特許第5835581号(P5835581)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5835581
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの電極用バインダー組成物
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20151203BHJP
   H01G 11/30 20130101ALN20151203BHJP
【FI】
   H01M4/62 Z
   !H01G11/30
【請求項の数】5
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-64341(P2012-64341)
(22)【出願日】2012年3月21日
(65)【公開番号】特開2013-196975(P2013-196975A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080609
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 正孝
(74)【代理人】
【識別番号】100109287
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 泰三
(72)【発明者】
【氏名】上田 政宏
(72)【発明者】
【氏名】松木 安生
(72)【発明者】
【氏名】山田 欣司
【審査官】 瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−205722(JP,A)
【文献】 特開2013−194112(JP,A)
【文献】 特開2004−221014(JP,A)
【文献】 特開2007−273639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
H01G 9/00、11/00−11/86
CA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも重合体(A)および液状媒体(B)を含有する蓄電デバイスの電極用バインダー組成物であって、
前記重合体(A)が、
員数が3〜6の環状エーテル構造を有する重合性不飽和化合物に由来する繰り返し単位(a1)と、
鎖状エーテル構造を有する重合性不飽和化合物に由来する繰り返し単位(a3)と、
を有する重合体でありそして上記員数が3〜6の環状エーテル構造を有する重合性不飽和化合物が下記式(m1)で表される化合物であり、
上記鎖状エーテル構造を有する重合性不飽和化合物が下記式(m3)で表される化合物であることを特徴とする、前記バインダー組成物。
【化1】
【化4】
(式(m1)中、Rは水素原子またはメチル基であり、
は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基であり、
は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、
複数存在するRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、
hは0〜2の整数であり、iは1または2であり;
式(m3)中、Rは水素原子またはメチル基であり、
複数存在するRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、
は炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基であり、そして
jは1〜20の整数である。)
【請求項2】
少なくとも重合体(A)および液状媒体(B)を含有する蓄電デバイスの電極用バインダー組成物であって、
前記重合体(A)が、
員数が4〜6の環状エーテル構造を有する重合性不飽和化合物に由来する繰り返し単位(a2)を有する重合体でありそして上記員数が4〜6の環状エーテル構造を有する重合性不飽和化合物が下記式(m2)で表される化合物であることを特徴とする、前記バインダー組成物。
【化2】
(式(m2)中、Rは水素原子またはメチル基であり、
は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基であり、
は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、
複数存在するRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、そして
kおよびiは、それぞれ独立に、1または2である。)
【請求項3】
少なくとも、
請求項1または2のいずれか一項に記載のバインダー組成物と、
電極活物質と、
を含有することを特徴とする、蓄電デバイスの電極用スラリー。
【請求項4】
集電体と、
前記集電体上に形成された活物質層と、
を備える蓄電デバイスの電極であって、
前記活物質層が請求項に記載の電極用スラリーから形成されたものであることを特徴とする、前記電極。
【請求項5】
請求項に記載の電極を備えることを特徴とする、蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスの電極用バインダー組成物に関する。さらに詳しくは、充放電容量が大きく、充放電サイクルの繰り返しによる容量劣化の程度が少ない蓄電デバイスを与える電極用バインダー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の駆動用電源として、電圧が高く、高いエネルギー密度を有する蓄電デバイスが要求されている。特にリチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタなどは、高電圧・高エネルギー密度の蓄電デバイスとして期待されている。
このような蓄電デバイスに使用される電極は、通常、活物質と、電極バインダーとして機能する重合体と、を含有する組成物(電極用スラリー)を集電体表面へ塗布・乾燥(溶媒除去)することにより製造される。
一般的に、蓄電デバイスの充放電サイクルにおいては、リチウムの吸蔵および放出に伴って活物質の体積が膨張・収縮を繰り返す。このため、このような電極に使用される重合体に要求される特性としては、活物質の体積が膨張・収縮を繰り返す充放電サイクルにおいて、活物質同士の結合を維持する能力、および活物質と集電体との密着を維持する能力、塗布・乾燥された組成物塗膜(以下、単に「活物質層」ともいう。)から活物質の微粉などが脱落しない粉落ち耐性などを挙げることができる。重合体がこれらの種々の要求特性を満足することにより、充放電サイクルによる特性変化の小さい電極を作成することができ、充放電特性の劣化が抑制された蓄電デバイスを製造することができる。なお、上記の活物質同士の結合能力および活物質と集電体との密着能力、ならびに粉落ち耐性については、性能の良否がほぼ比例関係にあることが経験上明らかになっている。従って本明細書では、以下、これらを包括して「密着性」という用語を用いて表す場合がある。
近年、このような蓄電デバイスの高出力化および高エネルギー密度化の要求を達成するために、リチウム吸蔵力の大きい材料であるケイ素材料を活物質として使用する検討が行われている。しかしながら、ケイ素材料は従来の炭素材料に比べて体積変化が大きいから、従来使用されている電極バインダーをケイ素材料に適用すると、初期密着性を維持することができないこととなる。その結果、充放電サイクルを繰り返すことにより電極劣化が著しく進行するから、充放電に伴う容量低下が顕著であるとの問題が生ずる。
【0003】
このような問題を改善する方法として、電極バインダーとしてポリイミドを適用する方法が提案されている(特許文献1〜3)。これらの技術は、ポリイミドの剛直な分子構造で活物質を束縛することによって、活物質の体積膨張・収縮をおさえ込もうという技術思想である。特許文献1〜3を参照すると、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を含有する電極用スラリーを集電体表面へ塗布して塗膜を形成した後、該塗膜を高温で加熱してポリアミック酸を熱イミド化することによってポリイミドが生成されると説明されている。しかしながらこの方法によると、集電体上に従来技術におけるのと同程度の量の活物質を乗せようとすると、塗膜中のポリアミック酸を熱イミド化する過程で塗膜に反りが生じ、電極が歪曲して使用に堪えないこととなる。このため、集電体上に形成する活物質層の厚みを従来よりも薄くせざるを得ないから、結局、蓄電デバイスの容量が向上しない結果となる。
一方、電極バインダーとして、エポキシ基、水酸基などの官能基を有する重合体を用いる方法が提案されている(特許文献4および5)。これらの技術は、重合体の柔軟性は維持しつつ、重合体に結合形成能を有する官能基を導入することによって密着性を向上しようという技術思想である。この技術によると、充放電に伴う体積変化の小さい材料(例えば公知の炭素材料)に対しては密着性向上の効果がみられるものの、ケイ素材料のように充放電に伴う体積変化の大きい材料に適用した場合の密着性向上効果は不十分であり、製造初期の電池特性を長期にわたって維持するまでには至っていない。
このように、公知のものに比べて顕著に高い容量を有し、且つ充放電サイクルを繰り返しても容量の劣化が少ない蓄電デバイスは、未だ知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−95670号公報
【特許文献2】特開2011−192563号公報
【特許文献3】特開2011−204592号公報
【特許文献4】特開2010−205722号公報
【特許文献5】特開2010−3703号公報
【特許文献6】特開2004−185810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような現状に鑑みてなされたものであり、その目的は、充放電容量が大きく、充放電に伴う体積変化の大きい活物質を用いた場合であっても充放電サイクルの繰り返しによる容量劣化の程度が少ない蓄電デバイスを与える電極用バインダー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第1に、
少なくとも重合体(A)および液状媒体(B)を含有する蓄電デバイスの電極用バインダー組成物であって、
前記重合体(A)が、
員数が3〜6の環状エーテル構造を有する重合性不飽和化合物に由来する繰り返し単位(a1)と、
鎖状エーテル構造を有する重合性不飽和化合物に由来する繰り返し単位(a3)と、
を有する重合体であることを特徴とする、前記バインダー組成物によって達成される。
本発明の上記目的および利点は、第2に、
少なくとも重合体(A)および液状媒体(B)を含有する蓄電デバイスの電極用バインダー組成物であって、
前記重合体(A)が、
員数が4〜6の環状エーテル構造を有する重合性不飽和化合物に由来する繰り返し単位(a2)を有する重合体であることを特徴とする、前記バインダー組成物によって達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、充放電容量が大きく、充放電に伴う体積変化の大きい活物質を用いた場合であっても充放電サイクルの繰り返しによる容量劣化の程度が少ない蓄電デバイスを与える電極用バインダー組成物が提供される。
本発明の電極用バインダー組成物から形成された電極を具備する蓄電デバイスは、高容量であり、寿命が長い。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、下記に記載された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変型例も含むものとして理解されるべきである。
1. 電極用バインダー組成物
本発明の電極用バインダー組成物は、少なくとも重合体(A)および液状媒体(B)を含有する。
1.1 重合体(A)
本発明の電極用バインダー組成物に含有される重合体(A)は、環状エーテル構造を有する重合性不飽和化合物に由来する繰り返し単位を有する。本発明は、このうち、重合体(A)が、
員数が3〜6の環状エーテル構造を有する重合性不飽和化合物に由来する繰り返し単位(a1)と、
鎖状エーテル構造を有する重合性不飽和化合物に由来する繰り返し単位(a3)と、
を有する重合体(A1)である場合、および
員数が4〜6の環状エーテル構造を有する重合性不飽和化合物に由来する繰り返し単位(a2)を有する重合体(A2)である場合に関する。
上記重合体(A1)における繰り返し単位(a1)を導く不飽和化合物は、下記式(m1)で表される化合物(以下、「化合物(m1)」という。)であり
上記重合体(A1)における繰り返し単位(a2)を導く不飽和化合物は、例えば下記式(m2)で表される化合物(以下、「化合物(m2)」という。)が好ましい。
【0009】
【化1】
【0010】
【化2】
【0011】
(式(m1)中、Rは水素原子またはメチル基であり、
は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基であり、
は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、
複数存在するRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、
hは0〜2の整数であり、iは1または2であり;
式(m2)中、Rは水素原子またはメチル基であり、
は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基であり、
は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、
複数存在するRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、そして
kおよびiは、それぞれ独立に、1または2である。)
【0012】
上記化学式から当業者には明らかなとおり、上記式(m1)におけるhが0であるときは化合物(m1)と化合物(m2)とは異なるが、
hが1または2であるとき、両化合物の範囲は一致する。
上記式(m1)および(m2)中のRとしては、メチレン基または1,2−エチレン基であることが好ましく;
としては、電極を形成する際にエーテル環の架橋反応が容易に進行するように、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
上記式(m1)中のhは、得られるバインダー組成物の安定性と、電極形成の際のエーテル環の反応性とを両立する観点から、1または2であることが好ましい。同様の観点から、上記式(m1)中のh+iの合計および上記式(m2)中のk+iの合計は、それぞれ、2または3であることが好ましく、2であることがより好ましい。
【0013】
従って、本発明の好ましい態様においては、化合物(m1)と化合物(m2)とは一致する。そこで、以下の説明において、この好ましい態様にかかる化合物(m1)および化合物(m2)を、まとめて「化合物(m)」という。
本発明における化合物(m)としては、例えばテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−ブチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−ヘキシル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレートなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することが好ましい。
化合物(m)として最も好ましくは、下記式で表される(3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレートまたは(3−アルキル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレートである。
【0014】
【化3】
【0015】
(上記式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。)
上記重合体(A1)における繰り返し単位(a3)を導く不飽和化合物は、下記式(m3)で表される化合物(以下、「化合物(m3)」という。)である


【0016】
【化4】
【0017】
(式(m3)中、Rは水素原子またはメチル基であり、
複数存在するRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、
は炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基であり、そして
jは1〜20の整数である。)
電極用バインダー組成物に含有される重合体(A1)が化合物(m3)に由来する繰り返し単位(a3)を有することにより、該重合体の電解質溶媒(例えばカーボネート化合物、ラクトン化合物など)に対する親和性が高くなり、形成される活物質層中で該重合体が電解質溶媒を吸収して膨潤することができることとなってリチウムイオンのスムースな移動を妨げることがなく、その結果、内部抵抗が低く良好な充放電特性を発現する電極を製造することができる。
上記式(m3)中のRは、重合体の耐酸化性を確保するとの観点から、メチル基であることが好ましく;
は、電解質溶媒との親和性を確保するとの観点から、水素原子またはメチル基であることが好ましく;
は、やはり電解質溶媒との親和性を確保するとの観点から、炭素数1〜3のアルキル基、2−エチルヘキシル基またはフェニル基であることが好ましい。
【0018】
本発明における化合物(m3)としては、例えば2−メトキシエチルアクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルオキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(エチレングリコールユニットの繰り返し数=2〜30)、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することが好ましい。
本発明における重合体(A1)における繰り返し単位(a1)の割合は、
繰り返し単位(a1)と繰り返し単位(a3)との合計に基づいて、40〜99モル%であることが好ましく、50〜95モル%であることがより好ましい。このような組成の重合体(A1)を用いることにより、形成される電極中で環状エーテル構造に起因する強固な架橋結合が効果的に形成され、機械的強度に優れることとなるほか、電極の保液性(電解液を且つ物質装柱に保持する能力)が優れることとなり、好ましい。
【0019】
なお、バインダー中に(ポリ)エーテル型の構造単位が存在すると、蓄電デバイスの充放電に伴う酸化還元電位の変化によって該(ポリ)エーテル型構造が分解して電極が劣化し易くなると考えられてきた。しかしながら、本発明のバインダー組成物は、繰り返し単位(a1)とともに繰り返し単位(a3)をも有する重合体(A1)を用いることにより、このような劣化を抑制することに成功したものである。
重合体(A1)は、繰り返し単位(a1)および繰り返し単位(a3)のみを有していてもよく、あるいはこれら以外の繰り返し単位(a4)を有していてもよい。重合体(A2)は、繰り返し単位(a2)のみを有していてもよく、あるいはこれら以外の繰り返し単位(a5)を有していてもよい。
繰り返し単位(a4)または繰り返し単位(a5)を導く不飽和化合物(以下、「化合物(m45)」という。)としては、例えば不飽和芳香族化合物、共役ジエンなどを挙げることができる。化合物(m45)の具体例としては、上記不飽和芳香族化合物として、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o-メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、ビニルピリジンなどを;
上記共役ジエンとして、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどを、それぞれ挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
【0020】
重合体(A1)における繰り返し単位(a1)および繰り返し単位(a3)の合計の割合は、全繰り返し単位に対して、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、100モル%であることが最も好ましい。重合体(A2)における繰り返し単位(a2)の割合は、全繰り返し単位に対して、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、100モル%であることが最も好ましい。
重合体(A1)は、ランダム重合体、交互重合体、周期的重合体およびブロック重合体のうちのいずれであってもよいが、ランダム重合体であることが好ましい。重合体(A2)が2種以上の繰り返し単位を有するものである場合も同様である。
重合体(A)について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定したポリスチレン換算の数平均分子量Mnは、8,000〜1,000,000であることが好ましく、10,000〜700,000であることがより好ましく、100,000〜500,000であることが特に好ましい。
上記のような重合体(A1)または重合体(A2)を含有する本発明のバインダー組成物は、保液性に優れる電極を与えることができるほか、活物質としてケイ素原子を含む化合物を適用する場合に、特に有利な効果を発現する。
【0021】
すなわち、ケイ素材料のリチウムイオン吸蔵力は理論容量4,200,Ah/gと極めて大きく、これを活物質とする蓄電デバイスは大容量であることが期待される。しかし、ケイ素材料は、リチウムイオンの吸収・放出に伴う体積変化が大きいため、公知のバインダーではこれに追随することができず、充放電サイクルの繰り返しによる電池特性の劣化が著しかった。
これに対して本発明のバインダー組成物における重合体(A1)または重合体(A2)は、形成される電極中において、特定の環状エーテル構造に起因する強固な架橋を発現するとともに十分な柔軟性を有するから、ケイ素材料の体積変化を十分に緩和することができ、その結果、充放電特性に優れる高容量の蓄電デバイスを与えることができるのである。
上記のような重合体(A1)は、化合物(m1)、または化合物(m1)と化合物(m45)との混合物を用いて;
重合体(A2)は、化合物(m2)および化合物(m3)、または化合物(m2)および化合物(m3)と化合物(m45)との混合物を用いて、それぞれ公知の方法によって製造することが好ましい。これら重合体は、例えば上記化合物またはその混合物(以下、単に「モノマー」という。)を、適当な溶媒中において、ラジカル重合開始剤の存在下および任意的に分子量調節剤の存在下でラジカル(共)重合することにより製造することが好ましい。
【0022】
上記ラジカル(共)重合で用いられる溶媒としては、例えば水、アルコール、エステル、カーボネート、ラクトン、エーテル、スルホキシド、アミドなどを挙げることができる。上記アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノールなどを;
上記エステルとしては、例えば酢酸エチル、プロピオン酸メチル、酢酸ブチルなどを;
上記カーボネートとしては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどを;
上記ラクトンとしては、例えばγ−ブチルラクトンなどを;
上記エーテルとしては、例えばトリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどを;
上記スルホキシドとしては、例えばジメチルスルホキシドなどを;
上記アミドとしては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどを、それぞれ挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することが好ましい。
【0023】
本発明の電極用バインダー組成物をラテックス状の組成物として調製する場合、重合体(A1)または重合体(A2)の重合は、溶媒として電極用バインダー組成物の液状媒体に予定されているものを使用して行い、重合後の重合体溶液をそのまま電極用バインダー組成物の調製に供すことが、プロセスの簡略化の面から好ましい。この場合の重合溶媒(すなわち電極用バインダー組成物の液状媒体)として、水か、あるいは水と、アルコール、エステルから選択される1種以上との混合物を使用する乳化重合によって重合体を製造することが好ましい。この場合、溶媒として水を用いることが最も好ましい。
一方、本発明の電極用バインダー組成物を溶液状の組成物として調製する場合、重合体(A1)または重合体(A2)の重合は、溶媒として、電解液の溶媒に予定されているものを使用する溶液重合によることが好ましい。このような溶媒を使用して重合することにより、保液性により優れた電極が得られることとなり、好ましい。この場合の重合溶媒としては、カーボネート、ラクトン、エーテルおよびスルホキシドから選択される1種以上を使用することが好ましく、最も好ましくは、本発明の電極用バインダーを適用する蓄電デバイスにおいて実際に使用する電解液の溶媒またはその混合物を使用することである。驚くべきことに、電解液の溶媒中で重合を行った後に溶媒置換を行っても、保液性向上の効果は維持される。
重合体(A)を製造する際の溶媒の使用割合は、モノマーの合計100質量部に対して、100〜1,000質量部とすることが好ましく、200〜500質量部とすることがより好ましい。
【0024】
上記ラジカル重合開始剤としては、例えばN,N’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチルN,N’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系開始剤;ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシドなどの有機過酸化物系開始剤などを挙げることができる。ラジカル重合開始剤は、モノマーの合計100質量部に対して、0.1〜5質量部添加すること好ましい。
上記分子量調節剤としては、例えばクロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素;
n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドテジルメルカプタン、チオグリコール酸などのメルカプタン化合物;
ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイドなどのキサントゲン化合物;
ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマーなどのその他の分子量調節剤を挙げることができる。
分子量調節剤の使用割合は、モノマーの合計100質量部に対して、5質量部以下とすることが好ましい。
【0025】
重合体(A)の製造を乳化重合による場合には、重合系に乳化剤を共存させることができる。この乳化剤としては、例えばアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤などを挙げることができる。上記アニオン性界面活性剤としては、例えば高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、ポリエチレングリコールアルキルエーテルの硫酸エステルなどを;
上記ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリエチレングリコールのアルキルエステル、ポリエチレングリコールのアルキルエーテル、ポリエチレングリコールのアルキルフェニルエーテルなどを、それぞれ挙げることができる。
両性界面活性剤としては、例えば
アニオン部分が、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩またはリン酸エステル塩などからなり、そして
カチオン部分が、アミン塩、第4級アンモニウム塩などからなるものを挙げることができる。このような両性界面活性剤の具体例としては、例えばラウリルベタイン、ステアリルベタインなどのベタイン化合物;
ラウリル−β−アラニン、ラウリルジ(アミノエチル)グリシン、オクチルジ(アミノエチル)グリシンなどのアミノ酸タイプの界面活性剤などを挙げることができる。
上記フッ素系界面活性剤としては、例えば
フルオロブチルスルホン酸塩、フルオロアルキル基を有するリン酸エステル、フルオロアルキル基を有するカルボン酸の塩、フルオロアルキルエチレンオキシド付加物などを挙げることができる。
乳化剤の使用割合は、モノマーの合計100質量部に対して、10質量部以下とすることが好ましく、0.01〜5質量部とすることがさらに好ましい。
【0026】
重合反応を溶液重合による場合、重合温度は50〜90℃とすることが好ましく、60〜80℃とすることがより好ましい。重合時間は30〜800分とすることが好ましく、60〜500分とすることがより好ましい。一方、重合反応を乳化重合による場合、重合温度は5〜25℃とすることが好ましく、10〜20℃とすることがより好ましい。重合時間は120〜800分とすることが好ましく、240〜500分とすることがより好ましい。
以上のようにして重合体(A)を製造することができる。
重合体(A)の製造を溶液重合によった場合、得られた重合体溶液は、そのまま、あるいは必要に応じて溶媒置換を行った後に、溶液状の電極用バインダー組成物の調製に供することができる。一方、重合体(A)の製造を乳化重合によった場合、得られたラテックスはそのままラテックス状の電極用バインダー組成物の調製に供することができる。上記いずれの場合であっても、重合体(A)を単離した後、適当な液状媒体に再溶解または再分散して使用してもよい。
【0027】
1.2 液状媒体(B)
本発明の電極用バインダー組成物は、さらに液状媒体(B)を含有する。このC)液状媒体(B)は、水系媒体または非水系媒体であることができる。
本発明の電極用バインダー組成物は、上記のような重合体(A)および必要に応じて添加されるその他の添加剤(後述)が、液状媒体(B)に分散されたスラリー状もしくはラテックス状の組成物であるか、または液状媒体(B)に溶解された溶液状の組成物であることが好ましい。
本発明の電極用バインダー組成物がスラリー状またはラテックス状の組成物である場合、液状媒体(B)としては水系媒体であることが好ましい。この水系媒体は、水を含有する。水系媒体は、水以外に少量の非水媒体を含有することができる。このような非水媒体としては、例えばアミド化合物、炭化水素、アルコール、ケトン、エステル、アミン化合物、ラクトン、スルホキシド、スルホン化合物などを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。このような非水媒体の含有割合は、水系媒体の全部に対して好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、最も好ましくは非水媒体を含有しないことである。
本発明の電極用バインダー組成物がスラリー状またはラテックス状の組成物である場合における液状媒体(B)の使用割合は、電極用バインダー組成物の固形分濃度(電極用バインダー組成物中の液状媒体(B)以外の成分の合計質量が電極用バインダー組成物の全質量に占める割合をいう。以下同じ。)が、5〜80質量%となる割合とすることが好ましく、10〜60質量%となる割合とすることがより好ましい。
【0028】
一方、本発明の電極用バインダー組成物が溶液状の組成物である場合、液状媒体(B)は非水系媒体である。非水系媒体の具体例としては、例えばn−オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、デカリン、ピネン、クロロドデカンなどの脂肪族炭化水素;
シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロペンタンなどの環状脂肪族炭化水素;
クロロベンゼン、クロロトルエン、エチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素;
メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、グリセリンなどのアルコール;
アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、イソホロンなどのケトン;
メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;
γ−ブチロラクトン、δ−ブチロラクトンなどのラクトン;
β−ラクタムなどのラクタム;
ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどの鎖状または環状のアミド化合物;
メチレンシアノヒドリン、エチレンシアノヒドリン、3,3'−チオジプロピオニトリル、アセトニトリルなどの、ニトリル基を有する化合物;
ピリジン、ピロールなどの含窒素複素環化合物;
エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール化合物;
ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルブチルエーテルなどのジエチレングリコールまたは誘導体;
ギ酸エチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、安息香酸メチル、酢酸メチル、アクリル酸メチルなどのエステルなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
本発明の電極用バインダー組成物が溶液状の組成物である場合における液状媒体(B)の使用割合は、電極用バインダー組成物の固形分濃度が、5〜50質量%となる割合とすることが好ましく、10〜40質量%となる割合とすることがより好ましい。
【0029】
1.3 その他の成分
上記のとおり、重合体(A)を製造した重合反応混合物は、これをそのまま本発明の電極用バインダー組成物の調製に供することも許容される。従って、本発明の電極用バインダー組成物は、重合体(A)および液状媒体(B)のほかに、重合体(A)の合成に使用される重合触媒またはその残滓、残存モノマー、乳化剤、界面活性剤、中和剤などを含有していても、本発明の効果が減殺されるものではない。しかしながら、得られる蓄電デバイスの電池特性を十分に高いレベルに維持する観点からは、これら重合体(A)の製造に由来する成分の含有割合は可及的に少ないことが好ましく、電極用バインダー組成物の固形分に対して、5質量%以下とすることが好ましく、1質量%以下とすることがより好ましく、0.5質量%以下とすることがさらに好ましく、特に好ましくはこれらを全く含有しないことである。
本発明の電極用バインダー組成物は、その液性が中性付近であることが好ましく、pH6.0〜8.5であることがより好ましく、特にpH7.0〜8.0であることが好ましい。組成物の液性の調整には、公知の酸または塩基を用いることができる。酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などを;
塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水などを、それぞれ挙げることができる。
従って本発明の電極用バインダー組成物は、上記の酸または塩基を、液性の調整に必要な範囲で含有していてもよい。
【0030】
2. 電極用スラリー
上記のような本発明の電極用バインダー組成物を用いて、電極用スラリーを製造することができる。電極用スラリーとは、集電体の表面上に電極活物質層を形成するために用いられる分散液のことをいう。本発明における電極用スラリーは、少なくとも本発明の電極用バインダー組成物および電極活物質を含有する。
【0031】
2.1 電極活物質
本発明の電極用バインダー組成物を用いて製造される電極用スラリーに使用される電極活物質としては、例えば炭素材料、リチウム原子を含む酸化物、ケイ素原子を含む化合物、鉛化合物、錫化合物、砒素化合物、アンチモン化合物、アルミニム化合物などを挙げることができる。
上記炭素材料としては、例えばアモルファスカーボン、グラファイト、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、ピッチ系炭素繊維などを挙げることが得きる。
上記リチウム原子を含む酸化物としては、例えばコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、三元系ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、LiFePO、LiCoPO、LiMnPO、Li0.90Ti0.05Nb0.05Fe0.30Co0.30Mn0.30POなどを挙げることができる。
上記ケイ素原子を含む化合物としては、例えばケイ素単体、ケイ素酸化物、ケイ素合金などを挙げることができるほか、特許文献6(特開2004−185810号公報)に記載されたケイ素材料を使用することができる。上記ケイ素酸化物としては、組成式SiO(0<x<2、好ましくは0.1≦x≦1)で表されるケイ素酸化物が好ましい。上記ケイ素合金としては、ケイ素と、チタン、ジルコニウム、ニッケル、銅、鉄およびモリブデンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属との合金が好ましい。これらの遷移金属のケイ化物は、高い電子伝導度を有し、且つ高い強度を有することから好ましく用いられる。また、活物質がこれらの遷移金属を含むことにより、活物質の表面に存在する遷移金属が酸化されて表面に水酸基を有する酸化物となるから、バインダーとの結着力がより良好になる点でも好ましい。ケイ素合金としては、ケイ素−ニッケル合金またはケイ素−チタン合金を使用することがより好ましく、ケイ素−チタン合金を使用することが特に好ましい。ケイ素合金におけるケイ素の含有割合は、該合金中の金属元素の全部に対して10モル%以上とすることが好ましく、20〜70モル%とすることがより好ましい。ケイ素原子を含む化合物は、単結晶、多結晶および非晶質のいずれであってもよい。
【0032】
本発明の電極用バインダー組成物を蓄電デバイスの負極を製造するために使用する場合、電極用スラリーが含有する活物質としては、ケイ素原子を含む化合物を含有するものであることが好ましい。ケイ素原子はリチウムの吸蔵力が大きいから、活物質がケイ素原子を含む化合物を含有することにより、得られる蓄電デバイスの蓄電容量を高めることができ、その結果、蓄電デバイスの出力およびエネルギー密度を高くすることができる。負極用の活物質としては、ケイ素原子を含む化合物と炭素材料との混合物からなることが好ましい。炭素材料は、充放電に伴う体積変化が小さいから、負極用活物質としてケイ素原子を含む化合物と炭素材料との混合物を使用することにより、ケイ素原子を含む化合物の体積変化の影響を緩和することができ、活物質層と集電体の密着性をより向上することができる。負極用活物質は、ケイ素原子を含む化合物とグラファイトとの混合物からなることが特に好ましい。
活物質中に占めるケイ素原子を含む化合物の割合は、1質量%以上とすることが好ましく、1〜50質量%とすることがより好ましく、5〜45質量%とすることがさらに好ましく、特に10〜40質量%とすることが好ましい。
活物質の形状としては、粒状であることが好ましい。粒子の粒径(平均メジアン粒径)としては、0.1〜100μmであることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましい。
活物質の使用割合は、電極用バインダー組成物中の重合体(A)の量が活物質100質量に対して、0.1〜25質量部となる割合とすることが好ましく、0.5〜15質量部となる割合とすることがより好ましい。このような使用割合とすることにより、密着性により優れ、しかも電極抵抗が小さく充放電特性により優れた電極を作成することができる。
【0033】
2.2 任意的添加成分
本発明における電極用スラリーは、前述した成分以外に、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。このようなその他の成分としては、例えば導電付与剤、増粘剤、液状媒体(ただし、電極用バインダー組成物からの持ち込み分を除く。)などを挙げることができる。
【0034】
2.2.1 導電付与剤
導電付与剤の具体例としては、リチウムイオン二次電池においてはカーボンなどを挙げることができる。カーボンとしては、活性炭、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、黒鉛、炭素繊維、フラーレンなどを挙げることができる。これらの中でも、アセチレンブラックまたはファーネスブラックを好ましく使用することができる。導電付与剤の割合は、活物質100質量部に対して、好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは1〜15質量部であり、特に2〜10質量部であることが好ましい。
【0035】
2.2.2 増粘剤
電極用スラリーは、その塗工性を改善する観点から、増粘剤を含有することができる。増粘剤の具体例としては、例えば例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースなどのセルロース誘導体;
上記セルロース誘導体のアンモニウム塩またはアルカリ金属塩;
ポリ(メタ)アクリル酸、変性ポリ(メタ)アクリル酸などのポリカルボン酸;
上記ポリカルボン酸のアルカリ金属塩;
ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのポリビニルアルコール系(共)重合体;
(メタ)アクリル酸、マレイン酸およびフマル酸などの不飽和カルボン酸と、ビニルエステルとの共重合体の鹸化物などの水溶性ポリマーなどを挙げることができる。
増粘剤の使用割合としては、電極用スラリー中の増粘剤の重量(Wv)と活物質の重量(Wa)との比(Wv/Wa)が0.001〜0.1となる割合である。この比(Wv/Wa)は、0.005〜0.05であることが好ましい。
【0036】
2.2.3 液状媒体
電極用スラリーは、電極用バインダー組成物を含有するから、電極用バインダー組成物が含有していた液状媒体を含有することとなる。しかしながら電極用スラリーは、電極用バインダー組成物から持ち込まれた液状媒体に加えて、さらなる液状媒体を追加で含有してもよい。
電極用スラリーに追加含有される液状媒体は、電極用バインダー組成物に含有されていた液状媒体(B)と同種であってもよく、異なっていてもよいが、電極用バインダー組成物がスラリー状もしくはラテックス状の組成物であるか、または溶液状の組成物であるかに応じて、電極用バインダー組成物における液状媒体(B)について上述した液状媒体から選択して使用されることが好ましい。
電極用スラリーにおける液状媒体(電極用バインダー組成物からの持ち込み分を含む。)の使用割合は、電極用スラリーの固形分濃度(電極用スラリー中の液状媒体以外の成分の合計質量が電極用スラリーの全質量に占める割合をいう。以下同じ。)が、30〜70質量%となる割合とすることが好ましく、40〜60質量%となる割合とすることがより好ましい。
【0037】
2.3 電極用スラリーの製造方法
電極用スラリーは、上記の各成分を含有するものである限り、どのような方法によって製造されたものであってもよい。
しかしながら、より良好な分散性および安定性を有する電極用スラリーを、より効率的且つ安価に製造するとの観点から、電極用バインダー組成物に、活物質および必要に応じて用いられる任意的添加成分を加え、これらを混合することにより製造することができる。
電極用バインダー組成物とその他の成分とを混合するためには、公知の手法による攪拌によって行うことができる。
電極用スラリーの調製(各成分の混合操作)は、少なくともその工程の一部を減圧下で行うことが好ましい。これにより、得られる正極層内に気泡が生じることを防止することができる。減圧の程度としては、絶対圧として、5.0×10〜5.0×10Pa程度とすることが好ましい。
電極用スラリーを製造するための混合撹拌としては、スラリー中に活物質粒子の凝集体が残らない程度に撹拌し得る混合機と、必要にして十分な分散条件とを選択する必要がある。分散の程度は粒ゲージにより測定可能であるが、少なくとも100μmより大きい凝集物がなくなるように混合分散することが好ましい。このような条件に適合する混合機としては、例えばボールミル、ビーズミル、サンドミル、脱泡機、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、ホバートミキサーなどを例示することができる。
【0038】
3. 蓄電デバイス用電極の製造方法
蓄電デバイス用電極は、金属箔などの適宜の集電体の表面に、本発明の電極用バインダー組成物を用いて製造された電極用スラリーを塗布して塗膜を形成し、次いで該塗膜から液状媒体を除去することにより、製造することができる。この様にして製造された電極は、集電体上に、前述の重合体(A)および活物質、さらに必要に応じて使用される任意添加成分を含有する活物質層が結着されてなるものである。集電体の表面に前述した電極用スラリーから形成された層を有する電極は、集電体と活物質層間と間の結着性に優れるとともに、電気的特性の一つである充放電レート特性が良好である。
集電体は、導電性材料からなるものであれば特に制限されない。リチウムイオン二次電池においては、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレスなどの金属製の集電体が使用されるが、特に正極にアルミニウムを、負極に銅を用いた場合、本発明の正極用スラリーの効果が最もよく現れる。ニッケル水素二次電池における集電体としては、パンチングメタル、エキスパンドメタル、金網、発泡金属、網状金属繊維焼結体、金属メッキ樹脂板などが使用される。
集電体の形状および厚さは特に制限されないが、厚さ0.001〜0.5mm程度のシート状のものとすることが好ましい。
【0039】
電極用スラリーの集電体への塗布方法については、特に制限はない。塗布は、例えばドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、浸漬法、ハケ塗り法などの適宜の方法によることができる。電極用スラリーの塗布量も特に制限されないが、液状媒体を除去した後に形成される活物質層の厚さが、0.005〜5mmとなる量とすることが好ましく、0.01〜2mmとなる量とすることがより好ましい。
塗布後の塗膜からの液状媒体の除去方法についても特に制限されず、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥;真空乾燥;(遠)赤外線、電子線などの照射による乾燥などによることができる。乾燥速度としては、応力集中によって活物質層に亀裂が入ったり、活物質層が集電体から剥離したりしない程度の速度範囲の中で、できるだけ早く液状媒体が除去できるように適宜に設定することができる。
【0040】
さらに、液状媒体除去後の集電体をプレスすることにより、活物質層の密度を高めることが好ましい。プレス方法としては、金型プレス、ロールプレスなどの方法が挙げられる。プレスの条件は、使用するプレス機器の種類および活物質層の密度の所望値によって適宜に設定されるべきである。この条件は、当業者による少しの予備実験により、容易に設定することができるが、例えばロールプレスの場合、ロールプレス機の線圧力は0.1〜10t/cm、好ましくは0.5〜5t/cmの圧力において、例えばロール温度が20〜100℃において、分散媒除去後の塗膜の送り速度(ロールの回転速度)が1〜80m/分、好ましくは5〜50m/分で行うことができる。
プレス後の活物質層の密度は、電極を正極として使用する場合には、1.5〜2.4g/cmとすることが好ましく、1.7〜2.2g/cmとすることがより好ましく;
電極を負極として使用する場合には、1.2〜1.9g/cmとすることが好ましく、1.3〜1.8g/cmとすることがより好ましい。
プレス後の塗膜は、さらに、減圧下で加熱して液状媒体を完全に除去することが好ましい。この場合の減圧の程度としては、絶対圧として50〜200Paとすることが好ましく、75〜150Paとすることがより好ましい。加熱温度としては、100〜200℃とすることが好ましく、120〜180℃とすることがより好ましい。加熱時間は、2〜12時間とすることが好ましく、4〜8時間とすることがより好ましい。
このようにして製造された蓄電デバイス用電極は、集電体と活物質層との間の密着性に優れるとともに、電気的特性の一つであるサイクル特性が良好である。
【0041】
4. 蓄電デバイス
上記のような本発明の蓄電デバイス用電極を用いて、蓄電デバイスを製造することができる。
蓄電デバイスは、前述した電極を備えるものであり、さらに電解液を含有し、セパレータなどの部品を用いて、常法に従って製造することができる。具体的な製造方法としては、例えば、負極と電極とをセパレータを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に収納し、該電池容器に電解液を注入して封口する方法などを挙げることができる。電池の形状は、コイン型、円筒型、角形、ラミネート型など、適宜の形状であることができる。
電解液は、液状でもゲル状でもよく、負極活物質、電極活物質の種類に応じて、蓄電デバイスに用いられる公知の電解液の中から電池としての機能を効果的に発現するものを選択すればよい。
電解液は、電解質を適当な溶媒に溶解した溶液であることができる。
上記電解質としては、例えばリチウムイオン二次電池においては、従来から公知のリチウム塩のいずれをも使用することができ、その具体例としては、例えばLiClO、LiBF、LiPF、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiB10Cl10、LiAlCl、LiCl、LiBr、LiB(C、LiCFSO、LiCHSO、LiCSO、Li(CFSON、低級脂肪酸カルボン酸リチウムなどを例示することができる。
【0042】
上記電解質を溶解するための溶媒は、特に制限されるものではないが、その具体例として、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート化合物;
γ−ブチルラクトンなどのラクトン化合物;
トリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル化合物;
ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド化合物などを挙げることができ、これらのうちから選択される一種以上を使用することができる。
電解液中の電解質の濃度としては、好ましくは0.5〜3.0モル/Lであり、より好ましくは0.7〜2.0モル/Lである。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0044】
実施例1
(1)バインダー組成物の調製
容量3Lの3ツ口セパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、室温(25℃)において、水500g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム12g、t−ドデシルメルカプタン0.024g、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート(OXMA)116.1g(0.63モル)および2−メトキシエチルアクリレート(MEA)82g(0.63モル)を仕込み、攪拌しながら15℃に冷却してモノマー混合物のエマルジョン液を調製した。
上記モノマー混合物のエマルジョン液の温度を15℃に維持しつつ、ここにエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム0.03g、硫酸鉄(II)七水和物0.012g、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム0.048g、ハイドロサルファイトナトリウム0.02gおよびパラメンタンハイドロパーオキサイド0.045gを添加して、重合を開始した。その後定期的にモノマーの転化率を確認しつつ、モノマーの転化率が95質量%以上になるまで重合を継続した。この転化率の確認は、少量サンプリングした重合中のラテックスをアルミ製容器に秤量し、260℃のホットプレート上で恒量になるまで加熱して残存した固体(重合体)の重量を計測した結果から計算によって求める方法によった。重合開始から6時間後、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン0.235g添加して重合を停止することによって、重合体を30質量%含有するラテックス状のバインダー組成物G1を調製した。
上記バインダー組成物G1中に含有される重合体につき、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定したポリスチレン換算の数平均分子量Mnは350,000であった。
【0045】
(2)電極用スラリー(負極用スラリー)の調製
二軸型プラネタリーミキサー(プライミクス(株)製、商品名「TKハイビスミックス 2P−03」)中に増粘剤(商品名「CMC2200」、ダイセル化学工業(株)製)1質量部(固形分換算)、負極活物質としてグラファイト(日立化成工業(株)製、製品名「SMG−HE1」)100質量部および水68質量部を投入し、60rpmにおいて1時間攪拌を行った。
その後ここに、上記(1)バインダー組成物の調製で得たバインダー組成物G1を、重合体に換算して1質量部加え、60rpmにおいてさらに1時間攪拌してペーストを得た。得られたペーストに水を追加投入し、固形分を50質量%に調整した後、攪拌脱泡機((株)シンキー製、商品名「あわとり練太郎」)を使用して、200rpmで2分間および1,800rpmで5分間、さらに絶対圧25kPaの減圧下において1,800rpmで1.5分間攪拌、順次に混合することにより、負極用スラリーを調製した。
【0046】
(3)蓄電デバイス用電極(負極)の製造
厚み50μmの銅箔からなる集電体の表面に、上記(2)電極用スラリーの調製で得た負極用スラリーを、液状媒体除去後の活物質層の膜厚が80μmとなるようにドクターブレード法によって均一に塗布した後、120℃において20分間乾燥処理して塗膜を形成した。次いで上記塗膜を、プレス後の活物質層密度が1.8g/cmとなるように、ギャップ間調整式ロールプレス機(テスター産業(株)製、商品名「SA−601」)を用い、ロール温度30℃、線圧力1t/cmおよび送り速度0.5m/分の条件でプレス加工することにより、電極(負極)を得た。
【0047】
(4)電極の密着性評価(電極を電解液に浸漬した後のピール強度の評価)
上記(3)蓄電デバイス用電極の製造で得た蓄電デバイス用電極を幅2cm×長さ10cmの大きさに切り出して試験片を作成した、この試験片を、電解液(エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=3/7(質量比)の溶媒に、LiPFを1モル/Lの濃度で溶解した溶液)中に80℃において1時間浸漬した。1時間後、試験片を電解液より取り出し、表面に付着している電解液をエアガンで吹き飛ばした後、25℃において6時間真空下で乾燥した。
次いで、両面テープ(ニチバン(株)製、品番「NW−25」)120mmを電極の活物質層側の表面へ貼り付け、さらにこの両面テープの逆側の面を70mm×150mm×0.7mmのアルミニウム板に貼り付けて、電極の集電体側の面が上側を向くように固定した。このアルミニウム板に固定した上記電極試験片の集電体側の表面に、幅18mm、長さ130mmのテープ(JIS Z1522準拠品、商品名「セロテープ(登録商標)」、ニチバン(株)製)を貼り付けた。
このテープの一端を治具に挟持して、アルミニウム板との角度を90°に維持しつつ前期テープを上方向に50mm/分の速度で引き上げて、剥離力(剥離角度90°で剥離されたときに上記テープを引っ張っている力)を6回測定した。この剥離力測定を6個の異なる試験片について行い、その平均値を算出し、これを電極活物質層のピール強度(mN/2cm)とした。「mN/2cm」は、幅2cmあたりの剥離強度を示す単位である。
このピール強度の値が大きいほど、集電体と活物質層との密着強度が高く、集電体から活物質が剥離し難いと評価することができる。
表1において、上記ピール強度の値が200mN/2cm以上であった場合には密着性は良好であるとし、200mN/2cm未満であった場合には密着性は不良であるとした。
【0048】
(5)対電極(正極)の製造
二軸型プラネタリーミキサー(プライミクス(株)製、商品名「TKハイビスミックス 2P−03」)中に、市販の電極用バインダー((株)クレハ製、商品名「KFポリマー#1120」)4.0質量部(固形分換算)、導電助剤(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブラック50%プレス品」)3.0質量部、正極活物質として粒径5μmのLiCoO(ハヤシ化成(株)製)100質量部およびN−メチルピロリドン(NMP)36質量部を投入し、60rpmで2時間攪拌を行い、ペーストを得た。得られたペーストにNMPを追加して固形分を65質量%に調整した後、攪拌脱泡機((株)シンキー製、商品名「あわとり練太郎」)を使用して、200rpmで2分間および1,800rpmで5分間、さらに真空下において1,800rpmで1.5分間、順次に攪拌混合することにより、電極用スラリーを調製した。
厚さ30μmアルミニウム箔からなる集電体の表面に、上記で調製した電極用スラリーを、液状媒体後の活物質層の膜厚が80μmとなるようにドクターブレード法によって均一に塗布し、125℃で20分間乾燥処理した。その後、活物質層の密度が3.0g/cmとなるようにロールプレス機によりプレス加工することにより、対電極(正極)を得た。
【0049】
(6)蓄電デバイスの製造
露点が−80℃以下となるようアルゴン置換されたグローブボックス内で、上記(3)蓄電デバイス用電極の製造で得た電極(負極)を直径16.16mmに打ち抜き成型したものを、2極式コインセル(宝泉(株)製、商品名「HSフラットセル」)上に載置した。次いでこの上に、直径24mmに打ち抜いたポリプロピレン製多孔膜からなるセパレータ(セルガード(株)製、商品名「セルガード#2400」)を載置し、さらに、空気が入らないように電解液を500μL注入した後、(5)対電極の製造で得た正極を直径15.95mmに打ち抜き成型したものを載置し、前記2極式コインセルの外装ボディーをネジで閉めて封止することにより、蓄電デバイス(リチウムイオン電池セル)を組み立てた。
ここで使用した電解液は、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=3/7(質量比)の溶媒に、LiPFを1モル/Lの濃度で溶解した溶液である。
【0050】
(7)蓄電デバイスの評価(充放電レート特性の評価)
上記(4)蓄電デバイスの製造で製造した蓄電デバイスにつき、定電流(0.2C)にて充電を開始し、電圧が4.2Vになった時点で引き続き定電圧(4.2V)にて充電を続行し、電流値が0.01Cとなった時点を充電完了(カットオフ)として、0.2Cにおける充電容量を測定した。次いで、定電流(0.2C)にて放電を開始し、電圧が2.7Vになった時点を放電完了(カットオフ)とし、0.2Cにおける放電容量を測定した。
次に、上記と同じ蓄電デバイスにつき、定電流(3C)にて充電を開始し、電圧が4.2Vになった時点で引き続き定電圧(4.2V)にて充電を続行し、電流値が0.01Cとなった時点を充電完了(カットオフ)として3Cにおける電容量を測定した。次いで、定電流(3C)にて放電を開始し、電圧が2.7Vになった時点を放電完了(カットオフ)とし、3Cにおける放電容量を測定した。
上記の測定値を用いて充電レートおよび放電レートを算出した。充電レート(%)は、0.2Cにおける充電容量に対する3Cにおける充電容量の割合(百分率)として得た。放電レート(%)は、0.2Cにおける放電容量に対する3Cにおける放電容量の割合(百分率)として得た。
上記測定条件において「1C」とは、ある一定の電気容量を有する蓄電デバイスを定電流放電した場合に1時間で放電終了となる電流値のことを示す。例えば「0.1C」とは、10時間かけて放電終了となる電流値のことであり、10Cとは0.1時間かけて放電完了となる電流値のことである。
表1において、充電レートおよび放電レートの双方がいずれもが80%以上であった場合には蓄電デバイスの充放電特性は良好であるとし、充電レートおよび放電レートの双方がいずれかが80%未満であった場合には充放電特性は不良であるとした。
【0051】
(8)蓄電デバイスの評価(充放電サイクル特性の評価)
上記(4)蓄電デバイスの製造で製造した蓄電デバイスにつき、定電流(0.2C)にて充電を開始し、電圧が4.2Vになった時点で引き続き定電圧(4.2V)にて充電を続行し、電流値が0.01Cとなった時点を充電完了(カットオフ)として、0.2Cにおける充電容量を測定した。次いで、定電流(0.2C)にて放電を開始し、電圧が2.7Vになった時点を放電完了(カットオフ)とし、0.2Cにおける放電容量を測定した。
この充放電の操作を1サイクルとし、3サイクル目の放電容量(C3Cycles)及び50サイクル目の放電容量(C50Cycles)を測定し、下記式(3)によって蓄電デバイスのサイクル特性(%)を算出した。
サイクル特性(%)=(C50Cycles/C3Cycles)×100 (3)
表1において、上記のサイクル特性の値が70%以上であった場合には充放電の繰り返しによるバインダーの酸化分解などに起因する電池特性の劣化が抑制されていると考えられるから充放電サイクル特性は良好であるとし、この値が70%未満であった場合には充放電サイクル特性は不良であるとした。
【0052】
実施例2〜4
バインダー組成物および負極活物質の種類を、それぞれ以下のように変更したほかは実施例1と同様にして負極および正極ならびに蓄電デバイスを製造して評価した。
バインダー組成物としては、
実施例2においては、実施例1の(1)バインダー組成物の調製と同様にして調製したバインダー組成物G1を;
実施例3および4においては、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート(OXMA)および2−メトキシエチルアクリレート(MEA)の使用割合をそれぞれ表1に記載のとおりとしたほかは実施例1の(1)バインダー組成物の調製と同様に調製したラテックス状のバインダー組成物G2およびG3を、それぞれ用いた。
負極活物質としては、
実施例2においてはグラファイトの代わりにシリコンを含有する活物質を;
実施例3および4においては、実施例1で用いたものと同じグラファイト(日立化成工業(株)製、製品名「SMG−HE1」)を、それぞれ用いた。実施例2におけるシリコンを含有する活物質は、シリコン粉末およびグラファイトを用いて特許文献6(特開2004−185810号公報)に記載の方法に準じて以下のように調製した。すなわち、シリコンインゴットをめのう乳鉢で粉砕して得た平均粒径10μmのシリコン粉末(純度99.6質量%)および市販のグラファイト(日立化成工業(株)製、製品名「MAGD」)を表1に記載の割合で混合し、媒体撹拌ミル装置(ホソカワミクロン(株)製、製品名「PULVIS」)を用いて窒素中で3時間粉砕した後、酸化防止被膜処理を行わずに空気中に取り出して、これを負極活物質として用いた。表1における負極活物質欄の数値(質量部)は、バインダー組成物中の重合体1質量部に対する使用割合である。
すべての評価結果は表1に示した。
【0053】
実施例5
容量3Lの3ツ口セパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、室温においてエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)からなる混合溶媒(EC:DEC=3:7(体積比))236g中に、メトキシエチルアクリレート33g(0.25mol)、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート46.7g(0.25mol)およびN,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.79g(モノマーの合計質量100質量部に対して1質量部に相当)を仕込み、これを攪拌しながら60℃に加熱して6時間反応させた後、室温まで冷却した。冷却後の溶液をヘキサンに投入し、得られた沈殿物をろ別により回収した。回収物を60℃で12時間減圧乾燥して重合体を得た。得られた重合体をN−メチルピロリドン(NMP)へ溶解することにより、重合体を25質量%含有するバインダー組成物G4を調製した。
上記で得られた重合体(NMPへ溶解する前のもの)につき、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定したポリスチレン換算の数平均分子量は150,000であった。
上記で得たバインダー組成物G4を用い、負極活物質としてシリコン/グラファイト比を表1に記載のとおりとして実施例2に準じて調製した、シリコンを含有する活物質を、バインダー組成物中の重合体1質量部に対して100質量部使用したほかは、実施例1と同様にして電極および蓄電デバイスを製造し、それらの特性を評価した。
評価結果は表1に示した。
【0054】
実施例6および7ならびに比較例1〜4
バインダー組成物および負極活物質の種類を、それぞれ以下のように変更したほかは実施例5と同様にして負極および正極ならびに蓄電デバイスを製造して評価した。
バインダー組成物としては、
実施例6および7ならびに比較例1および2においては、2−メトキシエチルアクリレート(MEA)およびメチルメタクリレート(3−エチル−3−オキセタニル)(OXMA)の使用割合をそれぞれ表1に記載のとおりとしたほかは実施例5と同様にして調製した溶液状のバインダー組成物G5〜G7を;
比較例3においては、市販の電極用バインダー((株)クレハ製、商品名「KFポリマー#1120」、ポリフッ化ビニリデン(PVdF))を25質量%の濃度でNMPに溶解した溶液を;
比較例4においては、モノマーとして3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(CHOMA)のみを使用して実施例5と同様にして調製した溶液状バインダー組成物G8(ポリ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート)のNMP溶液、重合体濃度=25質量%)を、それぞれ用いた。なお、比較例3で用いたPVdFはTHFに不要であったため、Mnの測定は行わなかった。
負極活物質としては、
実施例6および7ならびに比較例2〜4においては、シリコン/グラファイト比を表1に記載のとおりとして実施例2に準じて調製した、シリコンを含有する活物質を;
比較例1においては、実施例1で用いたものと同じグラファイト(日立化成工業(株)製、製品名「SMG−HE1」)を、それぞれ用いた。表1における負極活物質欄の数値(質量部)は、バインダー組成物中の重合体1質量部に対する使用割合である。
すべての評価結果は表1に示した。
【0055】
【表1】
表1における各欄の略称は、それぞれ以下の意味である。
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
PVdF:ポリフッ化ビニリデン(市販品、(株)クレハ製、商品名「KFポリマー#1120」)
OXMA:(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート
MEA:2−メトキシエチルアクリレート
CHOMA:3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート