(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の車室内照明装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【0010】
(実施例1)
実施例1の車室内照明装置の構成を、「照明装置の全体構成」、「照明部の詳細構成」、「照明領域の詳細構成」、「照明制御処理の構成」に分けて説明する。
【0011】
[照明装置の全体構成]
図1は、実施例1の車室内照明装置を示す全体構成図である。以下、
図1に基づき、実施例1の照明装置の全体構成を説明する。
【0012】
実施例1の車室内照明装置は、
図1に示すように、運転席ドアDDのドアトリムD1に設けられた複数の照明部(第1照明部1、第2照明部2、第3照明部3、第4照明部4)と、照明コントローラ5と、を備えている。ここでは、車室内照明装置は、運転席ドアDDのドアトリムD1を照明し、その反射光によって車室内を明るくするいわゆる間接照明装置である。
【0013】
前記第1照明部1は、ドアトリムD1に形成された開口部と、この開口部の内側に配置されたランプと、から構成され、車室前部であって車室上部の第1領域Aを照明する。なお、ここで「照明」とは、ドアトリムD1からの反射光によって明るくなることを指し、以下同様である。そして、第1照明部1は、ハンドル照明部1aと、第1中央照明部1bと、前側照明部1cと、を有している。
前記ハンドル照明部1aは、ドアトリムD1のうち、窓枠に沿った上側トリムT1に形成されると共に、ドアハンドルHやドアロックH1が設けられた取付凹部H2の内側に配置されている。前記第1中央照明部1bは、上記上側トリムT1と、上側トリムT1とアームレストRとの間に設けられた中間トリムT2との隙間位置であって、ドアハンドルHの下方に配置されている。前記前側照明部1cは、上側トリムT1と中間トリムT2との隙間であって、運転席ドアDDの前端部近傍に配置されている。
【0014】
前記第2照明部2は、ドアトリムD1に形成された開口部と、この開口部の内側に配置されたランプと、から構成され、第1領域Aよりも車両後方であって車室上部の第2領域Bを照明する。そして、第2照明部2は、上側照明部2aと、第2中央照明部2bと、を有している。
前記上側照明部2aは、ドアハンドルHとほぼ同じ高さであって、ドアハンドルHよりも車両後方位置に配置されている。前記第2中央照明部2bは、上側トリムT1と中間トリムT2との隙間であって、上側照明部2aの下方に配置されている。
【0015】
前記第3照明部3は、ドアトリムD1に形成された開口部と、この開口部の内側に配置されたランプと、から構成され、第1領域Aよりも車両下方であって車室前部の第3領域Cを照明する。そして、第3照明部3は、ポケット照明部3aと、足元照明部3bと、を有している。
前記ポケット照明部3aは、ドアポケットPの開口部近傍であって、ドアハンドルHの下方に配置されている。前記足元照明部3bは、運転席ドアDDの後端部下部に配置されている。
【0016】
前記第4照明部4は、ドアトリムD1に形成された開口部と、この開口部の内側に配置されたランプと、から構成され、運転席ドアDDに設けられたドアポケットPの後部近傍位置に設けられている。この第4照明部4は、第1領域Aよりも車両後方であって車両下方、すなわち、第2領域Bよりも車両下方であって第3領域Cよりも車両後方である第4領域Dを照明する。
【0017】
前記照明コントローラ5は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置、及びRAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等のメモリ素子を有して構成されており、後述する照明制御処理を実行し、第1〜第4照明部1〜4のそれぞれの点灯/照度制御を行う。また、この照明コントローラ5は、タイミング調整部5aを有している。このタイミング調整部5aは、第1〜第4照明部1〜4の照度制御の実行タイミングを調整する演算回路である。
さらに、この照明コントローラ5は、点灯スイッチ6aのON/OFF状態と、着座センサ6bが検出した運転席シートの着座状態と、イグニッションキースイッチ6cのON/OFF状態と、車速センサ6dが検出した車両の走行速度と、が入力され、これらの情報に基づいて照明制御処理を行う。
【0018】
[照明部の詳細構成]
図2は、
図1におけるA−A断面図である。
図3は、
図1におけるB−B断面図である。以下、
図2及び
図3に基づき、実施例1の照明部の詳細構成について説明する。
【0019】
前記第2中央照明部2bは、
図2に示すように、互いに隣接する上側トリムT1と中間トリムT2との間に形成された開口部11と、この開口部11に臨むようにして、開口部11の内側、すなわち、上側トリムT1及び中間トリムT2とアウタパネルOPとによってできる内部空間11aに配置されたランプ12と、を有している。
前記ランプ12は、中間トリムT2に一端が固定された固定用クランプ部材13の他端に挟着されており、開口部11に臨んでいる。そして、ランプ12からの光は、開口部11を通り運転席ドアDDのトリム表面を照明する。なお、前側照明部1c、第1中央照明部1bの構成は、上記第2中央照明部2bとほぼ同等であるため、ここでは説明を省略する。
【0020】
次に、上側照明部2aの構成について説明する。
前記上側照明部2aは、
図3に示すように、上側トリムT1に形成された円形状の開口部14と、この開口部14に臨むようにして、開口部14の内側、すなわち上側トリムT1に覆われた内部空間14aに配置されたランプ15と、を有している。
前記ランプ15は、固定用クランプ部材16を介して上側トリムT1に保持されており、開口部14に臨んでいる、そして、ランプ15からの光は、開口部14を通り運転席ドアDDの表面を照明する。なお、ハンドル照明部1a、ポケット照明部3a、足元照明部3b、第4照明部4の構成は、上記上側照明部2aとほぼ同等であるため、ここでは説明を省略する。
【0021】
[照明領域の詳細構成]
図4は、実施例1の車室内照明装置における照明領域を模式的に示す説明図である。以下、
図4に基づき、実施例1の照明装置における照明領域の詳細構成について説明する。
【0022】
前記第1領域Aは、
図4に示すように、運転席シートSに着座したドライバーDRのアイポイントEPの直前位置(以下「EP前部」という)L1よりも前側であって、運転席ドアDDに設けられたアームレストRが設けられた高さ位置(以下「アームレスト位置」という)W1よりも上方の領域である。
ここで、「アイポイントEP」とは、ドライバーDRの目の位置であり、「EP前部」とは、ドライバーDRが前方を注視した状態で目視可能な領域の境界位置である。このEP前部L1よりも後方領域は、ドライバーDRが前方を注視した状態では視認することができない。
【0023】
この第1領域Aは、
図4に示すように、ステアリングSRの設定位置(以下「ステアリング位置」という)L2によって車両前後方向に区画されると共に、ドアハンドルHが設けられた高さ位置(以下「ドアハンドル位置」という)W2によって車両上下方向に区画される。そして、この第1領域Aのうち、ステアリング位置L2よりも車両前方であってドアハンドル位置W2よりも車両上方の領域を第1-1領域Aaという。また、ステアリング位置L2とEP前部L1の間であってドアハンドル位置W2よりも車両上方の領域を第1-2領域Abという。また、ステアリング位置L2よりも車両前方であってドアハンドル位置W2とアームレスト位置W1の間の領域を第1-3領域Acという。また、ステアリング位置L2とEP前部L1の間であってドアハンドル位置W2とアームレスト位置W1の間の領域を第1-4領域Adという。
【0024】
前記第1-1領域Aaは、図示しないインストルメントパネル等が配置される領域であり照明されない。前記第1-2領域Abは、第1照明部1のハンドル照明部1aによって照明される。前記第1-3領域Acは、第1照明部1の前側照明部1cによって照明される。前記第1-4領域Adは、第1照明部1の第1中央照明部1bによって照明される。
【0025】
前記第2領域Bは、
図4に示すように、EP前部L1よりも後側であって、アームレスト位置W1よりも上方の領域である。さらに、この第2領域Bは、運転席シートSに着座したドライバーDRの体幹位置L3によって車両前後方向に区画されると共に、ドアハンドル位置W2によって車両上下方向に区画される。
ここで「体幹位置」とは、運転席シートSに着座したドライバーDRの肩の位置であり、ドライバーDRが頭部を固定した状態で目を動かすことで目視可能な領域の境界位置である。この体幹位置L3よりも後方領域は、ドライバーDRが頭部を固定した状態では視認することができない。
【0026】
そして、この第2領域Bのうち、EP前部L1と体幹位置L3の間であってドアハンドル位置W2よりも車両上方の領域を第2-1領域Baという。また、体幹位置L3よりも車両後方であってドアハンドル位置W2よりも車両上方の領域を第2-2領域Bbという。
また、EP前部L1と体幹位置L3の間であってドアハンドル位置W2とアームレスト位置W1の間の領域を第2-3領域Bcという。また、体幹位置L3よりも車両後方であってドアハンドル位置W2とアームレスト位置W1の間の領域を第2-4領域Bdという。
【0027】
前記第2-1領域Baは、第2照明部2の上側照明部2aによって照明される。前記第2-2領域Bbは、ドライバーDRの視界に入らないため照明されない。前記第2-3領域Bcは、第2照明部2の第2中央照明部2bによって照明される。前記第2-4領域Bdは、ドライバーDRの視界に入らないため照明されない。
【0028】
前記第3領域Cは、
図4に示すように、EP前部L1よりも前側であって、アームレスト位置W1よりも下方の領域である。さらに、この第3領域Cは、ステアリング位置L2によって車両前後方向に区画される。そして、この第3領域Cのうち、ステアリング位置L2よりも車両前方の領域を第3-1領域Caという。また、ステアリング位置L2よりも車両後方でEP前部L1よりも前側の領域を第3-2領域Cbという。
【0029】
前記第3-1領域Caは、第3照明部3の足元照明部3bによって照明される。前記第3-2領域Cbは、第3照明部3のポケット照明部3aによって照明される。
【0030】
前記第4領域Dは、
図4に示すように、EP前部L1よりも後側であって、アームレスト位置W1よりも下方の領域である。さらに、この第4領域Dは、体幹位置L3によって車両前後方向に区画される。そして、この第4領域Dのうち、EP前部L1よりも後側で体幹位置L3よりも車両前方の領域を第4-1領域Daという。また、体幹位置L3よりも車両後方の領域を第4-2領域Dbという。
【0031】
前記第4-1領域Daは、第4照明部4によって照明される。前記第4-2領域Dbは、ドライバーDRの視界に入らないため照明されない。
【0032】
[照明制御処理の構成]
図5は、実施例1の車室内照明装置における照明制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、
図5に基づき、実施例1の照明制御処理構成を表す各ステップについて説明する。なお、この
図5に示す照明制御処理は、照明コントローラ5によって実行される。
【0033】
ステップS1では、点灯スイッチ6aがON操作されたか否かを判断する。YES(ON操作)の場合にはステップS2へ進む。NO(OFF操作)の場合にはステップS1を繰り返す。
ここで、点灯スイッチ6aは、車室内及び携帯可能なインテリジェントキーにそれぞれ設けられ、車外からの操作も可能となっている。
なお、点灯スイッチ6aの操作判断は、点灯スイッチ6aからの操作信号に基づいて行われる。
【0034】
ステップS2では、ステップS1での点灯スイッチ6aON操作との判断に続き、第1照明部1〜第4照明部4のすべての照明部を最大照度にて点灯し、ステップS3へ進む。ここで、「最大照度」は、4lm/m
2とする。なお、各照明部1〜4の最大照度は一律に同じとする。
【0035】
ステップS3では、ステップS2での照明部点灯に続き、運転席シートSにドライバーDRが着座しているか否かを判断する。YES(着座)の場合には、車両へのドライバー乗り込み完了(運転準備完了)としてステップS4へ進む。NO(非着座)の場合には、車両のドライバーDRが乗り込んでおらず運転準備ができていないとしてステップS2へ戻る。
なお、運転席シートSへの着座判定は、着座センサ6bからの検出信号に基づいて行われる。
【0036】
ステップS4では、ステップS3でのドライバー着座との判断に続き、第1照明部1〜第4照明部4のすべての照明部の照度を一律に低減し、ステップS5へ進む。ここで、照度は予め設定した第1照度に設定される。このとき、各照明部1〜4の照度の変化タイミングは、タイミング調整部5aによって調整され、すべての照明部が同期して照度変化する。ここで、「同期して」とは、照度変化開始及び完了のタイミングと、変化速度が、すべての照明部において同じことを指す。以下、実施例1の車室内照明装置で照度変化する際はすべて各照明部1〜4が同期して変化する。
また、「第1照度」は、ここでは2lm/m
2と
【0037】
ステップS5では、ステップS4での照度一律低減に続き、イグニッションキースイッチ6cがON操作されたか否かを判断する。YES(ON操作)の場合にはエンジンスタートしたとしてステップS6へ進む。NO(OFF操作)の場合にはエンジンはスタートしていないとしてステップS4へ戻る。
なお、イグニッションキースイッチ6cの操作判断は、イグニッションキースイッチ6cからの操作信号に基づいて行われる。
【0038】
ステップS6では、ステップS5でのイグニッションキースイッチ6cON操作との判断に続き、第1照明部1〜第4照明部4のすべての照明部の照度を一律に低減し、ステップS7へ進む。ここで、照度は予め設定した第1照度よりも低い第2照度に設定され、視界に影響を与えないように最大照度の4分の1となるように、「第2照度」を1lm/m
2とする。
【0039】
ステップS7では、ステップS6での照度一律低減に続き、車両が走行中であるか否かを判断する。YES(走行中)の場合にはステップS8へ進む。NO(停車)の場合にはステップS6へ戻る。
なお、走行判断は、車速センサ6dからの検出信号に基づいて行われ、一定速度以上であれば走行中と判断する。
【0040】
ステップS8では、ステップS7での走行中との判断に続き、第1照明部1〜第4照明部4の各照明部の照度を個別に低減し、ステップS9へ進む。ここで、照度は照明部ごとに予め設定しておく。ここでは、
図6に示す表のように設定される。
なお、各照度の大きさは、第3照度>第4照度>第5照度>第6照度となっており、照度が大きい(高い)ほど明るくなる。すなわち、第3-2領域Cbを照明するポケット照明部3a、及び、第4-1領域Daを照明する第4照明部4の照度の低下率が最も低くなり、比較的最も明るくなる。一方、第2-1領域Baを照明する上側照明部2aの照度の低下率が最も高くなり、比較的最も暗くなる。
ここでは、「第3照度」を第2照度と同じ1lm/m
2とし、「第4照度」を0.5lm/m
2とし、「第5照度」を0.1lm/m
2とし、「第6照度」を0.05lm/m
2とする。
【0041】
ステップS9では、ステップS8での照度個別制御に続き、車両が停車したか否かを判断する。YES(停車)の場合にはステップS10へ進む。NO(走行中)の場合にはステップS8へ戻る。
なお、停車判断は、車速センサ6dからの検出信号に基づいて行われ、一定速度未満であれば停車と判断する。
【0042】
ステップS10では、ステップS9での停車との判断に続き、第1照明部1〜第4照明部4の各照明部の照度を個別に上昇し、すべての照明部の照度を一律に同じとし、ステップS11へ進む。ここで、照度は予め設定した第2照度に設定される。
【0043】
ステップS11では、ステップS10での照度上昇に続き、イグニッションキースイッチ6cがOFF操作されたか否かを判断する。YES(OFF操作)の場合にはエンジン停止(降車準備完了)したとしてステップS12へ進む。NO(ON操作)の場合にはエンジンは指定していない(降車準備未完了)としてステップS10へ戻る。
なお、イグニッションキースイッチ6cの操作判断は、イグニッションキースイッチ6cからの操作信号に基づいて行われる。
【0044】
ステップS12では、ステップS11でのイグニッションキースイッチ6cOFF操作との判断に続き、第1照明部1〜第4照明部4のすべての照明部の照度を一律に上昇し、ステップS13へ進む。ここで、照度は予め設定した第1照度に設定される。
【0045】
ステップS13では、ステップS12での照度一律上昇に続き、運転席シートSにドライバーDRが着座していないか否かを判断する。YES(非着座)の場合には、車両からドライバーDRが降車したとしてステップS14へ進む。NO(着座)の場合には、車両からドライバーDRが降車していないとしてステップS12へ戻る。
なお、運転席シートSへの着座判定は、着座センサ6bからの検出信号に基づいて行われる。
【0046】
ステップS14では、ステップS13でのドライバー非着座との判断に続き、第1照明部1〜第4照明部4のすべての照明部の照度を一律に上昇し、最大照度に設定した後エンドへ進む。
【0047】
次に、作用を説明する。まず、「ドライバーが感じる照明煩わしさとその課題」について説明し、続いて、実施例1の車室内照明装置における照明作用を説明する。
【0048】
[ドライバーが感じる照明煩わしさとその課題]
図7は、着座したドライバーの視界を示す説明図である。以下、
図7に基づき、ドライバーが感じる照明煩わしさとその課題について説明する。
【0049】
運転席シートSに着座したドライバーDRが車両前方を注視した場合、
図7に示す第1視野(ここでは下方角0°〜40°)αが、頭部を固定した状態で眼球のみ動かした際に目視可能な範囲である。また、
図7に示す第2視野(ここでは下方角40°〜90°)βが、体を固定した状態で頭部を動かした際に目視可能な範囲である。すなわち、第1視野αはドライバーDRから比較的見えやすい領域となり、第2視野βはドライバーDRから比較的見えにくい領域となる。
【0050】
また、運転席ドアDDから車室内に最も突出した部位はアームレストRである。そのため、このアームレストRより下方の領域は、アームレストRによって視界が遮られるので、運転席シートSに着座したドライバーDRから比較的見えにくい領域となる。一方、アームレストRより上方の領域は、ドライバーDRの頭部に近い上、視界を遮るものがないので、運転席シートSに着座したドライバーから比較的見えやすい領域となる。
【0051】
これに対し、ドライバーDRから比較的見えやすい領域は照明感度が高いことが分かっている。そして、照明感度が高い領域では、同じ照度の照明で照らした場合に、照明感度が低い領域(比較的見えにくい領域)と比べて眩しく感じやすく、煩わしさを強く感じ、安心感や新しさといった印象を受けにくい。
【0052】
つまり、第1視野αは照明感度の比較的高く、光の煩わしさを感じやすい領域となり、第2視野βは照明感度の比較的低く、光の煩わしさを感じにくい領域となる。また、アームレストRより上方の領域は照明感度の比較的高く、光の煩わしさを感じやすい領域となり、アームレストRより下方の領域は照明感度の比較的低く、光の煩わしさを感じにくい領域となる。このように、運転席シートSに着座したドライバーDRに対して、車室内の領域ごとに照明感度が異なるため、車室内の領域ごとに照明の煩わしさが異なるという問題があった。
【0053】
さらに、ドライバーDRの見え方は、下方角(視野角)によって車両前後方向で異なるが、これに加えて、アームレストRによって視界が遮られることで、車両上下方向によっても異なる。すなわち、例えば、車両上下方向で照明照度を異ならせたとしても、下方角(視野角)によって車両前後方向で見え方が異なっているので、煩わしさを十分に低減することは難しい。また、車両前後方向で照明照度を異ならせたとしても、アームレストRによって車両上下方向で見え方が異なっているので、煩わしさを十分に低減することは難しい。
【0054】
これにより、ドライバーDRが感じる照明の煩わしさを低減するためには、車両の上下方向及び前後方向のそれぞれで照明照度を異ならせることで、照度にメリハリをつける必要があることが分かる。
【0055】
なお、ドライバーDRが感じる煩わしさを低減するために、車室内照明の照度を一律に低下させ、暗くした場合を考える。この場合では、煩わしさは低減するものの、比較的煩わしさを感じにくい領域も暗くなってしまい、車室内全体が暗くなる。そのため、照明効果を十分に得ることができなくなってしまう。
【0056】
[照明制御作用]
図8は、実施例1の車室内照明装置において、車両状態に対するハンドル照明部の照度特性と第4照明部の照度特性とを示すタイムチャートである。なお、
図8中、一点鎖線はハンドル照明部の照度特性を示し、二点鎖線は第4照明部の照度特性を示す。以下、
図8に基づき、実施例1の車室内照明装置の照明制御作用について説明する。
【0057】
図8に示す時刻t1において、点灯スイッチ6aがON操作されると、
図5に示すフローチャートでステップS1→ステップS2へと進み、第1照明部1〜第4照明部4のすべての照明部が点灯する。このときの各照明部1〜4の照度は、それぞれ最大照度となる。このとき、各照明部1〜4の最大照度は一律に同じとなっているため、
図8に示すように、ハンドル照明部1aと第4照明部4の照度は同じ値となる。
【0058】
時刻t2において、運転席シートSにドライバーDRが着座すると、ステップS3→ステップS4へと進み、第1照明部1〜第4照明部4のすべての照明部の照度を一律に低減し第1照度に設定される。すなわち、ハンドル照明部1aと第4照明部4の照度は、それぞれ第1照度に設定される。
【0059】
時刻t3において、イグニッションキースイッチ6cがON操作されると、ステップS5→ステップS6へと進み、第1照明部1〜第4照明部4のすべての照明部の照度をさらに一律に低減し第2照度に設定される。これにより、ハンドル照明部1aと第4照明部4の照度は、共に第2照度に設定される。
【0060】
時刻t4において、車速が一定速度に達したら走行中になったと判断し、ステップS7→ステップS8へと進み、第1照明部1〜第4照明部4の各照明部の照度を個別に低減する。このときの各照明部1〜4の設定照度は、
図6に示すように予め設定されている。すなわち、ハンドル照明部1aは第5照度に設定され、第4照明部4は第3照度に設定される。また、最も照度が高い(明るい)照明部は、第4照明部4及び第3照明部3のポケット照明部3aである。また、最も照度が低い(暗い)照明部は、第2照明部2の上側照明部2aである。
【0061】
そして、ハンドル照明部1aは、
図4に示す第1-2領域Abを照明する照明部である。そして、第1-2領域Abは、ステアリング位置L2とEP前部L1の間であってドアハンドル位置W2よりも車両上方の領域であり、ドライバーDRの視界に比較的入りやすい領域である。一方、第4照明部4は、第4-1領域Daを照明する照明部である。そして、第4-1領域Daは、アームレスト位置W1よりも下方の領域であって、EP前部L1よりも後側で体幹位置L3よりも車両前方の領域である。そのため、ドライバーDRの視界に比較的は入りにくい領域となっている。
つまり、走行中では、車両上側で車両前方のドライバーDRの視界に入りやすい領域を照明する照明部(ハンドル照明部1a)の照度は比較的低く設定される。また、車両下側で車両後方のドライバーDRの視界に入りにくい領域を照明する照明部(第4照明部4)の照度は比較的高く設定される。
【0062】
時刻t5において、車速が一定速度未満になったら停車したと判断し、ステップS9→ステップS10へと進み、第1照明部1〜第4照明部4の各照明部の照度を個別に上昇させる。このときの各照明部1〜4の設定照度は、予め設定された一定照度(ここでは第2照度)に設定される。これにより、ハンドル照明部1aと第4照明部4の照度は、共に第2照度に設定される。
【0063】
時刻t6において、イグニッションキースイッチ6cがOFF操作されると、ステップS11→ステップS12へと進み、第1照明部1〜第4照明部4のすべての照明部の照度をさらに一律に上昇し第1照度に設定される。これにより、ハンドル照明部1aと第4照明部4の照度は、共に第1照度に設定される。
【0064】
時刻t7において、運転席シートSからドライバーDRが離席する(非着座状態になる)と、ステップS13→ステップS14へと進み、第1照明部1〜第4照明部4のすべての照明部の照度を一律に上昇し最大照度に設定される。すなわち、ハンドル照明部1aと第4照明部4の照度は、それぞれ同じ明るさの最大照度に設定される。
【0065】
このように、実施例1の車室内照明装置では、車両の走行中、第1領域Aの第1-2領域Abを照明するハンドル照明部1aの照度と、第4領域Dの第4-1領域Daを照明する第4照明部4の照度と、を相対的に異ならせる。
そのため、車室内の領域ごとにドライバーDRが感じる照明の煩わしさが異なるものの、車両前後方向及び車両上下方向のいずれにおいても異なる2つの領域の照度に差をつけることで、煩わしさを低減すると同時に、必要な明るさを確保することができる。これにより、ドライバーDRが煩わしく感じることを防止しながら、車室内を適切に照明することができる。
【0066】
特に、実施例1では、車両の走行中に、第4照明部4の照度を比較的高い第3照度に設定し、ハンドル照明部1aの照度を比較的低い第5照度に設定している。つまり、第4照明部4の照度よりも第1照明部1のハンドル照明部1aの照度の方を低く設定している。
このため、ドライバーDRから見やすく照明感度が高い領域では、照度を落として暗くし、ドライバーDRから見にくく照明感度が低い領域では、照度を高くして明るくしておくことができる。これにより、光の煩わしさを感じやすさに合わせて照度を適切に制御することができ、さらに煩わしさを感じにくくすることができる。
【0067】
また、実施例1では、車両の走行中に、第3照明部3のポケット照明部3aの照度を比較的高い第3照度に設定し、第2照明部2の上側照明部2aの照度を比較的低い第5照度に設定している。つまり、第3照明部3の照度よりも第2照明部2の照度の方を低く設定している。
これにより、ドライバーDRから見えやすい領域では照度を低くし、ドライバーDRから見えにくい領域では照度を高くすることができる。この結果、光の煩わしさを感じやすさに合わせて照度を適切に制御することができ、さらに煩わしさを感じにくくすることができる。
【0068】
そして、実施例1では、第1領域A〜第4領域Dを、車室内に着座すると共に正面を目視したドライバーDRの視野に応じて区分けすると共に、車室内に設置されたアームレストRの位置に応じて区分けしている。すなわち、第1領域A及び第3領域Cと、第2領域Bと第4領域Dとは、EP前部L1によって区分けしている。また、第1領域A及び第2領域Bと、第3領域Cと第4領域Dとは、アームレスト位置W1によって区分けしている。
ここで、EP前部L1は、ドライバーDRの視界に入るか入らないかの基準となる位置である。また、アームレスト位置W1は、アームレストRによってドライバーDRの視界が遮られるか遮られないかの基準となる位置である。
そのため、ドライバーDRからの見えにくさに対して、照明する領域の区分けを適切な位置で行うことができ、照明制御を適切に行うことができる。
【0069】
しかも、実施例1では、タイミング調整部5aによって、第1照明部1〜第4照明部4のすべての照明部の照度変化が同期して実行される。そのため、車室内の極端な照度変化を抑制し、ドライバーDRに煩わしさをさらに感じさせにくくすることができる。
【0070】
次に、効果を説明する。
実施例1の車室内照明装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0071】
(1) 車室前部であって車室上部の第1領域Aを照明する第1照明部1と、
前記第1領域Aよりも車両後方であって車室上部の第2領域Bを照明する第2照明部2と、
前記第1領域Aよりも車両下方であって車室前部の第3領域Cを照明する第3照明部3と、
前記第1領域Aよりも車両後方であって車両下方の第4領域Dを照明する第4照明部4と、
車両の走行中に、少なくとも、前記第1照明部1の照度と前記第4照明部4の照度を相対的に異ならせる、或いは、前記第2照明部2の照度と前記第3照明部3の照度を相対的に異ならせる照明コントローラ5と、を備える構成とした。
これにより、ドライバーDRが煩わしく感じることを防止しながら、車室内を適切に照明することができる。
【0072】
(2) 前記照明コントローラ5は、前記各照明部(第1照明部〜第4照明部)1〜4の制御タイミングを調整するタイミング調整部5aを有し、前記各照明部1〜4の照度変化を同期させて行う構成とした。
これにより、車室内の極端な照度変化を抑制し、ドライバーDRに煩わしさをさらに感じさせにくくすることができる。
【0073】
(3) 前記照明コントローラ5は、車両の走行中に、前記第4照明部4の照度よりも、前記第1照明部1の照度の方を低く設定する構成とした。
これにより、光の煩わしさを感じやすさに合わせて照度を適切に制御することができ、さらに煩わしさを感じにくくすることができる。
【0074】
(4) 前記照明コントローラ5は、車両の走行中に、前記第3照明部3の照度よりも、前記第2照明部2の照度の方を低く設定する構成とした。
これにより、光の煩わしさを感じやすさに合わせて照度を適切に制御することができ、さらに煩わしさを感じにくくすることができる。
【0075】
(5) 前記第1照明部1及び前記第3照明部3と、前記第2照明部2及び前記第4照明部4とは、車室内に着座すると共に正面を目視したドライバーDRの視野に応じて区分けする構成とした。
これにより、ドライバーDRからの見えにくさに対して、照明する領域の区分けを適切な位置で行うことができ、照明制御を適切に行うことができて、さらに煩わしさを感じにくくすることができる。
【0076】
(6) 前記第1照明部1及び前記第2照明部2と、前記第3照明部3及び前記第4照明部4とは、車室内に設置されたアームレストRの位置に応じて区分けする構成とした。
これにより、ドライバーDRからの見えにくさに対して、照明する領域の区分けを適切な位置で行うことができ、照明制御を適切に行うことができて、さらに煩わしさを感じにくくすることができる。
【0077】
以上、本発明の車室内照明装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0078】
実施例1では、第1照明部1〜第4照明部4は、それぞれ運転席ドアDDのドアトリムD1を照明する間接照明装置である例を示した。しかしながら、これに限らず、例えばドライバーDRの手元や足元を照明する直接照明装置であってもよいし、間接照明と直接照明の組み合わせであってもよい。いずれの場合であっても、車室内の前後方向及び上下方向のそれぞれで異なる領域の照度を相対的に異ならせることで、走行中にドライバーDRが感じる煩わしさを防止しつつ、適切な照明を確保することができる。
【0079】
また、実施例1では、車室内をEP前部L1及びアームレスト位置W1で区分けした上、車両前後方向をステアリング位置L2及び体幹位置L3によってさらに区分けすると共に、車両上下方向をドアハンドル位置W2によってさらに区分けした例を示した。しかしながら、これに限らず、任意の位置で車両前後方向及び車両上下方向を区分けしてもよい。
【0080】
また、実施例1では、例えば第1-2領域Ab、第1-3領域Ac、第1-4領域Ad等の区分けした各領域ごとに、ハンドル照明部1aや第1中央照明部1b、前側照明部1c等の照明部を一つずつ対応して設けた例を示した。しかしながら、これに限らず、区分けした一つの領域に複数の照明部を設けてもよいし、複数の領域を一つの照明部によって照明してもよい。さらに、ドライバーDRの体格に合うように照明制御する照明部を異ならせてもよい。
【0081】
本出願は、2012年12月13日に日本国特許庁に出願された特願2012−272283に基づいて優先権を主張し、その全ての開示は完全に本明細書で参照により組み込まれる。