【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人情報通信研究機構、『革新的光ファイバの実用化に向けた研究開発』委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光ファイバ母材の外形となる第1の石英管の内側に前記第1の石英管の内周径よりも小さい直径を有する複数の第2の石英管を、前記第1の石英管の軸方向に沿って配置する石英管配置工程と、
前記第1の石英管の外側及び前記第2の石英管の内側に加熱器具をそれぞれ配置する加熱器具配置工程と、
前記第2の石英管の外側、かつ、前記第1の石英管の内側に原料ガスを流入し、前記第1の石英管及び前記第2の石英管を加熱器具で加熱することで前記第1の石英管内部に拡散した第1のガラス微粒子を堆積させ、前記光ファイバ母材のクラッド部を形成するクラッド部堆積工程と、
前記第2の石英管の内側に配置した加熱器具を取り外す取り外し工程と、
予め加熱された前記第2の石英管の内側に原料ガスを流入し第2のガラス微粒子を堆積させることで前記光ファイバ母材のコア部を形成するコア部堆積工程と、
を順に行うことを特徴とするマルチコア光ファイバ母材の製造方法。
光ファイバ母材の1つのコア部が形成された柱体状の母材又は1つのコア部及び該コア部周囲のクラッド部の一部が形成された柱体状の母材を予めコア数分作製するコア部作製工程と、
光ファイバ母材の外形となる第1の石英管の内側に、前記第1の石英管の内周径よりも小さい直径を有する複数の
第2の石英管を、前記第1の石英管の軸方向に沿って配置する石英管配置工程と、
前記第1の石英管の外側及び前記第2の石英管の内側に加熱器具をそれぞれ配置する加熱器具配置工程と、
前記第2の石英管の外側、かつ、前記第1の石英管の内側に原料ガスを流入し、前記第1の石英管及び前記第2の石英管を加熱器具で加熱することで前記第1の石英管内部に拡散したガラス微粒子を堆積させ、前記光ファイバ母材のクラッド部を形成するクラッド部堆積工程と、
前記第2の石英管の内側に配置した加熱器具を取り外す取り外し工程と、
予め作製された前記コア部が形成された柱体状の母材を前記ガラス微粒子が外面に堆積された第2の石英管内に挿入するコア部挿入工程と
を順に行うことを特徴とするマルチコア光ファイバ母材の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のマルチコア光ファイバ母材の製造方法では、コア部の表面にOH基や不純物が付着するため、これら不純物による吸収損失が生じることにより低損失化が難しいという問題がある。また、光ファイバの軸心に直交する断面において複数個形成されるコア部間の距離などを精密に制御することが困難であるという問題もある。
【0006】
特に、コア部が光ファイバの軸心に直交する断面方向に積層される場合には、積層数の増加とともにコア部の配列の精度も劣化するという問題がある。さらに、コア部間の隙間にクラッド部となる石英柱を積層するため、コストの低減が困難であるという問題もある。
【0007】
他方、特許文献2に記載のマルチコア光ファイバ母材の製造方法では、石英ガラスが非常に硬いため、クラッド部となる石英柱に空孔を開ける際に超音波振動研削などの特殊な方法を用いる必要がある。しかし、孔を深く研削するために研削工具の長さを長くすると、高速回転に伴う軸ずれが生じ、研削できなくなってしまう。そのため、母材サイズの大型化、つまり光ファイバの長尺化が困難であるといった問題がある。
【0008】
特許文献3に記載のマルチコア光ファイバ母材の製造方法では、光ファイバの外径となる石英管の内部、かつ、光ファイバのコア部となる石英管の外部に、クラッド部を形成するガラス微粒子を堆積する際に、光ファイバのコア部となる石英管近傍の温度が均一に加熱されないため、クラッド部を形成するガラス微粒子が均一に堆積しないといった問題がある。
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、上記の事情に鑑み提案されたものであって、光ファイバ断面に複数のコアを有するマルチコア光ファイバを低損失かつ長尺に製造可能な光ファイバ母材を容易に得ることができるマルチコア光ファイバ母材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明では光ファイバ母材の外形を形成する石英管内部に、光ファイバ母材のコア部を形成する石英管を各コア部に対応するよう配置し、各石英管を加熱しながら、石英管にガラス微粒子を堆積させることを特徴とする。
【0011】
より具体的には、MCVD(Modified Chemical Vapor Deposition)法及びPCVD(Plasma Chemical Vapor Deposition)法をベースとして、石英管を加熱しながらガラス粒子を堆積させて光ファイバ母材を生成する。
【0012】
具体的には、本発明に係るマルチコア光ファイバ母材の製造方法は、
光ファイバ母材の外形となる第1の石英管の内側に前記第1の石英管の内周径よりも小さい直径を有する複数の第2の石英管を、前記第1の石英管の軸方向に沿って配置する石英管配置工程と、
前記第1の石英管の外側及び前記第2の石英管の内側に加熱器具をそれぞれ配置する加熱器具配置工程と、
前記第2の石英管の外側、かつ、前記第1の石英管の内側に原料ガスを流入し、前記第1の石英管及び前記第2の石英管を加熱器具で加熱することで前記第1の石英管内部に拡散した第1のガラス微粒子を堆積させ、前記光ファイバ母材のクラッド部を形成するクラッド部堆積工程と、
前記第2の石英管の内側に配置した加熱器具を取り外す取り外し工程と、
予め加熱された前記第2の石英管の内側に原料ガスを流入し第2のガラス微粒子を堆積させることで前記光ファイバ母材のコア部を形成するコア部堆積工程と、を順に行う。
【0013】
本発明に係る上述のマルチコア光ファイバ母材の製造方法では、
前記クラッド部堆積工程及び前記コア部堆積工程は、
前記第1の石英管と前記第2の石英管と前記加熱器具との相対的位置の位置関係を維持するとともに前記第1の石英管の中心軸を回転軸として、前記第1の石英管と前記第2の石英管と前記加熱器具とを同期回転させてもよい。
【0014】
本発明に係る上述のマルチコア光ファイバ母材の製造方法では、
前記石英管配置工程は、
第2の石英管の屈折率が、前記クラッド部の屈折率よりも低い値でもよい。
【0015】
本発明に係るマルチコア光ファイバ母材の製造方法では、
前記加熱器具配置工程は、
前記加熱器具として酸水素バーナー又は電熱線又はマイクロ波を発生させるキャビティを用いてもよい。
【0016】
具体的には、本発明に係るマルチコア光ファイバ母材の製造方法は、
光ファイバ母材の1つのコア部が形成された柱体状の母材又は1つのコア部及び該コア部周囲のクラッド部の一部が形成された柱体状の母材を予めコア数分作製するコア部作製工程と、
光ファイバ母材の外形となる第1の石英管の内側に、前記第1の石英管の内周径よりも小さい直径を有する複数の前記第2の石英管を、前記第1の石英管の軸方向に沿って配置する石英管配置工程と、
前記第1の石英管の外側及び前記第2の石英管の内側に加熱器具をそれぞれ配置する加熱器具配置工程と、
前記第2の石英管の外側、かつ、前記第1の石英管の内側に原料ガスを流入し、前記第1の石英管及び前記第2の石英管を加熱器具で加熱することで前記第1の石英管内部に拡散したガラス微粒子を堆積させ、前記光ファイバ母材のクラッド部を形成するクラッド部堆積工程と、
前記第2の石英管の内側に配置した加熱器具を取り外す取り外し工程と、
予め作製された前記コア部が形成された柱体状の母材を前記ガラス微粒子が外面に堆積された第2の石英管内に挿入するコア部挿入工程と
を順に行う。
【0017】
本発明に係る上述のマルチコア光ファイバ母材の製造方法では、
前記クラッド部堆積工程は、
前記第1の石英管と前記第2の石英管と前記加熱器具との相対的位置の位置関係を維持するとともに前記第1の石英管の中心軸を回転軸として、前記第1の石英管と前記第2の石英管と前記加熱器具とを同期回転させてもよい。
【0018】
本発明に係る上述のマルチコア光ファイバ母材の製造方法では、
前記石英管配置工程は、
前記コア部が形成された柱体状の母材を挿入する第2の石英管の屈折率が、前記クラッド部の屈折率よりも低い値でもよい。
【0019】
本発明に係る上述のマルチコア光ファイバ母材の製造方法では、
前記加熱器具配置工程は、
前記加熱器具として酸水素バーナー又は電熱線又はマイクロ波を発生させるキャビティを用いてもよい。
【0020】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るマルチコア光ファイバ母材の製造方法によれば、光ファイバ断面に複数のコアを有するマルチコア光ファイバを低損失かつ長尺に製造可能な光ファイバ母材を容易に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0024】
本実施形態に係るマルチコア光ファイバ母材の製造方法は、石英管配置工程と、加熱器具配置工程と、クラッド部堆積工程と、取り外し工程と、コア部堆積工程と、を順に行う。また、コア部作製工程と、石英管配置工程と、加熱器具配置工程と、クラッド部堆積工程と、取り外し工程と、コア部挿入工程との順でマルチコア光ファイバ母材の製造方法を行ってもよい。
【0025】
本発明に係るマルチコア光ファイバ母材の製造方法について図面を参照して説明する。まず、本発明において製造対象となるマルチコア光ファイバ用の光ファイバ母材について
図1を参照して説明する。
図1は光ファイバ母材の断面の一例を示す図である。
【0026】
光ファイバ母材10は、
図1に示すように、全体が断面円形となっており紙面を貫く方向に延在している。なお、光ファイバ母材の外形は、所望の光ファイバ外形を形成する形状であり、所望の光ファイバ外形を形成する形状であれば円形でなくてもよい。
【0027】
光ファイバ母材10は、複数(
図1では7個)の任意の屈折率分布(
図1では円形)を有するコア部11と、コア部11よりも小さい屈折率を有するクラッド部12からなる。クラッド部12は前記コア部11以外の部分を形成しており、したがって光ファイバ母材10の外形はクラッド部12の外形を形成する。
【0028】
複数のコア部11のうちの1つは、石英管配置工程により光ファイバ母材10の中心(軸心)に配置されている。他のコア部11は、軸心のコア部11の周囲に配置されている。
図1では複数の周囲のコア部11は、それぞれ軸心から所定の距離をとるように配置されるとともに、隣り合うコア部11は互いに等間隔をとるように配置されている。換言すれば、7個のコア部11は、正六角形の各頂点及びその中心に設けられて光ファイバ母材10は対称構造となっている。なお、複数のコア部11のうちの1つを中心(軸心)に配置しなくてもよい。
【0029】
また、石英管配置工程では、複数の周囲のコア部11は単に軸心を囲む位置に配置して、光ファイバ母材10を非対称構造としてもよい。また、7個のコア部11を有する光ファイバ母材10としたが、7個に限らず2個以上の複数個のコア部11を有する光ファイバ母材10であればよい。
【0030】
石英を主成分として用いる光ファイバにおいては、コア部11及びクラッド部12の何れかにドーパントを添加することにより、光の導波構造を形成することが可能である。また、コア部11及びクラッド部12の両方にドーパントを添加してもよい。なお、代表的なドーパントとしては酸化ゲルマニウム(GeO2)やフッ素(F)が挙げられるが、これら以外の化学物質をドーパントとすることも可能である。本発明はこのような光ファイバ母材10の製造方法に係るものである。以下にその実施形態を詳述する。
【0031】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係るマルチコア光ファイバ母材10の製造方法について、
図2〜
図6を参照して説明する。
図2〜
図6は第1の実施の形態に係る光ファイバ母材10の製造工程の一例を説明する概略図である。
【0032】
本実施の形態に係る光ファイバの製造方法は、MCVD(Modified Chemical Vapor Deposition)法をベースとした光ファイバ母材10の製造方法である。まず最初に、光ファイバ母材10とほぼ同じ大きさ(外径、長さ)である第1の石英管21を1本用意し、光ファイバ母材10とほぼ同じ大きさ(長さ)であり、光ファイバ母材10のコア部をなす第2の石英管22を7本用意する。
【0033】
石英管配置工程では、第2の石英管22は、第1の石英管21の直径よりも小さい直径を有する。
図2に示すように、第1の石英管21及び7本の第2の石英管22が、その長手方向が軸心C2と水平となるように配置される。具体的には、第2の石英管22は、
図1で示した光ファイバ母材10の各コア部11の形成位置に対応するよう、1本の第2の石英管22が軸心C2の位置に配置され、第1の石英管21の軸心C2を囲むように他の6本の第2の石英管22が配置されるとともに、第1の石英管21の内部に第2の石英管22を中心とした正六角形の各頂点をなす箇所に配置される。複数の第2の石英管22が軸心C2を囲むようにして対称に配置されるものに限らず、非対称に配置されたものでもよい。
【0034】
また、石英管配置工程では、1本の第2の石英管22が軸心C2の位置に配置されるものに限らず、第2の石英管22は軸心C2の周囲に配置されればよい。第2の石英管22の数量は光ファイバ母材10のコア部11と同等の数量であり、7本に限らず、2本以上であればよい。
【0035】
例えば、光ファイバ母材10を線引きして最終的に得られるマルチコア光ファイバの屈折率分布がステップ型の場合、複数の第2の石英管22を、マルチコア光ファイバのコア間距離が45μm以上となるように配置することにより、該マルチコア光ファイバを100km伝送後の該コア間におけるクロストークを−30dB以下とすることが可能となる。
【0036】
さらに、光ファイバ母材10を線引きして最終的に得られるマルチコア光ファイバのコア部11の屈折率分布がトレンチ型である場合、複数の第2の石英管22を、マルチコア光ファイバのコア間距離が38μm以上となるように配置することにより、該マルチコア光ファイバを100km伝送後の該コア間におけるクロストークを−30dB以下とすることが可能となる。
【0037】
また、複数の第2の石英管22の直径は同一のものに限らず、光ファイバ母材10を線引きして最終的に得られるマルチコア光ファイバの各コア径に合うように、異なる直径の第2の石英管22を用いてもよい。さらに、複数の第2の石英管22は、光ファイバ母材10のクラッド部12の屈折率よりも低い屈折率を有する原料により形成されてもよい。
【0038】
例えば、複数の第2の石英管22は、純石英にフッ素を添加することによって、純石英よりも屈折率を低減した石英管を用いることにより、光ファイバ母材10を線引きして最終的に得られるマルチコア光ファイバの曲げ損失を低減することが可能となる。
【0039】
さらに、石英管配置工程では、第1の石英管21の端部と第2の石英管22の端部とが略同一平面上に配置される。また、各第1の石英管21及び第2の石英管22は、軸心C2を中心として第1の石英管21及び第2の石英管22の相対的位置を維持しながら軸心C2の周りにクラッド部堆積工程又はコア部堆積工程で同期回転できるよう所定の支持具(図示省略)により支持される。
【0040】
次に、
図3に示すように、加熱器具配置工程では、第1の石英管21及び前記第2の石英管22をそれぞれ加熱するための器具として、第1の石英管21の外部及び第2の石英管22の内部に、それぞれ第1の酸水素バーナー23及び電熱線24が配置される。ここで、第1の石英管21及び前記第2の石英管22をそれぞれ加熱するための器具は、酸水素バーナー及び電熱線でなくてもよい。
【0041】
このとき、第1の酸水素バーナー23により第1の石英管21に対して火炎研磨処理を行ってもよい。ここで、第1の酸水素バーナー23を矢印L2の方向に移動させてもよい。また、予め火炎研磨処理を施した石英管を第1の石英管21及び第2の石英管22として用いてもよい。
【0042】
続いて、
図4に示すように、クラッド部堆積工程では、第1の石英管21の軸方向端部側近傍に第2の酸水素バーナー(クラッド部原料供給手段)25が配置される。続いて、第1の石英管21及び7本の第2の石英管22、並びに電熱線24を第1の石英管21の軸心C2を中心として軸心C2周りに同期回転させる一方、第2の酸水素バーナー25により、第1の石英管21の内部、および7本の第2の石英管22の外部に光ファイバ母材10のクラッド部26となる第1のガラス微粒子25aを堆積させる。
【0043】
上述したように第1の酸水素バーナー23及び電熱線24により第1の石英管21及び第2の石英管22が加熱されているため、熱酸化により光ファイバ母材10のクラッド部26のガラス層が形成される。ここで、第1の酸水素バーナー23により第1の石英管21が加熱されるとともに、電熱線24により第2の石英管22が加熱されることによって、第1のガラス微粒子25aを第1の石英管21内面及び第2の石英管22外面へ均一に、かつ、高速に堆積することが可能となる。
【0044】
また、加熱器具配置工程では、第2の石英管22の内部に光ファイバ母材10のクラッド部26となる第1のガラス微粒子25aが堆積することを防ぐため、第2の酸水素バーナー25が配置される第2の石英管22の端部を、電熱線24を挿入した際に封止しておくことも可能である。
【0045】
そして、取り外し工程では、第1の石英管21内に第1のガラス微粒子25aが所定量堆積すると、
図5に示すように、第2の石英管22内部に配置した電熱線24を取り外す。このとき、第1の石英管21外部に配置した第1の酸水素バーナー23はそのまま配置しておく。
【0046】
次に、
図6に示すように、第2の酸水素バーナー25に代わって第3の酸水素バーナー(コア部原料供給手段)27が配置される。続いて、コア部堆積工程では、第1の石英管21及び7本の第2の石英管22を第1の石英管21の軸心C2を中心として軸心C2周りに同期回転させる一方、第3の酸水素バーナー27により、第1の石英管21の内部のクラッド部26の内側22a(すなわち第2の石英管22の内側)に第2のガラス微粒子27aを堆積させる。上述したように酸水素バーナー23により第1の石英管21が加熱されているため、熱酸化により光ファイバ母材10のコア部28のガラス層が形成される。
【0047】
なお、第3の酸水素バーナー27の原料ガス及び流量を調整することにより任意の屈折率分布(例えば、ステップ型、階段型、トレンチ型など)を有するコア部28を作製することが可能である。そして、第1の石英管21の内部のクラッド部26の内側22a(すなわち第2の石英管22の内側)に第2のガラス微粒子27aを所定量堆積させることにより、クラッド部26及びコア部28が形成された複数個のコア部28を包含する光ファイバを製造するための光ファイバ母材10(例えば、
図1参照)が得られる。この光ファイバ母材10を線引きすることにより、断面内に複数個のコア部28を包含する光ファイバを得ることができる。
【0048】
このように本実施の形態に係るマルチコア光ファイバ母材の製造方法によれば、光ファイバ母材10の外形となる第1の石英管21内に該第1石英管21の直径よりも小さい直径の複数の第2の石英管22を光ファイバ母材10の各コア部28に対応するように石英管配置工程で配置し、前記第1の石英管21外部及び前記第2の石英管22内部に、それぞれ前記第1の石英管21及び前記第2の石英管22を加熱するための器具を加熱器具配置工程で配置し、前記第1の石英管21外部及び前記第2の石英管22内部から前記第1の石英管21内面及び前記第2の石英管22外面を加熱しながら前記第1の石英管21内面及び前記第2の石英管22の外面に前記光ファイバ母材10のクラッド部26となる第1のガラス微粒子25aをクラッド部堆積工程で堆積し、前記第2の石英管22内部に配置した前記第2の石英管22を加熱するための器具を取り外し工程で取り外した後、光ファイバ母材10のコア部28となる第2のガラス微粒子27aをコア部堆積工程で堆積することとしたため、複数個のコア母材を束ねてクラッド部26となる石英管に挿入して光ファイバ母材10を製造する方法におけるコア部28が光ファイバの軸心に直交する断面方向に積層される場合の積層による加工精度の劣化、低損失化の困難性を低減できるといった効果を奏する。また、コア部28を形成する第2の石英管22の直径を任意に設定することができるため、異なるコア径を有するマルチコア光ファイバ用の母材を容易に作製することが可能となるといった効果を奏する。
【0049】
また、孔開け作業が不要であるため、複数のコア部28を包含する光ファイバを低損失かつ長尺に製造するための光ファイバ母材10を母材サイズの制限を受けることなく製造することが可能になり、複数のコア部28を包含する光ファイバの大量生産が可能となるといった効果を奏する。
【0050】
なお、上記実施の形態ではクラッド部堆積工程において、各第1の石英管21及び第2の石英管22、並びに電熱線24を同期回転しながらガラス微粒子を堆積させていたが、所望のガラス微粒子の堆積状態が得られる範囲内で各バーナーの個数・配置や回転形態等は不問である。例えば、上記実施の形態では各第1の石英管21及び第2の石英管22、並びに電熱線24を同期回転させていたが、第1の酸水素バーナー23及び第2の酸水素バーナー25並びに第3の酸水素バーナー27を軸心C2を中心として回転させるようにしてもよい。
【0051】
さらに、上記実施の形態では第1の酸水素バーナー23及び第2の酸水素バーナー25並びに第3の酸水素バーナー27をそれぞれ1つだけ用いているが複数の第1の酸水素バーナー23及び第2の酸水素バーナー25並びに第3の酸水素バーナー27を設けてもよい。特に多数の第1の酸水素バーナー23及び第2の酸水素バーナー25並びに第3の酸水素バーナー27を軸心C2を中心として周囲に配置すれば各石英管、各バーナー並びに電熱線を非回転とすることもできる。
【0052】
また、第2の石英管22に電熱線24を配置する際に第2の石英管22の内部に第1のガラス微粒子25aが堆積しないように、第2の石英管22の内部を蓋などにより密閉することも可能である。この場合、電熱線24を取り外す工程において密閉用の蓋も取り外すことにより、後工程において第2の石英管22の内面に第2のガラス微粒子27aを堆積することが可能である。
【0053】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係るマルチコア光ファイバ母材10の製造方法について、
図7〜
図11を参照して説明する。
図7〜
図11は第2の実施の形態に係る光ファイバ母材10の製造工程の一例を説明する概略図である。本実施の形態に係る光ファイバの製造方法は、MCVD(Modified Chemical Vapor Deposition)法をベースとした光ファイバ母材10の製造方法である。
【0054】
まず、
図1で示した光ファイバ母材10の1つのコア部11が形成された柱体状の母材又は1つのコア部11及び該コア部周囲のクラッド部12の一部が形成された柱体状の母材を7本用意する。コア部作製工程では、光ファイバ母材10を線引きして最終的に得られるマルチコア光ファイバのコアの所望の屈折率分布に対応して、例えば、VAD(Vapor phase Axial Deposition)法、OVD(Outside Vapor Deposition)法、MCVD(Modified Chemical Vapor Deposition)法、PCVD(Plasma Chemical Vapor Deposition)法などを用いて、任意の屈折率分布(例えば、ステップ型、階段型、トレンチ型など)を有するコア母材を作製することが可能である。
【0055】
また、コア部11、またはコア部11及びクラッド部12が形成された柱体状の母材には、主に、VAD法、OVD法、MCVD法、並びにPCVD法により作製される多孔質母材、並びに多孔質母材を脱水・透明化処理後に得られるガラス母材が挙げられるが、これら以外の母材を用いることも可能である。
【0056】
次に、光ファイバ母材10とほぼ同じ大きさ(外径、長さ)である第1の石英管31を1本用意し、光ファイバ母材10とほぼ同じ大きさ(長さ)であり、光ファイバ母材10のコア部11を形成するための第2の石英管32を7本用意する。第2の石英管32は、第1の石英管31の直径よりも小さい直径を有する。
図7に示すように、石英管配置工程では、第1の石英管31及び7本の第2の石英管32が、その長手方向が軸心C3と水平となるように配置される。
【0057】
具体的には、石英管配置工程では、第2の石英管32は、
図1で示した光ファイバ母材10の各コア部11の形成位置に対応するよう、1本の第2の石英管32が軸心C3の位置に配置され、第1の石英管31の軸心C3を囲むように他の6本の第2の石英管32が配置されるとともに、第1の石英管31の内部に第2の石英管32を中心とした正六角形の各頂点をなす箇所に配置される。
【0058】
複数の第2の石英管32が軸心C3を囲むようにして対称に配置されるものに限らず、非対称に配置されたものでもよい。また、1本の第2の石英管32が軸心C3の位置に配置されるものに限らず、第2の石英管32は軸心C3の周囲に配置されればよい。第2の石英管32の数量は光ファイバ母材10のコア部11と同等の数量であり、7本に限らず、2本以上であればよい。
【0059】
例えば、光ファイバ母材10を線引きして最終的に得られるマルチコア光ファイバの屈折率分布がステップ型の場合、複数の第2の石英管32を、マルチコア光ファイバのコア間距離が45μm以上となるように配置することにより、該マルチコア光ファイバを100km伝送後の該コア間におけるクロストークを−30dB以下とすることが可能となる。
【0060】
さらに、光ファイバ母材10を線引きして最終的に得られるマルチコア光ファイバのコアの屈折率分布がトレンチ型である場合、複数の第2の石英管32を、マルチコア光ファイバのコア間距離が38μm以上となるように配置することにより、該マルチコア光ファイバを100km伝送後の該コア間におけるクロストークを−30dB以下とすることが可能となる。
【0061】
また、複数の第2の石英管32の直径は同一のものに限らず、光ファイバ母材10を線引きして最終的に得られるマルチコア光ファイバの各コア径に合うように、異なる直径の第2の石英管32を用いてもよい。さらに、コア部が形成された柱体状の母材を挿入する複数の第2の石英管32は、光ファイバ母材10のクラッド部12の屈折率よりも低い屈折率を有する原料により形成されてもよい。
【0062】
例えば、複数の第2の石英管32は、純石英にフッ素を添加することによって、純石英よりも屈折率を低減した石英管を用いることにより、光ファイバ母材10を線引きして最終的に得られるマルチコア光ファイバの曲げ損失を低減することが可能となる。
【0063】
さらに、石英管配置工程では、第1の石英管31の端部と第2の石英管32の端部とが略同一平面上に配置される。また、各第1の石英管31及び第2の石英管32は、軸心C3を中心として第1の石英管31及び第2の石英管32の相対的位置を維持しながら軸心C3の周りにクラッド部堆積工程で同期回転できるよう所定の支持具(図示省略)により支持される
【0064】
次に、
図8に示すように、加熱器具配置工程では、第1の石英管31及び第2の石英管32をそれぞれ加熱するための器具として、第1の石英管31の外部及び第2の石英管32の内部に、それぞれ第1の酸水素バーナー33及び電熱線34が配置される。
【0065】
ここで、第1の石英管31及び第2の石英管32を加熱するための器具は、酸水素バーナー及び電熱線でなくてもよい。このとき、第1の酸水素バーナー33により第1の石英管31に対して火炎研磨処理を行ってもよい。ここで、第1の酸水素バーナー33を矢印L3の方向に移動させてもよい。また、予め火炎研磨処理を施した石英管を第1の石英管31及び第2の石英管32として用いてもよい。
【0066】
続いて、
図9に示すように、クラッド部堆積工程では、第1の石英管31の軸方向端部側近傍に第2の酸水素バーナー(クラッド部原料供給手段)35が配置される。続いて、第1の石英管31及び7本の第2の石英管32を第1の石英管31の軸心C3を中心として軸心C3周りに同期回転させる一方、第2の酸水素バーナー35により、第1の石英管31の内部、および7本の第2の石英管32の外部に光ファイバ母材10のクラッド部36となる第1のガラス微粒子35aを堆積させる。
【0067】
上述したように第1の酸水素バーナー33及び電熱線34により第1の石英管31及び第2の石英管32が加熱されているため、熱酸化により光ファイバ母材10のクラッド部36のガラス層が形成される。ここで、第1の酸水素バーナー33により第1の石英管31が加熱されるとともに、電熱線34により第2の石英管32が加熱されることによって、第1のガラス微粒子35aを第1の石英管31内面及び第2の石英管32外面へ均一に、かつ、高速に堆積することが可能となる。
【0068】
また、第2の石英管32の内部に光ファイバ母材10のクラッド部36となる第1のガラス微粒子35aが堆積することを防ぐため、第2の酸水素バーナー35が配置される第2の石英管32の端部を電熱線34を挿入する際に封止しておくことも可能である。
【0069】
そして、取り外し工程では、第1の石英管31内に第1のガラス微粒子35aが所定量堆積すると、
図10に示すように、第1の石英管31の外部及び第2の石英管32の内部に、それぞれ配置した第1の酸水素バーナー33及び電熱線34を取り外す。
【0070】
次に、
図11に示すように、コア部作製工程で予め作製した光ファイバ母材10の1つのコア部37が形成された柱体状の母材又は1つのコア部37及び該コア部37周囲のクラッド部36の一部が形成された7本の柱体状の母材を、第1の石英管31の内部のクラッド部36の内側32a(すなわち第2の石英管32の内側)にそれぞれ挿入することにより、クラッド部36及びコア部37が形成された複数個のコア部37を包含する光ファイバを製造するための光ファイバ母材10(例えば、
図1参照)が得られる。
【0071】
ここで、クラッド部36またはコア部37となるガラス微粒子を堆積するための酸水素バーナーを配置し、クラッド部36とコア部37との間の隙間にクラッド部36またはコア部37となるガラス微粒子を堆積することにより、光ファイバ母材10を線引きする際のコア位置ずれを防止することも可能である。
【0072】
また、コア部37が多孔質母材またはガラス微粒子で形成されている場合には、脱水・透明化処理を行うことにより複数個のコア部37を包含する光ファイバを製造するための光ファイバ母材10を得ることができる。この光ファイバ母材10を線引きすることにより、断面内に複数個のコア部37を包含する光ファイバを得ることができる。
【0073】
このように本実施の形態に係るマルチコア光ファイバ母材の製造方法によれば、第1の実施の形態に係るマルチコア光ファイバ母材の製造方法と同様、複数個のコア部37を包含する光ファイバを低損失、かつ長尺に製造可能な光ファイバ母材10を容易に得ることができる。
【0074】
なお、上記実施の形態では、クラッド部堆積工程において各第1の石英管31及び第2の石英管32、並びに電熱線34を同期回転しながらガラス微粒子を堆積させていたが、所望のガラス微粒子の堆積状態が得られる範囲内で各バーナーの個数・配置や回転形態等は不問である。例えば、上記実施の形態では各第1の石英管31及び第2の石英管32、並びに電熱線34を同期回転させていたが、第1の酸水素バーナー33及び第2の酸水素バーナー35を軸心C3を中心として回転させるようにしてもよい。
【0075】
さらに、上記実施の形態では第1の酸水素バーナー33及び第2の酸水素バーナー35をそれぞれ1つだけ用いているが複数の第1の酸水素バーナー33及び第2の酸水素バーナー35を設けてもよい。特に多数の第1の酸水素バーナー33及び第2の酸水素バーナー35を軸心C3を中心として周囲に配置すれば各石英管、各バーナー、並びに電熱線を非回転とすることもできる。
【0076】
また、第2の石英管32に電熱線34を配置する際に第2の石英管32の内部にガラス微粒子35aが堆積しないように、第2の石英管32の内部を蓋などにより密閉することも可能である。この場合、加熱器具を取り外す取り外し工程において、密閉用の蓋も取り外すことにより、後工程において第2の石英管32の内部にコア部37が形成された柱体状の母材を挿入することが可能である。
【0077】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係るマルチコア光ファイバ母材の製造方法について、
図12〜
図16を参照して説明する。
図12〜
図16は第3の実施の形態に係る光ファイバ母材の製造工程の一例を説明する概略図である。
【0078】
本実施の形態に係る光ファイバの製造方法は、PCVD(Plasma Chemical Vapor Deposition)法をベースとした光ファイバ母材10の製造方法である。まず、上記第1の実施形態と同様に、光ファイバ母材10とほぼ同じ大きさ(外径、長さ)である第1の石英管41を1本用意し、光ファイバ母材10とほぼ同じ大きさ(長さ)であり、光ファイバ母材10のコア部11をなす第2の石英管42を7本用意する。
【0079】
石英管配置工程では、第2の石英管42は、第1の石英管41の直径よりも小さい直径を有する。
図12に示すように、第1の石英管41及び7本の第2の石英管42が、その長手方向が軸心C4と水平となるように配置される。具体的には、石英管配置工程では、第2の石英管42は、
図1で示した光ファイバ母材10の各コア部11の形成位置に対応するよう、1本の第2の石英管42が軸心C4の位置に配置され、第1の石英管41の軸心C4を囲むように他の6本の第2の石英管42が配置されるとともに、第1の石英管41の内部に第2の石英管42を中心とした正六角形の各頂点をなす箇所に配置される。
【0080】
複数の第2の石英管42が軸心C4を囲むようにして対称に配置されるものに限らず、非対称に配置されたものでもよい。また、1本の第2の石英管42が軸心C4の位置に配置されるものに限らず、第2の石英管42は軸心C4の周囲に配置されればよい。第2の石英管42の数量は光ファイバ母材10のコア部11と同等の数量であり、7本に限らず、2本以上であればよい。
【0081】
例えば、光ファイバ母材10を線引きして最終的に得られるマルチコア光ファイバの屈折率分布がステップ型の場合、複数の第2の石英管42を、マルチコア光ファイバのコア間距離が45μm以上となるように配置することにより、該マルチコア光ファイバを100km伝送後の該コア間におけるクロストークを−30dB以下とすることが可能となる。
【0082】
さらに、光ファイバ母材10を線引きして最終的に得られるマルチコア光ファイバのコアの屈折率分布がトレンチ型である場合、複数の第2の石英管42を、マルチコア光ファイバのコア間距離が38μm以上となるように配置することにより、該マルチコア光ファイバを100km伝送後の該コア間におけるクロストークを−30dB以下とすることが可能となる。
【0083】
また、複数の第2の石英管42の直径は同一のものに限らず、光ファイバ母材10を線引きして最終的に得られるマルチコア光ファイバの各コア径に合うように、異なる直径の第2の石英管42を用いてもよい。さらに、複数の第2の石英管42は、光ファイバ母材10のクラッド部12の屈折率よりも低い屈折率を有する原料により形成されてもよい。
【0084】
例えば、複数の第2の石英管42は、純石英にフッ素を添加することによって、純石英よりも屈折率を低減した石英管を用いることにより、光ファイバ母材10を線引きして最終的に得られるマルチコア光ファイバの曲げ損失を低減することが可能となる。
【0085】
さらに、石英管配置工程では、第1の石英管41の端部と第2の石英管42の端部とが略同一平面上に配置される。また、各第1の石英管41及び第2の石英管42は、軸心C4を中心として第1の石英管41及び第2の石英管42の相対的位置を維持しながら軸心C4の周りにクラッド部堆積工程又はコア部堆積工程で同期回転できるよう所定の支持具(図示省略)により支持される。
【0086】
次に、
図13に示すように、加熱器具配置工程では、第1の石英管41及び第2の石英管42をそれぞれ加熱するための器具として、第1の石英管41の外部及び第2の石英管42の内部に、それぞれマイクロ波プラズマを発生させる第1のキャビティ43a及び第2のキャビティ43bが配置される。
【0087】
ここで、第1のキャビティ43a及び第2のキャビティ43b並びにマイクロ波プラズマの発生源43cとでマイクロ波プラズマの発生器43を構成している。このとき、マイクロ波プラズマにより第1の石英管41及び第2の石英管42に対してプラズマ火炎による研磨処理を行ってもよい。ここで、第1の石英管41の外部に配置された第1のキャビティ43aを矢印L4の方向に移動させてもよい。また、予め火炎研磨処理を施した石英管を第1の石英管41及び第2の石英管42として用いてもよい。
【0088】
続いて、
図14に示すように、クラッド部堆積工程では、第1の石英管41の軸方向端部側近傍に第1の酸水素バーナー(クラッド部原料供給手段)44が配置される。続いて、第1の石英管41及び7本の第2の石英管42、並びに第1のキャビティ43a及び第2のキャビティ43bを第1の石英管41の軸心C4を中心として軸心C4周りに同期回転させる一方、第1の酸水素バーナー44により、第1の石英管41の内部、および7本の第2の石英管42の外部に光ファイバ母材10のクラッド部となる第1のガラス微粒子44aを堆積させる。
【0089】
上述したように第1のキャビティ43a及び第2のキャビティ43bにより第1の石英管41及び第2の石英管42が加熱されているため、熱酸化により光ファイバ母材10のクラッド部45のガラス層が形成される。ここで、第1のキャビティ43aだけでなく、第2のキャビティ43bを用いて、第1の石英管41及び第2の石英管42を加熱することによって、第1のガラス微粒子44aを第1の石英管41内面及び第2の石英管42外面へ均一に、かつ、高速に堆積することが可能となる。
【0090】
また、加熱器具配置工程では、第2の石英管42の内部に光ファイバ母材10のクラッド部46となる第1のガラス微粒子44aが堆積することを防ぐため、第2のキャビティ43bが配置される第2の石英管42の端部を、第2のキャビティ43bを挿入した際に封止しておくことも可能である。
【0091】
そして、取り外し工程では、第1の石英管41内に第1のガラス微粒子44aが所定量堆積すると、
図15に示すように、第2の石英管42内部に配置した第2のキャビティ43bを取り外す。このとき、第1の石英管41外部に配置した第1のキャビティ43aはそのまま配置しておく
【0092】
次に、
図16に示すように、第1の酸水素バーナー44に代わって第2の酸水素バーナー(コア部原料供給手段)46が配置される。続いて、コア部堆積工程では、第1の石英管41及び7本の第2の石英管42、並びに第1のキャビティ43aを第1の石英管41の軸心C4を中心として軸心C4周りに同期回転させる一方、第2の酸水素バーナー46により、第1の石英管41の内部のクラッド部45の内側42a(すなわち第2の石英管42の内側)に第2のガラス微粒子46aを堆積させる。上述したように第1のキャビティ43aにより第1の石英管41が加熱されているため、熱酸化により光ファイバ母材10のコア部47のガラス層が形成される。
【0093】
なお、第2の酸水素バーナー46の原料ガス及び流量を調整することにより任意の屈折率分布(例えば、ステップ型、階段型、トレンチ型など)を有するコア部47を作製することが可能である。そして、第1の石英管41の内部のクラッド部45の内側42a(すなわち第2の石英管42の内側)に第2のガラス微粒子46aを所定量堆積させることにより、クラッド部45及びコア部47が形成された複数個のコア部47を包含する光ファイバを製造するための光ファイバ母材10(例えば、
図1参照)が得られる。この光ファイバ母材10を線引きすることにより、断面内に複数個のコア部47を包含する光ファイバを得ることができる。
【0094】
このように本実施の形態に係るマルチコア光ファイバ母材の製造方法によれば、第1〜第2の実施の形態に係るマルチコア光ファイバ母材の製造方法と同様、複数個のコア部47を包含する光ファイバを低損失、かつ長尺に製造可能な光ファイバ母材10を容易に得ることができる。
【0095】
なお、上記実施の形態ではクラッド部堆積工程において、各第1の石英管41及び第2の石英管42、並びに各第1のキャビティ43a及び第2のキャビティ43bを同期回転しながらガラス微粒子を堆積させていたが、所望のガラス微粒子の堆積状態が得られる範囲内で各バーナーの個数・配置や回転形態等は不問である。
【0096】
例えば、上記実施の形態では各第1の石英管41及び第2の石英管42、並びに各第1のキャビティ43a及び第2のキャビティ43bを同期回転させていたが、第1の酸水素バーナー44及び第2の酸水素バーナー46をそれぞれ軸心C4を中心として回転させるようにしてもよい。
【0097】
さらに、上記実施の形態では第1の酸水素バーナー44及び第2の酸水素バーナー46をそれぞれ1つだけ用いているが複数の第1の酸水素バーナー44及び第2の酸水素バーナー46を設けてもよい。特に多数の第1の酸水素バーナー44及び第2の酸水素バーナー46を軸心C4を中心として周囲に配置すれば各石英管や各キャビティを非回転とすることもできる。
【0098】
また、第2の石英管42に第2のキャビティ43bを配置する際に第2の石英管42の内部に第1のガラス微粒子44aが堆積しないように、第2の石英管42の内部を蓋などにより密閉することも可能である。この場合、第2のキャビティ43bを取り外す工程において密閉用の蓋も取り外すことにより、後工程において第2の石英管42の内面に第2のガラス微粒子46aを堆積することが可能である。
【0099】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態に係るマルチコア光ファイバ母材の製造方法について、
図17〜
図21を参照して説明する。
図17〜
図21は第4の実施の形態に係る光ファイバ母材10の製造工程の一例を説明する概略図である。
【0100】
本実施の形態に係る光ファイバの製造方法は、PCVD(Plasma Chemical Vapor Deposition)法をベースとした光ファイバ母材10の製造方法である。まず、
図1で示した光ファイバ母材10の1つのコア部11が形成された柱体状の母材又は1つのコア部11及び該コア部11周囲のクラッド部12の一部が形成された柱体状の母材を7本用意する。
【0101】
コア部作製工程では、光ファイバ母材10を線引きして最終的に得られるマルチコア光ファイバのコアの所望の屈折率分布に対応して、例えば、VAD(Vapor phase Axial Deposition)法、OVD(Outside Vapor Deposition)法、MCVD(Modified Chemical Vapor Deposition)法、PCVD(Plasma Chemical Vapor Deposition)法などを用いて、任意の屈折率分布(例えば、ステップ型、階段型、トレンチ型など)を有するコア母材を作製することが可能である。
【0102】
また、コア部11、またはコア部11及びクラッド部12が形成された柱体状の母材には、主に、VAD法、OVD法、MCVD法、並びにPCVD法により作製される多孔質母材、並びに多孔質母材を脱水・透明化処理後に得られるガラス母材が挙げられるが、これら以外の母材を用いることも可能である。
【0103】
次に、光ファイバ母材10とほぼ同じ大きさ(外径、長さ)である第1の石英管51を1本用意し、光ファイバ母材10とほぼ同じ大きさ(長さ)であり、光ファイバ母材10のコア部11を形成するための第2の石英管52を7本用意する。第2の石英管52は、第1の石英管51の直径よりも小さい直径を有する。
図17に示すように、石英管配置工程では、第1の石英管51及び7本の第2の石英管52が、その長手方向が軸心C5と水平となるように配置される。
【0104】
具体的には、石英管配置工程では、第2の石英管52は、
図1で示した光ファイバ母材10の各コア部11の形成位置に対応するよう、1本の第2の石英管52が軸心C5の位置に配置され、第1の石英管51の軸心C5を囲むように他の6本の第2の石英管52が配置されるとともに、第1の石英管51の内部に第2の石英管52を中心とした正六角形の各頂点をなす箇所に配置される。
【0105】
複数の第2の石英管52が軸心C5を囲むようにして対称に配置されるものに限らず、非対称に配置されたものでもよい。また、1本の第2の石英管52が軸心C5の位置に配置されるものに限らず、第2の石英管52は軸心C5の周囲に配置されればよい。第2の石英管52の数量は光ファイバ母材10のコア部11と同等の数量であり、7本に限らず、2本以上であればよい。
【0106】
例えば、光ファイバ母材10を線引きして最終的に得られるマルチコア光ファイバの屈折率分布がステップ型の場合、複数の第2の石英管52を、マルチコア光ファイバのコア間距離が45μm以上となるように配置することにより、該マルチコア光ファイバを100km伝送後の該コア間におけるクロストークを−30dB以下とすることが可能となる。
【0107】
さらに、光ファイバ母材10を線引きして最終的に得られるマルチコア光ファイバのコアの屈折率分布がトレンチ型である場合、複数の第2の石英管52を、マルチコア光ファイバのコア間距離が38μm以上となるように配置することにより、該マルチコア光ファイバを100km伝送後の該コア間におけるクロストークを−30dB以下とすることが可能となる。
【0108】
また、複数の第2の石英管52の直径は同一のものに限らず、光ファイバ母材10を線引きして最終的に得られるマルチコア光ファイバの各コア径に合うように、異なる直径の第2の石英管52を用いてもよい。さらに、コア部が形成された柱体状の母材を挿入する複数の第2の石英管52は、光ファイバ母材10のクラッド部12の屈折率よりも低い屈折率を有する原料により形成されてもよい。
【0109】
例えば、複数の第2の石英管52は、純石英にフッ素を添加することによって、純石英よりも屈折率を低減した石英管を用いることにより、光ファイバ母材10を線引きして最終的に得られるマルチコア光ファイバの曲げ損失を低減することが可能となる。
【0110】
さらに、石英管配置工程では、第1の石英管51の端部と第2の石英管52の端部とが略同一平面上に配置される。また、各第1の石英管51及び第2の石英管52は、軸心C5を中心として第1の石英管51及び第2の石英管52の相対的位置を維持しながら軸心C5の周りにクラッド部堆積工程で同期回転できるよう所定の支持具(図示省略)により支持される。
【0111】
次に、
図18に示すように、加熱器具配置工程では、第1の石英管51及び第2の石英管52をそれぞれ加熱するための器具として、第1の石英管51の外部及び第2の石英管52の内部に、それぞれマイクロ波プラズマを発生させる第1のキャビティ53a及び第2のキャビティ53bが配置される。ここで、第1のキャビティ53a及び第2のキャビティ53b並びにマイクロ波プラズマの発生源53cとでマイクロ波プラズマの発生器53を構成している。
【0112】
このとき、マイクロ波プラズマにより第1の石英管51及び第2の石英管52に対してプラズマ火炎による研磨処理を行ってもよい。ここで、第1の石英管51の外部に配置された第1のキャビティ53aを矢印L5の方向に移動させてもよい。また、予め火炎研磨処理を施した石英管を第1の石英管51及び第2の石英管52として用いてもよい。
【0113】
続いて、
図19に示すように、クラッド部堆積工程では、第1の石英管51の軸方向端部側近傍に酸水素バーナー(クラッド部原料供給手段)54が配置される。続いて、第1の石英管51及び7本の第2の石英管52、並びに第1のキャビティ53a及び第2のキャビティ53bを第1の石英管51の軸心C5を中心として軸心C5周りに同期回転させる一方、酸水素バーナー54により、第1の石英管51の内部、および7本の第2の石英管52の外部に光ファイバ母材10のクラッド部55となるガラス微粒子54aを堆積させる。上述したように第1のキャビティ53a及び第2のキャビティ53bにより第1の石英管51及び第2の石英管52が加熱されているため、熱酸化により光ファイバ母材10のクラッド部55のガラス層が形成される。
【0114】
ここで、第1のキャビティ53aだけでなく、第2のキャビティ53bを用いて、第1の石英管51及び第2の石英管52を加熱することによって、ガラス微粒子54aを第1の石英管内面及び第2の石英管外面へ均一に、かつ、高速に堆積することが可能となる。また、第2の石英管52の内部に光ファイバ母材10のクラッド部55となるガラス微粒子54aが堆積することを防ぐため、第2のキャビティ53bが配置される第2の石英管52の端部を、第2のキャビティ53bを挿入した際に封止しておくことも可能である。
【0115】
そして、取り外し工程では、第1の石英管51内にガラス微粒子54aが所定量堆積すると、
図20に示すように、第1の石英管51の外部及び第2の石英管52の内部に、それぞれ配置した第1のキャビティ53a及び第2のキャビティ53bを取り外す。
【0116】
次に、
図21に示すように、コア部作製工程で予め作製した光ファイバ母材10の1つのコア部56が形成された柱体状の母材又は1つのコア部56及び該コア部周囲のクラッド部55の一部が形成された7本の柱体状の母材を、第1の石英管51の内部のクラッド部55の内側52a(すなわち第2の石英管52の内側)にそれぞれ挿入することにより、クラッド部55及びコア部56が形成された複数個のコア部を包含する光ファイバを製造するための光ファイバ母材10(例えば、
図1参照)が得られる。
【0117】
ここで、クラッド部55またはコア部56となるガラス微粒子を堆積するための酸水素バーナーを配置し、クラッド部55とコア部56との間の隙間にクラッド部55またはコア部56となるガラス微粒子を堆積することにより、光ファイバ母材10を線引きする際のコア位置ずれを防止することも可能である。
【0118】
また、コア部56が多孔質母材またはガラス微粒子で形成されている場合には、脱水・透明化処理を行うことにより複数個のコア部56を包含する光ファイバを製造するための光ファイバ母材10を得ることができる。この光ファイバ母材10を線引きすることにより、断面内に複数個のコア部56を包含する光ファイバを得ることができる。
【0119】
このように本実施の形態に係るマルチコア光ファイバ母材の製造方法によれば、第1〜第3の実施の形態に係るマルチコア光ファイバ母材の製造方法と同様、複数個のコア部を包含する光ファイバを低損失、かつ長尺に製造可能な光ファイバ母材10を容易に得ることができる。
【0120】
なお、上記実施の形態ではクラッド部堆積工程において、各第1の石英管51及び第2の石英管52、並びに各第1のキャビティ53a及び第2のキャビティ53bを同期回転しながらガラス微粒子を堆積させていたが、所望のガラス微粒子の堆積状態が得られる範囲内で各バーナーの個数・配置や回転形態等は不問である。例えば、上記実施の形態では各第1の石英管51及び第2の石英管52、並びに各第1のキャビティ53a及び第2のキャビティ53bを同期回転させていたが、酸水素バーナー54を軸心C5を中心として回転させるようにしてもよい。
【0121】
さらに、上記実施の形態では酸水素バーナー54を1つだけ用いているが複数の酸水素バーナー54を設けてもよい。特に多数の酸水素バーナー54を軸心C5を中心として周囲に配置すれば各石英管や各キャビティを非回転とすることもできる。
【0122】
また、第2の石英管52に第2のキャビティ53bを配置する際に第2の石英管52の内部にガラス微粒子54aが堆積しないように、第2の石英管52の内部を蓋などにより密閉することも可能である。この場合、加熱器具を取り外す取り外し工程において、密閉用の蓋も取り外すことにより、後工程において第2の石英管52の内部にコア部56が形成された柱体状の母材を挿入することが可能である
【課題】光ファイバ断面に複数のコアを有するマルチコア光ファイバを低損失かつ長尺に製造可能な光ファイバ母材を容易に得ることができるマルチコア光ファイバ母材の製造方法を提供する。
【解決手段】第2の石英管の石英管の外側、かつ、第1の石英管21の内側に原料ガスを流入し、第1の石英管21及び第2の石英管を加熱器具で加熱することで第1の石英管21の内部に拡散した第1のガラス微粒子を堆積させ、光ファイバ母材のクラッド部26を形成するクラッド部堆積工程と、第2の石英管の内側に配置した加熱器具を取り外す取り外し工程と、予め加熱された第2の石英管の内側に原料ガスを流入し第2のガラス微粒子27aを堆積して光ファイバ母材のコア部を形成するコア部堆積工程と、を順に行う、マルチコア光ファイバ母材の製造方法。