特許第5835513号(P5835513)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5835513
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】プリプレグおよび繊維強化複合材料
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/24 20060101AFI20151203BHJP
【FI】
   C08J5/24CFC
【請求項の数】10
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-88084(P2015-88084)
(22)【出願日】2015年4月23日
(62)【分割の表示】特願2014-536024(P2014-536024)の分割
【原出願日】2014年7月24日
(65)【公開番号】特開2015-157958(P2015-157958A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2015年7月27日
(31)【優先権主張番号】特願2013-155427(P2013-155427)
(32)【優先日】2013年7月26日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-155428(P2013-155428)
(32)【優先日】2013年7月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】永野 麻紀
(72)【発明者】
【氏名】森 綾子
(72)【発明者】
【氏名】富岡 伸之
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−102228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/24
C08G 59/00
C08L 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の構成要素[A]、[B]および[C]からなるエポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させてなるプリプレグであって、エポキシ樹脂の総量100質量部中に[A]を10〜70質量部、[Bx]を20〜80質量部含むプリプレグ
[A]式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂;
【化1】
ただし、式中、環Zは縮合多環式芳香族炭化水素環、RおよびRは置換基、Rは水素原子またはメチル基を示し、kは0〜4の整数、mは0以上の整数、nは1以上の整数である;
Bx]ビスフェノール型エポキシ樹脂
C]ポリアミン硬化剤。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂組成物は、さらにポリエーテルスルホンおよびポリアミド粒子からなる群から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂[Bz]をエポキシ樹脂の総量100質量部に対して2〜30質量部含む、請求項に記載のプリプレグ。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂組成物は、さらにエラストマー[D]をエポキシ樹脂の総量100質量部に対して2〜15質量部含む、請求項1または2に記載のプリプレグ。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂組成物の80℃における複素粘性率が0.1〜200(Pa・s)の範囲にある、請求項1〜のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項5】
強化繊維が炭素繊維である、請求項1〜のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項6】
強化繊維およびエポキシ樹脂組成物の硬化物を含有する繊維強化複合材料であって、該エポキシ樹脂組成物が次の構成要素[A]、[B]および[C]からなり、エポキシ樹脂の総量100質量部中に[A]を10〜70質量部、[Bx]を20〜80質量部含むエポキシ樹脂組成物である、繊維強化複合材料。
[A]式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂;
【化2】
ただし、式中、環Zは縮合多環式芳香族炭化水素環、RおよびRは置換基、Rは水素原子またはメチル基を示し、kは0〜4の整数、mは0以上の整数、nは1以上の整数である
Bx]ビスフェノール型エポキシ樹脂
C]ポリアミン硬化剤。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂組成物は、さらにポリエーテルスルホンおよびポリアミド粒子からなる群から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂[Bz]をエポキシ樹脂の総量100質量部に対して2〜30質量部含む、請求項6に記載の繊維強化複合材料。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂組成物は、さらにエラストマー[D]をエポキシ樹脂の総量100質量部に対して2〜15質量部含む、請求項6または7に記載の繊維強化複合材料。
【請求項9】
前記エポキシ樹脂組成物の80℃における複素粘性率が0.1〜200(Pa・s)の範囲にある、請求項6〜8のいずれかに記載の繊維強化複合材料。
【請求項10】
強化繊維が炭素繊維である、請求項6〜9のいずれかに記載の繊維強化複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空宇宙用途に適した繊維強化複合材料、これを得るためのプリプレグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、炭素繊維やアラミド繊維などの強化繊維を用いた繊維強化複合材料は、その高い比強度および比弾性率を利用して、航空機や自動車の構造材料、テニスラケット、ゴルフシャフト、釣り竿などのスポーツ用途、一般産業用途などに利用されてきた。繊推強化複合材料の製造方法としては、強化繊維に未硬化のマトリックス樹脂が含浸されたシート状中間材料であるプリプレグを用い、それを複数枚積層した後、加熱硬化させる方法や、モールド中に配置した強化繊維に液状の樹脂を流し込こんだ後、樹脂を加熱硬化させるレジン・トランスファー・モールディング法などが用いられている。
【0003】
これらの製造方法のうち、プリプレグを用いる方法は、強化繊維の配向を厳密に制御でき、また積層構成の設計自由度が高いことから、高性能な繊維強化複合材料を得やすい利点がある。このプリプレグに用いられるマトリックス樹脂としては、耐熱性や生産性の観点から、主に熱硬化性樹脂が用いられる。中でも樹脂と強化繊維との接着性や寸法安定性、および得られる複合材料の強度や剛性といった力学特性の観点からエポキシ樹脂が好適に用いられる。
【0004】
その中で、優れた強度特性および耐久安定性の求められる航空宇宙用途向け繊維強化複合材料用のマトリックス樹脂として、エポキシ当量が小さく架橋密度の高い硬化物が得られるアミン型エポキシ樹脂が好適に用いられてきた。これにより、高弾性率でありかつ耐熱性の高い樹脂硬化物が得られる一方、変形能力が小さく靭性の低い樹脂硬化物となる傾向があった。
【0005】
そこで、エポキシ樹脂の靱性を向上させる方法として、靱性に優れるゴム成分や熱可塑性樹脂を配合し、エポキシ樹脂と相分離構造を形成させる方法などが試されてきた。しかし、これらの方法では、弾性率あるいは耐熱性の低下や、増粘によるプロセス性の悪化、ボイド発生等の品位低下を招きやすいという問題があった。
【0006】
これに対し近年、スチレン−ブタジエン−メタクリル酸メチルからなる共重合体や、ブタジエン−メタクリル酸メチルからなるブロック共重合体などのブロック共重合体を配合することで、エポキシ樹脂の硬化過程で微細な相分離構造を安定して形成し、エポキシ樹脂の靭性を大きく向上させる方法が提案されている(特許文献1、特許文献2)。ただし、これらの手法では依然として、プロセス性に悪影響の無いように、ブロック共重合体の配合量は少なくせざるを得ず、エポキシ樹脂に十分な靱性を付与できない傾向があった。また、このようなエポキシ樹脂の硬化物は高い吸水性を示し、高温高湿の環境下において繊維強化複合材料としての強度特性が不十分であることが課題であった。
【0007】
また、エポキシ樹脂の靱性を向上させる別の方法として、架橋密度を抑えつつ、強度特性と耐熱性を付与できる剛直なエポキシ樹脂を併用する方法なども試されてきた(特許文献3、特許文献4)。例えば、特許文献4では、アミン型エポキシ樹脂とフルオレン型エポキシ樹脂を併用することで、靱性と耐熱性を得られることが開示されている。しかし、かかる方法では依然として、樹脂硬化物の弾性率や繊維強化複合材料としての強度特性が不十分な場合があった。
【0008】
近年、エポキシ樹脂そのものについても改良が進んでおり、航空機材料レベルの耐熱性を確保しつつ架橋密度を大幅に低減できるエポキシ樹脂が開発されている。例えば、特許文献5では、縮合多環基を導入したフルオレン型エポキシ樹脂をフェノールノボラック樹脂で硬化させることで、極めて高い耐熱性と弾性率が両立できることが開示されている。ただし、この場合でも、得られる樹脂硬化物は、伸度が低く脆いものとなり、大幅な靱性向上に繋がるものではなかった。また、配合量や他の成分との組合せについては何ら言及されておらず、それらを用いて得られるエポキシ樹脂組成物の物性に関する知見は皆無であると言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−1514160号公報
【特許文献2】国際公開第2010/035859号
【特許文献3】特開2005−298815号公報
【特許文献4】特開2012−102228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、耐熱性、靭性および弾性率に優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグおよび繊維強化複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、次の構成要素[A]、[B]および[C]からなるエポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させてなるプリプレグであって、エポキシ樹脂の総量100質量部中に[A]を10〜70質量部、[Bx]を20〜80質量部含むプリプレグである
[A]式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂;
【0012】
【化1】
【0013】
ただし、式中、環Zは縮合多環式芳香族炭化水素環、RおよびRは置換基、Rは水素原子またはメチル基を示し、kは0〜4の整数、mは0以上の整数、nは1以上の整数である;
Bx]ビスフェノール型エポキシ樹脂
C]ポリアミン硬化剤。
【0018】
本発明の別の態様は、強化繊維および上記のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物を含む繊維強化複合材料である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、耐熱性、靭性および弾性率に優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグおよび繊維強化複合材料が得られる。
【0020】
また、本発明よれば、さらに耐湿熱性に優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグおよび繊維強化複合材料が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に用いられるエポキシ樹脂組成物(以下、本発明のエポキシ樹脂組成物、ということがある。)は、次の構成要素[A]、[B]および[C]からなるエポキシ樹脂組成物であって、エポキシ樹脂の総量100質量部中に[A]を10〜70質量部、[Bx]を20〜80質量部含む
[A]式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂;
【0024】
【化2】
【0025】
ただし、式中、環Zは縮合多環式芳香族炭化水素環、RおよびRは置換基、Rは水素原子またはメチル基を示し、kは0〜4の整数、mは0以上の整数、nは1以上の整数である;
Bx]ビスフェノール型エポキシ樹脂
C]ポリアミン硬化剤。
【0026】
このような組成を有することで、耐熱性、靭性および弾性率に優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物が得られる。かかるエポキシ樹脂組成物を用いることで、圧縮強度および層間靱性に優れた繊維強化複合材料が得られる。
【0027】
エポキシ樹脂組成物が、式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂[A]を含むことにより、高温高湿環境下においても硬化物の吸水が抑えられ、耐熱性と樹脂弾性率を保持できる。また、それにより、得られる繊維強化複合材料の高い圧縮強度を維持できる。
【0028】
式(1)において、環Zで表される縮合多環式芳香族炭化水素環としては、縮合二環式炭化水素環(好ましくは、インデン環、ナフタレン環などのC8−20縮合二環式炭化水素環、より好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素環)、縮合三環式炭化水素環(好ましくは、アントラセン環、フェナントレン環など)などの縮合二ないし四環式炭化水素環などが挙げられる。好ましい縮合多環式芳香族炭化水素環としては、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられ、特にナフタレン環が好ましい。なお、式(1)において、2つの環Zは同一の環であっても異なる環であってもよい。
【0029】
なお、フルオレンの9位に結合する環Zの結合位置は、特に限定されず、例えば、環Zがナフチル環の場合、1−ナフチル、2−ナフチルのいずれでもよい。特に2−ナフチルが好ましい。
【0030】
また、式(1)において、置換基Rとしては、例えば、シアノ基、ハロゲン原子、炭化水素基などの非反応性置換基が挙げられる。中でもハロゲン原子、シアノ基またはアルキル基が好ましく、アルキル基が特に好ましい。
【0031】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。
【0032】
炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アリール基などが挙げられる。アルキル基としては、C1−6アルキル基が好ましく、C1−4アルキル基がより好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などが例示でき、メチル基が特に好ましい。アリール基としては、C6−10アリール基が好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0033】
なお、kが2以上である場合、基Rは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、フルオレンを構成する2つのベンゼン環に置換する基Rは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、フルオレンを構成するベンゼン環に対する基Rの結合位置(置換位置)は、特に限定されない。好ましい置換数kは、0〜1であり、特に0が好ましい。なお、フルオレンを構成する2つのベンゼン環において、置換数kは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0034】
置換基Rとしては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などの炭化水素基;アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基などの一般式−ORで表される基(Rは前記例示の炭化水素基を示す。);アルキルチオ基などの一般式−SRで表される基(Rは前記と同じ);アシル基;アルコキシカルボニル基;ハロゲン原子;ヒドロキシル基;ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基などが挙げられる。
【0035】
アルキル基としては、C1−12アルキル基が好ましく、より好ましくはC1−8アルキル基、さらに好ましくはC1−6アルキル基である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などが挙げられる。
【0036】
シクロへキシル基としては、C5−8シクロアルキル基が好ましく、より好ましくはC5−6シクロアルキル基である。
【0037】
アリール基としては、C6−14アリール基が好ましく、より好ましくはC6−10アリール基、さらに好ましくはC6−8アリール基である。具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基などが好ましい。
【0038】
アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基などが好ましい。
【0039】
アルコキシ基としては、C1−8アルコキシ基が好ましく、より好ましくはC1−6アルコキシ基である。具体例としては、メトキシ基などが挙げられる。
【0040】
シクロアルコキシ基としては、C5−10シクロアルキルオキシ基が好ましい。
【0041】
アリールオキシ基としては、C6−10アリールオキシ基が好ましい。
【0042】
アルキルチオ基としては、C1−8アルキルチオ基が好ましく、より好ましくはC1−6アルキルチオ基である。具体例としては、メチルチオ基などが挙げられる。
【0043】
アシル基としては、C1−6アシル基が好ましい。具体例としては、アセチル基などが挙げられる。
【0044】
アルコキシカルボニル基としては、C1−4アルコキシ−カルボニル基が好ましい。具体例としては、メトキシカルボニル基などが挙げられる。
【0045】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0046】
置換アミノ基としては、ジアルキルアミノ基などが挙げられる。ここで、アルキルとしては、上記のアルキル基が挙げられる。具体例としては、ジメチルアミノ基が挙げられる。
【0047】
これらのうち、基Rとしては、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基および置換アミノ基から選ばれた基が好ましく、特に好ましい基Rは、炭化水素基、アルコキシ基およびハロゲン原子から選ばれた基である。
【0048】
なお、同一の環Zにおいて、mが2以上である場合、基Rは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、2つの環Zにおいて、基Rは同一であってもよく、異なっていてもよい。置換数mは、好ましくは0〜8、より好ましくは0〜6、より好ましくは1〜5、さらに好ましくは0〜4、特に好ましくは0〜2、最も好ましくは0〜1である。なお、2つの環Zにおいて、置換数mは、互いに同一または異なっていてもよい。
【0049】
なお、式(1)において、基Rは、水素原子またはメチル基であり、好ましくは水素原子である。
【0050】
式(1)において、置換数nは、1以上であり、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2、特に好ましくは1である。なお、置換数nは、それぞれの環Zにおいて、同一または異なっていてもよい。なお、環Zに対するエポキシ基の結合位置は、特に限定されず、環Zの適当な位置に結合していればよい。特に、エポキシ基は、環Zを構成する縮合多環式炭化水素環において、フルオレンの9位に結合した炭化水素環とは別の炭化水素環(例えば、ナフタレン環の5位、6位など)に結合していることが好ましい。
【0051】
式(1)で表される具体的な化合物としては、例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシナフチル)フルオレンなどの前記式(1)においてnが1である化合物などが挙げられる。具体例としては、9,9−ビス(6−グリシジルオキシ−2−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(5−グリシジルオキシ−1−ナフチル)フルオレンなどが挙げられる。
【0052】
次に、式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂[A]の製造方法について例示説明する。式(1)で表される化合物は、特に限定されないが、例えば、下記式(2)で表される化合物(例えば、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン)と、下記式(3)で表される化合物とを反応させることにより製造できる。例えば、特開2012−102228号公報に記載の方法で製造できる。
【0053】
【化3】
【0054】
【化4】
【0055】
式(3)中、Xは、ハロゲン原子を示す。Z、R、R、k、mおよびnは前記の式(1)と同じである。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、塩素原子または臭素原子が好ましく、塩素原子が特に好ましい。式(3)で表される具体的な化合物としては、エピハロヒドリン(ハロメチルオキシランとも言う)、1−ハロメチル−2−メチルオキシランなどが挙げられる。エピハロヒドリンの具体例としては、エピクロロヒドリン(クロロメチルオキシラン)、エピブロモヒドリン(ブロモメチルオキシラン)などが挙げられる。1−ハロメチル−2−メチルオキシランの具体例としては、1−クロロメチル−2−メチルオキシランなどが挙げられる。
【0056】
エポキシ樹脂組成物が、ビスフェノール型エポキシ樹脂[Bx]を含むことにより、耐熱性を保ちつつ硬化物の架橋密度を低減でき、高靱性な樹脂硬化物を得ることができる。
【0057】
ビスフェノール型エポキシ樹脂[Bx]としては、特に限定されるものではなく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、もしくはこれらのビスフェノール骨格がハロゲン置換されたもの、アルキル置換されたもの、水添されたもの等が用いられる。かかるエポキシ樹脂の具体例として以下のものが挙げられる。
【0058】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、“エポトート(登録商標)”YD128(新日鐵住金化学(株)製)、“jER(登録商標)”825、“jER(登録商標)”828、“jER(登録商標)”834、“jER(登録商標)”1001、“jER(登録商標)”1004、“jER(登録商標)”1007、“jER(登録商標)”1009、“jER(登録商標)”1010(以上、三菱化学(株)製)などが挙げられる。
【0059】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER(登録商標)”806、“jER(登録商標)”807、“jER(登録商標)”4004P、“jER(登録商標)”4007P、“jER(登録商標)”4009P、“jER(登録商標)”4010P(以上、三菱化学(株)製)、“エポトート(登録商標)”YDF170、“エポトート(登録商標)”YDF2001(以上、新日鐵住金化学(株)製)などが挙げられる。
【0060】
ビスフェノールS型エポキシ樹脂の市販品としては、“エピクロン(登録商標)”EXA−1514(DIC(株)製)などが挙げられる。
【0061】
中でもビスフェノール型エポキシ樹脂[Bx]としては、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂が、得られる硬化物の弾性率を高くできること、および、耐熱性を保持できることから特に好ましく使用される。なお、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂とは、室温(25℃)において液状であるビスフェノールF型エポキシ樹脂のことをいう。ここでいう液状とは、測定されるエポキシ樹脂と同じ温度状態にある比重7以上の金属片を、該エポキシ樹脂の上に置き、重力で瞬時に埋没するとき、そのエポキシ樹脂は液状であると定義する。比重7以上の金属としては、例えば、鉄(鋼)、鋳鉄、銅などが挙げられる。
【0062】
エポキシ樹脂組成物にアミン型エポキシ樹脂[By]を配合することにより、硬化物の弾性率が向上し、繊維強化複合材料の強度向上の効果が発揮される。
【0063】
好ましく用いられるアミン型エポキシ樹脂[By]としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホン、トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルキシリレンジアミンや、これらのハロゲン置換体、アルキル置換体、水添品などが挙げられる。中でもグリシジル基を3つ以上有する多官能アミン型エポキシ樹脂が好ましく、より好ましくはテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノールである。
【0064】
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンの市販品としては、“スミエポキシ(登録商標)”ELM434(住友化学工業(株)製)、YH434L(新日鐵住金化学(株)製)、“jER(登録商標)”604(三菱化学(株)製)、“アラルダイト(登録商標)”MY720、“アラルダイト(登録商標)”MY721(以上、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)などが挙げられる。
【0065】
テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホンの市販品としては、TG3DAS(三井化学ファイン(株)製)などが挙げられる。
【0066】
トリグリシジルアミノフェノールまたはトリグリシジルアミノクレゾールの市販品としては、“スミエポキシ(登録商標)”ELM100、“スミエポキシ(登録商標)”ELM120(以上、住友化学工業(株)製)、“アラルダイト(登録商標)”MY0500、“アラルダイト(登録商標)”MY0510、“アラルダイト(登録商標)”MY0600(以上、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)、“jER(登録商標)”630(三菱化学(株)製)などが挙げられる。
【0067】
ジグリシジルアニリンの市販品としては、GAN(日本化薬(株)製)、PxGAN(東レ・ファインケミカル(株)製)などが挙げられる。
【0068】
ジグリシジルトルイジンの市販品としては、GOT(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0069】
テトラグリシジルキシリレンジアミンおよびその水素添加品の市販品としては、“TETRAD(登録商標)”−X、“TETRAD(登録商標)”−C(以上、三菱ガス化学(株)製)などが挙げられる。
【0070】
また、本発明の効果を失わない範囲において、エポキシ樹脂として、他のエポキシ樹脂成分を含んでも構わない。これらは1種類だけでなく、複数種組み合わせて添加しても良い。具体的には、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、ウレタンおよびイソシアネート変性エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0071】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER(登録商標)”152、“jER(登録商標)”154(以上、三菱化学(株)製)、“エピクロン(登録商標)”N−740、“エピクロン(登録商標)”N−770、“エピクロン(登録商標)”N−775(以上、DIC(株)製)などが挙げられる。
【0072】
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、“エピクロン(登録商標)”N−660、“エピクロン(登録商標)”N−665、“エピクロン(登録商標)”N−670、“エピクロン(登録商標)”N−673、“エピクロン(登録商標)”N−695(以上、DIC(株)製)、EOCN−1020、EOCN−102S、EOCN−104S(以上、日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0073】
レゾルシノール型エポキシ樹脂の具体例としては、“デナコール(登録商標)”EX−201(ナガセケムテックス(株)製)などが挙げられる。
【0074】
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の市販品としては、“エピクロン(登録商標)”HP7200、“エピクロン(登録商標)”HP7200L、“エピクロン(登録商標)”HP7200H(以上、DIC(株)製)、Tactix558(ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)、XD−1000−1L、XD−1000−2L(以上、日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0075】
ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、“jER(登録商標)”YX4000H、“jER(登録商標)”YX4000、“jER(登録商標)”YL6616(以上、三菱化学(株)製)、NC−3000(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0076】
ウレタンおよびイソシアネート変性エポキシ樹脂の市販品としては、オキサゾリドン環を有するAER4152(旭化成イーマテリアルズ(株)製)やACR1348(旭電化(株)製)などが挙げられる。
【0077】
フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、“ESF(登録商標)”300(新日鐵住金化学(株)製)、“オンコート(登録商標)”EX−1010、“オンコート(登録商標)”EX−1011、“オンコート(登録商標)”EX−1012、“オンコート(登録商標)”EX−1020、“オンコート(登録商標)”EX−1030、“オンコート(登録商標)”EX−1040、“オンコート(登録商標)”EX−1050、“オンコート(登録商標)”EX−1051(ナガセケムテックス(株)製)などが挙げられる。
【0078】
エポキシ樹脂組成物に、熱可塑性樹脂[Bz]を混合または溶解させて用いることで、エポキシ樹脂の脆さを熱可塑性樹脂[Bz]の強靱さでカバーし、かつ熱可塑性樹脂[Bz]の成形困難性をエポキシ樹脂でカバーし、バランスのとれたベース樹脂となる。
【0079】
かかる熱可塑性樹脂[Bz]としては、一般に、主鎖に、炭素−炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、スルホン結合およびカルボニル結合からなる群から選ばれた結合を有する熱可塑性樹脂であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂[Bz]は、部分的に架橋構造を有していても差し支えなく、結晶性を有していても非晶性であってもよい。特に、ポリアミド、ポリカーボナート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フェニルトリメチルインダン構造を有するポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアラミド、ポリエーテルニトリル、ポリベンズイミダゾール、ポリビニルホルマールやポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、フェノキシ、ポリビニルピロリドンからなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂が好適である。
【0080】
特に、ポリビニルホルマールとポリエーテルスルホンは、エポキシ樹脂との相溶性に優れることから好適に使用できる。ポリビニルホルマールの市販品として、“デンカホルマール(登録商標)”(電気化学工業株式会社製)、“ビニレック(登録商標)”(チッソ(株)製)などが挙げられる。また、ポリエーテルスルホンの市販品として、“スミカエクセル(登録商標)”PES5200P、“スミカエクセル(登録商標)”PES4700P、“スミカエクセル(登録商標)”PES3600P、“スミカエクセル(登録商標)”PES5003P、“スミカエクセル(登録商標)”PES5200P、“スミカエクセル(登録商標)”PES7600P(以上、住友化学工業(株)製)、“Ultrason(登録商標)”E2020P SR、“Ultrason(登録商標)”E2021SR(以上、BASF(株)製)、“GAFONE(登録商標)”3600RP、“GAFONE(登録商標)”3000RP(以上、Solvay Advanced Polymers(株)製)などが挙げられる。また、特表2004-506789号公報に記載されるようなポリエーテルスルホンとポリエーテルエーテルスルホンの共重合体オリゴマー、さらにポリエーテルイミドの市販品である“ウルテム(登録商標)”1000、“ウルテム(登録商標)”1010、“ウルテム(登録商標)”1040(以上、ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製)などが挙げられる。オリゴマーとは10個から100個程度の有限個のモノマーが結合した比較的分子量が低い重合体を指す。
【0081】
エポキシ樹脂に可溶で、水素結合性官能基を有する熱可塑性樹脂の市販品としては、ポリビニルアセタール樹脂として、デンカブチラールおよびデンカホルマール(電気化学工業株式会社製)、“ビニレック(登録商標)”(チッソ(株)製)、フェノキシ樹脂として、“UCAR(登録商標)”PKHP(ユニオンカーバイド社製)、ポリアミド樹脂として“マクロメルト(登録商標)”(ヘンケル白水株式会社製)、“アミラン(登録商標)”CM4000(東レ株式会社製)、ポリイミドとして“ウルテム(登録商標)”(ジェネラル・エレクトリックス社製)、“Matrimid(登録商標)”5218(チバ社製)、ポリスルホンとして“Victrex(登録商標)”(三井化学株式会社製)、“UDEL(登録商標)”(ユニオンカーバイド社製)、ポリビニルピロリドンとして、“ルビスコール(登録商標)”(ビーエーエスエフジャパン(株)製)を挙げることができる。
【0082】
中でも、良好な耐熱性を得るためには、熱可塑性樹脂[Bz]のガラス転移温度(Tg)が150℃以上であることが好しく、170℃以上であることがより好ましい。熱可塑性樹脂[Bz]のガラス転移温度が、150℃未満であると、成形体として用いた時に熱による変形を起こしやすくなる場合がある。
【0083】
また、かかる熱可塑性樹脂[Bz]としては、熱可塑性樹脂粒子を混合または溶解させて用いることも好適な態様である。熱可塑性樹脂粒子を配合することでマトリックス樹脂の靱性が向上し、繊維強化複合材料としたときに耐衝撃性が向上する。
【0084】
熱可塑性樹脂粒子の素材としては、ポリアミドが最も好ましく、ポリアミドの中でも、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン11やナイロン6/12共重合体や特開平01−104624号公報の実施例1記載のエポキシ化合物にてセミIPN(高分子相互侵入網目構造)化されたナイロン(セミIPNナイロン)は、特に良好な熱硬化性樹脂との接着強度を与える。この熱可塑性樹脂粒子の形状としては、球状粒子でも非球状粒子でも、また多孔質粒子でもよいが、球状の方が樹脂の流動特性を低下させないため粘弾性に優れ、また応力集中の起点がなく、高い耐衝撃性を与えるという点で好ましい態様である。ポリアミド粒子の市販品としては、SP−500(東レ(株)製)、“トレパール(登録商標)”TN(東レ(株)製)、“オルガソール(登録商標)”1002D(ATOCHEM(株)製)、“オルガソール(登録商標)”2002(ATOCHEM(株)製)、“オルガソール(登録商標)”3202(ATOCHEM(株)製)、トロガミドT5000などが挙げられる。
【0085】
ポリアミン硬化剤[C]は、エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の硬化剤であり、エポキシ基と反応し得る活性基を有する化合物である。ポリアミン硬化剤[C]としては、例えば、ジシアンジアミド、芳香族ポリアミン、イミダゾール誘導体、脂肪族アミン、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミンなどが挙げられる。中でも芳香族ポリアミンが好適であり、より好ましくはジアミノジフェニルスルホンもしくはその誘導体、またはその各種異性体である。具体的には、耐熱性や力学特性に優れることから、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンおよびそれらの組み合わせが特に好ましく用いられる。
【0086】
また、ジシアンジアミドと尿素化合物、例えば、3,4−ジクロロフェニル−1,1−ジメチルウレアとの組合せ、あるいはイミダゾール類を硬化剤として用いることにより、比較的低温で硬化しながら高い耐熱耐水性が得られる。その他、これらの硬化剤を潜在化したもの、例えば、マイクロカプセル化したものを用いることにより、プリプレグの保存安定性、特にタック性やドレープ性が室温放置しても変化しにくい。
【0087】
かかるポリアミン硬化剤[C]の添加量の最適値は、エポキシ樹脂と硬化剤の種類により異なるが、エポキシ樹脂のエポキシ基量に対するポリアミン硬化剤[C]の活性水素量の比を0.6〜1.2とすることが好ましく、より好ましくは0.7〜0.9とすることにより、当量で用いた場合より高弾性率樹脂が得られることがある。これらの硬化剤は、単独で使用しても複数を併用してもよい。
【0088】
芳香族ポリアミンの市販品としては、セイカキュアS(和歌山精化工業(株)製)、MDA−220(三井化学(株)製)、“jERキュア(登録商標)”W(三菱化学(株)製)、および3,3’−DAS(三井化学(株)製)、“Lonzacure(登録商標)”M−DEA(Lonza(株)製)、“Lonzacure(登録商標)”M−DIPA(Lonza(株)製)、“Lonzacure(登録商標)”M−MIPA(Lonza(株)製)および“Lonzacure(登録商標)”DETDA 80(Lonza(株)製)などが挙げられる。
【0089】
また、これらエポキシ樹脂とポリアミン硬化剤[C]、あるいはそれらの一部を予備反応させた物を組成物中に配合することもできる。この方法は、粘度調節や保存安定性向上に有効な場合がある。
【0090】
以下、本発明の一つ目の好ましい態様における、エポキシ樹脂組成物について詳細に説明する。
【0091】
本態様のエポキシ樹脂組成物は、上記の式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂[A]、ビスフェノール型エポキシ樹脂[Bx]、ポリアミン硬化剤[C]を含む。
【0092】
式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂[A]は、エポキシ樹脂の総量100質量部に中に10〜70質量部含まれることが好ましく、30〜50質量部含まれることがより好ましい。この範囲であれば、高温高湿環境下においても硬化物の吸水が抑えられ、耐熱性と樹脂弾性率を保持できる。また、それにより、得られる繊維強化複合材料が高い圧縮強度を有する。
【0093】
ビスフェノール型エポキシ樹脂[Bx]は、エポキシ樹脂の総量100質量部中に20〜80質量部含まれることが好ましく、40〜60質量部含まれることがより好ましい。この範囲であれば、耐熱性を保ちつつ硬化物の架橋密度を低減でき、高靱性な樹脂硬化物を得ることができる。
【0094】
この態様によれば、さらに耐湿熱性に優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物が得られる。かかるエポキシ樹脂組成物を用いることで、高温高湿の環境下における圧縮強度と層間靱性に優れた繊維強化複合材料が得られる。
【0095】
また、本態様においては、さらにアミン型エポキシ樹脂[By]を、エポキシ樹脂の総量100質量部中に10〜50質量部含むことも好ましい。アミン型エポキシ樹脂[By]を配合することにより、硬化物の弾性率が向上し、繊維強化複合材料の強度向上の効果が発揮される。10質量部に満たない場合、硬化物の弾性率向上効果が低い場合がある。50質量部を超える場合、硬化物の架橋密度や吸水率が高くなる場合がある。
【0096】
また、本態様においては、エポキシ樹脂組成物に、さらに熱可塑性樹脂[Bz]を混合または溶解させて用いることで、エポキシ樹脂の脆さを熱可塑性樹脂[Bz]の強靱さでカバーし、かつ熱可塑性樹脂[Bz]の成形困難性をエポキシ樹脂でカバーし、バランスのとれたベース樹脂となるので好ましい。熱可塑性樹脂[Bz]の配合量は、バランスの点で、エポキシ樹脂の総量100質量部に対して2〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは5〜20質量部の範囲である。
【0097】
以下、本発明の二つ目の好ましい態様における、エポキシ樹脂組成物について詳細に説明する。
【0098】
本態様のエポキシ樹脂組成物は、上記の式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂[A]、アミン型エポキシ樹脂[By]、ポリアミン硬化剤[C]を含むものである。
【0099】
アミン型エポキシ樹脂[By]を配合することにより、硬化物の弾性率が向上し、繊維強化複合材料の強度向上の効果が発揮される。これにより、さらに強度特性に優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物が得られる。かかるエポキシ樹脂組成物を用いることで、引張強度、圧縮強度および層間靱性に優れた繊維強化複合材料が得られる。
【0100】
式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂[A]とかかるアミン型エポキシ樹脂[By]の配合量は、樹脂硬化物の特性バランスが良好でかつ特に優れた強度特性を発現することから、エポキシ樹脂の総量100質量部中に、[A]を10〜50質量部、[By]を10〜50質量部含むことが好ましく、より好ましくは[A]を20〜40質量部、[By]を20〜40質量部含む。
【0101】
また、本態様においては、さらにビスフェノール型エポキシ樹脂[Bx]を、エポキシ樹脂の総量100質量部中に20〜50質量部含むことも好ましい。ビスフェノール型エポキシ樹脂[Bx]を配合することにより、耐熱性を保ちつつ硬化物の架橋密度を低減でき、高靱性な樹脂硬化物を得ることができる。[Bx]の配合量が20質量部に満たない場合、硬化物の靱性が低くなる場合がある。[Bx]の配合量が50質量部を超える場合、硬化物の耐熱性が低くなる場合がある。
【0102】
本態様においては、上記のエポキシ樹脂組成物に、さらに熱可塑性樹脂[Bz]を混合または溶解させて用いることも好ましい。エポキシ樹脂と熱可塑性樹脂[Bz]との混合物は、それらを単独で用いた場合より良好な結果を与える。エポキシ樹脂の脆さを熱可塑性樹脂[Bz]の強靱さでカバーし、かつ熱可塑性樹脂[Bz]の成形困難性をエポキシ樹脂でカバーし、バランスのとれたベース樹脂となる。
【0103】
熱可塑性樹脂[Bz]の配合量は、バランスの点で、エポキシ樹脂の総量100質量部に対して2〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは5〜20質量部の範囲である。
【0104】
以下、本発明の三つ目の好ましい態様における、エポキシ樹脂組成物について詳細に説明する。
【0105】
本態様のエポキシ樹脂組成物は、上記の式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂[A]、熱可塑性樹脂[Bz]、ポリアミン硬化剤[C]を含む。
【0106】
本態様においては、式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂[A]を配合することにより、高い弾性率と耐熱性が発現し、熱可塑性樹脂[Bz]との組合せで硬化物の靭性が飛躍的に向上し、繊維強化複合材料の引張伸度の効果が発揮される。これにより、極めて高い靭性を示す硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物が得られる。かかるエポキシ樹脂組成物を用いることで、引張強度、圧縮強度および層間靱性に優れた繊維強化複合材料が得られる。
【0107】
かかる熱可塑性樹脂[Bz]の配合量は、バランスの点で、エポキシ樹脂の総量100質量部に対して2〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは5〜20質量部の範囲である。
【0108】
式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂[A]は、エポキシ樹脂の総量100質量部に中に10〜70質量部含まれることが好ましく、30〜50質量部含まれることがより好ましい。この範囲であれば、高温高湿環境下においても硬化物の吸水が抑えられ、耐熱性と樹脂弾性率を保持できる。また、それにより繊維強化複合材料としての高い圧縮強度を維持できる。
【0109】
また、本発明においては、上記のエポキシ樹脂組成物に、さらにエラストマー[D]を配合することも好適な態様である。かかるエラストマー[D]は、硬化後のエポキシマトリックス相内に微細なエラストマー相を形成させる目的で配合される。これにより、樹脂硬化物への応力負荷時に生じる平面歪みを、エラストマー相の破壊空隙化(キャビテーション)により解消することができ、エポキシマトリックス相の塑性変形が誘発される結果、大きなエネルギー吸収を引き起こし、繊維強化複合材料としての層間靭性の向上に繋がる。
【0110】
エラストマーとは、ガラス転移温度が20℃より低いドメインを有するポリマー材料のことであり、液状ゴム、固形ゴム、架橋ゴム粒子、コアシェルゴム粒子、熱可塑性エラストマー、ガラス転移温度が20℃より低いブロックを有するブロック共重合体などが挙げられる。中でも、エラストマー[D]としては、ガラス転移温度が20℃以下のブロックを含むブロック共重合体およびゴム粒子から選ばれたものが望ましい。これにより、エポキシ樹脂へのエラストマーの相溶を最小限に抑えつつ、微細なエラストマー相を導入できることから、耐熱性や弾性率の低下を抑えつつ、繊維強化複合材料としての層間靭性を大きく向上させることができる。
【0111】
特に、かかるエラストマー[D]を、式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂[A]、アミン型エポキシ樹脂[By]およびポリアミン硬化剤[C]と併用した場合、架橋密度が適度に低いエポキシマトリックス相へエラストマー相が導入される形となり、平面歪み状態解消によるエポキシマトリックス相の塑性変形が大きなものとなる結果、かかる層間靭性の向上効果は顕著なものとなる。また、その結果、エラストマーの配合量も少なく抑えることができ、エポキシ樹脂組成物の粘度上昇、樹脂硬化物の弾性率低下、あるいは耐熱性低下といった副作用を最小限に抑えることが可能となる。
【0112】
ゴム粒子としては、架橋ゴム粒子、および架橋ゴム粒子の表面に異種ポリマーをグラフト重合したコアシェルゴム粒子が、取り扱い性等の観点から好ましく用いられる。かかるゴム粒子の一次粒子径は、50〜300μmの範囲にあることが好ましく、特に80〜200μmの範囲にあることが好ましい。また、かかるゴム粒子は使用するエポキシ樹脂との親和性が良好であり、樹脂調製や成形硬化の際に二次凝集を生じないものであることが好ましい。
【0113】
架橋ゴム粒子の市販品としては、カルボキシル変性のブタジエン−アクリロニトリル共重合体の架橋物からなるFX501P(日本合成ゴム工業(株)製)、アクリルゴム微粒子からなるCX−MNシリーズ(日本触媒(株)製)、YR−500シリーズ(新日鐵住金化学(株)製)等を使用することができる。
【0114】
コアシェルゴム粒子の市販品としては、例えば、ブタジエン・メタクリル酸アルキル・スチレン共重合物からなる“パラロイド(登録商標)”EXL−2655((株)クレハ製)、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体からなる“スタフィロイド(登録商標)”AC−3355、TR−2122(武田薬品工業(株)製)、アクリル酸ブチル・メタクリル酸メチル共重合物からなる“PARALOID(登録商標)”EXL−2611、EXL−3387(Rohm&Haas社製)、“カネエース(登録商標)”MXシリーズ(カネカ(株)製)等を使用することができる。
【0115】
ガラス転移温度が20℃以下のブロックを含むブロック共重合体としては、特に化学構造や分子量等を限定されるものではないが、ガラス転移温度が20℃以下のブロックがエポキシ樹脂に非相溶であり、また、エポキシ樹脂に相溶するブロックを併せて含むことが好ましい。
【0116】
ガラス転移温度が20℃以下のブロックを含むブロック共重合体としては、S−B−M型、B−M型、およびM−B−M型からなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体(以下略して、ブロック共重合体と記すこともある)であることも好ましい。これにより、繊維強化複合材料としての優れた耐熱性と低温下等の厳しい使用環境での機械強度を維持しつつ、層間靭性を大きく向上させることが可能である。
【0117】
ここで前記のS、B、および、Mで表される各ブロックは、互いに共有結合によって直接、もしくは、中間分子を介して連結されている。
【0118】
ブロックMはメタクリル酸メチルのホモポリマーまたはメタクリル酸メチルを少なくとも50重量%含む共重合体からなるブロックである。ブロックMに、メタクリル酸メチル以外のモノマーを共重合成分として導入することは、エポキシ樹脂との相溶性および硬化物の各種特性制御の観点から好適に実施される。かかるモノマー共重合成分は、特に限定されるものではなく、適宜選択可能だが、SP値の高いエポキシ樹脂への相溶性を得るために、メタクリル酸メチルよりもSP値の高いモノマー、特に水溶性のモノマーが好適に使用される。中でも、アクリルアミド誘導体が好適に使用でき、特にジメチルアクリルアミドが好適に使用できる。また反応性のモノマーも適用可能である。
【0119】
ここで、反応性モノマーとは、エポキシ分子のオキシラン基または硬化剤の官能基と反応可能な官能基を有するモノマーを意味する。例えば、オキシラン基、アミン基またはカルボキシル基等の反応性官能基を有するモノマーをあげることができるが、これらに限定されるものではない。反応性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸(本明細書において、メタクリル酸とアクリル酸を総称して「(メタ)アクリル酸」と略記する)、または、加水分解可能により(メタ)アクリル酸を得ることが可能なモノマーを用いることもできる。反応性のモノマーを用いることで、エポキシ樹脂との相溶性やエポキシ−ブロック共重合体界面での接着が良くなるため好ましく用いられる。
【0120】
ブロックMを構成できる他のモノマーの例としては、メタクリル酸グリシジルまたはtert−ブチルメタクリレートが挙げられるが、ブロックMは少なくとも60%がシンジオタクティックPMMA(ポリメタクリル酸メチル)からなることが好ましい。
【0121】
ブロックBはブロックMに非相溶で、そのガラス転移温度Tg(以降、Tgとのみ記載することもある)が20℃以下のブロックである。ブロックBのガラス転移温度Tgは、好ましくは0℃以下、より好ましくは−40℃以下である。かかるガラス転移温度Tgは、靱性の観点では低ければ低いほど好ましいが、−100℃を下回ると繊維強化複合材料とした際に切削面が荒れるなどの加工性に問題が生じる場合がある。
【0122】
ブロックBのガラス転移温度Tgは、エポキシ樹脂組成物およびブロック共重合体単体のいずれを用いた場合でも、RSAII(レオメトリックス社製)を用いてDMA法により測定できる。すなわち、1×2.5×34mmの板状のサンプルを、−60〜250℃の温度で1Hzの牽引周期を加えてDMA法により測定し、tanδ値をガラス転移温度Tgとする。ここで、サンプルの作製は次のようにして行う。エポキシ樹脂組成物を用いた場合は、未硬化の樹脂組成物を真空中で脱泡した後、1mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み1mmになるように設定したモールド中で130℃の温度で2時間硬化させることでボイドのない板状硬化物が得られる。ブロック共重合体単体を用いた場合は、2軸押し出し機を用いることで同様にボイドのない板が得られる。これらの板をダイヤモンドカッターにより上記サイズに切り出して評価することができる。
【0123】
ブロックBを構成するモノマーとしては、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンおよび2−フェニル−1,3−ブタジエンから選択されるジエンが好ましい。特にポリブタジエン、ポリイソプレンおよびこれらのランダム共重合体または部分的または完全に水素化されたポリジエン類の中から選択するのが靱性の観点から好ましい。ポリブタジエンの中では1,2−ポリブタジエン(Tg:約0℃)なども挙げられるが、ガラス転移温度Tgが最も低い例えば1,4−ポリブタジエン(Tg:約−90℃)を使用するのがより好ましい。ガラス転移温度Tgがより低いブロックBを用いることは耐衝撃性や靱性の観点から有利だからである。ブロックBは水素化されていてもよい。この水素化は通常の方法に従って実行される。
【0124】
ブロックBを構成するモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレートもまた好ましい。具体例としては、アクリル酸エチル(−24℃)、ブチルアクリレート(−54℃)、2−エチルヘキシルアクリレート(−85℃)、ヒドロキシエチルアクリレート(−15℃)および2−エチルヘキシルメタアクリレート(−10℃)を挙げることができる。ここで、各アクリレートの名称の後のカッコ中に示した数値は、それぞれのアクリレートを用いた場合に得られるブロックBのTgである。これらの中では、ブチルアクリレートを用いるのが好ましい。これらのアクリレートモノマーは、メタクリル酸メチルを少なくとも50重量部含むブロックMのアクリレートとは非相溶である。
【0125】
これらの中でもBブロックとしては、1,4−ポリブタジエン、ポリブチルアクリレートおよびポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)から選ばれたポリマーからなるブロックが好ましい。
【0126】
ブロックSはブロックBおよびMに非相溶であり、そのガラス転移温度Tgは、ブロックBよりも高いものである。ブロックSのTgまたは融点は23℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましい。ブロックSの例として芳香族ビニル化合物、例えばスチレン、α−メチルスチレンまたはビニルトルエンから得られるものを挙げることができる。
【0127】
トリブロック共重合体S−B−Mの具体例としては、スチレン−ブタジエン−メタクリル酸メチルからなる共重合体として、アルケマ社製のNanostrength 123、Nanostrength 250、Nanostrength 012、Nanostrength E20、Nanostrength E40が挙げられる。トリブロック共重合体M−B−Mの具体例としては、メタクリル酸メチル−ブチルアクリレート−メタクリル酸メチルからなる共重合体として、アルケマ社製のNanostrength M22や、前記アルケマ社製のNanostrength M22をベースにSP値の高いモノマーを共重合したNanostrength M22N、Nanostrength SM4032XM10が挙げられる。中でも、SP値の高いモノマーを共重合したNanostrength M22NおよびSM4032XM10は、微細な相分離構造を形成し、高い靱性を与えることから、好ましく用いられる。
【0128】
かかるエラストマー[D]の配合量は、力学特性やコンポジット作製プロセスへの適合性の観点から、エポキシ樹脂の総量100質量部に対して2〜15質量部であることが好ましく、より好ましくは3〜10質量部、さらに好ましくは、4〜8質量部の範囲である。配合量が2質量部に満たない場合、硬化物の靭性および塑性変形能力が低下し、得られる繊維強化複合材料の耐衝撃性が低くなる。配合量が15質量部を超える場合、硬化物の弾性率が低下し、得られる繊維強化複合材料の静的強度特性が低くなる上、成形温度での樹脂流れが低下し、得られる繊維強化複合材料がボイドを含み易くなる。
【0129】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、カップリング剤や、熱硬化性樹脂粒子、あるいはシリカゲル、カーボンブラック、クレー、カーボンナノチューブ、金属粉体といった無機フィラー等を配合することができる。
【0130】
本発明のエポキシ樹脂組成物を製造するには、ポリアミン硬化剤[C]以外の構成要素(成分)を、まず150〜170℃程度の温度で均一に加熱混練し、次いで80℃程度の温度まで冷却した後に、ポリアミン硬化剤[C]を加えて混練することが好ましいが、各成分の配合方法は特にこの方法に限定されるものではない。
【0131】
本発明のプリプレグは、上述のエポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸したものである。プリプレグにおける繊維質量分率は好ましくは40〜90質量%であり、より好ましくは50〜80質量%である。繊維質量分率が低すぎると、得られる複合材料の質量が過大となり、比強度および比弾性率に優れる繊維強化複合材料の利点が損なわれることがあり、また、繊維質量分率が高すぎると、樹脂組成物の含浸不良が生じ、得られる複合材料がボイドの多いものとなり易く、その力学特性が大きく低下することがある。
【0132】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、プリプレグのマトリックス樹脂として用いる場合、タックやドレープなどのプロセス性の観点から、80℃における粘度が0.1〜200Pa・sであることが好ましく、より好ましくは0.5〜100Pa・s、さらに好ましくは1〜50Pa・sである。80℃における粘度が0.1Pa・s以上であることにより、プリプレグの形状を保持でき、また成形時の樹脂フローが起こりにくく、強化繊維含有量にばらつきを生じることが少なくなる。80℃における粘度が200Pa・s以下であることにより、エポキシ樹脂組成物のフィルム化工程において、かすれを抑制し、強化繊維への含浸性に優れるものになる。
【0133】
ここでいう粘度は、例えばARES(TAインスツルメンツ社製)といった動的粘弾性測定装置を用い、直径40mmのパラレルプレートを用い、昇温速度2℃/分、周波数0.5Hz、Gap1mmの測定条件により得られた複素粘性率ηのことを指している。
【0134】
強化繊維の形態は特に限定されるものではなく、例えば、一方向に引き揃えた長繊維、トウ、織物、マット、ニット、組み紐などが用いられる。また、特に、比強度と比弾性率が高いことを要求される用途には、強化繊維が単一方向に引き揃えられた配列が最も適しているが、取り扱いの容易なクロス(織物)状の配列も本発明には適している。
【0135】
強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維および炭化ケイ素繊維等が挙げられる。これらの強化繊維を2種以上混合して用いても構わないが、より軽量で、より耐久性の高い成形品を得るために、炭素繊維や黒鉛繊維を用いることが好ましい。特に、材料の軽量化や高強度化の要求が高い用途においては、その優れた比弾性率と比強度のため、炭素繊維を好適に用いられる。
【0136】
炭素繊維としては、用途に応じてあらゆる種類の炭素繊維を用いることが可能であるが、耐衝撃性の点から高くとも400GPaの引張弾性率を有する炭素繊維であることが好ましい。また、強度の観点からは、高い剛性および機械強度を有する複合材料が得られることから、引張強度が好ましくは4.4〜6.5GPaの炭素繊維が用いられる。また、引張伸度も重要な要素であり、1.7〜2.3%の高強度高伸度炭素繊維であることが好ましい。従って、引張弾性率が少なくとも230GPaであり、引張強度が少なくとも4.4GPaであり、引張伸度が少なくとも1.7%であるという特性を兼ね備えた炭素繊維が最も適している。
【0137】
炭素繊維の市販品としては、“トレカ(登録商標)”T800G−24K、“トレカ(登録商標)”T800S−24K、“トレカ(登録商標)”T700G−24K、“トレカ(登録商標)”T300−3K、および“トレカ(登録商標)”T700S−12K(以上東レ(株)製)などが挙げられる。
【0138】
炭素繊維の形態や配列については、一方向に引き揃えた長繊維や織物等から適宜選択できるが、軽量で耐久性がより高い水準にある炭素繊維強化複合材料を得るためには、炭素繊維が、一方向に引き揃えた長繊維(繊維束)や織物等連続繊維の形態であることが好ましい。
【0139】
プリプレグの製造方法としては、マトリックス樹脂として用いられる前記エポキシ樹脂組成物を、メチルエチルケトンやメタノール等の溶媒に溶解して低粘度化し、強化繊維に含浸させる方法(ウェット法)と、マトリックス樹脂を加熱により低粘度化し、強化繊維に含浸させるホットメルト法(ドライ法)等が挙げられる。
【0140】
ウェット法は、強化繊維をマトリックス樹脂であるエポキシ樹脂組成物の溶液に浸漬した後、引き上げ、オーブン等を用いて溶媒を蒸発させる方法である。ホットメルト法(ドライ法)は、加熱により低粘度化したエポキシ樹脂組成物を直接強化繊維に含浸させる方法、または一旦エポキシ樹脂組成物を離型紙等の上にコーティングしたフィルムを作製しておき、次いで強化繊維の両側または片側から前記フィルムを重ね、加熱加圧することにより強化繊維に樹脂を含浸させる方法である。ホットメルト法によれば、プリプレグ中に残留する溶媒が実質上皆無となるため、好ましい。
【0141】
本発明の繊維強化複合材料は、強化繊維および本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を含有する。
【0142】
上記のようにして得られたプリプレグを積層した後、積層物に圧力を付与しながらマトリックス樹脂を加熱硬化させる方法等により、繊維強化複合材料が作製される。ここで熱および圧力を付与する方法としては、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法および内圧成形法等が採用される。
【0143】
また、繊維強化複合材料は、プリプレグを介さず、エポキシ樹脂組成物を直接強化繊維に含浸させた後、加熱硬化せしめる方法、例えば、ハンド・レイアップ法、フィラメント・ワインディング法、プルトルージョン法、レジン・インジェクション・モールディング法、およびレジン・トランスファー・モールディング法等の成形法によっても作製できる。これら方法では、エポキシ樹脂からなる主剤とエポキシ樹脂硬化剤との2液を使用直前に混合してエポキシ樹脂組成物を調製することが好ましい。
【0144】
本発明のエポキシ樹脂組成物をマトリックス樹脂として用いた繊維強化複合材料は、スポーツ用途、航空機用途および一般産業用途に好適に用いられる。より具体的には、航空宇宙用途では、主翼、尾翼およびフロアビーム等の航空機一次構造材用途、フラップ、エルロン、カウル、フェアリングおよび内装材等の二次構造材用途、ロケットモーターケースおよび人工衛星構造材用途等に好適に用いられる。このような航空宇宙用途の中でも、特に耐衝撃性が必要で、かつ、高度飛行中において低温にさらされるため、低温における引張強度が必要な航空機一次構造材用途、特に胴体スキンや主翼スキンにおいて、特に好適に用いられる。また、スポーツ用途では、ゴルフシャフト、釣り竿、テニス、バトミントンおよびスカッシュ等のラケット用途、ホッケー等のスティック用途、およびスキーポール用途等に好適に用いられる。さらに一般産業用途では、自動車、船舶および鉄道車両等の移動体の構造材、ドライブシャフト、板バネ、風車ブレード、圧力容器、フライホイール、製紙用ローラ、屋根材、ケーブル、補強筋、および補修補強材料等の土木・建築材料用途等に好適に用いられる。
【実施例】
【0145】
以下、実施例によって、本発明のエポキシ樹脂組成物について、より具体的に説明する。なお、実施例9、19、20は参考実施例であり、実施例1〜8、10〜18が本発明の実施例である。実施例で用いた樹脂原料の作製方法および評価法を次に示す。

【0146】
<エポキシ樹脂>
<式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂[A]>
(A−1の製造方法:特開2012−102228号公報を参考とした。)
三方コックを装着した内容積300mlのセパラブルフラスコに9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン(特開2007−99741号公報の実施例1に準じて合成したもの)45.1重量部(0.1mol)とエピクロルヒドリン(関東化学(株)製)92.0重量部(1.0mol)を仕込み、50℃まで昇温して溶解させた後、反応器内を窒素置換した。そして、反応器内に、フレークの水酸化ナトリウム10.0重量部(0.25mol)を、反応混合物の温度が60℃前後を保持するように、20分毎に4回に分けて添加し、さらに約7時間攪拌して反応させた。
【0147】
HPLCを用いて原料の消失を確認した。反応終了後、系内に残留しているエピクロルヒドリンを60℃、100Torrにて除去した後、メチルイソブチルケトン110gを投入し、60℃で保持した。その後、減圧ろ過を行い、反応時に生成した塩を除去した。続いて、30%水酸化ナトリウム水溶液66.0重量部(0.495mol)を80℃に保持しながら滴下し、全量滴下後、約1時間攪拌し、さらに純水55重量部を加えた。さらに有機層を純水55重量部により5回洗浄し、つづいて無水硫酸マグネシウム(関東化学(株)製)15重量部を敷き詰めたろ紙を通して乾燥させた後、90℃、10torrにて15時間乾燥させた結果、33.58重量部の白色粉末(収率62.8%)を得た。得られた白色粉末をHPLCおよびGPCにて分析した結果、純度85%以上で目的物(9,9−ビス(6−グリシジルオキシ−2−ナフチル)フルオレン)を含む白色粉末であることを確認した。
【0148】
<ビスフェノール型エポキシ樹脂[Bx]>
・“jER(登録商標)”806(液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製)
・“jER(登録商標)”828(液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製)
・“jER(登録商標)”1001(固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製)
<アミン型エポキシ樹脂[By]>
・ELM434(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、住友化学(株)製)
・“jER(登録商標)”630(アミン型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製)
・“アラルダイト(登録商標)”MY0600(トリグリシジルアミノフェノール、ハンツマン・アドバンスド・マテリアルズ社製)
・GAN(ジグリシジルアニリン、日本化薬(株)製)
<[A]、[Bx]、[By]以外のエポキシ樹脂>
・“jER(登録商標)”152(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製)
・“エピクロン(登録商標)”HP7200L(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、DIC(株)製)
・“オンコート(登録商標)”EX−1010(フルオレン型エポキシ樹脂、長瀬産業(株)製)
・“デコナート(登録商標)”EX−721(フタル酸エステル型エポキシ樹脂、長瀬産業(株)製)
・“jER(登録商標)”YX8000(水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製)。
【0149】
<ポリアミン硬化剤[C]>
・3,3’−DAS(3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、三井化学ファイン(株)製)
・DICY7(ジシアンジアミド、三菱化学(株))
<[C]以外の硬化剤>
・H−4(フェノールノボラック樹脂、明和化成(株)製)。
【0150】
<熱可塑性樹脂[Bz]>
・“スミカエクセル(登録商標)”PES5003P(ポリエーテルスルホン、住友化学工業(株)製)
・“トレパール(登録商標)”TN(ポリアミド粒子、東レ(株)製、平均粒子径:13.0μm)。
【0151】
<エラストマー[D]>
・“ナノストレングス(Nanostrength)”M22N(Bがブチルアクリレート(Tg:−54℃)、Mがメタクリル酸メチルと極性アクリル系モノマーのランダム共重合鎖からなるM−B−M型のブロック共重合体、アルケマ(株)製)
・“カネエース(登録商標)”MX−416(スチレン−ブタジエン−メタクリル酸メチルからなるコアシェルゴム粒子、平均粒子径:100nm、カネカ(株)製)。テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンをベースとする、濃度40質量部のマスターバッチ。表1〜3にある実施例と比較例の組成表には、ゴム粒子としての配合部数を表記し、マスターバッチに含まれるテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンはELM434に含めて表記した。
【0152】
<その他の成分>
・TPP(トリフェニルホスフィン、硬化促進剤、ケイ・アイ化成(株)製)
・DCMU99(3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア、硬化促進剤、保土ヶ谷化工業(株)製)。
【0153】
(1)エポキシ樹脂組成物の調製
ニーダー中に、エポキシ樹脂、ならびに、必要に応じて熱可塑性樹脂[Bz]およびエラストマー[D]を所定量加え、混練しつつ、160℃まで昇温し、160℃、1時間混練することで、透明な粘調液を得た。混練しつつ80℃まで降温させた後、ポリアミン硬化剤[C]を所定量加え、さらに混練し、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0154】
(2)樹脂硬化物の曲げ弾性率測定と曲げ強度測定
上記(1)で調製したエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中に注入した。180℃の温度で2時間硬化させ、厚さ2mmの樹脂硬化物を得た。次に、得られた樹脂硬化物の板から、幅10mm、長さ60mmの試験片を切り出し、スパン間32mmの3点曲げを測定し、JIS K7171−1994に従い、曲げ弾性率と曲げ強度を求めた。湿熱時の曲げ弾性率は前述の方法により得られた樹脂硬化板を沸騰水中に48時間浸漬した後の曲げ弾性率を測定した。
【0155】
(3)樹脂硬化物の靱性(KIC)測定
上記(1)で調製したエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、6mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み6mmになるように設定したモールド中で、180℃の温度で2時間硬化させ、厚さ6mmの樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物を12.7×150mmのサイズにカットし、試験片を得た。インストロン万能試験機(インストロン社製)を用い、ASTM D5045(1999)に従って試験片の加工および靱性(KIC)の測定をおこなった。試験片への初期の予亀裂の導入は、液体窒素温度まで冷やした剃刀の刃を試験片にあてハンマーで剃刀に衝撃を加えることで行った。ここでいう、樹脂硬化物の靱性とは、変形モードI(開口型)の臨界応力拡大係数のことを指している。
【0156】
(4)ガラス転移温度測定
上記(2)で作製した樹脂硬化物の板から、樹脂硬化物を7mg取り出し、TAインスツルメンツ社製DSC2910(型番)を用いて、30℃〜350℃の温度範囲を昇温速度10℃/分にて、測定を行い、JIS K7121−1987に基づいて求めた中間点温度をガラス転移温度Tgとし、耐熱性を評価した。吸湿時のガラス転移温度は前述の方法により得られた樹脂硬化板を沸騰水中に48時間浸漬した後のガラス転移温度を測定した。
【0157】
(5)樹脂硬化物の吸水率測定
上記(2)で作製した樹脂硬化物の板を80℃、20時間で加熱乾燥した後の試料の重量と該樹脂硬化の板を沸騰水中に48時間浸漬した後の吸水した試料の重量の差から樹脂硬化物の吸水率を求めた。
【0158】
(6)エポキシ樹脂組成物の粘度測定
エポキシ樹脂組成物の粘度は、動的粘弾性測定装置ARES(TAインスツルメンツ社製)を用い、直径40mmのパラレルプレートを用い、昇温速度2℃/minで単純昇温し、周波数0.5Hz、Gap1mmの測定条件で得られた、複素粘性率(η)の80℃における値を採用した。
【0159】
(実施例1)
混練装置で、70質量部のA−1(式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂[A])、20質量部の“jER(登録商標)”806(ビスフェノール型エポキシ樹脂[Bx])、10質量部の“jER(登録商標)”152([A]、[Bx]、[By]以外のエポキシ樹脂)を混練した後、ポリアミン硬化剤[C]である3,3’−DASを20質量部混練して、エポキシ樹脂組成物を作製した。表1に、組成と割合を示す(表1中、数字は質量部を表す)。得られたエポキシ樹脂組成物の特性を、上記のように測定した。結果を表1に示す。
【0160】
(実施例2〜20、比較例1〜6)
エポキシ樹脂、熱可塑性樹脂、エラストマー、その他の成分、硬化剤および配合量を、表1〜3に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を作製した。得られたエポキシ樹脂組成物の特性を上記のように測定した。結果を表1〜3に示す。
【0161】
【表1】
【0162】
【表2】
【0163】
【表3】
【0164】
実施例1〜20と比較例1との対比により、たとえ構成要素[A]が配合されていても、構成要素[Bx]、[By]および[Bz]のいずれかが配合されていない場合、十分な靱性を得られないことが判る。なお、比較例1のエポキシ樹脂組成物は粘度が高くなりすぎ、樹脂硬化物中にボイドが発生した。
【0165】
実施例1〜20と比較例2との対比により、たとえ構成要素[Bx]が配合されていても、構成要素[A]が配合されていない場合、弾性率や耐熱性が著しく劣ることがわかる。
【0166】
実施例1〜20と比較例3との対比により、たとえ構成要素[By]が配合されていても、構成要素[A]が配合されていない場合、靭性が著しく劣り、十分な耐湿性を得られないことが判る。
【0167】
実施例1〜20と比較例4〜7との対比により、たとえ構成要素[Bx]、[By]および[Bz]のいずれかが配合されていても、成要素[A]が配合されていない場合、樹脂硬化物の特性バランスが悪化し、曲げ強度や耐湿熱性も不十分になることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明によれば、耐熱性、靭性および弾性率に優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグおよび繊維強化複合材料を提供できる。かかるエポキシ樹脂組成物により得られる繊維強化複合材料は、圧縮強度および層間靱性に優れるため、特に構造材料に好適に用いられる。例えば、航空宇宙用途では主翼、尾翼およびフロアビーム等の航空機一次構造材用途、フラップ、エルロン、カウル、フェアリングおよび内装材等の二次構造材用途、ロケットモーターケースおよび人工衛星構造材用途等に好適に用いられる。また一般産業用途では、自動車、船舶および鉄道車両等の移動体の構造材、ドライブシャフト、板バネ、風車ブレード、各種タービン、圧力容器、フライホイール、製紙用ローラ、屋根材、ケーブル、補強筋、および補修補強材料等の土木・建築材料用途等に好適に用いられる。さらにスポーツ用途では、ゴルフシャフト、釣り竿、テニス、バトミントンおよびスカッシュ等のラケット用途、ホッケー等のスティック用途、およびスキーポール用途等に好適に用いられる。