【実施例1】
【0044】
以降、本発明の実施例を説明する。実施例におけるX線は、本発明の放射線に相当する。またFPDは、フラットパネル・ディテクタの略である。
【0045】
実施例1に係る画像処理装置1は、
図1に示すように、X線で被検体を透視撮影することによって取得された画像(元画像P0と呼ぶ)を入力すると、この元画像P0の全体に写り込んでいる統計ノイズに由来する粒状の偽像が除去された処理画像P4が出力される構成となっている。統計ノイズとは、透視撮影をする際にX線を検出するFPDが有する検出画素がX線を検出するときの強度のバラツキに由来するノイズで、検出素子の検出特性が関係している。従って、統計ノイズ由来の粒状の偽像は、たとえFPDに均一にX線を照射したとしても消えることがないものである。
【0046】
<画像処理装置の全体構成>
実施例1に係る画像処理装置1は、(A)元画像P0から各帯域の周波数成分が抽出された帯域画像α,β,γ……を生成する帯域画像生成部12と、(B)帯域画像α,β,γ……の各々について勾配m(α,β,γ……)を算出する勾配算出部13と、(C)帯域画像α,β,γ……の各々について等方向ボカシ画像P1(α,β,γ……)を生成する等方向ボカシ部14と、(D)勾配m(α,β,γ……)を参照して帯域画像α,β,γ……の各々について異方性ボカシ画像P2(α,β,γ……)を生成する異方性ボカシ部15と、(E)勾配m(α,β,γ……)を基にエッジ信頼度Eを取得するエッジ信頼度取得部16と、(F)エッジ信頼度Eに基づいて帯域画像α,β,γ……、等方向ボカシ画像P1(α,β,γ……),および異方性ボカシ画像P2(α,β,γ……)を重ね合わせてノイズ帯域画像P3(α,β,γ……)を生成するノイズ帯域画像生成部17とを備えている。勾配算出部13は、本発明の勾配算出手段に相当する。
【0047】
帯域画像生成部12は、本発明の帯域画像生成手段に相当し、勾配算出部13は、本発明の勾配算出手段に相当する。また、等方向ボカシ部14は、本発明の等方向ボカシ手段に相当し、異方性ボカシ部15は、本発明の異方性ボカシ手段に相当する。また、エッジ信頼度取得部16は、本発明のエッジ信頼度取得手段に相当し、ノイズ帯域画像生成部17および処理画像生成部22は、本発明の処理画像生成手段に相当する。
【0048】
また、画像処理装置1は、ノイズ帯域画像P3(α,β,γ……)を重ね合わせてノイズ画像Nを生成する帯域合成部19と、元画像P0を参照してノイズ画像Nの画素値を調整する画素値調整部21と、画素値調整後のノイズ画像Nを元画像P0に重ね合わせて処理画像P4を生成する処理画像生成部22とを備えている。
【0049】
帯域画像生成部12が生成する帯域画像α,β,γ……について説明する。
図2は、元画像P0を周波数解析した結果である。元画像P0は、高周波から低周波まで幅広い周波数成分を有している。説明の便宜上、各周波数のレスポンスは全て1であるとする。
図3は、帯域画像αを周波数解析した結果である。
図3に示すように、帯域画像αは、元画像P0の最も高周波側の周波数領域に存する周波数成分を抽出したものとなっている。
図4は、帯域画像βを周波数解析した結果である。
図4に示すように、帯域画像βは、元画像P0の2番目に高周波側の周波数領域に存する周波数成分を抽出したものとなっている。
図5は、帯域画像γを周波数解析した結果である。
図5に示すように、帯域画像γは、元画像P0の3番目に高周波側の周波数領域に存する周波数成分を抽出したものとなっている。このように、帯域画像α,β,γはこの順に高周波の元画像P0由来の周波数成分を有している。本実施例の説明においては、説明の簡単のため、元画像P0は、3つの帯域画像α,β,γに分離されるものとする。しかしながら、実際は元画像P0から3以上の帯域画像が生成されることになる。
【0050】
勾配mは、帯域画像上の画素値の変化を表すもので、帯域画像の各画素に対応した特徴値となっているデータが2次元的に配列されたデータセットとなっている。この勾配mを構成するデータは、ベクトル形式となっており、その長さは、帯域画像上における画素の画素値がその周辺の画素の画素値と比べてどれだけ異なっているかを表す値である。そして、このベクトルの方向は、帯域画像上におけるある画素を中心に周辺の画素を比較したとき、周辺の画素のうち、その中心の画素にとって最も異なった画素値を有しているものが、その中心の画素からどの方向に存しているかを示している。例えば、全て同じ画素値で埋め尽くされた帯域画像に対する勾配mは、隣同士の画素の画素値が全て同じなので、0を表すデータで埋め尽くされていることになる。このデータの各々には方向も長さもない。
【0051】
一方、
図6の上段に示すように画素値が異なるような部分を中心に有する帯域画像に対応する勾配mは
図6の下段に表されている。すなわち、勾配mは
図6の下段を参照すれば分かるように、
図6の上段における帯域画像にリング状に現れている画素値の変わり目の部分でデータのベクトルの長さが長くなっている。この長さは、帯域画像上の画素と隣の画素との間で異なる画素値差のうち最大のものを意味している。そして、ベクトルの方向は、その場所に対応する帯域画像上の画素についての特徴を表しており、具体的には、画素から隣の画素に移るときに画素値が最も急峻に変わる方向を意味している。このように、勾配mには、帯域画像において被検体の像の輪郭に沿ってベクトルが現れることになる。このベクトルの伸びる方向と被検体像の輪郭の伸びる方向とは直交している。
【0052】
勾配mに現れたベクトルの全てが被検体の像の輪郭を表すかというとそうではない。
図7の上段に示す帯域画像は、粒状の偽像が写り込んでいる。この偽像は統計ノイズに由来している。この帯域画像に対応する勾配mには、
図7の下段に示すように、粒状の偽像に由来する短いベクトルが配列される。これらのベクトルは被検体の像の輪郭を表すものではない。
【0053】
このように、実際の勾配mは、被検体の像の輪郭を表すベクトルと粒状の偽像を表すベクトルとが混合した状態となっている。
【0054】
エッジ信頼度取得部16が取得するエッジ信頼度Eについて説明する。エッジ信頼度Eとは、勾配mにおける各ベクトルが被検体の像の輪郭を表すものなのか、それとも粒状の偽像を表すものなのかを判定する値となっている。従ってエッジ信頼度は、勾配mのベクトルの各々について存在し、帯域画像の各画素に対応した特徴値である。このエッジ信頼度Eが高いほどベクトルが被検体の像の輪郭を表すものである可能性が高いことになる。
【0055】
画像処理装置1は、ハードウェア資源としてCPUを備え、このCPUが各種プログラムを実行することにより各部11,12,13,14,15,16,17,18,19,21,22を実現している。また、上述の各部は、それらを担当する演算装置に分割されて実行されてもよい。記憶部28は、画像処理に用いる各種パラメータ、テーブル、数式を記憶するものである。ユーザの画像処理の指定も予め記憶させることもできる。
【0056】
<画像処理装置の動作>
次に、画像処理装置1の動作について説明する。実施例1に係る画像処理装置1を用いて処理画像P4を生成するには、
図8に示す様に、まず帯域画像が生成され(帯域画像生成ステップS1),帯域画像の各々について勾配mが算出される(勾配算出ステップS2)。次に、帯域画像の各々が等方向にボカされて等方向ボカシ画像P1が生成される(等方向ボカシステップS3),勾配mを基に帯域画像の各々が異方性を有するフィルタによりにボカされて異方性ボカシ画像P2が生成される(異方性ボカシステップS4)。そして、勾配mを基にエッジ信頼度Eが取得され(エッジ信頼度取得ステップS5),帯域画像、等方向ボカシ画像P1,異方性ボカシ画像P2,エッジ信頼度Eに基づいてノイズ帯域画像P3が生成される(ノイズ帯域画像生成ステップS6)。そして、ノイズ帯域画像P3が合成されてノイズ画像Nが生成され(ノイズ画像生成ステップS7),元画像P0が参照されてノイズ画像Nに画素値調整が施された後(画素値調整ステップS8),ノイズ画像Nが元画像P0に重ねられて処理画像P4が生成される(処理画像生成ステップS9)。以降、これら各ステップについて順を追って説明する。
【0057】
<帯域画像生成ステップS1>
帯域画像生成部12の動作について説明する。帯域画像生成部12は、
図9に示すように帯域画像α,帯域画像β,帯域画像γをこの順に取得する。これら各動作について順を追って説明する。下記の帯域画像α,β,γの生成方法は、従来のラプラシアンピラミッド分解を改良したものとなっている。
【0058】
まず、帯域画像αの取得について説明する。元画像P0は、帯域画像生成部12に送出される。帯域画像生成部12は、元画像P0を構成する画素の各々に対して、ハイパスフィルタとして機能する行列を作用させる。
図10は、元画像P0を構成する画素sについて、ハイパスフィルタ処理が行われている時の様子を示している。帯域画像生成部12は、例えば、5×5のハイパスフィルタ用の行列を記憶部28より読み出して、画素sに対してこの行列を作用させる。すると、行列は、
図10に示すように、画素sを中心とした5行5列の大きさの画素領域Rに作用することになる。そして、帯域画像生成部12は、行列を作用させて得られた画素データを帯域画像αにおける画素sに相当する位置(画素sと同一の位置)に配置する。帯域画像生成部12は、同様の動作を元画像P0を構成する画素s以外の画素の全てについて行い、その度に、取得された画素データを元画像P0に対応させて帯域画像αにマッピングする。ハイパスフィルタは、画素領域Rに含まれる高周波成分のみを通過させるので、帯域画像αは、画素データが細かく変化するザラついた画像となる。このハイパスフィルタ処理は、
図9においては、記号HPFで表されている。
【0059】
次に、帯域画像βの取得について説明する。帯域画像生成部12は、まず
図9に示すように元画像P0を例えば縦、横ともに1/2に縮小された縮小画像p1を生成する。
図9においては、この画像縮小処理がMag(−)で表されている。
【0060】
そして、帯域画像生成部12は、縮小画像p1に対してローパスフィルタを施す。すなわち、帯域画像生成部12は、ハイパスフィルタ用の行列と同じサイズである5×5のローパスフィルタ用の行列を記憶部28より読み出して、縮小画像p1を構成する画素の各々に対してこの行列を作用させる。行列の作用によって得られた画素データは、縮小画像p1に対応させてローパス画像L1にマッピングされる。この様子は、
図10を用いた説明と同様である。異なる点は、用いる行列が違うことと、画像のサイズが小さくなっていることである。このように、いったん元画像P0を縮小してローパスフィルタをかけるようにすれば、ローパスフィルタを規定する行列を大きくしなくても、周波数成分を抽出できるので、計算コストを大幅に抑制することができる。このローパスフィルタ処理は、
図9においては、記号LPFで表されている。
【0061】
帯域画像生成部12は、
図9に示すようにローパス画像L1を例えば縦、横ともに2倍に拡大された拡大ローパス画像M1を生成する。
図9においては、この画像縮小処理がMag(+)で表されている。つまり、拡大ローパス画像M1と元画像P0の画像の大きさは、同じである。帯域画像生成部12は、元画像P0から帯域画像αおよび拡大ローパス画像M1を減算して、帯域画像βを生成する。
【0062】
この帯域画像βについて説明する。
図11は、各画像に含まれる周波数成分の範囲を模式的に表したものである。元画像P0は、
図11に示すように全てに周波数成分を有している。そして、帯域画像αは、最も高周波側の成分のみから構成され、拡大ローパス画像M1は、縮小画像p1の低周波成分のみから構成される。元画像P0から帯域画像αおよび拡大ローパス画像M1が減算された帯域画像βは、
図11に示すように、元画像P0の全周波数成分のうち、帯域画像αが有する最低の周波数から拡大ローパス画像M1が有する最高の周波数までに挟まれた区間内の周波数成分を有していることになる。
【0063】
次に、帯域画像γの取得について説明する。帯域画像生成部12は、ハイパスフィルタ用の行列の約2倍の大きさである9×9のバンドパスフィルタ用の行列を記憶部28より読み出して、縮小画像p1を構成する画素の各々に対してこの行列を作用させる。行列の作用によって得られた画素データは、縮小画像p1に対応させて帯域画像γにマッピングされる。この様子は、
図10を用いた説明と同様である。異なる点は、用いる行列の種類が違うこと、行列の大きさが縦横ともに2倍となっていること、処理対象の縮小画像p1の面積が元画像P0の1/4となっていることである。このバンドパスフィルタ処理は、
図9においては、記号BPFで表されている。こうして生成された帯域画像γは、帯域画像βよりも更に低周波側の帯域について元画像P0の周波数成分を抽出したものとなっている。
【0064】
帯域画像生成部12は、縮小画像p1以外に、縮小画像p1を縦横1/2ずつ縮小した縮小画像p2も生成している。この縮小画像p2もバンドパスフィルタが施され、帯域画像δが生成される。こうして生成された帯域画像δは、帯域画像γよりも更に低周波側の帯域について元画像P0の周波数成分を抽出したものとなっている。このように、帯域画像生成部12は、帯域画像γよりも、低周波側の帯域画像を生成するようにしてもよい。これらの帯域画像も後段の画像処理に用いてもよい。しかし、実施例1の説明においては、簡単な説明の目的で、帯域画像α,β,γのみで画像処理を行うものとする。
【0065】
<勾配算出ステップS2>
帯域画像α,β,γは、勾配算出部13に送出される。勾配算出部13では、帯域画像α,β,γの各々に所定の操作をすることで、勾配m(α,β,γ)を作成する。
図12,
図13は、この勾配算出部13が帯域画像αを基に勾配mαを作成する様子を表している。勾配算出部13は、帯域画像αを構成する対象画素aの画素値(対象画素値)を読み出す。この画素値は
図12においては、115となっている。次に、対象画素aを囲む8つの周囲画素bの画素値(周囲画素値)を読み出す。この画素値は
図12に示す様に様々な値をとっている。勾配算出部13は、8つの周囲画素値とを比較し、8つの周囲画素値の中で対象画素値と周囲画素値との差(画素値差)が最も大きい周囲画素bを選択する。選択された周囲画素b(選択画素)は、
図12においては破線で囲んで表されている。
【0066】
そして、勾配算出部13は、勾配mα上の対象画素aに対応する位置(対象画素aと同一の位置)にあるベクトルを配置する。このベクトルの長さは、選択画素についての画素値差を表しており、ベクトルの方向は、対象画素aから見たときの選択画素が存する方向を表している。勾配算出部13は、対象画素aを変更しながら帯域画像αの全域について勾配mαを算出する。他の帯域画像についての勾配算出部13の動作は、この動作と同様である。このように、勾配算出部13は、帯域画像α,β,γの画素各々について画素値の勾配の大きさと方向を算出する。
【0067】
<等方向ボカシステップS3>
帯域画像α,β,γは、等方向ボカシ部14にも送出されている。等方向ボカシ部14は、帯域画像α,β,γの各々にガウシアンフィルタを施し、等方向ボカシ画像P1(α,β,γ)を生成する。等方向ボカシ部14は、ガウシアンフィルタを規定する行列を作用対象の画素を変更しながら作用させ、このとき得られた値の各々を2次元的に配列することにより画像を生成する。等方向ボカシ部14により、被検体の構造体および統計ノイズに由来する粒状の偽像は、ともにぼかされることになる。他の帯域画像についての等方向ボカシ部14の動作は、この動作と同様である。
【0068】
なお、ガウシアンフィルタの形状や大きさは撮影時の露光量を示す情報を基に変更してもよい。すなわち、照射線量が大きいほど、ガウシアンフィルタの形状や大きさをあらかじめ小さくすることで、照射線量が大きいほどノイズが少ない性質を反映し、ボケの少ない等方向ボカシ画像P1(α,β,γ)が取得されることになる。
【0069】
<異方性ボカシステップS4>
勾配m(α,β,γ)は、異方性ボカシ部15に送出される。異方性ボカシ部15は、帯域画像α,β,γに
図14のような異方性ボカシフィルタを施し、異方性ボカシ画像P2(α,β,γ)を生成する。この異方性ボカシフィルタを画像の画素の1つにかけると、その画素がある方向の両側に広がるようにぼかしの効果がかかる。異方性ボカシ部15がこのボカシ動作を帯域画像αに施すと異方性ボカシ画像P2αが生成される。
【0070】
異方性ボカシフィルタについて説明する。
図15のように中心に像が写り込んだ画像に対して異方性ボカシフィルタを縦方向にかけると、
図16の左側が示すように、円形だった像は縦方向にボカされて引き延ばされる。ちなみに、
図16の右側は、
図15の画像に等方向フィルタをかけた場合を示している。画像に等方向フィルタがかけられると、画像に写り込む像がそのまま広がるようにぼかされる。
【0071】
異方性ボカシ部15が異方性ボカシ画像P2αを生成する際には、画素の各々に異方性ボカシフィルタをかけることになる。この異方性ボカシフィルタのかける方向は画素の各々で異なっている。すなわち、異方性ボカシ部15は、異方性ボカシフィルタを勾配mαの各データが示す方向を参照して決定する。異方性ボカシ部15が帯域画像αのある画素について異方性ボカシフィルタをかけるとすると、異方性ボカシフィルタはその画素に対応する勾配mα上のベクトルデータの方向と直交する方向にかけられる。他の帯域画像についての異方性ボカシ部15の動作は、この動作と同様である。
【0072】
勾配mα上のベクトルの方向は、
図7で説明したように、帯域画像αにおける被検体の像の輪郭と直交する方向となっているのであるから、異方性ボカシフィルタは、
図17の左側における実線の矢印が示すように、帯域画像αにおける被検体の像の輪郭に沿う方向にかけられることになる。すると、異方性ボカシフィルタを施しても被検体の像がボケることがない。一方で、被検体の像の輪郭に重畳していた粒状の偽像はボカされ視認することができなくなっている。
【0073】
なお、異方性ボカシフィルタの形状や大きさは撮影時の露光量を示す情報を基に変更してもよい。すなわち、照射線量が大きいほど、異方性ボカシフィルタの形状や大きさをあらかじめ小さくすることで、照射線量が大きいほどノイズが少ない性質を反映し、ボケの少ない異方性ボカシ画像P2(α,β,γ)が取得されることになる。
【0074】
上述の説明からすると、異方性ボカシ画像P2αは、視認性が向上したように思われる。しかし、
図17の左側における破線の矢印が示すように、異方性ボカシフィルタは、被検体の像の輪郭でない部分にも作用してしまう。従って、この部分では帯域画像αが有する画素値の僅かな方向性が強調されるので
図17の右側が示すように画像が毛羽立ったようになってしまう。
【0075】
<エッジ信頼度取得ステップS5>
勾配m(α,β,γ)はエッジ信頼度取得部16にも送出される。エッジ信頼度取得部16では、勾配m(α,β,γ)上のあるデータとこれに隣接する帯域画像のデータとから、そのデータの示す画素値の差がノイズに由来するものであるかどうか示す指標であるエッジ信頼度Eをデータの各々について取得する。すなわち、エッジ信頼度取得部16は、勾配mを構成する対象データのベクトルの長さ(対象ベクトル長Vt)を読み出す。次に、帯域画像の対象データを囲む8つの周囲データにおける画素値を読み出し、対象データの画素値と差分を取り、8つの周囲データにおけるベクトルの長さ(周囲ベクトル長Vn)を読み出す。エッジ信頼度取得部16は、それぞれの値からエッジ信頼度Eを次の式に基づいて取得する。エッジ信頼度Eは本発明の指標に相当する。
E=Vt/Vnの平均
【0076】
すなわちエッジ信頼度Eは、対象ベクトルがその周囲のベクトルに対しどの程度長いかを示す指標となっている。仮に、対象ベクトルに対応する帯域画像の一部分が方向性のない粒状の偽像が写り込んでいるだけであるとすると、対象ベクトルが長くても、周囲ベクトルも長いので、低いエッジ信頼度Eしか得られない。
【0077】
逆に、対象ベクトルに対応する帯域画像の一部分に被検体の輪郭が写り込んでいるとすると、この一部分には方向性を有することになる。すなわち、被検体の輪郭に位置する対象ベクトルは、周囲ベクトルに比べて顕著に長くなる。従って、この様な対象ベクトルについては、高いエッジ信頼度Eが取得されることになる。
【0078】
また、帯域画像において被検体の輪郭同士が交叉する交点は、対象ベクトルの方向が濃い線状の像に直交する方向に定められ、ベクトルの長さも抑制される。従って、この交点におけるエッジ信頼度Eは、中間的な値となる。異方性ボカシ画像P2(α,β,γ)におけるこの部分は、濃い線状の像の方が極端に強調されているので視認性が悪い。
【0079】
一方、帯域画像において被検体の点状の構造物が存在する場所は、対象ベクトルの方向が特定の方向に定められ、周囲ベクトル長の平均は大きくなる。従って、この点状の構造物におけるエッジ信頼度Eは、中間的な値となる。異方性ボカシ画像P2(α,β,γ)におけるこの部分は、点状の像が特定の方向に引き延ばされているので視認性が悪い。
【0080】
エッジ信頼度取得部16は、勾配m(α,β,γ)に対してエッジ信頼度Eを別個に算出する。勾配mαが1,000×1,000の縦横に配列された画素を有しているとすると、エッジ信頼度Eは、3つの勾配m(α,β,γ)について2,250,000回求められることになる。
【0081】
<ノイズ帯域画像生成ステップS6>
エッジ信頼度Eは、ノイズ帯域画像生成部17に送出される。ノイズ帯域画像生成部17では、このエッジ信頼度Eに基づいて帯域画像α,β,γ,等方向ボカシ画像P1(α,β,γ),および異方性ボカシ画像P2(α,β,γ)を画素の各々で重み付けを変更しながら重ね合わせて、帯域画像α,β,γからノイズ成分のみが抽出されたノイズ帯域画像P3(α,β,γ)を生成する。
【0082】
このノイズ帯域画像生成部17は、帯域画像α,β,γからノイズ成分でない成分を減算することで、帯域画像α,β,γからノイズ成分を抽出する。そのとき、ノイズ帯域画像生成部17は、帯域画像α,β,γ,等方向ボカシ画像P1(α,β,γ),および異方性ボカシ画像P2(α,β,γ)上におけるそれぞれ同じ位置に存する3つの画素の画素値を重み付けしながら重ね合わせて新たな画素値を取得する。つまり、ノイズ帯域画像生成部17は、この画素値の取得を帯域画像α,β,γ上における画素の位置を変えながら行うことになる。取得された画素値は帯域画像α,β,γに倣って2次元上に配列されて、ノイズ帯域画像P3(α,β,γ)が生成される。すなわち、帯域画像α,β,γ,等方向ボカシ画像P1(α,β,γ),および異方性ボカシ画像P2(α,β,γ)が1つの画像に合成されるのである。このとき生成されるノイズ帯域画像P3(α,β,γ)は、ちょうど帯域画像α,β,γからノイズのみが抽出されたものとなっている。以降、帯域画像αについてのノイズ帯域画像P3αの生成方法について説明する。その他の帯域画像β,γについても同様の動作により各ノイズ帯域画像P3(β,γ)が生成される。
【0083】
ノイズ帯域画像生成部17が処理対象の画素(対象画素)について画像処理を行うときの具体的な構成について説明する。ノイズ帯域画像生成部17が同一位置であって、互いに別種類の3つの画像(帯域画像、等方向ボカシ画像、異方性ボカシ画像)の各々に存する3つの対象画素の画素値から新たな画素値を取得するときの動作は、その画素に対応するエッジ信頼度Eの値によって変化する。すなわち、対象画素に対応するエッジ信頼度Eが高く、この画素が帯域画像αに写り込む線状の像に位置することを示すときは、ノイズ帯域画像生成部17は、等方向ボカシ画像P1αよりも異方性ボカシ画像P2αを帯域画像αから大きく減算する。この部分は、被検体の輪郭が写り込んでいる部分であるから、異方性ボカシ画像P2αにはノイズが除去された被検体の輪郭がはっきりと写り込んでいる。従って、ノイズ帯域画像生成部17が異方性ボカシ画像P2αを優先して帯域画像αから減算するようにすれば、帯域画像αの被検体の成分が除去され、ノイズ成分が残ることになる。
【0084】
また、対象画素に対応するエッジ信頼度Eが中間的で、この画素が帯域画像αに写り込む2つの線状の像(被検体の輪郭)における交点に位置することを示すときは、ノイズ帯域画像生成部17は、異方性ボカシ画像P2αよりも等方向ボカシ画像P1αが帯域画像αから大きく減算されるように画像処理を行う。この部分は、被検体の点状の構造物や輪郭の交点が写り込んでいる部分であるから、異方性ボカシ画像P2αは視認性に適していない。その一方で、等方向ボカシ画像P1αには帯域画像αに存していたノイズ成分がボカされ、ノイズ成分が低減されている。従って、ノイズ帯域画像生成部17が等方向ボカシ画像P1αを優先して帯域画像αから減算するようにすれば、帯域画像αの被検体の成分が除去され、ノイズ成分が残ることになる。
【0085】
また、対象画素に対応するエッジ信頼度Eが低く、この画素が前記帯域画像に写り込む線状の像に位置しないことを示すときは、ノイズ帯域画像生成部17は、エッジ信頼度Eが高い場合と比較して、等方向ボカシ画像P1αおよび異方性ボカシ画像P2αが帯域画像αからより減算されないように
画像処理を行う。この部分は、被検体の像が写り込んでいない部分であり、帯域画像αにはノイズ成分が多く含まれている。したがって、この部分においては帯域画像αからさほど減算処理をしなくても、ノイズ成分が取り出せることになる。
【0086】
この様にしてノイズ帯域画像生成部17が生成したノイズ帯域画像P3(α,β,γ)は、帯域画像α,β,γの各々からノイズ成分のみを抽出したものとなっている。
【0087】
エッジ信頼度Eの判定方法について説明する。エッジ信頼度Eが高いかどうかの判定は、ノイズ帯域画像生成部17が記憶部28に記憶されているテーブルまたは数式に基づいて行われる。テーブルは、エッジ信頼度E,等方向ボカシ画像P1αをどの程度減算するかを表す係数、および異方性ボカシ画像P2αをどの程度減算するかを表す係数とが関連したデータセットとなっている。ノイズ帯域画像生成部17は、対象画素に対する処理をするときに、これに対応するエッジ信頼度Eを読み出して、テーブルよりこれに対応する係数を取得する。そして、ノイズ帯域画像生成部17は、取得された係数に基づいて帯域画像αに対する等方向ボカシ画像P1αおよび異方性ボカシ画像P2αの減算処理を行うのである。
【0088】
このテーブルは帯域画像α,β,γの帯域によって変更してもよいし、元画像P0の撮影時の露光量を示す情報を基に重み付けの様式を変更するようにしてもよい。ノイズ帯域画像生成部17が数式を使用する場合の数式は、エッジ信頼度Eを代入すると上述の各係数が導出できるものとなっている。
【0089】
すなわち、帯域画像が低周波であるほどテーブルの値が大きくなるように変更する。また、あらかじめ元画像P0の画素値と入射線量の関係を測定しておき、元画像P0の画素値が大きいほどテーブルの値が大きくなるように変更する。これらにより、低周波で露光量が大きいほどノイズが少ない性質を反映し、ノイズの少ないノイズ帯域画像P3(α,β,γ)が取得されることになる。元画像P0の画素値の代わりに、ノイズの少ない拡大ローパス画像M1の画素値を露光量の指標に使ってもよい。
【0090】
<ノイズ画像生成ステップS7>
ノイズ帯域画像P3(α,β,γ)は、帯域合成部19に送出される。そして、帯域合成部19はノイズ帯域画像P3(α,β,γ)を互いに重み付けを加えながら重ね合わせてノイズ画像Nを生成する。このノイズ画像Nは、元画像P0の全周波数についてのノイズが表されている。帯域合成部19がノイズ帯域画像P3(α,β,γ)を重ね合わせるときの重み付けは、検査目的に応じて変更可能となっている。
【0091】
<画素値調整ステップS8>
ノイズ画像Nは画素値調整部21に送出される。画素値調整部21では、ノイズ画像Nを構成する画素の各々について元画像P0を参照しながら画素値の調整を行う。すなわち、画素値調整部21は、ノイズ画像N上の処理対象の画素(対象画素)に対応する元画像P0の画素の画素値を参照して、この画素値に応じて対象画素の画素値を調整する。この処理を加えることで、最終的に得られる画像の視認性が向上する。画素値調整部21が行う画素値を調整の様式は、検査目的に応じて変更可能となっている。
【0092】
<処理画像生成ステップS9>
画素値調整が施されたノイズ画像Nは、処理画像生成部22に送出される。処理画像生成部22は、元画像P0からノイズ画像Nに重みをかけて減算する。ノイズ画像Nは、元画像P0からノイズ成分を抽出したものとなっていることからすれば、元画像P0上のノイズ成分はノイズ画像Nの減算処理により消去される。こうして生成された処理画像P4には、ノイズ成分が抑制されている。しかも、元画像P0(正確には帯域画像α,β,γ)におけるエッジ信頼度Eが中間的な値の部分では、異方性ボカシ画像P2αの影響が抑制されて処理画像P4が生成されているので、処理画像P4における点状の構造物や被検体の輪郭が重なった交点の部分において、画像が乱れることがない。また、ノイズ画像Nの重みを調整することで、処理の強さを簡便に調整することができる。処理画像生成部22におけるノイズ画像Nの重みは、検査目的に応じて変更可能となっている。
【0093】
以上のように、実施例1の構成によれば、統計ノイズに係る偽像を取り除く際に点状の構造物や2つの筋の重なり部分における視認性が悪化しない高速な画像処理装置1が提供できる。すなわち、実施例1の構成に係る画像処理装置1は元画像P0(正確には帯域画像α,β,γ)より等方向ボカシ画像P1と異方性ボカシ画像P2を生成する。等方向ボカシ画像P1は、元画像P0において被検体の写り込んでいない部分について適切な偽像除去がされた画像であり、異方性ボカシ画像P2は、逆に被検体の写り込んでいる部分について適切な偽像除去がされた画像である。そこで、ノイズ帯域画像生成部17は、この2つの画像を画素毎に重み付けしながら帯域画像α,β,γに重ね合わせて、帯域画像α,β,γから偽像成分が抽出されたノイズ帯域画像P3を生成し、このノイズ帯域画像P3が元画像P0に写り込んだ偽像の除去に用いられる。
【0094】
実施例1の構成の最も特徴的なのは、ノイズ帯域画像生成部17が処理対象の画素に対応するエッジ信頼度Eが中間的な場合、異方性ボカシ画像P2よりも等方向ボカシ画像P1が帯域画像α,β,γから大きく減算されるように画像処理を行うことである。エッジ信頼度Eとは、処理対象の画素とその周囲の画素との間に見られる画素値の変異が被検体の像によるものか、偽像によるものかを判断する指標である。このエッジ信頼度Eが中間的な値であると、処理対象の画素は帯域画像α,β,γに写り込む点状の構造物や2つの線状の像における交点に位置している。実施例1の構成によれば、この交点の部分では異方性ボカシ画像P2を使用せずに(使用するとしても等方向ボカシ画像P1に比べて弱い強度で使用することで),ノイズ帯域画像P3を生成する。異方性ボカシ画像P2における交点に相当する部分は、僅かな画素値の偏りが極端に強調されて像が不自然となっている。実施例1の構成によれば、ノイズ帯域画像P3を生成する時にこの様な部分を使用しないのであるから、最終的に取得される処理画像P4における被検体の構造物の輪郭が重なった交点の部分は乱れることなく視認性を保持している。
【0095】
また、実施例1の構成によれば、従来構成のように各方向で複数の異方性フィルタを保持しておく必要がなく、これらを記憶する記憶装置は小規模で済む。さらに、画像の部分に応じて勾配の示す方向のみを条件にどの異方性フィルタを用いるかを判定すればよいので、処理速度が向上された画像処理装置が提供できる。
【0096】
また、エッジ信頼度Eが高い部分において等方向ボカシ画像P1よりも異方性ボカシ画像P2が帯域画像α,β,γから大きく減算されるように画像処理を行えば、帯域画像α,β,γに写り込む線状の像がボケることがなく視認性の高い処理画像P4が出力できるようになる。
【0097】
上述のように、エッジ信頼度Eが低い部分においてボカシ画像の減算処理を抑制するように画像処理を行えば、帯域画像α,β,γにボカシ画像由来の新たな偽像が重ねられることなく視認性の高い処理画像P4が出力できるようになる。
【0098】
また、ノイズ帯域画像生成部17が帯域画像の周波数成分を基に重み付けの様式を変更するようにすれば、周波数成分に応じて適切な偽像除去処理ができるようになる。
【0099】
また、ノイズ帯域画像生成部17が露光量を示す情報を基に重み付けの様式を変更するようにすれば、露光量に応じて適切な偽像除去処理ができるようになる。
【0100】
また、等方向ボカシ部14が撮影時の露光量を示す情報を基にガウシアンフィルタの形状や大きさを変更、または、異方性ボカシ部15が撮影時の露光量を示す情報を基に異方性ボカシフィルタの形状や大きさを変更するようにすれば、露光量に応じて適切な偽像除去処理ができるようになる。
【実施例2】
【0101】
続いて実施例2に係るX線撮影装置20について説明する。実施例2に係るX線撮影装置20は、
図18に示す様に実施例1に係る画像処理装置1(
図18においては画像処理部32として表記)を備えた立位撮影用のX線撮影装置となっている。そこで、実施例2に係るX線撮影装置20において、実施例1に係る画像処理部32の構成および動作説明については省略する。
【0102】
まず、実施例2に係るX線撮影装置20の構成について説明する。X線撮影装置20は、立位の被検体Mの撮影を行うように構成されており、
図18に示すように、床面から鉛直方向vに伸びた支柱2と、X線を照射するX線管3と、支柱2に支持されるFPD4と、鉛直方向vに伸びるとともに天井に支持されている懸垂支持体7を有している。懸垂支持体7は、X線管3を懸垂支持するものである。X線管3は、本発明の放射線源に相当し、FPD4は、本発明の本発明の検出手段に相当する。
【0103】
FPD4は、支柱2に対し鉛直方向vにスライドすることができる。また、懸垂支持体7は、鉛直方向vに伸縮自在となっており、懸垂支持体7の伸縮に伴ってX線管3の鉛直方向vにおける位置が変更される。FPD4の支柱2に対する鉛直方向vの移動は、両者2,4の間に設けられたFPD移動機構35により実行される。これは、FPD移動制御部36により制御される。
【0104】
X線管3の移動について説明する。X線管3は、懸垂支持体7に設けられたX線管移動機構33により行われる。X線管移動制御部34は、X線管移動機構33を制御する目的で設けられている。X線管3は、X線管移動機構33により(1)鉛直方向v,(2)FPD4に対する接近・離反方向、(3)X線管3からFPD4に向かう方向と直交する水平方向S(
図18における紙面貫通方向、被検体Mの体側方向)に移動する。X線管3が鉛直方向vに移動する場合、懸垂支持体7は、伸縮することになる。
【0105】
FPD4は、X線を検出する検出面4a(
図18参照)を有している。検出面4aは、鉛直方向vに起立してX線撮影装置20に配置されている。これにより、起立した被検体Mを効率的に撮影できるようになっている。検出面4aは、X線管3のX線照射口に面するように配置されている。いいかえれば、検出面4aは、水平方向S,鉛直方向vの2方向がなす平面に沿って配置されている。また、検出面4aは、矩形となっており、1辺が水平方向Sに、その1辺と直交する他の1辺が鉛直方向vに一致している。
【0106】
X線管制御部6は、X線管3の管電圧、管電流やX線の照射時間を制御するものである。X線管制御部6は、所定の管電流・管電圧・パルス幅で放射線を出力するようにX線管3を制御する。管電流等のパラメータは、記憶部37に記憶されている。X線管制御部6は、本発明の放射線源制御手段に相当する。
【0107】
画像生成部31は、FPD4から出力された検出データを組み立てて、被検体Mの投影像が写りこんでいる元画像P0を生成する。画像処理部32は元画像P0に写り込んだ統計ノイズ由来の偽像を除去して処理画像P4を生成する。画像生成部31は、本発明の画像生成手段に相当する。
【0108】
操作卓38は、術者の各指示を入力させる目的で設けられており、画像処理部32に対する各種指示もこの操作卓38を通じて行われる。記憶部37は、X線管3の制御情報、X線管3の位置情報、FPD4の鉛直方向vの位置情報などのX線撮影に用いられる各種パラメータの一切を記憶する。なお、X線撮影装置20は、
図18に示すように、各部6,34,36,31,32を統括的に制御する主制御部41を備えている。この主制御部41は、CPUによって構成され、種々のプログラムを実行することにより、各部を実現している。また、上述の各部は、それらを担当する演算装置に分割されて実行されてもよい。表示部39は、撮影された処理画像P4を表示させる目的で設けられている。
【0109】
<X線撮影装置の動作>
次に、X線撮影装置20の動作について説明する。撮影に先立って、被検体MがX線管3とFPD4とに挟まれる位置に起立される。これにより、X線撮影装置20に被検体Mが載置されたことになる。術者が操作卓38を通じてX線管3およびFPD4の位置の調整を行うと、X線管3およびFPD4はそれぞれの移動を制御する制御部34,36の制御に従って、被検体Mの撮影領域まで移動する。
【0110】
術者が操作卓38を通じて撮影開始の指示を与えると、X線管制御部6は、記憶部37に記憶されている照射時間・管電流・管電圧に従い、パルス状のX線を照射する。FPD4は、被検体を透過してきたX線を検出して検出信号を画像生成部31に出力する。画像生成部31は、各検出信号を基に、被検体Mの透視像と統計ノイズ由来の偽像が写り込んだ元画像P0を生成する。元画像P0は、画像処理部32により偽像が除かれた処理画像P4に変換される。この処理画像P4が表示部39に表示されてX線撮影装置20による撮影動作は終了となる。
【0111】
以上のように実施例2の構成は上述の構成は実施例1の構成の画像処理装置1が実際の放射線撮影装置に組み込まれた構成を示すものとなっている。透視撮影において被検体の被曝を抑制しようとすると、得られた画像には統計ノイズ由来の偽像が写り込みやすくなる。この偽像は、実施例1の構成に係る画像処理装置1によって消去されるので、撮影のやり直しをしたり、偽像を防ぐ目的で強い線量で撮影をしたりしなくても、視認性の優れた画像が出力できる放射線撮影装置が提供できる。
【0112】
本発明は、上述の構成に限られず、下記のように変形実施することができる。
【0113】
(1)上述の実施例によれば、等方向ボカシ部14および異方性ボカシ部15には帯域画像α,β,γが入力されていたが、これに代えて
図19に示す様に元画像P0を入力させるようにしてもよい。このときの各部14,15は、実施例のときと違い、ボカシ処理と同時に元画像P0における特定の周波数を抽出する処理を行う。これにより、元画像P0から等方向ボカシ画像P1(α,β,γ),および異方性ボカシ画像P2(α,β,γ)がワンステップで生成されるので、より構成が単純化されて動作が速い画像処理装置が提供できる。
【0114】
(2)上述した実施例は、医用の装置であったが、本発明は、工業用や、原子力用の装置に適用することもできる。
【0115】
(3)上述した実施例のいうX線は、本発明における放射線の一例である。したがって、本発明は、X線以外の放射線にも適応できる。