(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アブレーション装置は、前記収容される形態では、約2−5mmの範囲にある作動チャンネルを通って配備されるのに適応している、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
前記アブレーション装置は、前記支持体の上端に回路の裏当てを備え、この裏当ての上端に無線周波数(RF)エネルギー供給エレメントを備えている、ことを特徴とする請求項6に記載のシステム。
前記アブレーション装置は、前記作動チャンネルを介して配備可能であり、前記作動チャンネルから突き出て広範な領域のエネルギー供給面をもたらすように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
前記アブレーション装置は、前記アブレーション面の曲がりを許容する柔軟な部分を、前記アブレーション面の近位に備えている、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
前記アブレーション装置を前記内視鏡の中心軸廻りに回転させるために、内視鏡の近位端部からアブレーション装置へトルクを伝達するのに適応したトルク伝達部材を更に備えている、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
前記内視鏡の中心線に沿った相対運動のために構成された、第1の連結部材と第2の連結部材とを含む、トルク伝達部材を更に備えている、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
前記内視鏡の遠位端部の原位置に対する近位または遠位への前記アブレーション装置の位置決めをもたらすのに適応したトルク伝達部材を更に備えている、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0038】
完全に円周状の及び部分的に円周状のアブレーション構造を利用する、幾つかは対象組織に対してアブレーション構造を位置させるための膨張可能なバルーンと組み合わされて利用する、アブレーション技術の使用は米国特許および米国特許出願に記載されて来た。部分的に円周状のアブレーション構造を利用する装置および方法は、次の米国特許出願:第11/286,257号,第11/286,444号および第11/275,244号を例として含んでいる。また、完全的に円周状のアブレーション構造を利用する装置および方法は、米国特許:第6,551,310号および第7,150,745号、並びに米国特許出願:第11/557,445号,第10/370,645号,第10/416,923号,第11/420,722号,第11/420,719号,第11/420,714号,第11/420,712号,第11/469,816号(Shadduck)、並びに米国特許:第6,872,206号に記載されている。
【0039】
前記装置および方法は、即座の止血効果をもたらすかも知れず、或いは、将来において出血する傾向がある障害を除去または直すかも知れず、また、治療効果が創傷治癒と関連して延長時間をもたらし、従って、徐々により有効な止血効果を導くかも知れない。この治療効果は、広範な領域に亘って達成されることができ、典型的には本来コープティブ(coaptive)であり、深さが均一であり、所望の深さに制御可能であり、しかも迅速に送給される。本発明の幾つかの実施態様につき、アブレーション治療の広視野の特徴(wide-field aspect)は、装置の広い表面積と、近接した領域および非近接領域を治療するために装置を繰り返し再配置できることによるものである。
血管のコープティブ・アブレーションは、幾つかの理由で有利な方法(アプローチ:approach)であると考えられる。先ず、当該部位(サイト:site)からの血液の除去または減少に伴って、組織のヒートシンク(heat sink)容量(熱を吸収する能力)が低下し、より有効な止血効果を生み出す。第2に、治療(セラピー:therapy)を適用するに先立って、装置自体により加えられる圧力で血管壁を一緒に圧縮または圧壊することにより、治療が管壁の一緒になったアニーリング(annealing)をもたらし血液の流れを止めることができる。このように、例えば適切な圧力の適用のような、コープティブな凝固に有利な方法ステップは、当該方法にとって有益である。アブレーション装置によって対象とされた組織あるいはそこに含まれる血管に加えられた圧力により、止血効果は本来コープティブである。
本発明の実施態様につき、圧力の水準(レベル:level)、典型的には、対象部位に近接したときに装置の拡張可能な部材によって加えられる、又は、装置がその上に取り付けられる、若しくは装置が挿通される、内視鏡の物理的な動作によって加えられる、圧力レベルは、1平方インチ当たり約1ポンドから約15ポンド(ポンド・スクェア・インチ:psig)の範囲である。特に、コープティブな圧力は、約3から約7psigである。更に一層コープティブな圧力は、約4psigである。
【0040】
治療パラメータは、対象とされた障害部位の全て又は一部において均一なレベルのアブレーションが達成されることであってもよい。例えば、表在性の(superficial)障害に対しては、所望されるアブレーションの深さは、粘膜あるいは粘膜の一部分であるかも知れない。より深い障害に対しては、アブレーションの深さは、より深い粘膜、及び全ての又は一部の粘膜下組織であってもよい。アブレーション効果の深さ制御および均一性は、装置の特徴、並びに、電極パターン,対象障害部位に対する圧力,エネルギー密度,電力密度および適用数を含む治療パラメータ、を通じて達成される。
【0041】
特定の出血部位あるいは障害部位を治療するのに用いられる方法および装置の実施態様の選択は、出血が生じている器官(organ)の大きさ,内視鏡的な接近手段(access),出血部位および障害の大きさの他、当該器官の内層の関与の程度にも依存する。例えば、GAVEを患った患者の胃前庭部内では、出血の障害部位は、(車輪から放射状に伸びるスポークのように)狭くて直線的であるか、或いは融合性で(confluent)円周状であるかも知れない。
前者の場合には、例えば、部分的に円周状のアブレーション面を備えたアブレーション・カテーテル、或いはここに開示された他の局限性の装置のような、限局性の(focal)アブレーション及び止血装置が好ましいかもしれない。後者の場合には、完全に円周状のアブレーション及び止血装置が好ましい。
両方のタイプの装置(すなわち、局限性の、或いは非円周状、及び円周状の装置)が、内視鏡上に、内視鏡を挿通し、或いは内視鏡の長さに沿って、様々に取り付けられる。更に、装置は、バルーン方式の又は非バルーン方式の、対象組織に対する展開および圧縮の方法を含んでいてもよい。
【0042】
方法を実行するための方法および装置の実施態様は、消化管内の急性の又は慢性の出血部位に適用することができる。
図1A及び
図1Bは、出血する血管4がある消化管の一部分の管壁の断面を模式的に示している。
図1Aは、主として固有層および上皮組織に位置する、枝分かれした毛細血管を伴った、血管,細動脈またはベヌオレ(venuole)の一部分を示している。また、
図1Bは、主として粘膜下層および固有層に位置する、枝分かれした毛細血管を伴った、血管,細動脈またはベヌオレの一部分を示している。これらの図の要点は、脆弱で出血する血管が、消化管の特定の層に存在するかも知れないということである。
或る場合には、特定状態の既知の特性のために、含まれている組織学上の層が分かるかも知れない。急性の又は慢性の出血の他の場合には、患者の病歴,生体検査(バイオプシー:biopsy)から、治療に対して予備的な、或いは治療の際の内視鏡観察により、患者の特定の情報が利用でき、それらは、問題のある血管を優先的に特定の組織深さに局限する兆候をもたらすことができる。
図1Aによって与えられる例では、アブレーションが上皮組織内および固有層内で生じるように、深さ制御されたアブレーションのエネルギーを供給するのが好適であろう。また、
図1Bによって与えられる例では、アブレーションが粘膜下層内,粘膜筋層および固有層内で生じるように、深さ制御されたアブレーションのエネルギーを供給するのが好適であろう。
【0043】
図2A−
図2Cは、消化管内の急性の又は慢性の出血の源であって、本発明の方法および装置の実施形態による止血アブレーションの対象である源となり得る状態の特定の例を示す図である。
図2Aは、上流側の動脈4aと下流側の静脈4vとの間に位置する血管のもつれ(entanglement)としての動静脈の奇形(AVM)4avmを示している。
図2Bは、上流側の細動脈4aと下流側のベヌオレ(venuole)4vとの間に位置する、著しく拡張した毛細血管4cを伴った毛細血管拡張症を模式的に示している。また、
図2Cは、胃前庭部毛細血管拡張症(GAVE)の特性を示しているスイカ胃の部位4wmの幅広のパターンを有する患者の幽門に向かって見た、胃の内視鏡的な遠位方向の図である。これら血管の障害4lは、内視鏡によって可視化されるので、胃部を覆う皮膚上で外部的に視認できるだけでなく、内部的にも視認できる。
【0044】
ここに与えられる治療上のアブレーション方法の一面(aspect)、つまり、アブレーション治療に好適な部位(
図3)の他、かかる治療中に適用されるアブレーション・エネルギーの量を決定すること、を振り返れば、かかる決定は、臨床医が特定の患者について収集できる臨床情報の総量から得られるものである。
幾つかの実施形態では、患者の消化管の概略的な寸法の評価と同様に、あらゆる患者に特有の特徴が緻密に計画立てられるように、急性の又は慢性の消化管の出血部位の予備的な内視鏡検査をすることが、好適であるかも知れない。このような情報は、粘膜内染色剤を随意的に用いて、内視鏡的な方法による直接の目視観察によって得ることができ、また、内視鏡からの狭い帯域の画像化のような非侵襲的な透過性の画像化方法を含む、他の診断方法によって、或いは当該技術分野で知られているあらゆる従来の方法を用いて、更に達成することができる。
或る一面では、部位の評価は、その寸法を含む、当該部位の場所を特定することを含んでいる。他の一面では、対象組織の評価は、1箇所以上の場合には、部位の多重性(multiplicity)を特定することを含み、更に、それらの場所および各々の寸法を特定することを含んでいる。更に他の一面では、対象部位を評価することは、急性の又は慢性の消化管の出血部位の、あらゆる病変もしくは損傷もしくは特定の特徴を特定または等級付けることを含み、特に、アブレーションの対象とされるべき領域と重なるか又は近接した臨床的に有意義または問題のあるあらゆる領域を特定することを含む。
【0045】
アブレーションの対象部位が特定されると、急性の又は慢性の消化管の出血部位の対象組織は、ここに記載されるように、独創性のあるアブレーション装置およびそれに関連した方法を用いて治療することができる。アブレーションの対象組織の状況の評価も、例えば、アブレーションと緊密に協調して、アブレーション・エネルギー(例えば放射エネルギー)の適用の直前、及び/又は直後に、特に可視化法により、アブレーション治療法(
図3)の一部として有益に実行される。
更に、アブレーション治療の後で臨床的に適切なとき、例えば、2,3日後、数週間後、数ヶ月後、或いはアブレーション治療に続いて臨床的に指示されたときであればいつでも、あらゆる診断法または目視法により、治療部位を評価することができる。何らかの追跡評価が、治療が不十分に終えられていたこと、或いはアブレーションの対象とされた細胞集団に回復が見られることを示す場合には、アブレーション治療を繰り返すことが指示される。
【0046】
ここに詳しく記載されるように、損傷したバイパス(bypass)治療のアブレーション上の修正を指向することができるアブレーション装置の態様を振り返れば、アブレーション装置は、例えば電極のようなエネルギー伝達要素が配列されたアブレーション構造を有している。幾つかの実施形態では、治療に用いられるアブレーション・エネルギーのタイプに応じて、何らかの機器(instrument)に搭載または支持することができ、この機器はアブレーション面の対象部位の場所への適切な動作を許容する。
このような機器は、その形態および寸法面で、対象組織部位に到達するのに好適なように適合しており、目的に適合した簡素な(simple)カテーテルを含んでいるかも知れず;挿入式の(insertive)機器は内視鏡を含み、その支持の役割に加えて、可視化能力をも与える。また、方法の幾つかの実施形態では、支持用の機器とは分離した内視鏡が、視覚的な情報を提供することにより、アブレーション治療に参画することができる。
【0047】
ここに記載したように独創的な装置の例示的な実施形態は、典型的には、無線周波数のエネルギーを伝達する電極を利用しているが、このエネルギー伝達の形態は非限定的なものであり、本発明の実施形態には、他の形態のエネルギー、及び他の形態のエネルギー伝達のハードウェア(hardware)が含まれている。
本発明の実施形態によって提供されるように、アブレーション・エネルギーは、例えば、アンテナから放射されるマイクロ波エネルギー,光子要素(photonic element)から放射される光エネルギー,加熱されたアブレーション構造の表面から伝熱的に伝達される、或いは加熱された気体または液体によって、若しくはエネルギーのヒートシンク吸熱によって、或いはアブレーション構造表面の冷凍または極低温冷却によってもたらされるように、或いは、冷たい気体または噴霧流体またはミストの組織との直接の接触によって適用されるように、或いは冷たい気体または流体を組織から分離させる装置の壁部を通じて吸熱することにより、組織に伝えられる、熱エネルギーを含むものである。
【0048】
アブレーション装置の実施形態は、取り扱われるアブレーション面の全周の拡がりに関して変形例を含んでおり、幾つかの実施形態は、完全な周面状のアブレーション面を与え、他の実施形態は、前述のように、完全な周面よりも小さいアブレーション面を与える。
図3に示されているように、適切な装置を選定することは、与えられた治療方法の範囲内に含まれるステップである。これら及びその他の変形例は、消化管の壁部の1つ若しくはそれ以上の対象組織の特質,範囲,場所及び寸法に応じて、特有の利点をもたらすものである。
本発明の或る実施形態は、内腔器官内の全放射ゾーン(full radial zone)がアブレーションを受けるように、完全に全周状の、つまり、360度の放射状の範囲を取り囲む、アブレーション面を備えた装置を含んでいる。このゾーン内で、エネルギー出力および(例えば電極のような)アブレーション要素のパターンに応じて、アブレーションは、角度を変化させるように、しかし、アブレーションのゾーン内での実質的な均一性をもって、実行される。この実施形態は、急性の又は慢性の消化管の出血部位内で広範囲に及ぶ部位あるいは拡散した部位を治療するのに、特に好適である。
装置の他の実施形態では、独創的な装置のアブレーション面は、部分的に周状であり、内腔器官の全内部周縁または内部全周の一部分と係合している。内腔器官の内面上でアブレーションされる周状部の断片的な小部分は、以下に更に詳しく述べるように、治療される内腔器官のサイズ及び配置形態(半径,直径あるいは全周もしくは傾斜度)に、及びアブレーション面の寸法に、依存する。小さくて離散した治療対象部位に関しては、後者の実施形態によって与えられる、より小さくてより離散したアブレーション面が有利であるかも知れない。
【0049】
360度の全周配列回りのアブレーション・エネルギー要素の全周サブセット(subset)のこのタイプの操作制御は、「電極パターン及び組織の表面領域を横切るアブレーション・パターンの制御」と題した節(セクション:section)において後述するように、電極配列のパターン化されたサブセットの断片的な操作に似ている。配列の部分的に周状な操作においては、特定の弧状部分(アーク:arc)が駆動されて、全周の弧状部分にエネルギーが供給される。配列の断片的なパターン操作においては、エネルギーが対象領域の組織の一部に供給され、一方、他の部分はアブレーションを達成するには不十分なエネルギーしか受けない。幾つかの実施形態では、これらの操作上のバリエーション(variation)が組み合わされることができる、つまり、全周の弧状部分のパターン化されたサブセットが駆動されることができる。
【0050】
図3及び
図4は共に、急性の又は慢性の消化管の出血部位の組織をアブレーション(融徐)する方法の実施形態の流れ図である。これらの図は、一つは360度の全周アブレーション構造を有し、他の一つは360度よりも小さい弧状部分を備えたアブレーション構造を有する、装置の2つの具体例によって生み出される方法の実施形態の共通の態様を表している。
【0051】
図3は、患者の評価と消化管内の融除的な(アブレーショナル)治療にとって臨床的に好適な部位の決定とに焦点を当てた、方法の全体像を表す流れ図である。今一つのステップでは、責任を負うべき臨床医が、患者を治療するのに適切な具体例に関して、つまり、360度の電極配列を備えた装置100Aか、360度よりも小さい弧状部分に配列された電極を備えた装置100Bの何れかに関して、インフォームド・チョイス(informed choice)を行う。
装置100Aを使用するように選定された場合には、360度全周に亘って電極を作動させるか、或いは電極配列の放射状構造のサブセットを作動させるかの、治療選択がなされる。他のステップでは、臨床医は、供給すべきエネルギー量,エネルギー密度,エネルギーを供給すべき期間を考慮しながら、アブレーションの手順について検討し決定する。これらの検討は、融徐されるべき表面積,治療されるべき組織の深さおよび電極配列の特徴、例えば、断片状の電極とすべきであるか、どんなパターンが望ましいか、が考慮に入れられる。
装置の選択に拘わらず、方法の実施に対して今一つの予備的なステップは、消化管内の対象組織部位のより周到な評価を含むことができる。また、かかる部位の評価は、何らかの可視化の特性、或いは、個々の対象組織部位の数,寸法,精確な位置、及び/又はその臨床的な状態,外見上正常か異常かの詳細な調査をもたらす診断的な方法、を含むかも知れない。このステップは、器具の選択に続いて示されるが、単に診断と結び付いて、或いは、対象組織の診断および概略的な位置の特定の後の如何なるときにでも、起こり得る。
図4の流れ図に示されているように、如何なる場合でも、方法の作動ステップで概要を述べたように、評価ステップは、典型的にはアブレーションに先立って行われる。以下に続く説明では、符号100は、そのアブレーション面101が完全に周状であるか、部分的に周状であるかに拘わらず、概してアブレーション装置を指称するのに用いられる。
【0052】
図4は、消化管の急性の又は慢性の出血部位での対象部位が局部限定され、好ましいアブレーション装置についての選定がなされた後の方法を表す流れ図である。当該方法は、部位の評価を含んでおり、この部位の評価は、上述のように、位置の特定,ステージ(stage),部位の個数および寸法の決定を含み、背景の欄で述べた参照文献に詳細に述べられた手法、及び/又は当該技術分野における実務者が知っている如何なる手法が用いられる。また、当該方法は、器具の挿入およびアブレーション治療の対象組織の局所への器具の移動を続ける。その後に、アブレーション構造と対象組織部位との間のより治療効果のある接触を生み出すアブレーション治療構造のより精密な動作を行うことができる。
装置100Aの360度の具体例が選定された場合には、治療効果のある接触は、電極配列の下層にあるバルーンを膨らませることによってなされる。具体例の選定が、360度よりも小さい弧状部分に広がる電極面を備えた装置である100Bの場合には、アブレーション面を治療効果のある接触に持ち来す動きは、バルーンのあらゆる膨張,撓み(デフレクション:deflection)部材の膨張、及び/又はデフレクション部材の動作を含むかも知れず、それらの全ては、以下に更に説明される。
【0053】
治療効果のある接触がなされた後、装置の実施例100A又は100Bにより、また、どんなタイプの動作が行われたかにより、後続するステップは、装置からのアブレーション・エネルギーの放出を含む。アブレーション・エネルギーの放出の変化は、単一の部位をアブレーションするだけでなく、第2の部位または評価ステップ中に特定された後続する部位への、器具の移動をも含む。
アブレーション的な事象に続いて、後続するステップは、治療された対象部位の評価を含むことができる;代替的には、アブレーションの結果の評価は、患者の臨床データの収集および観察を含むかも知れない。アブレーション構造を支持する器具として、又は別物の器具として、処置中に内視鏡が含まれる場合、器具が既に適所にあれば、そのような評価は、処置中に、直ちに或いはアブレーション後に非常に早期になされる。
本方法の他の実施形態では、治療された部位は、処置の後で臨床的に適切なときであれば何時でも、例えば、翌日あるいは翌週または数ヶ月後などに、評価されることができる。これらの評価の何れかが、部分的にしか完了していないアブレーションを示す場合、或いは対象とされた細胞の望ましくない再生を示す場合には、本方法は、たった今説明され、また
図4に示されたステップの繰り返しを適切に含むものである。
【0054】
<360度周状のアブレーションのための装置および方法>
消化管の急性の又は慢性の出血部位にある血管組織のアブレーションを達成するための本発明に従った方法は、消化管の出血部位のアブレーションを達成するレベルでの放射エネルギーの放出を含んでいる。この節(セクション:section)で説明される典型的な実施形態では、放射エネルギーの分配要素(distribution element)は、360度に亘る周状に構成されている。
アブレーション構造からのRFエネルギーの放出を用いる代わりに、組織のアブレーションを達成するのに、そして、電極を必要とせずに、アブレーション構造と共に他のエネルギー源を用いることができる。このような代替的なエネルギー源は、紫外線光,マイクロ波エネルギー,超音波エネルギー,加熱された流体媒体から伝えられる熱的エネルギー,加熱された要素から伝えられる熱的エネルギー,アブレーション構造を加熱する蒸気もしくは蒸気と組織の接触を通じて組織を直接に加熱する蒸気のような加熱された気体(ガス),平行にされた或いは非平行な光エネルギー,アブレーション構造の回り又は内部に在る冷却された流体もしくはガスによって伝達される、或いは流体/ガスと組織との接触を通じて組織を直接に冷却する低温エネルギー、などを含む。
これらの形態のアブレーション・エネルギーを利用するシステム及び方法の実施形態は、構造,制御システム,パワー供給システム及び他の全ての補助的な支持システム並びに方法が、供給されるアブレーション・エネルギーのタイプに対して好適なように変更することを含んでいる。
【0055】
完全に周状のアブレーション装置の幾つかの実施形態では、柔軟性のある軸(flexible shaft)は、電気的な絶縁層で周囲を覆われたケーブルを備えると共に、その遠位端部に放射エネルギーの分配要素を備えている。本発明の一形態では、器具の遠位端部周囲の位置決めおよび拡張装置は、エネルギーの分配要素の側部上だけでなく当該エネルギーの分配要素の前部においても、それが内部に配置される急性の又は慢性の出血部位での消化管(例えば、胃,幽門,小腸,直腸あるいは肛門)の壁部に接触し拡張するのに十分なサイズのものである。
例えば、器具の遠位ヘッド(distal head)は、膨張可能な風船(バルーン:balloon)つまり膨張部材により、急性の又は慢性の出血部位での消化管の壁部から制御された距離に支持することができ、その結果、電極を通じてエネルギーが加えられるときに管腔内の組織へ伝達されるエネルギーの量を調節および制御できるようにするために、アブレーション構造と対象組織との間で治療効果がある接触がなされる。前記バルーンは、好ましくは、遠位ヘッド要素から離れた点で、前記柔軟性のある軸の一部にくっつけられている。
【0056】
完全に周状のアブレーション装置の幾つかの実施形態は、アブレーション・エネルギーを送給する輸送手段として、拡張可能なまたは膨張可能なバルーンを含んでいる。また、この実施形態の一つの特徴は、それによりエネルギーが本発明の遠位ヘッド部分からバルーン部材を構成する膜へ伝えられる手段を含んでいる。
例えば、好適であり、その全体がここに組み込まれる、エネルギー分配の一つのタイプが、米国特許第5,713,942号に示されている。そこでは、膨張可能なバルーンは、対象組織を所望の温度に選択的に加熱するのに望ましい特性を有する無線周波数電力を供給する電源に接続されている。
本発明の実施形態によれば、バルーンは、例えばポリマー,エラストマー及び電気伝導性粒子の混合物のような、電気伝導性のエラストマーで製造することができる。或いは、完全に膨張した形態で、接触されるべき組織まで伸長する、形状およびサイズを有する非拡張性の空気袋(ブラッダ:bladder)を構成することもできる。
他の実施形態では、電気伝導性の部材が電気伝導性のエラストマーで形成され、そこでは、例えば銅のような電気伝導性の材料が表面上に堆積(デポジット:deposit)され、その材料に電極パターンがエッチングされ、その後、この電気伝導性の部材がバルーン部材の外表面に取り付けられる。
或る実施形態では、電気伝導性の部材は、例えばバルーン部材は、急性の又は慢性の出血部位での人間の消化管の拡張された(壊れてはいない)管腔内面の寸法に適合する形状に膨張可能な形態を有している。
更に、このような電気伝導性の部材は、一つ若しくはそれ以上のサーミスタ(thermistor)を有するアブレーション構造101上に配列された複数の電極切片(electrode segment)で構成することができ、前記サーミスタは各電極セグメントに繋がれており、それにより、複数の電極セグメントの各々からの温度がモニタ(monitor)され、フィードバック機構によって制御される。
今一つの実施形態では、電気伝導性の部材が、アブレーション部位へのマイクロ波エネルギーの伝達を許容する手段を有することが可能である。更に他の実施形態では、拡張する部材もしくは膨張可能なバルーン部材が、当該部材の一つ若しくはそれ以上の部分内へ加熱可能な流体を運ぶ又は伝達する手段を有しているかも知れず、前記加熱可能な流体の熱エネルギーがアブレーション・エネルギー源として用いられる。
【0057】
完全に周状のアブレーション装置の幾つかの実施形態は、可変で指向性のある制御手段,焼灼の深さを精確に検出する手段、及び適切な代替的実施形態を含んでおり、膨張可能なバルーン部材を形成する膜内に電気伝導性要素を配置しないことが所望の場合でも、例えば遠位側のエネルギー分配ヘッドで、膨張可能なバルーン部材の容積内の位置にエネルギー放出手段を保ちながら、配置および位置決め制御のためにバルーン部材を利用することが可能である。
【0058】
本発明の実施形態は、例えば完全に周状のアブレーション装置のようなアブレーション装置が、消化管内の部位での急性の又は慢性の出血の部位を治療するのに用いられる。完全な又は部分的なアブレーションの対象とされる組織を有する急性の又は慢性の出血部位での消化管壁部の部分または複数の部分を決定した後、患者には、使用されるべき装置の実施形態に従った適切なやり方で、治療の準備が施される。それから、或る実施形態では、施術者が、内視鏡のアクセス及び制御を通じて、ここで示され議論されたアブレーション装置を患者内へ挿入する。更に、適切な位置として行われる装置の部分の位置決め及び可視化が、急性の又は慢性の消化管の出血部位でのアブレーション部位を特定する。
所望の焼灼深さに応じた適切なパワー設定を含め、アブレーション・カテーテル部材上の四半分または部分/断片の選定および活性化が医師によって実行される。患者の急性の又は慢性の出血部位での消化管内で異なる位置および/または異なる深さで更なるアブレーションが必要なときには、追加的な設定必要となる。アブレーションに続いて、消化管の急性の又は慢性の出血部位から装置を取り出している間および取り出した後に、当該分野で既知の適切な追跡処置が患者に施される。
【0059】
本発明の更に他の方法では、施術者は、先ず、アブレーションを必要とする消化管の急性の又は慢性の出血部位の部分の長さを決定し、それから、各々のカテーテルがバルーン部材と連繋した電極部材の長さが異なっている本発明の複数のアブレーション・カテーテルの中から一つのアブレーション・カテーテルを選定する。例えば、施術者が、消化管の急性の又は慢性の出血部位の1センチメートルの表面がアブレーションを必要とすると決定した場合、1センチメートルの電極部材を有するアブレーション・カテーテルが、アブレーションでの使用のために選定される。バルーン部材と繋がった電極部材の長さは、例えば1から10センチメートルの長さに変動する。
【0060】
更に他の実施形態では、放射エネルギー分配要素がバルーン部材と連繋した、複数のアブレーション・カテーテルが提供され、そこでは、膨張したときのバルーン部材の直径が12ミリメートルから40ミリメートルに変動する。この方法では、施術者は、膨張したときに、消化管の急性の又は慢性の出血部位を引き伸ばして粘膜層を薄くし、従って、アブレーションの部位での血流量を減少させ閉塞させる、直径を有するアブレーション・カテーテルを選定するであろう。アブレーションの領域での血流を低減させることにより、放射エネルギーによって発生した熱が、対象組織の他の領域へ容易には散逸し難くなり、従って、アブレーション部位へ集中する。
【0061】
施術者が、特定の患者に用いる適切な直径のアブレーション・カテーテルを決定するのに用いる一つのアプローチは、圧力検知機構に結合された非常に柔軟なバルーンを最初のステップで用いることである。このバルーンは、消化管の急性の又は慢性の出血部位内の管腔の器官内へ挿入されて、アブレーションの所望の部位に位置決めされ、適切な圧力値が得られるまで膨張させられる。膨張させられたバルーンの直径が定められ、その直径に拡張することができるバルーンを有する本発明のアブレーション装置が、治療での使用のために選定される。本発明の方法では、例えばバルーンのような拡張可能な電気伝導性の部材を、動脈,毛細血管あるいは細静脈の血管を含む粘膜下層の血管系を塞ぐまで、十分に拡張させることが望ましい。
【0062】
方法の他の実施形態では、肥満手術によって形成された胃腸の特徴部分の内腔の対象領域を測定するのに電子的な手段が用いられ、対象組織の表面領域に対してエネルギーが適切に標準化される。この方法のこれらの態様は、「変化する大きさの管腔組織表面へのアブレーション・エネルギー伝達を標準化するための電気的手段」と題された、2008年6月20日に出願され、その全体がここに組み入れられる、Wallance等の米国特許出願第12/143,404号に詳しく記載されている。
【0063】
図6に示される拡張可能な部材によって治療上の接触を達成するために対象領域に対して押し付けることができる完全に周状のアブレーション面を備えたアブレーション装置の代表的な具体例に加えて、他の代表的な具体例が
図57Aから
図57D並びに
図58A及び
図58Bに与えられている。
図57Aから
図57Dに示された具体例は、「変化する大きさの管腔組織表面へのアブレーション・エネルギー伝達を標準化するための電気的手段」と題された、2008年6月20日に出願され、その全体がここに組み入れられる、Wallance等の米国特許出願第12/143,404号に詳しく記載されている。360度のアブレーション面を備えた装置の具体例が、前記の出願に詳しく記載され、また、本出願の
図57Aから
図57Dに示されている。圧力検知手段は、米国特許公開第2006/0095032号として公開された Jacksonの米国特許出願第11/244,385号に記載されているように、アブレーション治療の準備において管腔の大きさを測定するのに用いられる。
【0064】
Wallance等の米国特許出願第12/143,404号に開示された装置の具体例が、支持体の周縁内に閉じ込められたバルーンに従って膨張する重なり合った支持体上に配置された360度のアブレーション面を与えるために、ここに簡潔に説明される。
装置の周縁は全体としてバルーンと共に拡張しているが、アブレーション面自体は非膨張であり、その電極密度を維持している。
図57Aから
図57Dは、拡張可能なバルーンの回りに巻き付けられて重なり合う(overlapping)電極支持体を備えたアブレーション装置の斜視図である。例えば無線周波数電極のようなアブレーション・エネルギー供給要素101の配列が、電極支持体の外側表面上に配置されている。操作要素(operative element)がアブレーション・カテーテルの遠位端部に取り付けられ、その軸41の遠位部分が視認され、その回りにバルーン105が構成されている。
図57Aは、支持体の一部分および内側縁部(エッジ:edge)362がバルーンに接着され、他の部分およびその外側エッジ部364はバルーンに結合されていないことを明瞭に示すために、バルーン105から引き出されている電極支持体360を示している。
図57Bは、展開可能な形態でバルーン105の回りに巻き付けられた電極支持体360の非接着部分を示し、該非接着部分および接着部分の回りに重なり合っているそのエッジ部を示している。
図57Cは、装置100Aの随意的な特徴、電極支持体360に巻き付けられた一つ若しくはそれ以上のより弾性に富んだバンド(band)380を示している。
幾つかの実施形態では、弾性に富んだバンドの材料は、以下により詳しく説明されるように、操作要素の拡張の程度に関する情報を与えるサイズ検知回路に含まれ得る導電性エラストマーである。
図57Dは、バルーン部分が非膨張(又は収縮させた)状態で、折り畳まれた状態にある
図57Cの装置を示しており、この状態は、装置が管腔内に配備され、目標部位に位置決めされるときの装置の状態だけでなく、アブレーション・エネルギーを供給した後で管腔から取り出される状態である。
【0065】
完全に周状のアブレーション面を備えたアブレーション装置の他の実施形態が、
図58A及び
図58Bに与えられている。この特定の装置の具体例400は、例えば、胃の空洞の遠位部分や、スイカ胃に典型的な血管病変の部位である幽門(pylorus)のような、窪んだ或いは内方へ向かって傾斜が付けられた目標部位へアブレーション面を存在せしめるのに適用される。この装置は、拡張可能部材105の遠位部分に周状に配置されたアブレーション面を含み、この拡張可能部材は、内視鏡111の軸の遠位端部110の回りに取り付けられている。
図58は、展開形態にある装置を示している。
図58Bは、目標のテーパ面への装置の配備に好適なように、或いはアブレーション部位からの装置の除去に好適なように、拡張可能部材が拡張されないか萎んだ状態にある装置を示している。例えば幽門9のような、傾斜が付けられた或いは窪んだ目標部位へ配備することができる、
図58Aの装置を示している。
図58Dは、近位側に面するように、そして、例えば低部食道括約筋10のような、傾斜が付けられた或いは窪んだ部位へ向かって逆行して引き上げることができるように、逆向きにした装置の面を担持した電極を備えた、代替的な形態での
図58Aの装置を示している。
【0066】
<組織の表面領域を横切るアブレーション・パターンの電極のパターン及び制御>
用いるアブレーション装置および方法の幾つかの実施形態の態様が、アブレーション構造上に在る電極パターンに特に注目して説明される。使用される装置が、
図5から
図7に模式的に示されている。
図6に示されているように、完全に周状のアブレーション面を備えた装置100の伸長した柔軟な軸41は、多極ピン(multi-pin)電気コネクタ94に接続されている。このコネクタは、電源に接続され、また、拡張可能部材を拡張させるのに有用な流体源に取り付けるための雄型ルーア(luer)コネクタ96を含んでいる。伸長した柔軟な軸は、周の回りに巻き付けられた電極98を有している。
図5及び
図6に示された拡張可能部材は、3つの異なる電極パターンを含んでおり、そのパターンは
図7Aから
図7Cにより詳しく表されている。典型的には、本発明の装置では唯一つの電極パターンが用いられるが、一つよりも多い電極パターンも含まれることができる。
図5に示された装置では、伸長した柔軟な軸41は、軸の一端で約2ミリメートルの分離(セパレーション:separation)を伴った6つの双極リング62(第1の電極パターン)を備え、この双極リングに近接して、約1ミリメートルのセパレーションを伴って6つの単極のバンド(band)若しくは長方形65(第2の電極パターン)を備え、更に、軸の他端には、軸方向に組み合わされた今一つのパターンの双極フィンガー(finger)電極68(第3の電極パターン)が位置している。この装置では、単極バンドの最後のものと双極の軸方向の電極との間に、ゼロ空間(null-space)が位置している。この研究で用いられるカテーテルは、銅を被覆した約1ミル(mil:0.001インチ)の厚さのポリイミド(polyimide)製の平坦なシートを用いて用意されたものである。所望の電極パターンが、銅中にエッチングされた。
【0067】
代替的な電極パターンが、
図8Aから
図8Dにおいて、それぞれ符号80,84,88及び92として示されている。パターン80は、約0.3ミリメートルのセパレーションを伴った、軸方向に組み合わされた双極フィンガー電極のパターンである。パターン84は、0.3ミリメートルのセパレーションを伴った単極バンドを含んでいる。パターン88は、約0.25ミリメートルのセパレーションを伴った、波状電極のパターンにおける電極のパターンである。パターン92は、約0.3ミリメートルのセパレーションを伴った、双極リングを含んでいる。
この場合、電極は約18ミリメートルの直径を有するバルーンの外側表面に取り付けられている。装置は、
図5に示されているように、電極を電源に接続するためにワイヤを電極に取り付けることにより、無線周波数を利用するのに適合することができる。
【0068】
前述の電極配列の形態は、完全な360度のアブレーション面を備えたアブレーション構造に関連して説明されたが、かかるパターン或いはその変形は、完全に周状よりも小さい面を横切ってエネルギーを供給するアブレーション構造、構造的には、例えば360度よりも小さい周面のどんな部分でも融徐する(アブレーションする)、若しくは、約90度または約180度の範囲にわたってアブレーションする構造、にも適用することができる。
【0069】
ここで提供されたアブレーション・システムの実施形態は、概して、アブレーション支持構造の表面上に実質的に平坦な電極パターンを有するものとして特徴付けられ、それがアブレーションを施す組織について非浸透である。電極パターンは、管腔器官の実質的な放射状の態様を備えた、連続した治療領域を形成する;この領域は、電気フィラメント,フィラメント・スプレー或いは単一ワイヤによって残されるアブレーション・パターンとは区別される。
本発明の幾つかの実施形態では、放射状の部分は完全に周状であってもよい;本発明の実施形態によってアブレーションが施される管腔器官の放射状部分は、(1)胃の場合には比較的大きく小腸または肛門内の領域の場合には小さい、器官の周囲と、(2)電極パターンの寸法との組み合わせの関数である。従って、上限では、治療領域の放射状の拡がりは、360度くらいに大きく、また、胃内の治療領域の場合にあり得るように、約5度から10度くらいに小さい。
【0070】
アブレーション・エネルギーの供給システム及び供給方法の実施形態は、また、対象組織について非浸透であることによって特徴付けられる。アブレーション無線周波数エネルギーは、本出願の他の場所で記載されたように、フラットな電極パターンが治療領域の組織表面と治療上の接触をするときに、当該電極パターンから供給される;そして、この表面接触のポイントから、エネルギーが、下に在る組織層に向かって内方へ直接に供給される。
【0071】
ここで提供されたアブレーション・システム及び方法の幾つかの実施形態は、更に、部分的または分割した(フラクショナル:fractional)アブレーションを成し遂げるように構成された電極パターンによって特徴付けることができ、その結果、組織表面の一部分のみがアブレーションを達成するに十分な無線周波数エネルギーを受け、組織表面の他の部分はアブレーションを達成するには不十分なエネルギーしか受けない。このシステム及び方法は、更に、組織表面から内方への無線周波数エネルギーの供給を制御するように構成されることができ、その結果、アブレーションに十分なエネルギーが供給される組織層の深さが制御される。
【0072】
アブレーションが施される組織表面の対象領域の小部分(フラクション:fraction)を制御することは、少なくとも或る程度、組織の或る小部分をアブレーションされるようにし、治療から表れる対象領域内の表面の或る小部分は実質的にアブレーションを受けないようにする、ことを含む。アブレーションされた表面とアブレーションされない表面の比率を制御する機能は、治療にとって有益である。
本発明の実施形態に従えば、アブレーション的な治療は、血管組織にアブレーションを施し、周囲の組織に対して、最小限の影響、或いは回復可能なつまり一時的な影響しか与えないこと、目指している。従って、望まれるのは、器官やその特定の層を実質的に損傷させることなく、治療効果の程度の変化がもたらされる、良好に制御され調節されたアブレーションである。他の言い方で述べれば、対象とされる血管組織がその中に位置する器官の健全性のためには、そして、個人全体としての健全性のためには、アブレーションの後に、ある程度の通常の機能が周囲組織および介在する組織内に残っていることが、概して望ましい。
【0073】
血管細胞を含む対象領域内の細胞の分割したアブレーションを含む方法の血管組織に対する影響については、ある程度まで、分割アブレーションは、完全なアブレーションと同じくらい機能的には効果があり得る。
血管細胞、特に、血管を形成する内皮細胞は、樹上性の様式(arboreal manner)で成長する。隔絶された血管系は隔絶された血管系の他の部分と隣接することはないものと、一般に信じられている。従って、分割したアブレーション施術を乗り越えて生き残った血管は、しかし、上流側および下流側の接続とは隔離されたままで、置き去りであり、それにより、生物学的には吸収されることが運命付けられている。
このように、上述の考察により、対象領域内の組織の、特に、血管の対象領域内の組織の、小規模のアブレーションは、急性の又は慢性の出血中の血管を効果的に融徐(アブレーション)でき、しかも、対象領域内の広い範囲で組織を良好で健全な状態のままに有益に残すことができる、ことが理解できる。方法の実施形態は、このように、対象領域内の組織の表面を横切って或る深さまでの、無線周波数エネルギーの供給を制御することを含み、それにより、対象領域内の組織の一部分においてはアブレーションを達成するに十分な無線周波数エネルギーを供給し、しかも、表面の他の部分に対しては、アブレーションを達成するには不十分な無線周波数エネルギーしか供給しない。
【0074】
更に、本発明によって提供され望ましいものについての説明に役立つ実例を与える目的で、アブレーション対象領域が内部にある器官は、対象領域の非血管組織内の細胞集団として評価することができ、その健全性に基づいて、劣悪な状態では、例えば20%の低い閾値の機能能力で、また、最高の状態では100%の機能能力で、働くことができる。
ここで提供されるアブレーション治療の目的は、類推によるこの例の範囲内では、細胞の全集団を機能不全にすることはなく、50%の能力で働くことであってもよい。また、治療の目的は、アブレーション治療後に、集団内の或る小部分を約100%の能力で働く完全機能状態に維持し、或る残りの小部分をより低い範囲の能力で働くように維持することであってもよい。
【0075】
本発明の実施形態によれば、アブレーションされた組織表面対象領域の小部分の制御は、様々の例示的な手法によってもたらされる:例えば、(1)比較的密集していない電極パターンにおいて、間隔を空けた電極パターンの物理的形態によって、(2)比較的密集した電極パターンの、広告掲示板状の手法での、部分的な操作によって、もたらされる。
一般に、電極パターンの物理的形態による小部分のアブレーションの創成は、電極間の或る間隔は十分に近くて、組織にアブレーションを施すに十分な電極間の所定のレベルのエネルギーの伝達を許容し、一方、他の電極間の間隔は、アブレーションを施すに十分なレベルのエネルギーの伝達を許容するに足るほど近くはない、ように電極パターンを構成することを含んでいる。
小部分のアブレーションの創成に対するこの手法を示す例示的な電極パターンの実施形態が、以下に説明され、また、
図48から
図55に描かれている。電極の小集団(サブセット)を作動させることによるアブレーション・パターンの創成は、上述の説明に類似した独創性あるシステム及び方法の作動を表しており、そこでは、全周パターン電極を備えたアブレーション構造が、電極のラジアル方向小部分のみが作動するような方式で作動させることができる。
【0076】
本発明のアブレーション・システムは、ここで数々の実施形態において説明されるように、複数の電極を備えた電極パターンと、この電極パターンを支持する長手方向の支持部材とを含んでいる。エネルギーは発生器(ジェネレータ:generator)から電極に送給され、前記ジェネレータの作動は、当該ジェネレータに連繋したコンピュータ・コントローラによって制御される。このコンピュータ・コントローラは、電極の作動パラメータを制御する。コンピュータ・コントローラは、全ての電極に、若しくは電極のサブセットに、エネルギーを供給するように支持する機能を有している。前記コントローラは、更に、電極が同時に、或いはサブセットにおいて、非同時に駆動されるように、エネルギー供給のタイミングを制御する能力を有している。
更に、他のどこかで説明したように、電極は、単極モードで、双極モードで、或いは多重化モードで作動させられることができる。これら様々の作動方式は、特に、パターン内の電極のサブセットを作動させる目的で、当該パターンが対象表面に治療上の接触をしているときに、対象領域内の組織の一部をアブレーションすることができ、対象領域内の組織の一部はアブレーションされないままにする、パターンの形成を許容する。
【0077】
一般に、比較的密集した電極配列を伴った操作上の手法による分割したアブレーションの創成は、幾つかの電極間に供給されるエネルギーは、アブレーションを行うに十分であり、一方、幾つかの電極間では、アブレーションを行うに十分なエネルギーは供給されないように、電極パターンを操作することを含んでいる。分割したアブレーションを生み出すこの手法を示す例示的な電極パターンの実施形態が、以下に説明され、また、
図48から
図55に描かれている。
【0078】
本発明の実施形態によれば、組織の分割したアブレーション制御の他の態様は、対象領域内の組織の層内へのアブレーションの深さを制御することに関連している。エネルギーは表面から内方へ向かって供給され、従って、エネルギー供給における緩やかな増大でもって、アブレーションのレベルを制御することができる。その結果、例えば、アブレーションされた組織は、上皮層内の組織のみで成るかも知れず、或いは、上皮層および固有層内の組織で成るかも知れず、或いは、上皮層,固有層および粘膜筋層内の組織で成るかも知れず、或いは、上皮層,固有層,粘膜筋層および粘膜下層内の組織で成るかも知れず、或いは、上皮層,固有層,粘膜筋層,粘膜下層および筋固有層内の組織で成るかも知れない。どんな場合でも、アブレーション・エネルギーが、消化管の急性の又は慢性の出血部位の漿膜層に供給されることはない。
【0079】
本発明の実施形態は、所定の単一のアブレーション領域内の組織の小部分をアブレーションするRF電極配列のパターンを含んでおり、典型的な分割した配列のパターンが、
図48A,
図49A及び
図50Aに示されている。これら分割したアブレーション電極の配列は、上述のように、完全に周状の対象領域に注力したアブレーション構造、或いは、例えば90度のラジアル面もしくは180度のラジアル面のような、完全な周状のあらゆる部分に注力したアブレーション構造に適用することができる。
図48Aは、支持面上の縞模様として平行に並んだ直線状の電極60のパターン180を示している。電極は十分に離間しており、治療上の接触状態で組織に対して押し付けられると、電極を通じたエネルギーの分配によって残った熱傷は、
図48Bに見られるように、対象組織上に縞模様のパターンを呈する。
図48Bは、この電極パターンに対応するもので、火傷していない、つまり実質的に影響を受けていない組織3bと交互に生じる、火傷した、つまりアブレーションされた組織3aの縞模様がある。
本方法の幾つかの実施形態では、例えば、管腔の内周の約180度の対象表面、特に、約90度の対象表面のような、360度のラジアル角度よりも小さい対象領域、に注力したアブレーション構造において、異なる角度に位置するアブレーション構造でアブレーションを繰り返すことができる。例えば、
図48Cは、最初のアブレーション事象の後に、アブレーション構造が水平面内で約90度だけ回転した後で、第2のアブレーション事象が続くことによって創りだされる、組織熱傷パターン191を描いている。今一つの例として、
図48Dは、最初のアブレーション事象の後に、アブレーション構造が水平面内で約45度だけ回転した後で、第2のアブレーション事象が続くことによって創り出される、組織熱傷パターン192を描いている。
【0080】
この方法で組織表面をアブレーションする能力の効果は、分配される全エネルギーのようなパラメータを越えて、組織のアブレーション全体にわたって別のレベルの精細な制御と、組織のアブレーションの深さとを、付け加える。分割されたアブレーションによって、特に、
図48C及び
図48Dにおいて説明したように、繰り返しアブレーションと結び付けられたときの分割アブレーションによってもたらされる制御のレベルは、どの程度であれ局部的な最大のアブレーション・レベルが存する、組織の小部分が分布した表面領域を調整する。
かかる分割した電極パターンによってもたらされる分割アブレーションは、アブレーションの効果が完全で全部であることが意図されておらず、組織の、或いは組織内の細胞の、機能的な妥協が望まれている場合には、特に有益である。従って、幾つかの治療上の例では、対象領域の全体機能の全体的な損失よりも、対象領域の全体機能における部分的な低下が、好ましい結果であるかも知れない。例えば、消化管の急性の又は慢性の出血部位の壁部での対象領域の分割アブレーションにおいては、好ましい結果とは、例えば、非血管組織についての一時的な妥協であるかも知れない。火傷した領域3aと火傷していない領域3bとを含むアブレーション・パターンにおいては、火傷していない領域からの細胞が、火傷した領域内の露出部分に移動し又は定着する細胞を生じせしめ得ることが、理解されるべきである。
【0081】
図49A及び
図50Aは、分割してアブレーションを施すアブレーション構造上の電極パターンの他の例を描いており、
図49B及び
図50Bは、これらの電極パターンで治療された組織上のそれぞれの分割された熱傷パターンを示している。
図49Aでは、(中心から外側に向かって)+−−++−パターンを形成するワイヤ電極により、同心円状のパターン182が形成されている。作動させられると、+−電極間の組織が焼かれ、++電極対間の組織または−−電極対間の組織は焼かれることはない。従って、
図49Bの同心円状のパターン192が形成される。
図49Aにおけるもののような、分割してアブレーションを施す電極パターンの実施形態は、完全な円形を含むことは必要なく、また、円形(不完全な円形または楕円形)は、その共通の中心の周りに完全に同心状である必要もない。
【0082】
同様に、
図50Aは、作動させられると
図50Bに見られるような熱傷パターン194を創り出す、+及び−電極の格子状パターン184を示している。隣り合う+及び−電極間に在る組織が焼かれ、隣り合う++電極対間または−−電極対間に在る組織は焼かれないままである。
図50Bは、焼かれた領域3aと実質的に焼かれずに残っている領域3bとの相対位置を明瞭化するために、アブレーション構造からからの+及び−電極の位置の表現を含んでいる。
【0083】
本発明の実施形態は、操作的な手法により、所定の単一のアブレーション領域内の組織の小部分をアブレーションするRF電極配列のパターンを含んでおり、それにより、アブレーション事象が対象領域上に生じている間は、パターンの或る電極が作動させられ、或る電極は作動させることがない。典型的な分割した配列が、
図51A,
図52A,
図53A及び
図54Aに示されている。これら分割したアブレーション電極の配列は、上述のように、完全に周状の対象領域に注力したアブレーション構造、或いは、例えば90度のラジアル面もしくは180度のラジアル面のような、完全な周状のあらゆる部分に注力したアブレーション構造に適用することができる。
【0084】
図51Aは、各電極を取り囲む閃光線(sparkle line)によって描かれたように、作動パターン186Aの全ての電極正方形が作動しているアブレーション事象の期間中の格子状電極パターンを示している。電極パターン186Aをこの様式で作動させることは、
図51Bに見られるように、治療領域内の組織の全表面がアブレーションを施される組織3aである、アブレーション・パターン196Aを創り出す。
一方、
図52Aは、各作動する電極を取り囲む閃光線によって描かれたように、作動パターン186Bの一つおきの電極正方形のみが作動しているアブレーション事象の期間中の格子状電極パターンを示している。電極パターン186Bをこの様式で作動させることは、
図52Bに見られるような、アブレーション・パターン196Bを創り出し、そこでは、アブレーションされた正方形の組織3aの分散したパターンが、アブレーションされない組織3bの正方形領域と交互に表れる、格子状の、分割してアブレーションされたパターンである。
【0085】
図53Aは、各直線状電極を取り囲む閃光線によって描かれたように、作動パターン188Aの全ての電極の正方形が作動しているアブレーション事象の期間中の交番的な+及び−電極の縞模様の直線状電極パターンを示している。電極パターン188Aをこの様式で作動させることは、
図53Bに見られるような、アブレーション・パターン198Aを創り出し、そこでは、治療領域内の組織の全ての表面がアブレーションされる組織3aである。
【0086】
一方、
図54Aは、作動する直線状電極を取り囲む閃光線によって描かれたように、直線状の電極対の交番的な電極対が作動しているアブレーション事象の期間中の交番的な+及び−電極の縞模様の直線状電極パターン188Bを示している。電極パターン188Bをこの様式で作動させることは、
図54Bに見られるような、アブレーション・パターン198Bを創り出し、そこでは、治療領域内のアブレーションされた組織の縞模様がが、アブレーションされない組織3bの縞模様と交互に表れる。
【0087】
図55は、急性の又は慢性の出血部位での消化管のラジアル部分(radial portion)の目標領域を、本発明の実施形態に従ったアブレーション治療の後の状態で示す、模式的に表現した3次元の図である。アブレーションされた区域3aは、非アブレーション組織3bの広い海(sea)部分内の対象領域を通じて分布した区域として表現されている。この模式図では、これらの区域は、僅かに円錐状の部分として描かれているが、実際には、アブレーションされた区域は、より円柱状の形状であるかも知れない。
区域3aは、ここで説明されるように、消化管の壁部の層内へアブレーション領域の深さにわたって作用する制御により、略同じ深さである。このような制御でもって、区域3aは、アブレーション・エネルギーが加えられた上側表面から当該区域が連続的に伸びる層に関して変化することができる。円錐状の区域は、略同じ幅つまり直径のもので、ここで説明されるように、アブレーション面の領域にわたる制御により、組織全体にわたって均一に分布している。
この特定の例では、治療上の対象は、実際には、特定のタイプの細胞4b(空白の(open)不規則な球体)、例えば、神経細胞または内分泌腺の分泌細胞であり;これらの細胞は対象領域全体にわたって分布している。アブレーション治療後の対象細胞4a(色の濃い(dark)不規則な球体)は、たまたまアブレーションされた円錐状区域3a内に包含されていたものである。アブレーション後の細胞4aは、多かれ少なかれ機能不全にされているかも知れず、完全に機能不全であるかも知れず、ある程度だけ、単に説明上の例示のために平均で50%だけ、機能的であるかも知れず、また、その機能性が特定の範囲にわたって変動するかも知れない。しかしながら、本発明の実施形態によれば、アブレーションされた組織の円錐体内に含まれていない細胞4bは完全に機能的であることが、評価されるべきである。
【0088】
<アブレーション効果の組織深さの観点からのアブレーション制御>
アブレーションの表面領域分布を制御することに加えて、上述のような分割したアブレーション電極の使用によって達成されるように、或いは、電極寸法の表面領域によって制御されるように、アブレーション構造が組織と治療上の接触を行う組織表面のレベル以下でのアブレーションの深さに関して、アブレーションを制御することができる。
組織内の深さに関して制御されたアブレーションを提供するに適切なエネルギー供給パラメータは、実験的に定めることができる。電極駆動の電気的なパラメータと食道組織において結果として得られるアブレーションのレベルとの関係を理解するために、例として、正常な若い豚に対して実験的な一式の練習(exercise)が実行された。そのデータは、2003年2月19日に出願されたGanz等の米国特許出願第10/370,645号に、また、2003年8月21日に刊行の、その出願の米国特許出願公開第2003/0158550 A1号に、特に、当該出願の表1−4に、詳しく示されている。
このような手法により、消化管の急性の又は慢性の出血部位内の他の組織のアブレーションに対する適切なパラメータを定めることができる。食道組織を指向した、360度の作動面を備えたアブレーション構造上のアブレーション電極パターンによって適用されるパラメータは、例として、緻密な間隔の双極の電極配列(250ミクロン未満)で、300ミリ秒以内に供給される300Wを含んでいる。8−12J/cm
2で供給されるエネルギー密度に関係したアブレーション深さは、上皮の完全な除去をもたらす。
約90度の作動ラジアル面を備えたアブレーション構造上のアブレーション電極パターンによって適用されるパラメータは、250ミクロン幅の間隔の多数の狭いバンド状の電極を含んでおり、そこでは、ジェネレータが、12−15J/cm
2のエネルギー投与量で、40W/cmsの非常に高い電力エネルギー密度を供給する。一般に、深さ変化は、アブレーション時間,エネルギー投与量,エネルギー適用の回数および電極間隔によって達成される。
【0089】
図25は、例えば、食道,胃,幽門,十二指腸および腔腸などの、様々な内腔器官で発見されるように、急性の又は慢性の出血部位での消化管の組織構造の模式的な表現を提供している。
図25に示された層の相対的な存在感および深さおよび構成は、器官によって変化するが、基本的な構造は同様である。
消化管の急性の又は慢性の出血部位の層は、消化管の急性の又は慢性の出血している管腔の部位に面する、最内側から最外側の順に;また、
図25に見られるように、そして、アブレーション構造が組織に近付く方向の観点から、記載されている。最内側の層は表面(上皮組織)と呼ぶことができ、後続する層は、「それより上側の」層の下方または下側に在ることが理解され得る。
消化管を通って移動するときに、直接に栄養素および加工栄養物と直接に接触する層である、急性の又は慢性の出血部位での消化管の最内側層は、上皮組織12の層である。この層は、摩耗から、及び酸性環境の腐食効果に対して、管腔を保護する粘液を分泌する。上皮組織の下側は固有層13として知られる層であり、その下側は粘膜筋層14として知られる層である。上皮組織12,固有層13及び粘膜筋層14は、全部合わさって粘膜15を構成している。
【0090】
粘膜層15の下側は、上側の粘膜層15と下側の筋固有層17との間の分離境界を形成する粘膜下層16である。筋固有層17は、斜めの,円形の及び長手方向の層を含む、器官を様々な方位にて包む平滑筋の様々な異なった層を含んでいる。この筋固有層17を包むのは、器官の外側境界となる漿膜18である。
【0091】
消化管壁の全体は、非常に血管性であり神経が分布している。粘膜層は、また、分泌腺、並びに、管腔内に内容物を分泌し血流内にホルモンを分泌する細胞が豊富である。血管系,外分泌腺細胞,内分泌腺細胞および神経細胞を含む、これらの細胞は全て、アブレーション・エネルギーが、それらが存在する区域に指向させられるときには、アブレーションの潜在的な対象となる。エネルギーを受ける結果、細胞は、殺されるか、もはや機能が無くなる程度にまで損傷させられるか、或いは、ある程度の機能を残して部分的にダメージを受ける。
更に、これらの細胞は全て集団内部にあり、部分的なアブレーションは、集団のある細胞は除去あるいは救済の見込みが無いほどに損傷を受け、ある細胞は実質的に絵影響を受けないで完全な機能性を維持したままである、ダメージの統計的分布を明らかにする、ことが理解されるべきである。このような部分的つまり分割されたアブレーション事象においては、治療上のアブレーションの後の機能の残留レベルは、機能および機能不全の範囲を含むかもしれない。
【0092】
本発明の実施形態によって与えられるように、消化管の急性の又は慢性の出血部位での壁部細胞に適用されるアブレーションは、深さ制御することができ、その結果、上皮組織12のみが、若しくは粘膜層のみが、アブレーションされ、より深い層は実質的に影響されないままになる。他の実施形態では、アブレーションされた細胞は、上皮組織で始まり、更に、所望の治療効果を達成するに必要であれば、粘膜下層内へ、また場合によっては、筋固有層内にまで、より深く広がる。
【0093】
<部分的に周状のアブレーションのための装置および方法>
急性の又は慢性の出血部位の消化管の組織にアブレーションを施す方法の或る実施形態は、
図24に示されているように、従来の内視鏡111によって支持されたアブレーション構造を備えたアブレーション装置の使用を含んでいる。ここで説明されるように、特に、アブレーション装置および方法の実施形態によるアブレーションの対象とされた組織は、従って、急性の又は慢性の出血部位での消化管の壁部上にある。
商業的に利用可能な従来の内視鏡111の一例は、オリンパス(Olympus)社の「胃ビデオ内視鏡(gastrovideoscope)」型式番号GIF-Q160である。特定の商業的に利用可能な内視鏡の特殊な構造は違うかもしれないが、殆どの内視鏡は、
図24に示すように、操縦可能な遠位端部110を有する軸部164と、ハブ若しくはハンドル部162とを含んでおり、該ハンドル部は、ビデオ画面160への接続用の視覚チャンネル(visual channel)と、軸部164内部の内部作動チャンネル内へのアクセスを与えるポート部(port)166とを含んでいる。内視鏡の技術分野で良く知られているように、オペレータが内視鏡111の遠位端部110を選択的に操縦することができるように、ハンドル部162には、通常、ダイアル,レバー若しくはその他の機構(不図示)が設けられることであろう。
本発明によれば、アブレーション構造を含めてアブレーション装置は、内視鏡の遠位端部で支持されながら、消化管内を急性の又は慢性の出血部位に向かって前進させられる。アブレーション構造は組織表面の方に偏向可能であり、また、アブレーション構造は組織表面にアブレーションを施すために作動させられる。
急性の又は慢性の出血部位での消化管内では、様々の大きさの組織表面部分が、当該装置を用いてアブレーションを施される。更に説明されるように、本節で説明される実施形態のアブレーション構造は、完全な360度を囲むものではなく、以下で更に説明されるように、360度の一部分を囲むもんである。
【0094】
概して言えば、或る態様では、急性の又は慢性の出血部位の消化管の組織にアブレーションを施す方法が提供される。この方法は、アブレーション構造を内視鏡の遠位端部で支持しながら、当該アブレーション構造を急性の又は慢性の出血部位での消化管内に前進させることを含んでいる。或る実施形態では、消化管の急性の又は慢性の出血部位へのアブレーション構造の前進は、治療上の接触を達成するために十分な近位に近づくように装置のアブレーション構造を位置させれば十分であるかもしれない。
他の実施形態では、適切なレベルの治療上の接触を達成するために、その後に続くステップが実行されるかも知れない。この随意的なステップは、一般に、アブレーション構造を対象部位へ向かって移動させることとして理解される。このように、前記方法は、アブレーション構造の少なくとも一部を、内視鏡に関して、また、組織表面に向かって移動させることと;組織表面に対してアブレーションを施すために、アブレーション構造を作動させることとを更に含んでいるかも知れない。
アブレーション構造の少なくとも一部を内視鏡に関して移動させることは、当該内視鏡に沿って、内視鏡の方に向かう動作、或いは内視鏡から離間する動作を含み得る。アブレーション構造を対象組織表面に向かって移動させることは、当該構造に特有な方法で実行することができる。例えば、バルーン部材を膨張させることにより、デフレクション部材を拡張させることにより、或いはデフレクション部材を移動させることにより、当該構造を移動させることができる。
このような動作の機能は、アブレーション構造と対象部位との間に治療上有効な接触を確立することである。前記の治療上有効な接触は、実質的で一様な接触を含んでおり、電極からの放射発散の高度に制御された電気的なパラメータが、同様に高度に制御された組織のアブレーションをもたらす。
本発明の幾つかの実施形態は、一旦確立されたかかる治療上有効な接触を固定(ロック:lock)し、又は拘束するための構造および方法を、更に含んでいる。従って、これら幾つかの実施形態は、例えば、アブレーション構造と組織部位との間の結合を固定するための吸引力を用いる、位置固定ステップを含んでいる。
【0095】
図9,
図10,
図11及び
図26に示されているように、急性の又は慢性の出血部位での消化管内の組織にアブレーションを施す方法の一つの態様は、組織表面3にアブレーションを施すためのアブレーション装置100を含んでおり、この装置100は、例えば内視鏡111によって支持されたアブレーション構造101などのアブレーション構造を含んでいる。
当該方法は、(1)アブレーション構造101を管腔器官内へ前進させるステップ;(2)アブレーション構造101を組織表面3に向かって撓ませるステップ;及び(3)組織表面3にアブレーションを施すためにアブレーション構造を作動させるステップにより、急性の又は慢性の出血部位での消化管の管腔器官の壁部内の組織にアブレーションを施すことを含んでいる。
図9に示されているように、装置100は、ハウジング107と、電気的接続体109と、膨張ライン113と、膨張部材つまりバルーン105と、を追加的に備えることができる。
【0096】
或る実施形態では、アブレーション構造101は、消化管の急性の又は慢性の出血部位での器官の壁部の粘膜層に、無線周波数エネルギーを含むエネルギーを供給するように、構成され配置された電極構造である。このようなアブレーション構造101は、複数の電極を含み得ることが想定される。例えば、2つ若しくはそれ以上の電極が、アブレーション構造の一部であるかも知れない。
筋層組織は実質的に保護する一方で、粘膜層または粘膜下層レベルの組織のアブレーションを達成するために、或いは、代替的に、これら組織に治療上の損傷を生じさせるために、適切なレベルでエネルギーを供給することができる。ここでは、用語「アブレーション」は、一般に、当該組織の特性である機能の喪失または組織の壊死の何らかを生じさせる熱的被害(ダメージ:damage)を指すものとして、使用される。前記熱的ダメージは、組織の加熱または組織の冷却(つまり冷凍)を通じて達成することができる。
【0097】
本発明の実施形態によって与えられるように、無線周波数エネルギーは、アブレーション用エネルギーの一つの特定の形態であるけれども、他の実施形態は、例えば、マイクロ波エネルギー,おそらくは改良された感作物質(sensitizing agent)と組み合わせられる赤外線もしくは紫外線のような光または放射源を含む、他のエネルギー形態を利用するかも知れない。フォトニック源(photonic source)は、半導体エミッタ(emitter),レーザ及び他のこのような源を含むことができる。光エネルギーは、平行にされてもよく、或いは非平行でもよい。
本発明の他の実施形態は、アブレーション・エネルギー媒体として、加熱可能な流体、または代替的に、冷却媒体を利用するかも知れず、この冷却媒体は、液体窒素,フレオン(登録商標),非CFC冷媒,CO
2又はN
2Oなどのような、非制限的な例を含むものである。温かい又は冷たい流体もしくは気体を用いるアブレーションのために、アブレーション・システムは、患者の外部から加熱/冷却バルーン又は他の要素に加熱/冷却媒体を循環させ、その後、患者の外部へ再び戻す、装置を含むことができる。
冷凍手術プローブにおいて媒体を循環させる機構は、アブレーションの分野では良く知られている。例えば、好適な循環機構が、Dobakに付与された米国特許第6,182,666号,Dobakに付与された米国特許第6,193,644号,Liに付与された米国特許第6,237,355号およびKovalcheckに付与された米国特許第6,572,610号に開示されており、それらは引用することにより、ここに組み入れられる。
【0098】
或る特定の実施形態では、消化管の急性の又は慢性の出血部位での器官の壁部に供給されるエネルギーは、エネルギー供給装置100から供給することができる無線周波数エネルギーを含んでいる。無線周波数エネルギーは、数多くの方法で供給することができる。典型的には、無線周波数エネルギーは、アブレーション構造101上に位置する双極配列の電極から、双極式に供給される。ある場合には、例えば、バルーン(balloon),フレーム(frame),ケージ(cage)などの膨張可能な構造であって、電極と対象組織との間の制御されたレベルの治療上の接触(例えば、直接の接触を介しての、或いは誘電性の膜もしくは他の層を介しての接触)を確立するために、粘膜組織に対し直接に又は直ぐ近接して膨張し展開配置することができる構造上に位置する電極から供給される。
代替的には、電極構造は、典型的には、患者の皮膚上、例えば背中の窪み上に位置した対極板と組み合わされた無線周波数電力供給によって電圧が加えられる、単極性の電極構造を含んでいてもよい。
どんな場合でも、筋層組織を実質的に加熱することなく、そうでなければダメージを及ぼすことなく、粘膜層または粘膜下層レベルの組織のみを、損傷させ又はアブレーションを施すために、無線周波数エネルギーは典型的には、非常に短い期間にわたって高いエネルギー束で供給される。アブレーション構造が複数の電極を含む実施形態では、1つ若しくはそれ以上の電極が双極性または単極性であり、幾つかの実施形態では、双極性と単極性の電極の組み合わせを含んでいる。
【0099】
アブレーション構造101は、形状および大きさに関して、数多くの方法の如何なる方法ででも構成され配置されることができる。典型的には、配列が、約0.5cm
2から約9.0cm
2の範囲の面積を有している。典型的な形状は、長方形,円形および楕円形を含むことであろう。或る実施形態では、アブレーション構造は、約4cm
2の面積と、約2cm×2cmの寸法とを有している。
【0100】
アブレーション装置100のハウジング107は、アブレーション構造101を支持するように構成され配置されている。前記ハウジング107は、アブレーション構造101によって創り出される高いエネルギー束に耐えるものであれば、あらゆる好適な材料で製作することができる。
図9から
図14,
図17,
図18,
図21及び
図22に示されているように、或る実施形態では、ハウジング107は、アブレーション装置100が内視鏡111によって支持されているときには、アブレーション構造と内視鏡111との間に挟まれている。アブレーション構造101の一端は、対象組織(不図示)との接触の容易性を向上させるために、他端よりも内視鏡から更に離間することができる。例えば、アブレーション構造101の近位端部が対象組織と接触することを確かなものとするために、電極の近位端部が、傾斜付けられたハウジング部材107によって支持されてもよい。
【0101】
アブレーション装置の電気的な接続体109は、アブレーション構造101を電源に接続させる。前記電気的な接続体109は、アブレーション構造101を介して制御されたエネルギー供給をもたらすために、必要に応じて、単一のワイヤ又は複数のワイヤを含むことができる。或る実施形態では、電気的な接続体109は、例えばリッツ線(litz wire)のような低電気損失のワイヤを含んでいる。
【0102】
膨張ライン113は、拡張媒体を、典型的には好適な流体もしくは気体を、膨張部材へ輸送し、また膨張部材から輸送するように、構成され配置されている。或る実施形態では、膨張ラインは可撓性のチューブ(flexible tube)である。前記膨張ライン113は、重合体(ポリマー:polymer)又は共重合体、例えば、非制限的な例である、ポリイミド,ポリウレタン,ポリエチレン・テレフタレート(PET),或いはポリアミド(ナイロン)などによって、製作することができる。
膨張部材105は、対象組織表面3に関して、アブレーション装置100を撓ませるように設計されている。この膨張部材105は、大きくなった外形輪郭へ可逆的に拡張されることができる。
【0103】
或る実施形態では、膨張部材105は、更に、内視鏡111によるアブレーション装置100の支持のための取付部分としての役割を果たしている。
図9から
図14,
図17,
図18,
図21及び
図22に示されているように、膨張部材105は、拡張媒体を用いて、小さい外形輪郭の形態もしくは構造(
図10及び
図20参照)から大きくなった外形輪郭の形態もしくは構造(
図11から
図14,
図17から
図194参照)へ展開されることができる。アブレーションの準備をする際には、膨張部材105が十分に膨張させられたときに、アブレーション装置100の組織表面3に関しての撓みを達成することができる。
図11,
図31,
図42及び
図44に示されているように、或る実施形態では、装置100の撓みは、アブレーション構造101と対象組織表面3との間の治療的レベルの接触、すなわち、実質的に直接的で一様かつ持続可能な接触をもたらす。例えば、
図31,
図42及び
図44に示されているように、膨張部材105が十分に膨張させられると、その結果得られる膨張部材105の外形輪郭は、組織表面3に接触し、消化管の急性の又は慢性の出血部位での管腔器官の内壁とアブレーション構造100との間に、撓みによる接触をもたらす。
これらの実施形態では、アブレーション構造101と組織表面3との間の接触を達成するために、膨張部材105と組み合わせて吸引を適用することができる。吸引は、内視鏡111を介して、或いはアブレーション装置を介して、達成することができ、アブレーション構造101周りの対象組織表面3を潰すのに役立つ。
【0104】
様々な実施形態において、膨張部材105は、柔軟,非柔軟もしくは半ば柔軟であってもよい。膨張部材105は、例えば、非制限的な例である、ポリイミド,ポリウレタン或いはポリエチレン・テレフタレート(PET)などの重合体(ポリマー:polymer)のような材料で作られた、薄い可撓性の空気袋で製作することができる。
或る実施形態では、膨張部材は風船体(バルーン)である。膨張部材105の膨張は、例えば、流体または気体の拡張媒体の制御された供給を用いる膨張ライン113を介して達成することができる。拡張媒体としては、例えば空気のような、圧縮性の気体状媒体を含むことができる。代替的には、拡張媒体は、例えば水や食塩水のような、非圧縮性の媒体を含むことができる。
【0105】
図12,
図13及び
図14に示されているように、膨張部材105は、組織表面3に関してアブレーション装置100の撓みを容易にするために、様々のやり方で構成され配置されることができる。例えば、
図12に示されているように、膨張部材105は、ハウジング107及びアブレーション構造101に関すると同様に、支持している内視鏡111に関して、偏芯して位置することができる。この代わりに、例えば
図13にしめされるように、膨張部材105は、支持している内視鏡111に関して同芯状に位置することができ、アブレーション構造101は、前記膨張部材105に対し内視鏡111から遠位側に取り付けられることができる。
他の実施形態では、
図12に示されているように、膨張部材105は、支持している内視鏡111とアブレーション構造101との間に位置することができる。
図12から
図14に示されたアブレーション構造101は、膨張部材105が展開配備されたときには、例えば約5度から360度にわたる、内視鏡111の周方向のスパンの範囲をカバーすることができる。
【0106】
消化管の急性の又は慢性の出血部位での管腔器官内の組織にアブレーションを施す或る方法は、消化管の急性の又は慢性の出血部位へアブレーション構造101を進行させる第1ステップを含んでいる。第2ステップでは、アブレーション構造101は、消化管の急性の又は慢性の出血部位で、内視鏡111でもって支持される。第3ステップでは、アブレーション構造101は、組織表面3の方に向かって撓ませられる。第4ステップでは、組織表面3にアブレーションを施すために、アブレーション構造101にエネルギーが加えられる。
【0107】
いま一つの方法においては、内視鏡支持されたアブレーション構造101を進行させるステップは、消化管の急性の又は慢性の出血部位での管腔器官内へ内視鏡111を進行させることと、この内視鏡111を越えてアブレーション構造101を進行させること、を含むことができる。例えば、内視鏡111は、アブレーション対象組織表面3に関して位置することができ、その後に、アブレーション構造101は、対象組織表面3にアブレーションを施すために、内視鏡111の外側を越えて進行させられることができる。
【0108】
更に別の方法においては、内視鏡111でもってアブレーション構造101を支持するステップは、内視鏡111をアブレーション構造101内へ挿入することを含んでいる(例えば、
図1Aから
図2B参照)。或る関連した方法では、アブレーション構造101は、鞘状体(シース:sheath)103によって支持され(
図26から
図26,
図30,
図31,
図32及び
図37参照)、内視鏡111をアブレーション構造101内へ挿入するステップは、内視鏡111を前記シース103内へ挿入することを含んでいる。更に別の関連した方法では、内視鏡111を前記シース103内へ挿入するステップは、当該シース103に開口(不図示)を創ることを含んでいる。
【0109】
或る特定の方法では、シース103の近位部分よりも小さい外径を有する当該シース103の遠位部分が、内視鏡111がその内部へ挿入されるときに拡張させられるように適合させられる。
【0110】
別の方法においては、急性の又は慢性の出血部位での消化管内へアブレーション構造101を進行させるステップは、(
図34A,
図35A及び
図36Aについて、以下で議論されるように)内視鏡の近位端部または遠位端部の何れかから、当該内視鏡111の溝部(チャンネル:channel)を通って、アブレーション構造101を進行させることを含んでいる。
また別の方法においては、アブレーション構造101を支持するステップは、(
図34A,
図35A,
図36A,
図37から
図39について、以下で議論されるように)内視鏡111の溝部でもってアブレーション構造101を支持することを含んでいる。
更なる方法においては、撓み構造もしくは撓み部材150は、内視鏡111の溝部を通って進行させられ、アブレーション構造101を組織表面3の方に向かって撓ませるステップは、撓み構造もしくは撓み部材150でもってアブレーション構造101を撓ませることを含んでいる。
【0111】
図34A,
図35A及び
図36Aに示されているように、様々に適合させられ構成されたアブレーション構造101は、内視鏡の内部作動チャンネル211内に嵌合して、それを通って移送されることができる。各ケースでは、内視鏡111の遠位端部110から出ると半径方向に拡張した第2の形態に拡張することができる、寸法的に小型化された第1の形態において、アブレーション構造101及び不随の撓み機構は、内部作動チャンネル211を通って移送されることができる(例えば、
図34A,
図34B,
図35A,
図35B,
図36A及び
図36B参照)。
【0112】
図34Bに示されているように、或る実施形態では、撓み機構は膨張部材105であり、それに対して、アブレーション構造101は、例えば、エッチング(etching),取り付け又は接着により、一体化されるか又は搭載し/取り付けることができる。膨張部材105は、例えば、柔軟な,非柔軟な又は半ば柔軟なバルーンである。
【0113】
図35B及び
図36Bに示されているように、別の実施形態では、撓み機構は、第2の所望の形態および配置に拡張することができる拡張可能部材209である。
図35Bに示されているように、前記拡張可能部材209は、それに対してアブレーション構造101が搭載または一体化される、拡張可能なステント(stent),フレーム(frame)又はケージ(cage)装置である。
例えば、拡張可能部材209は、ワイヤケージ(wire cage)であり、該ワイヤケージは、アブレーション構造101に特徴をもたらす双極回路の構成部品であってもよい。その代わりに、ケージは、可撓性の電極回路を接着することができ、或いは、電極であるアブレーション構造101を設けるためにケージの外面または内面に取り付けることができる。
図35Bに示されているように、前記拡張可能部材209は、内視鏡111の遠位端部110から出ると拡張する、取り付けられたアブレーション構造101を含む又は有する、折り畳まれた若しくは巻かれた一連の輪状体(フープ:hoop)であってもよい。
【0114】
更に、
図37から
図39に示されているように、アブレーション構造101は、内視鏡111の溝部でもって支持されることができる。
図37から
図39に示されているように、或る実施形態では、アブレーション装置100は、取り付けられたハウジング107及びアブレーション構造101を支持する撓み部材150を含んでいる。
図39に示されているように、内視鏡111は、アブレーション装置100の内部結合機構215に接続された撓み部材150の前進または後退に好適な内部作動チャンネル211を含んでいる。
図37及び
図39は共に、配備位置において撓み部材150の曲がり領域を含んでいる撓み部材150を示しており、前記配備位置では、撓み部材150の曲がり領域は、内視鏡遠位端部110の外部に位置している。
図38は、非配備位置における撓み部材150を示しており、前記非配備位置では、撓み部材150の曲がり領域は、内視鏡111の内部に位置している。
このように、アブレーション構造101は、前記撓み部材150と、アブレーション装置100の接続された内部結合機構215により、内視鏡111の溝部(内視鏡111の内部作動チャンネル211)でもって支持されている。
【0115】
更に、前記撓み部材150が、内視鏡の内部作動チャンネル211内で、進行させられると、つまり近位方向または遠位方向へ移動させられると、従って、当該撓み部材150は、内視鏡111のチャンネル(溝部)を通って進行させられることになる。
他の実施形態では、撓み機構が、膨張ライン113に結合された膨張可能部材105(展開配備された形態で示されている)である
図42に示されているように、前記膨張ライン113は、内視鏡の内部作動チャンネル211内に配置されることができる。
更に他の実行例では、(展開配備されていない形態での)膨張可能部材105及び膨張ライン113の両方は、内視鏡111に関して近位方向または遠位方向の何れの方にも、内部作動チャンネル211内で進行することができる。
図37に示されているように、導電性ワイヤ109は、作動チャンネル(不図示)を介して又は外側を通すことができる。
【0116】
図41に示されているように、別の実行例では、アブレーション・ハウジング107と、アブレーション装置100の内部結合機構215に接続されたアブレーション構造101と、を支持するのに好適な内部作動チャンネル211を含んでいる。このように、接続されたアブレーション構造101は、内視鏡111の溝部内に支持されている。
加えて、
図41に示されているように、ハウジング107及びアブレーション構造101は、内視鏡111の外部領域によって更に支持されることができ、そこでは、内部結合機構215は、ハウジング107を内視鏡111の外部領域と接触状態に位置させるように、適合され構成される。前記内部結合機構215は、流体または空気内で吸引し流すために作動チャンネルの使用を容易にするために、カニューレに挿入されることができる(不図示)。
【0117】
他のアブレーション方法においては、追加的なステップが、消化管の急性の又は慢性の出血部位での管腔器官内部で、内視鏡111に関してアブレーション構造101を移動させることを含んでいる。
図27,
図28,
図30,
図32及び
図47に示され、以下で議論されるように、アブレーション構造101が取り付けられるアブレーション装置100のシース103は、内視鏡111に関してアブレーション構造101を移動させることを可能にする。更に、
図34A,
図35A,
図36A,
図37,
図38,
図39及び
図41に示され、以前に議論されたように、アブレーション装置100の少なくとも一部がそれを通して配置される内視鏡111の内部作動チャンネル211は、内視鏡111に関してアブレーション構造101を移動させることを可能にする。
【0118】
図11,
図31,
図42及び
図44を参照すれば、更に他の実施形態では、アブレーション構造101を組織表面3の方に向かって撓ませるステップは、消化管の急性の又は慢性の出血部位での管腔器官内で、アブレーション装置100の膨張部材105を膨張させることを含んでいる。前記膨張部材105は、可逆的に膨張可能に構成し配置されることができる。膨張部材105は、潰れた形態でアブレーション構造101に沿って消化管内へ挿入されることができ、予め選定された処理領域で位置を特定されると拡張される。或る実行例では、膨張部材105はバルーンである。
例えば
図11,
図31,
図42及び
図44に、膨張部材105が膨張され又は展開配備されたときに、アブレーション構造101を組織表面3の方に向かって撓ませることが、どのようにして達成されるかが示されている。
図11,
図31,
図42及び
図44に示されているように、十分に膨張すると、膨張部材105は、組織表面3に接触し、従って、対向する組織表面3と接触するアブレーション構造101を撓ませる。
【0119】
図19B,
図20,
図35,
図36に示され、以前に議論されたように、更なる方法においては、アブレーション構造101を撓ませるステップは、撓み構造あるいは撓み部材150を拡張させることを含んでいる。
或る実行例では、
図19Aに示されているように、アブレーション装置100はシース103を含んでおり、このシース103は撓み部材150を受容するように構成され配置され、内視鏡111及びアブレーション構造101は、シース103に内部的に受容されている。或る実行例では、撓み部材150は、例えばニチノール(Nitinol)のような形状記憶合金である。この実施形態における撓み部材150の柔軟な拡張は、内視鏡,アブレーション装置100の弾性シース115(
図19Aに示されている)、若しくは、アブレーション・ハウジング107を含む、装置100のあらゆる部分に、結合されることができる。
【0120】
図34,
図35,
図36,
図37,
図38及び
図39に示され、以前に議論されたように、更なる方法においては、アブレーション構造101を撓ませるステップは、撓み構造あるいは撓み部材150を移動させることを含んでいる。
【0121】
手短に言えば、各ケースにおいて、撓み部材150を非展開形態から展開形態へ変化させるのに、撓み部材150を移動させることが用いられている。
図23に示されているように、或る実施形態では、アブレーション構造101を撓ませることは、アブレーション構造101内の屈曲点を含んでおり、そこでは、例えば、組織表面3と接触する際に遭遇する抵抗に応答して、アブレーション構造が撓むことができる。
【0122】
図43,
図44及び
図45Aから
図45Cに示され、以下で更に詳しく議論されるように、別の方法においては、アブレーション構造101を撓ませるステップは、内視鏡111に関して、それら各々の平行な長手軸に沿って、アブレーション構造101を、回転させ、回動させ、旋回させ、或いは回すことを含んでいる。
内視鏡111に関するアブレーション構造101の撓みは、消化管の急性の又は慢性の出血部位での管腔の壁部上の対象部位に関して撓んでいる、内視鏡111の遠位端部110と組み合わされて生じることができる。また、アブレーション構造101は、組織に対するアブレーション装置100の付加を達成するのに用いられる膨張部材105と組み合わせて、撓ませることができる。或る実施形態では、アブレーション構造101を撓ませるステップは、更に、以上に開示された撓ませるステップのあらゆる組み合わせを含んでいてもよい。
【0123】
図19,
図20,
図21,
図22,
図34A,
図34B,
図35A,
図35B,
図36A,
図36B,
図46B及び
図47に示されているように、いま一つのアブレーション方法においては、追加的なステップが、アブレーション構造101を第1の形態から半径方向に拡張された第2の形態へ動作させることを含んでいる。
図19,
図20,
図21及び
図22に示されたアブレーション構造101の半径方向の拡張に関する詳細は以下に記載され、一方、
図34A,
図34B,
図35A,
図35B,
図36A及び
図36Bに対する詳細は以前に記載されている。
更に、
図46B及び
図47に示されているように、アブレーション構造101は、第1の形態に配置されることができ、この第1形態では、当該アブレーション構造101が、直接に、或いはハウジング107(不図示)を介して、カテーテル254に取り付けられた膨張部材105に結合されている。展開配備されていない形態では、
図46B及び
図47に示されているように、非膨張状態の膨張部材105及びアブレーション構造101は、内視鏡111に関して比較的小さい外形輪郭を有している。膨張部材105は、展開配備されると、アブレーション構造101を半径方向に拡張された第2の形態(不図示)へ動作させる。
【0124】
図15,
図16,
図40,
図43,
図44,
図45Aから
図45C,
図46B及び
図47に示されているように、更なる方法においては、追加的なステップが、アブレーション構造101を内視鏡111に取り付けることを含んでいる。
図15及び
図16に示されているように、アブレーション構造101の内視鏡111への取り付けも、弾性シース115によって行うことができる。弾性シース115は、アブレーション構造101を、内視鏡111上の所望の位置に取り外し可能に保持することができる。弾性シース115は、内視鏡の遠位端部110を越えて嵌合するように構成され配置されることができる。
図15及び
図16に示されているように、膨張部材105は弾性シース115に取り付けることができ、或いは、その代わりに、膨張部材105が「弾性シース」としても働くことができる(不図示)。
【0125】
別の方法においては、アブレーション構造101を内視鏡111に取り付けるステップは、アブレーション構造101を内視鏡の外表面に取り付けることを含んでいる。代替的には、取付ステップは、例えば、内視鏡の内表面に取り付けること、内視鏡の内側の又は外側の機構に取り付けること、或いは、以上のあらゆる組み合わせ、を含むことができる。水,IPA,ゼリー状のもの或いは油が、アブレーション装置の内視鏡に対する取付および取り外しを目的として、用いられるかも知れない。
【0126】
図41に示されているように、更なる方法においては、アブレーション構造101を内視鏡111に取り付けるステップは、アブレーション構造101が付属の巻回シース(rolled sheath)116を有することを含み、そこでは、アブレーション構造101を内視鏡111に取り付けることは、内視鏡11の外表面全体にわたって前記シース116をほどくことを含んでいる。
巻回シース116は、更に、内視鏡111の長さに沿ったアブレーション装置100の電気的接続体109を覆うことができる。関連する方法においては、内視鏡111の外表面全体およびアブレーション構造101の一部にわたって、回転シース116をほどくことを含むステップにより、アブレーション構造101が内視鏡111に取り付けられる。
【0127】
他の方法においては、
図40に示されているように、アブレーション構造101を内視鏡111に取り付けるステップは、アブレーション構造101を内視鏡の溝部に取り付けることを含んでいる。
図40に示されているように、或る実行例では、ハウジング107及びアブレーション構造101は、内視鏡111の内部作動チャンネル211内に配置され得る内部結合機構215に結合されている。
図40における内部結合機構215は、内視鏡の遠位端部110で内部作動チャンネル211に取り付けられるものとして示されている。この実行例では、ハウジング107及びアブレーション構造101は、内視鏡111の遠位端部110付近で、内視鏡の外表面に整列し結合されるように示されている。
【0128】
消化管の組織にアブレーションを施す或る方法においては、組織表面3は第1処理領域を含み、アブレーション構造101の駆動ステップは、前記第1領域にアブレーションを施すアブレーション構造101の駆動を含み、更に、アブレーション構造101を患者から取り外すことなく当該アブレーション構造101を第2領域へ移動させることと、この第2領域にアブレーションを施すためにアブレーション構造101を駆動することと、を含んでいる。
この意味では、移動させることとは、アブレーション構造を対象部位の特定場所へ移動させることを指し、その後、治療上効果がある位置への更なる移動が、他のどこかで詳細に説明されたように、バルーン部材を膨張させることにより、或いは、撓み部材を撓ませ又は膨張させることにより、様々に実行することができる。
例えば、消化管の急性の又は慢性の出血部位における管腔の壁部の対象領域の組織表面3の2つもしくはそれ以上の領域は、アブレーション構造101を第1対象領域に指向させ、その後、組織表面3にアブレーションを施すためにアブレーション構造101を駆動することにより、アブレーションを「施すことができる。その後、アブレーション構造101を患者から取り外すことなく、組織表面3の適切な領域のアブレーションのために、アブレーション構造101が、器官の壁部内の第2対象領域に指向させられる。
【0129】
一般に、他の態様においては、取り外し可能に内視鏡遠位端部110に結合されたアブレーション構造101と、当該アブレーション構造101を組織表面3の方に向かって移動させるように適合され構成された撓み機構とを含むアブレーション装置100が設けられている(例えば、
図5−19,22,22,27−29,30−32,34A,35A,36A,37,38,39,42,44及び47参照)。
【0130】
関連した実施形態においては、アブレーション装置100は、アブレーション構造101を内視鏡111に関して移動させるのに適合したアブレーション構造移動機構を、更に含んでいる。
以下で議論され、
図26−28及び
図30−32に示されているように、アブレーション構造移動機構は、アブレーション構造101が取り付けられるシース103であってもよく、そこでは、シース103は、当該シース103の内部に受容された内視鏡111に関してアブレーション構造101を移動させるように、構成され配置されている。
代替的には、以前に議論され、
図34A,35A,36A及び
図37−39に示されているように、アブレーション構造移動機構は、アブレーション構造100の内部結合機構215の形態であってもよく、そこでは、アブレーション構造は、前記内部結合機構215に接続され、当該内部結合機構215の少なくとも一部は、内視鏡に内部的に配設されている。
【0131】
別の実施形態では、アブレーション装置100は、アブレーション構造101を内視鏡111に結合するために、内視鏡111の外表面全体に嵌合するように設計された結合機構を、更に含んでいる。以前に議論されたように、螺旋状シース104,弾性シース115,巻回シース116及び
図15,16,40及び41に示されるような内部結合機構はそれぞれ、かかる結合機構の例である。
或る特定の実施形態では、結合機構は、アブレーション構造101を支持することができるシース103を含んでいる。このシース103は、チューブ,カテーテル、或いは好適な伸長部材である。シース103は、連繋する内視鏡とは独立して移動させられることができるように、構成され配置される。
【0132】
図41に示されているように、他の実施形態では、シース103は、内視鏡の外表面にわたってほどくことができる巻回シース116として構成され配置されることができる。使用に際しては、例えば実質的にハウジング107の(装置の操作者の視点から)近位端部付近でアブレーション装置100に接続された巻回シース116は、かかる位置からほどかれ内視鏡111の近位端部112に向かってほどかれ続ける(
図47参照)。
この方法では、巻回シース116は、内視鏡111(不図示)の長さの全て又は一部分と接触し覆うことを生じせしめる。更に、巻回シース116が内視鏡111に沿って解かれるとき、巻回シース116と内視鏡111との間に電気的接続体109を挟むことができる(全体的に
図41参照)。
【0133】
別の実施形態においては、
図30及び31に示されているように、シース103は、撓み機構を支持するように構成され配置されることができ、そこでは、撓み機構は撓み構造または撓み部材150を含んでいる。
図30及び31に示されているように、撓み部材150が膨張部材105である場合には、膨張部材105がシース103に直接に取り付けられることができる。
各ケースにおいて示されているように、膨張部材105はアブレーション構造101の配置位置に対向して配置され、それもまたシース103に取り付けられる。このシース103の構成は、内視鏡の遠位端部110の位置決めに関わりのない膨張部材105及びアブレーション構造101に対する支持をもたらす。
例えば
図30に示されているように、内視鏡の遠位端部110は、当該遠位端部110と、アブレーション構造101及び膨張部材105が配置されるシース103の遠位端部との間に間隙を設けるように、配置されることができる。これとは対照的に、
図31に示されているように、内視鏡の遠位端部110は、シース103の遠位端部を通りそれを越えて伸長することができる。
【0134】
他の実施形態においては、
図26に示されているように、シース103は伸長されることができる。
図26は、電気的接続体109及び膨張ライン113を含んでいるシースを描いている。シース103は、当該シース103内に進入した空圧式および/または押出式のワイヤを含んでいるかも知れない。
使用に際しては、先ずシース103が消化管内へ導入されることができ、そこで、シース103は、当該シース103内の内視鏡111の導入のためのカテーテル状のガイドとしての役割を果たす。その代わりに、先ず内視鏡111が導入され、それにより、導入されるべきシース103に対するガイドとしての役割を果たす、ようにしてもよい。
図26は、また、アブレーション構造101が、シース103の取付ポイントと反対側で膨張部材105に取り付けられている配置構造において、膨張部材105のシース103への取付を示している。
【0135】
図27及び28に示された実施形態では、シース103は、内視鏡111の視覚チャンネル(visual channel)と協働するのに適合し構成された光学的に透過する部分158を含んでいる。例えば、シース103は、PCV,アクリル及びPebax(登録商標:ポリエーテル・ブロック・アミド)を含む、透き通った半透明または透明の重合体のチューブで製作されることができる。
図24に示されているように、内視鏡111の一つの部品が、内視鏡の遠位端部110から像を取得した組織表面3の視覚画像をもたらす視覚チャンネルとなる。例えば、透過部分158は、シース103の当該透過部分158を通じて、食道3の壁部の可視化を許容している。
図28及び
図29で与えられる断面図に示されているように、
図27及び28に示されるシース103は、視覚チャンネル161を有する内部に配置された内視鏡111の助けでもって、当該シース103の壁部を通して組織表面3の表示を与えるように構成され配置された、光学的透過部分158を備えている。また、
図29に示されているのは、電気的接続体109及び膨張ライン113がその中を通ることができる、シース103の一部分である。
これらの特徴は、シース103の内壁に組み込むことができ、或いはシース103の内壁に取り付けることができる。
図27に示されているように、透過部分158を含んでいるシース103は、内視鏡の遠位端部110を通り越して伸長することができる。その代わりに、
図27,28及び31に示されているように、内視鏡の遠位端部110が、シース103の透過部分158を通り越して遠位方向へ伸長することができる。
【0136】
別の実行例では、特にアブレーション装置100を撓ませている間におけるシース103の楕円化および/または潰れを防止するために、シース103の透過部分158は、そこに組み込まれるコイル状のまたは編まれた要素(エレメント)でもって、構造的に補強されることができる。
【0137】
更なる実施形態においては、シース103は、当該シース103の近位部分に形成されたスリット203を含んでおり、該スリット203は、内視鏡の遠位端部110がシース103内へ入ることを許可するために開くように設計されている。
図32に示されているように、シース103の近位部分は、穿孔区域またはスリット203を含むことができる。スリット203は、シース103の長さに沿って全長の一部に伸長することができる。このスリット203は、シース103が引き戻されることを可能にし、或いは、例えば内視鏡111を当該シース103内に導入するときに、シース103が開かれることを可能にする。或る実行例では、
図32に示されているように、シース103は、当該シース103を内視鏡111に関して所望の位置に固定するために、固定用のカラー(collar)205を、更に備えている。
【0138】
図33A及び33Bに示されているように、シース103の遠位部分は、当該シース103の近位部分よりも小さい外径を有することができ、シース103の遠位部分は、内視鏡111がその中へ挿入されるときに(不図示)拡張されるように、適合され構成されている。この実施形態は、シース103が先ず消化管内の対象部位へ進行させられる場合に、内視鏡111にアクセスする助けとなることができる。シース103の遠位端部は直径がより小さいがスリット203を含んでいるので、内視鏡111が進行させられるときには、シース103のスリット203がシース103の拡張を許容することから、シース103はより大きな外径の内視鏡111を受け合うことができる。
【0139】
一般に、他の態様においては、消化管内の組織にアブレーションを施す方法は、アブレーション構造101を内視鏡111で支持しながら、前記アブレーション構造101を消化管内へ進行させることを含んでいる。内視鏡の遠位端部110は、アブレーション構造101を移動させて組織表面と接触させるために曲げることができ、組織表面3にアブレーションを施す(例えば
図43参照)ためのアブレーション構造101の駆動が、それに続く。或る特定の実施形態では、アブレーション構造101が複数の電極を含み、駆動ステップが電極にエネルギーを加えることを含んでいる。
【0140】
一般に、他の態様においては、結合機構は、例えば(以前に議論されたように)シースであるよりも、アブレーション構造101を内視鏡111に結合するために、内視鏡111の外表面全体にフィット(fit)するように設計され、アブレーション構造101に対してある程度の動作の自由を与えるように適合され構成されるように設計されている。前記の動作の自由とは、これらに限定されるものではないが、内視鏡111に結合されるときの、内視鏡111に関する屈曲および/または回転および/または旋回を含むものである。前記動作の自由は、1軸,2軸または3軸についてのものであり、それにより、1軸,2軸または3軸の自由度をもたらしている。好適な結合機構の非制限的な例は、屈曲継ぎ手(フレックスジョイント),ピン継ぎ手,U字継ぎ手,球状継ぎ手(ボールジョイント)或いはそれらのあらゆる組み合わせを含んでいる。
以下に説明する結合機構の実施形態は、対象組織表面3でえ場所を特定されるときに、支持している内視鏡111とアブレーション構造101との間の実質的に均一な付加力を有益にもたらすものである。
【0141】
図43,44,45A及び45Bに示されているように、結合機構は、ハウジング107及び内視鏡111に取り付けられた輪状体(リング:ring)250であり、そこでは、ハウジング107は、リング250の廻りに、屈曲,回転もしくは旋回するように、適合され構成されている。
例えば、
図43に描かれているように、アブレーション装置100がリング250によって内視鏡111の撓み可能な遠位端部110に結合されている場合には、消化管の急性の又は慢性の出血部位での管腔の壁部の組織表面3に向かって装置が撓まされると、ハウジング107が、リング250廻りの屈曲,回転もしくは旋回の結合により、アブレーション構造101を組織表面3に接触させる。
これらの実施形態では、アブレーション構造を支持する内視鏡およびハウジングは共に、それ自体の長手軸を有しており、これらの軸は互いに平行に配置されている。ハウジングを内視鏡に取り付ける結合機構は、ハウジングの長手軸と内視鏡の長手軸との間の旋回運動を許容する。好都合なことに、内視鏡111の遠位端部110の撓みによって与えられる十分な接触圧力は、治療されるべき組織表面3の平面に関する遠位端部末112の精密な配列に拘わらず、アブレーション構造101と組織表面3との間に所望の程度の接触を生み出すことができる。
【0142】
この開示の目的のために、アブレーション構造101と組織表面3との間での、「所望の程度の接触」,「所望の接触」,「治療上の接触」もしくは「治療上有効な接触」は、
組織表面3上の所定の対象(例えば、消化管の急性の又は慢性の出血部位での管腔器官の壁部上の部位)の全部または一部とアブレーション構造101の全部または一部との間の、完全な接触または実質的に完全な接触を含むものである。
治療上の接触は、この開示に記載されたように、典型的には、例えばバルーンのような拡張可能部材の拡張により、或いは、撓み構造を拡張,移動もしくは撓ませることにより、装置上のアブレーション面が、そのような接触状態になるように移動させられる結果として生じることが、理解されるべきである。
このようなアプローチの全てにより、かかる移動つまり治療上の接触状態に持ち来すことは、圧力の作用もしくは適用を含むことになる。このような加圧はコープティブ(coaptive)なアブレーションに影響を及ぼす要因であり、血管の組織を介して作用する圧力は、それらを部分的に又は実質的に血液を空にせしめ、同時に、血圧により正常にもたらされる血液の流入を阻止する逆圧としての役割を果たす。このように、アブレーション面を対象組織に対して持ち来すために部材を移動または拡張させる事象は如何なるものであれ、組織を加圧するものでもあることが理解できる。
【0143】
図44に示されているように、異なるがなお関連している実施形態では、アブレーション装置100の撓み機構が膨張可能部材105である場合には、リング250結合は、ハウジング107及びアブレーション構造101の屈曲,回転もしくは旋回を許容している。以前のケースにおけるように、撓みを介して、ここでは膨張可能部材105によって、もたらされる十分な接触圧力は、アブレーション構造101と組織表面3との間に所望の程度の接触を生み出す。再び好都合なことに、リング250結合によってもたらされる屈曲,回転もしくは旋回により、治療されるべき組織表面3の平面に関する、撓まされた内視鏡111の遠位端部110の精密な配列に拘わらず、所望の接触が達成されることができる。
【0144】
図45Aに示されているように、或る関連した実施形態では、アブレーション装置100と内視鏡111との間の結合機構は、弾性バンド(band)252であり、そこでは、装置100のハウジング107は弾性バンド252に柔軟に結合されている。
例えば、
図45Cに描かれているように、アブレーション装置100が弾性バンド252によって内視鏡111の遠位端部110に結合されている場合には、消化管の急性の又は慢性の出血部位での管腔の壁部の組織表面3に向かって装置100が撓まされると、弾性バンド252廻りの屈曲により、ハウジング107及び、従って、アブレーション構造101と組織表面3との間に精密な配列が達成されることができる。もう一度好都合なことに、弾性バンド252結合によってもたらされる屈曲機能により、治療されるべき組織表面3の平面に関する、撓まされた内視鏡111の遠位端部110の精密な配列に拘わらず、所望の接触が達成されることができる。
【0145】
図45Aに示されているように、別の関連した実施形態では、アブレーション装置100と内視鏡111との間の結合機構は、リング250と弾性バンド252の組み合わせであり、そこでは、装置100のハウジング107は弾性バンド252に結合されている。
例えば、
図45Aに描かれているように、アブレーション装置100が弾性バンド252によって内視鏡111の遠位端部110に結合されている場合には、消化管(不図示)の急性の又は慢性の出血部位での管腔の壁部の組織表面3に向かって装置100が撓まされると、リング250廻りの屈曲,回転もしくは旋回と弾性バンド252の結合とにより、ハウジング107及び、従って、アブレーション構造101と組織表面3との間に配列が達成されることができる。再び好都合なことに、弾性バンド252結合によってもたらされる屈曲,回転もしくは旋回により、治療されるべき組織表面3の平面に関する、撓まされた内視鏡111の遠位端部110の精密な配列に拘わらず、所望の接触が達成されることができる。
【0146】
別の実施形態では、アブレーション装置100が、内視鏡111の溝部内に嵌るように構成され配置された、アブレーション装置100と内視鏡111との間の代替的な結合機構を、更に備えている。前記結合機構は、内部結合機構215であり、アブレーション構造101を内視鏡111の内部作動チャンネル211(
図37及び前述の議論を参照)内に結合するように構成され配置されている。
【0147】
図34A,34B,35A,35B,36A及び36Bに示されているように、かかる結合機構の或る実施形態においては、アブレーション構造101が、内視鏡の内部作動チャンネル211内に嵌るように構成され配置されている。更に、
図34A,34B,35A,35B,36A及び36Bに示されているように、関連した実施形態では、撓み機構も内視鏡の内部作動チャンネル211内に嵌るように構成され配置されている。
【0148】
以上に説明され
図34A,34B,35A,35B,36A及び36Bに示された実施形態の各々においては、膨張可能部材105又は拡張可能部材209の拡張およびそれに続く対象組織3の治療の後に、結合手段は、更に、アブレーション構造101及び撓み機構を、内視鏡の内部作動チャンネル211内へ、抜き戻し,引き戻し又は取り戻す手段としての役割を果たすことができる。しかも、アブレーション構造101と内視鏡の内部作動チャンネル211との結合をもたらすことに加えて、前記結合機構は、アブレーション構造101にエネルギーを供給する電気的接続体109を含むこともできる。
【0149】
或る関連した実施形態では、アブレーション装置100が、内視鏡111の溝部内に嵌るように構成され配置された結合機構を更に備え、該結合機構は形状記憶部材を含むことができ、撓み機構は形状記憶部材の曲がり部を含むことができる。
図37から39に示されているように、内部結合機構215は内視鏡の内部作動チャンネル211内に配置され、内視鏡の遠位端部100を越えて伸長している。更に、内部結合機構215は撓み部材150である撓み機構に接続されることができる。撓み部材150は、曲がり部を含むことができ、また、ハウジング107に接続されることができる。
図38に示され以前に議論されたように、撓み部材150の曲がり部は内視鏡の内部作動チャンネル211内に配置されることができ、アブレーション構造101に非配備位置への移動を生じせしめる。内部結合機構215を内視鏡の遠位端部110の方に向かって進行させると、撓み部材150の形状記憶特性が、アブレーションに好適な位置へのアブレーション構造101の配備を容易にする。
【0150】
一般に、或る態様では、アブレーション装置100のアブレーション構造101は、内視鏡111の可視チャンネルと協働するように適合され構成された光学的な透過部分158を備えている。
図27から31に示され以前に議論されたように、光学的な透過部分158はアブレーション装置100のシース103であってもよい。
【0151】
或る実施形態では、アブレーション装置100のアブレーション構造101は、更に、第1の形態から、半径方向に拡張した第2の形態へ移動するように、適合され構成されている。
図19から22に示されているように、アブレーション構造101及びハウジング107は、半径方向へ余り拡張していない第1の形態(
図20及び21参照)から、半径方向に拡張しアブレーションに役に立つ第2の形態へ、可逆的に移動するように設計されることができる。
ハウジング107及びアブレーション構造101の可逆式の半径方向への拡張をもたらす折り畳み可能な又は撓み可能な形態は、減じられた大きさの故に組織表面へのアクセスを容易にすることができる。更に、折り畳み可能な又は撓み可能な形態は、清掃,導入,復旧および消化管の急性の又は慢性の出血部位での管腔器官内における装置の再配置に関して、有用である。
【0152】
図19B及び20に示されるアブレーション装置100は、アブレーション構造101を、第1の形態(
図20参照)から、半径方向に拡張した第2の形態(
図21参照)へ移動させるように、構成され配置されたアブレーション構造アクチュエータ152を備えている。(
図19B及び20に)図示されているように、アクチュエータ152は、伸長され、当該アクチュエータ152を受容するように構成され配置された受容体(レシーバ:receiver)154と共に作動するように設計することができる。
前記アクチュエータ152は、ワイヤ,ロッド或いは他の好適な伸長構造体であってもよい。その代わりに、アクチュエータ152は、バルーンを備えた又は備えていない液圧式の作動手段であってもよい。或る特定の実施形態では、アクチュエータ152は補強ワイヤ(stiffening wire)である。
【0153】
図20に示されているように、アクチュエータ152がハウジング107に取り付けられたレシーバ154の部分内に配置される以前には、ハウジング107及びアブレーション構造101の両方は、第1の形態を有する第1位置にある。
図21に示されているように、アクチュエータ152が部分的に又は完全にレシーバ154内に導入された後は、ハウジング107及びアブレーション構造101は、その結果、第1の形態に比べて半径方向に拡張した第2の形態に変化させられる。アクチュエータ152のレシーバ154内への導入は、ハウジング107及びアブレーション構造101をレシーバ154の側面に強制的に位置させ、半径方向へ拡張させる(
図19参照)。
或る実施形態では、ハウジング107は、アブレーション装置100を対象組織の表面3付近に位置させるのに好適な収縮した第1の形態にあるヒートセット(heat set)である。対象組織表面3が到達された後は、アクチュエータ152は、組織表面3のアブレーションに役に立つ半径方向へ拡張した第2の形態を達成するために、レシーバ154内へ導入されることができる。
【0154】
関連する代替的な実施形態では、ハウジング107及びアブレーション構造101は、半径方向に拡張された非拘束の形状を含んでおり、この非拘束の形状は、内視鏡111の遠位端部110に向けて遠位方向に配置され、重合体のシース115(不図示)によって圧縮されるときに、潰され又は減じられた半径方向の拡張を許容するために、一つ若しくはそれ以上の柔軟ポイントを含んでいる。
【0155】
図21及び22に示されているように、別の実施形態では、アブレーション装置100のアブレーション構造101は、第1の形態から、半径方向に拡張した第2の形態へ移動するように適合され構成されており、アブレーション装置100は、更に、拡張可能部材156を備えている。この拡張可能部材156は、ハウジング107と内視鏡111との間に位置することができ、拡張されていない形状では、アブレーション構造101は、従って、第1の形態に構成されている。前記拡張可能部材156が拡張すると、アブレーション構造101の形態は、半径方向に拡張した第2の形態(
図21参照)へ変化させられる。
【0156】
或る実施形態では、アブレーション装置100の撓み機構は、膨張可能な膨張部材105を備えている。
図11,21,22,25B,27,2830,31,34A,34B,42,44,46及び47に示され、以前に議論されたように、膨張部材105は、組織表面3に関して装置100の撓みを容易にすることができる。
【0157】
別の実施形態では、撓み機構は、拡張可能部材156(以前に詳細に論じられ、
図35B及び36Bを参照)を含んでいる。
図35Bに示されているように、拡張可能部材209は、拡張可能なステント,フレーム或いはケージ装置であってもよい。また、
図35Bに示されているように、拡張可能部材209は、拡張に先立って折り畳まれ若しくは巻回されることができる、接続された一連のフープ(hoop)であってもよい。
【0158】
他の有益な実施形態では、アブレーション装置100は、当該アブレーション装置100を内視鏡111の中心軸廻りに回転させるために、内視鏡111の近位端部からアブレーション構造101へトルクを伝達するように適合し構成されたトルク伝達部材を更に備えている。
或る特定の実施形態では、前記トルク伝達部材は、中心軸廻りの内視鏡111とアブレーション構造101との間の相対運動に抵抗するのに適合した、第1及び第2の連結部材(interlocking member)を含んでいる。
図46B,46C及び47に示されているように、或る実施形態では、第1の連結部材はキー(key)258であり、第2の連結部材はキー溝(key way)256である。
或る実施形態では、第1の連結部材は内視鏡111を取り巻くシース103に取り付けられ、第2の連結部材はアブレーション構造101を支持するカテーテル254に取り付けられている。例えば、
図46B,46C及び47に示されているように、キー258は内視鏡111を取り巻くシース103に取り付けられることができ、キー溝256はアブレーション構造101を支持するカテーテル254に取り付けられることができる。
或る更に関連した実施形態では、カテーテル254とシース103とは、内視鏡111の中心軸に沿った相対運動のために構成され配置されている。シース103は、例えば、重合体のシースであり、当該シース103の外側に、実質的にシース103の長手軸に沿って、キー258が取り付けられていてもよい。使用に際して、この実施形態は、内視鏡の近位端部112が操作されると、アブレーション装置100と内視鏡アッセンブリ111とに1対1のトルク伝達をもたらし、また一方では、原位置にある内視鏡の遠位端部110に対して近位側または遠位側の何れかへの、アブレーション構造101の位置決めをもたらす。更に、シース103は、カテーテル254内に予め組み込まれることができ、或いは別に組み込まれることもできる。
【0159】
一般に、或る態様では、アブレーション装置100は、アブレーション構造101と、当該アブレーション構造101を内視鏡111の遠位端部110に対して取り外し可能に取り付けるのに適合し、且つ、内視鏡に対して結合するときにアブレーション構造101が内視鏡に関して回転および/または旋回することを許可するのに適合した、結合機構とを備えて設けられている。
様々な関連する実施形態が、以下に詳しく設定される。例えば、結合機構がリング250を備え、アブレーション構造101は前記リング250廻りに回転および/または旋回するのに適合している実施形態;結合機構が屈曲するのに適合した弾性バンド252を備え、アブレーション構造101が回転および/または旋回することを許可する実施形態;アブレーション装置100が、アブレーション構造101を組織表面3の方に向かって移動させるように適合し構成された撓み機構を更に備えている実施形態;並びに、かかる撓み機構が膨張可能部材を含んでいる実施形態。
【0160】
図56A及び56Bは、ヒンジ159上にアブレーション面を備えたアブレーション装置の図を与えており、前記ヒンジは、
図43に示された機構に類似したやり方で作動し、アブレーション面にその長手軸と内視鏡の長手軸との間での自由な旋回動作を許容するものである。
図56Aは、内視鏡と平行に方位付けられたアブレーション面101を備えた装置を示しており、前記アブレーション面は、消化管の管腔壁部5の内面と所望の対象領域で接している。アブレーション面101は、内視鏡内の作動チャンネルから送り出され、また、当該作動チャンネル内に引き戻されることができる撓み部材150によって支持されている。
図56Bは、内視鏡の長手軸に関して略直角に方位付けられたアブレーション面101の長手軸を備えた装置を示している。これが0(ゼロ)度(内視鏡111に平行)から約170度の屈曲範囲にわたってヒンジ159上で容易に回転するときに、アブレーション面101の受動的応答として旋回する。図に示されているように、表面の角度は内視鏡に関して約90度である。
【0161】
ここに記載された殆どの実施形態は、例示的なアブレーション・エネルギーとして無線周波数エネルギーを利用し、エネルギー伝達要素として電極を利用してきたが、これらの例は、エネルギー源およびエネルギーの供給または伝達要素に関して制限するものではないことが、留意されるべきである。また、ここに記載されているように、冷凍アブレーション手法だけでなく、他の形態のエネルギーが、アブレーションが断片的または部分的で、ここに記載されているように、対象領域の組織の或る部分にアブレーションが施され、対象領域の組織の或る部分にアブレーションが施されることがない、やり方で、対象領域のアブレーションのために供給されてもよい。
【0162】
<内視鏡を通じて配備可能な装置の実施形態>
上で述べたように、アブレーション装置は、医師に対して視覚能力を与える内視鏡と結び付いた様々な方法で、慢性または急性の出血部位に、配備可能または位置決め可能である。例えば、或る内視鏡カテーテルは、バルーン又は他の形態の拡張可能部材と治療上の接触状態に位置決め可能であり、或いは、撓み部材を移動させ若しくは撓ませ、また、実施形態は、内視鏡の端部または適切な代替的な部位に取り付けることができ、或いは、アブレーション装置は、内視鏡の作動チャンネル若しくは補助的なチャンネルを通ることができる。
内視鏡の作動チャンネルを通ることができるアブレーション装置は、内視鏡の操作が、外部装置の特性によって妨げられ複雑化されることが何ら無い点で、また、医師施術者が、作動チャンネル装置に非常に親しみ深く安心できるので、実用上の利益をもたらす。しかしながら、作動チャンネル内部に収容される装置は、典型的には2−5mmの直径のチャンネルの寸法内に嵌る潰れた形態を有する必要がある点が制約である。更に、かかるチャンネル内(in-channel)装置は、収容された又は配備可能な形態と作動する又は配備された形態との間で、容易に行ったり来たり移動することができる必要がある。チャンネル内装置の幾つかの例が、
図59Aから64に与えられ、以下に説明される。
【0163】
図59A及び59Bは、送出内視鏡の長手軸に全体として略直交する又は略垂直な広範な領域のアブレーション面を呈するように構成された内視鏡の作動チャンネルを通して配備可能なアブレーション装置を示す図である。
図59Aは、完全に展開された形態での前記装置を示している。また、
図59Aは、展開配備された形態と内視鏡の作動チャンネル内に収容されるために潰された形態との間の途中の形態での装置を示したものである。
装置400は、内部同軸ロッド410を支持している軸(シャフト:shaft)41の遠位端部に支持されている。結合部412では、同軸ロッドは、アブレーション・エネルギー供給面101を支持する複数の支柱420が結び付いている。前記結合部412からはワイヤ430も伸長しており、フレーム要素440によって更に支持されているアブレーション・エネルギー供給面の背面101bの中心部に至っている。
同軸ロッドを遠位方向へ押すことにより、同軸ロッドが作動チャンネルから前方へ突き出し、アブレーション面が開いて広範な領域のアブレーション・エネルギー供給面をもたらす。同軸ロッドが近位方向へ引き込まれると、アブレーション・エネルギー供給面は、傘をたたむようにしてそれ自体で引っ込められ、作動チャンネル内へ引き入れられることができる形態になる。代替的な実施形態では、アブレーション・エネルギー供給面101とその支持フレーム要素440とは、広い管腔表面によりうまく当たるように、平坦よりも凸状の前面をもたらすのに適合している。
装置およびアブレーション面は、内視鏡で支持されているおかげで操縦可能であり、更に、操作する医師が、対象領域と有効な治療上の接触をなすために、手動で圧力を与える能力を有することが分かる。また、アブレーション供給要素が、この開示のどこかに記載されたあらゆる形態において、アブレーション面101上に配置され得ることが分かる。
【0164】
図60は、全体として送出内視鏡111の長手軸に略平行なアブレーション面111を呈するのに適合した内視鏡111の作動チャンネル112を通して展開可能なアブレーション装置400の実施形態を示している。この装置は、アブレーション電極が掛け渡される(例えば、ニチノール(Nitinol)でなる)2つの平行な折り畳み可能な形状記憶リブ415を有するアブレーション構造を備えており、前記掛け渡された電極は、展開された状態ではリブ間の空間に張り渡され、アブレーション面101を形成するように構成されている。
内視鏡111の作動チャンネルから支持シャフト41の遠位端部が押し出されると、支持リブ415が、その好ましい形態に従って拡張する。支持シャフトが内視鏡内へ引き戻されると、リブ415の近位側の傾斜が付けられた部分が、作動チャンネルの開口部を通過しながら、リブを一緒に引き込む。アブレーション面101は、対象領域内にアブレーションの焦点部位を与えるのに適合している。
【0165】
図61A及び61Bは、送出内視鏡の長手軸に略平行なアブレーション面101を呈するのに適用される内視鏡111の作動チャンネル112を通して展開可能なアブレーション装置400の実施形態を示している。装置のアブレーション面101の支持部の近位端部416は傾斜が付けられ、また、実質的に平坦(フラット:flat)であるが
卷回可能な
横方向に湾曲した偏り部分(laterally-curved bias)を備え、内視鏡111の作動チャンネルから押し出されるときには
卷回しないが、内視鏡111の作動チャンネル内へ引き戻されるときには、傾斜が付けられた近位端部416が作動チャンネル112のエッジ部(edge)を通過するように持ち来されたときに当該傾斜が付けられた近位端部416に作用する力により、自身を中心にして
卷回する。アブレーション面101は、対象領域内に、特に、比較的狭い管腔の壁部に対して、アブレーションの焦点部位を与えるのに適合している。
図61Aは、作動チャンネルから前方へ突き出て展開した形態での装置を示している。
図61Bは、作動チャンネル内で引き込まれた状態で見られることになる装置を示しており;装置の遠位端部は、支持体416の近位部分を含み、アブレーション面101はそれ自体の廻りに巻き付けられ又はコイル状に巻かれている。
【0166】
図62は、アブレーション面101に近接して柔軟(フレキシブル:flexible)な曲がり部418,419があるおかげで、送出内視鏡の長手軸に略直交するアブレーション面を呈するのに適合している点を除いては、
図61の装置に類似した、内視鏡111の作動チャンネル112を通して展開可能なアブレーション装置の一実施形態を示している。装置のアブレーション面に対する支持体416は、その近位端部に傾斜が付けられており、また、実質的に平坦であるが
卷回可能な
横方向に湾曲した偏り部分を備え、作動チャンネルから押し出されるときには
卷回せず、作動チャンネル内へ引き戻されるときには自身を中心にして
卷回する。
【0167】
図63は、外方に面して円周方向に方位付けられた円形または螺旋形のアブレーション面101を呈するのに適合した、内視鏡111の作動チャンネル112を通して展開可能なアブレーション装置400の一実施形態を示している。前記円形または螺旋形部分は、内視鏡の作動チャンネルから出て来ると非コイル状(uncoiled)になり、作動チャンネル内へ引き戻されるとコイル状に巻かれて直線状の形態になる。
【0168】
図64は、
図60から
図63に示される装置に共通な、アブレーション面の回路層および例示的な材料の斜視および断面の詳細図である。アブレーション面支持体416の材料は、例えばニチノールが有するような超弾性形状記憶特性を有している。支持体の層の上端には回路の裏当て417が積層され、該裏当て層の上面には、装置の無線周波数エネルギー供給エレメントを備える銅配線が在る。
【0169】
<アブレーション面の液圧清浄をもたらす特徴>
血液および/または血管の無線周波数による凝固の間、例えば細胞外液および細胞質の液体のような他の液体と同様に凝固した血液が、電極に固着するかもしれず、その後に続くアブレーションを、より効果が低くより制御しにくいものにすることになる。電極へ血液または凝固物が固着する危険性(リスク:risk)を最小限にとどめるために、幾つかの手法が用いられる。
そして、幾つかの実施形態では、凝固物の固着を防止するために、電極および/または隣接した表面に非接着表面が用いられる。この非接着表面は、導電性の電極要素に隣接する材料用に、例えばシリコン,PTFE,FEPなどの物質によって与えられる。この代わりとしては、電極の導電性要素および/または隣接した材料は、(硬化した形態または未硬化の形態の)シリコン,PTFE,他のフルオレポリマー,レシチン,オイル,糖脂質、或いは他の潤滑性がある有機性または非有機性の被覆(コーティング)の薄い層で被覆されよう。
電極とアブレーション部位との間の電気回路に及ぼすこれらのコーティングの影響を最小限にとどめるために、コーティングは、最小のインピーダンス及び/又は回路への抵抗効果を有するように選定される。高インピーダンスのコーティングは、電力損失を招き、組織の部位への効率的なパワーの伝達を妨げることになる。例えば、0.1から100μmの範囲の硬化したシリコン・コーティングが、この用途に適切であるかもしれない。また、別の実施形態においては、初期の僅かなアブレーションの後に顕著な量のコーティングが導電性の要素を焼き尽くすが、それでもなおコーティングが隣接した材料上に残る。
【0170】
別のより積極的に清浄化する実施形態においては、電極表面の凝固物の固着を防止し又は取り除くために、流体洗浄が行われる。そこで、
図65A及び65Bは、液圧洗浄の特徴を含む部分的に周状のアブレーション面101を備えたアブレーション装置100の実施形態を描いたものである。この装置は、全体としては
図56に描かれたものと類似しており、
図43に描かれたものと類似した長手方向に旋回する機構を備えている。2つのラインが、アブレーション面101に役立つように、装置の近位端部から遠位方向へ伸びており、そのうちの一つは、配分のためのアブレーション・エネルギーを供給する電気的接続体であり、他の一つは、アブレーション面に洗浄流体を運ぶ液圧ライン121である。
図65Bは、アブレーション面101、並びに、洗浄チャンネル・システム122及び多数の出口穴123に至る液圧ライン121のより詳細な斜視図を示している。アブレーション面101は、ここの他のどこかで説明されたあらゆる形態の電極配列を含んでいるが、洗浄要素に焦点を当てるために図示されていない。
洗浄システムは、生理的に適切な溶液を運び、医師によって手動で操作されるかもしれず、或いは、無線周波数エネルギーの供給に続いて適切な間隔および割合で洗浄をもたらすコントローラによって自動的に制御されるかもしれない。
【0171】
<用語および慣例>
別の方法で規定しない限り、ここで用いられた全ての技術用語は、肥満症治療手術の分野における当業者によって普通に理解されると同様に、アブレーション技術および代謝条件および疾患に対するアブレーション治療の分野における当業者によって普通に理解されると同じ意味を有している。
本出願では、特定の方法,装置および材料が説明されているが、ここに記載されたものと同様の又は相当するあらゆる方法および材料が、本発明の実践において用いることができる。本発明の実施形態が幾つかの詳細なそして例示的な図面によって説明されているが、かかる図面は理解の明瞭化のみを目的とするものであり、限定することを意図するものではない。
本発明の理解を伝えるために、記載中に様々な用語が用いられてきたが;これらの様々な用語は、その通常の言語上または文法上の変形例または形式に広がるものである、ことが理解されよう。また、技術用語が、商標名,ブランド名、或いは一般名によって指称される装置,機器あるいは薬剤に言及する場合、これらの用語または名称は現在最新の例としてもたらされ、本発明はかかる文言の範囲によって限定されるものではない、ことが理解されよう。後日になって導入される技術用語であって、当代の用語の派生語として、或いは当代の用語により受け入れられる階層型のサブセットの指定として、合理的に理解され得るものは、今の当代の用語によって記載されたものとして理解されよう。
更に、例えば、機構あるいは接合的な治療上のアブレーションの利点の理解をもたらすことの促進に、幾つかの理論的な考察が提示されているが、本発明のクレームはかかる理論に束縛されるものではない。また更に、あらゆる実施形態の1つ若しくはそれ以上の特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、あらゆる他の実施形態の1つ若しくはそれ以上の他の特徴と、組み合わせることができる。
更に、また、本発明は、例示の目的で述べられた実施形態に限定されるものではなく、その各要素が資格を与えられた等価性の全範囲を包含して、本特許出願に付属したクレームの公明正大な解釈によってのみ規定されるものである、ことが理解されるべきである。