特許第5835835号(P5835835)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5835835
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】複層活性層を有する複合膜
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/56 20060101AFI20151203BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20151203BHJP
   B01D 71/82 20060101ALI20151203BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20151203BHJP
   C08G 69/42 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   B01D71/56
   B01D69/12
   B01D71/82
   B01D69/10
   C08G69/42
【請求項の数】11
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2011-116591(P2011-116591)
(22)【出願日】2011年5月25日
(65)【公開番号】特開2012-20281(P2012-20281A)
(43)【公開日】2012年2月2日
【審査請求日】2014年2月10日
(31)【優先権主張番号】12/837148
(32)【優先日】2010年7月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108501
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 剛史
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ヨンヘ・ナ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・デービッド・アレン
(72)【発明者】
【氏名】ラトナム・スーリヤクマラン
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−024304(JP,A)
【文献】 特開平07−171361(JP,A)
【文献】 特開平08−010595(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/041115(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/070728(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00−71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層および活性層を含む複合膜であって、前記活性層は前記支持層上に形成される第1の架橋ポリアミド膜と、前記第1の架橋ポリアミド膜上に形成される、該第1の架橋ポリアミド膜と化学的に異なる第2の架橋ポリアミド膜とを含み、前記第1の架橋ポリアミド膜は、架橋芳香族ポリアミドを含み、前記第2の架橋ポリアミド膜は、フルオロアルコール基を有する架橋芳香族ポリアミドを含み、前記第1の架橋ポリアミド膜と前記第2の架橋ポリアミド膜と界面において互いに架橋結合する複合膜。
【請求項2】
前記活性層は1ミクロン未満の厚さである、請求項1に記載の複合膜。
【請求項3】
前記活性層は500nm未満の厚さである、請求項1に記載の複合膜。
【請求項4】
前記フルオロアルコール基はヘキサフルオロアルコール基である、請求項に記載の複合膜。
【請求項5】
支持膜を用意するステップと、
(i)以下の式1
R(NH2)z 式1
(式中、Rは脂肪族基、脂環式基、芳香族基、複素環基、及びこれらの組合せのうちから選択される有機基を表し、z は2又はそれ以上の整数を表す)によって表される単量体ポリアミン反応物の水溶液を含む化学混合物(A)を前記支持膜上に塗布するステップと、
(ii)有機溶媒、及び以下の式2
【化1】
(式中、Rは脂肪族基、脂環式基、芳香族基、複素環基、及びこれらの組合せを含む群から選択される有機基を表し、Xはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択され、p は2又はそれ以上の整数を表す)によって表される単量体多官能性ハロゲン化アシル反応物を含む化学混合物(B)を前記支持膜上に塗布するステップと、
(iii)塩基水溶液、及び以下の式1A
【化2】
(式中、Rは脂肪族基、脂環式基、芳香族基、複素環基、及びこれらの組合せを含む群から選択される有機基を表し、mは2又はそれ以上の整数であり、nは1又はそれ以上の整数である)によって表される、1つ又は複数のヘキサフルオロアルコール基を有する単量体ポリアミン反応物を含む化学混合物(C)を前記支持膜上に塗布するステップと
を含む、複合膜の作成方法。
【請求項6】
式1中のRは、ベンゼン環、ナフタレン環、シクロヘキサン環、アダマンタン環、ノルボルナン環及びこれらの組合せからなる群から選択され、zは2乃至8である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
式1A中のRは、ベンゼン、ナフタレン、シクロヘキサン、アダマンタン、ノルボルナン及びこれらの組合せからなる群から選択される有機基である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
式1A中のRは、以下の式3で表される有機基である、請求項7に記載の方法。
【化3】
式中、YはCH、O、S、C=O、SO、C(CH、C(CF及びこれらの組合せからなる群から選択され、rは0又は1の整数であり、各ベンゼン環は、1価NH2基及び1価C(CFOH基に化学結合する。
【請求項9】
式2の前記単量体多官能性ハロゲン化アシルは、以下の式10で表される2価有機化合物又は式11で表される3価有機化合物から選択される化合物を含む、請求項5に記載の方法。
【化4】
式中、R23、R24、R25、R26及びR27はそれぞれ独立に1価COXからなる群から選択され、ここでXはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択される。
【請求項10】
前記化学混合物(C)中の塩基は、NaOH、KOH、Ca(OH)、NaCO、KCO、CaCO、NaHCO、KHCO、トリエチルアミン、ピリジン、テトラメチル水酸化アンモニウム及びこれらの組合せからなる群から独立に選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記化学混合物(B)中の有機溶媒は、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、n−ドデカン、アイソパー、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン、キシレン、トルエン、ベンゼン及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、水の浄化、脱塩及び気体分離プロセスに用いることができる膜に関する。膜の活性層は、少なくとも2つの化学的に異なる架橋ポリアミド膜を含み、これらの薄膜が互いに架橋結合する界面を有する。
【背景技術】
【0002】
極薄活性層及び多孔質支持層を含む薄膜複合(TFC)膜は、脱塩のための逆浸透(RO)プロセス又はナノろ過(NF)プロセスに広く用いられている。TFC膜内の活性層は分離特性を制御し、一方支持層は機械的強度を向上させる。
【0003】
m−フェニレンジアミン(MPD)と塩化トリメソイル(TMC)の界面重合によって生成される架橋芳香族ポリアミドは成功した市販品である。架橋芳香族ポリアミドのTFC膜は非常に高い脱塩率(≧99%)及び適度な水流量(20〜55LMH)を示すが、この膜は、ヒ素及びホウ素などの有害毒素のろ過除去には十分に効率的ではなく、また塩素などの化学消毒剤の影響を受け易い。消毒剤による化学的攻撃はついには膜の破損を生じ、これは塩及び水の両方の増加した通過量で評価される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来の膜の欠陥を改善するための、複層活性層を有する複合ポリマー膜を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本発明は、支持層上の活性層を含む薄膜複合(TFC)膜構造に向けられる。膜の活性層は少なくとも2つの化学的に異なる架橋副層を含み、これらはその界面で架橋結合する。
【0006】
一実施形態において、膜の活性層は第1のポリアミド層及び第2のポリアミド層を含み、第2のポリアミド層は第1のアミド層とは構造的に異なる。幾つかの実施形態において第2のポリアミド層は、ポリアミド骨格及びその骨格からのフルオロアルコール基ペンダントを有するポリマーを含む。
【0007】
別の態様において、本発明は複合膜を作成する方法に向けられ、この方法は、
(i)以下の式1
R(NH2)z 式1
(式中、Rは脂肪族基、脂環式基、芳香族基、複素環基、及びそれらの組合せ、のうちから選択される有機基を表し、zは2又はそれ以上の整数を表す)によって表される単量体ポリアミン反応物の水溶液を含む化学混合物(A)を支持膜に塗布して処理済み支持膜を形成することと、
(ii)有機溶媒、及び以下の式2
【化1】
(式中、Rは脂肪族基、脂環式基、芳香族基、複素環基、及びそれらの組合せを含む群から選択される有機基を表し、Xはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択され、pは2又はそれ以上の整数を表す)によって表される単量体多官能性ハロゲン化アシル反応物を含む化学混合物(B)を処理済み支持膜に塗布して支持層上の第1の活性層を形成することと、
(iii)塩基水溶液、及び以下の式1A
【化2】
(式中、Rは脂肪族基、脂環式基、芳香族基、複素環基、及びそれらの組合せからなる群から選択される有機基を表し、mは2又はそれ以上の整数であり、nは1又はそれ以上の整数である)によって表される、1つ又は複数のヘキサフルオロアルコール基を有する単量体ポリアミン反応物を含む化学混合物(C)を第1の活性層に塗布することと
を含む。
【0008】
活性層の材料は、副層の特徴的な有益な特性の間の相乗効果を利用するように選択することができ、これは全体的な膜性能を向上させる費用効率が高い方法となり得る。例えば、膜を塩水の浄化に用いるとき、第1の層は効率的に塩を除去するように選択することができ、一方第2の層は膜の有益な特性、即ち、高い脱塩率、毒物の効率的な除去、または消毒剤の化学的攻撃に対する耐性のうちの少なくとも1つをもたらすように選択することができる。
【0009】
複層の活性層構造は、逐次的な界面重合プロセスを用いて費用効率よく作成することができる。
【0010】
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細を、添付の図面及び以下の記述で説明する。本発明の他の特徴、目的、及び利点は以下の説明及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示で説明するポリアミドTFC膜を作成するのに用いることができる逐次的界面重合の手順の略図である。
図2】REF−HFA−PA膜及び市販のRO/NF膜の塩通過率(%)対透水率(Lm−2−1bar−1)のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一態様において、本発明は、支持層上に形成された活性層を含む薄膜複合(TFC)膜構造に向けられる。膜の活性層は少なくとも2つの化学的に異なる架橋副層を含み、これらはその界面で架橋結合する。一実施形態において、膜の活性層は第1のポリアミド層及び第2のポリアミド層を含む。第2のポリアミド層はポリアミド骨格及びその骨格からの少なくとも1つのフルオロアルコール基ペンダント含む。第1の層又は第2の層のどちらかを支持層に隣接させることができる。
【0013】
TFC膜の支持層は、活性層に隣接し、複合膜の意図される用途に応じて広範囲に変えることができる。RO/NF膜を界面重合によって作成するための支持層として任意の限外ろ過膜を用いることができ、本明細書で説明する層状ポリアミドと共に用いるためには、ポリエーテルスルホン、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリエーテルイミド及びポリアクリロニトリルが適切である。
【0014】
活性層は、少なくとも2つの化学的に異なる架橋副層を含み、これらはその界面で架橋結合する。本明細書で説明する活性層は、界面重合法を用いて容易に作成される。本出願において、界面重合という用語は、二つの混ざり合わない溶液の界面において又はその近くで起る重合反応を指す。図1は、TCF膜の活性層を形成するのに用いることができる界面重合反応の順序の略図である。しかし図1は一例のみを示し、本発明はこの手順に限定されない。
【0015】
図1に示す実施形態において、TFC膜20の第1の副層12は、支持層10の上での水性化学混合物(A)と有機化学混合物(B)の間の界面重合反応(ステップI IP)から得られる。水性化学混合物(A)と有機化学混合物(B)は相互に混ざり合わない。混合物(A)及び(B)を接触させるとき、混ざり合わないということは(A)と(B)の間に界面が存在することを意味する。化学混合物(A)及び(B)は、独立に溶液、分散液、又はそれらの組合せとすることができる。(A)及び(B)の両方が溶液であることが好ましく、以下の議論においては溶液と呼ぶことになる。
【0016】
水性化学混合物(A)は、以下の式1
R(NH2)z 式1
で表される単量体ポリアミン反応物を含む。
【0017】
式中、Rは脂肪族基、脂環式基、芳香族基、複素環基、及びこれらの組合せのうちから選択される有機基を表し、zは2又はそれ以上、2乃至20、又は2乃至8の整数を表す。本出願において、端点による数値範囲の列挙はその範囲に包含される全ての数値を含む(例えば、1乃至5は1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5、などを含む)。幾つかの実施形態においてRは芳香族基を含み、1つ又は複数の芳香族基を含むことがより好ましい。
【0018】
幾つかの実施形態において、式1の単量体ポリアミン反応物内のRは、2乃至30個の炭素原子、又は2乃至20個の炭素原子、又は6乃至20個の炭素原子を有する有機基を表す。例えば、Rはベンゼン環、ナフタレン環、シクロヘキサン環、アダマンタン環、ノルボルナン環及びこれらの組合せのうちから選択される芳香族有機基を含むことができる。幾つかの実施形態において、式1内のRはベンゼン環であり、zは2に等しい。
【0019】
塩基を随意に水溶液(A)に添加して単量体ポリアミン反応物の溶解度を高めることができる。水溶液(A)内に用いる塩基は広範囲に変えることができ、有機塩基、無機塩基、及びこれらの組合せを含むことができる。例えば、水溶液(A)内の塩基は、無機水酸化物、有機水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、スルフィド、アミン及びこれらの組合せを含むことができる。適切な塩基には、それらに限定されないが、NaOH、KOH、Ca(OH)、NaCO、KCO、CaCO、NaHCO、KHCO、トリエチルアミン、ピリジン、テトラメチル水酸化アンモニウム、及びこれらの組合せが含まれる。
【0020】
有機化学混合物(B)は、以下の式2
【化3】

で表される単量体多官能性ハロゲン化アシル反応物を含み、式中、Rは脂肪族基、脂環式基、芳香族基、複素環基、及びこれらの組合せのうちから選択される有機基を表し、Xはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素のうちから選択されるハロゲン化物であり、pは2又はそれ以上、2乃至20、又は2乃至8の整数を表す
【0021】
幾つかの実施形態において、式2の多官能性ハロゲン化アシル反応物内のRは、1乃至30個の炭素原子、又は1乃至20個の炭素原子、又は1乃至15個の炭素原子を有する有機基を表す。幾つかの実施形態において、式2の多官能性ハロゲン化アシル反応物内のRは、ベンゼン環、ナフタレン環、シクロヘキサン環、アダマンタン環、ノルボルナン環及びこれらの組合せのうちから選択される有機基を含むことができる。
【0022】
幾つかの実施形態において、式2の多官能性ハロゲン化アシル反応物内のRは、以下の式12
【化4】

で表される有機基を表し、式中、WはCH、O、S、C=O、SO、C(CH、C(CF及びこれらの組合せのうちから選択される有機基を表し、sは0又は1の整数を表し、1価のCOXはベンゼン環に化学的に結合され、Xは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素のうちから独立に選択される。
【0023】
幾つかの実施形態において、溶液(B)内の単量体多官能性ハロゲン化アシル反応物は、以下の式10によって表される2価有機化合物又は以下の式11によって表される3価有機化合物のうちの少なくとも1つを含む。
【化5】

式中、R23、R24、R25、R26及びR27はそれぞれ独立に1価COXから選択され、ここでXは独立にフッ素、塩素、臭素及びヨウ素のうちから選択される。
【0024】
他の実施形態において、溶液(B)内の単量体多官能性ハロゲン化アシル反応物は、以下の式13で表される3価有機化合物又は以下の式14で表される2価有機化合物から選択される少なくとも1つの化合物を含む。
【化6】

式中、R28、R29、R30、R31及びR32はそれぞれ独立に1価COXから選択され、Xは独立にフッ素、塩素、臭素及びヨウ素のうちから選択され、ここでWはCH、O、S、C=O、SO、C(CH、C(CF及びこれらの組合せのうちから選択される有機基を表し、sは0又は1の整数を表す。
【0025】
他の実施形態において、溶液(B)内の単量体多官能性ハロゲン化アシル反応物は、以下の式37から式61までの化合物、及びそれらの組合せ、のうちのいずれかから選択される化合物を含む。
【化7】

【化8】
【0026】
有機溶液(B)中に用いる有機溶媒は広範囲に変えることができ、1乃至20個の炭素原子、又は1乃至16個の炭素原子、又は1乃至12個の炭素原子を有する有機化合物を含むことができる。適切な有機溶媒には、それらに限定されないが、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、n−ドデカン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン、キシレン、トルエン、ベンゼン及びこれらの組合せが挙げられる。
【0027】
随意に相転移触媒又は界面活性剤又は他の添加剤を溶液(A)及び/又は(B)に加えて反応性を高め、あるいは膜性能を向上させることができる。
【0028】
水溶液(A)中の単量体ポリアミン反応物又は有機溶液(B)中のハロゲン化アシル反応物の濃度は広範囲に変えることができる。例えば、水溶液(A)中の単量体ポリアミン反応物の濃度は、0.01%(w/v)から20%(w/v)まで、又は0.5%(w/v)から10%(w/v)まで、又は1%(w/v)から5%(w/v)までの範囲にすることができる。同様に、有機溶液(B)中のハロゲン化アシル反応物の濃度は、0.01%(w/v)から10%(w/v)まで、又は0.05%(w/v)から5%(w/v)まで、又は0.1%(w/v)から2%(w/v)までの範囲にすることができる。
【0029】
単量体反応物上の官能基は、架橋重合反応生成物を与えるように選択する。例えば、ジアミン単量体は、通常、塩化トリメソイル(TMC)との反応により架橋ポリアミドを作る。界面重合により架橋芳香族ポリアミドが形成された後、架橋の密度は、例えば、メタンハロゲン化スルホニル、エピハロヒドリン、トリメチルアミン三酸化イオウ錯体、ホルムアルデヒド、グリオキサルなどの架橋剤又は分子量増加剤を用いた重合後反応によってさらに増加させることができる。
【0030】
再び図1を参照すると、溶液(A)と溶液(B)の間の反応によって支持層10上に形成された架橋ポリアミド層12は、アミンと反応しなかった遊離ハロゲン化アシドを、界面重合段階において含む。これらの未反応ハロゲン化アシドは最終的に加水分解して、逆浸透(RO)膜の表面で通常観察されるカルボン酸基になる。しかし、この加水分解反応は比較的遅いので、本発明においては、層12内の未反応ハロゲン化アシドが水性塩基化学混合物(C)と反応する(ステップII IP)ことにより架橋ポリアミド上に付加的な架橋層14が形成される。化学混合物(C)は化学混合物(A)中のポリアミン反応物とは構造が異なる単量体ポリアミン反応物を含む。上記の化学混合物(A)及び(B)と同様に、化学混合物(C)は溶液、分散液、又はこれらの組合せとすることができる。両方の化学混合物(A)及び(B)と同様に、化学混合物(C)は溶液であることが好ましい。第1の架橋ポリアミド層12の表面は多数の未反応ハロゲン化アシド基を有し、これらが化学混合物(C)中のジアミンと反応して第2の架橋ポリアミド層14を形成する。
【0031】
一実施形態において、化学混合物(C)はフルオロアルコール基を有する単量体ポリアミン反応物を含む。好ましい一実施形態において、化学混合物(C)は以下の化学式1Aで表される1つ又は複数のヘキサフルオロアルコール基を有する単量体ポリアミン反応物を含む。
【化9】

式中、Rは脂肪族基、脂環式基、芳香族基、複素環基、及びこれらの組合せのうちから選択される有機基を表し、nは1又はそれ以上、1乃至20、又は1乃至8の整数を表し、mは2又はそれ以上、2乃至20、又は2乃至8の整数を表す。
【0032】
幾つかの実施形態において、式1Aの単量体ポリアミン反応物中のRは、2乃至30個の炭素原子、又は2乃至20個の炭素原子、又は6乃至20個の炭素原子を有する有機基を表す。例えば、Rはベンゼン環、ナフタレン環、シクロヘキサン環、アダマンタン環、ノルボルナン環及びこれらの組合せのうちから選択される芳香族有機基を含むことができる。
【0033】
一実施形態において、式1Aの単量体ポリアミン反応物中のRは、以下の式3で表される有機基である。
【化10】

式中、YはCH、O、S、C=O、SO、C(CH、C(CF及びこれらの組合せのうちから選択される有機基を表し、rは0又は1の整数を表す。式3において、1価アミノ(NH)基及び1価ヘキサフルオロアルキル[C(CFOH]基は、それぞれベンゼン環に化学結合する。
【0034】
別の実施形態において、式1Aの単量体ポリアミン反応物中のRは、以下の式4で表される有機基である。
【化11】

式中、1価アミノ(NH)基及び1価ヘキサフルオロアルキル[C(CFOH]基は、それぞれナフタレン環に化学結合する。
【0035】
別の実施形態において、単量体ポリアミン反応物(C)は、以下の式6で表される4価有機化合物又は以下の式7で表される3価有機化合物のうちから選択される少なくとも1つの化合物を含む。
【化12】

式中、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立にNH及びC(CFOHのうちから選択され、YはCH、O、S、C=O、SO、C(CH、C(CF及びこれらの組合せのうちから選択される有機基を表し、rは0又は1の整数を表す。
【0036】
別の実施形態において、水溶液(C)中の単量体ポリアミン反応物は、以下の式8で表される4価有機化合物又は以下の式9で表される3価有機化合物のうちから選択される少なくとも1つの化合物を含む。
【化13】

式中、R、R10、R11、R12、R13、R14及びR15は、それぞれ独立にNH及びC(CFOHのうちから選択される。
【0037】
別の実施形態において、水溶液(C)中の単量体ポリアミン反応物は、以下の式10で表される3価有機化合物又は以下の式11で表される4価有機化合物のうちから選択される少なくとも1つの化合物を含む。
【化14】

式中、R16、R17、R18、R19、R20、R21及びR22は、それぞれ独立にNH及びC(CFOHのうちから選択される。
【0038】
他の実施形態において、水溶液(C)中の単量体ポリアミン反応物は、以下の式15から式36までのいずれか、又はそれらの組合せで表される。
【化15】

【化16】
【0039】
水溶液(C)中に用いる塩基は広範囲に変えることができ、有機塩基、無機塩基、及びこれらの組合せを含むことができる。例えば、溶液(C)中の塩基は、無機水酸化物、有機水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、スルフィド、アミン、及びこれらの組合せを含むことができる。適切な塩基には、それらに限定されないが、NaOH、KOH、Ca(OH)、NaCO、KCO、CaCO、NaHCO、KHCO、トリエチルアミン、ピリジン、テトラメチル水酸化アンモニウム、及びこれらの組合せが含まれる。
【0040】
水溶液(C)中の単量体ポリアミン反応物の濃度は、広範囲に変えることができる。例えば、水溶液(C)中の単量体ポリアミン反応物の濃度は、0.01%(w/v)から20%(w/v)まで、又は0.5%(w/v)から10%(w/v)まで、又は1%(w/v)から5%(w/v)までの範囲にすることができる。
【0041】
層14を形成するのに特に適切な一実施形態において、水溶液(C)中のヘキサフルオロアルコール置換芳香族ジアミン(例えば、HFA−MDA及びHFA−ODA)は、層12中の塩化トリメソイル(TMC)のような芳香族酸塩化物上の未反応ハロゲン化物基と反応することができる(下記の反応1を参照されたい)。層14の最上面は、界面重合が限られた量の反応可能な酸塩化物を有する過剰アミン溶液中で行われるために、未反応の遊離アミンを含む。
【化17】
【0042】
別の実施形態において本発明は、支持層上の複層活性層を含むTFC膜の作成方法である。図1に示す例示的なプロセスを再び参照して、複層活性層を作成するための一実施形態をより詳細に論じるが、これは限定することを意図するものではない。この実施形態において、前処理された支持膜10を水溶液(A)中に数分間、典型的には1分乃至5分の間配置する。図1の方法では支持膜10を水溶液(A)中に配置することを含むが、代替的に本方法は支持膜10を水溶液(C)中に配置することによって開始することもできる。
【0043】
支持膜10の浸漬被覆表面から余分の溶液を除去し(又は余分の溶液はゴムローラで転がすことにより除去する)、被覆支持膜10を随意に室温で約1分乃至約10分間空気中で乾燥させる。
【0044】
次に、このジアミン飽和の支持膜10を溶液(B)に浸し、約1分間の反応の後、第1の活性膜層12が支持層10の上に形成される。この活性膜層12及び支持層10を含む構造体は、次に塩基水溶液(C)中に約1分乃至約10分間、典型的には約5分間配置する。活性膜層12及び支持層10を含む構造体は、水溶液(C)(又は(A)、初めのステップで支持層10に溶液(C)を塗布した場合)に挿入する前に随意に乾燥させることができる。
【0045】
約1分乃至約10分間、典型的には約5分間の反応の後、第2の活性膜層14が第1の活性膜層12の上に形成されて複層複合膜20が形成される。
【0046】
次に複層複合膜20を随意に乾燥させることができる。乾燥条件は広範囲に変化させることができるが、幾つかの実施形態において、膜20は室温で約1分乃至約5分間乾燥させ、又は随意に、約30℃乃至約70℃の温度に維持されたオーブン中で約1分乃至約5分間乾燥させる。
【0047】
膜20は、随意に、例えば0.2%(w/w)炭酸ナトリウム溶液を用いて約5分間洗浄し、膜試験を行う前に水中に保存することができる。
【0048】
膜の活性層は約1ミクロン未満の厚さを有することが好ましく、幾つかの実施形態においては約500ナノメートル未満の厚さを有することができる。
【0049】
支持膜10を溶液(A)中に入れる前に、随意に化学的又は物理的処理(プラズマ処理又はUVオゾン処理)を施して支持膜10の親水性を高めることができる。如何なる理論にも束縛されることを望まないが、現在入手できる証拠は、ポリスルホン支持層のプラズマ処理及び/又はUVオゾン処理によって、より親水的な表面(水に完全に濡れる)が生成され、従って支持層上のポリアミド単量体の被覆密度を高めることができることを示す。
【0050】
随意に、複合膜20を第2の支持膜又は層に貼り合わせることによって、付加的な構造的完全性をもたらすことができる。第2の支持膜又は層は、必要に応じて実際に繊維状にすることができる柔軟で多孔質の有機ポリマー材料であることが好ましい。繊維状補強又は支持材料の一例は、マイクロメートル領域の直径を有する不織ポリマー(例えばポリエチレン)繊維の紙様のウェブである。
【0051】
本明細書で説明する複合膜20を用いたフラットシート型(例えば、ラセン巻き型)浄水又は選択透過モジュールは、例えば、海水の脱塩、汽水の脱塩、乳清濃縮、メッキ化学薬品の回収、地方自治体又は家庭用の硬水の軟水化、ボイラー給水処理、及び溶質又は不純物の除去を含む他の水処理などの用途に対して有用である。
【0052】
これから本発明を以下の非限定的な実施例に関して説明する。
【実施例】
【0053】
試薬及び供給
3,3’−ビス(1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル)−4,4’−メチレンジアニリン(HFA−MDA)はセントラル硝子株式会社(日本)より供給され、そのまま用いた。
m−フェニレンジアミン(MPDフレーク、>99%)及び塩化トリメソイル(TMC、98%)、ヒ酸ナトリウム(NaHAsO・7HO、99%)、及び酸化ヒ素(III)(As、>99.5%)はシグマ・アルドリッチから購入し、TMCは使用前に蒸留した。
塩化ナトリウム(NaCl)、水酸化ナトリウム(NaOH、ペレット)及び炭酸ナトリウム(NaCO)はJ.T.Bakerから購入した。
ヘキサンはOmniSolvから購入した。全ての実験に脱イオン水を用いた。
ポリスルホン(PSF)限外ろ過(UF)膜はセプロ・メンブレン社から購入した。
【0054】
実施例1:REF−PA膜の作成
参照ポリアミドTFC膜とするREF−PAは、形成済みのポリスルホン(PSF)限外ろ過膜の上に、単一ステップ界面重合によって合成した。PSF膜を、2%(w/v)MPD水溶液中に2分間配置し、次にMPDをしみ込ませた支持膜を、ゴムローラを用いて回転させて余分な溶液を除去した。次にMPD飽和膜を0.1%(w/v)塩化トリメソイル(TMC)のヘキサン溶液に浸した。1分間の反応の後、結果として得られた膜を0.2%(w/v)炭酸ナトリウム水溶液を用いて5分間洗浄し、膜の評価を行うまで純水中に保存した。
【0055】
実施例2:REF−HFA−PA膜の作成
層状ポリアミドTFC膜REF−HFA−PAは、形成済みのポリスルホン(PSF)限外ろ過膜の上に、逐次界面重合によって合成した。PSF膜を、2%(w/v)MPD水溶液中に2分間配置し、次にMPDをしみ込ませた支持膜を、ゴムローラを用いて回転させて余分な溶液を除去した。次にMPD飽和膜を0.1%(w/v)塩化トリメソイル(TMC)のヘキサン溶液に浸した。1分間の反応の後、結果として得られた膜を2%(w/v)HFA−MDAジアミンの塩基水溶液中に5分間配置した(2当量のNaOHを加えてHFA−MDA単量体を完全に溶解させた)。結果として得られた膜を5分間乾燥させ、0.2%(w/v)炭酸ナトリウムの水溶液を用いて5分間洗浄し、膜の評価を行うまで純水中に保存した。
【0056】
実施例3:膜性能の評価(NaCl除去率及び水流量)
膜性能は、交差流ろ過システムを用いて400psiにおいて評価した(流量=1Gal・min−1)。膜を400psiで5時間圧力を加えた後、室温で純水の流量を測定した。次に、同じ圧力で2000ppmのNaCl水溶液を用いて塩除去率を測定した。供給水のpHは希釈HCl溶液及び希釈NaOH溶液を用いて制御した。REF−PA膜及びREF−HFS−PA膜を用いて得られた水流量及び塩除去率の値を以下の表1にまとめる。
【表1】
【0057】
表1は、REF−PA膜及びREF−HFS−PA膜について、中性条件(供給水のpH=6.8)及び塩基性条件(供給の水pH=9.8)の2000ppmNaCl供給溶液を用いて実験室スケールの交差流ろ過試験を行って計測された水流量と塩除去率を示す。REF−HFS−PAは、REF−PAと比べて、改善された塩除去率(平均0.1%の増加)及び水流量の無視できる損失(3〜5LMH減少)を示した。
【0058】
REF−HFS−PA膜の性能(塩除去率≧99.8%、水流量:約60Lm−2−1)と市販のRO/NF膜とを、それらの分離データをプロットすることによって直接比較した。図2は、REF−HFS−PA膜、並びに、海水脱塩(SWRO)膜、汽水脱塩(BWRO)膜、及びナノろ過膜を含む市販の膜を用いて計測した、透水率対塩通過率のグラフを示す。市販の膜に関するデータは製造者の仕様から抽出したもので、黒い破線は市販の膜に示された透水率と塩通過率の間のトレードオフ曲線を示す。層状ポリアミド膜REF−HFS−PAは、透水率と塩通過率の両方の非常に素晴らしい組合せを示す(図2の中で星印はトレードオフ曲線より上に存在する)。塩通過率は非常に低く、SWRO膜のそれよりもさらに低く、一方透水率はSWRO膜の流量範囲よりも遥かに高い。低い塩通過率(高い塩除去率)は付加的なポリアミド最上層が有するHFAのはたらき(functionality)によるものと思われる。
【0059】
実施例4:ヒ素除去効率の評価
ヒ酸(As(V))ろ過:4mgのNaHAsO(As(V))を14mLの純水に溶かした。この溶液12.5mLを4ガロンの水に添加した(これにより約200マイクログラム/LのAs(V)イオン濃度を生成した)。8.8グラムのNaClをこの溶液に加えた(10mM NaCl、200μg As(V)/L、10mM NaCl、pH=7.3)。この供給溶液により、交差流ろ過システムを用いて400psiにおいてAs(V)除去率を計測した。この供給溶液のpHは1M NaOHを用いて調整した。各試験に対して15mLの透過物を収集し、透過物試料のAs(V)濃度を誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)によって分析した。
【0060】
亜ヒ酸(As(III))ろ過:10mgのAs(As(III))を約10mLの0.2M HCl溶液に2、3時間音波処理して溶解させた。この溶液4mLを4ガロンの供給水に添加して、200μg/LのAs(III)濃度を生成した。全ての他の手順は上記のAs(V)ろ過実験におけると同様に行った。
【0061】
実施例5:ホウ素除去効率の評価
75.5mgのHBO(B(III))を100mLの純水に溶かし、この溶液を4ガロンの水に添加した(B(III)濃度:5mg/L)。この供給溶液により、交差流ろ過システムを用いて400psiにおいてホウ素除去率を計測した。この供給溶液のpHは1M NaOHを用いて調整した。各試験に対して15mLの透過物を収集し、透過物試料のホウ素濃度を誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)によって分析した。
【0062】
層状ポリアミド膜もまた、水からホウ素及びヒ素などの有害毒物を除去するのに優れた効率を示した。ホウ素及びヒ素(特に亜ヒ酸:As(III))の除去率は通常供給水のpHに依存し、その理由はこれらの混合物の幾つかは中性条件では非イオンであり、塩基性条件(pH≧9.0)ではイオン化するからである。市販のRO膜により、中性pHにおいて30〜60%のホウ素を除去することができ、塩基性pH(pH10〜11)においては除去率が90〜95%まで高まることが報告されている。1つの市販RO膜(日東電工からのES−10)は酸性条件下で85%のヒ酸(As(V))除去率及び50%の亜ヒ酸(As(III))除去率を示すが、除去率は、塩基性条件下では両種に対して殆ど90%に達する。
【0063】
以下の表2はREF−HFA−PA膜を用いて種々のpHにおいて計測したホウ素及びヒ素(As(V)及びAs(III))の除去率を示す。ろ過実験は交差流ろ過システムを用いて400psi(流量=1Gal・min−1)において行った。
【表2】
【0064】
この膜は、水から中性pHにおいて80%のホウ素をろ過除去し、高pHにおいて98.0%以上のホウ素を除去したが、これは市販のRO膜の性能より優れている。この膜はまた、中性及び酸性条件下でも主要なヒ素種であるAs(V)及びAs(III)を効率的にろ過除去した(pH7.3において99.9%以上のAs(V)除去率、92.5%のAs(III)除去率)。亜ヒ酸(As(III))に関しては、供給水のpHを11.5まで高めることにより除去率は98.3%まで上昇した。
【0065】
如何なる理論にも拘束されることを望まないが、塩除去及び毒物除去におけるREF−HFA−PAの改善された性能は、市販のRO膜に用いられるのと同じ材料である芳香族ポリアミドの下層と、HFA置換芳香族ポリアミドの上層との相乗効果によるものと思われる。
【0066】
本発明の種々の実施形態を説明した。これら及び他の実施形態は以下の特許請求の範囲内に入る。
【符号の説明】
【0067】
10:支持層(支持膜)
12:第1の副層/第1の架橋ポリアミド層/第1の活性膜層
14:付加的な架橋層/第2の架橋ポリアミド層/第2の活性膜層
20:薄膜複合(TFC)膜/複層複合膜
図1
図2