特許第5835552号(P5835552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5835552帯電防止用積層体およびその製造方法、ならびに硬化性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5835552
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】帯電防止用積層体およびその製造方法、ならびに硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   B32B 23/08 20060101AFI20151203BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20151203BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20151203BHJP
   B05D 5/12 20060101ALI20151203BHJP
   B05D 7/02 20060101ALI20151203BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20151203BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20151203BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20151203BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   B32B23/08
   B32B27/18 J
   B32B27/30 A
   B05D5/12 C
   B05D7/02
   B05D7/24 302Z
   B05D7/24 303A
   C08J7/04 DCEP
   C09D4/02
   C09D5/00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2011-120727(P2011-120727)
(22)【出願日】2011年5月30日
(65)【公開番号】特開2012-245736(P2012-245736A)
(43)【公開日】2012年12月13日
【審査請求日】2014年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】野口 浩志
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 健介
(72)【発明者】
【氏名】川合 高弘
(72)【発明者】
【氏名】漆原 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】金森 太郎
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−298716(JP,A)
【文献】 特開2009−196202(JP,A)
【文献】 特開2006−159415(JP,A)
【文献】 特開2010−119919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B05D 1/00−7/26
C08J 7/00−7/18
C09D 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース樹脂基材と、
重合性成分(A1)として2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを5質量%以上75質量%以下含む重合性化合物(A)及び導電性付与成分(B)を含有する硬化性組成物の硬化膜と、を備え、
前記セルロース樹脂基材と前記硬化膜とは接して積層され、前記導電性付与成分(B)は前記硬化膜中において前記セルロース樹脂基材とは反対側に偏在し、
前記導電性付与成分(B)が導電性粒子であり、
前記導電性粒子の含有量が、有機溶剤を除く前記硬化性組成物中5質量%以上20質量%以下である、帯電防止用積層体。
【請求項2】
セルロース樹脂基材と、
重合性成分(A1)として2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを5質量%以上75質量%以下含む重合性化合物(A)及び導電性付与成分(B)を含有する硬化性組成物の硬化膜と、を備え、
前記セルロース樹脂基材と前記硬化膜とは接して積層され、前記導電性付与成分(B)は前記硬化膜中において前記セルロース樹脂基材とは反対側に偏在し、
前記導電性付与成分(B)が導電性高分子であり、
前記導電性高分子の含有量が、有機溶剤を除く前記硬化性組成物中0.1質量%以上5質量%以下である、帯電防止用積層体。
【請求項3】
請求項1または請求項2おいて、
前記硬化膜が前記セルロース樹脂基材を形成するセルロース樹脂を含有する、帯電防止用積層体。
【請求項4】
請求項1において、
前記導電性粒子がアンチモン含有酸化錫粒子およびリン含有酸化錫粒子から選択される少なくとも1種である、帯電防止用積層体。
【請求項5】
重合性成分(A1)として2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを5質量%以上75質量%以下含む重合性化合物(A)及び導電性付与成分(B)を含有する硬化性組成物をセルロース樹脂基材に塗布した後、硬化させる工程を含み、前記導電性付与成分(B)が導電性粒子であり、前記導電性粒子の含有量が、有機溶剤を除く前記硬化性組成物中5質量%以上20質量%以下である、帯電防止用積層体の製造方法。
【請求項6】
重合性成分(A1)として2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを5質量%以上75質量%以下含む重合性化合物(A)及び導電性付与成分(B)を含有する硬化性組成物をセルロース樹脂基材に塗布した後、硬化させる工程を含み、前記導電性付与成分(B)が導電性高分子であり、前記導電性高分子の含有量が、有機溶剤を除く前記硬化性組成物中0.1質量%以上5質量%以下である、帯電防止用積層体の製造方法。
【請求項7】
請求項5において、
前記導電性粒子がアンチモン含有酸化錫粒子およびリン含有酸化錫粒子から選択される少なくとも1種である、帯電防止用積層体の製造方法。
【請求項8】
重合性成分(A1)として2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを5質量%以上75質量%以下含む重合性化合物(A)及び導電性付与成分(B)を含有し、前記導電性付与成分(B)が導電性粒子であり、前記導電性粒子の含有量が、有機溶剤を除く前記硬化性組成物中5質量%以上20質量%以下である、基材としてセルロース樹脂を用いた帯電防止用積層体を製造するために用いられる硬化性組成物。
【請求項9】
重合性成分(A1)として2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを5質量%以上75質量%以下含む重合性化合物(A)及び導電性付与成分(B)を含有し、前記導電性付与成分(B)が導電性高分子であり、前記導電性高分子の含有量が、有機溶剤を除く前記硬化性組成物中0.1質量%以上5質量%以下である、基材としてセルロース樹脂を用いた帯電防止用積層体を製造するために用いられる硬化性組成物。
【請求項10】
請求項8において、
前記導電性粒子がアンチモン含有酸化錫粒子およびリン含有酸化錫粒子から選択される少なくとも1種である、硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止用積層体およびその製造方法、ならびに硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報通信機器の性能確保および安全対策の観点から、耐擦傷性を有する塗膜(ハードコート)や帯電防止機能を有する塗膜(帯電防止膜)を機器の表面に形成させることが行われている。近年、光学部品(例えば、プラスチックレンズ)や表示パネルの分野では、静電気による塵埃の付着防止が要求されており、帯電防止膜のニーズが非常に高い。
【0003】
かかる分野で使用される帯電防止膜としては、バインダー樹脂および有機溶媒を含有する混合液中に導電性粒子を分散させた硬化性組成物を塗布した後、加熱および/または放射線により硬化させて形成された硬化膜が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、導電性粒子に特定の構造を有する分散剤を配合することにより、導電性粒子が硬化膜界面付近に偏在化して表面抵抗値を低く抑制できる技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−131485号公報
【特許文献2】特開2008−247948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の帯電防止膜では、導電性粒子の偏在性が不安定であるため、十分な導電性(帯電防止性)を発現できないという問題があった。そのため、帯電防止膜の導電性を高めるためには、硬化性組成物中に含まれる導電性粒子を増量させなければならなかった。硬化性組成物中の導電性粒子を増量させると、硬化膜による可視光吸収の増加により透明性が低下する場合があった。このように、従来の帯電防止膜は、生産性の点で改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明に係る幾つかの態様は、上記課題を解決することで、生産性を向上でき、かつ透明性および帯電防止性に優れた硬化膜を形成できる硬化性組成物、あるいは該硬化膜を有する帯電防止用積層体ならびにその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0008】
[適用例1]
本発明に係る帯電防止用積層体の一態様は、
セルロース樹脂基材と、
セルロース樹脂を溶解する重合性成分(A1)を5質量%以上75質量%以下含む重合性化合物(A)及び導電性付与成分(B)を含有する硬化性組成物の硬化膜と、を備え、
前記セルロース樹脂基材と前記硬化膜とは接して積層され、前記導電性付与成分(B)は前記硬化膜中において前記セルロース樹脂基材とは反対側に偏在していることを特徴とする。ここで、セルロース樹脂を溶解する成分とは、18cm×1cmの大きさに切った厚さ80μmのセルロース樹脂フィルムを、6gの該成分中に25℃で2時間浸し、取り出したフィルムを80℃で24時間真空乾燥機で乾燥したときのフィルムの質量減少率が1%以上である成分をいう。
【0009】
[適用例2]
本発明に係る帯電防止用積層体の一態様は、
セルロース樹脂基材と、
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、γ−ブチロラクトンアクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカプロラクタム、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、グリセリンモノメタクリレート、エチレングリコールジアクリレートおよびジエチレングリコールジアクリレートから選択される少なくとも1種である重合性成分(A1)を5質量%以上75質量%以下含む重合性化合物(A)及び導電性付与成分(B)を含有する硬化性組成物の硬化膜と、を備え、
前記セルロース樹脂基材と前記硬化膜とは接して積層され、前記導電性付与成分(B)は前記硬化膜中において前記セルロース樹脂基材とは反対側に偏在していることを特徴とする。
【0010】
ここで「導電性付与成分(B)が硬化膜中においてセルロース樹脂基材とは反対側に偏在している」とは、前記硬化膜中のセルロース樹脂基材とは反対側における導電性付与成分(B)の密度が、硬化膜中のセルロース樹脂基材側における導電性付与成分(B)の密度よりも高いことをいう。硬化膜中のセルロース樹脂基材側とセルロース樹脂基材とは反対側とにおける導電性付与成分(B)の密度の相対的大小は、例えば帯電防止用積層体の断面を電子顕微鏡で観察することにより決定することができる。セルロース樹脂基材側とその反対側との導電性付与成分(B)の密度の差は大きいほど好ましい。硬化膜中のセルロース樹脂基材とは反対側に導電性付与成分(B)が高密度に存在しており、硬化膜中のセルロース樹脂基材側には導電性付与成分(B)が実質的に存在していないことが特に好ましい。
【0011】
[適用例3]
適用例1または適用例2の帯電防止用積層体において、
前記硬化膜が前記セルロース樹脂基材を形成するセルロース樹脂を含有することができる。
【0012】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例の帯電防止用積層体において、
前記導電性付与成分(B)が導電性粒子であることができる。
【0013】
[適用例5]
適用例4の帯電防止用積層体において、
前記導電性粒子がアンチモン含有酸化錫粒子およびリン含有酸化錫粒子から選択される少なくとも1種であることができる。
【0014】
[適用例6]
適用例4または適用例5の帯電防止用積層体において、
前記導電性粒子の含有量が、有機溶剤を除く前記硬化性組成物中5質量%以上20質量%以下であることができる。
【0015】
[適用例7]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例の帯電防止用積層体において、
前記導電性付与成分(B)が導電性高分子であることができる。
【0016】
[適用例8]
適用例7の帯電防止用積層体において、
前記導電性高分子の含有量が、有機溶剤を除く前記硬化性組成物中0.1質量%以上5質量%以下であることができる。
【0017】
[適用例9]
本発明に係る帯電防止用積層体の製造方法の一態様は、
セルロース樹脂を溶解する重合性成分(A1)を5質量%以上75質量%以下含む重合性化合物(A)及び導電性付与成分(B)を含有する硬化性組成物をセルロース樹脂基材に塗布した後、硬化させる工程を含むことを特徴とする。ここで、セルロース樹脂を溶解する成分とは、18cm×1cmの大きさに切った厚さ80μmのセルロース樹脂フィルムを、6gの該成分中に25℃で2時間浸し、取り出したフィルムを80℃で24時間真空乾燥機で乾燥したときのフィルムの質量減少率が1%以上である成分をいう。
【0018】
[適用例10]
本発明に係る帯電防止用積層体の製造方法の一態様は、
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、γ−ブチロラクトンアクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカプロラクタム、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、グリセリンモノメタクリレート、エチレングリコールジアクリレートおよびジエチレングリコールジアクリレートから選択される少なくとも1種である重合性成分(A1)を5質量%以上75質量%以下含む重合性化合物(A)及び導電性付与成分(B)を含有する硬化性組成物をセルロース樹脂基材に塗布した後、硬化させる工程を含むことを特徴とする。
【0019】
[適用例11]
適用例9または適用例10の帯電防止用積層体の製造方法において、
前記導電性付与成分(B)が導電性粒子であることができる。
【0020】
[適用例12]
適用例11の帯電防止用積層体の製造方法において、
前記導電性粒子がアンチモン含有酸化錫粒子およびリン含有酸化錫粒子から選択される少なくとも1種であることができる。
【0021】
[適用例13]
適用例11または適用例12の帯電防止用積層体の製造方法において、
前記導電性粒子の含有量が、有機溶剤を除く前記硬化性組成物中5質量%以上20質量%以下であることができる。
【0022】
[適用例14]
適用例9または適用例10の帯電防止用積層体の製造方法において、
前記導電性付与成分(B)が導電性高分子であることができる。
【0023】
[適用例15]
適用例14の帯電防止用積層体の製造方法において、
前記導電性高分子の含有量が、有機溶剤を除く前記硬化性組成物中0.1質量%以上5質量%以下であることができる。
【0024】
[適用例16]
本発明に係る硬化性組成物の一態様は、
帯電防止用積層体を製造するために用いられる硬化性組成物であって、
セルロース樹脂を溶解する重合性成分(A1)を5質量%以上75質量%以下含む重合性化合物(A)及び導電性付与成分(B)を含有することを特徴とする。ここで、セルロース樹脂を溶解する成分とは、18cm×1cmの大きさに切った厚さ80μmのセルロース樹脂フィルムを、6gの該成分中に25℃で2時間浸し、取り出したフィルムを80℃で24時間真空乾燥機で乾燥したときのフィルムの質量減少率が1%以上である成分をいう。
【0025】
[適用例17]
本発明に係る硬化性組成物の一態様は、
帯電防止用積層体を製造するために用いられる硬化性組成物であって、
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、γ−ブチロラクトンアクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカプロラクタム、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、グリセリンモノメタクリレート、エチレングリコールジアクリレートおよびジエチレングリコールジアクリレートから選択される少なくとも1種である重合性成分(A1)を5質量%以上75質量%以下含む重合性化合物(A)及び導電性付与成分(B)を含有することを特徴とする。
【0026】
[適用例18]
適用例16または適用例17の硬化性組成物において、
前記導電性付与成分(B)が導電性粒子であることができる。
【0027】
[適用例19]
適用例18の硬化性組成物において、
前記導電性粒子がアンチモン含有酸化錫粒子およびリン含有酸化錫粒子から選択される少なくとも1種であることができる。
【0028】
[適用例20]
適用例18または適用例19の硬化性組成物において、
前記導電性粒子の含有量が、有機溶剤を除く前記硬化性組成物中5質量%以上20質量%以下であることができる。
【0029】
[適用例21]
適用例16または適用例17の硬化性組成物において、
前記導電性付与成分(B)が導電性高分子であることができる。
【0030】
[適用例22]
適用例21の硬化性組成物において、
前記導電性高分子の含有量が、有機溶剤を除く前記硬化性組成物中0.1質量%以上5質量%以下であることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る帯電防止用積層体によれば、前記硬化膜中の、セルロース樹脂基材と接触する面とは反対の面側に導電性付与成分(B)が高密度に存在する層が形成されて、該層が導電パスとなることで、優れた導電性(帯電防止性)が付与される。
【0032】
本発明に係る帯電防止用積層体の製造方法によれば、基材となるセルロース樹脂に前記硬化性組成物を塗布して硬化させることで、セルロース樹脂と接触する面とは反対の面側に導電性付与成分(B)が高密度に存在する層を形成することができる。かかる層が導電パスとなるため、優れた導電性(帯電防止性)を有する積層体を製造することができる。また、セルロース樹脂と接触する面とは反対の面側に導電性付与成分(B)が高密度に存在する層が形成されるため、硬化性組成物中に含まれる導電性付与成分(B)の量を低減することができる。その結果、積層体の透明性が確保されると共に、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本実施の形態に係る帯電防止用積層体を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変型例も含む。
【0035】
1.硬化性組成物
本実施の形態に係る硬化性組成物は、(A)重合性化合物と、(B)導電性付与成分と、を含有する。以下、本実施の形態に係る硬化性組成物の各成分について詳細に説明する。なお、本明細書において(A)ないし(D)の各材料を、それぞれ(A)成分ないし(D)成分と省略して記載することもある。
【0036】
1.1.(A)重合性化合物
本実施の形態で用いられる(A)重合性化合物は、重合性を有する化合物であれば特に限定されないが、エチレン性不飽和基を有する化合物が好ましい。(A)重合性化合物は、セルロース樹脂を溶解する重合性化合物(以下、「(A1)成分」ともいう)と、(A1)成分以外の重合性化合物(以下、(A2)成分ともいう)と、に分類することができる。
【0037】
なお、本実施の形態に係る硬化性組成物中における(A)成分の含有量は、(D)溶媒を除く成分の合計を100質量%としたときに、80〜99質量%が好ましく、90〜98質量%がさらに好ましい。(A)成分の含有量が上記範囲にあることにより、高硬度を有する硬化膜を形成することができる。
【0038】
1.1.1.(A1)成分
本実施の形態に係る硬化性組成物は、(A1)セルロース樹脂を溶解する重合性化合物を含有する。本発明において「セルロース樹脂を溶解する重合性化合物」とは、18cm×1cmの大きさに切った厚さ80μmの基材のセルロース樹脂フィルムの質量をa(g)とし、このフィルムを室温環境下で6gの重合性化合物に2時間浸し、取り出したフィルムを80℃で24時間真空乾燥機で乾燥した後のフィルムの質量をa(g)としたときに、((a−a)/a)×100で表されるフィルムの質量減少率が1%以上である重合性化合物のことをいう。
【0039】
本実施の形態に係る硬化性組成物が(A1)成分を含有していることにより、成膜する際に(B)導電性付与成分の偏在化を引き起こして、優れた導電性(帯電防止性)を有する積層体を形成することができる。
【0040】
(B)導電性付与成分の偏在化が発現する機構は明らかではないが、本実施の形態においては例えば次のように考えられる。本実施の形態に係る硬化性組成物をセルロース樹脂基材上に塗布した場合、(A1)成分がセルロース樹脂を溶解するため、セルロース樹脂が塗布された硬化性組成物中に溶出する。ここで(B)導電性付与成分は溶出したセルロース樹脂との親和性に劣るため、硬化性組成物中でよりセルロース樹脂の濃度が低い側、すなわち基材と反対側の界面に偏在すると推測される。
【0041】
これに対し、基材のセルロース樹脂を溶解しない樹脂のみを含有する硬化性組成物では、セルロース樹脂が硬化性組成物中に溶出しないため、上記のような(B)導電性付与成分の偏在は起きない。その結果、硬化膜表面に導電性を付与することができない。
【0042】
(A1)セルロース樹脂を溶解する重合性化合物としては、以下に例示するような、エチレン性不飽和基等の重合性基を1個有する化合物(以下、「単官能化合物」という)やエチレン性不飽和基等の重合性基を2個以上有する化合物(以下、「多官能化合物」という)が挙げられる。(A1)成分である単官能化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド等のフィルムの質量減少率が10%以上である重合性化合物;γ−ブチロラクトンアクリレート、N−ビニルカプロラクタム等のフィルムの質量減少率が5%以上10%未満である重合性化合物;ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のフィルムの質量減少率が1%以上5%未満である重合性化合物等が挙げられる。その他、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、グリセリンモノメタクリレート等が挙げられる。(A1)成分である多官能化合物としては、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート等が挙げられる。これらの成分は、1種単独で用いてもよいし2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
(A)重合性化合物に占める(A1)成分の含有量は、5質量%以上75質量%以下であり、好ましくは10質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上40質量%以下である。なお、本明細書において「(A)成分」とは、(A1)成分および(A2)成分を合計したものをいう。(A1)成分が上記範囲で配合されることで、高硬度を有する硬化膜を得ることができるだけでなく、硬化膜中のセルロース樹脂基材と反対側に(B)導電性付与成分を偏在させることが容易となる。
【0044】
1.1.2.(A2)成分
(A2)成分である(A1)成分以外の重合性化合物は、硬化性組成物の成膜性ならびに硬化膜の硬度および耐擦傷性を高める目的で用いられる。(A2)成分としては、上記(A1)成分以外の単官能化合物や多官能化合物が挙げられる。これらのうち、架橋構造を形成することにより硬度および耐擦傷性に優れる硬化膜を形成することができる点で多官能化合物が好ましい。(A2)成分である多官能化合物としては、例えば、多官能の(メタ)アクリルエステル化合物、多官能のビニル化合物、多官能のエポキシ化合物、多官能のアルコキシメチルアミン化合物が好ましく、多官能の(メタ)アクリルエステル化合物、多官能のビニル化合物がより好ましい。多官能の(メタ)アクリルエステル化合物としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、フッ化アダマンチルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、イソボロニルアクリレート、ブチルアクリレート等が挙げられる。多官能のビニル化合物としては、ジビニルベンゼン等が挙げられる。多官能のエポキシ化合物としては、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル等が挙げられる。多官能のアルコキシメチルアミン化合物としては、ヘキサメトキシメチル化メラミン、ヘキサブトキシメチル化メラミン、テトラメトキシメチル化グリコールウリル、テトラブトキシメチル化グリコールウリル等が挙げられる。
【0045】
また、(A2)成分は、本願発明の効果を損なわない程度に単官能の(メタ)アクリルエステル化合物、単官能のビニル化合物、単官能のエポキシ化合物等を含んでもよい。
【0046】
(A2)成分中に含まれる多官能化合物の割合は、(A2)成分の全量を100質量%としたときに、50〜100質量%であることが好ましく、80〜100質量%であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0047】
1.2.(B)導電性付与成分
本実施の形態に係る硬化性組成物は、(B)導電性付与成分を含有する。(B)導電性付与成分は、本実施の形態に係る硬化性組成物を硬化させて形成される硬化膜に導電性(帯電防止性)を付与するための成分である。硬化膜の表面に(B)導電性付与成分が高密度に存在する層が形成されることで、その硬化膜の表面に導電性を付与することができる。また、(B)導電性付与成分が硬化膜の表面に高密度に存在することで、硬化膜の硬度を高めて耐擦傷性を向上させたり、カールを小さくさせたりする効果も期待される。
【0048】
(B)導電性付与成分としては、例えば導電性粒子や導電性高分子が挙げられる。本実施の形態に係る硬化性組成物においては、導電性粒子や導電性高分子をそれぞれ単独で使用してもよく、それらを組み合わせて用いることもできる。以下、導電性粒子、導電性高分子の順に説明する。
【0049】
1.2.1.導電性粒子
導電性粒子としては、導電性を有するものであれば特に制限されないが、金属酸化物粒子であることが好ましい。金属酸化物粒子を構成する金属酸化物としては、例えば、アンチモン含有酸化錫(ATO)、錫含有酸化インジウム(ITO)、リン含有酸化錫(PTO)、フッ素含有酸化錫、アルミニウム含有酸化亜鉛、ガリウム含有酸化亜鉛等が挙げられる。これらの中でも、アンチモン含有酸化錫(ATO)、リン含有酸化錫(PTO)が好ましい。これらの導電性粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
導電性粒子のメジアン径は、20〜90nmの範囲内であることが好ましく、35〜70nmの範囲内であることがより好ましい。メジアン径が前記範囲未満であると、導電性が不足するおそれがあり、前記範囲を超えると、硬化性組成物中で沈降が発生したり、塗膜の透明性が低下したり、濁度(Haze値)が上昇するおそれがある。ここで、メジアン径とは、粉体をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側とが等量となる径を意味する。このメジアン径は、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置によって測定することができる。
【0051】
導電性粒子は、粉体状であることが好ましい。本実施の形態で用いることができるアンチモン含有酸化錫(ATO)の市販品の例としては、SN−100P(石原産業株式会社製、一次粒径:10〜30nm)、SN−102P(石原産業株式会社製、一次粒径:10〜30nm)等が挙げられる。リン含有酸化錫(PTO)の市販品の例としては、ELCOM TL−30S(日揮触媒化成工業株式会社製)、EP SP2(三菱マテリアル株式会社製)等が挙げられる。
【0052】
本実施の形態に係る硬化性組成物中において、(B)導電性付与成分として導電性粒子を用いる場合、導電性粒子の含有量は、溶剤を除く成分の合計を100質量%としたときに、好ましくは5〜20質量%、より好ましくは10〜20質量%の範囲内である。導電性粒子の含有量が前記範囲未満であると、硬化膜の表面において導電性が発現しないおそれがあり、前記範囲を超えると、導電性の向上が限界となるため生産性が低下することがある。
【0053】
なお、(B)導電性付与成分として導電性粒子を含有する硬化性組成物をセルロース樹脂基材に塗布して硬化させることにより形成された硬化膜では、セルロース樹脂基材と接触する面とは反対の面側に導電性粒子が高密度に存在する層が形成される。そのため、硬化性組成物中の導電性粒子の含有量を通常(20〜40質量%程度)よりも少ない5〜20質量%としても、硬化膜表面に十分な導電性(帯電防止性)を付与することができる。これにより、積層体の透明性が確保されると共に、生産性を向上させることができる。帯電防止用積層体の表面抵抗値は、例えば1013Ω/□以下であり、好ましくは1011Ω/□以下であり、より好ましくは10Ω/□以下である。
【0054】
1.2.2.導電性高分子
「導電性高分子」とは、共役系高分子およびドーパントから構成される、電気伝導性を有する高分子化合物のことをいう。
【0055】
導電性高分子を構成する共役系高分子としては、一般に「PEDOT」と表示される、3,4−ジオキシチオフェンの重合体が挙げられる。
【0056】
導電性高分子を構成するドーパントとしては、スルホン酸および/またはスルホン酸塩を有する(共)重合体が挙げられる。スルホン酸および/またはスルホン酸塩を有する(共)重合体としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸塩(PSS)、イソプレンスルホン酸(共)重合体が挙げられる。
【0057】
なお、ドーパントの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、1,000〜500,000の範囲であればよい。
【0058】
イソプレンスルホン酸(共)重合体は、スルホン酸基を有するイソプレン重合体のみから構成されていてもよいし、他の構造を有する共重合体であってもよい。この共重合体としては、例えば、スチレンとの共重合体が挙げられる。スルホン酸基を有するイソプレン重合体を含む共重合体は、三元ブロック共重合体、三元ランダム共重合体、二元ブロック共重合体、二元ランダム共重合体等の各種の構成をとり得る。
【0059】
イソプレンスルホン酸(共)重合体中の、イソプレンスルホン酸およびイソプレンに由来する構造単位の割合は、共重合体中のモノマーに由来する構造単位全量を100モル%としたときに、40モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましい。イソプレンスルホン酸およびイソプレンに由来する構造単位の割合が40モル%未満であると、導電性が低下するおそれがある。
【0060】
イソプレンスルホン酸(共)重合体のスルホン化率は、15モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましい。スルホン化率が15モル%未満であると、導電性が低下するおそれがある。なお、イソプレンスルホン酸(共)重合体のスルホン化率とは、共重合体中に含まれるイソプレンに由来する構造単位全量に対して、スルホン化されているイソプレン由来の構造単位の割合(モル%)を意味する。
【0061】
イソプレンスルホン酸(共)重合体の具体例としては、イソプレンスルホン酸−スチレン−イソプレンスルホン酸の三元ブロック共重合体、イソプレンスルホン酸−スチレンのランダムブロック共重合体等が挙げられる。
【0062】
イソプレンスルホン酸(共)重合体の市販品としては、例えば、JSR株式会社製の、DK201、DK202A、DK106、DK114、TED等が挙げられる。
【0063】
次に、導電性高分子の製造方法の一例について説明する。
上記イソプレンスルホン酸(共)重合体の水溶液に、重合触媒である酸化剤および3,4−エチレンジオキシチオフェンモノマーを加え、20〜80℃で、4〜24時間攪拌し反応させて、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(AI;PEDOT)を製造することにより、導電性高分子が得られる。
【0064】
導電性高分子は、その製造プロセス上、実質的に、共役系高分子およびドーパントからなる複合体、酸化剤、溶媒を含んだ溶液の形態で用いられることが多い。かかる酸化剤としては、特に制限はなく、3,4−エチレンジオキシチオフェンの重合触媒として従来より用いられているものを使用できる。例えば、過酸化水素水、p−トルエンスルホン酸塩、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、塩化鉄(III)、硫化鉄(III)等が挙げられる。
【0065】
なお、本実施の形態に係る硬化性組成物を製造する際、上述したような共役系高分子およびドーパントがあらかじめ混合された溶液を硬化性組成物に添加する方法が通常採用されるが、共役系高分子とドーパントを別々に硬化性組成物に添加してから混合する方法を採用してもよい。
【0066】
(B)導電性付与成分として導電性高分子を用いる場合、導電性高分子の含有量は、溶剤を除く成分の合計を100質量%としたときに、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.2〜4質量%、特に好ましくは0.3〜3質量%の範囲内である。導電性高分子の含有量が前記範囲未満であると、硬化膜の表面において導電性が発現しないおそれがあり、前記範囲を超えると、硬化膜の硬度が低下するおそれがある。
【0067】
なお、本発明において「導電性高分子」というときは、共役系高分子およびドーパントから構成される複合体を意味し、導電性高分子の含有量には酸化剤が含まれないものとする。
【0068】
また、(B)導電性付与成分として導電性粒子を含有する硬化性組成物をセルロース樹脂基材に塗布して硬化させることにより形成された硬化膜では、セルロース樹脂基材と接触する面とは反対の面側に導電性高分子が高密度に存在する層が形成される。そのため、硬化性組成物中の導電性高分子の含有量を通常よりも少なくした場合であっても、硬化膜表面に十分な導電性(帯電防止性)を付与することができる。この結果、硬化膜の透明性が確保しやすくなる。
【0069】
1.3.(C)重合開始剤
本実施の形態に係る硬化性組成物は、(C)重合開始剤を含有してもよい。このような(C)重合開始剤としては、例えば(A)成分として(メタ)アクリルエステル化合物および/またはビニル化合物を含有する場合は、熱的に活性ラジカル種を発生させる化合物(熱重合開始剤)および放射線(光)照射により活性ラジカル種を発生させる化合物(放射線(光)ラジカル重合開始剤)等の汎用品を挙げることができる。また、(A)成分としてエポキシ化合物および/またはアルコキシメチルアミン化合物を含有する場合は、酸性化合物および放射線(光)照射により酸を発生させる化合物(放射線(光)酸発生剤)等の汎用品を挙げることができる。これらの中でも、放射線(光)重合開始剤が好ましい。
【0070】
放射線(光)ラジカル重合開始剤としては、光照射により分解してラジカルを発生して重合を開始させられるものであれば特に制限はなく、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)等が挙げられる。
【0071】
放射線(光)ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、BASFジャパン株式会社製のイルガキュア 184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61、ダロキュア 1116、1173、ルシリン TPO、8893;UCB社製のユベクリル P36;ランベルティ社製のエザキュアーKIP150、KIP65LT、KIP100F、KT37、KT55、KTO46、KIP75/B等が挙げられる。
【0072】
熱ラジカル重合開始剤としては、加熱により分解してラジカルを発生して重合を開始するものであれば特に制限はなく、例えば、過酸化物、アゾ化合物を挙げることができ、具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチル−パーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0073】
放射線(光)酸発生剤としては、トリアリールスルホニウム塩類、ジアリールヨードニウム塩類の化合物を使用することができる。放射線(光)酸発生剤の市販品としては、サンアプロ社製のCPI−100P、101A等が挙げられる。
【0074】
本実施の形態に係る硬化性組成物中において、必要に応じて用いられる(C)重合開始剤の含有量は、溶媒を除く成分の合計を100質量%としたときに、好ましくは0.01〜15質量%、より好ましくは0.1〜8質量%の範囲内である。上記の範囲で配合することで、より硬度および耐擦傷性の高い硬化膜が得られる。なお、(C)重合開始剤は複数種の化合物を併用することもできる。
【0075】
1.4.(D)溶媒
本実施の形態に係る硬化性組成物は、セルロース樹脂基材に塗布したときの塗膜(以下、「硬化性組成物層」という)の厚さや硬化性組成物の粘度を調節するために、(D)溶媒で希釈して用いることができる。例えば、本実施の形態に係る硬化性組成物を帯電防止膜や被覆材として用いる場合の25℃における粘度は、通常0.1〜50,000mPa・秒であり、好ましくは、0.5〜10,000mPa・秒である。
【0076】
(D)溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類等が挙げられる。
【0077】
本実施の形態に係る硬化性組成物において、必要に応じて用いられる(D)溶媒の含有量は、(D)溶媒を除く成分の合計を100質量部としたときに、50〜10,000質量部の範囲内であることが好ましい。(D)溶媒の含有量は、塗布膜厚、硬化性組成物の粘度等を考慮して適宜決定することができる。
【0078】
なお、本実施の形態に係る硬化性組成物において必要に応じて用いられる(D)溶媒の一部または全部として、セルロース樹脂を溶解する溶媒を選択してもよい。ここでセルロース樹脂を溶解する溶媒とは、18cm×1cmの大きさに切った厚さ80μmのセルロース樹脂フィルムを、6gの該成分中に25℃で2時間浸し、取り出したフィルムを80℃で24時間真空乾燥機で乾燥したときのフィルムの質量減少率が1%以上である成分であって、上記(A1)成分に含まれないものをいう。具体的には、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール等が例示される。(D)溶媒の一部又は全部をセルロース樹脂を溶解する溶媒とすることで、セルロース樹脂をより効率よく溶出させ、硬化膜と基材との密着性をさらに高めたり、(B)導電性付与成分の偏在性をさらに高めたりすることができる。(D)溶媒のうちどの程度の割合をセルロース樹脂を溶解する溶媒とするかは、(D)溶媒の使用量や(A1)成分の種類、使用量に応じて適宜定めることができる。
【0079】
1.5.その他の添加剤
本実施の形態に係る硬化性組成物は、必要に応じて、粒子分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、老化防止剤、熱重合禁止剤、着色剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、無機系充填材、有機系充填材、フィラー、濡れ性改良剤、塗面改良剤等を含有することができる。
【0080】
1.6.硬化性組成物の製造方法
本実施の形態に係る硬化性組成物は、(A)重合性化合物、(B)導電性付与成分、必要に応じて(C)重合開始剤、(D)溶媒、その他の添加剤をそれぞれ添加して、室温または加熱条件下で混合することにより調製することができる。具体的には、ミキサー、ニーダー、ボールミル、三本ロール等の混合機を用いて調製することができる。但し、加熱条件下で混合する場合には、熱重合開始剤の分解温度以下で行うことが好ましい。
【0081】
2.帯電防止用積層体およびその製造方法
2.1.帯電防止用積層体の製造方法
本実施の形態に係る帯電防止用積層体の製造方法は、(a)セルロース樹脂を溶解する重合性成分(A1)を5質量%以上75質量%以下含む重合性化合物(A)及び導電性付与成分(B)を含有する硬化性組成物を準備する工程(以下、「工程(a)」ともいう)と、(b)前記硬化性組成物をセルロース樹脂基材に塗布した後、硬化させる工程(以下、「工程(b)」ともいう)と、を含む。
【0082】
かかる帯電防止用積層体の製造方法によれば、基材となるセルロース樹脂基材に前記硬化性組成物を塗布して硬化させることで、セルロース樹脂基材と接触する面とは反対側に(B)導電性付与成分が高密度に存在する層を有する硬化膜を形成することができる。かかる層が導電パスとなるため、優れた導電性(帯電防止性)を有する積層体を製造することができる。また、かかる帯電防止用積層体の製造方法によれば、セルロース樹脂と接触する面とは反対の面側に(B)導電性付与成分が高密度に存在する層が形成されるため、硬化性組成物中に含まれる(B)導電性粒子の量を低減することができる。その結果、硬化膜の透明性や生産性を向上させることができる。以下、工程ごとに説明する。
【0083】
2.1.1.工程(a)
工程(a)は、前述した硬化性組成物を準備する工程である。かかる硬化性組成物の構成や製造方法等は前述したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0084】
2.1.2.工程(b)
工程(b)は、工程(a)で準備された硬化性組成物をセルロース樹脂基材に塗布した後、乾燥させて硬化させる工程である。
【0085】
工程(a)で準備された硬化性組成物をセルロース樹脂基材に塗布する方法は特に限定されず、例えばバーコート塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、グラビアリバース塗工、リバースロール塗工、リップ塗工、ダイ塗工、ディップ塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の公知の方法を用いることができる。
【0086】
前記の方法で塗布した後、溶剤等の揮発成分を乾燥させる。具体的には、前記硬化性組成物をセルロース樹脂基材上に塗布し、0〜200℃、好ましくは20〜150℃、より好ましくは20〜120℃で揮発成分を乾燥させる。200℃を超える温度では、セルロース樹脂基材が変形したり、硬化性組成物層の硬化に寄与するバインダー成分が揮発することにより強度が低下することがある。乾燥の方法は、熱風式、ドラム式、赤外線式、誘導加熱式等が挙げられ、基材の大きさ、厚さにより適宜決定される。熱風式で加熱する場合、風速が速すぎると(B)導電性付与成分の偏在性や塗膜の面観が損なわれることがあるため、熱風の風速は20m/秒以下であることが好ましく、5m/秒以下であることがより好ましい。
【0087】
工程(a)で準備された硬化性組成物をセルロース樹脂基材上に塗布すると、該硬化性組成物中に含まれる(A1)成分とセルロース樹脂基材中に含まれるセルロース樹脂とが相互作用して、硬化性組成物層中にセルロース樹脂が混入するか、または、セルロース樹脂基材に(A1)成分が浸透する場合がある。硬化性組成物層中にセルロース樹脂が混入しているか否かは、例えば、得られた硬化膜をラマン分光測定装置で測定し、前記セルロース樹脂が有する特定の官能基のピークを観測することにより判別することができる。
【0088】
硬化性組成物の硬化条件についても特に限定されるものではない。具体的には、前記硬化性組成物をセルロース樹脂基材上に塗布し、好ましくは0〜200℃で揮発成分を乾燥させた後、放射線および/または熱で硬化処理を行うことにより帯電防止用積層体を形成することができる。熱で硬化させる場合の好ましい条件は、20〜150℃であり、10秒〜24時間の範囲で行われる。放射線で硬化させる場合、紫外線または電子線を用いることが好ましい。紫外線の照射光量は、好ましくは0.01〜10J/cmであり、より好ましくは0.1〜2J/cmである。また、電子線の照射条件は、加圧電圧が10〜300kV、電子密度が0.02〜0.30mA/cm、電子線照射量が1〜10Mradである。
【0089】
2.2.帯電防止用積層体
図1は、本実施の形態に係る帯電防止用積層体を模式的に示した断面図である。図1に示すように、本実施の形態に係る帯電防止用積層体100は、基材となるセルロース樹脂基材10の上に上述した硬化性組成物を硬化させた硬化膜20が形成されており、硬化膜20中のセルロース樹脂基材とは反対側における導電性付与成分22の密度は硬化膜20中のセルロース樹脂基材側における導電性付与成分22の密度よりも高い。すなわち、硬化膜20中のセルロース樹脂基材と反対側には導電性付与成分22が相対的に高い密度で存在する領域26(以下、「導電層26」ともいう)が形成されており、硬化膜20中のセルロース樹脂基材側には導電性付与成分22が実質的に存在しない領域24(以下、「ハードコート層24」ともいう)が形成されている。領域24と領域26の境界は、必ずしも明確である必要はないが、硬化膜20中の導電性付与成分22の大部分が領域26に集まり領域24は実質的に導電性付与成分22を含まないことによって境界が明確であることが好ましい。導電性付与成分22が領域26に偏在することにより、領域26の導電性は領域24よりも高くなる。これにより、帯電防止性に優れた積層体を得ることができる。また、領域24が(A)成分として多官能化合物を含有する場合には架橋構造を有する硬化膜が形成されるため硬度および耐擦傷性に優れる帯電防止用積層体を得ることができる。
【0090】
帯電防止用積層体100には、帯電防止性能に影響を及ぼさない範囲で、硬化膜20のセルロース樹脂基材10と接する面とは反対側の面に、高屈折率層、低屈折率層をこの順に設けてもよい。また、前記高屈折率層と前記低屈折率層との間に、中屈折率層を設けてもよい。なお、本発明において硬化膜とは、硬化性組成物を塗布および硬化して得られる膜をいい、塗布および硬化の過程において成分の加減があっても構わない。
【0091】
導電性付与成分22が偏在する原因は必ずしも明らかではないが、(A1)成分がセルロース樹脂を溶解して、セルロース樹脂が硬化性組成物層中へ溶出するため、セルロース樹脂との親和性が低い導電性付与成分22が硬化性組成物層中のセルロース樹脂濃度が低い側(すなわち、硬化性組成物層中のセルロース樹脂基材と反対側)に偏在するようになると推定される。このような状態で硬化性組成物を硬化させることにより、硬化膜中のセルロース樹脂基材と反対側に導電性付与成分22が偏在した硬化膜20を形成することができる。
【0092】
一方、基材のセルロース樹脂を溶解しない重合性化合物のみを含有する硬化性組成物では、セルロース樹脂との相互作用がないため、硬化膜の表面に(B)導電性付与成分を偏在させることができず、硬化膜表面の導電性(帯電防止機能)が損なわれてしまう。
【0093】
なお、得られた硬化膜の表面抵抗は、1×1013Ω/□以下であることが好ましく、1×1011Ω/□以下であることがより好ましく、1×10Ω/□以下であることが特に好ましい。表面抵抗が1×1013Ω/□を超えると、帯電防止性能が十分でなく、埃が付着しやすくなったり、付着した埃を容易に除去できない場合がある。
【0094】
以下、本実施の形態に係る帯電防止用積層体の各層について説明する。
【0095】
2.2.1.セルロース樹脂基材
本実施の形態に係る帯電防止用積層体に用いられる基材は、セルロース樹脂基材である。基材としてセルロース樹脂を用いることにより、上述した硬化性組成物中に含まれる(A1)成分がセルロース樹脂を溶解または膨潤させることにより、導電性付与成分22が相対的に高い密度で存在する領域26を形成することができるものと考えられる。一方、セルロース樹脂以外の樹脂を基材として使用した場合には、上述したような作用効果を奏しない。本実施の形態において、セルロース樹脂基材とは、基材自体がセルロース樹脂で形成されていてもよいし、ポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等の基材表面にセルロース樹脂層を有する基材であってもよい。ここで、基材として使用可能なセルロース樹脂としては、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート等が挙げられる。
【0096】
また、基材をセルロース樹脂とする帯電防止用積層体は、カメラのレンズ部、テレビ(CRT)の画面表示部、あるいは液晶表示装置における偏光子の保護フィルム等の広範なハードコートおよび/または反射防止膜の利用分野において、優れた帯電防止効果を得ることができる。
【0097】
2.2.2.ハードコート層
ハードコート層24は、前述した硬化性組成物を硬化して得られる硬化膜20のセルロース樹脂基材10側に形成される、導電性付与成分22が実質的に存在しない領域から構成される。
【0098】
ハードコート層24の厚さは、特に限定されないが、好ましくは1〜50μm、より好ましくは1〜10μmである。ハードコート層24の厚さが1μm未満であると、硬度が不足する場合があり、一方、50μmを超えると、均質な膜を形成することが困難となったり、積層体のカールが大きくなり扱いづらくなる場合がある。ハードコート層の形成の際に、上述のとおり(A1)成分がセルロース樹脂を溶解するため、得られるハードコート層24は(A)成分の他にセルロース樹脂を含有する層となる。
【0099】
2.2.3.導電層
導電層26は、上述した硬化性組成物を硬化して得られる硬化膜20のセルロース樹脂基材10と反対側に形成される、導電性付与成分22が相対的に高い密度で存在する領域から構成される。
【0100】
導電層26の厚さは、特に限定されないが、好ましくは50〜200nm、より好ましくは60〜150nm、特に好ましくは80〜120nmである。導電層26の厚さを上記範囲内とすることで、透明性を損なわない範囲で十分な導電性(帯電防止性)を有する積層体を得ることができる。
【0101】
3.実施例
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0102】
3.1.導電性粒子の製造例
3.1.1.ATO(アンチモンドープ酸化錫)粒子ゾルの製造(製造例1)
プラスチック容器中に、ATO粒子(石原産業株式会社製、商品名「SN−100P」、一次粒径10〜30nm)、アデカプルロニックTR−701(株式会社ADEKA製)、およびメタノールを、72.75/2.25/175(質量比)の配合量で混合した(全固形分含量30%、全無機含量29.1%)。次いで、ペイントシェーカーを用いて、容器を2.5時間攪拌し、メジアン径75nmの分散ゾル250g(固形分濃度30%)を得た。
【0103】
3.1.2.PTO(リンドープ酸化錫)粒子ゾルの製造(製造例2)
プラスチック容器に、PTO粒子(日揮触媒化成株式会社製、ELCOM TL−30S、一次粒径20nm)、アデカプルロニックTR−701(株式会社ADEKA製)、およびプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を、28.5/1.5/70.0(質量比)の配合量で混合した(全固形分含量30%、全無機含量28.5%)。次いで、ペイントシェーカーを用いて、容器を2.5時間攪拌し、メジアン径72nmの分散ゾル100g(固形分濃度30%)を得た。
【0104】
3.2.導電性高分子の製造例
3.2.1.導電性高分子(B−1)
導電性高分子(B−1)として、セプルジーダ(登録商標)SAS−PE−J01(信越ポリマー株式会社製、PEDOT/PSS、ドーパント分子量:100,000〜200,000)を使用した。
【0105】
3.2.2.導電性高分子(B−2)の製造(製造例3)
イソプレンスルホン酸−スチレンのランダム共重合体(商品名「DK106」、JSR株式会社製、モル比=80/20、イソプレンユニットのスルホン化率:90%、分子量:20,000)0.320質量部を含む18.57質量部の水溶液中に、酸化剤として0.481質量部の過硫酸アンモニウム、モノマーとして0.300質量部の3,4−エチレンジオキシチオフェンを加え、60℃で6時間攪拌し反応させた。このようにして、導電性高分子(B−2)を得た。
【0106】
3.2.3.導電性高分子(B−3)の製造(製造例4)
イソプレンスルホン酸−スチレンのランダム共重合体(商品名「TED」、JSR株式会社製、モル比=50/50、イソプレンユニットのスルホン化率:100%、分子量:10,000)0.278質量部を含む16.13質量部の水溶液中に、酸化剤として0.507質量部の過硫酸アンモニウム、モノマーとして0.316質量部の3,4−エチレンジオキシチオフェンを加え、60℃で6時間攪拌し反応させた。このようにして、導電性高分子(B−3)を得た。
【0107】
3.2.4.導電性高分子(B−4)
導電性複合体(B−4)として、Oligotron(登録商標)NM(SIGMA−ALDRICH社製、PEDOT/PSS、ドーパント分子量:1,700)を使用した。
【0108】
3.3.硬化性組成物の製造例
紫外線を遮蔽した容器中において、上記製造例2で得られたPTO(リンドープ酸化錫)粒子ゾル15質量部(固形分として5質量部)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(商品名「ライトエステルHOA」、共栄社化学株式会社製)26質量部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(商品名「SR399E」、サートマー社製)66質量部、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(商品名「イルガキュア(登録商標)907」、BASFジャパン株式会社製)3質量部、さらにメチルイソブチルケトンを適量加えて室温で2時間撹拌することにより均一な硬化性組成物を得た。この溶液をアルミ皿に2g秤量後、175℃のホットプレート上で30分間乾燥させ、秤量した後固形分含量を求めたところ、50質量%であった。
【0109】
3.4.実施例1(帯電防止用積層体の作製)
前記「3.3.硬化性組成物の製造例」で得られた硬化性組成物をトリアセチルセルロースフィルム上にバーコーターを用いて全体の硬化膜厚が約7μmとなるように塗布し、80℃で2分間乾燥後、窒素フロー下で高圧水銀灯(300mJ/cm)を用いて硬化させて帯電防止用積層体を得た。
【0110】
3.5.実施例2〜49、比較例1〜7
表2〜表8に示す成分を表2〜表8に示す組成で配合した硬化性組成物を使用したこと以外は、実施例1と同様にして帯電防止用積層体を得た。
【0111】
3.5.評価試験
3.5.1.(A)重合性化合物のトリアセチルセルロースに対する溶解性
まず、表2〜表8に記載されている(A)重合性化合物のトリアセチルセルロースに対する溶解性について評価した。18cm×1cmの大きさに切った厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(商品名「TDY−80UL」、富士フイルム株式会社製)の質量をa(g)とし、このフィルムを25℃で6gの重合性化合物に2時間浸し、取り出したフィルムを80℃で24時間真空乾燥機で乾燥した後のフィルムの質量をa(g)としたときに、((a−a)/a)×100で表されるフィルムの質量減少率を測定した。この質量減少率が1%以上である場合には、重合性化合物がトリアセチルセルロースを溶解するものと判断し、1%未満である場合には、重合性化合物がトリアセチルセルロースを溶解しないものと判断した。その結果を表1に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
次に、実施例および比較例で得られた帯電防止用積層体の下記項目について評価した。その結果を表2〜表8に併せて示す。
【0114】
3.5.2.表面抵抗値の測定
硬化膜の表面抵抗(Ω/□)を、ハイ・レジスタンス・メーター(アジレント・テクノロジー株式会社製、製品名「Agilent4339B」)、およびレジスティビティ・セル16008B(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用い、印加電圧100Vの条件で測定した。
【0115】
3.5.3.ヘイズ値の測定
上記のようにして作製された帯電防止用積層体のヘイズ値(%)を、カラーヘーズメーター(スガ試験機株式会社製)を用いて、JIS K7105に準拠して測定した。
【0116】
3.5.4.全光線透過率の測定
上記のようにして作製された帯電防止用積層体の全光線透過率(%)を、カラーヘーズメーター(スガ試験機株式会社製)を用いて、JIS K7105に準拠して測定した。
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】
【0119】
【表4】
【0120】
【表5】
【0121】
【表6】
【0122】
【表7】
【0123】
【表8】
【0124】
3.6.評価結果
表2〜表8の結果から、実施例1〜49の積層体は、比較例1〜7の積層体よりも表面抵抗が有意に低くなると共に、帯電防止性に優れていることが判明した。(B)導電性付与成分として導電性粒子を含有する硬化性組成物から作製された実施例1〜26の積層体は、導電性粒子の含有量を通常よりも少ない5〜20質量%の範囲としても十分な導電性が得られることが判明した。導電性粒子の含有量を少なくできることにより、透明性の確保が容易になる。さらに(B)導電性付与成分として導電性高分子を含有する硬化性組成物から作製された実施例27〜49の積層体は、ヘイズ値や全光線透過率の結果から透明性にも優れていることが判明した。
【0125】
また、実施例1〜49および比較例1〜7の積層体について、断面をスライスしてハードコート層のラマン分光測定(日本電子株式会社製、形式「JRS−SYSTEM2000」を使用)を行った。その結果、実施例1〜49のハードコート層からは、トリアセチルセルロースのカルボニル基に由来する1740cm−1のピークが検出されたが、比較例1〜7のハードコート層からはトリアセチルセルロースに由来するピークは検出されなかった。すなわち、実施例1〜49のハードコート層中には、基材のトリアセチルセルロースが混入していることが示された。
【0126】
さらに、実施例1〜49の積層体の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、硬化膜中のセルロース樹脂基材とは反対側における(B)導電性付与成分の密度が硬化膜中のセルロース樹脂基材側における(B)導電性付与成分の密度より高いことが判明した。なお、硬化膜中のセルロース樹脂基材側には(B)導電性付与成分が実質的に存在しなかった。これに対して、比較例1〜7の積層体では、(B)導電性付与成分の密度は硬化膜中でほぼ均一であった。
【0127】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0128】
10…セルロース樹脂基材、20…硬化膜、22…導電性付与成分、24…導電性付与成分が実質的に存在しない領域(ハードコート層)、26…導電性付与成分が相対的に高い密度で存在する領域(導電層)、100…帯電防止用積層体
図1