特許第5835350号(P5835350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5835350自動搬送機の非常停止方法、搬送作業システム、及び搬送作業システムにおける自動搬送機の非常停止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5835350
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】自動搬送機の非常停止方法、搬送作業システム、及び搬送作業システムにおける自動搬送機の非常停止方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20060101AFI20151203BHJP
【FI】
   G05D1/02 S
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-553119(P2013-553119)
(86)(22)【出願日】2012年1月10日
(86)【国際出願番号】JP2012050241
(87)【国際公開番号】WO2013105211
(87)【国際公開日】20130718
【審査請求日】2014年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】尾楠 和幸
(72)【発明者】
【氏名】山田 一城
(72)【発明者】
【氏名】出原 弘樹
【審査官】 川東 孝至
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−304508(JP,A)
【文献】 特開昭62−187911(JP,A)
【文献】 特開2001−089096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
B65G 35/00
B65G 47/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行台車と、所定の検知範囲に存在する障害物を検知する障害物検知手段と、前記障害物検知手段によって障害物を検知したときに前記走行台車を停止させる停止手段と、を具備する自動搬送機の非常停止方法であって、
前記走行台車を非常停止させるときには、作業者によって非常ボタンが押され、前記非常ボタンが押されることによって前記障害物検知手段の検知範囲を拡大させ、拡大された検知範囲において前記障害物検知手段により障害物を検知することにより、前記停止手段によって前記自動搬送機を停止させる、
自動搬送機の非常停止方法。
【請求項2】
走行台車と、所定の検知範囲に存在する障害物を検知する障害物検知手段と、前記障害物検知手段によって障害物を検知したときに前記走行台車を停止させる停止手段と、を具備する自動搬送機と、
前記自動搬送機により搬送されるワークに対して作業を行う作業設備と、
前記作業設備に設けられる非常ボタンと、
を備えた搬送作業システムであって、
前記障害物検知手段は、障害物の検知範囲を切り替え可能に構成され、
前記作業設備は、前記非常ボタンが押されることによって、前記障害物検知手段の検知範囲を切り替える検知範囲切り替え手段を具備し、
前記非常ボタンが押されることによって前記検知範囲切り替え手段により、前記作業設備に進入した自動搬送機の前記障害物検知手段の検知範囲を拡大し、
検知範囲が拡大された前記障害物検知手段にて、前記作業設備に備えられ前記ワークに対する作業を行う作業機を検知することにより、
前記停止手段によって前記自動搬送機を停止させる、
ことを特徴とする搬送作業システム。
【請求項3】
走行台車と、所定の検知範囲に存在する障害物を検知する障害物検知手段と、前記障害物検知手段によって障害物を検知したときに前記走行台車を停止させる停止手段と、を具備する自動搬送機と、
前記自動搬送機により搬送されるワークに対して作業を行う作業設備と、
前記作業設備に設けられる非常ボタンと、
を備えた搬送作業システムにおける自動搬送機の非常停止方法であって、
前記障害物検知手段は、障害物の検知範囲を切り替え可能に構成され、
前記作業設備は、前記非常ボタンが押されることによって、前記障害物検知手段の検知範囲を切り替える検知範囲切り替え手段を具備し、
前記非常ボタンが押されることによって前記検知範囲切り替え手段により、前記作業設備に進入した自動搬送機の前記障害物検知手段の検知範囲を拡大し、
検知範囲が拡大された前記障害物検知手段にて、前記作業設備に備えられ前記ワークに対する作業を行う作業機を検知することにより、
前記停止手段によって前記自動搬送機を停止させる、
ことを特徴とする搬送作業システムにおける自動搬送機の非常停止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動搬送機の非常停止方法、搬送作業システム、及び搬送作業システムにおける自動搬送機の非常停止方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動搬送機(無人搬送車)は、工場内の生産ライン等でコンピュータ制御によって自動運転されるものである。自動搬送機は、生産ラインにおいて、溶接作業、加工作業等が行われる作業設備内においてワークを搬送するために、或いは、これらの作業設備間においてワークを搬送するために、用いられている。
【0003】
作業設備及び自動搬送機を含む生産ラインでは、安全上の観点から、非常時に作業設備及び自動搬送機の作動を停止する非常停止装置が必要である。従来、自動搬送機は、非常時に走行を停止する非常停止ボタンを具備していた。しかし、溶接作業、加工作業等が行われる作業設備内においては、作業者が自動搬送機の非常停止ボタンを押すことが困難である。また、無線で作業設備内に進入した自動搬送機を停止させることも考えられるが、非常時に、無線による自動搬送機の停止は、自動搬送機を確実に停止させる安全上の観点から好ましくはない。
【0004】
そこで、生産ラインでは、溶接作業、加工作業等が行われる作業設備内において、非常時に、自動搬送機を確実に停止させることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−185413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は、非常時には自動搬送機を確実に停止できる自動搬送機の非常停止方法、搬送作業システム、及び搬送作業システムにおける自動搬送機の非常停止方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、走行台車と、所定の検知範囲に存在する障害物を検知する障害物検知手段と、前記障害物検知手段によって障害物を検知したときに前記走行台車を停止させる停止手段と、を具備する自動搬送機の非常停止方法であって、前記走行台車を非常停止させるときには、作業者によって非常ボタンが押され、前記非常ボタンが押されることによって前記障害物検知手段の検知範囲を拡大させ、拡大された検知範囲において前記障害物検知手段により障害物を検知することにより、前記停止手段によって前記自動搬送機を停止させるものである。
【0009】
請求項2においては、走行台車と、所定の検知範囲に存在する障害物を検知する障害物検知手段と、前記障害物検知手段によって障害物を検知したときに前記走行台車を停止させる停止手段と、を具備する自動搬送機と、前記自動搬送機により搬送されるワークに対して作業を行う作業設備と、前記作業設備に設けられる非常ボタンと、を備えた搬送作業システムであって、前記障害物検知手段は、障害物の検知範囲を切り替え可能に構成され、前記作業設備は、前記非常ボタンが押されることによって、前記障害物検知手段の検知範囲を切り替える検知範囲切り替え手段を具備し、前記非常ボタンが押されることによって前記検知範囲切り替え手段により、前記作業設備に進入した自動搬送機の前記障害物検知手段の検知範囲を拡大し、検知範囲が拡大された前記障害物検知手段にて、前記作業設備に備えられ前記ワークに対する作業を行う作業機を検知することにより、前記停止手段によって前記自動搬送機を停止させるものである。
【0010】
請求項3においては、走行台車と、所定の検知範囲に存在する障害物を検知する障害物検知手段と、前記障害物検知手段によって障害物を検知したときに前記走行台車を停止させる停止手段と、を具備する自動搬送機と、前記自動搬送機により搬送されるワークに対して作業を行う作業設備と、前記作業設備に設けられる非常ボタンと、を備えた搬送作業システムにおける自動搬送機の非常停止方法であって、前記障害物検知手段は、障害物の検知範囲を切り替え可能に構成され、前記作業設備は、前記非常ボタンが押されることによって、前記障害物検知手段の検知範囲を切り替える検知範囲切り替え手段を具備し、前記非常ボタンが押されることによって前記検知範囲切り替え手段により、前記作業設備に進入した自動搬送機の前記障害物検知手段の検知範囲を拡大し、検知範囲が拡大された前記障害物検知手段にて、前記作業設備に備えられ前記ワークに対する作業を行う作業機を検知することにより、前記停止手段によって前記自動搬送機を停止させるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の自動搬送機の非常停止方法、搬送作業システム、及び搬送作業システムにおける自動搬送機の非常停止方法によれば、非常時には自動搬送機を確実に停止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る生産ラインの構成を示す模式図。
図2】同じく自動搬送機の構成を示す模式図。
図3】同じく作業設備の構成を示す模式図。
図4】同じく自動搬送機の作業設備進入制御の流れを示すフロー図。
図5】同じく模式図
図6】同じく自動搬送機非常停止制御の流れを示すフロー図。
図7】同じく模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を用いて、生産ライン100について説明する。
生産ライン100は、本発明の自動搬送機の非常停止方法、搬送作業システム、及び搬送作業システムにおける自動搬送機の非常停止方法に係る自動搬送機や搬送作業システムを備えた生産ラインである。生産ライン100は、自動車工場200に設けられている。
【0014】
本実施形態の生産ライン100は、作業設備60により、自動搬送機10により搬送されるワークWに対して加工や部品の組付けなどの作業を行う生産ラインとしている。本実施形態のワークWは、自動車のアンダーボディとしている。また、生産ライン100においては、自動搬送機10及び作業設備60を備えた搬送作業システムが構成されている。
【0015】
生産ライン100は、複数の作業設備60と、自動搬送機10の搬送経路と、を具備している。各作業設備60は、それぞれ近接又は離間して配置されている。自動搬送機10は、生産ライン100において、作業設備60内におけるワークWの搬送、或いは、作業設備60と次工程の作業設備60との間におけるワークWの搬送を行うものである。自動搬送機10は、搬送経路に沿って走行し、ワークWが載置される台車20を牽引してワークWを搬送する。作業設備60は、複数の作業装置61を備えており、作業装置61は、自動搬送機10の搬送経路の両側に配置されている(図3参照)。
【0016】
図2を用いて、自動搬送機10について説明する。
なお、図2(A)は、自動搬送機10の平面図を示し、図2(B)は、自動搬送機10の正面図を示している。以下では、図2及び図3に示す搬送方向、幅方向及び高さ方向に従って説明する。
【0017】
自動搬送機10は、ワークWが載置される台車20を牽引してワークWを搬送するものである。自動搬送機10は、生産ライン100の統合コントローラ(図示略)によって、自動運転されている。自動搬送機10は、走行台車11と、連結器12と、近接スイッチ15と、障害物検知手段としての障害物センサ16と、停止手段としての停止装置17と、を具備している。
【0018】
走行台車11は、動力源を搭載した自走式のものである。連結器12は、走行台車11と台車20とを連結するものである。
【0019】
障害物センサ16は、自動搬送機10の搬送方向の前方における障害物を検知するものである。障害物センサ16は、走行台車11の搬送方向の前側に設けられている。障害物センサ16は、搬送方向の前方の検知領域Dにおける障害物の有無を検知することができる。検知範囲Dは、所定高さの水平面における所定幅かつ所定奥行で形成される範囲である。
【0020】
障害物センサ16には、検知範囲Dの一つとして標準検知範囲Dnが設定され、標準検知範囲Dnの所定幅はワークWの幅よりも大きい幅とされている。また、障害物センサ16には、検知範囲Dの一つとして縮小検知範囲Dsが設定され、縮小検知範囲Dsの所定幅は作業設備60の通路幅(自動搬送機10が通過する搬送経路の両側に配置される作業装置61と作業装置61との間)よりも小さい幅とされている。以下、単に検知範囲Dと記載する場合には、標準検知範囲Dnと縮小検知範囲Dsとを含むものとする。
【0021】
近接スイッチ15は、障害物センサ16の検知領域Dの大きさを標準検知範囲Dn又は縮小検知範囲Dsのいずれかに変更するものである。近接スイッチ15は、幅方向の一側において自動搬送機10の走行台車11及び台車20のうち幅方向長さが大きい方よりも幅方向外側に延出し、かつ、上下方向の上側において自動搬送機10の上下方向高さよりも延出し、上方に向けて設けられている。なお、近接スイッチ15を確実に作動させるために2つの近接スイッチ15を搬送方向に並列して設ける構成としても良い。
【0022】
近接スイッチ15は、近傍の物体の有無を非接触で検出するものである。本実施形態の近接スイッチ15は、近傍に物体を非接触で検出しているとき(近接スイッチ15がONとされたとき)には、障害物センサ16の検知領域Dの大きさを縮小検知範囲Dsに設定する。また、近接スイッチ15は、近傍に物体を非接触で検出していないとき(近接スイッチ15がOFFとされたとき)には、障害物センサ16の検知領域Dの大きさを標準検知範囲Dnに設定する。
【0023】
停止装置17は、走行する自動搬送機10の走行台車11を停止させるものである。停止装置17は、障害物センサ16によって検知範囲Dにて障害物を検知した場合には、走行する走行台車11を停止させる。
【0024】
図3を用いて、作業設備60について説明する。
なお、図3(A)は、自動搬送機10が作業設備60に進入する状態を平面図で示している。図3(B)は、自動搬送機10が作業設備60に進入する状態を正面図で示している。
【0025】
作業設備60は、複数の作業装置61と、検知範囲切り替え手段としてのスイッチバー65と、を具備している。作業装置61は、ロボット等によって、ワークWの加工、ワークWの溶接、或いは、ワークWに部品の組付けを行うものである。本実施形態では、各作業装置61について詳細な説明を省略する。
【0026】
スイッチバー65は、通常時(後述する標準位置Snにあるとき)には、作業設備60に進入する直前及び作業設備60に進入した自動搬送機10の近接スイッチ15に検出され、非常時(後述する非常停止位置Ssにあるとき)には、作業設備60に進入する直前及び作業設備60に進入した状態にある自動搬送機10の近接スイッチ15に検出されないものである。
【0027】
スイッチバー65は、作業設備60における自動搬送機10の搬送経路と平行に、幅方向の一側に設けられており、作業設備60の搬送経路方向における略全範囲にわたって延設されている。さらに、スイッチバー65は、作業設備60の搬送経路方向における上流側端から、上流側へ向かって延設されている。
【0028】
スイッチバー65は、近接部66と、本体67と、支持軸68と、支持台69と、を具備している。本体67は、搬送方向の断面視にて略L字形状に構成されている。近接部66は、本体67の先端側に設けられている。支持軸68は、本体67と支持台69とを搬送方向を軸として回動可能に支持している。支持台69は、作業設備60において幅方向の一側に設けられている。
【0029】
スイッチバー65は、標準位置Snと、非常停止位置Ssと、の2つの姿勢をシリンダ機構によって切り替えるように構成されている。標準位置Snは、本体67及び近接部66が下方に回動して、本体67が、作業設備60に進入した自動搬送機10の近接スイッチ15に近接する状態となる位置である(図3(B)が示すスイッチバー65の位置)。スイッチバー65が標準位置Snにあるときには、自動搬送機10が作業設備60に進入した場合に、近接部66が自動搬送機10の近接スイッチ15に検出される。
【0030】
非常停止位置Ssは、標準位置Snから本体67及び近接部66が上方に回動して、本体67が作業設備60に進入した自動搬送機10の近接スイッチ15から離間する状態となる位置である(図3(B)の右上方に示すスイッチバー65の位置)。スイッチバー65が非常停止位置Ssでは、自動搬送機10が作業設備60に進入した場合に、近接部66が自動搬送機10の近接スイッチ15に検出されない。
【0031】
スイッチバー65が標準位置Snにあるか、或いは、非常停止位置Ssにあるかは、作業設備60の設備コントローラ(図示略)によってシリンダ機構を駆動し切り替えられるものとする。
【0032】
図4及び図5を用いて、作業設備進入制御S50について説明する。
なお、図4では、作業設備進入制御S50の流れをフロー図で示している。図5では、説明を分かり易くするために、作業設備進入制御S50について、左側には平面模式図を示し、右側には正面模式図を示している。
【0033】
ステップS40において、自動搬送機10は、自動ライン100の搬送経路上において、ワークWを搬送して作業設備60に近づく。このとき、障害物センサ16の検知範囲Dは、近接スイッチ15が何も検出していない状態であるため、標準検知範囲Dnに設定されている。そのため、自動搬送機10は、搬送中の前方の障害物(特に作業者)を検知した場合に停止する。なお、自動搬送機10は、生産ライン100の統合コントローラによって、自動運転されている。
【0034】
ステップS51(作業設備進入制御S50)において、自動搬送機10が作業設備60に進入する手前にて、スイッチバー65が自動搬送機10の近接スイッチ15に検出される(近接スイッチ15はONとされる)。より具体的には、作業設備60では、スイッチバー65が標準位置Snにあるため、自動搬送機10が作業設備60に進入する直前に、近接部66が自動搬送機10の近接スイッチ15に検出される。
【0035】
ステップS52(作業設備進入制御S50)において、自動搬送機10の近接スイッチ15がONとされることによって、障害物センサ16の検知領域Dの設定が標準検知範囲Dnから縮小検知範囲Dsに変更される。
【0036】
作業設備進入制御S50によれば、標準検知範囲Dnが縮小検知範囲Dsに設定され、検知範囲Dが縮小されることによって、作業設備60内に進入した自動搬送機10が作業装置61を障害物として検知して停止することを防止できる。
【0037】
ステップS60において、自動搬送機10は、作業装置61を障害物として検知することなく、作業設備60内に進入して、作業設備60内においてワークWを搬送する。作業設備60の作業装置61は、自動搬送機10によって搬送されるワークWに作業を行う。
【0038】
図6及び図7を用いて、非常停止制御S100について説明する。
なお、図6では、非常停止制御S100の流れをフロー図で示している。図7では、説明を分かり易くするために、非常停止制御S100について、左側には平面模式図を示し、右側には正面模式図を示している。
【0039】
ステップS60において、障害物センサ16の検知領域Dを縮小検知範囲Dsに設定された自動搬送機10は、作業装置61を障害物として認識することなく、作業設備60内に進入する。
【0040】
ステップS110(非常停止制御S100)において、設備コントローラは、作業者によって作業設備60の非常停止ボタン(図示略)が押されたかどうかを確認する。作業者によって非常停止ボタンが押された場合には、ステップS120に移行する。作業者によって非常停止ボタンが押されていない場合には、ステップS200に移行する。
【0041】
ステップS120(非常停止制御S100)において、作業者によって非常停止ボタンが押された場合には、設備コントローラは、作業設備60のスイッチバー65を標準位置Snから非常停止位置Ssに切り替える。スイッチバー65が非常停止位置Ssに切り替えられることによって、自動搬送機10の近接スイッチ15はスイッチバー65を検出しなくなる(近接スイッチ15はOFFとされる)。なお、このとき、作業者によって非常停止ボタンが押されたことによって作業設備60内の全ての作業装置61は停止する。
【0042】
ステップS130(非常停止制御S100)において、自動搬送機10の近接スイッチ15がOFFとされることによって、自動搬送機10では、障害物センサ16の検知領域Dの設定が縮小検知範囲Dsから標準検知範囲Dnに変更される。
【0043】
ステップS140(非常停止制御S100)において、自動搬送機10の障害物センサ16の検知領域Dが標準検知範囲Dnに変更されることによって、障害物センサ16は、作業設備60内の作業装置61を障害物として検知する。障害物センサ16が作業装置61を障害物として検知することによって、停止装置17により自動搬送機10が停止される。
【0044】
すなわち、作業者によって非常停止ボタンが操作されると、障害物センサ16の検知領域Dが拡大して標準検知範囲Dnとなり、拡大した標準検知範囲Dnにおいて障害物センサ16が作業装置61を障害物として検知するので、停止装置17により自動搬送機10が停止される。
【0045】
ステップS200において、自動搬送機10は、作業装置61を障害物として検知することなく、作業設備60内にて、ワークWを搬送する。作業設備60内にて、作業装置61のワークWの作業が終了すると、自動搬送機10は作業設備60から退出する。
【0046】
非常停止制御S100の効果について説明する。
従来、自動搬送機10は、非常時には走行を停止する非常停止ボタンを具備していた。しかし、溶接作業、加工作業等が行われる作業設備60内においては、作業者が自動搬送機10の非常停止ボタンを押すことが困難であった。また、無線で作業設備60内に進入した自動搬送機を停止させることも考えられるが、非常時に、無線による自動搬送機10の停止は、自動搬送機10を確実に停止させるという安全上の観点から好ましくはなかった。
【0047】
非常停止制御S100によれば、非常時には自動搬送機10を確実に停止できる。すなわち、作業設備60内において、障害物センサ16の検知領域Dの設定を縮小検知範囲Dsから標準検知範囲Dnに変更することによって、検知領域Dの大きさを拡大し、意図的に作業設備60の作業装置61を障害物センサ16に検知させ、自動搬送機10を確実に停止することができる。
【0048】
なお、自動搬送機10は、非常停止制御S100にて用いられる作業設備60の非常停止ボタンとは別の、非常停止ボタンを具備するものとしている。例えば、生産ライン100における作業設備60以外の場所では、作業者が自動搬送機10が具備する非常停止ボタンを押して自動搬送機10の走行台車11を停止させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、自動搬送機の非常停止方法、搬送作業システム、及び搬送作業システムにおける自動搬送機の非常停止方法に利用できる。
【符号の説明】
【0050】
10 自動搬送機
11 走行台車
15 近接スイッチ
16 障害物センサ
17 停止装置
20 台車
60 作業設備
61 作業装置
65 スイッチバー
100 自動ライン
200 自動車工場
D 検知範囲
Dn 標準検知範囲
Ds 縮小検知範囲
Sn 標準位置
Ss 非常停止位置
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7