(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
<基本概念>
図1は、本発明に係る超電導電力変換器の基本構成単位となる半素子1を示す図である。
図2は、半素子1において実現される第1の状態(状態1)と第2の状態(状態2)とを示す図である。
【0017】
図1に示すように、半素子1は、2個の超電導素子2(一方を第1超電導素子2A、他方を第2超電導素子2Bとする)を並列させ、それぞれの超電導素子2の一方側を共通端子Tとし、第1超電導素子2Aの他方端を端子Ta、第2超電導素子2Bの他方端を端子Tbとした回路素子である。なお、第1超電導素子2Aおよび第2超電導素子2Bをそれぞれ記号A、Bにて表す場合がある。また、第1超電導素子2Aおよび第2超電導素子2Bの臨界磁場をそれぞれHca、Hcbとする。
【0018】
超電導素子2は、半素子1の使用態様・使用環境などに応じて、あるいは半素子1自体の設計上の要請などに応じて、バルク、線材、薄膜素子といった種々の形態を採ることができる。また、超電導素子2の構成材料としては、BSCCO−2223、BSCCO−2212、YBCO、MgB
2のような高温超電導材料を用いるのが好適な一例であるが、Nb−Ti合金やNb
3Sn金属間化合物のような低温超電導材料を用いることも可能である。ただし、後述する非超電導状態の抵抗に関する要件をクリアすることが必要とされる。
【0019】
また、半素子1には、2つの超電導素子2のそれぞれに対応させて、2つのスイッチSSが備わる。スイッチSSは、超電導素子2を臨界温度以下に冷却した状態で、オン・オフを切り換えることによって、対応する超電導素子2を超電導状態と非超電導状態との間で遷移させる(スイッチングさせる)機能を有する。なお、本明細書においては、超電導素子2が非超電導状態になる場合をオン状態と称し、超電導状態が保たれる場合をオフ状態と称することとする。なお、スイッチSSと超電導素子2とは一体に構成される態様であってもよいし、別体のものとして設けられる態様であってもよい。
【0020】
係るスイッチングは、対応する超電導素子2の臨界磁場を超える磁場をパルス的に与えることで行われるのが好適な一例である。この場合の超電導素子2の超電導・非超電導状態間の遷移速度は非常に速く、後述するような、交流電源の周波数に同期したスイッチングを十分に実現することができる。また、パルス磁場の印加によって非超電導状態となった超電導素子2においては大きなインダクタンスが生じて位相が遅れ、電流が流れにくくなる。このことは、後述する超電導電力変換器において、負荷への電流投入がより有効になされることに寄与する。あるいは、スイッチングは、臨界磁場を越えるピーク値を有する磁場を時間的に周期的に印加することによって行われてもよい。
【0021】
図1に示す構成を有する半素子1について、それぞれの超電導素子2を臨界温度以下に冷却した状態で、
図2に示す第1の状態と第2の状態とを周期的に切り替える場合を考える。なお、第1の状態とは、第1超電導素子2Aについては超電導状態(抵抗ゼロ)を保ちつつも、第2超電導素子2Bに対しては臨界磁場Hcb以上の磁場を印加して非超電導状態(抵抗R
B)とするものであり、第2の状態とは、第2超電導素子2Bについては超電導状態(抵抗ゼロ)を保ちつつも、第1超電導素子2Aに対しては臨界磁場Hca以上の磁場を印加して非超電導状態(抵抗R
A)とするものである。これは、半素子1に備わる2つのスイッチSSの一方がオン状態にあるときには他方がオフ状態となるように、すなわち2つのスイッチSSのオン状態が排他的とされることで実現される。係る周期的な切り替えを行った場合、状態1および状態2のいずれにおいても、超電導状態にある超電導素子2にはほぼ100%に近い電流が流れ、他方の非超電導状態の超電導素子2には非常に小さい電流のみが流れる。
【0022】
また、この半素子1に直流電圧を印加し、一方の超電導素子2(例えば第2超電導素子2B)を常に超電導状態に保つ一方、他方の超電導素子2(例えば第1超電導素子2A)には、ピーク値が臨界磁場を超えるような磁場を時間的に周期的に印加した場合には、後者の超電導素子2を通過する電力波形は交流となる。このことは、直流電力の一部分を交流電力に変換して取り出せることを示唆している。
【0023】
<電力変換器の構成>
図3は、上述のような半素子1を用いて構成される超電導電力変換器10の構成を模式的に示す図である。
【0024】
超電導電力変換器10は、2つの半素子1(これらをそれぞれ第1の半素子1Xおよび第2の半素子1Yとする)を用いて構成される。なお、説明の便宜上、第2の半素子1Yの2つの超電導素子2を、第1超電導素子2A’および第2超電導素子2B’とする。すなわち、第1超電導素子2A’および第2超電導素子2B’はそれぞれ、第1の半素子1Xの第1超電導素子2Aおよび第2超電導素子2Bと等価である。さらにいえば、第2の半素子1Yは、それぞれの超電導素子2の一方側を共通端子T’とし、第1超電導素子2A’の他方端を端子Ta’、第2超電導素子2B’の他方端を端子Tb’とした回路素子である。また、第1の半素子1Xに備わる2つのスイッチSSのうち、第1超電導素子2Aに対応するものをスイッチSS1とし、第2超電導素子2Bに対応するものをスイッチSS2とする。第2の半素子1Yに備わる2つのスイッチSSのうち、第1超電導素子2A’対応するものをスイッチSS4とし、第2超電導素子2B’に対応するものをスイッチSS3とする。
【0025】
超電導電力変換器10は、2つの半素子1を反対称に接続することにより構成されてなる。具体的に言えば、
図3に示すように、第1の半素子1Xの第1超電導素子2Aの側の接続端Taと第2の半素子1Yの第2超電導素子2B’の側の接続端Tb’とが接続されるとともに、第1の半素子1Xの第2超電導素子2Bの側の接続端Tbと第2の半素子1Yの第2超電導素子2A’の側の接続端Ta’とが接続された構成を有する。前者の接続がなされる箇所を第1の接続部と称し、後者の接続がなされる箇所を第2の接続部と称することとする。
【0026】
係る構成の超電導電力変換器10においては、2つの共通端子T、T’の間に、電源電圧を印加するようになっている。さらには、第1の接続部の接続点Pと第2の接続部の接続点Qとの間に、負荷(記号Zで表す場合がある)3を接続するようになっている。
【0027】
以上のような構成を有する超電導電力変換器10においては、共通端子T、T’の間に印加される電源電圧の種類およびスイッチSSにおけるスイッチングの仕方によって、種々の態様での電力変換が実現される。以下、順にこれを説明する。
【0028】
<第1の実施の形態:直流→交流変換>
本実施の形態においては、超電導電力変換器10において実現される直流→交流変換、すなわち直流電流を入力し、負荷3において交流電流を取り出す態様について説明する。
【0029】
図4は、直流電源V1を接続した超電導電力変換器10において直流→交流変換を行う場合のスイッチングの様子を示す図である。なお、図示の簡単のため、スイッチSSは省略している。また、電源電流(全電流)をI
0、超電導素子2A、2B、2A’、2B’を流れる部分電流をそれぞれi
A、i
B、i
A’、i
B’、負荷3を接続点Pから接続点Qに向けて流れる部分電流をi
Zとし、負荷3の抵抗をR
Zとする。
図4(a)が、2つの半素子1(1X、1Y)が第1の状態にある場合を示しており、
図4(b)が、2つの半素子1(1X、1Y)が第2の状態にある場合を示している。
【0030】
半素子1X、1Yが
図4(a)に示す第1の状態をとるとき、全電流と部分電流との間には次の関係が成り立つ。
【0031】
I
0=i
A+i
B=i
A’+i
B’=i
B+i
B’+i
Z (1)
また、超電導状態にある第1超電導素子2A、2A’における電圧降下はゼロであるので、第2超電導素子2B、2B’と、負荷3とにおける電圧降下は等しくなり、次の関係が成り立つ。
【0032】
i
ZR
Z=i
BR
B=i
B’R
B (2)
また、第2超電導素子2B、2B’、および負荷3における消費電力をそれぞれ、W
B、W
B’、W
Zとすると、以下の各式が得られる。
【0033】
W
B=i
B2R
B (3)
W
B’=i
B’
2R
B (4)
W
z=i
z2R
z (5)
従って、第2超電導素子2Bと負荷3との消費電力比は、(2)(3)(5)式より、次式のようになる。
【0034】
W
B/W
z=i
B2R
B/i
z2R
z=i
B/i
z=R
z/R
B (6)
同様に、第2超電導素子2B’と負荷3との消費電力比は、次式のようになる。
【0035】
W
B’/W
z=i
B’/i
z=R
z/R
B (7)
また、半素子1X、1Yが
図4(b)に示す第2の状態をとるときは、次の関係が成り立つ。
【0036】
I
0=i
A+i
B=i
A’+i
B’=i
A+i
A’−i
Z (8)
−i
ZR
Z=i
AR
A=i
A’R
A (9)
さらに、非超電導状態にある第2超電導素子2A、2A’、および負荷3における消費電力をそれぞれ、W
A、W
A’とすると、次式が得られる。
【0037】
W
A/W
z=W
A’/W
z=R
z/R
A (10)
ここで、(9)式が成り立つためにはi
Z≦0がみたされることが必要である。これは、第1の状態においては負荷3では接続点Qから接続点Pに向けて電流が流れるのに対して、第2の状態においては、負荷3では接続点Qから接続点Pに向けて電流が流れることを意味している。
【0038】
また、(6)(7)(10)式は、R
z≪R
A、R
Bがみたされれば第2超電導素子2における電力消費が負荷3における電力消費よりも著しく小さくなることを指し示している。なお、第1の状態および第2の状態ともに、常に並列する2つの第2超電導素子2が非超電導状態にあることになるので、より詳細に言えば、R
z≪R
A/2、R
B/2がみたされる必要があるが、R
A、R
BがR
zに対して十分に大きければ、係る要件を実質的に満たすものといえる。
【0039】
例えば、R
z/R
A=R
z/R
B=1/1000であれば、第2超電導素子2における電力消費は、負荷3における電力消費の1/1000となる。換言すれば、R
z≪R
A、R
Bがみたされれば、第1の状態および第2の状態のいずれにおいても、超電導状態にある超電導素子2および負荷3に全電流I
0にほぼ匹敵する電流が流れ、非超電導状態にある超電導素子2にはほとんど電流が流れないことになる。
【0040】
従って、R
z≪R
A、R
Bという条件の下で、4つのスイッチSS1〜SS4をオン/オフ動作させ、
図4(a)に示した状態と
図4(b)に示した状態との間の遷移を周期的に行うようにすることで、負荷3を流れる部分電流i
Zは、係るスイッチングの周期と等しい周期を有し、かつ振幅がI
0にほぼ等しい交流電流となる。なお、パルス磁場を印加した場合、非超電導状態となった超電導素子2においては大きなインダクタンスが生じて位相が遅れるので、非超電導状態となった超電導素子2にはより電流が流れにくくなる。
【0041】
図5は、係るスイッチングを行った場合の、超電導電力変換器10における諸特性の変化を例示する図である。具体的には、
図5(a)は電源電流の時間変化を、
図5(b)はスイッチSS1、SS4のオン/オフに対応する第1超電導素子2A、2A’における抵抗の時間変化を、
図5(c)はスイッチSS2、SS3のオン/オフに対応する第2超電導素子2B、2B’における抵抗の時間変化を、
図5(d)は負荷3に流れる部分電流の時間変化を、それぞれ例示している。ただし、I≒I
0である。なお、
図5においては、時刻0においてスイッチSS1およびSS4がオン状態とされる一方でスイッチSS2、SS3がオフ状態とされることで、第2の状態が実現され、その後、一定周期で第1の状態と第2の状態とが交互に実現される場合を例示している。なお、簡単のため、各超電導素子2における抵抗の時間変化は方形的であるとしている。
【0042】
すなわち、上述のようなスイッチングを行うことで、電力損失を十分に抑制しつつ、負荷3において所望の周波数の交流電流を与えることができる。すなわち、高い変換効率にて直流から交流への電力変換が実現される。
【0043】
次に、R
z≪R
A、R
Bという要件をみたす超電導素子2について説明する。超電導素子2の断面積をS、長さをL、非超電導状態における比抵抗をρ、抵抗をRとすると、次式が成り立つ。
【0044】
R=(L/S)ρ (11)
すなわち、原理的には、超電導素子2の断面積Sを小さくし、長さLを長くすれば、いわゆる形状効果にて、抵抗Rはそれらの関数としていくらでも大きな値を取り得る。従って、超電導電力変換器10に接続しようとする負荷3に応じて、R
z≪R
A、R
Bという要件をみたす超電導素子2を用意することが可能である。例えば、BSCCO−2223、BSCCO−2212、YBCO、MgB
2のような高温超電導材料は、半導体的、絶縁体的であり比抵抗が大きいことが知られているので、これらの材料にて超電導素子2を構成することが好ましい。もちろん、超電導特性の向上その他の目的で、これらの超電導材料に銀、金、銅、アルミニウム、あるいはそれらの合金、またはステンレスなどの常電導金属が付与されていてもよい。
【0045】
現実的には、例えば、YBCO coated conductorのような実用素子を用いた場合に、ρ=30mΩcm、S=0.01cm
2とすれば、L=1000cmの素子を用いることでR=3kΩとなるので、十分に大きな抵抗を確保することができる。もちろん、Nb−Ti合金やNb
3Sn金属間化合物のような低温超電導材料についても、(11)式から導かれるいわゆる形状効果により抵抗を大きくできるので、負荷3の種類や動作環境などによってはこれらの材料を用いて超電導素子2を構成する態様であってもよい。
【0046】
また、負荷3として接続する電力機器としては、該負荷3がインピーダンスとなることから、直流抵抗が低いものが好ましい。なかでも、大電流型の制御が必要となる超電導機器が、これにふさわしいといえる。例えば、超電導コイルによる電機子やローターバーによって構成される機器の場合、直流抵抗は現実的には1Ω程度である。こうした超電導機器を負荷3として用いた場合、非超電導状態となった超電導素子2への電流流入および該超電導素子2における電力消費がより好適に抑制される。
【0047】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、排他的に超電導状態と非超電導状態とが実現される2つの超電導素子が並列接続された2つの半素子を、反対称に接続してなる超電導電力変換器を用いて、電力損失を十分に抑制しつつ、直流から交流への電力変換を実現することができる。
【0048】
<第2の実施の形態:交流→直流変換>
本実施の形態においては、超電導電力変換器10を用いて実現される交流→直流変換、すなわち交流電流を入力し、負荷3において直流電流を取り出す態様について説明する。
【0049】
図6は、交流電源V2を接続した超電導電力変換器10において交流→直流変換を行う場合のスイッチングの様子を示す図である。
図6(a)が、2つの半素子1(1X、1Y)が第1の状態にあり、かつ交流電源V2を印加した際の極性が、共通端子Tの側がプラスで共通端子T’の側がマイナスである場合を示しており、
図6(b)が、2つの半素子1(1X、1Y)が第2の状態にあり、かつ交流電源V2を印加した際の極性が、共通端子Tの側がマイナスで共通端子T’の側がプラスである場合を示している。なお、図示の簡単のため、電力消費に寄与することのない、超電導状態にある超電導素子2(
図6(a)の場合は第1超電導素子2A、2A’、
図6(b)の場合は第2超電導素子2B、2B’)とスイッチSSとについては省略している。
【0050】
図6(a)に示す場合においては、共通端子Tおよび共通端子T’における極性が、直流電源V1を印加した第1の実施の形態と同じであり、しかも、半素子1X、1Yが第1の状態となっているので、
図4(a)に示したときと同様に、R
z≪R
A、R
Bという条件をみたせば、共通端子Tから共通端子T’に向けて電流が流れる途中で、負荷3には、接続点Pから接続点Qに向かう電流が流れる。
【0051】
これに対し、共通端子TおよびT’における極性が、
図6(a)に示す場合と反転している場合においては、共通端子T’から共通端子Tに向けて電流が流れることになるが、このときに、
図6(b)に示すように半素子1X、1Yを第2の状態とすれば、
図6(a)に示す場合と同様に、負荷3には接続点Pから接続点Qに向かう電流が流れることになる。
【0052】
以上のことを利用すると、R
z≪R
A、R
Bという条件のもとで、交流電源V2の極性変化に合わせて4つのスイッチSS1〜SS4をオン/オフ動作させ、
図6(a)に示した状態と
図6(b)に示した状態との間のスイッチングを周期的に行うようにすることで、負荷3を流れる部分電流i
Zは、常に一定の方向に流れ、大きさが電源電流の振幅にほぼ等しい直流電流となる。なお、この場合において、非超電導状態にある超電導素子2における電力消費が負荷3における電力消費に比して十分に小さいことは、第1の実施の形態と同様であることは明らかである。
【0053】
図7は、係るスイッチングを行った場合の、超電導電力変換器10における諸特性の変化を例示する図である。具体的には、
図7(a)は電源電流の時間変化を、
図7(b)はスイッチSS1、SS4のオン/オフに対応する第1超電導素子2A、2A’における抵抗の時間変化を、
図7(c)スイッチSS2、SS3のオン/オフに対応する第2超電導素子2B、2B’における抵抗の時間変化を、
図7(d)は負荷3に流れる部分電流の時間変化を、それぞれ例示している。ただし、簡単のため、電源電流は振幅I
0の方形波であるとする。また、I≒I
0である。なお、
図7においては、時刻0においてスイッチSS1およびSS4がオン状態とされる一方でスイッチSS2、SS3がオフ状態とされることで、第2の状態が実現され、その後、一定周期で第1の状態と第2の状態とが交互に実現される場合を例示している。
【0054】
上述のようなスイッチングを行うことで、電力損失を十分に抑制しつつ、負荷3において所望の周波数の直流電流を取り出すことができる。すなわち、高い変換効率にて交流から直流への電力変換が実現される。
【0055】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、排他的に超電導状態と非超電導状態とが実現される2つの超電導素子が並列接続された2つの半素子を、反対称に接続してなる超電導電力変換器を用いて、電力損失を十分に抑制しつつ、交流から直流への電力変換を実現することができる。
【0056】
<第3の実施の形態:位相変換>
本実施の形態においては、超電導電力変換器10を用いて実現される位相変換、すなわち交流電流を入力し、負荷3において異なる位相の交流電流を取り出す態様について説明する。
【0057】
図8は、交流電源V2を接続した超電導電力変換器10において交流電流の位相変換を行う場合のスイッチングの様子を示す図である。
図8(a)は、半素子1X、1Yが第1の状態にあり、かつ交流電源V2を印加した際の極性が、共通端子Tの側がプラスで共通端子T’の側がマイナスである場合を示している。
図8(b)は、半素子1X、1Yが第2の状態にあり、かつ交流電源V2を印加した際の極性が、共通端子Tの側がプラスで共通端子T’の側がマイナスである場合を示している。
図8(c)は、半素子1X、1Yが第1の状態にあり、かつ交流電源V2を印加した際の極性が、共通端子Tの側がマイナスで共通端子T’の側がプラスである場合を示している。
図8(d)は、半素子1X、1Yが第2の状態にあり、かつ交流電源V2を印加した際の極性が、共通端子Tの側がマイナスで共通端子T’の側がプラスである場合を示している。なお、図示の簡単のため、
図8においても、電力消費に寄与することのない、超電導状態にある超電導素子2と、スイッチSSとについては省略している。
【0058】
R
z≪R
A、R
Bという条件をみたすとき、
図8(a)に示す場合および
図8(d)に示す場合においては、負荷3には接続点Pから接続点Qに向かう電流が流れる。
図8(b)に示す場合および
図8(c)に示す場合においては、負荷3には接続点Qから接続点Pに向かう電流が流れる。この場合において、
図8(a)、
図8(b)、
図8(c)、および
図8(d)に示す状態をこの順に繰り返すと、超電導素子2の超電導状態と非超電導状態との間のスイッチングは次の状態に遷移するたびに行われるが、電源電流の向きが変わるのは
図8(b)から
図8(c)へ状態が遷移する場合と
図8(d)から
図8(a)へ状態が遷移する場合に限られ、負荷3に流れる電流の向きが変わるのは、
図8(a)から
図8(b)へ状態が遷移する場合と
図8(c)から
図8(d)へ状態が遷移する場合に限られる。
【0059】
以上のことを利用すると、R
z≪R
A、R
Bという条件のもとで、交流電源V2の周波数の2倍の周波数にて第1の状態と第2の状態とが切り替わるように、4つのスイッチSS1〜SS4をオン/オフ動作させ、
図8(a)〜(d)に示す各状態間の遷移を行うようにすることで、負荷3には、電源電流と同じ周波数で振幅もほぼ同じであるものの、位相がπ/2だけずれた部分電流が流れるようになる。なお、この場合においても、非超電導状態にある超電導素子2における電力消費が負荷3における電力消費に比して十分に小さいことは明らかである。
【0060】
図9は、係るスイッチングを行った場合の、超電導電力変換器10における諸特性の変化を例示する図である。具体的には、
図9(a)は電源電流の時間変化を、
図9(b)はスイッチSS1、SS4のオン/オフに対応する第1超電導素子2A、2A’における抵抗の時間変化を、
図9(c)スイッチSS2、SS3のオン/オフに対応する第2超電導素子2B、2B’における抵抗の時間変化を、
図9(d)は負荷3に流れる部分電流の時間変化を、それぞれ例示する図である。ただし、簡単のため、電源電流は振幅I
0の方形波であるとする。また、I≒I
0である。なお、
図9においては、時刻0においてスイッチSS1およびSS4がオン状態とされる一方でスイッチSS2、SS3がオフ状態とされることで、第2の状態が実現され、その後、一定周期で第1の状態と第2の状態とが交互に実現される場合を例示している。
【0061】
なお、上述のように各超電導素子2のオン/オフの時間が交流電流の周期のちょうど1/2ずつである場合には、位相がπ/2だけずれることになるが、第1超電導素子2A、2A’と第2超電導素子2B、2B’の一方のオン状態の時間が交流電流の周期のちょうど1/n(nは2のべき乗)ずつである場合には、π/nだけ位相がずれることになる。
【0062】
上述のようなスイッチングを行うことで、電力損失を十分に抑制しつつ、負荷3において電源電流とほぼ位相のみが異なる電流を取り出すことができる。すなわち、高い変換効率にて交流電流の位相変換が実現される。
【0063】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、排他的に超電導状態と非超電導状態とが実現される2つの超電導素子が並列接続された2つの半素子を、反対称に接続してなる超電導電力変換器を用いて、電力損失を十分に抑制しつつ、交流電流の位相変換を実現することができる。
【0064】
<第4の実施の形態:周波数変換>
本実施の形態においては、超電導電力変換器10を用いて実現される周波数変換、すなわち交流電流を入力し、負荷3において異なる周波数の交流電流を取り出す態様について説明する。
【0065】
図10は、交流電源V2を接続した超電導電力変換器10において交流電流の周波数変換を行う場合のスイッチングの様子を示す図である。
図10(a)は、半素子1X、1Yが第1の状態にあり、かつ交流電源V2を印加した際の極性が、共通端子Tの側がプラスで共通端子T’の側がマイナスである場合を示している。
図10(b)は、半素子1X、1Yが第1の状態にあり、かつ交流電源V2を印加した際の極性が、共通端子Tの側がマイナスで共通端子T’の側がプラスである場合を示している。
図10(c)は、半素子1X、1Yが第2の状態にあり、かつ交流電源V2を印加した際の極性が、共通端子Tの側がプラスで共通端子T’の側がマイナスである場合を示している。
図10(d)は、半素子1X、1Yが第2の状態にあり、かつ交流電源V2を印加した際の極性が、共通端子Tの側がマイナスで共通端子T’の側がプラスである場合を示している。なお、図示の簡単のため、
図10においても、電力消費に寄与することのない、超電導状態にある超電導素子2と、スイッチSSとについては省略している。
【0066】
R
z≪R
A、R
Bという条件をみたすとき、
図10(a)に示す場合および
図10(d)に示す場合においては、負荷3には接続点Pから接続点Qに向かう電流が流れる。
図10(b)に示す場合および
図10(c)に示す場合においては、負荷3には接続点Qから接続点Pに向かう電流が流れる。この場合において、
図10(a)、
図10(b)、
図10(c)、および
図10(d)に示す状態をこの順に繰り返すと、電源電流の向きは次の状態に遷移するたびに変化するが、超電導素子2の超電導状態と非超電導状態との間のスイッチングは
図10(b)から
図10(c)へ状態が遷移する場合と
図10(d)から
図10(a)へ状態が遷移する場合に限られ、負荷3に流れる電流の向きが変わるのは、
図10(a)から
図10(b)へ状態が遷移する場合と
図10(c)から
図10(d)へ状態が遷移する場合に限られる。
【0067】
以上のことを利用すると、R
z≪R
A、R
Bという条件のもとで、交流電源V2の周波数の2倍の周期(1/2の周波数)にて第1の状態と第2の状態とが切り替わるように、4つのスイッチSS1〜SS4をオン/オフ動作させ、
図10(a)〜(d)に示す各状態間の遷移を行うようにすることで、負荷3には、電源電流と振幅はほぼ同じであるが、周波数が電源電流の1/2の(周期が2倍の)部分電流が流れるようになる。なお、この場合においても、非超電導状態にある超電導素子2における電力消費が負荷3における電力消費に比して十分に小さいことは明らかである。
【0068】
図11は、係るスイッチングを行った場合の、超電導電力変換器10における諸特性の変化を例示する図である。具体的には、
図11(a)は電源電流の時間変化を、
図11(b)はスイッチSS1、SS4のオン/オフに対応する第1超電導素子2A、2A’における抵抗の時間変化を、
図11(c)スイッチSS2、SS3のオン/オフに対応する第2超電導素子2B、2B’における抵抗の時間変化を、
図11(d)は負荷3に流れる部分電流の時間変化を、それぞれ例示する図である。ただし、簡単のため、電源電流は振幅I
0の方形波であるとする。また、I≒I
0である。なお、
図11においては、時刻0においてスイッチSS1およびSS4がオン状態とされる一方でスイッチSS2、SS3がオフ状態とされることで、第2の状態が実現され、その後、一定周期で第1の状態と第2の状態とのいずれかが実現される場合を例示している。
【0069】
なお、上述のように負荷3に流れる電流の周期が電源電流の2倍となるスイッチングの態様は、電源電流の極性の反転に応じて各超電導素子2のオン/オフのセットおよびオフ/オンのセットが交互に繰り返される(オン→オフ→オフ→オンと変化する)ものと捉えることもできる。オン/オフのセットおよびオフ/オンのセットがn回(nは自然数)ずつ繰り返される場合には、負荷3を流れる電流の周波数は電源電流の2n倍だけ周期が大きくなることになる。
【0070】
ゆえに、上述のようなスイッチングを行うことで、電力損失を十分に抑制しつつ、負荷3において、電源電流と振幅はほぼ同じであるものの周波数が異なる電流を取り出すことができる。すなわち、高い変換効率にて交流電流の周波数変換が実現される。
【0071】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、排他的に超電導状態と非超電導状態とが実現される2つの超電導素子が並列接続された2つの半素子を、反対称に接続してなる超電導電力変換器を用いて、電力損失を十分に抑制しつつ、交流電流の周波数変換を実現することができる。
【0072】
<半素子の概念の拡張>
上述の各実施の形態においては、2個の超電導素子2を並列させた半素子1を用いて超電導電力変換器10を構成する場合について説明したが、さらに多くの超電導素子を並列させて半素子を構成し、係る半素子を用いて構成された装置により、さらに高度な電力変換を実現する態様であってもよい。
【0073】
図12は、それぞれに3個の超電導素子2を並列させた2つの半素子101(第1の半素子101X、第2の半素子101Y)を負荷3に接続した状態を示す概念図である。なお、半素子101もそれぞれの超電導素子2に対応させて該超電導素子2を超電導状態と非超電導状態との間で遷移させるスイッチSSを備えるが、
図12においては図示を省略している。
【0074】
より詳細には、
図12は、負荷3が3つの接続端子u、v、wを備えており、接続端子uに第1の半素子101Xの超電導素子2Aと第2の半素子101Yの超電導素子2Eとが接続され、接続端子vに第1の半素子101Xの超電導素子2Bと第2の半素子101Yの超電導素子2Fとが接続され、接続端子wに第1の半素子101Xの超電導素子2Cと第2の半素子101Yの超電導素子2Gとが接続されることを意味している。
【0075】
このようにして2つの半素子101と負荷3とが接続される場合には、第1の半素子101Xに備わる3つの超電導素子2(2A、2B、2C)のうち、少なくとも1つが超電導状態となり、残りの超電導素子2のうち少なくとも1つが非超電導状態となるように、かつ、第2の半素子101Yに備わる3つの超電導素子2(2E、2F、2G)のうち、少なくとも1つが超電導状態となり、残りの超電導素子2のうち少なくとも1つが非超電導状態となるように、さらには、短絡を防止するため、負荷3の同一の接続端子に接続される超電導素子2の少なくとも一方が非超電導状態となるように、換言すれば同時に超電導状態とならないように、という要件をみたす限りにおいて、各スイッチSSによるスイッチングのタイミングを適宜に定めることで、負荷3を通る電流経路を自由に制御することができる。すなわち、共通端子T、T’の間に印加される電源電圧の種類およびスイッチSSにおけるスイッチングの仕方によって、種々の態様での電力変換が実現される。
【0076】
なお、図示は省略するが、さらに多くの超電導素子2を並列に接続させた半素子を用いても、同様のことが成り立つ。
【0077】
<第5の実施の形態:直流→三相交流変換>
本実施の形態においては、上述のような半素子101を備える装置によって実現される直流→三相交流変換、すなわち直流電流を入力し、負荷3において互いに位相が2π/3ずつ異なる三相交流電流を取り出す態様について説明する。
【0078】
図13は、係る電力変換を実現する超電導電力変換器110の構成を模式的に示す図である。超電導電力変換器110は、第1の半素子101Xと第2の半素子101Yとから構成される。第1の半素子101Xは、2つの超電導素子2(21、22、23)を並列に接続してなる構成を有するとともに、それぞれの超電導素子21、22、23に対応させて、スイッチSS11、SS12、SS13を備える。第2の半素子101Yは、2つの超電導素子2(24、25、26)を並列に接続してなる構成を有するとともに、それぞれの超電導素子24、25、26に対応させて、スイッチSS14、SS15、SS16を備える。なお、それぞれの超電導素子2を記号Sで表す場合がある。
【0079】
より詳細には、超電導素子21と超電導素子24とが接続されるとともに、該接続の途中の接続点Kにおいて負荷3の接続端子uが接続されている。また、超電導素子22と超電導素子25とが接続されるとともに、該接続の途中の接続点Lにおいて負荷3の接続端子vが接続されている。さらに、超電導素子23と超電導素子26とが接続されるとともに、該接続の途中の接続点Mにおいて負荷3の接続端子wが接続されている。また、2つの共通端子T、T’の間に、電源電圧を印加するようになっている。
【0080】
また、説明の簡単のため、6個の超電導素子2の非超電導状態における有限抵抗値が全てRであるとすると、本実施の形態に係る超電導電力変換器110においても、第1の実施の形態に係る超電導電力変換器10と同様に、R
z≪Rが成り立つように、負荷3が接続される。
【0081】
図14は、R
z≪Rという条件の下で、超電導電力変換器110に直流電源V1を印加し、負荷3において三相交流を取り出す場合の諸特性の変化を例示する図である。具体的には、
図14(a)は電源電流の時間変化を、
図14(b−1)〜(b−3)はそれぞれ、第1の半素子101XにおけるスイッチSS11〜SS13のオン/オフに対応する超電導素子21〜23の抵抗の時間変化を、
図14(c−1)〜(c−3)はそれぞれ、第1の半素子101YにおけるスイッチSS14〜SS16のオン/オフに対応する超電導素子24〜26の抵抗の時間変化を、
図14(d−1)〜(d−3)はそれぞれ、負荷3の接続端子uから接続端子vに流れる電流I
uv、接続端子vから接続端子wに流れる電流I
vw、接続端子wから接続端子uに流れる電流I
wuの時間変化を例示する図である。簡単のため、各超電導素子2における抵抗の時間変化は方形的であるとしている。また、R
z≪Rであるので、
図14(d−1)〜(d−3)においてI≒I
0/2である。
【0082】
図14(b−1)〜(b−3)および
図14(c−1)〜(c−3)は、2つの半素子101において、その一方に備わる3つの超電導素子2のうちの1つが超電導状態であって他の2つの超電導素子2が非超電導状態であり、他方に備わる3つの超電導素子2のうちの2つが超電導状態であって他の1つの超電導素子2が非超電導状態である、という場合が、交互に繰り返されるように、超電導・非超電導遷移が行われることを示している。また、
図14(d−1)〜(d−3)は、このようにスイッチSS11〜SS16のスイッチングを行うことで、負荷3の各接続端子間を流れる電流I
uv、電流I
vw、電流I
wuが、互いに位相が2π/3ずつずれた交流電流となることを示している。これは、直流電圧が印加された超電導電力変換器110に接続された負荷3において、三相交流電流を取り出せることを意味している。この場合、R
z≪Rであることから非超電導状態にある超電導素子2にはほとんど電流が流れないので、係る超電導素子2における電力消費もほとんど生じない。従って、負荷3においては電源から投入された電力のほとんどを取り出すことが可能となる。
【0083】
ゆえに、上述のようなスイッチングを行うことで、電力損失を十分に抑制しつつ、負荷3において所望の周波数の三相交流電流を取り出すことができる。すなわち、高い変換効率にて直流から三相交流への電力変換が実現される。なお、この場合の交流電流の周波数は、各超電導素子2におけるスイッチングのタイミングを調整することで、任意に設定することができる。
【0084】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、それぞれに3つの超電導素子が並列接続された2つの半素子を接続してなる超電導電力変換器を用いて、電力損失を十分に抑制しつつ、直流から三相交流への電力変換を実現することができる。
【0085】
<変形例>
スイッチSSによる超電導素子2における超電導状態から非超電導状態への遷移、あるいは逆向きの遷移を実現させるための態様としては、上述した外部から磁場の印加を行うことのほかに、いくつかの物理現象を応用することが可能である。その一つとして、不可逆磁界を境に量子化磁束が等速運動を行うことで電圧が発生する現象を利用することが可能である。また、粒界弱結合の磁場による超電導・非超電導遷移を利用する態様であってもよい。
【0086】
あるいは、所望される電力変換の種類に応じた遷移応答性が確保される限りにおいて、磁場印加角度、電圧、温度、電流、光などの外部条件を変えることにより、超電導状態から非超電導状態への遷移、あるいは逆向きの遷移を実現させる態様であってもよい。なお、温度によるスイッチは、例えば、熱転写ヒータなどの技術を転用することで実現可能である。具体的には、超電導素子2を所定の基板上に薄膜素子として形成するとともに、該基板の裏面に例えば銀などの熱伝導性の優れた伝熱部材を接触させ、該伝熱部材を通じて薄膜素子の温度を制御するといった対応で、所望される周波数での超電導・非超電導遷移が十分に可能である。
【0087】
非超電導状態における超電導素子の有限抵抗は、超電導素子の構成材料に添加された常電導金属の抵抗に由来するものであってもよい。あるいは、複数の抵抗発現メカニズムの組み合わせによって、非超電導状態における超電導素子の有限抵抗が実現される態様であってもよい。
【0088】
非超電導状態における超電導素子の有限抵抗が負荷の抵抗よりも十分に大きい(負荷のインダクタンスが大きくなる)ことを利用し、負荷として接続された電力機器への電力供給の位相を変換する(ずらせる)態様であってもよい。係る態様は、複数相の位相をずらせる必要がある場合にメリットがある。
【0089】
なお、上述の実施の形態においては、半素子1Xと半素子1Yとが等価である場合を前提として説明しているが、対応する超電導素子2同士の非超電導状態における抵抗が異なる場合、具体的には、R
A≠R
A’あるいはR
B≠R
B’である場合であっても、R
Z≪R
A、R
A’、R
B、R
B’が満たされる限りにおいては、超電導電力変換器10はその作用効果を奏する。半素子101Xと半素子101Yとを構成する各超電導素子2の抵抗が異なる場合についても同様である。
【0090】
第2の実施の形態で示した交流→直流変換と第1の実施の形態にて示した直流→交流変換とを組み合わせることで、任意の周波数の交流電力を任意の周波数の交流電力へと変換することが可能である。具体的には、超電導電力変換器10に、別の超電導電力変換器10を負荷として接続し、前者において第2の実施の形態に従って交流→直流変換を行い、後者において第1の実施の形態に従い所望する周波数での直流→交流変換を行うようにすればよい。
【0091】
また、超電導電力変換器の構成は、上述のものに限られず、原理的特性の維持・向上や種々の機能付加といった目的のために、さらなる回路要素が付加される態様であってもよい。例えば、
図15は、上述の実施の形態に係る超電導電力変換器10に4つの半導体ダイオード(帰還ダイオード)4を組み込んだ超電導電力変換器20を例示する図である。超電導・非超電導間の遷移には時間遅れが生じるので、理論通りの変換に擾乱が起こり得る。超電導電力変換器20は、半導体ダイオード4を備えることにより、この過渡現象を解決するようにしたものである。また、負荷3が誘導性の負荷である場合、インダクタンスのために出力電流の応答に遅延が生じる。半導体ダイオード4は、係る場合の出力電流の流れを確保し、電源に帰還させるという機能も有する。また、
図16は、超電導電力変換器110に同様の目的で6つの半導体ダイオード(帰還ダイオード)4を組み込んだ超電導電力変換器120を例示する図である。
【0092】
さらに、
図17は、より多くの半素子1を用いて構成される電気回路網30を例示する図である。電気回路網30は、それぞれに負荷3が接続されてなるとともに互いに並列に接続された2つの超電導電力変換器10と、両者の間に接続されたさらにもう1つの負荷3とが、全体として、電気回路網30の両端の半素子1X、1Yから構成される超電導電力変換器10の負荷となったものと捉えることができる。換言すれば、複数の超電導電力変換器10が入れ子構造になったものということができる。この場合も、個々の半素子1は必ず反対称に配置されている。すなわち、半素子を反対称に配置し、両者の間に負荷を接続するという構成を取る限りにおいては、
図17に示すような、あるいはさらに複雑な電気回路網において、多段階に電力変換を行うことができる。