特許第5835433号(P5835433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5835433
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】フィルム外装電気デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20151203BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20151203BHJP
   H01M 2/26 20060101ALI20151203BHJP
   H01M 2/14 20060101ALI20151203BHJP
   H01M 2/06 20060101ALI20151203BHJP
   H01G 9/08 20060101ALI20151203BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20151203BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALN20151203BHJP
【FI】
   H01M10/04 Z
   H01M2/02 K
   H01M2/26 A
   H01M2/14
   H01M2/06 K
   H01G9/08 B
   H01G11/78
   !H01M10/0585
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-152843(P2014-152843)
(22)【出願日】2014年7月28日
(62)【分割の表示】特願2010-502796(P2010-502796)の分割
【原出願日】2009年3月9日
(65)【公開番号】特開2014-239053(P2014-239053A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2014年7月28日
(31)【優先権主張番号】特願2008-66478(P2008-66478)
(32)【優先日】2008年3月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】野田 俊治
(72)【発明者】
【氏名】水田 政智
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−141714(JP,A)
【文献】 特開2005−332608(JP,A)
【文献】 特開2006−100213(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/105541(WO,A1)
【文献】 特開2013−041851(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02006935(EP,A1)
【文献】 特開平11−297299(JP,A)
【文献】 特開2003−092134(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0197160(US,A1)
【文献】 特開2009−181898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01G 9/08
H01G 11/78
H01M 2/02
H01M 2/06
H01M 2/14
H01M 2/26
H01M 10/0585
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極板と負極板とが積層する積層領域と、記正極板及び前記負極板各々と接続する複数の集電部と、を有する電気デバイス要素と、
前記電気デバイス要素を封止する外装フィルムと、
前記複数の集電部それぞれと接続し、前記外装フィルムから延出する複数のタブと、
曲部にて2つ折りにされ前記電気デバイス要素及び前記タブの角部を挟む被覆材とを有し、
前記外装フィルムは、折り返し部にて2つ折りにされて前記電気デバイス要素及び前記被覆材を挟み、
前記外装フィルムの前記折り返し部と、前記被覆材の前記屈曲部と対向する端部と、が接する、フィルム外装電気デバイス。
【請求項2】
前記被覆材の前記屈曲部と対向する端部が前記積層領域の積層面上に位置する、請求項1に記載のフィルム外装電気デバイス。
【請求項3】
前記被覆材は多孔質シートである、請求項1または2に記載のフィルム外装電気デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池やキャパシタに代表される、電気デバイス要素を外装フィルムに収容したフィルム外装電気デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器等の電源としての電池は、軽量化、薄型化が強く要求されている。そこで、電池の外装材に関しても、軽量化、薄型化に限界のある従来の金属缶に代わり、さらなる軽量化、薄型化が可能であり、金属缶に比べて自由な形状を採ることが可能な外装材として、金属薄膜フィルム、または金属薄膜と熱融着性樹脂フィルムとを積層したラミネートフィルムを用いたものが使用されるようになった。
【0003】
電池の外装材として用いられるラミネートフィルムの代表的な例としては、金属薄膜であるアルミニウム薄膜の片面にヒートシール層である熱融着性樹脂フィルムを積層するとともに、他方の面に保護フィルムを積層した3層ラミネートフィルムが挙げられる。
【0004】
外装材にラミネートフィルムを用いたフィルム外装電池においては、正極と負極とをセパレータを介して積層した電池要素を、熱融着性樹脂フィルムを互いに対向させてラミネートフィルムで包囲し、電池要素の周囲でラミネートフィルムを熱融着することによって電池要素を気密封止(以下、単に封止という)している。また、電池要素は、複数の正極板と複数の負極板とを対向させて積層させた積層領域から延出した各正極板および各負極板をそれぞれ一括して接合することで形成された集電部を有する。
【0005】
また、電池要素の正極および負極をラミネートフィルムの外部へ引き出すために、正極および負極の集電部の端部にはそれぞれタブが接合されている。これらタブは、その一部がラミネートフィルムから延出している。
【0006】
電池要素は、正極と負極とをセパレータを介して積層したものであるが、製造工程の途中においてばらけてしまわないようにする必要がある。また、電池が完成した後に、その内部で正極、負極及びセパレータが互いに位置ずれを起こすと所定の特性を得ることができなくなってしまう。
【0007】
捲回型の電池要素においても、同様の問題がある。渦巻き状に捲回した電池要素の場合、巻止めがゆるんでしまうと、電極間距離が不均一になり、電池性能の劣化が招いてしまう。そこで、特開平10−241744号公報では、巻止め用の固定手段が、電極体巻軸と平行な電極体側面と、電極体上面又は/及び下面とに配されている。そして、この固定手段は孔を有している。この孔は、電解液やガスの移動を妨げないように設けられたものである。
【0008】
一方、積層型の電池要素においても電池要素をくるむフィルムを用いた電池が特開平11−265693号公報に開示されている。なお、特開平11−265693号公報に開示されている電池は固体電解質を用いたものである。この固体電解質が製造段階でラミネートフィルムの封止部を汚染することで封止部の信頼性が非常に低くなってしまう。よって、これを防止するために、合成樹脂フィルムで電池要素を包んだものである。このため、特開平11−265693号公報の合成樹脂フィルムには、孔を形成することはできない。孔を形成すると固体電解質がこの孔から漏れて封止部を汚染してしまい、フィルムで包む効果が得られなくなるからである。
【0009】
このほか、積層型の電池要素がばらけてしまうのを防止するために、図1Aに示すように、固定用テープで固定する方式が採用される場合がある。図1Aでは電池要素の4隅近傍を4枚の固定用テープで固定している。
【0010】
また、積層型のフィルム外装電池の製造に際しては、電池要素がばらけてしまわないようにする必要がある他、集電部及びタブの絶縁性が問題となる。
【0011】
特開平10−241744号公報の固定手段10は、リード端子5、5’の間に設けられているため、リード端子5、5’近傍や、固定手段10で覆われていない電極体の角部と電池容器との絶縁は、固定手段10により達成することはできない。
【0012】
また、特開平11−265693号公報のポリエステルフィルム5は、端子部が存在する面を除いた少なくとも4面、好ましくは5面が完全に合成樹脂フィルムで包まれていることが好ましいとし、フィルムの長さについても、電池要素周縁部の長さの150〜300%としている。特開平11−265693号公報において、合成樹脂フィルムで包むとは、電池要素よりも幅広い合成樹脂フィルムで包む、あるいは、はみ出した合成樹脂フィルムは内側に折り曲げる等が含まれる、としている。しかしながら、特開平11−265693号公報のフィルムは、端子部が存在する面についての合成樹脂フィルムでの被覆は特に考慮されていないといえる。つまり、特開平11−265693号公報のフィルムは、端子部分における絶縁性は考慮されていないといえる。
【0013】
本発明者らは、集電部、あるいはタブと、外装フィルムとの間の絶縁特性を向上させるための袋状部材を開発した。袋状部材を集電部及びタブに被せることでこれらの絶縁特性を向上させることが容易に達成できる(国際公開第2005−086258号パンフレット)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平10−241744号公報
【特許文献2】特開平11−265693号公報
【特許文献3】国際公開第2005−086258号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、袋状部材は、集電部の形状に合わせた形状とする必要がある他、タブを挿通させる開口部も形成する必要があることから形状が複雑化してしまう。また、図1Aに示す袋状部材109は、集電部近傍を覆うのみであるので、電池要素がばらけてしまうのを防止する機能はない。また、袋状部材109の場合、正極側と負極側と二つ用意する必要があることから部品点数が増えるとともに取り付けのための工程も増えることとなる。
【0016】
また、積層型のフィルム外装電池の製造に際しては、さらに以下の課題がある。この課題について、図1B及び図1Cに示す、図1AのC−C線における断面図を用いて説明する。
【0017】
フィルム外装電池は、図1Bに示すように、電池要素102と封止部108との間にクリアランスL3を有する。これは、以下の理由によるものである。
【0018】
封止部108をヒータで加熱するとこの熱がラミネートフィルム105、106を伝わり、封止部近傍の領域Dにおいて樹脂が軟化する。仮に図1Cに示すようにクリアランスL3を小さくしておくと、軟化したラミネートフィルム105、106に電池要素102の角部102cが当たり、ラミネートフィルム105、106を傷つけることとなる。そして、角部102cがラミネートフィルム105、106の熱融着樹脂層を突き破り、金属層にまで達すると電池内部に対して金属層が露出し、絶縁不良を引き起こしてしまう。
【0019】
よって、これを回避するため、封止部108と電池要素102との間に少なくとも3mmのクリアランスL3をとる必要がある。しかし、このクリアランスは、容量密度向上のための障害となる。
【0020】
また、このような絶縁に関する問題は、電池要素102の積層領域だけでなく、金属板からなる集電部やタブにおいても生じうる。これらは、金属板を切断して形成されているものであるため、切断面における角部がラミネートフィルムを傷つけやすい形状となっているからである。
【0021】
そこで、本発明は、電気デバイス要素を固定し、電気デバイス要素のみならずタブから外装フィルムを保護し、外装フィルムの電気的な絶縁特性を向上させるフィルム外装電気デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するため、本発明のフィルム外装電気デバイスは、極板と負極板とが積層する積層領域と、記正極板及び前記負極板各々と接続する複数の集電部と、を有する電気デバイス要素と、前記電気デバイス要素を封止する外装フィルムと、前記複数の集電部それぞれと接続し、前記外装フィルムから延出する複数のタブと、曲部にて2つ折りにされ前記電気デバイス要素及び前記タブの角部を挟む被覆材とを有し、前記外装フィルムは、折り返し部にて2つ折りにされて前記電気デバイス要素及び前記被覆材を挟み、前記外装フィルムの前記折り返し部と、前記被覆材の前記屈曲部と対向する端部と、が接する構成である
【発明の効果】
【0023】
本発明のフィルム外装電気デバイスによれば、電気デバイス要素を固定し、電気デバイス要素のみならずタブから外装フィルムを保護し、外装フィルムの電気的な絶縁特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】本発明に関連する技術のフィルム外装電池における電池要素の固定方法の一例を示す図である。
図1B図1AにおけるC−C線での一部断面図である。
図1C図1AにおけるC−C線での一部断面図であり、クリアランスL3を小さくした例を示す図である。
図2A】本発明の電池要素に被せる前の第1の実施形態における被覆材と、電池要素とを示す平面図である。
図2B】本発明の第1の実施形態における被覆材を電池要素に被せた状態を示す透過平面図である。
図2C】本発明の第1の実施形態における被覆材で被覆された電池要素をラミネートフィルムで封止したフィルム外装電池の透過平面図である。
図2D図2Cに示すA−A線での一部断面図である。
図2E図2Cに示すD−D線での一部断面図である。
図3A】電池要素に被せる前の第1の実施形態における被覆材と、電池要素とを示す斜視図である。
図3B】本発明の第1の実施形態における被覆材を電池要素に被せた状態を示す透過斜視図である。
図4A】連通部の一例を示す模式図である。
図4B】連通部の他の例を示す模式図である。
図5A】本発明の第2の実施形態におけるフィルム外装電池の透視図である。
図5B図5AにおけるA−A線での断面図である。
図6】被覆材の上からシュリンクテープまたは熱収縮チューブでさらに固定された電池要素の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施形態)
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0026】
図2Aは、電池要素に被せる前の被覆材と、電池要素とを示す平面図である。図2Bは、被覆材を電池要素に被せた状態を示す透過平面図である。図2Cは、被覆材で被覆された電池要素をラミネートフィルムで封止したフィルム外装電池の透過平面図である。図2Dは、図2Cに示すB−B線での一部断面図である。また、図2E図2Cに示すD−D線での一部断面図である。
【0027】
図3Aは電池要素に被せる前の被覆材と、電池要素とを示す斜視図である。図3Bは、被覆材を電池要素に被せた状態を示す透過斜視図である。
【0028】
フィルム外装電池1は、電池要素2と、電池要素2に設けられた正極集電部3aおよび負極集電部3bと、電池要素2を電解液とともに収納する、2枚のラミネートフィルム5、6からなる外装材と、正極集電部3aに接続された正極タブ4aと、負極集電部3bに接続された負極タブ4bと、被覆材7とを有する。
【0029】
フィルム外装電池1の好ましい寸法は、長さLが100mm〜500mm、幅Wが100mm〜500mm、厚さが1〜15mmである。また、さらに好ましくは長さLが200mm〜300mm、幅Wが100mm〜200mm、厚さが2〜10mmである。また、フィルム外装電池1の好ましい容量としては1.5Ah〜50Ahであり、さらに好ましくは3Ah〜10Ahである。
【0030】
電池要素2は、複数の正極板と複数の負極板とを、セパレータを介して交互に積層して構成されている。セパレータには、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を用いて形成した多孔性フィルムなどが用いられる。
【0031】
各正極板はアルミニウム箔に正極電極が塗布されており、負極板は銅箔に負極電極が塗布されている。延出部は、積層領域から延出しており、電極材料が塗布されていない。正極板の延出部同士が一括して超音波溶接されて中継部である正極集電部3aが形成される。同様に、負極板の延出部同士が一括して超音波溶接されて、中継部である正極集電部3aおよび負極集電部3bが形成される。これと同時に正極集電部3aへの正極タブ4aの接続、および負極集電部3bへの負極タブ4bの接続も超音波溶接によってなされる。なお、本明細書においては、正極集電部3a及び負極集電部3bはまとめて集電部3と呼称し、正極タブ4a及び負極タブ4bはまとめてタブ4と呼称する場合がある。
【0032】
外装材は、電池要素2を、電池要素2の厚み方向両側から挟んで包囲する2枚のラミネートフィルム5、6からなる。各ラミネートフィルム5、6は、熱融着性を有する熱融着性樹脂層、金属層、および保護層を積層してなるものである。ラミネートフィルム5、6は、PP(ポリプロピレン)からなる熱融着性樹脂層が内側となるようにし、熱融着部である封止部8を熱融着することで、電池要素2を封止する。
【0033】
ラミネートフィルム5、6としては、電解液が漏洩しないように電池要素2を封止できるものであれば、上述したタイプのフィルム外装電池に用いられるフィルムを用いることができ、一般的には、金属薄膜層と熱融着性樹脂層とを積層したラミネートフィルムが用いられる。上述したタイプのラミネートフィルムとしては、例えば、厚さ10μm〜100μmの金属箔に厚さ3μm〜200μmの熱融着性樹脂を貼りつけたフィルムが使用できる。金属箔、すなわち、金属層には、Al、Ti、Ti系合金、Fe、ステンレス、Mg系合金などが使用できる。熱融着性樹脂、すなわち、熱融着性樹脂層には、ポリプロピレン、ポリエチレン、これらの酸変成物、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル等、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが使用できる。また、保護層には、ナイロン等が好適である。
【0034】
被覆材7は、保護領域7dと、連通部7cとを有する円筒状のフィルムであり、集電部3を含む電池要素2及びタブ4を被覆する。保護領域7dは、電池要素2及びタブ4からラミネートフィルム5、6を保護する。連通部7cは、電解液が通過可能に形成されている。被覆材7は、より詳細には、電池要素2、正極集電部3a及び負極集電部3bを覆うとともに、正極タブ4a及び負極タブ4bの一部を被覆することで、これらからラミネートフィルム5、6を保護する。つまり、保護領域7dは、電池要素2の角部2c及び側面2b、集電部3の角部3c、タブ4の角部4cといった、ラミネートフィルム5、6に接触することでラミネートフィルム5、6を損傷させる箇所を覆っている(図2D図2E参照)。なお、角部とは、正極板、負極板、タブといった金属板の四隅の他、金属板の切断面の角部分のように、ラミネートフィルム5、6に当接することでラミネートフィルム5、6を損傷しやすい部分全般を指す。
【0035】
被覆材7は、円筒形状のフィルムからなり、その両端に開口7a、7bを有する。被覆材7の開口寸法は、電池要素2の挿入が容易であれば、特に限定されるものではない。しかしながら、被覆材7は電池要素2を包むことで電池要素2がばらけてしまうのを防止する機能も発揮させる必要がある。よって、被覆材7の開口断面積は、集電部3が形成されている側の電池要素2の断面積よりも大きくする必要があるが、被覆材7を被せた後に被覆材7の中で電池要素2がばらけてしまわない程度の大きさとするのが好ましい。
【0036】
上述したように被覆材7は、電解液が被覆材7の外表面側と内表面側との間を行き来することが可能な連通部7cを有する。開口7a、7bは、連通部7cとして機能するが、この他、連通部7cは、電解液の行き来が可能であればどのようなものであってもよい。例えば、連通部7cは、図4Aに示すような複数の孔10aであってもよいし、図4Bに示すような広い開口部10bであってもよい。また、被覆材7を多孔質部材で構成してもよい。この場合も、電解液は外表面側と内表面側との間を行き来可能である。
【0037】
なお、これら、複数の孔10a、開口部10bは、電池要素2の角部2c及び側面2bに対応する位置には形成されていない。被覆材7は、電池要素2の角部2cを覆うことでこれらから外装フィルムを保護し、電池要素2の角部2cがラミネートフィルム5、6に接触することでラミネートフィルム5、6を傷つけて絶縁不良を起こすのを防止する。しかしながら、電池要素2の角部2cに対応する位置に複数の孔10a、開口部10bを形成すると、この孔10a、開口部10bに対応する角部2cが露出してしまい、角部2cがラミネートフィルム5、6と接触するおそれがある。そうすると、絶縁不良を防止するという被覆材7の機能を効果的に発揮することができなくなる。よって、複数の孔10a、開口部10b電池要素2の角部2c及び側面2bに対応する位置には形成されていない。
【0038】
被覆材7の長さL1は集電部3を含む電池要素2の長さL2よりも長い。長さL1は、ラミネートフィルム5、6で封止された状態で、被覆材7が電池要素2の積層領域、集電部3及びラミネートフィルム5、6内に位置するタブ4を覆い、かつ封止部8に入り込まない長さとするのが好ましい。すなわち、被覆材7の長さL1は、金属板で構成される部材とラミネートフィルム5、6との物理的な接触を防止するとともに、熱融着による封止を妨げないような長さとするのが好ましい。また、このような長さL1とすることで1つの被覆材7で電池要素2の他、正極集電部3a及び負極集電部3b、正極タブ4a及び負極タブ4bの両極を全て覆うことができる。
【0039】
本実施形態の被覆材7はPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)を材料とするのが好ましい。被覆材7は、これらの材質からなるため柔軟性に富み、正極タブ4aに外部から力がかかり、正極タブ4aが被覆材7に当接したとしても、その当接部分が局部的に屈曲してしまうことがない。被覆材7の材質は、PE、PP、PETに限定されるものではなく、電解液に浸食されない材質で、かつ柔軟性に富む材質であればいかなるものであってもよい。被覆材7は厚さ0.03mm以上0.2mm以下程度の範囲内とするのが好ましい。
【0040】
なお、被覆材7の融点は、ラミネートフィルム5、6を傷つけないようにするため、ラミネートフィルム5、6の融点と同等あるいはそれ以下であることが望ましい。
【0041】
電池要素2に含浸される電解液としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ―ブチロラクトン、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、m−クレゾール等の、二次電池の電解液として利用可能な極性の高い塩基性溶媒に、LiやK、Na等のアルカリ金属のカチオンとClO4−、BF4−、PF6−、CF3SO3−、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、(CF3SO2)3C−、(C2F5SO2)3C−等のハロゲンを含む化合物のアニオンからなる塩を溶解したものが挙げられる。また、これらの塩基性溶媒からなる溶剤や電解質塩は、単独で、あるいは複数組み合わせて用いることもできる。また、これらは電解液を含むポリマーゲルとしたゲル状電解質としてもよい。また、電解液は、スルホラン、ジオキサン、ジオキソラン、1,3―プロパンスルトン、テトラヒドロフラン、ビニレンカーボネートなどを微量添加してもよい。
【0042】
次に、フィルム外装電池1の製造方法について図2及び図3を参照して説明する。
【0043】
まず、集電部3を含む電池要素2の長さL2よりも長い長さL1の被覆材7が用意される。被覆材7は、インフレーションフィルムを長さL1で切断することで形成してもよい。連通部7cとしての複数の孔10aや開口部10bは切断前に形成してもよいし、切断後に成形してもよい。なお、連通部7cは上述したように、電池要素2の角部2cに対応する位置には形成しないようにする。
【0044】
次いで、被覆材7をタブ4側から電池要素2に被せる。なお、図2Aでは負極タブ4b側から被せているが、当然ながら正極タブ4a側から被せるものであってもよい。そして、図2Bに示すように、被覆材7が正極タブ4a及び負極タブ4bのいずれをも覆う位置となるように被覆材7と電池要素2とを位置あわせする。この状態で電池要素2の積層領域とタブ4との間に位置する正極集電部3a及び負極集電部3bは、いずれも当然に被覆されることとなる。なお、被覆材7は、タブ4の全てを覆うものではない。これは、タブ4の開放端側をラミネートフィルム5、6から延出させるためである。よって、被覆材7は、タブ4がラミネートフィルム5、6で封止される領域の手前までしか被覆しない。
【0045】
また、被覆材7の位置合わせに際しては、連通部7cが角部2cに配置されないように留意する。
【0046】
なお、被覆材7がメッシュ、あるいは多孔質部材の場合、連通部7cは極めて微細となるため、角部2cが露出することはない。よって、メッシュ、あるいは多孔質部材を被覆材7とした場合は、連通部7cが角部2cに位置するものであってもよい。
【0047】
電池要素2は、複数の正極板、負極板及びセパレータからなるため、ラミネートフィルム5、6で封止する前段階にて取扱中にばらけてしまう場合がある。しかしながら、本実施形態の場合、上述のように電池要素2は、被覆材7によって包んで固定されている。このため、電池要素2がばらけてしまったり、ずれたりするのを気にすることなく作業を行うことができる。
【0048】
また、電池要素2は、電池が完成した後においても、封止されたラミネートフィルム5、6内で正極板、負極板、セパレータが相対的な位置ずれを起こす場合がある。正極板、負極板、セパレータが相対的な位置ずれを起こすと所定の発電特性を得ることができない。しかしながら、本実施形態のフィルム外装電池1は、被覆材7によって電池要素2を固定しているので正極板、負極板、セパレータが相対的な位置ずれが発生するのを抑制することができ、よって、所定の発電特性を得ることができる。
【0049】
なお、ここで、図6に示すように、被覆材7の上からさらにシュリンクテープまたは熱収縮チューブ11を被せてもよい。これらシュリンクテープまたは熱収縮チューブ11を加熱して収縮させることで被覆材7による電池要素2の固定がより確実となり、電池要素2がばらけてしまうのをより確実に防止できる。なお、シュリンクテープまたは熱収縮チューブ11は、連通孔7cとして例えば複数の孔10aを被覆材7に形成した場合、電解液の通過を阻害しないように孔10aと重なり合わない位置に配置するのが好ましい。
【0050】
次いで、図2Cに示すように、ラミネートフィルム5、6によって被覆材7で被覆された電池要素2を挟む。正極タブ4aは封止部8a側から延出し、負極タブ4bは封止部8b側から延出した状態にしておく。その後、封止部8a、8b、2つの封止部8cの4辺を熱融着するとともに電解液を封入する。この工程をより詳細に説明する。まず、封止部8a、8bと、2つの封止部8cのうちの一つのみが熱融着されることでラミネートフィルム5、6を袋状に形成しておく。次いでこの袋の中に電解液を注入し、最後に残る封止部8cを熱融着する。このようにして封止工程は完了する。
【0051】
このとき、電池要素2の側面2bに位置する被覆材7と封止部8cの内側とのクリアランスL3は0mm〜3mmの範囲内とすることができる。従来、このクリアランスL3は少なくとも3mmは必要であった(図1B及び図1C参照)。これは、以下の理由による。
【0052】
封止部108cを熱融着させるために封止部108cをヒータで加熱すると、その熱が電池要素102の角部102c付近を覆う領域Dのラミネートフィルム105、106にまで伝わる。該領域Dのラミネートフィルム105、106の熱融着性樹脂層が熱で柔らかくなると電池要素102の角部102cが熱融着樹脂層を突き破ってしまう場合がある。そうすると、熱融着樹脂層を突き破った角部102cはラミネートフィルム105、106の金属層にまで達する。その結果、金属層が露出してしまうこととなり、電解液が金属層に直接接触し、絶縁不良を起こす場合がある。そこで、絶縁性を確保するため、従来、クリアランスL3は少なくとも3mmは設けておき、領域Dに封止部108cの熱が伝わりにくくしていた。
【0053】
さらに、小型電子機器用のラミネート外装電池が広く普及しているが、自動車用などのパワー用途で、直列に多数の電池を接続して高電圧を得るような場合には、絶縁性が重要となる。このため、角部2cがラミネートフィルムの内面層にダメージを与えてラミネートフィルム内の金属層に到達するようなクラックなどが発生しないよう、対策が必要となってくる。そのため従来、電極積層体と封止部は3mm以上のクリアランスL3を設けていた。
【0054】
しかし、これらの問題を回避するために設けたクリアランスL3は、容積密度を低下させてしまうものでもあった。
【0055】
本実施形態では、電池要素2の角部2cを被覆材7によって被覆している。これにより、角部2cとラミネートフィルム5、6の間に保護層が存在することになる。この保護層は尖った角部2cに対して緩衝作用を及ぼす。つまり、クリアランスL3を0mm〜3mmに設定した場合であっても、保護層が存在するので、角部2cがラミネートフィルム5、6の熱融着性樹脂層に当たり熱融着性樹脂層を損傷させる、といった事態を回避できる。その結果、ラミネートフィルムの絶縁性低下が防止されることとなる。そして、本発明は、クリアランスL3を少なくした分だけ、従来のものより容積密度を向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態の被覆材7は、電池要素2の角部2cのみならず集電部3、集電部3の角部3c、タブ4の角部4cも被覆することができる。さらには、被覆材7は、集電部3とタブ4との接合部も被覆することができる。このため、これらの部材がラミネートフィルム5、6を損傷するのを防止することができる。
【0057】
また、本実施形態の被覆材7は連通部7cを有するため、セパレータへの電解液の浸潤に要する時間を短縮することができる。被覆材7は基本的に筒状の部材であるため、電解液は開口7a、7bから電池要素2側へと流入することができる。しかしながら、ラミネートフィルム5、6で封止したような状態では電解液が開口7a、7bへと回り込みにくい。特に、最初に熱融着しておいた封止部8c側は特に電解液が回り込みにくい。しかし、本実施形態の被覆材7は連通部7cを有する。このため、電解液はこの連通部7cを通過して電池要素2側へと流入させることができる。その結果、本発明によれば、セパレータへの電解液の浸潤に要する時間を短縮することができる。
【0058】
なお、この連通部7cは角部2cに対応する位置には設けられていないため、電池要素2の角部2cが露出してラミネートフィルム5、6を傷つけてしまうことはない。
【0059】
以上、本実施形態の被覆材7は保護領域7dによって、電池要素2、集電部3、タブ4の各角部2c、3c、4cといった、ラミネートフィルム5、6を損傷しやすい部分を被覆している。これにより、本発明は、封止部8の熱で柔らかくなった領域D、その他、各角部2c、3c、4c近傍のラミネートフィルム5、6の熱融着性樹脂層が、これら角部2c、3c、4cが当たることにより傷つけられてラミネートフィルム5、6の絶縁性が悪化する、といった事態を防止することができる。
【0060】
また、被覆材7が各角部2c、3c、4cとラミネートフィルム5、6との間の保護層となっているので、電池要素2の側面2bに位置する被覆材7と封止部8cの内側とを実質的に密着させクリアランスL3をゼロとすることができる。これにより、本発明は、電池を小型化でき、その結果、電池の容量密度を向上させることができる。
【0061】
また、本実施形態の被覆材7は、電池要素2を包んで固定する。このため、本発明によれば、電池要素2を構成する複数の正極板、負極板、セパレータが製造中にばらけてしまうのを防止でき、電池の製造が容易となる。また、本発明は、完成した電池においても内部で正極板、負極板、セパレータの相対的な位置ずれを防止することができる。よって、本発明の電池は、正極板とセパレータと負極板とが所定の接触面積を確保でき、所定の発電特性を発揮させることができる。
【0062】
また、本実施形態の被覆材7は連通部7cを有するため、電解液の浸潤に要する時間を短縮化できる。
【0063】
また、本発明は、1つの被覆材7によって、電池要素のばらつき防止の他、正負両電極側における損傷防止も可能となるため、部品点数を削減できる。
【0064】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、2枚のラミネートフィルムを用いた例を示した。本実施形態では、1枚のラミネートフィルムを折り曲げて袋状にした場合に用いられる被覆材27について説明する。なお、本実施形態の説明においては、簡単のため、第1の実施形態と同じ部材については同じ符号を用いて説明する。
【0065】
図5Aに本実施形態のフィルム外装電池の透視図、また、図5B図5AにおけるA−A線での断面図を示す。
【0066】
本実施形態のフィルム外装電池は、1枚のラミネートフィルム25を折り返し端25aにて2つ折りにして電池要素5を挟み、開放している3辺を熱融着することによって電池要素5を封止している。すなわち、折り返し端25aは熱融着する必要がないため、封止部8a、8b、1つの封止部8cを熱融着すれば済む。このような構成の場合、被覆材7は、図5Bに示すように、筒状ではなく1枚のフィルムを2つ折りとした構成とし、被覆材27の屈曲部27bに対向する側の開放部27aが折り返し端25a側に位置するようにすることができる。これは、折り返し端25aは熱融着されないので熱対策が特に必要ないため、被覆材27で電池要素2の側面2bを覆い込む必要がないことによる。この場合、開放部27aを連通部7cとすることができるので、被覆材27の主面に連通部7cとして孔を形成しなくてもよい。もっとも、主面に孔を形成することで、電解液の浸潤に要する時間はより短縮することができる。
【0067】
なお、被覆材27の開放部27aは、電池要素2の側面2bの全てを覆うものではないが、少なくとも電池要素2の角部2c、集電部3の角部3c、タブ4の角部4cを覆うようにする必要がある。
【0068】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0069】
この出願は、2008年3月14日に出願された日本出願特願2008−066478号を基礎として優先権の利益を主張するものであり、その開示の全てを引用によって取り込む。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6