(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に本発明の実施形態を図面とともに説明する。なお、本発明は下記実施形態に限定されるものではなく、様々な態様にて実施することが可能である。
[実施形態]
図1は車両診断システム1の概略構成図である。
【0035】
[1.車両診断システム1の構成の説明]
車両診断システム1は、車両用情報記憶装置としての車載機10と、情報センタとしての車両情報センタ30と、から構成される。
【0036】
[1.1.車載機10の構成の説明]
車載機10は、通信機11と、表示器12と、操作器13と、各種センサ14と、サイクル記録データデータベース15と、不揮発記録データデータベース16と、記録データ層別テーブルデータベース17と、記録データカスタマイズデータベース18と、I/F19と、車両制御回路20と、ナビゲーション装置21と、GPS受信機22と、地図データ23と、制御回路24と、を備える。なお、制御回路24は、車載機10が備える各構成と電気的に接続されており、各構成とのデータの送受信および各構成の制御を実行可能である。
【0037】
通信機11は、アンテナを介して車両情報センタ30と無線方式でデータの送受信を行う。また、通信機11は、車両情報センタ30との通信が可能な状態(通信圏内)であることや車両情報センタ30との通信が不可能な状態(通信圏外)であることを制御回路24に通知する機能を有する。なお、通信機11は制御回路24とともに通信圏判定手段および送信手段に該当する。
【0038】
表示器12は、当該車載機10における各種処理の処理結果に応じて情報を表示出力する。
操作器13は、例えばスイッチやキーボードなど、当該車載機10のユーザによる操作を受け付けるためのインターフェースとして構成されている。
【0039】
各種センサ14は、当該車載機10が搭載される車両の状態情報を取得し、制御回路24に出力する。例えば、水温センサや、各種圧力センサ、車速センサ、電圧センサ、Gセンサ、ヨーレートセンサー、アクセル開度センサ、スロットル開度センサ、シフトポジションスイッチなどである。
【0040】
なお、各種センサ14は状態情報取得手段に該当する。
サイクル記録データデータベース15は、周知の書込可能なメモリとして構成されており、各種センサ14が取得した車両の状態情報をサイクル記録データとして一時記録するのに利用される。
【0041】
なお、サイクル記録データデータベース15は、一時記憶手段に該当する。
不揮発記録データデータベース16は、周知の書込可能な不揮発性のメモリとして構成されており、記録データ層別テーブルに規定される情報特定基準に基づき特定されたサイクル記録データを不揮発記録データとして記録するのに利用される。
【0042】
なお、不揮発記録データデータベース16は、所定の記憶媒体に該当する。
記録データ層別テーブルデータベース17は、周知の書込可能なメモリとして構成されており、規定テーブルとしての記録データ層別テーブルを記録するのに利用される。この記録データ層別テーブルは、サイクル記録データデータベース15に記録されるサイクル記録データの中から不具合原因の検証に用いられるべき不揮発記録データ(検証用情報)を特定するための情報特定基準を規定するテーブルであり、そのためにこの記録データ層別テーブルには、
図2(a)に例示するように、情報特定基準としての条件と記録内容とが対応付けて登録されている。なお、条件としては、システム起動時や、システムパラメータ変更、出発後特定時間、到着前特定時間、ユーザ不具合検知エリア、外部遠隔操作などが挙げられる。本実施形態では、システム起動時の具体例として、アンチロックブレーキシステムの起動時の前後15秒間や、トラクションコントロールシステムの起動時の前後15秒間、ナビゲーション機能のリルート実行時の前後30秒間、システムパラメータ変更時の具体例として、ナビゲーション機能の画面切替時の前後605秒間、出発後特定時間として出発から5分間、到着前特定時間として到着前の5分間、ユーザ不具合検知エリアとして不具合検知および通知位置を中心に半径3kmのエリア、外部遠隔操作時として車両情報センタ30のオペレータおよびサーバによる車載機10への制御信号の受信後30分間、が登録されている。また、記録内容としては、情報の記録条件や、車両LANに出力された情報、車両LANに出力された情報のタイムスタンプ、位置情報(緯度、経度、道路種別など)などが挙げられる。
【0043】
なお、記録データ層別テーブルデータベース17は規定テーブル記憶手段に該当する。
記録データカスタマイズデータベース18は、周知の書込可能なメモリとして構成されており、記録データカスタマイズテーブルを記録するのに利用される。この記録データカスタマイズテーブルは、記録データ層別テーブルに規定される記録条件を変更するための条件を規定するテーブルであり、そのためにこの記録データカスタマイズテーブルには、
図2(b)に例示するように、予め設定された走行場面が登録されている。各走行場面は、走行場面判定条件と次回以降の記録条件とが対応付けられている。また、走行場面判定条件には、道路種別、トリップ値、旅行時間および移動速度の各情報がある。なお、本実施形態では、走行場面Aとしては、道路種別として高速道路、トリップ値の具体値、旅行時間の具体値、および次回以降の記録条件として高速走行が登録されており、走行場面Bとしては、道路種別としてワインディング、トリップ値の具体値、および次回以降の記録条件としてワインディング走行が登録されており、走行場面Cとしては、旅行時間の具体値、移動速度の具体値、および次回以降の記録条件として渋滞走行が登録されている。
【0044】
車両制御回路20は、例えば、CPUを中心としてROMやRAMなどがバスを介して相互に接続されたコンピューターユニットであり、その他、内部メモリやI/Oポート、タイマー、カウンター等を備える。ROMには、CPUが実行する車両制御のためのプログラム、車両状態監視及び情報記憶処理を行なうためのプログラム、その他のプログラム、その他のデータが格納されている。車両制御回路20には、多重通信線を介して制御対象となる図示しない車載機器(アクチュエータ、エンジン、変速機、ブレーキ装置、ステアリング装置その他の機器をいう)が接続される。なお、
図1では、3つの車両制御回路20A〜20Cを図示している。例えば、車両制御回路20Cは、車載機10の各種パラメータを変更するパラメータ変更機能や、各種作動や各種変更を通知する作動・変更通知機能を実行する制御回路である。
【0045】
ナビゲーション装置21は、ナビゲーション機能を実行可能な周知の装置であり、自車の位置を検出するための周知のGPS受信機22および地図データを記憶する周知の地図データ23が接続されている。
【0046】
また、ナビゲーション装置21は、その他にも走行場面判断機能21a、自宅周辺・出発到着判断機能21b、ダイアグ特定記録エリア判断機能21cおよびダイアグ記録タイミング判断機能21dを実行可能である。なお、走行場面判断機能21aは、車載機10が搭載される車両の走行場面を判断する機能である。走行場面の具体例としては、高速走行やワインディング走行、渋滞走行などが挙げられる。また、自宅周辺・出発到着判断機能21bは、自宅周辺の出発および自宅周辺への到着を判断する機能である。また、ダイアグ特定記録エリア判断機能21cは、車載機10が搭載される車両がダイアグを特定する記録エリアに位置するか否かを判断する機能である。また、ダイアグ記録タイミング判断機能21dは、ダイアグを記録するタイミングを判断する機能である。
【0047】
制御回路24は、CPU、ROM、RAMなどを備えたマイクロコンピュータを中心に構成された周知の装置であり、上述した各部構成を制御する。この制御回路24は、ROMやRAMから読み出したプログラムに従って各種処理を実行する。また、制御回路24は、後述する車両状態情報記録処理、不具合検知監視処理および記録モード切替処理の各処理を実行する。
【0048】
また、制御回路24は、I/F19を介して車両に搭載される車両制御回路20に接続され、車両制御回路20から出力された各種信号を入力したり車両制御回路20を制御するための制御信号を出力したりすることができる。
【0049】
また、制御回路24は、不揮発記録データデータベース16に記録される不揮発記録データを読み出し、読み出した不揮発記録データをダイアグデータとして通信機11を制御して車両情報センタ30に送信させる機能を有する。
【0050】
なお、制御回路24は状態情報取得手段および制御手段に該当する。
[1.2.車両情報センタ30の構成の説明]
車両情報センタ30は、ゲートウェイ31と、ダイアグデータデータベース32と、車両管理データベース33と、を備える。
【0051】
ゲートウェイ31は、アンテナを介して車載機10と無線方式でデータの送受信を行う。なお、ゲートウェイ31は、受信手段に該当する。
ダイアグデータデータベース32は、周知の書込可能なメモリとして構成されており、ゲートウェイ31が車載機10から受信したダイアグデータを記録するのに利用される。なお、ダイアグデータデータベース32に記録されるダイアグデータについては、当該車両情報センタ30によって統計的に分析され、不具合の原因を特定するのに用いられる(不具合検出、
図6参照)。なお、ダイアグデータデータベース32は、検証用情報記憶手段に該当する。
【0052】
車両管理データベース33は、周知の書込可能なメモリとして構成されており、ダイアグデータデータベース32に記録されるダイアグデータが当該車両情報センタ30によって統計的に分析された結果を車両管理データとして記録するのに利用される。
【0053】
なお、車両情報センタ30は分析手段に該当する。
[2.車両診断システム1が実行する各種処理の説明]
次に、車両診断システム1が実行する各種処理について説明する。
【0054】
[2.1.車両状態情報記録処理の説明]
まず、車載機10の制御回路24が実行する車両状態情報記録処理を、
図3のフローチャートを参照して説明する。
【0055】
本処理は、図示しない車両のアクセサリ電源がオンとなり車載機10に電源供給された場合に他の処理からは独立して実行される。
まず、最初のステップS110では、車両の状態情報を監視・記録するためのシステムを起動する。このシステムは、制御回路24が車両の状態情報を監視・記録するためのプログラムをRAMから読み出して実行することにより起動する。
【0056】
続くS120では、車両の不具合の監視・記録を行なう条件を設定する。具体的には、記録データ層別テーブルデータベース17が記憶する記録データ層別テーブルを読み出し、読み出した記録データ層別テーブルに規定されている情報特定基準(条件および記録内容)を車両の不具合の監視・記録を行なう条件として設定する。
【0057】
続くS130では、設定した条件に基づき、車両の不具合の監視・記録を開始する。具体的には、各種センサ14が取得した車両の状態情報を監視するとともに、取得した車両の状態情報をサイクル記録データとしてサイクル記録データデータベース15に一時記録する。
【0058】
続くS140では、不揮発記録データデータベース16に記録するための条件(S120で設定された条件)に一致するか否かを判断する。本実施形態では、
図2(a)に例示する記録データ層別テーブルに登録されている条件(システムが起動した場合、システムパラメータが変更された場合、出発後の特定時間になった場合、到着前の特定時間になった場合、自車両がユーザによって不具合が検知されたエリアに位置する場合、外部遠隔操作が行われた場合)の何れかの条件が満たされた場合に肯定判断される。
【0059】
不揮発記録データデータベース16に記録するための条件に一致すると判断する場合には(S140:YES)、サイクル記録データデータベース15に記録されるサイクル記録データのうち、満たすと判断された条件に対応する記録内容に合致するサイクル記録データを検索して読み出し、読み出したサイクル記録データを不揮発記録データとして不揮発記録データデータベース16に記録し(S170)。後述するS150に移行する。
【0060】
一方、不揮発記録データデータベース16に記録するための条件に一致しないと判断する場合には(S140:NO)、そのままS150に移行する。
S150では、サイクル記録データを記録する位置がサイクル記録データデータベース15の終端に到達したか否かを判断する。
【0061】
サイクル記録データを記録する位置がサイクル記録データデータベース15の終端に到達したと判断する場合には(S150:YES)、サイクル記録データを記録する位置をサイクル記録データデータベース15の始端に変更してサイクル記録データデータベース15への上書きを開始し(S160)、S140に移行する。
【0062】
一方、サイクル記録データを記録する位置がサイクル記録データデータベース15の終端に到達していないと判断する場合には(S150:NO)、引き続きサイクル記録データデータベース15への記録を実行することとし、S140に移行する。
【0063】
[2.2.不具合検知監視処理の説明]
次に、車載機10の制御回路24が実行する不具合検知監視処理を、
図4のフローチャートを参照して説明する。
【0064】
本処理は、図示しない車両のアクセサリ電源がオンとなり車載機10に電源供給された場合に、車両状態情報記録処理などの他の処理からは独立して繰り返し実行される。
まず、最初のステップS210では、ユーザによる不具合を検知した旨の入力またはオペレータの遠隔操作による指示コマンドの入力を受け付ける。なお、ユーザによる入力は操作器13に対して行われる。また、指示コマンドは、不具合を検知したユーザによる連絡を受けた車両情報センタ30のオペレータが車載機10に送信する。ユーザによる入力または指示コマンドの入力を受け付けるまで待機し、受け付けた場合にはS220に移行する。
【0065】
続くS220では、ユーザに検知された不具合の原因の特定が可能か否かを判断する。なお、不具合の原因を特定する手法については公知技術に従うものとしてここではその詳細な説明は省略する。
【0066】
不具合の原因が特定可能であると判断された場合には(S220:YES)、その旨のユーザへの通知またはシステム内での記録を実行し(S270)、本処理を終了する。
一方、不具合の原因が特定不可能であると判断された場合には(S220:NO)、S230に移行する。
【0067】
S230では、自車両の現在位置および直前の経路をRAMなどに記録する。
続くS240では、S230で記録した記録内容(自車両の現在位置および直前の経路)に基づき、道路種別、トリップ値、旅行時間および移動速度の各層別を実行する。
【0068】
続くS250では、
図2(b)に示す記録データカスタマイズテーブルを参照して、次回以降に記録する走行場面を選択する。
続くS260では、車両状態情報記録処理で用いる条件を、S250で選択した走行場面に対応する記録条件に変更する。
【0069】
そして、本処理を終了する。
[2.3.記録モード切替処理の説明]
次に、車載機10の制御回路24が実行する記録モード切替処理を、
図5のフローチャートを参照して説明する。
【0070】
本処理は、図示しない車両のアクセサリ電源がオンとなり車載機10に電源供給された場合に、上述の車両状態情報記録処理や不具合検知監視処理などの他の処理からは独立して実行される。
【0071】
まず、最初のステップS310では、自車両が車両情報センタ30との通信圏内に位置するか否かを判断する。
自車両が車両情報センタ30との通信圏内に位置せずに通信圏外に位置すると判断する場合には(S310:NO)、データ記録の方法を「圏外記録」へ変更し(S340)、S320に移行する。なお、圏外記録では、記録データ層別テーブルに規定される情報特定基準に基づき特定されたサイクル記録データを不揮発記録データとして記録する際に、間引きすることで限定しながら不揮発記録データデータベース16に記録する。
【0072】
一方、自車両が車両情報センタ30との通信圏内に位置すると判断する場合には(S310:YES)、そのままS320に移行する。
S320では、レベル1の不具合を検知したか否かを判断する。なお、「レベル1」とは、不具合を深刻度に応じてレベル分けした場合に、その深刻度が最も高い不具合に付されるレベルである。
【0073】
レベル1の不具合を検知したと判断する場合には(S320:YES)、データ記録の方法を「詳細データ記録」へ変更し(S350)、S330に移行する。なお、詳細データ記録では、上述の圏外記録とは異なり、記録データ層別テーブルに規定される情報特定基準に基づき特定されたサイクル記録データを限定せずにそのまま不揮発記録データとして不揮発記録データデータベース16に記録する。
【0074】
一方、レベル1の不具合を検知していないと判断する場合には(S320:NO)、そのままS330に移行する。
S330では、車両の状態を監視する。具体的には、設定された記録方法に従って、記録データ層別テーブルに規定される情報特定基準に基づき特定されたサイクル記録データを不揮発記録データとして不揮発記録データデータベース16に記録する。
【0075】
そして、S310に戻る。
[2.4.改善地点検知処理の説明]
次に、改善地点検知処理を、
図7のフローチャートを参照して説明する。
【0076】
この改善地点検知処理は、車載機10の制御回路24が実行する経路選択判定処理(
図7(a)参照)、車載機10の制御回路24が実行する運転操作判定処理(
図7(b)参照)および車両情報センタ30が実行するセンタ統計処理(
図7(c)参照)から構成される。以下、順に説明する。
【0077】
[2.4.1.経路選択判定処理の説明]
まず、車載機10の制御回路24が実行する経路選択判定処理を、
図7(a)のフローチャートを参照して説明する。
【0078】
まず、最初のステップS410では、経路案内を実行するタイミングを検知する。
続くS420では、分岐案内を所定のタイミングで実行する。
続くS430では、S420の案内通りの経路が選択されたか否かを判断する。
【0079】
案内通りの経路が選択された場合には(S430:YES)、S410に戻る。
一方、案内通りの経路が選択されなかった場合には(S430:NO)、S440に移行する。
【0080】
S440では、S420の案内通りの経路が選択されなかった場所を特定して、その特定された場所を記録する。
続くS450では、S440で記録された場所を不一致判定として情報センタに通知する。なお、不一致判定に、その場所での案内内容(案内画面ID)や、案内経路(経路案内)、進入路(経路案内)、退出路(経路案内)、退出路(実際のユーザの走行路)、そのときの運転環境(進入時刻、退出時刻、時間帯など)とともに、車両情報センタ30に通知してもよい。
【0081】
そして、S410に戻る。
[2.4.2.運転操作判定処理の説明]
次に、車載機10の制御回路24が実行する運転操作判定処理を、
図7(b)のフローチャートを参照して説明する。
【0082】
まず、最初のステップS510では、走行支援アドバイスを実行するタイミングを検知する
続くS520では、走行支援案内を所定のタイミングで実行する。
【0083】
続くS530では、案内通りの運転操作が実行されたか否かを判断する。
案内通りの運転操作が実行された場合には(S530:YES)、S510に戻る。
一方、案内通りの運転操作が実行されなかった場合には(S530:NO)、S540に移行する。
【0084】
S540では、S520の案内通りの運転操作が実行されなかった場所を特定して、その特定された場所を記録する。
続くS550では、S540で記録された場所を不一致判定として情報センタに通知す
る。なお、不一致判定に、その場所での案内内容(走行道路地
図ID、走行支援案内ID)や、そのときの運転環境(進入時刻、退出時刻、時間帯、案内後の速度度、加速度、案内後のアクセル操作、ブレーキ操作情報、案内後のユーザ操作など)とともに、車両情報センタ30に通知してもよい。
【0085】
そして、S510に戻る。
[2.4.3.改善地点検知処理の説明]
次に、車両情報センタ30が実行する改善地点検知処理を、
図7(c)のフローチャートを参照して説明する。
【0086】
まず、最初のステップS610では、車載機10から不一致判定を受信する。
S620では、位置層別通知カウントを実行する。具体的には、受信した不一致判定を同一地点ごとに集計することにより、受信した不一致判定に対応する場所での不一致判定の発生回数をインクリメントする。
【0087】
続くS630では、数値Nが判定値よりも大きいか否かを判定する。具体的には、不一致判定が所定値以上ある地点が存在するか否かを判定することで、受信した不一致判定に対応する場所での不一致判定の発生回数である数値Nが判定値(所定値)よりも大きいか否かを判定する。
【0088】
数値Nが判定値以下である場合には(S630:NO)、S610に戻る。
一方、数値Nが判定値よりも大きい場合には(S630:YES)、S640に移行する。
【0089】
S640では、S630で数値Nが判定値よりも大きいと判定された地点(不一致判定が所定値以上ある地点)を、経路案内や走行支援の内容を改善する必要がある地点(改善地点)として記録する。なお、改善地点を記憶する際に、改善地点で不一致判定を発生されたユーザに関する情報(ユーザ情報)として、ユーザの年齢や性別、その場所の属性(住宅地、自宅、職場など)、ユーザが走り慣れたエリアであるか否かなどの各種情報を車載機10から取得して一緒に記録しておくようにしてもよい。また、上述のように改善地点を検出した後には、車両情報センタ30が、ナビゲーションの案内図や、改善地点に対応する走行支援アドバイスの改修版を車載機10に配信することで日常的な改善を実施するようにしてもよい。
【0090】
そして、S610に戻る。
なお、改善地点検知処理においては、車載機10の表示器12および制御回路24がアドバイス案内手段に該当し、各種センサ14が運転操作検出手段に該当し、制御回路24が運転操作判定手段および判定結果通知手段に該当する。また、車両情報センタ30が判定結果集計手段、不一致回数判定手段および改善地点記録手段に該当する。
【0091】
[3.実施形態の効果]
(1)このように本実施形態の車両診断システム1によれば、車載機10が、記録データ層別テーブルに登録されている条件(システムが起動した場合、システムパラメータが変更された場合、出発後の特定時間になった場合、到着前の特定時間になった場合、自車両がユーザ不具合検知エリアに位置する場合、外部遠隔操作が行われた場合)の何れかの条件が満たされた場合に、不揮発記録データデータベース16に記録するための条件に一致すると判断し(S140:YES)、サイクル記録データデータベース15に記録されるサイクル記録データのうち、満たすと判断された条件に対応する記録内容に合致するサイクル記録データを検索して読み出し、読み出したサイクル記録データを不揮発記録データとして不揮発記録データデータベース16に記録する(S170)。
【0092】
上述のようなシステムが起動した場合や、システムパラメータが変更された場合、出発後の特定時間になった場合、到着前の特定時間になった場合、自車両がユーザ不具合検知エリアに位置する場合、外部遠隔操作が行われた場合には、発生頻度または検知頻度が低く再現および原因特定が困難な不具合が発生することがあり、本実施形態の車両診断システム1によれば、発生頻度または検知頻度が低く再現および原因特定が困難な不具合の原因究明に寄与する車両の状態情報を記録することができる。
【0093】
(2)また、本実施形態の車両診断システム1によれば、ユーザによる不具合を検知した旨の入力またはオペレータの遠隔操作による指示コマンドの入力を受け付け(S210)、不具合の原因が特定不可能である場合には(S220:NO)、自車両の現在位置および直前の経路に基づき、道路種別、トリップ値、旅行時間および移動速度の各層別を実行し(S240)、記録データカスタマイズテーブルを参照して、次回以降に記録する走行場面を選択し、車両状態情報記録処理で用いる条件をその選択した走行場面に対応する記録条件に変更する。このことにより、発生頻度または検知頻度が低く再現および原因特定が困難な不具合の原因究明に寄与する車両の状態情報を記録することができる。
【0094】
(3)また、本実施形態の車両診断システム1によれば、自車両が車両情報センタ30との通信圏内に位置せずに通信圏外に位置すると判断する場合には(S310:NO)、データ記録の方法を「圏外記録」へ変更し(S340)、記録データ層別テーブルに規定される情報特定基準に基づき特定されたサイクル記録データを間引きすることで限定しながら不揮発記録データとして不揮発記録データデータベース16に記録する。また、自車両が車両情報センタ30との通信圏内に位置すると判断する場合には(S310:YES)、データ記録の方法を「詳細データ記録」へ変更し(S350)、上述の圏外記録とは異なり、記録データ層別テーブルに規定される情報特定基準に基づき特定されたサイクル記録データを限定せずにそのまま不揮発記録データとして不揮発記録データデータベース16に記録する。このことにより、不揮発記録データデータベース16の記憶容量が小さく、車載機10が車両情報センタ30との通信が不可能な通信圏外に位置して車両情報センタ30に不揮発記録データをダイアグデータとして送信して保存させることが不可能な状況において、特定する不揮発記録データを減らすことで、破棄する不揮発記録データの量を極力減少させることができる。
【0095】
(4)また、本実施形態の車両診断システム1によれば、車両情報センタ30が、車載機10から受信したダイアグデータをダイアグデータデータベース32に記録し、ダイアグデータデータベース32に記録されるダイアグデータについては、統計的に分析して不具合の原因を特定するのに用いる。このことにより、発生頻度または検知頻度が低く再現および原因特定が困難な不具合の原因を究明することができる。
【0096】
(5)また、本実施形態の車両診断システム1によれば、改善地点検知処理を実行することによって、車両への運転操作に関するアドバイスのうち設計上の不具合ではないがユーザの意図とは合わないものを検出して記録しておくことで、上述のような車両への運転操作に関するアドバイスの改善点を効果的に抽出することができる。
【0097】
そして、例えば、抽出された情報を利用することで、その地点での現地確認等により、システムの改善(案内図が分かりにくい、勾配や周辺車両の走行状況との兼ね合いなどでそれに従えない等)の不適切な点を把握して最適化を計ることができる。
【0098】
例えば、分岐案内時に交差点拡大図をシステムが自動表示したのに対して、拡大表示消去を機能させるSWをユーザが押下した場合や、分岐案内を実行したにも関わらず、その案内とは異なる分岐(直進に対して右左折等)となる運転操作をユーザがした事例が多数抽出された場合に、この改善地点において、リルート案内を実行するように改善することができる。
【0099】
また、走行支援時に、前方急カーブに対して減速をアドバイスをしたのに対して、ユーザが速度超過を維持したり逆に加速を始めたりするなどのアクセル操作をした事例が多数抽出された場合に、この改善地点において、安全運転アドバイスであるが、エコ運転アドバイスでは、急加速抑制や速度一定、減速開始などのアドバイスを行うように改善することができる。