出する。
【0098】
図14および
図15に示すように、軸力測定方法では、パーソナルコンピュータ30によって締結前の頭部11の窪み量を算出する(ステップS210)。
【0099】
このとき、軸力測定方法では、ロードセル40の測定結果が0kNの状態で、すなわち、軸力が発生していない状態で、軸力を測定するときに行ったステップS10〜S110を行う。
これにより、軸力測定方法では、締結前のボルト10の最小点および最大点を算出する。そして、軸力測定方法では、最小点の算出結果と最大点の算出結果との差を算出することで、締結前の頭部11の窪み量として算出する。
軸力測定方法では、締結前の頭部11の窪み量の算出結果をパーソナルコンピュータ30の記憶装置に記憶させる。
【0100】
このようなステップS210で算出される締結前の頭部11の窪み量は、実際に頭部11の変位量を算出するとき(ステップS130)の締結前の頭部11の窪み量として用いられる。
【0101】
これによれば、軸力測定方法は、正確に、かつ、安定して締結前の頭部11の変位量を算出できる。
【0102】
軸力測定方法では、軸力の測定対象となるボルト10の締結前の頭部11の窪み量が変動する可能性があるタイミング、例えば、ボルト10のロットが変わったとき等に、適宜ステップS210を行って、締結前の頭部11の窪み量を取得する。
【0103】
締結前の頭部11の窪み量を算出した後で、軸力測定方法では、パーソナルコンピュータ30によって頭部11の変位量を算出する(ステップS220)。
【0104】
このとき、軸力測定方法では、ボルト10を被締結物Wに締結して軸力を発生させた状態で、軸力を測定するときに行ったステップS10〜S120を行う。
これにより、軸力測定方法では、頭部11の変位量を算出する。
【0105】
軸力測定方法では、ロードセル40の測定結果と頭部11の変位量の算出結果とを、互いに関連付けてパーソナルコンピュータ30の記憶装置に記憶させる。
【0106】
軸力測定方法では、このような頭部11の変位量の算出を、軸力を変更しながら複数回繰り返し行う。
【0107】
これによれば、軸力測定方法は、正確に、かつ、安定して軸力と頭部11の変位量との関係を取得できる。
【0108】
締結時の頭部11の変位量を算出した後で、軸力測定方法では、パーソナルコンピュータ30によって軸力と頭部11の変位量との関係式を算出する(ステップS230)。
【0109】
このとき、軸力測定方法では、頭部11の変位量を横軸とし、軸力を縦軸としたグラフに、ステップS220で取得した軸力(すなわち、ロードセル40の測定結果)と頭部11の変位量との関係を配置する(
図13に黒塗りの丸参照)。
そして、軸力測定方法では、軸力と頭部11の変位量との測定結果を単項式で近似して、軸力と頭部11の変位量との関係式を取得する。
【0110】
これによれば、軸力測定方法は、正確に、かつ、安定して軸力と頭部11の変位量との関係式を算出できる。
従って、軸力測定方法は、正確に軸力を測定できるとともに、安定して軸力を測定できる。
【0111】
次に、第二実施形態の軸力測定方法について説明する。
【0112】
第二実施形態の軸力測定方法は、最大点の算出に際して行うマスク処理の内容および最大点の算出内容が、第一実施形態の軸力測定方法と異なっている。
このため、以下では、マスク処理を施すステップおよび最大点を算出するステップ(第一実施形態のステップS100・S110に相当するステップ)について詳細に説明し、他の部分の説明については省略する。
【0113】
図16に示すように、第二実施形態の軸力測定方法では、ボルト10の頭部11の重心位置Cを中心として第一実施形態の第一の円K21と同一の第一の円K31と、ボルト10の頭部11の重心位置Cを中心として第一実施形態の第二の円K22よりも小さい第二の円K32とが描かれた基準画像K3を作成する。基準画像K3は、第一の円K31の内側が黒く塗りつぶされているとともに、第二の円K32の外側が黒く塗りつぶされている。
つまり、基準画像K3は、第一実施形態の軸力測定方法よりも広い範囲を隠すための画像である(
図11参照)。
【0114】
第二の円K32は、第一の円K31よりも大きく、かつ、ステップS60で抽出した頭部11よりも小さい円である。
このような第二の円K32の大きさは、頭部11の内接円となる程度であることが好ましい。
【0115】
なお、
図16に示す基準画像K3において、重心位置Cを示す白塗りの丸は、重心位置Cを示すために便宜上記載したものである。つまり、実際の基準画像は、
図16に示す基準画像K3から、重心位置Cを示す白塗りの丸を除いたものとなる。
【0116】
軸力測定方法では、平滑化処理を行った距離画像21に基準画像K3を重ねて、平滑化処理を行った距離画像21の中で、各円K31・K32の間に位置する画素のみが表示されるマスク画像135を作成する。
つまり、第二実施形態の軸力測定方法では、第一実施形態よりも狭い範囲が表示されるマスク画像135を作成する。
【0117】
第一の円K31は、頭部11よりも小さい円である。第二の円K32は、頭部11の内接円となる程度に小さい円である。
つまり、第二実施形態の軸力測定方法では、頂部11bの外縁部近傍の画素だけを抽出する。
【0118】
第二実施形態の軸力測定方法では、このようにマスク処理を距離画像21に対して施して、第一の円K31の外側に位置するとともに、第二の円K32の内側に位置する画素を、高さが高い画素として抽出する。
【0119】
マスク処理を施した後で、軸力測定方法では、パーソナルコンピュータ30によって、マスク処理を施して抽出した、すなわち、マスク画像135に引き続き表示されている距離画像21の各画素の高さの単純平均を最大点として算出する。
【0120】
つまり、第二実施形態の軸力測定方法では、頂部11bの外縁部近傍の画素の全体の高さの平均値を、最大点の高さとするのである。
【0121】
これによれば、軸力測定方法は、頭部11の位相および頂部11bに形成される小さな凹凸の有無に関わらず、最大点のばらつきを低減できる。
つまり、軸力測定方法は、正確に最大点の高さを測定できるとともに、安定して最大点の高さを測定できる。
従って、軸力測定方法は、正確に軸力を測定できるとともに、安定して軸力を測定できる。
【0122】
また、軸力測定方法は、重心位置
Cから外側に向かう仮想直線を用いることなく最大点を取得できるため、軸力を測定するための処理を簡素化できる。
【0123】
なお、第二実施形態の軸力測定方法では、第二実施形態の軸力測定方法を用いて締結前の頭部11の窪み量を予め取得している。
また、第二実施形態の軸力測定方法では、第二実施形態の軸力測定方法を用いて軸力と頭部11の変位量との関係式を予め取得している。
【0124】
これによれば、軸力測定方法は、正確に、かつ、安定して算出された締結前の頭部11の変位量および軸力と頭部11の変位量との関係式を用いて軸力を測定できる。従って、軸力測定方法は、正確に軸力を測定できるとともに、安定して軸力を測定できる。