(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5835360
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】アンテナ装置、カード型通信デバイス及び通信端末装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 7/00 20060101AFI20151203BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20151203BHJP
G06K 19/07 20060101ALI20151203BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
H01Q7/00
H01Q1/38
G06K19/07 230
G06K19/077 248
G06K19/077 272
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-556321(P2013-556321)
(86)(22)【出願日】2013年1月22日
(86)【国際出願番号】JP2013051132
(87)【国際公開番号】WO2013114998
(87)【国際公開日】20130808
【審査請求日】2014年4月2日
(31)【優先権主張番号】特願2012-16066(P2012-16066)
(32)【優先日】2012年1月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001449
【氏名又は名称】特許業務法人プロフィック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池本 伸郎
(72)【発明者】
【氏名】中磯 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】郷地 直樹
(72)【発明者】
【氏名】池田 直徒
【審査官】
佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】
特許第4239205(JP,B2)
【文献】
国際公開第2010/137061(WO,A1)
【文献】
特開2011−066759(JP,A)
【文献】
実開平03−002711(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/07
H01Q 1/38
H01Q 5/00− 11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電回路に接続され、固定された共振周波数を持つアンテナ共振回路を含む無線通信タグと、
前記無線通信タグとは別体に構成されたデバイスであって、前記アンテナ共振回路に電磁界を介して結合する共振回路を含み、さらに、該共振回路自体の共振周波数を所定の周波数帯域の範囲でスイープさせるための制御回路を有している周波数可変共振素子と、
を備え、
前記周波数可変共振素子の前記共振回路の共振周波数が連続的にスイープすることにより、前記無線通信タグの前記アンテナ共振回路の共振周波数が連続的にスイープすること、
を特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記アンテナ共振回路はコイルアンテナを含み、
前記周波数可変共振素子は可変容量素子とコイル素子とを含み、該コイル素子は前記コイルアンテナに磁界結合すること、
を特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記周波数可変共振素子は、さらにバッテリーを含み、前記制御回路は前記可変容量素子に接続されていること、を特徴とする請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記制御回路はリーダライターのアンテナから放射される高周波信号を整流して電力として用いるものであること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記コイル素子の外形寸法は前記コイルアンテナの外形寸法よりも大きく、
前記コイル素子は前記コイルアンテナのブーストアンテナとして機能すること、
を特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記周波数可変共振素子における可変周波数帯域は前記アンテナ共振回路の共振周波数を含むこと、を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項7】
給電回路に接続され、固定された共振周波数を持つアンテナ共振回路を含む無線通信タグとともに使用され、
前記無線通信タグとは別体に構成されたデバイスであって、前記アンテナ共振回路に電磁界を介して結合する共振回路を含み、さらに、該共振回路自体の共振周波数を所定の周波数帯域の範囲でスイープさせるための制御回路を有している周波数可変共振素子を備え、
前記周波数可変共振素子の前記共振回路の共振周波数が連続的にスイープすることにより、前記無線通信タグの前記アンテナ共振回路の共振周波数が連続的にスイープすること、
を特徴とするカード型通信デバイス。
【請求項8】
給電回路に接続され、固定された共振周波数を持つアンテナ共振回路を含む無線通信タグを備えた通信端末装置であって、
前記無線通信タグとは別体に構成されたデバイスであって、前記アンテナ共振回路に電磁界を介して結合する共振回路を含み、さらに、該共振回路自体の共振周波数を所定の周波数帯域の範囲でスイープさせるための制御回路を有している周波数可変共振素子を備え、
前記周波数可変共振素子の前記共振回路の共振周波数が連続的にスイープすることにより、前記無線通信タグの前記アンテナ共振回路の共振周波数が連続的にスイープすること、
を特徴とする通信端末装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、RFID(Radio Frequency Identification)システムに用いられるアンテナ装置、カード型通信デバイス及び通信端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物品の管理システムとして、誘導電磁界を発生するリーダライターと物品や容器などに付された所定の情報を記憶したICチップ(RFIDタグ、無線ICチップ、無線通信デバイスとも称する)とを非接触方式で通信し、情報を伝達するRFIDシステムが開発されている。このRFIDシステムでは、HF帯(13MHz帯の高周波信号)を利用するのが一般的である。
【0003】
HF帯のRFIDシステムでは、リーダライターやRFIDタグに用いられるアンテナ素子として、コイルアンテナが利用されている。しかし、RFIDタグのコイルアンテナをリーダライターのコイルアンテナに近接させたとき、本来通信可能なエリア内であるにも拘わらず、あるポイント(ヌル点)では通信できない状態(ヌル状態)が発生することがある。例えば、二つのコイルアンテナが反発して共振周波数がずれたり、位相がずれたり、あるいは、RFIDタグに導体や誘電体が近接することでそのコイルアンテナの共振周波数がずれることによる。共振周波数は導体が近接すると高くなり、誘電体が近接すると低くなる。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1,2には、コイルアンテナにスイッチング素子や発振器を接続し、スイッチング素子を順次切り替えることによって、あるいは、発振器の発振周波数を順次切り替えることで、コイルアンテナ自身の共振周波数をシフトさせ、ヌル状態を回避する手法が記載されている。しかし、この場合、コイルアンテナそのものの共振周波数をシフトさせるため、コイルアンテナのQ値が低下したり、スイッチング素子や発振器のノイズがコイルアンテナに重畳してしまう不具合を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−238398号公報
【特許文献2】特開2010−154255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、コイルアンテナのQ値の低下を抑え、ノイズを少なくしてヌル状態の発生を回避でき、電気特性に優れたアンテナ装置、カード型通信デバイス及び通信端末装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明の第1の形態であるアンテナ装置は、
給電回路に接続され、固定された共振周波数を持つアンテナ共振回路を含む無線通信タグと、
前記無線通信タグとは
別体に構成されたデバイスであって、前記アンテナ共振回路に電磁界を介して結合する共振回路を含み、さらに、該共振回路自体の共振周波数を所定の周波数帯域の範囲でスイープさせるための制御回路を有している周波数可変共振素子と、
を備え
、
前記周波数可変共振素子の前記共振回路の共振周波数が連続的にスイープすることにより、前記無線通信タグの前記アンテナ共振回路の共振周波数が連続的にスイープすること、
を特徴とする。
【0008】
本発明の第2の形態であるカード型通信デバイスは、
給電回路に接続され、固定された共振周波数を持つアンテナ共振回路を含む無線通信タグとともに使用され、
前記無線通信タグとは
別体に構成されたデバイスであって、前記アンテナ共振回路に電磁界を介して結合する共振回路を含み、さらに、該共振回路自体の共振周波数を所定の周波数帯域の範囲でスイープさせるための制御回路を有している周波数可変共振素子を備
え、
前記周波数可変共振素子の前記共振回路の共振周波数が連続的にスイープすることにより、前記無線通信タグの前記アンテナ共振回路の共振周波数が連続的にスイープすること、
を特徴とする。
【0009】
本発明の第3の形態である通信端末装置は、
給電回路に接続され、固定された共振周波数を持つアンテナ共振回路を含む無線通信タグを備えた通信端末装置であって、
前記無線通信タグとは
別体に構成されたデバイスであって、前記アンテナ共振回路に電磁界を介して結合する共振回路を含み、さらに、該共振回路自体の共振周波数を所定の周波数帯域の範囲でスイープさせるための制御回路を有している周波数可変共振素子を備
え、
前記周波数可変共振素子の前記共振回路の共振周波数が連続的にスイープすることにより、前記無線通信タグの前記アンテナ共振回路の共振周波数が連続的にスイープすること、
を特徴とする。
【0010】
前記アンテナ装置においては、共振周波数が所定の周波数帯域の範囲で可変である周波数可変素子を、アンテナ共振回路に電磁界を介して結合するため、周波数可変素子の周波数がスイープすることにより、アンテナ共振回路の共振周波数がスイープする。それゆえ、ヌル状態が発生することなく、良好な状態での周波数での通信が可能となる。特に、アンテナ共振回路と周波数可変素子とは電磁界を介して結合しているため(DC的に直接接続されていないため)、コイルアンテナのQ値の低下が抑えられ、ノイズが少なくなり、電気特性に優れたアンテナ装置となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コイルアンテナのQ値の低下を抑え、ノイズを少なくしてヌル状態の発生を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施例であるアンテナ装置を示し、(A)は斜視図、(B)は等価回路図、(C)は周波数可変共振素子の回路図である。
【
図2】第1実施例であるアンテナ装置の周波数特性を示すチャート図である。
【
図3】周波数可変共振素子の共振回路における種々の回路図である。
【
図4】周波数可変共振素子の他の例を示す回路図である。
【
図5】第2実施例であるアンテナ装置を示す斜視図である。
【
図6】第3実施例であるアンテナ装置の周波数特性を示すチャート図である。
【
図7】第4実施例であるアンテナ装置を示す斜視図である。
【
図8】第4実施例であるアンテナ装置の周波数特性を示すチャート図である。
【
図9】第5実施例であるアンテナ装置を示す斜視図である。
【
図10】第5実施例であるアンテナ装置の周波数特性を示すチャート図である。
【
図11】第6実施例であるアンテナ装置を示し、(A)は斜視図、(B)は等価回路図である。
【
図12】第6実施例であるアンテナ装置を備えた通信端末装置を示し、(A)は模式的な平面図、(B)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るアンテナ装置、カード型通信デバイス及び通信端末装置の実施例について添付図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部品、部分は同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
(第1実施例、
図1〜
図4参照)
第1実施例であるアンテナ装置は、
図1に示すように、カード型の無線通信タグ10と、周波数可変共振素子21を備えたカード型通信デバイス20とで構成されている。無線通信タグ10は、給電回路11に接続されたアンテナ共振回路12を備え、該アンテナ共振回路12は並列接続されたコンデンサ13とコイルアンテナ14とで形成されている。コイルアンテナ14は少なくとも一つのループ導体を含むコイルパターンによって形成され、HF帯の高周波信号の送受信が可能な放射素子として機能する。
【0015】
給電回路11は、RFID用ICチップにて構成されており、メモリー回路やロジック回路を有しており、ベアチップICとして構成されていてもよく、パッケージICとして構成されていてもよい。
【0016】
周波数可変共振素子21は並列接続された可変容量素子22とコイル素子23とからなる並列共振回路を備え、可変容量素子22はバッテリー24を有する制御回路25に接続されている。この並列共振回路は前記アンテナ共振回路12に電磁界を介して結合している。コイル素子23は少なくとも一つのループ導体を含むコイルパターンによって形成され、前記コイルアンテナ14と磁界Mにて結合している。
【0017】
また、並列共振回路は、制御回路25から印加される駆動電圧により可変容量素子22(例えば、バリキャップとして知られている素子)の容量値を連続的に切り替えることでその共振周波数が所定の周波数帯域の範囲で可変である。制御回路25は、DAコンバータなどが用いられ、電圧を一定の周期で連続的に変化させるものが用いられる。駆動電圧は、
図1(C)に示す構成では、コイン型電池のような小型バッテリー24から供給される。
【0018】
ここで、無線通信タグ10とカード型通信デバイス20とは重ねて(コイルアンテナ14とコイル素子23とが磁界Mで結合した状態で)用いられ、これにリーダライター30のコイル状をなすアンテナ31が近接することにより(
図1(A)参照)、リーダライター30のアンテナ31と無線通信タグ10のコイルアンテナ14とが結合して高周波信号の送受信が行われる。
【0019】
無線通信タグ10単体での共振周波数は、
図2(A)の曲線Aに示すように、13.56MHzの動作周波数に合わされている。無線通信タグ10単体にリーダライター30のアンテナ31が近接すると、
図2(B)に示すように、例えば、互いに反発して無線通信タグ10の共振周波数は曲線A’にずれ、リーダライター30のアンテナ31の共振周波数は曲線B’にずれてしまう。これに対して、本第1実施例のごとく、無線通信タグ10とカード型通信デバイス20(周波数可変共振素子21)とが重ねられて磁界結合しており、周波数可変共振素子21の共振周波数が
図2(C)の曲線Cに示すように動作周波数の近辺の周波数帯域Xでスイープすると、無線通信タグ10の共振周波数も共振してスイープし(
図2(C)の曲線A’、周波数帯域Y参照)、リーダライター30のアンテナ31との通信が可能なタイミングが発生することになる。
【0020】
つまり、従来では、無線通信タグ10の共振周波数は固定であったため、動作周波数からのずれが発生すると、ヌル点が発生していた。しかし、本第1実施例では、無線通信タグ10の共振周波数が周波数可変共振素子21との結合によってスイープすることによりヌル点の発生が回避され、良好な通信状態が維持される。また、無線通信タグ10のアンテナ共振回路12と周波数可変共振素子21とは電磁界を介して結合しているため、コイルアンテナ14のQ値の低下が抑えられ、ノイズが少なくなる。なお、コイル素子23は、コイルアンテナ14と磁気的に結合しておればよく、コイルアンテナ14の外形寸法より小さくても構わない。
【0021】
また、コイルアンテナ14の共振周波数を狭い偏差で調整する必要がなくなり、無線通信タグ10の製造工数が削減され、広い偏差のアンテナを使用することが可能になる。例えば、財布に複数の無線通信タグ10が入れられていても、周波数可変共振素子21を備えた1枚のカード型通信デバイス20を重ねて入れておくだけで、複数の無線通信タグ10のそれぞれがリーダライター30と送受信可能となる。この点は、第5実施例として以下に説明する。
【0022】
周波数可変共振素子21の共振回路は
図1(B)に示す以外に種々の回路構成を採用することができる。例えば、
図3(A)には、コイル素子23に対してそれぞれ容量素子22A及び可変容量素子22を並列に接続した共振回路を示す。
図3(B)にはコイル素子23に対してそれぞれ容量素子22A及び可変インダクタ素子26を並列に接続した共振回路を示す。
図3(C)にはコイル素子23に対してそれぞれ容量素子22A及び可変容量素子22を直列に接続した共振回路を示す。
図3(D)にはコイル素子23に対してそれぞれ容量素子22A及び可変インダクタ素子26を直列に接続した共振回路を示す。
【0023】
また、前記制御回路25はリーダライター30のアンテナ31から放射される高周波信号を整流して電力として用いるものであってもよい。例えば、
図4に示すように、四つのダイオードでブリッジ整流回路27を構成し、共振回路と制御回路25との間に挿入してもよい。リーダライター30のアンテナ31から放射された高周波信号がコイル素子23に入力され、整流された電流が制御回路25に供給される。
【0024】
(第2実施例、
図5参照)
第2実施例であるアンテナ装置は、
図5に示すように、リーダライター30のカード型アンテナ31に前記第1実施例に示したカード型通信デバイス20(周波数可変共振素子21)を重ねて使用するようにしたものである。この場合、周波数可変共振素子21の共振周波数が
図2(C)の曲線Cに示したように動作周波数の近辺の周波数帯域Xでスイープすると、リーダライター30のアンテナ31の共振周波数も共振してスイープし、無線通信タグ10のコイルアンテナ14との通信が可能なタイミングが発生することになる。
【0025】
(第3実施例、
図6参照)
第3実施例であるアンテナ装置は、前記第1実施例と同様に、無線通信タグ10とカード型通信デバイス20(周波数可変共振素子21)とを重ねることによりコイルアンテナ14とコイル素子23とを電磁界結合させて用いるものである。本第3実施例では、周波数可変共振素子21の共振周波数帯域を動作周波数である13.56MHzよりも低い周波数から高い周波数までの範囲で、前記アンテナ共振回路12の共振周波数を含むように変化させるようにした(
図6(A)参照)。
【0026】
これにて、無線通信タグ10の共振周波数が周囲環境の影響で動作周波数よりも高い方に変化した場合(
図6(B)の曲線D1参照)と、低い方に変化した場合(
図6(C)の曲線D2参照)のいずれであっても、周波数可変共振素子21の共振周波数が帯域Xの範囲でスイープすることにより、無線通信タグ10の共振周波数も帯域Yでスイープし、共振周波数が13.56MHzとなるタイミングが発生し、ヌル点の発生が回避される。
【0027】
(第4実施例、
図7及び
図8参照)
第4実施例であるアンテナ装置は、
図7に示すように、1枚の無線通信タグ10に対して周波数可変共振素子21A,21Bを備えたカード型通信デバイス20A,20Bを重ねて使用するようにしたものである。第1の周波数可変共振素子21Aは、
図8(A)の曲線C1に示すように、共振周波数が動作周波数である13.56MHzよりも高い帯域X1でスイープする。第2の周波数可変共振素子21Bは、
図8(A)の曲線C2に示すように、13.56MHzよりも低い帯域X2でスイープする。
【0028】
無線通信タグ10の共振周波数が高い帯域に変化した場合は(
図8(A)の曲線D1参照)、第1の周波数可変共振素子21Aの共振周波数のスイープの影響で無線通信タグ10の共振周波数が13.56MHzとなるタイミングが発生する。また、無線通信タグ10の共振周波数が低い帯域に変化した場合は(
図8(B)の曲線D2参照)、第2の周波数可変共振素子21Bの共振周波数のスイープの影響で無線通信タグ10の共振周波数が13.56MHzとなるタイミングが発生する。これにて、いずれの場合も、ヌル点の発生が回避される。
【0029】
(第5実施例、
図9及び
図10参照)
第5実施例であるアンテナ装置は、
図9に示すように、複数枚(本例では2枚を例示している)の無線通信タグ10A,10Bに対して1枚のカード型通信デバイス20(周波数可変共振素子21)を重ねて使用するようにしたものである。
【0030】
2枚の無線通信タグ10A,10Bにあっては、
図10(A)に示すように、二つのずれた共振点A1,A2が生じ得る。これに対して、周波数可変共振素子21の共振周波数の可変帯域は前記共振点A1,A2を含むような広い範囲(
図10の帯域X参照)に設定されている。これにて、2枚の無線通信タグ10A,10Bのそれぞれの共振周波数は、いずれも、周波数可変共振素子21の共振周波数のスイープの影響でスイープし(
図10(C),(C’)参照)、13.56MHzとなるタイミングが発生し、ヌル点の発生が回避される。
【0031】
(第6実施例、
図11及び
図12参照)
第6実施例であるアンテナ装置は、
図11(A)に示すように、小型の無線通信タグ10と、該無線通信タグ10に比較して大きな面積のカード型通信デバイス20とで構成されている。カード型通信デバイス20に内蔵されている周波数可変共振素子21のコイル素子23の外形寸法は無線通信タグ10のアンテナコイル14の外形寸法よりも大きく、コイル素子23はアンテナコイル14のブーストアンテナとして機能する。本第6実施例における無線通信タグ10及び周波数可変共振素子21の基本的な構成は前記第1実施例と同様である。
【0032】
このアンテナ装置は携帯電話機などの通信端末装置に搭載される。詳しくは、
図12に示すように、通信端末装置40の筺体41に内蔵されたプリント配線板42に、バッテリー24、制御回路25、可変容量素子22が搭載され、コイル素子23(ブーストアンテナ)は基板43に設けられている。さらに、給電回路11がプリント配線板42に搭載されている。コイルアンテナ14は小さな基板44に設けられており、コイル素子23と電磁結合している。
【0033】
本第6実施例における周波数特性は、前記第1実施例で示した
図2と同様である。即ち、ブーストアンテナ付き無線通信タグ10単体での共振周波数は、
図2(A)の曲線Aに示すように、13.56MHzの動作周波数に合わされている。無線通信タグ10単体にリーダライター30のアンテナ31が近接すると、
図2(B)に示すように、例えば、互いに反発して無線通信タグ10の共振周波数は曲線A’にずれ、リーダライター30のアンテナ31の共振周波数は曲線B’にずれてしまう。これに対して、本第6実施例のごとく、無線通信タグ10とカード型通信デバイス20(周波数可変共振素子21)とが重ねられて磁気結合しており、周波数可変共振素子21の共振周波数が
図2(C)の曲線Cに示すように動作周波数の近辺の周波数帯域でスイープすると、無線通信タグ10の共振周波数も共振してスイープし(
図2(C)の曲線A’、周波数帯域Y参照)、リーダライター30のアンテナ31との通信が可能なタイミングが発生することになる。その他の作用効果は、前記第1実施例で説明したとおりである。
【0034】
(他の実施例)
なお、本発明に係るアンテナ装置、カード型通信デバイス及び通信端末装置は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0035】
特に、無線通信タグのアンテナ共振回路や周波数可変共振素子の共振回路は様々な構成のものを採用できることは勿論である。また、本発明は、HF帯のRFIDシステム用のアンテナ装置に限定されるものではなく、UHF帯など他の周波数帯や、他の通信システムにも利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、本発明は、アンテナ装置、カード型通信デバイス及び通信端末装置に有用であり、特に、コイルアンテナのQ値の低下を抑え、ノイズを少なくしてヌル状態の発生を回避できる点で優れている。
【符号の説明】
【0037】
10…無線通信タグ
11…給電回路
12…アンテナ共振回路
14…コイルアンテナ
20…カード型通信デバイス
21…周波数可変共振素子
22…可変容量素子
23…コイル素子
24…バッテリー
25…制御回路
30…リーダライター
31…アンテナ
40…無線端末装置