(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記内燃機関がアイドリング運転状態にあるときに予め定められた停止条件が成立したことを条件として、前記内燃機関を停止させ、前記内燃機関を停止させた後に、予め定められた始動条件が成立したことを条件として前記内燃機関を再始動させる内燃機関制御部を更に備え、
前記伝達熱量制御部は、前記内燃機関制御部によって前記内燃機関が停止されたことを条件として、前記内燃機関が一時停止状態にあると判断することを特徴とする請求項1に記載の蒸発燃料処理装置。
前記伝達熱量制御部は、前記燃料ポンプから前記吸着器に前記燃料を介して伝達される熱量を増加させることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1の請求項に記載の蒸発燃料処理装置。
前記伝達熱量制御部は、前記燃料ポンプから吐出された燃料を介して前記燃料ポンプから前記吸着器に伝達される熱量を増加させることを特徴とする請求項4に記載の蒸発燃料処理装置。
前記伝達熱量制御部は、前記燃料ポンプの駆動力を増加させることにより、前記燃料ポンプから前記吸着器に伝達される熱量を増加させることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1の請求項に記載の蒸発燃料処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る蒸発燃料処理装置の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0025】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る蒸発燃料処理装置を搭載した車両の要部構成、すなわち、走行駆動用の内燃機関とその燃料供給および燃料パージを行う燃料系システムとの機構を示している。本実施の形態の内燃機関は、揮発性の高い燃料を使用するもので、走行駆動用に車両に搭載されている。
【0027】
図1に示すように、本実施の形態に係る車両1は、エンジン2と、燃料タンク31を有する燃料供給機構3と、蒸発燃料処理装置を構成する燃料パージシステム4およびECU(Electronic Control Unit)5と、を含んで構成されている。
【0028】
エンジン2は、ECU5によって制御される点火プラグ20を用いた火花点火式の多気筒内燃機関、例えば、4サイクルの直列4気筒エンジンによって構成されている。
【0029】
エンジン2の4つの気筒2a(
図1中に1つのみ図示する)の吸気ポート部分には、それぞれインジェクタ21(燃料噴射弁)が装着されており、複数のインジェクタ21は、デリバリーパイプ22に接続されている。
【0030】
デリバリーパイプ22には、後述する燃料ポンプ32から、揮発性の高い燃料(例えばガソリン)がエンジン2に要求される燃圧(燃料圧力)に加圧されて供給されるようになっている。
【0031】
また、エンジン2の吸気ポート部分には吸気管23が接続されており、この吸気管23には、吸気脈動や吸気干渉を抑える所定容積のサージタンク23aが設けられている。
【0032】
吸気管23の内部には吸気通路23bが形成されており、吸気通路23b上には、スロットルアクチュエータ24aにより開度調整可能に駆動されるスロットルバルブ24が設けられている。このスロットルバルブ24は、吸気通路23bの開度を調整することにより、エンジン2の吸入空気量を調整するようになっている。
【0033】
燃料供給機構3は、燃料タンク31と、燃料タンク31内に設置された内部タンク80と、燃料ポンプ32と、デリバリーパイプ22および燃料ポンプ32を接続する燃料供給管33と、燃料ポンプ32の上流側に設けられた吸入配管38とを含んで構成されている。
【0034】
燃料タンク31は、車両1の車体の下部側に配置されており、エンジン2で消費される燃料を補給可能に貯留するようになっている。内部タンク80は、略円筒状かつ有底に形成され、燃料タンク31の内部に設けられている。
【0035】
内部タンク80は、内部に燃料を貯留させることができるようになっている。具体的には、内部タンク80には、燃料タンク31内の燃料を内部タンク80内に吸引するジェットポンプ81が設けられている。ジェットポンプ81は、燃料ポンプ32の作動に応じて内部タンク80内に燃料を吸引するようになっている。
【0036】
内部タンク80の形状としては、円筒状に限らず角筒状や箱型形状であってもよく、特にその形状が限定されるものではない。内部タンク80の内部には、燃料ポンプ32に加えて、キャニスタ41と、サクションフィルタ38bと、燃料フィルタ82と、プレッシャレギュレータ83が収容されている。
【0037】
燃料ポンプ32は、燃料タンク31内の燃料を汲み上げて所定のフィード燃圧以上に加圧することができる吐出能力(吐出量および吐出圧)可変タイプのもので、例えば円周流ポンプによって構成されている。この燃料ポンプ32は、詳細な内部構成を図示しないが、ポンプ作動用の羽根車と、その羽根車を駆動する内蔵モータとを有している。
【0038】
また、燃料ポンプ32は、内蔵モータの駆動電圧と負荷トルクとに応じてポンプ作動用の羽根車の回転速度および回転トルクのうち少なくとも一方を変化させることで、その単位時間当りの吐出能力を変化させることができるようになっている。
【0039】
このように燃料ポンプ32の吐出能力を変化させるため、燃料供給機構3には、ECU5の制御に応じて燃料ポンプ32の駆動電圧を制御するFPC(Fuel Pump Controller)84が設けられている。
【0040】
燃料フィルタ82は、その筐体が保持機構70によって燃料ポンプ32と一体に内部タンク80内に保持されている。燃料フィルタ82は、燃料ポンプ32から吐出された燃料をろ過するようになっている。本実施の形態において、燃料フィルタ82は、筐体が燃料ポンプ32を取り囲むように形成され、燃料ポンプ32から吐出された燃料をろ過する公知のものである。
【0041】
プレッシャレギュレータ83は、燃料フィルタ82の下流側に設けられたエマージェンシー用の常閉型のバルブによって構成され、燃料フィルタ82内の燃圧が予め定められた燃圧以上になったときに開弁し、余剰燃料を内部タンク80内に戻すようになっている。
【0042】
燃料供給管33は、プレッシャレギュレータ83の出力ポートと、デリバリーパイプ22内とを相互に連通させる燃料供給通路を形成している。燃料供給管33には、燃料ポンプ32から吐出された燃料の少なくとも一部を燃料タンク31内で還流させることによって、ジェットポンプ81に駆動流を与えるためのパイロット配管85が接続されている。
【0043】
ここで、
図1中では、パイロット配管85と燃料供給管33を略同等な配管として図示しているが、燃料供給管33内の燃料の最大流量に対するパイロット配管85内の燃料の最大流量の設定比率に応じて、パイロット配管85と燃料供給管33の通路断面積を相違させたり、適当な絞りを設けたりしてもよい。
【0044】
吸入配管38は、燃料ポンプ32の上流側に吸入通路38aを形成しており、吸入通路38aの最上流部分には、サクションフィルタ38bが設けられている。このサクションフィルタ38bは、燃料ポンプ32に吸入される燃料をろ過する公知のものである。
【0045】
一方、燃料タンク31には、燃料タンク31から車両1の側方または後方側に延びるように、給油管34が突出して設けられている。給油管34の突出方向の先端には、給油口34aが形成されている。この給油口34aは、車両1の図示しないボディに設けられたフューエルインレットボックス35内に収容されている。
【0046】
また、給油管34には、燃料タンク31の上部と給油管34内の上流部分とを連通させる循環配管36が設けられている。フューエルインレットボックス35には、燃料の給油時に外部に対して開放されるフューエルリッド37が設けられている。
【0047】
燃料の給油時には、フューエルリッド37を開放し、給油口34aに着脱可能に取り付けられたキャップ34bを取り外すことにより、給油口34aから燃料タンク31内に燃料を注入できるようになっている。
【0048】
燃料パージシステム4は、燃料タンク31と吸気管23との間、より詳しくは、燃料タンク31とサージタンク23aとの間に介装されている。燃料パージシステム4は、燃料タンク31内で発生する蒸発燃料をエンジン2の吸気時に吸気通路23bに放出させて燃焼させることができるようになっている。
【0049】
燃料パージシステム4は、燃料タンク31内で生じた蒸発燃料を吸着するキャニスタ41(吸着器)と、キャニスタ41に空気を通してキャニスタ41から脱離した燃料および空気を含むパージガスをエンジン2の吸気管23内に吸入させるパージ動作を実行するパージ機構42と、パージガスの吸気管23内への吸入量を制御してエンジン2における空燃比の変動を抑制するパージ制御機構45と、を含んで構成されている。
【0050】
キャニスタ41は、キャニスタケース41aの内部に活性炭等の吸着材41bを内蔵したものであり、内部タンク80内にその内底面80aから離間するよう設置されている。このキャニスタ41の内部(吸着材収納空間)は、エバポ配管48および気液分離バルブ49を介して燃料タンク31内の上部空間に連通するようになっている。
【0051】
したがって、キャニスタ41は、燃料タンク31内で燃料が蒸発し、燃料タンク31内の上部空間に蒸発燃料が溜まるとき、吸着材41bによって蒸発燃料を吸着することができる。また、燃料タンク31内の燃料の液面上昇や液面変動時には、逆止弁機能を有する気液分離バルブ49が浮上してエバポ配管48の先端部を閉止するようになっている。
【0052】
パージ機構42は、キャニスタ41の内部を吸気管23の吸気通路23bのうちサージタンク23aの内部部分に連通させるパージ配管43と、キャニスタ41の内部を大気側、例えばフューエルインレットボックス35の内方の大気圧空間に開放させる大気配管44とを有している。
【0053】
このパージ機構42は、エンジン2の運転時にサージタンク23aの内部に負圧が発生するとき、キャニスタ41の内部の一端側にパージ配管43を通して負圧を導入させつつ、キャニスタ41の内部の他端側に大気配管44を通して大気を導入させることができる。
【0054】
したがって、パージ機構42は、キャニスタ41の吸着材41bに吸着されてキャニスタ41内に保持されている燃料を、キャニスタ41から脱離(放出)させてサージタンク23aの内部に吸入させることができる。
【0055】
パージ制御機構45は、ECU5によって制御されるパージ用のバキュームソレノイドバルブ(以下、「パージ用VSV」という)46を含んで構成されている。
【0056】
パージ用VSV46は、パージ配管43の途中に設けられている。このパージ用VSV46は、パージ配管43の途中の開度を変化させることで、キャニスタ41から脱離させる燃料量を可変制御できるようになっている。
【0057】
具体的には、パージ用VSV46は、その励磁電流がECU5によってデューティ制御されることで開度を変化させることができ、そのデューティ比に応じたパージ率で、吸気管23内の吸気負圧によりキャニスタ41から脱離した燃料を空気と共にパージガスとしてサージタンク23a内に吸入させることができる。
【0058】
本実施の形態では、サクションフィルタ38bと燃料ポンプ32とを接続している吸入配管38の一部が、キャニスタ41の内部を通るように構成されている。
【0059】
具体的には、吸入配管38は、燃料ポンプ32の吸入ポートに接続するポンプ側接続部61と、サクションフィルタ38bに接続するフィルタ側接続部62と、これらポンプ側接続部61とフィルタ側接続部62との間に位置する熱伝達管部63とから構成されている。
【0060】
特に、熱伝達管部63は、キャニスタ41の内部に配置されている。熱伝達管部63は、キャニスタ41の内部において例えば蛇行形状とされている。これにより、燃料ポンプ32に吸入される燃料と燃料が吸着したキャニスタ41の吸着材41bとの接触面積を大きくとることができ、熱伝達量を大きくすることができる。
【0061】
なお、熱伝達管部63の形状は、吸着材41bとの接触面積を大きくすることができるものであれば、蛇行形状に限らず、例えば吸着材41b内で複数経路に分岐し、これら複数経路を並列に配置した形状や渦巻き形状等、種々の形状を採用することができる。
【0062】
ここで、吸入配管38の熱伝達管部63は、キャニスタケース41aに一体的に結合されており、熱伝達管部63の内壁面によって、キャニスタ41の内部通路の内壁面である熱伝達面41cが形成されている。
【0063】
この熱伝達面41cは、燃料ポンプ32の作動時に燃料タンク31内で流動する燃料、特に燃料ポンプ32に吸入される燃料を吸入方向に案内することができる。また、熱伝達面41cは、燃料タンク31内の燃料のうち燃料ポンプ32に吸入される方向に流動する吸入側の燃料とキャニスタ41との間で熱伝達させることができるようになっている。
【0064】
すなわち、熱伝達管部63は、その吸入側の燃料とキャニスタ41との間に温度差があるとき、熱伝達面41cにおいて良好な熱伝達がなされるとともに、熱伝達管部63から燃料を吸着した吸着材41bに良好に熱が伝達できるような高熱伝導率の金属素材等で形成されている。
【0065】
燃料供給管33と吸入配管38との間には、燃料ポンプ32から吐出された燃料、より詳しくは、燃料ポンプ32から吐出され燃料供給管33およびパイロット配管85内に供給されなかった燃料を燃料タンク31内でキャニスタ41より上流側の吸入通路38aに還流させる還流配管39が接続されている。
【0066】
具体的には、還流配管39は、燃料タンク31内に配置されており、還流配管39の還流方向上流側の一端が、燃料供給管33から分岐し、還流配管39の還流方向下流側の一端が、吸入配管38のフィルタ側接続部62に接続されている。
【0067】
この還流配管39は、燃料ポンプ32によって吐出された燃料を燃料タンク31内で燃料ポンプ32の吸入側に還流させることができる還流機構を構成しており、本実施の形態では、燃料ポンプ32から吐出された燃料をキャニスタ41より上流側の吸入配管38内に還流させるものとなっている。
【0068】
なお、
図1中では、還流配管39と燃料供給管33を略同等な配管として図示しているが、燃料供給管33内の燃料の最大流量に対する還流配管39内の燃料の最大流量の設定比率に応じて、還流配管39と燃料供給管33の通路断面積を相違させたり、適当な絞りを設けたりすることができる。
【0069】
還流配管39には、燃圧調整用電磁弁53が設けられている。燃圧調整用電磁弁53は、還流配管39の途中の開度を変化させることで、デリバリーパイプ22内の燃圧を可変制御できるようになっている。
【0070】
具体的には、燃圧調整用電磁弁53は、ECU5からの開弁信号に基づいて開弁状態に切り替えられる常閉型のものである。具体的には、燃圧調整用電磁弁53は、例えば圧縮スプリング等の付勢部材により弁体を常時閉弁側に付勢し、ECU5からの開弁信号に応じて電磁ソレノイドを励磁することで弁体を開弁方向に付勢する公知の常閉型の電磁弁で構成される。なお、燃圧調整用電磁弁53は、ECU5からの閉弁信号に基づいて閉弁状態に切り替えられる常閉型のものであってもよい。
【0071】
ECU5は、図示しないCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、フラッシュメモリと、入出力ポートと、を備えたマイクロプロセッサによって構成されている。
【0072】
ECU5のROMには、当該マイクロプロセッサをECU5として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、ECU5のCPUがRAMを作業領域としてROMに記憶されたプログラムを実行することにより、当該マイクロプロセッサは、ECU5として機能する。
【0073】
ECU5の入出力ポートの入力側には、デリバリーパイプ22の燃圧を検知する燃圧センサ50と、アクセルペダル90の開度を表すアクセル開度を検出するアクセル開度センサ91、ブレーキペダル92の操作量を検出するブレーキペダルポジションセンサ93、車速を検出する車速センサ94と、シフトレーバー95の位置を表すシフトポジションを検出するシフトポジションセンサ96と、イグニッションスイッチ(以下、単に「IG」と記す)97と、を含む各種センサ類が接続されている。
【0074】
また、ECU5の入出力ポートの出力側には、点火プラグ20、スロットルアクチュエータ24a、パージ用VSV46、燃圧調整用電磁弁53、および、FPC84に加えて、エンジン2を始動させるためのスタータを駆動するスターターモータ55等の各種制御対象類が接続されている。
【0075】
ECU5は、各種センサ情報に基づいて、パージ用VSV46をデューティ制御することにより、パージ率を制御することができるようになっている。例えば、ECU5は、エンジン2が所定の運転状態にあるときに、スロットル開度センサ24bより得られるスロットルバルブ24の開度が予め設定された設定開度より小さい状態となることを条件として、パージ用VSV46を開弁させることによりパージ機構42にパージ動作を実行させるようになっている。
【0076】
本実施の形態において、ECU5は、いわゆるアイドルストップ機能を実現する内燃機関制御部を構成し、エンジン2がアイドリング運転状態にあるときに予め定められた停止条件が成立したことを条件として、エンジン2を停止させ、エンジン2を停止させた後に、予め定められた始動条件が成立したことを条件としてエンジン2を再始動させるようになっている。
【0077】
ECU5は、ECU5に接続された各種センサ類から出力された検出信号に基づいて停止条件が成立したか否かを判断するようになっている。ここで、停止条件は、設計に応じた複数の条件の組合せからなる。
【0078】
本実施の形態において、ECU5は、アクセル開度センサ91によって検出されたアクセルペダル90の開度が略0であり、ブレーキペダルポジションセンサ93によって検出されたブレーキペダル92の操作量が所定量以上であり、車速センサ53によって検出された車速が予め定められた閾値(例えば、0.5km/h)以下であるときに、停止条件が成立したと判断するものとする。
【0079】
また、本実施の形態において、ECU5は、エンジン2がアイドリング運転状態にあるときに停止条件が成立したことを条件として、点火プラグ20による点火およびインジェクタ21による燃料の噴射を停止することにより、エンジン2を停止させるものとする。
【0080】
ECU5は、ECU5に接続された各種センサ類から出力された検出信号に基づいて始動条件が成立したか否かを判断するようになっている。ここで、始動条件は、設計に応じた複数の条件の組合せからなる。
【0081】
本実施の形態において、ECU5は、アクセル開度センサ91によって検出されたアクセルペダル90の開度が所定値以上であり、ブレーキペダルポジションセンサ93によって検出されたブレーキペダル92の操作量が略0であるときに、始動条件を満たしたと判断するものとする。
【0082】
また、本実施の形態において、ECU5は、アイドルストップ機能によりエンジン2を停止させた後に始動条件が成立したことを条件として、スターターモータ55を駆動させると共に、点火プラグ20による点火およびインジェクタ21による燃料の噴射を開始させることにより、エンジン2を再始動させるものとする。
【0083】
また、ECU5は、エンジン2が一時停止状態になっていることを条件として、燃料ポンプ32からキャニスタ41に伝達される熱量を増加させるようになっている。例えば、ECU5は、アイドルストップ機能によりエンジン2を停止させていることを条件として、一時停止状態にあると判断するようになっている。
【0084】
具体的には、ECU5は、アイドルストップ機能によりエンジン2を停止させていることを条件として、燃料ポンプ32からキャニスタ41に燃料を介して伝達される熱量を増加させるようになっている。
【0085】
より具体的には、ECU5は、アイドルストップ機能によりエンジン2を停止させていることを条件として、FPC84を制御して燃料ポンプ32の駆動電圧を上昇させることにより燃料ポンプ32の駆動力を増加させると共に、燃圧調整用電磁弁53を開弁させるようになっている。このように、ECU5は、FPC84と協働し、伝達熱量制御部を構成する。
【0086】
燃圧調整用電磁弁53がECU5によって開弁されると、燃料ポンプ32の吸入側の燃料、特に、吸入配管38の内部の燃料は、燃料ポンプ32から吐出され還流配管39を通して吸入側に還流される燃料と合流するため、燃料ポンプ32から吐出された燃料とサクションフィルタ38bを通して新たに吸入された燃料とを含むものとなる。
【0087】
このように、燃料ポンプ32から吐出された燃料を還流配管39を通して燃料タンク31内で燃料ポンプ32の吸入側に還流させると、キャニスタ41の熱伝達面41cは、燃料ポンプ32から吐出された燃料を含んで燃料ポンプ32に吸入される方向に流動する吸入配管38内の燃料とキャニスタ41との間で熱伝達させることができるようになる。
【0088】
次に、本実施の形態に係る蒸発燃料処理装置のキャニスタ昇温動作について、
図2に示すフローチャートを参照して説明する。なお、以下に説明するキャニスタ昇温動作は、ECU5が起動してから停止するまでの間、繰り返し実行されるものとする。
【0089】
まず、ECU5は、アイドルストップ機能によりエンジン2を停止させているか否かを判断する(ステップS1)。ここで、アイドルストップ機能によりエンジン2を停止させていると判断した場合には、ECU5は、パージ機構42によるパージ動作を禁止し(ステップS2)、キャニスタ41を加熱する(ステップS3)。
【0090】
具体的には、ECU5は、キャニスタ41を加熱している状態にない場合には、FPC84を制御して燃料ポンプ32の駆動電圧を上昇させると共に、燃圧調整用電磁弁53を開弁させることにより、キャニスタ41の加熱を開始する。また、ECU5は、キャニスタ41を加熱している状態にある場合には、この状態を維持する。
【0091】
一方、アイドルストップ機能によりエンジン2を停止させていないと判断した場合には、ECU5は、パージ機構42によるパージ動作を許可する(ステップS4)。具体的には、ECU5は、エンジン2が所定の運転状態にあるときに、スロットル開度センサ24bより得られるスロットルバルブ24の開度が予め設定された設定開度より小さい状態となることを条件として、パージ用VSV46を開弁させることによりパージ機構42にパージ動作を実行させる。
【0092】
以上に説明したように、本実施の形態は、エンジン2が一時停止状態となっていることによりパージ動作を実行できない間に、燃料ポンプ32からキャニスタ41に伝達される熱量を増加させることにより、キャニスタ41を加熱してパージ動作を実行できるようになったときのキャニスタ41の脱離性能を向上させるため、従来のものと比較して、キャニスタ41の脱離性能を十分に発揮させることができる。
【0093】
なお、本実施の形態においては、アイドルストップ機能によってエンジン2が停止しているときに、ECU5は、エンジン2が一時停止状態にあると判断するものとして説明した。これに対し、ECU5は、他の条件に基づいて、エンジン2が一時停止状態にあると判断するようにしてもよい。
【0094】
例えば、ECU5は、IG97がオフにされる等してエンジン2が停止しているときに、シフトポジションセンサ96によって検出されたシフトポジションに対応するシフトレンジが走行用レンジであることを条件として、エンジン2が一時停止状態にあると判断するようにしてもよい。走行用レンジとしては、車両を駆動するためのレンジであり、例えば、前進用のD(ドライブ)レンジや後進用のR(リバース)レンジ等がある。
【0095】
このように構成した本実施の形態に係る蒸発燃料処理装置のキャニスタ昇温動作について、
図3に示すフローチャートを参照して説明する。なお、以下に説明するキャニスタ昇温動作は、ECU5が起動してから停止するまでの間、繰り返し実行されるものとする。
【0096】
まず、ECU5は、エンジン2が停止しているか否かを判断する(ステップS11)。ここで、エンジン2が停止していると判断した場合には、ECU5は、シフトポジションセンサ96によって検出されたシフトポジションに対応するシフトレンジが走行用レンジであるか否かを判断する(ステップS12)。
【0097】
ここで、シフトポジションセンサ96によって検出されたシフトポジションに対応するシフトレンジが走行用レンジであると判断した場合には、ECU5は、パージ機構42によるパージ動作を禁止し(ステップS13)、キャニスタ41を加熱する(ステップS14)。
【0098】
具体的には、ECU5は、キャニスタ41を加熱している状態にない場合には、FPC84を制御して燃料ポンプ32の駆動電圧を上昇させると共に、燃圧調整用電磁弁53を開弁させることにより、キャニスタ41の加熱を開始する。また、ECU5は、キャニスタ41を加熱している状態にある場合には、この状態を維持する。
【0099】
ステップS11において、エンジン2が停止していないと判断した場合には、ECU5は、パージ動作を許可する(ステップS15)。具体的には、ECU5は、エンジン2が所定の運転状態にあるときに、スロットル開度センサ24bより得られるスロットルバルブ24の開度が予め設定された設定開度より小さい状態となることを条件として、パージ用VSV46を開弁させることによりパージ機構42にパージ動作を実行させる。
【0100】
また、ステップS12において、シフトポジションセンサ96によって検出されたシフトポジションに対応するシフトレンジが走行用レンジでないと判断した場合には、ECU5は、キャニスタ昇温動作を終了する。
【0101】
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る蒸発燃料処理装置を搭載した車両の要部構成、すなわち、走行駆動用の内燃機関とその燃料供給および燃料パージを行う燃料系システムとの機構を示している。
【0102】
本実施の形態は、キャニスタおよびその近傍の構成が第1の実施の形態と相違するものの、他の主要構成は第1の実施の形態と同様なものである。したがって、第1の実施の形態と同様な構成要素については、
図1中に示す対応する構成要素と同一の符号で示し、第1の実施の形態との相違点について、以下に説明する。
【0103】
本発明の第1の実施の形態においては、サクションフィルタ38bと燃料ポンプ32とを接続している吸入配管38の一部が、キャニスタ41の内部を通るように構成されていたが、本実施の形態では、プレッシャレギュレータ83とデリバリーパイプ22とを接続している燃料供給管33の一部が、キャニスタ41の内部を通るように構成されている。
【0104】
具体的には、燃料供給管33は、プレッシャレギュレータ83の出力ポートに接続するレギュレータ側接続部71と、デリバリーパイプ22に接続するデリバリーパイプ側接続部72と、これらレギュレータ側接続部71とデリバリーパイプ側接続部72との間に位置する熱伝達管部73とから構成されている。
【0105】
特に、熱伝達管部73は、キャニスタ41の内部に配置されている。熱伝達管部73は、キャニスタ41の内部において例えば蛇行形状とされている。これにより、燃料ポンプ32から吐出される燃料と燃料が吸着したキャニスタ41の吸着材41bとの接触面積を大きくとることができ、熱伝達量を大きくすることができる。
【0106】
なお、熱伝達管部73の形状は、吸着材41bとの接触面積を大きくすることができるものであれば、蛇行形状に限らず、例えば吸着材41b内で複数経路に分岐し、これら複数経路を並列に配置した形状や渦巻き形状等、種々の形状を採用することができる。
【0107】
ここで、燃料供給管33の熱伝達管部73は、キャニスタケース41aに一体的に結合されており、熱伝達管部73の内壁面によって、キャニスタ41の内部通路の内壁面である熱伝達面41cが形成されている。
【0108】
この熱伝達面41cは、燃料ポンプ32の作動時に燃料タンク31内で流動する燃料、特に、燃料ポンプ32から吐出される燃料をデリバリーパイプ22に案内することができる。また、熱伝達面41cは、燃料ポンプ32から吐出される方向に流動する燃料とキャニスタ41との間で熱伝達させることができるようになっている。
【0109】
すなわち、熱伝達管部73は、その吸入側の燃料とキャニスタ41との間に温度差があるとき、熱伝達面41cにおいて良好な熱伝達がなされるとともに、熱伝達管部73から燃料を吸着した吸着材41bに良好に熱が伝達できるような高熱伝導率の金属素材等で形成されている。
【0110】
また、本発明の第1の実施の形態における還流配管39は、還流方向下流側の一端が吸入配管38に接続されていたが、本実施の形態における還流配管39は、還流方向下流側の一端が内部タンク80の内底面80aに向けて開口している。
【0111】
したがって、還流配管39は、燃料ポンプ32によって吐出された燃料、より詳しくは、燃料ポンプ32から吐出され燃料供給管33およびパイロット配管85内に供給されなかった燃料を内部タンク80の内底面80a付近に設けられたサクションフィルタ38bの周囲に還流させることができる。
【0112】
本実施の形態におけるECU5によるキャニスタ昇温動作については、本発明の第1の実施の形態におけるECU5によるキャニスタ昇温動作と同一であるため、説明を省略する。
【0113】
以上に説明したように、本実施の形態は、本発明の第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。特に、本実施の形態は、燃料供給通路の一部がキャニスタ41によって形成されているため、燃料ポンプ32から吐出された燃料がキャニスタ41内を通る際に熱伝達がなされることにより、キャニスタ41を加熱することができる。
【0114】
(第3の実施の形態)
図5は、本発明の第3の実施の形態に係る蒸発燃料処理装置を搭載した車両の要部構成、すなわち、走行駆動用の内燃機関とその燃料供給および燃料パージを行う燃料系システムとの機構を示している。
【0115】
本実施の形態は、キャニスタおよびその近傍の構成が第1の実施の形態と相違するものの、他の主要構成は第1の実施の形態と同様なものである。したがって、第1の実施の形態と同様な構成要素については、
図1中に示す対応する構成要素と同一の符号で示し、第1の実施の形態との相違点について、以下に説明する。
【0116】
本実施の形態では、還流配管39が、燃料ポンプ32の吐出側近傍の一端側において燃料供給管33から分岐し、他端側において燃料タンク31の内底部付近に下向きに開放されている。
【0117】
また、還流配管39の一部は、キャニスタ41の内部を通るように構成されている。具体的には、還流配管39は、燃料供給管33に接続するポンプ側接続部75と、開放側の開放部76と、これらポンプ側接続部75と開放部76との間に位置する熱伝達管部77とから構成されている。
【0118】
特に、熱伝達管部77は、キャニスタ41の内部に配置されている。熱伝達管部63は、キャニスタ41の内部において例えば蛇行形状とされている。これにより、燃料ポンプ32に吸入される燃料と燃料吸着したキャニスタ41の吸着材41bとの接触面積を大きくとることができ、熱伝達量を大きくすることができる。
【0119】
なお、熱伝達管部77の形状は、吸着材41bとの接触面積を大きくすることができるものであれば、蛇行形状に限らず、例えば吸着材41b内で複数経路に分岐し、これら複数経路を並列に配置した形状や渦巻き形状等、種々の形状を採用することができる。
【0120】
ここで、還流配管39の熱伝達管部77は、キャニスタケース41aに一体的に結合されており、熱伝達管部77の内壁面によって、キャニスタ41の内部通路の内壁面である熱伝達面41cが形成されている。
【0121】
この熱伝達面41cは、燃料ポンプ32の作動時に燃料タンク31内で流動する燃料、特に、燃料ポンプ32から吐出された燃料を燃料タンク31内に案内することができる。また、熱伝達面41cは、燃料ポンプ32から吐出される方向に流動する燃料とキャニスタ41との間で熱伝達させることができるようになっている。
【0122】
すなわち、熱伝達管部77は、その吐出側の燃料とキャニスタ41との間に温度差があるとき、熱伝達面41cにおいて良好な熱伝達がなされるとともに、熱伝達管部77から燃料を吸着した吸着材41bに良好に熱が伝達できるような高熱伝導率の金属素材等で形成されている。
【0123】
本実施の形態におけるECU5によるキャニスタ昇温動作については、本発明の第1の実施の形態におけるECU5によるキャニスタ昇温動作と同一であるため、説明を省略する。
【0124】
以上に説明したように、本実施の形態は、本発明の第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。特に、本実施の形態は、還流通路の一部がキャニスタ41によって形成されているため、燃料ポンプ32から吐出されて還流配管39内に還流された燃料がキャニスタ41内を通る際に熱伝達がなされることにより、キャニスタ41を加熱することができる。
【0125】
(第4の実施の形態)
図6は、本発明の第4の実施の形態に係る蒸発燃料処理装置を搭載した車両の要部構成、すなわち、走行駆動用の内燃機関とその燃料供給および燃料パージを行う燃料系システムとの機構を示している。
【0126】
本実施の形態は、キャニスタおよびその近傍の構成が第1の実施の形態と相違するものの、他の主要構成は第1の実施の形態と同様なものである。したがって、第1の実施の形態と同様な構成要素については、
図1中に示す対応する構成要素と同一の符号で示し、第1の実施の形態との相違点について、以下に説明する。
【0127】
本実施の形態においては、本発明の第1の実施の形態におけるキャニスタ41が内部タンク80を構成する。内部タンク80、すなわち、キャニスタ41は、略円筒状かつ有底に形成され、燃料タンク31の内部に設けられている。
【0128】
キャニスタ41は、筒内部に燃料を貯留させることができるようになっている。具体的には、キャニスタ41には、燃料タンク31内の燃料をキャニスタ41によって形成された筒内に吸引するジェットポンプ81が設けられている。ジェットポンプ81は、燃料ポンプ32の作動量に応じて吸引量が可変するようになっている。
【0129】
キャニスタ41の形状としては、円筒状に限らず角筒状や箱型形状であってもよく、特にその形状が限定されるものではない。キャニスタ41によって形成された筒内部には、燃料ポンプ32、サクションフィルタ38b、燃料フィルタ82およびプレッシャレギュレータ83が収容される。
【0130】
ここで、キャニスタ41によって形成された筒の内面は、熱伝達面41cを形成している。この熱伝達面41cは、燃料ポンプ32の作動時に燃料タンク31内で流動する燃料、特に、燃料ポンプ32から吐出される燃料を吸入方向に案内することができる。
【0131】
また、熱伝達面41cは、燃料タンク31内の燃料のうち燃料ポンプ32から吐出される方向に流動する燃料とキャニスタ41との間で熱伝達させることができるようになっている。
【0132】
すなわち、熱伝達面41cは、その吸入側の燃料とキャニスタ41との間に温度差があるときにおいて良好な熱伝達がなされるとともに、燃料を吸着した吸着材41bに良好に熱が伝達できるような高熱伝導率の金属素材等で形成されている。
【0133】
本実施の形態におけるECU5によるキャニスタ昇温動作については、本発明の第1の実施の形態におけるECU5によるキャニスタ昇温動作と同一であるため、説明を省略する。
【0134】
以上に説明したように、本実施の形態は、本発明の第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。特に、本実施の形態は、燃料ポンプ32から吐出された燃料を積極的にキャニスタ41の筒内に吸入させるため、燃料タンク31内の燃料が少なくなったとしても、キャニスタ41を筒内部から加熱することができる。
【0135】
なお、本発明の第1ないし第4の実施の形態において、ECU5が燃料ポンプ32からキャニスタ41に伝達される熱量を増加させる各構成について説明したが、本発明に係る蒸発燃料処理装置は、ECU5が燃料ポンプ32からキャニスタ41に伝達される熱量を増加させることができる構成であれば、他の構成を採用してもよい。
【0136】
以上のように、本発明に係る蒸発燃料処理装置は、従来のものと比較して、吸着器の脱離性能を十分に発揮させることができるという効果を奏するものであり、燃料タンク内に吸着器が設けられた蒸発燃料処理装置に有用である。