(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
排気通路に燃料を添加し、この排気通路に添加された燃料を加熱して着火させることにより、内燃機関から排出される排気を加熱する際に、排気通路に添加された燃料の燃焼率を算出する方法であって、
排気通路に添加された燃料が燃焼する領域よりも下流側の排気通路を流れる排気温TOを排気温センサーにて取得するステップと、
排気の熱容量CEを取得するステップと、
排気通路に供給された燃料のエネルギー量QFを取得するステップと、
排気を加熱する直前からの排気温TOの上昇量ΔTOを求めるステップと、
排気を加熱する直前からの排気温TOの変化率dTOを求めるステップと、
排気温センサー自体の熱伝導率κSおよび排気温センサーの熱容量CSおよび排気通路を流れる排気から排気温センサーに伝わる熱伝導率κEのうちの少なくとも1つを含むパラメーターZを取得するステップと、
排気通路に添加された燃料の燃焼率RCを次式
RC=(CE/QF)(Z・dTO+ΔTO)
にて算出するステップと
を具えたことを特徴とする燃焼率算出方法。
排気通路の途中に排気浄化装置が組み込まれ、燃料は排気浄化装置よりも上流側の排気通路に添加され、排気温センサーは、排気浄化装置よりも上流側の排気通路を流れる排気温TOを検出することを特徴とする請求項1に記載の燃焼率算出方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
引用文献2においては、燃料が着火する際の吸気温を検出する場合、燃焼を終えた後の温度収束段階で着火/失火の判定を行うため、吸気温が収束するまでの間に失火していた場合、この失火期間に応じた量の未燃燃料がエンジン側に供給されるおそれがある。このため、引用文献2の技術を排気加熱装置に転用した場合、排気浄化装置に悪影響を与える可能性がある。
【0007】
引用文献3においては、吸気通路に添加した燃料の着火の際の温度変化に基づいて失火兆候を判定している。しかしながら、この方法においても温度変化が安定するまでは着火/失火の判定を行うことができず、引用文献2と同じような弊害を有する。
【0008】
また、これらの引用文献2,3においては、ある燃料添加期間中での温度変化を計測しているため、実時間での着火/失火の判定を行うことが本質的に不可能である。しかも、燃焼器に流入する外気温の変化などによる影響を全く考慮していないため、その判定精度には大いなる改善の余地があった。
【0009】
本発明の目的は、排気加熱装置により排気通路に添加される燃料の燃焼率を高い信頼性を以て実時間で推定し得る方法を提供することにある。なお、ここでいう燃焼率とは、燃料のエネルギー供給量、すなわち燃料添加量に対して実際に燃料が燃焼した割合であり、例えば燃焼率が0%とは添加した燃料が全く燃焼しなかったことを示し、逆に燃焼率が100%とは燃料がすべて燃焼したことを示す。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による燃焼率算出方法は、内燃機関の排気通路に燃料を添加し、この排気通路に添加された燃料を加熱して着火させることにより、内燃機関から排出される排気を加熱する際に、排気通路に添加された燃料の燃焼率を算出する方法であって、排気通路に添加された燃料が燃焼する領域よりも下流側の排気通路を流れる排気の温度T
Oを排気温センサーにて取得するステップと、排気の熱容量C
Eを取得するステップと、排気通路に供給された燃料のエネルギー量Q
Fを取得するステップと、排気を加熱する直前からの排気温T
Oの上昇量ΔT
Oを求めるステップと、排気を加熱する直前からの排気温T
Oの変化率dT
Oを求めるステップと、排気通路を流れる排気に関連するパラメーターZを取得するステップと、排気通路に添加された燃料の燃焼率R
CをR
C=(C
E/Q
F)(Z・dT
O+ΔT
O)にて算出するステップとを具えたことを特徴とするものである。
【0011】
排気温センサーの熱容量をC
Sで表し、排気通路を流れる排気から排気温センサーに伝わる熱エネルギー量をQで表した場合、排気温センサーによって検出される排気温T
Oの変化率dT
Oは、
dT
O=Q/C
S ・・・ (1)
で表すことができる。また、z
3,z
5を定数とし、排気温センサーの周囲の排気温をT
Eで表し、排気温センサー自体の熱伝導率をκ
Sで表し、排気通路を流れる排気から排気温センサーへと伝わる熱伝導率をκ
Eで表すと、一般的な伝熱法則から
Q=(T
E−T
O)/{(1/z
3・κ
S)+(1/z
5・κ
E)} ・・・ (2)
である。ここで、(1)式に(2)式を代入すると、
T
E=C
S・dT
O{(1/z
3・κ
S)+(1/z
5・κ
E)}+T
O ・・・ (3)
となる。
【0012】
一方、燃焼率R
Cを考慮した排気温センサーの周囲の排気温T
Eは、燃料の添加直前における排気通路の排気温をT
OSで表すと、
T
E=(Q
F・R
C/C
E)+T
OS ・・・(4)
である。ここで、(4)式を(3)式に代入すると、
R
C=(C
E/Q
F)・[C
S・dT
O{(1/z
3・κ
S)+(1/z
5・κ
E)}+T
O−T
OS] ・・・ (5)
となる。(5)式におけるC
S{(1/z
3・κ
S)+(1/z
5・κ
E)}は、排気通路を流れる排気に関連するパラメーターZとして表すことができるので、(T
O−T
OS)を排気温上昇量ΔT
Oとして表すと、(5)式は
R
C=(C
E/Q
F)(Z・dT
O+ΔT
O) ・・・ (6)
のように変形することができる。
【0013】
本発明による燃焼率算出方法において、排気通路の途中に排気浄化装置が組み込まれ、燃料は排気浄化装置よりも上流側の排気通路に添加され、排気温センサーは、排気浄化装置よりも上流側の排気通路を流れる排気温T
Oを検出するものであってよい。
【0014】
パラメーターZが排気温センサー自体の熱伝導率κ
Sおよび排気温センサーの熱容量C
Sおよび排気通路を流れる排気から排気温センサーに伝わる熱伝導率κ
Eのうちの少なくとも1つを含み、z
1,z
2,z
4をそれぞれ定数とした場合、Z=z
1・C
Sか、Z=z
2・C
S{1/(z
3・κ
S)}か、Z=z
4・C
S{1/(z
5・κ
E)}か、Z=C
S[{1/(z
3・κ
S)}+{1/(z
5・κ
E)}]であってよい。
【0015】
排気通路を流れる排気の流量v
Eおよび排気温T
Oの少なくとも一方に基づき、排気温T
Oを補正するステップをさらに具えることができる。
【0016】
内燃機関の燃焼室よりも下流かつ排気通路に燃料が添加される領域よりも上流に位置する排気通路を流れる排気の温度T
Iを取得するステップと、排気を加熱する直前からの排気温T
Iの上昇量ΔT
Iを求めるステップと、排気を加熱する直前からの排気温T
Iの変化率dT
Iを求めるステップと、排気を加熱する直前からの排気温T
Oの上昇量ΔT
Oから排気温T
Iの上昇量ΔT
Iを減算して排気温T
Oの上昇量ΔT
Oを補正するステップと、排気を加熱する直前からの排気温T
Oの変化率dT
Oから排気温T
Iの変化率dT
Iを減算して排気温T
Oの変化率dT
Oを補正するステップとをさらに具えることができる。この場合、排気通路を流れる排気の流量v
Eおよび排気温T
Oの少なくとも一方に基づき、排気温T
Iを補正するステップをさらに具えることができる。
【0017】
排気温T
Oの変化率dT
Oと排気温T
Iの変化率dT
Iとの差を求めるステップをさらに具え、排気を加熱する直前として、これら変化率dT
Oと変化率dT
Iとの差が所定値を越えた時点を設定することができる。
【0018】
排気通路への燃料の添加を開始してから所定時間t後の排気温T
Oの変化率dT
Oが予め設定した閾値以上であるか否かを判定するステップをさらに具え、排気通路への燃料の添加を開始してから所定時間t後の排気温T
Oの変化率dT
Oが閾値未満の場合、燃料の燃焼率を0と算出することができる。この場合、所定時間tとは、排気通路における燃料の添加領域から排気温T
Oの検出領域に至る排気の流動時間を含むものであってよい。また、排気通路における燃料の添加領域から排気温T
Oの検出領域に至る排気通路の容積A
Eを取得するステップと、排気通路を流れる単位時間あたりの排気の流量qを取得するステップとをさらに具えた場合、所定時間tをt=A
E/qで表すことができる。さらに、排気温センサーによって検出される排気温T
Oに基づいて所定時間tを補正するステップをさらに具えることができる。この場合、排気圧をpで表し、単位時間あたりの排気の質量をWで表した場合、所定時間tがt=(1293p・A
E)/{101.3W(1+0.00367T
O)}により補正されるものであってよい。
【0019】
排気通路への燃料の添加を終了してからの排気温T
Oの変化率dT
Oと排気温T
Iの変化率dT
Iとの差を求めるステップをさらに具え、燃料の燃焼率R
Cを算出するステップは、これら変化率dT
Oと変化率dT
Iとの差が所定値以下となった時点で終了するものであってよい。あるいは、排気を加熱する直前から排気通路への燃料の添加に要する時間が経過した時点で燃料の燃焼率R
Cを算出するステップを終了することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の燃焼率算出方法によると、排気通路に添加された燃料の燃焼率R
CをR
C=(C
E/Q
F)(Z・dT
O+ΔT
O)にて算出するので、燃焼率を実時間にて精度よく把握することができる。
【0021】
燃料を排気浄化装置よりも上流側の排気通路に添加し、排気温センサーが排気浄化装置よりも上流側の排気通路を流れる排気温T
Oを検出する場合、排気浄化装置へ流入する未燃燃料の量を高精度に推定することができる。
【0022】
パラメーターZをz
1・C
Sか、z
2・C
S{1/(z
3・κ
S)}か、z
4・C
S{1/(z
5・κ
E)}か、C
S[{1/(z
3・κ
S)}+{1/(z
5・κ
E)}]とした場合、排気通路に添加された燃料の燃焼率をより高い信頼性にて把握することができる。
【0023】
排気通路を流れる排気の流量v
Eおよび排気温T
Oの少なくとも一方に基づき、排気温T
Oを補正するステップをさらに具えた場合、燃焼率をさらに高精度に把握することができる。
【0024】
排気温上昇量ΔT
Oを補正すると共に排気温変化率dT
Oを補正した場合、排気加熱装置に流入する排気温の変化による影響を加味することができる。特に、排気通路を流れる排気の流量v
Eおよび排気温T
Oの少なくとも一方に基づき、排気温T
Iを補正するステップをさらに具えた場合、排気通路に添加された燃料の燃焼率をより一層高精度に把握することができる。
【0025】
排気温T
Oの変化率dT
Oと排気温T
Iの変化率dT
Iとの差が所定値を越えた時点が、排気を加熱する直前として規定した場合、排気加熱装置から排気温センサーまでの距離が遠く離れていても、燃焼率の算出開始時期を正確に規定することができる。
【0026】
排気通路への燃料の添加を開始してから所定時間t後の排気温T
Oの変化率dT
Oが閾値未満の場合、燃料の燃焼率を0と算出することにより、排気通路に添加される燃料が未燃状態のままとなるような不具合を未然に防止することができる。ここで、所定時間tが排気通路における燃料の添加領域から排気温T
Oの検出領域に至る排気の流動時間を含
む場合、特に所定時間tをA
E/qとした場合、排気加熱装置から排気温センサーまでの距離に応じた適切なタイミングで燃焼率0の判定を行うことができる。また、排気温センサーによって検出される排気温T
Oに基づき、特にt=(1293p・A
E)/{101.3W(1+0.00367T
O)}により補正した場合、より高い信頼性を持った燃焼率を算出することができる。
【0027】
排気通路への燃料の添加を終了してからの排気温T
Oの変化率dT
Oと排気温T
Iの変化率dT
Iとの差が所定値以下となった時点で、燃料の燃焼率R
Cを算出するステップを終了する場合、燃焼の終了時期を精度よく予測することができる。この結果、より高精度な燃焼率の算出を行うことが可能となる。排気を加熱する直前から排気通路への燃料の添加に要する時間が経過した時点で、燃料の燃焼率R
Cを算出するステップを終了する場合も同様な効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明による燃焼率算出方法を圧縮点火方式の多気筒内燃機関に応用した実施形態について、
図1〜
図6を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、本発明はこのような実施形態のみに限らず、要求される特性に応じてその構成を自由に変更することが可能である。例えば、ガソリンやアルコールまたはLNG(液化天然ガス)などを燃料としてこれを点火プラグにて着火させる火花点火式内燃機関に対しても本発明は有効である。
【0030】
本実施形態におけるエンジンシステムの主要部を模式的に
図1に示し、その主要部の制御ブロックを概略的に
図2に示す。なお、
図1にはエンジン10の吸排気のための動弁機構や消音器の他に、このエンジン10の補機として一般的な排気ターボ式過給機やEGR装置なども省略されている。また、エンジン10の円滑な運転のために必要とされる各種センサー類もその一部が便宜的に省略されていることに注意されたい。
【0031】
本実施形態におけるエンジン10は、燃料である軽油を燃料噴射弁11から圧縮状態にある燃焼室10a内に直接噴射することにより、自然着火させる圧縮点火式の多気筒内燃機関である。しかしながら、本発明の特性上、単気筒の内燃機関であってもかまわない。
【0032】
燃焼室10aにそれぞれ臨む吸気ポート12aおよび排気ポート12bが形成されたシリンダーヘッド12には、吸気ポート12aを開閉する吸気弁13aおよび排気ポート12bを開閉する排気弁13bを含む図示しない動弁機構が組み込まれている。燃焼室10aの上端中央に臨む先の燃料噴射弁11もまた、これら吸気弁13aおよび排気弁13bに挟まれるようにシリンダーヘッド12に組み付けられている。燃料噴射弁11から燃焼室10a内に供給される燃料の量および噴射時期は、運転者によるアクセルペダル14の踏み込み量を含む車両の運転状態に基づいてECU(
Electronic
Control
Unit)15により制御される。アクセルペダル14の踏み込み量は、アクセル開度センサー16により検出され、その検出情報がECU15に出力される。
【0033】
ECU15は、このアクセル開度センサー16や後述する各種センサー類などからの情報に基づき、車両の運転状態を判定する運転状態判定部15aと、燃料噴射設定部15bと、燃料噴射弁駆動部15cとを有する。燃料噴射設定部15bは、運転状態判定部15aでの判定結果に基づいて燃料噴射弁11からの燃料の噴射量や噴射時期を設定する。燃料噴射弁駆動部15cは、燃料噴射設定部15bにて設定された量の燃料が設定された時期に燃料噴射弁11から噴射されるように、燃料噴射弁11の作動を制御する。
【0034】
吸気ポート12aに連通するようにシリンダーヘッド12に連結されて吸気ポート12aと共に吸気通路17aを画成する吸気管17の途中には、サージタンク18が形成されている。このサージタンク18よりも上流側の吸気管17には、スロットルアクチュエーター19を介して吸気通路17aの開度を調整するためのスロットル弁20が組み込まれている。また、スロットル弁20よりも上流側の吸気管17には、吸気通路17aを流れる吸気の流量を検出してこれをECU15に出力するエアーフローメーター21が取り付けられている。なお、このエアーフローメーター21に代えて同じ構成の排気流量センサーを後述する排気加熱装置22とシリンダーヘッド12の排気ポート12bとの間に位置する排気管23の部分に取り付けるようにしてもよい。
【0035】
先のECU15は、スロットル開度設定部15dと、アクチュエーター駆動部15eとをさらに有する。スロットル開度設定部15dは、アクセルペダル14の踏み込み量に加え、先の運転状態判定部15aでの判定結果に基づいてスロットル弁20の開度を設定する。アクチュエーター駆動部15eは、スロットル弁20がスロットル開度設定部15dにて設定された開度となるように、スロットルアクチュエーター19の作動を制御する。
【0036】
ピストン24aが往復動するシリンダーブロック24には、連接棒24bを介してピストン24aが連結されるクランク軸24cの回転位相、つまりクランク角を検出してこれをECU15に出力するクランク角センサー25が取り付けられている。ECU15の運転状態判定部15aは、このクランク角センサー25からの情報に基づき、クランク軸24cの回転位相やエンジン回転数の他に車両の走行速度などを実時間で把握する。
【0037】
排気ポート12bに連通するようにシリンダーヘッド12に連結される排気管23は、排気ポート12bと共に排気通路23aを画成する。下流端側に取り付けられた図示しない消音器よりも上流側の排気管23の途中には、燃焼室10a内での混合気の燃焼により生成する有害物質を無害化するための排気浄化装置26が取り付けられている。本実施形態における排気浄化装置26は、少なくとも酸化触媒を含むが、この他にDPF(
Diesel
Particulate
Filter)やNO
X吸蔵触媒などを組み込むことも可能である。酸化触媒は、主として排気に含まれる未燃ガスを酸化、つまり燃焼させるためのものである。この酸化触媒の出口側の排気通路23aには、酸化触媒を出た排気の温度(以下、これを触媒温度と記述する)を検出してこれをECU15に出力する触媒温度センサー27が組み込まれている。ECU15の運転状態判定部15aは、この触媒温度センサー27からの情報に基づき、酸化触媒が活性状態にあるか否かも把握する。
【0038】
この排気浄化装置26よりも上流側の排気管23の途中には、加熱ガスを生成してこれを下流側に配された排気浄化装置26に供給し、その活性化および活性状態を維持するための排気加熱装置22が配されている。本実施形態における排気加熱装置22は、燃料添加弁22aと、グロープラグ22bとを具えている。この他、燃料
添加弁2
2aから供給される燃料を受けてその霧化およびグロープラグ22b側への飛散を促進させるための特許文献1に開示されたような衝突板や、これらよりも下流側の排気通路23aに補助的な酸化触媒を配することも有効である。
【0039】
燃料添加弁22aは、基本的な構成が通常の燃料噴射弁11と同じものであり、通電時間を制御することによって、任意の量の燃料を任意の時間間隔で排気通路23aにパルス状に供給することができるようになっている。
【0040】
燃料添加弁22aから排気通路23aに供給される1回あたりの燃料の量は、エアーフローメーター21によって検出される吸入空気量および空燃比を含む車両の運転状態に基づき、ECU15の燃料添加設定部15fにより設定される。燃料添加設定部15fはまた、目標とすべき触媒温度と触媒温度センサー27によって検出される現在の触媒温度との差に基づき、供給すべき燃料のエネルギー量、すなわち燃料添加量Q
Fも併せて算出する。目標とすべき触媒温度は、酸化触媒が活性状態となる最低温度(以下、これを触媒活性最低温度と記述する)が一般的に選択される。
【0041】
なお、本実施形態では空燃比を吸入空気量と燃料添加弁22aからの燃料添加量Q
FとによってECU15の運転状態判定部15aにて算出するようにしている。しかしながら、空燃比センサーを排気通路23aの途中に組み込み、この空燃比センサーからの検出信号から読み出すようにしてもよい。
【0042】
ECU15の燃料添加弁駆動部15gは、燃料添加設定部15fにて設定された量の燃料が設定された周期で燃料添加弁22aから噴射されるように、燃料添加弁22aの作動を制御する。この場合、燃料添加弁22aの作動は、燃料添加を開始してから積算される燃料添加量が燃料添加設定部15fにて設定された燃料添加量Q
Fに達するまで、基本的に行われる。
【0043】
燃料添加弁22aから排気通路23aに添加された燃料を着火させるためのグロープラグ22bは、車載の図示しない電源にオン/オフスイッチとしてのECU15のグロープラグ駆動部15hを介して接続している。従って、グロープラグ22bに対する通電および非通電の切り替えは、予め設定されたプログラムに従ってECU15のグロープラグ駆動部15hにより制御される。
【0044】
本実施形態においては、エンジン10がモータリング状態、すなわちエンジン10の運転中にアクセルペダル14の開度が0となり、燃料噴射弁11から燃料が噴射されない燃料カット状態になった場合、燃料添加弁22aからの燃料の添加処理が実行される。しかしながら、車両の運転状態に応じて燃料添加弁22aから燃料を添加し、これをグロープラグ22bによって着火燃焼させ、エンジン10から排出される排気を加熱するようにしてもよい。
【0045】
従って、吸気通路17aから燃焼室10a内に供給される吸気は、燃料噴射弁11から燃焼室10a内に噴射される燃料と混合気を形成する。そして、ピストン24aの圧縮上死点近傍にて自然着火して燃焼し、これによって生成する排気が排気浄化装置26を通って排気管23から大気中に排出される。一方、エンジン10が燃料カット状態になると、燃料添加弁22aから燃料が排気通路23aに供給され、これによって排気通路23aを流れる排気の昇温を図り、排気浄化装置26の酸化触媒の活性状態が維持される。
【0046】
排気加熱装置22よりも上流側の排気管23には、第1排気温センサー28が配されている。この第1排気温センサー28は、エンジン10の燃焼室10aよりも下流かつ排気通路23aに燃料が添加される領域よりも上流に位置する排気通路23aを流れる排気温(以下、これを第1排気温と記述する)T
Iを検出してこれをECU15に出力する。同様に、排気加熱装置22と排気浄化装置26との間の排気管23には、第2排気温センサー29および排気圧センサー30が配されている。第2排気温センサー29は、排気通路23aに添加された燃料が燃焼する領域よりも下流かつ排気浄化装置26よりも上流に位置する排気通路23aを流れる排気の温度(以下、これを第2排気温と記述する)T
Oを検出してこれをECU15に出力する。排気圧センサー30は、排気通路23aを流れる排気の圧力pを検出してこれをECU15に出力する。
【0047】
ECU15の第1排気温変化率算出部15iは、排気を加熱する直前からの排気温T
Iの変化率(以下、これを第1排気温変化率と記述する)dT
Iを算出し、これを燃焼率算出部15jに出力する。同様に、ECU15の第2排気温変化率算出部15kは、排気を加熱する直前からの排気温T
Oの変化率(以下、これを第2排気温変化率と記述する)dT
Oを算出し、これを燃焼率算出部15jに出力する。
【0048】
燃焼率算出部15jは、排気通路23aに添加された燃料の燃焼率R
Cを下式(7)により算出する。
【0049】
R
C=(C
E/Q
F)[C
S[{1/(z
3・κ
S)}+{1/(z
5・κ
E)}]・dT
O+ΔT
O] ・・・ (7)
ここで、C
Eは排気の熱容量,Q
Fは供給エネルギー量,C
Sは第2排気温センサー29の熱容量,dT
Oは第2排気温変化率,ΔT
Oは第2排気温上昇量である。供給エネルギー量Q
Fは、前述したように排気通路23aに添加される燃料量に対応し、第2排気温上昇量ΔT
Oは、現時点の第2排気温T
Oから排気を加熱する直前における第2排気温T
OSを減算した値に対応する。また、κ
Sは第2排気温センサー29自体の熱伝導率,κ
Eは排気通路23aを流れる排気から第2排気温センサー29へと伝わる熱伝導率,z
3,z
5は定数である。
【0050】
なお、排気の熱容量C
Eや、使用する燃料の単位質量あたりの発熱量,第2排気温センサー29の熱容量C
Sなどは、予めECU15に取得され、記憶されている。また、(7)式中のC
S[{1/(z
3・κ
S)}+{1/(z
5・κ
E)}]は、排気通路23aを流れる排気に関連するパラメーターZとして見なすことができるので、(7)式を先の(6)式のように表すことも可能である。すなわち
R
C=(C
E/Q
F)(Z・dT
O+ΔT
O) ・・・ (6)
この場合、排気通路23aを流れる排気に関連するパラメーターZをz
1・C
Sか、z
2・C
S{1/(z
3・κ
S)}か、z
4・C
S{1/(z
5・κ
E)}の何れかとし、簡易的に燃焼率R
Cを算出することも可能である。ただし、z
1,z
2,z
4は定数である。
【0051】
排気通路23aを流れる排気から第2排気温センサー29へと伝わる熱伝導率κ
Eは、一般的な熱伝導率の算出手法から、ヌセルト数N
uを変数とする関数式、すなわちκ
E=a・f(N
u)で表すことができる。また、この関数式はプラントル数P
rよびレイノルズ数R
eを変数とする関数式、すなわちκ
E=b・f(P
r,R
e)に変換することができる。従って、この熱伝導率κ
Eは最終的に排気通路23aを流れる排気の流速v
Eを変数とする関数式、すなわちκ
E=c・f(v
E)に置換することが可能である。つまり、(6)式におけるパラメーターZのうち、排気通路23aを流れる排気から第2排気温センサー29へと伝わる熱伝導率κ
Eは、ヌセルト数N
uか、プラントル数P
rおよびレイノルズ数R
eか、排気通路23aを流れる排気流速v
Eを変数とする関数式で表すことも可能である。なお、上述の関数式におけるa〜cは何れも定数であり、これらは何れもECU15の燃焼率算出部15jに記憶されている。
【0052】
排気通路23aを流れる排気温T
I,T
Oは、排気通路23aの長手方向軸線に対して直交する平面内において均一ではなく、その排気系の構成に特有の分布がある。このため、第1および第2排気温センサー28,29の検出温度を補正することが望ましい。本実施形態では、排気通路23aを流れる排気の流量v
Eおよび第2排気温T
Oの少なくとも一方に基づき、第1および第2排気温T
I,T
Oを補正するようにしている。このため、運転状態判定部15aは、図
3および図
4に示すような排気温補正マップを記憶しており、これに基づいて第1および第2排気温T
I,T
Oが補正される。本実施形態においては、排気温センサー28,29の排気温検出部が排気管23の管壁近傍に配され、排気流量v
Eが増大するほど排気通路23aを流れる排気の混合状態が良好となるような排気系を想定している。また、排気管23の管壁温度によって排気中に含まれる未燃燃料や粒子成分などが管壁に付着する量が変化し、その濃度分布が排気通路23aの中心から放射状に変化するような排気系を対象としている。従って、図
3および図
4に示すような排気温補正マップは、排気系の構成や特性などに応じて適宜変更させる必要があることに注意されたい。
【0053】
また、排気加熱装置22に流入する排気温T
Iの変化が第2排気温変化率dT
Oや第2排気温上昇量ΔT
Oに影響を与えるため、第2排気温変化率dT
Oおよび第2排気温上昇量ΔT
Oが排気温T
Iの変化による影響を受けないようにすることが望まれる。
【0054】
燃焼率算出部15jは、排気を加熱する直前からの第2排気温上昇量ΔT
Oから第1排気温上昇量ΔT
Iを減算し、これを補正後の第2排気温上昇量ΔT
Oとして(7)式に代入する。第1排気温上昇量ΔT
Iは、現時点の第1排気温T
Iから排気を加熱する直前における第1排気温T
ISを減算した値に対応する。同様に、第2排気温変化率算出部15kにて算出される第2排気温変化率dT
Oから第1排気温変化率dT
Iを減算し、これを補正後の第2排気温変化率dT
Oとして(7)式に代入する。
【0055】
燃焼率算出部15jは、第2排気温変化率dT
Oと第1排気温変化率dT
Iとの差ΔdT(=dT
O−dT
I)を算出し、これが所定値Sを越えた時点で、(7)式による燃焼率R
Cの算出を開始する。つまり、排気を加熱する直前とは、第2排気温変化率dT
Oと第1排気温変化率dT
Iとの差ΔdTが所定値Sを越えた時点のことを指す。従って、この時の第1および第2排気温T
IS,T
OSが第1および第2排気温上昇量ΔT
I,ΔT
Oならびに第1および第2排気温変化率dT
I,dT
Oの算出基準となる。
【0056】
また、燃焼率算出部15jは、排気通路23aへの燃料の添加を開始してから所定時間t後の排気温変化率dT
Oが予め設定した閾値θ以上であるか否かを判定する。そして、排気通路23aへの燃料の添加を開始してから所定時間t後の排気温変化率dT
Oが閾値θ未満の場合、燃料の燃焼率R
Cを0と算出する。この場合、所定時間tは、排気通路23aにおける燃料の添加領域、つまり燃料添加弁22aの配設位置から排気温T
Oの検出領域、つまり第2排気温センサー29の配設位置に至る排気の流動時間に相当する。つまり、排気通路23aにおける燃料の添加領域から排気温T
Oの検出領域に至る排気通路23aの容積A
Eとし、排気通路23aを流れる単位時間あたりの排気の流量をqで表した場合、所定時間tは、次式
t=A
E/q・・・・・ (8)
で表すことができる。ここで、排気流量qは、エアーフローメーター21によって検出される単位時間あたりの吸気の質量Wを排気の密度ρで除算することによって算出されるが、排気
圧をpで表すと、ρは
ρ={1293/(1+0.00367T
O)}・(p/101.3)
で表すことができるので、(8)式を以下のように変形させることができる。
【0057】
t=(1293p・A
E)/{101.3W(1+0.00367T
O)} ・・・ (9)
【0058】
本実施形態における燃焼率算出部15jは、所定時間tを第2排気温センサー29によって検出される排気温T
Oに基づいて(9)式のように補正している。
【0059】
一方、燃焼率算出部15jは、燃料添加設定部15fにて設定された量の燃料を排気通路23aに添加し終えてからの第2排気温変化率dT
Oと第1排気温変化率dT
Iとの差ΔdTを再び算出する。そして、これが所定値Fよりも小さくなった時点で、燃料の燃焼率R
Cの算出を終了する。代わりに、燃料添加設定部15fにて設定された量の燃料の添加に要する時間tPに基づき、排気を加熱する直前からカウントを開始し、これが時間tPに達した時点で燃料の燃焼率R
Cの算出を終了するようにしてもよい。
【0060】
このような本実施形態による排気加熱処理の手順を
図5に模式的に示す。すなわち、S11のステップにて燃料の添加要求があるか否かを判定する。ここで、燃料の添加要求があると判定した場合には、S12のステップにて現在のエンジン10の運転状態に応じた燃料添加量Q
Fなどの設定を行った後、グロープラグ22bに対する通電を行ってS13のステップにて燃料の添加を開始する。次に、S14のステップに移行して開始フラグがセットされているか否かを判定する。最初は開始フラグがセットされていないので、S15のステップに移行し、第2排気温変化率dT
Oと第1排気温変化率dT
Iとの差ΔdTが所定値Sよりも大きいか否かを判定する。ここで、第2排気温変化率dT
Oと第1排気温変化率dT
Iとの差ΔdTが所定値S以下である、すなわち排気通路23aに添加した燃料の着火による排気温T
Oの上昇が始まっていないと判断した場合には、最初のステップに戻ってS11以降の処理を繰り返す。
【0061】
一方、S15のステップにて第2排気温変化率dT
Oと第1排気温変化率dT
Iとの差ΔdTが所定値Sよりも大きい、すなわち排気通路23aに添加した燃料の着火による排気温T
Oの上昇が始まっていると判断した場合には、S16のステップに移行する。そして、タイマーのカウントアップを開始すると共に開始フラグをセットした後、S17のステップにて燃焼率R
Cの算出を開始する。次に、S18のステップ
にてタイマーのカウント値K
Nが所定時間tに達したか否かを判定する。最初はタイマーのカウント値K
Nが所定時間tに達していないので、最初のステップに戻ってS11以降の処理を繰り返す。この場合、2回目以降ではS14のステップにて開始フラグがセットされている、すなわち燃焼率R
Cの算出処理を行っているとの判断により、S17のステップに移行して燃焼率R
Cの算出処理を継続することとなる。このようにして、S18のステップにてタイマーのカウント値K
Nが所定時間tに達したと判断した場合には、S19のステップに移行して排気通路23aへの燃料の添加を開始してから所定時間t後の排気温変化率dT
Oが閾値θ以上あるか否かを判定する。ここで、排気温変化率dT
Oが閾値θ以上である、すなわち排気通路23aに添加した燃料が正常に燃焼していると判断した場合には、S20のステップに移行して終了フラグがセットされているか否かを判定する。最初は終了フラグがセットされていないので、S21のステップに移行し、S12のステップにて設定された量Q
Fの燃料が排気通路23aに添加し終えたか否かを判定する。ここで、設定された量Q
Fの燃料がまだ排気通路23aに添加し終えていないと判断した場合には、最初のステップに戻り、S11以降の処理を繰り返す。
【0062】
一方、設定された量Q
Fの燃料を排気通路23aに添加し終えたとS21のステップにて判断した場合には、S22のステップに移行して終了フラグをセットし、次いでS23のステップにて第2排気温変化率dT
Oと第1排気温変化率dT
Iとの差ΔdTが所定値Fよりも小さいか否かを判定する。ここで、第2排気温変化率dT
Oと第1排気温変化率dT
Iとの差ΔdTが所定値F以上である、すなわち排気通路23aに添加した燃料の燃焼による影響がまだ認められると判断した場合には、最初のステップに戻ってS11以降の処理を繰り返す。
【0063】
S23のステップにて第2排気温変化率dT
Oと第1排気温変化率dT
Iとの差ΔdTが所定値Fよりも小さい、すなわち排気通路23aに添加した燃料の燃焼による第2排気温T
Oの変化がなくなったと判断した場合には、S24のステップに移行する。ここでは、タイマーのカウント値K
Nを0にリセットすると共に開始フラグおよび終了フラグをリセットし、燃焼率の算出を終了する。
【0064】
一方、S19のステップにて第2排気温変化率dT
Oが閾値θ未満である、すなわち何らかの原因で燃料の着火燃焼が起こっていないと判断した場合には、S25のステップに移行して燃料の燃焼率R
Cを0と算出した後、S24のステップに移行する。また、S20のステップにて終了フラグがセットされていると判断した場合には、排気通路23aへの燃料の添加が終わっているので、先のS23のステップに移行する。そして、第2排気温変化率dT
Oと第1排気温変化率dT
Iとの差ΔdTが所定値Fよりも小さいか否かを判定する。さらに、S11のステップにて燃料添加要求がない、すなわち排気加熱処理を行う必要がないと判断した場合には、S24のステップに移行してタイマーのカウント値K
Nを0にリセットすると共に開始フラグおよび終了フラグをリセットし、排気加熱処理を終了する。
【0065】
本実施形態による燃焼率R
Cの計測結果を模式的に
図6に表す。
図6は、第2排気温T
Oの変化と燃焼率R
Cとの相関を示しており、排気温
TOの変化に追従して燃焼率R
Cが連続的に計測されていることが理解されよう。図中の二点鎖線は、未燃状態における第2排気温T
Oを模式的に表している。
ップに戻り、S11以降の処理を繰り返す。
【0066】
なお、本発明はその請求の範囲に記載された事項のみから解釈されるべきものであり、上述した実施形態においても、本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が記載した事項以外に可能である。つまり、上述した実施形態におけるすべての事項は、本発明を限定するためのものではなく、本発明とは直接的に関係のないあらゆる構成を含め、その用途や目的などに応じて任意に変更し得るものである。