特許第5835973号(P5835973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5835973現像部材、電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5835973
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】現像部材、電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20151203BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   G03G15/08 235
   F16C13/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2011-154926(P2011-154926)
(22)【出願日】2011年7月13日
(65)【公開番号】特開2013-20175(P2013-20175A)
(43)【公開日】2013年1月31日
【審査請求日】2014年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100096943
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100134393
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100174230
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 尚文
(72)【発明者】
【氏名】山内 健一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 忠
(72)【発明者】
【氏名】西岡 悟
【審査官】 八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−201140(JP,A)
【文献】 特開2010−282140(JP,A)
【文献】 特開2002−173599(JP,A)
【文献】 特開2008−274286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
G03G 15/00
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体と、カーボンブラックを含む導電性の弾性層とを有する現像部材であって、
該弾性層は、マトリックス中にドメインが分散している海島構造を有し、
該マトリックスは架橋ゴムを含み、
該ドメインは熱可塑性樹脂を含み、更に、
該マトリックスの単位断面積当たりのカーボンブラックの含有率をA、該ドメインの単位断面積当たりのカーボンブラックの含有率をBとしたとき、A<Bなる関係を満たしており、かつ、
該ドメインと該マトリックスとの間に、中間領域を有し、
該中間領域は、その単位断面積当たりのカーボンブラックの含有率が、該マトリックスの単位断面積当たりに含有しているカーボンブラックの含有率Aよりも多く、該ドメインの単位断面積当たりに含有しているカーボンブラックの含有率Bよりも少ないことを特徴とする現像部材。
【請求項2】
前記マトリックスは、架橋ゴムを含有し、
該マトリックス中に含有される架橋ゴムのSP値が前記ドメインに含有される熱可塑性樹脂のSP値よりも小さく、かつ、
前記中間領域は、架橋ゴムを含有し、
該中間領域中に含有される架橋ゴムのSP値が前記ドメインに含有される熱可塑性樹脂のSP値よりも小さく前記マトリックス中に含有される架橋ゴムのSP値よりも大きい請求項1に記載の現像部材。
【請求項3】
前記中間領域はアクリロニトリル−ブタジエンゴムを含有し、前記マトリックスはブタジエンゴムを含有し、前記ドメインはポリ塩化ビニル樹脂を含有する請求項1または2に記載の現像部材。
【請求項4】
少なくとも現像部材と現像ブレード、現像装置が一体化して、電子写真画像形成装置本体に着脱可能に装着されて画像形成を行う電子写真プロセスカートリッジにおいて、該現像部材が請求項1乃至3のいずれか1項に記載の現像部材であることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジ。
【請求項5】
潜像を担持する感光体に対向して接触した状態でトナーを担持する現像部材を備え、現像部材が感光体にトナーを付与することにより感光体上に形成された潜像をトナー像として可視化する電子写真画像形成装置において、該現像部材が、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の現像部材であることを特徴とする電子写真画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像部材、電子写真プロセスカートリッジ並びに電子写真画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真画像の現像方式として、非磁性一成分現像剤を用いた接触現像方式は電子写真画像形成装置の小型化などの利点があることから、広く使用されている。
【0003】
この現像方式では、電荷によってトナーを移動させるため、現像ローラとしては、電流値の減衰が少なく、安定した導電性を有することが望まれる。また、現像ローラには、現像ブレードや感光ドラムとの接触状態を安定化させるために適度な柔軟性と高い寸法精度とを有することが望まれる。
【0004】
従来より、接触現像に用いられる現像ローラには、圧縮永久歪みや耐磨耗性、成形性に優れ、製造コストが安価である架橋ゴムを主に含む導電性の弾性層が使用されてきている。しかし、かかる弾性層を備えた現像ローラは、連続的な画像形成に供することより、直流電圧を印加しつつ、現像ローラの電流値が減衰する電流値低下が生じることがあった。現像ローラの電流値の経時的な低下は、現像バイアスを変化させ、電子写真画像に濃度ムラを生じさせることがある。
【0005】
このような課題に対して、特許文献1ではイオン導電剤を添加したものが提案されている。また特許文献2では、導電性発泡弾性体が溶解度パラメータ値(SP値)の異なる3種の架橋ゴムの海島構造からなり、特性の異なる2種類のカーボンブラックが分散されている半導電性現像ローラが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−169641号公報
【特許文献2】特開平10−254215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、上記特許文献に係る現像部材の検討の結果、長期に亘る直流電圧の印加による現像部材の電気抵抗の変化に対しては、更なる改善を図る必要があるとの認識を得た。
そこで、本発明の目的は、直流電圧の長期に亘る印加によっても電流値が低下し難い、耐久性に優れた現像部材を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、高品位な電子写真画像を安定して形成することのできるプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は下記の構成を備えることにより上記課題を解決できるものである。
すなわち、少なくとも軸芯体と、カーボンブラックを含む導電性の弾性層とを有する現像部材であって、該弾性層は、マトリックス中にドメインが分散している海島構造を有し、該マトリックスは架橋ゴムを含み、該ドメインは熱可塑性樹脂を含み、更に、該マトリックスの単位断面積当たりに含有しているカーボンブラックの含有率をA、該ドメインの単位断面積当たりに含有しているカーボンブラックの含有率をBとしたとき、A<B なる関係を満たしており、かつ、該ドメインと該マトリックスとの間に、中間領域を有し、該中間領域の単位断面積当たりに含有しているカーボンブラックの含有率が、該マトリックスの単位断面積当たりに含有しているカーボンブラックの含有率Aよりも多く、該ドメインの単位断面積当たりに含有しているカーボンブラックの含有率Bよりも少ない中間領域を有することを特徴とする現像部材。
【発明の効果】
【0009】
本発明の現像部材は、通電による電流値低下を抑制し、濃度ムラや濃度低下が少なく優れた画像形成が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例に係る現像部材としての現像ローラの断面を説明する図である。
図2】本発明の実施例に係る電流値、及び電流値低下の試験を行う測定器を説明する図である。
図3】本発明の実施例に係る電子写真画像形成装置を説明する図である。
図4】本発明の実施例に係る電子写真プロセスカートリッジを説明する図である。
図5】本発明の実施例27に係るCVD処理装置を説明する図である。
図6】本発明の実施例に係る弾性層の軸芯体から垂直方向に切断した断面の状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0012】
[現像部材]
本発明における現像部材としての現像ローラは図1に示すように軸芯体1上に弾性層2を有する。さらには、弾性層2の外周上に表面層3を有してもよい構成となっている。本発明における弾性層とは、弾性体からなるものであり、外部からの応力により変形するが、応力が除かれれば、元の形状に戻る性質を有する固体を意味する。さらに前記弾性層2の外周上に表面層3を有する場合には、連続画像形成による磨耗性が向上し、耐久性に優れた現像ローラを得ることができる。
【0013】
本発明における弾性層2に関しては、図6に概念を示した。図6は、本発明の実施例に係る弾性層の軸芯体から垂直方向に切断した断面の状態を説明する図である。この弾性層はマトリックス中にドメインが分散している海島構造を有している。海島構造とは2種以上の異なる材料を混合した場合の連続相であるマトリックス38と分散相であるドメイン36を意味する。さらに本発明においては前記マトリックス38とドメイン間に前記ドメイン36を取り囲むように中間領域37が存在することを特徴とする。この中間領域とは、前記マトリックスとドメインの間にドメインを取り囲むように存在していれば、連続相でも、分散相でも良い。
【0014】
本発明においては架橋ゴムを含むマトリックス38と熱可塑性樹脂を含むドメイン36とを有し、更に、該マトリックスにおける該カーボンブラックの単位断面積当たりの含有率をA、該ドメインにおける該カーボンブラックの単位断面積当たりの含有率をBとしたとき、A<B なる関係を満たしており、かつ、該ドメインと該マトリックスとの間に、カーボンブラックの単位断面積当たりの含有率が、該マトリックスにおけるカーボンブラックの単位断面積当たりの含有率Aよりも多く、該ドメインにおける該カーボンブラックの単位断面積当たりの含有率Bよりも少ない中間領域37を有する弾性層を有することを特徴としている。
【0015】
[メカニズム]
前記ドメインは熱可塑性樹脂を含有する。該熱可塑性樹脂は融点や軟化点を有しており、該熱可塑性樹脂の温度が融点や軟化点に達すれば溶融状態となり、柔軟化のために高いせん断が必要なゴムよりも先に溶融状態となる。したがって、混練、成形後には架橋ゴムよりもカーボンブラックを取り込みやすいため、より多くカーボンブラックが存在している。さらには溶解度パラメータであるSP値の高い熱可塑性樹脂であればカーボンブラックとの親和性が向上し、より多くのカーボンブラックを取り込むことができる。該ドメイン中にカーボンブラックを取り込むことによって、カーボンブラックが移動しにくい状態となるが、該ドメイン中にカーボンブラックが集中して取り込まれると、マトリックス中のカーボンブラック濃度が低下しすぎることによってマトリックスとドメインの導電性の差が大きくなり、現像部材の導電性のムラによって画像のムラが発生する。すなわち、該ドメインと該マトリックスとの間に、カーボンブラックの単位断面積当たりの含有率が、該マトリックスにおけるカーボンブラックの単位断面積当たりの含有率Aよりも多く、該ドメインにおける該カーボンブラックの単位断面積当たりの含有率Bよりも少ない中間領域を有することでカーボンブラックの移動が抑制され通電電流保持率の低下が低減され、かつドメインへの過度のカーボンブラックの集中による弾性層の導電性のムラを低減し、初期の濃度ムラを低減することが可能となると推測される。
【0016】
この弾性層中のカーボンブラックの含有する状態を達成させるためには、SP値が、マトリックス中に含有される架橋ゴム<中間領域に含有される架橋ゴム<ドメインに含有される熱可塑性樹脂、となることが好ましい。弾性層において、マトリックス中に含有される架橋ゴム、中間領域中に含有される架橋ゴム、ドメインに含有される熱可塑性樹脂がこのようなSP値の関係にあることによって、各材料とカーボンブラックとの親和性によってこのような構成がとりやすくなるものと思われる。
【0017】
本発明においては、カーボンブラックとの親和性や耐久性から特にドメインにポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、中間領域にアクリロニトリルーブタジエンゴム、マトリックスにブタジエンゴムをそれぞれ含有する場合がより効果的である。
【0018】
本発明者らの検討によれば、本発明のドメインに使用される熱可塑性樹脂の弾性層中における含有量は10.0質量%以上22.0質量%以下が好ましい。該ドメインの熱可塑性樹脂の含有量が10.0質量%以上であることで現像部材として必要な導電性を確保できる。また、該ドメインの熱可塑性樹脂の含有量が22.0質量%以下であることで架橋ゴムの比率が増えることによって耐久性や磨耗性に優れた現像部材を得ることができる。さらに、該ドメイン中における熱可塑性樹脂の含有量は35.0質量%以上61.0質量%以下が好ましい。この範囲内に熱可塑性樹脂が含有されることで、カーボンブラックを取り込んでカーボンブラックの移動を抑制することが可能となる。
【0019】
該ドメインの形状は如何なるものでも構わないが、例えば、球形、針形、柱形、不定形等の形状を取ることができる。また該ドメインの平均粒径は0.5μm以上100μm以下の範囲内であることが好ましい。ドメインの平均粒径が0.5μm以上であると、カーボンブラックの移動が制限されて電流値が低下しにくい現像部材が得られ、平均粒径が100μm以下であれば、ドメインの分散状態が安定し、導電性が安定した現像部材を得ることができる。該ドメインの粒径は、該ドメインの断面の長径と短径の平均値から導かれ、その平均粒径は数平均を算出して求められる。
【0020】
本発明におけるマトリックスに含有される架橋ゴムの弾性層中における含有量は、好ましくは25質量%以上50質量%以下である。マトリックスの架橋ゴムの含有量が25質量%以上であれば安定してマトリックスを形成でき、50質量%以下であれば導電パスの形成を確保可能である。さらに該マトリックス中における架橋ゴムの含有量は84質量%以上91質量%以下が好ましい。この範囲内にマトリックス中に架橋ゴムが含有されることによって、安定した海島構造をとることが可能となる。
【0021】
本発明における中間領域に含有される架橋ゴムの弾性層中における含有量は前記ドメインとマトリックスの間の中間領域を形成できる含有量であればよいが、好ましくは9質量%以上30質量%以下である。中間領域の架橋ゴムの含有量が9質量%以上であればカーボンブラックの導電パスを形成可能な中間領域を形成でき、30質量%以下であれば電流値低下に優れた現像部材を得ることができる。さらに該中間領域中における架橋ゴムの含有量は58質量%以上80質量%以下にあることが好ましい。中間領域中における架橋ゴムの含有量が本範囲内にあることによって、ドメインとマトリックス間へ架橋ゴムを存在させることが可能となり、電流値低下を抑制し、濃度低下や濃度ムラの抑制が効果的となる。
【0022】
本発明における弾性層中のカーボンブラックの含有量としては10質量%以上30質量%以下が好ましい。弾性層中のカーボンブラックの含有量が10質量%以上であれば、ドメイン、中間領域、マトリックスへの分散状態が安定し、導電性を確保でき、30質量%以下であれば、弾性を有する現像部材を得ることができる。
【0023】
本発明における現像部材の電流値は図2に示した測定器にて軸芯体の露出部に500gの荷重4を両端に一つずつかけた状態でSUSドラム6を60rpmで回転させた状態で、DC電源8から電圧を50V印加し、内部抵抗7は10kΩにて測定する。現像部材もSUSドラム6に従動して回転させた状態で現像部材の電流値をマルチメータ5にて測定を行う。現像部材の電流値としては、50μA以上3000μA以下であることが好ましく、さらには100μA以上2000μA以下であればより好ましい。電流値が50μA以上であれば、濃度ムラが発生しにくく、3000μA以下であればリークによる画像弊害を低減できる。電流値が100μA以上であればより濃度が安定し、2000μA以下であればリークがより低減できる。本発明における電流値低下状態は、図2に記載の測定器によって50V印加した状態で30分間通電を行い、通電前後の現像部材の電流値を通電電流保持率(%)として比較し、通電電流保持率(%)が20%以上、より好ましくは50%以上である。通電電流保持率(%)が20%以上あることで、現像特性に影響を及ぼしにくく、画像形成に優れた現像部材を得ることができる。通電電流保持率が50%以上であればより好ましい。本条件では、実用試験ではカラーレーザープリンターLBP5400(商品名 キヤノン社製)で1%の印字率で1000枚印字状態に相当する。
【0024】
本発明における現像部材としての現像ローラの外径は6.0mmから20.0mmの範囲のものが通常用いられる。現像ローラの外径が6.0mm以上であるとたわみが生じにくく、20.0mm以下であれば現像ローラが安定して回転できる。
【0025】
現像部材の硬度としてはASKER−C硬度で30度以上80度以下であることが望ましい。ASKER−C硬度が30度以上であれば現像部材と現像ブレードや感光ドラムとの当接状態が安定する。ASKER−C硬度が80度以下であれば、現像部材と感光ドラムの当接不良が発生せず、白抜けなどの画像の弊害を抑制できる。
【0026】
[弾性層材料]
本発明における弾性層に使用される材料のSP値とは、マトリックス、ドメイン、及び中間領域を各々構成しているベース材料である架橋ゴムあるいは熱可塑性樹脂(導電剤、添加剤等を含まないベースの弾性材料のみ)のSP値を指す。
【0027】
本発明におけるSP値は、物質の化学構造と密度から算出される下記Smallの式による計算値を利用する。
δ = ρΣF/M
F:原子及び官能基の分子凝集エネルギー定数(凝集エネルギー×分子容)1/2
M:高分子の繰り返し単位(構造単位)の分子量
ρ:密度
【0028】
本発明に使用される弾性層の材料としては以下のものが挙げられる。
前記ドメインに適用可能な熱可塑性樹脂としては、特にSP値の高い高極性のものが好適である。ドメインに使用される熱可塑性樹脂のSP値は9.5以上13.0以下が好ましい。SP値が9.5以上であることでカーボンブラックとの親和性が向上し、13.0以下であることで中間領域の架橋ゴムとの親和性が良好となる。具体的には以下の熱可塑性樹脂が挙げられる。ポリ塩化ビニル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアミド樹脂(ポリアミド6、ポリアミド66、MXD6など)、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート。その中でもカーボンブラックと架橋ゴムとの親和性からポリ塩化ビニル樹脂が特に好適である。
【0029】
前記マトリックスに適用可能な架橋ゴムとしては、特にSP値の小さい架橋ゴムが好適である。本マトリックスに使用される架橋ゴムのSP値は8.4未満であることが好ましい。SP値が8.4未満であることでカーボンブラックとの親和性が低下し、ドメイン側や中間領域側に存在しやすくなる。具体的には以下のゴム材料が挙げられる。イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、天然ゴム。その中でも耐久性・耐磨耗性からブタジエンゴムが特に好適である。
【0030】
前記マトリックスとドメイン間の中間領域に使用できる架橋ゴムのSP値としては8.5以上9.4未満にあることが好適である。前記領域に適用可能な架橋ゴムとしては、具体的にはスチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴムが挙げられる。その中でもドメインに含まれる高極性の熱可塑性樹脂やカーボンブラックとの親和性からアクリロニトリル−ブタジエンゴムが好適である。
【0031】
本発明においては、弾性層中のマトリックス、中間領域、ドメインにおけるSP値がマトリックス<中間領域<ドメインの順になっていることが好ましい。本構成となることによってカーボンブラックの単位断面積当たりの含有率がマトリックス<中間領域<ドメインとなりやすくなる。
【0032】
これら弾性層に導電性を付与させるために適用可能なカーボンブラックとしては、以下のものが挙げられる。ケッチェンブラック(登録商標)EC、アセチレンブラック、ゴム用カーボン、酸化処理を施したカラー用カーボン、および、熱分解カーボンなどの導電性のカーボン。ゴム用カーボンとして、具体的には、Super Abrasion Furnace(SAF)、Intermediate Super Abrasion Furnace(ISAF)、High Abrasion Furnace(HAF)、Fast Extruding Furnace(FEF)、General Purpose Furnace(GPF)、Semi Rein Forcing Furnace(SRF)、Fine Thermal(FT)およびMedium Thermal(MT)が挙げられる。
【0033】
前記マトリックス及び中間領域に含まれる架橋ゴム中に使用される架橋剤としては、以下のものが挙げられる。架橋剤としては、硫黄、4,4’−ジチオジモルホリン、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBT)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOTD)等のサルファードナーや有機過酸化物系の架橋剤を使用することもできる。上記有機過酸化物系の架橋剤としては、以下のものが挙げられる。tert−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシド、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)オクタン、2,5−ジメチル−2,5ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート。
【0034】
前記マトリックス及び中間領域に含まれる架橋ゴム中に使用される架橋促進剤としては、例えば以下の化合物が挙げられる。2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2−(4−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール(MDB)等のチアゾール系促進剤、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBT)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOTD)等のチウラム系促進剤、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)、ジメチルジチオカルバミン酸テルル(TDEC)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDMC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDEC)等のジチオカルバミン酸塩系促進剤、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N−オキシルジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(OBS)等のスルフェンアミド系促進剤、1,3ジフェニルグアニジン(DPG)、ジオルトトリルグアニジン(DOTG)等のグアニジン系促進剤、N,N’−エチレンチオウレア(ETU)、N,N’−ジエチルチオウレア(DETU)等のチオウレア系促進剤。
【0035】
これら架橋剤、架橋促進剤の総使用量としては、弾性層に使用する架橋前のゴム100質量部に対して、通常0.01質量部以上20質量部以下である。架橋剤、架橋促進剤の総使用量が0.01質量部以上であることで架橋密度が適度に高くなり、機械的強度、低圧縮永久歪性を確保できる。また、架橋剤、架橋促進剤の総使用量が20質量部以下であることで架橋密度が高くなり高硬度とならずに弾性を有する現像ローラを得ることができる。
【0036】
さらに、前記弾性層には、必要に応じて充填剤、酸化防止剤、老化防止剤又は加工助剤等の各種添加剤を使用することができる。
【0037】
充填剤としては、以下のものが挙げられる。ヒュームドシリカ、湿式シリカ、石英微粉末、ケイソウ土、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタン、タルク、雲母粉末、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維。これらの充填剤の表面を有機珪素化合物、例えば、ポリジオルガノシロキサン等で処理して疎水化してもよく、またこれらになんら限定されるものではなく公知の物が使用可能である。
【0038】
酸化防止剤としては、以下のものが挙げられる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤。
【0039】
また、老化防止剤としては、フェニレンジアミン類、フォスフェート類、キノリン類、クレゾール類、フェノール類、ジチオカルバメート金属塩類を挙げることができる。
【0040】
加工助剤としては公知の材料が使用可能であり、ステアリン酸やオレイン酸などの脂肪酸、あるいは脂肪酸の金属塩やエステル等が挙げられる。
【0041】
[弾性層の混練]
前記弾性層におけるマトリックス、ドメイン、及び中間領域を形成する材料を混練する方法としては、本発明による弾性層構成を作製できるものであれば特に限定されず、従来から使用されている公知の手法が適用可能である。具体的にはスタティックミキサー、二本ロール混合機、三本ロール混合機や、ニーダー、バンバリー混合機、2軸押出機などの混合機を単一で、または組合せて用いることにより混合することができる。ドメインに使用される熱可塑性樹脂の融点が高温である場合、あらかじめ高温炉などで熱可塑性樹脂を溶融した状態にしてから前記の如き混合機に投入してもよい。
【0042】
[弾性層の成形]
本発明における前記弾性層の成形方法は、従来から知られている押出成形法、射出成形法のごとき成型方法によって製造することができる。層構成としては本発明に記載された特徴を有すれば限定されず、1層あるいは2層以上の構成とすることができる。前記弾性層の厚みとしては、現像ローラとして、前記現像ローラの外径の好ましい範囲にあればよいが、さらには1mm以上5mm以下にあることが好ましい。弾性層の厚みが1mm以上であることで弾性層としての機能が良好であり、トナーが劣化しにくく、5mm以下であることで成形加工性が安定し、形状が一定し、段ムラなどの画像弊害が生じ難い。
【0043】
[表面層]
本発明において弾性層の外周上に表面層を設ける場合、その材料としては以下の如き有機系、無機系の材料が適用可能である。
【0044】
有機系の表面層用材料としては、以下の樹脂が挙げられる。ポリアミド樹脂;フッ素樹脂;スチレン系樹脂;ビニル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂のポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂の如き熱硬化性樹脂。スチレン系、オレフィン系、ウレタン系等の熱可塑性エラストマー。
【0045】
さらに、有機系の表面層の構成材料としてトナーの搬送を容易にするために粒子を分散させてもよい。このような目的に使用する粒子としては、例えば、ポリウレタン粒子、ポリメチルメタクリル酸メチル粒子、シリコーンゴム粒子、ポリスチレン粒子、アミノ樹脂粒子、フェノール樹脂粒子等が挙げられるが、特にポリウレタン粒子、ポリメチルメタクリル酸メチル粒子及びシリコーンゴム粒子が好ましい。これらの粒子は前記表面層のバインダー樹脂の20質量部から200質量部の範囲で添加することが好ましい。
【0046】
さらに、前記表面層には、必要に応じて充填剤、酸化防止剤、導電剤、老化防止剤又は加工助剤等の各種添加剤を使用することができる。
【0047】
充填剤としては、以下のものが挙げられる。ヒュームドシリカ、湿式シリカ、石英微粉末、ケイソウ土、酸化亜鉛、塩基性炭酸マグネシウム、活性炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタン、タルク、雲母粉末、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維。これらの充填剤の表面を有機珪素化合物、例えば、ポリジオルガノシロキサン等で処理して疎水化してもよく、またこれらになんら限定されるものではなく公知の物が使用可能である。
【0048】
酸化防止剤としては、以下のものが挙げられる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤。
【0049】
導電剤としては本発明においては電子導電機構による導電付与剤が染み出しの観点から好適である。
【0050】
電子導電機構による導電剤としては具体的には、アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀等の金属系の粉体や繊維、カーボンブラック。該カーボンブラックの導電剤としてはアセチレンブラック、ケッチェンブラック、PAN系カーボンブラック、ピッチ系カーボンブラック、カーボンナノチューブ等が挙げられる。これらの導電剤の中でも特に前記カーボンブラックの導電剤が、性能、品質、コストの面から好適である。また、老化防止剤としては、フェニレンジアミン類、フォスフェート類、キノリン類、クレゾール類、フェノール類、ジチオカルバメート金属塩類を挙げることができる。
【0051】
加工助剤としては公知の材料が使用可能であり、ステアリン酸やオレイン酸などの脂肪酸、あるいは脂肪酸の金属塩やエステル等が挙げられる。
【0052】
無機系の表面層用材料としては、シリカ膜や炭素膜が挙げられる。シリカ膜としてはO−Si−Oを主骨格とし、全元素におけるSiとOの占める割合が60%以上であり、SiにはH、O、Cの少なくとも1つがSiに結合されたシリカ膜が挙げられる。炭素膜としては高硬度、電気絶縁性、赤外線透過性を持つカーボン薄膜のダイヤモンドライクカーボン(DLC)が挙げられる。DLCの構造はCを主骨格とし、かつ若干のHを含有し,ダイヤモンド結合(SP3結合)とグラファイト結合(SP2結合)の両方の結合が混在しているアモルファス構造である。
【0053】
これらの表面層材料の中でも耐久性の観点から有機系の表面層としてはポリウレタン樹脂、あるいは無機系の表面層としてはシリカ膜が特に好適である。
【0054】
これら表面層の厚みは、形成される表面層の種類や形成方法により適宜選択される。有機系の表面層の場合には3μm以上1000μm以下である。表面層の厚みが3μm以上であれば、耐久性が確保でき、1000μm以下であればトナーの劣化が抑制可能な現像部材を得ることができる。無機系の表面層の厚みは0.01μm以上3μm以下が好ましい。表面層の厚みが0.01μm以上であれば、弾性層の保護が可能であり、3μm以下であれば、表面層の割れ等も抑制可能で耐久性に優れた現像部材を得ることができる。
【0055】
本発明における前記の表面層の形成方法は、ディップコート、スプレーコート、ロールコートの如き塗工方法によって形成する方法があげられる。また、無機系の表面層の成形方法として、プラズマCVD法で形成される方法の如き公知の表面層の形成方法を用いることも可能である。
【0056】
本発明においては表面層を有する場合、弾性層と表面層の剥離が生じないようにより密着性を向上させるために、弾性層の外周上をコロナ処理、フレーム処理、UV処理、プライマー処理にて改質してもよい。
【0057】
[軸芯体]
軸芯体としては、従来からこの種の現像部材に用いられているものが使用可能であり、その材料は十分な強度を有し、且つ導電性を有すれば特に限定されない。
【0058】
[電子写真プロセスカートリッジ、電子写真画像形成装置]
次に上記本発明の製造方法によって得られた現像部材である現像ローラを有する電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置を説明する。
【0059】
図3図4は本発明の電子写真画像形成装置及び電子写真プロセスカートリッジの該略構成を示す断面図である。
【0060】
図3に示した電子写真画像形成装置では、転写材である紙26が、給紙ローラ27によって、駆動ローラ20、テンションローラ23、従動ローラ25によって保持、駆動している転写搬送ベルト24と吸着ローラ28によって電子写真画像形成装置内部に供給されて、画像形成が行われる構成となっている。電子写真画像形成装置内では感光体として使用される感光ドラム9が回転し、感光ドラム9を帯電処理するための帯電ローラ16によって一様に帯電され、感光ドラム9に静電潜像を書き込む露光手段であるレーザー光15により、その表面に静電潜像が担持され形成される。上記静電潜像は、感光体として使用した感光ドラム9に対して接触配置される現像装置14によってトナー12を付与されることにより現像され、トナー像として可視化される。
【0061】
現像装置14は、非磁性トナーを収容した現像容器と、現像容器内の長手方向に延在する開口部に位置し感光ドラム9に対向設置された非磁性トナーを担持する現像ローラ10とを備え、感光ドラム9上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。
【0062】
本発明の電子写真画像形成装置には、以下の如きトナーを用いることができる。即ち、結着樹脂、離型剤、荷電制御剤、着色剤等の材料を混練し、冷却して固化して樹脂組成物を得た後、粉砕後、分級等をして粒度分布を揃えた粉体トナー。あるいは水系媒体中等で重合性単量体を重合して得られる重合トナー。
【0063】
現像は露光部にトナー像を形成するいわゆる反転現像を行っている。可視化された感光ドラム9上のトナー像は、バイアス電源22から転写バイアスを供給された転写ローラ21によって記録媒体である紙26に転写される。トナー像を転写された紙26は、定着装置19により定着処理され、電子写真画像形成装置外に排紙されプリント動作が終了する。
【0064】
一方、転写されずに感光ドラム9上に残存したトナー12は、感光ドラム9表面をクリーニングするためのクリーニング部材であるクリーニングブレード18により掻き取られ廃トナー容器17に収納され、クリーニングされた感光ドラム9は上述作用を繰り返し行う。
【0065】
電子写真プロセスカートリッジの例を、図4に示す。図4においては、現像ローラ10と現像ブレード13、現像装置14、帯電ローラ16を有し、その他トナー塗布部材11、感光ドラム9も組みこんでもよい。電子写真プロセスカートリッジは前記の部材から少なくとも現像ローラ、現像ブレード、現像装置が含まれて一体化して保持されてなるものであり、電子写真画像形成装置本体に着脱可能に装着して設けられる。トナー塗布部材11の構造としては、発泡骨格状スポンジ構造や軸芯体の外周にレーヨン、ポリアミド等の繊維を植毛したファーブラシ構造のものが、現像ローラ10へのトナー供給および未現像トナーの剥ぎ取りの点から好ましい。例えば、軸芯体の外周にポリウレタンフォームを設けた直径16mmの弾性ローラを用いることができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例によってさらに本発明を詳細に説明する。また、原材料に特に記載が無い場合においては、市販の試薬を使用した。
【0067】
なお、記載内での物性の測定方法については下記に記載の方法にて測定を実施した。得られた現像ローラの弾性層の処方は表1に、評価結果は実施例を表2及び比較例を表3に示した。
【0068】
〔実施例1〕
[弾性層材料の混練]
ドメインのベース材料としてポリ塩化ビニル樹脂のKR600(商品名、ヴィテック社製)20質量部、中間領域のベース材料としてアクリロニトリル−ブタジエンゴムのニポール401LL(商品名、日本ゼオン社製)を30質量部、マトリックスのベース材料としてBRのBR11(商品名、JSR社製)を50質量部、カーボンブラックとしてMTカーボンブラックのサーマックスフローフォームN990(商品名、CANCAB社製)30質量部、充填剤として炭酸カルシウムを5.0質量部、酸化亜鉛を5質量部、加工助剤としてステアリン酸亜鉛1.0質量部を6リットルニーダーTD6−15MDX(商品名、トーシン社製)にて混練した。然る後、架橋剤として硫黄1質量部、架橋促進剤としてメルカプトベンゾチアゾール(MBT)1質量部を12インチのオープンロール(関西ロール社製)にて混合し、弾性体の未架橋のゴム組成物を得た。
【0069】
[弾性層の作製及び押出]
得られた未架橋のゴム組成物をベント式ゴム押出機(φ50mmベント押出機 L/D=16 EM技研社製)によってチューブ状に押出し、加硫缶を用いた加圧水蒸気により温度160℃で30分間の一次加硫を行い、外径14mm、内径5.5mm、長さ250mmの架橋ゴムチューブを得た。
次に、外径6mm、長さ252mmの円柱形の導電性軸芯体(SUM22(JIS記号、硫黄複合快削鋼、表面はニッケルメッキ)の円柱面の軸方向中央部232mmにケムロック459X(商品名、ロード社製)をプライマーとして塗布したものに、前述の架橋ゴムチューブを圧入し、熱風炉にて温度160℃で2時間の二次加硫と接着処理を行い弾性ローラを得た。この加硫後の弾性ローラのゴム両端部を突っ切り、ゴム部分の長さを232mmとした後、GC80の砥石を使用して回転研磨機LEO−600−F4L−BME(商品名、水口製作所社製)にて研磨加工し、外径12.00mm直線形状の弾性層を有する現像ローラを複数本得た。得られた現像ローラは以下の評価に各々評価用試料として使用した。
【0070】
[カーボンブラックの含有率の測定]
得られた現像ローラの弾性層から長さ232mmを4等分する3箇所から軸芯体に垂直方向にカミソリにて0.5mm巾に切断し、裁断面からそれぞれの箇所から各々10枚の画像を撮影した。観察用の試料としてミクロトームを用いて厚さ100nmの超薄切片の試料を作製した。該試料を電子顕微鏡S−4800(商品名、日立製作所社製)によって10000倍の倍率で観察した観察像から、マトリックス/中間領域/ドメインを確認した。さらに該S−4800(商品名、日立製作所社製)に付属のエネルギー分散型X線分析装置(EDAX社製)を用い、加速電圧10kV、取り込み時間100秒で原子比率(Atomic%)にてカーボンブラックを特定した。
電子顕微鏡にて撮影した画像を画像処理ソフトPHOTOSHOP6.0(商品名、アドビ社製)にてカーボンブラックのみを選択して2値化処理を行い、該画像中のピクセルの輝度ヒストグラム比率よりマトリックス、中間領域、ドメインのそれぞれに含有しているカーボンブラックの含有率を算出した。
【0071】
[現像ローラの電流値の測定]
得られた現像ローラを温度40℃、相対湿度95%RHの環境下にて図2に示した測定器を用い、軸芯金の露出部に500gの荷重4を両端に一つずつかけた状態でSUSドラム6を60rpmで回転させた状態で、DC電源8から電圧を50V印加した。現像ローラもSUSドラム6に従動して回転させた状態で、内部抵抗7を10kΩとして現像ローラの電流値をマルチメータ5にて測定した。
【0072】
[初期の濃度ムラ]
得られた現像ローラを、カラーレーザープリンター(商品名:LBP5400、キヤノン社製)用の電子写真プロセスカートリッジへ組み込んだ。次いで、このプロセスカートリッジを、上記カラーレーザープリンタに装填した。次に、温度20℃、相対湿度50%の環境下で、A4サイズの用紙(商品名:キヤノンカラーレーザーコピアペーパー;坪量81.4g/m2、厚さ92μm、白色度92%)へ25%濃度のハーフトーン画像を1枚出力し、得られたハーフトーン画像について、濃度計X−Rite530(商品名、X−Rite社製)にて9点測定し、以下の基準にて評価した。
A:濃度の最大値―最小値が0.05未満。
B:濃度の最大値―最小値が0.05以上0.10未満で、ハーフトーン画像上に濃度ムラは見られない。
C:濃度の最大値―最小値が0.10以上で濃度ムラが生じている。
【0073】
[通電試験]
得られた現像ローラを温度40℃、相対湿度95%RHの環境下にて図2に示した測定器を用い、軸芯金の露出部に500gの荷重4を両端に一つずつかけた状態でSUSドラム6を60rpmで回転させた状態で、DC電源8から電圧を印加した。現像ローラもSUSドラム6に従動して回転させた状態で、内部抵抗7を10kΩとして現像ローラの電流値をマルチメータ5にて測定し、現像ローラの電流値が100μAとなるように印加電圧を調整して30分間通電を行った。
【0074】
[通電電流保持率]
通電後の現像ローラの電流値を通電電流保持率として前記現像ローラの電流値の測定方法から(試験後の電流値/試験前の電流値)(%)として比較した。
A:通電電流保持率が50%以上である。
B:通電電流保持率が20%以上50%未満である。
C:通電電流保持率が20%未満である。
【0075】
[通電後の濃度低下]
未使用の現像ローラをカラーレーザープリンターLBP5400(商品名、キヤノン社製)用の電子写真プロセスカートリッジへ組み込んだ。次に、温度20℃、相対湿度50%の環境下で、印字率1%の画像をA4サイズの用紙(キヤノンカラーレーザーコピアペーパー;坪量81.4g/m2、厚さ92μm、白色度92%)にて、ベタ画像を1枚出力した。次に、該現像ローラを取り出し前記通電試験を行った後に再度LBP5400に組み込み、前記同様にベタ画像を1枚出力した。得られた通電前後のベタ画像について、濃度計X−Rite530(商品名、X−Rite社製)を用いてベタ画像から10点測定した濃度値の平均値を以下の基準にて評価した。
A:ベタ画像の濃度の変化量が0.1未満である。
B:ベタ画像の濃度の変化量が0.1以上0.2未満である。
C:ベタ画像の濃度の変化量が0.2以上である。
【0076】
[耐久後の現像ローラ磨耗]
得られた現像ローラを、カラーレーザープリンターLBP5400(商品名 キヤノン社製)用の電子写真プロセスカートリッジへ組み込んだ。LBP5400本体へ該電子写真プロセスカートリッジを組み込んだ。次に、温度20℃、相対湿度50%の環境下で、印字率1%の画像をA4サイズの用紙(キヤノンカラーレーザーコピアペーパー;坪量81.4g/m2、厚さ92μm、白色度92%)へ1000枚出力した。その後に、現像ローラを取り出し、表面の磨耗状態を観察し、以下の基準にて評価した。
A:現像ローラに磨耗は見られない。
B:現像ローラ端部に若干の磨耗が見られる。
C:現像ローラに磨耗がある。
【0077】
[耐久後のハーフトーンの濃度ムラ]
得られた現像ローラを、カラーレーザープリンターLBP5400(商品名 キヤノン社製)用の電子写真プロセスカートリッジへ組み込んだ。LBP5400本体へ該電子写真プロセスカートリッジを組み込んだ。次に、温度20℃、相対湿度50%の環境下で、印字率1%の画像をA4サイズの用紙(キヤノンカラーレーザーコピアペーパー;坪量81.4g/m2、厚さ92μm、白色度92%)へ1000枚出力した後に、25%ハーフトーン画像を1枚出力し得られたハーフトーン画像について、濃度計X−Rite530(商品名、X−Rite社製)を用いて9点測定し、以下の基準にて評価した。
A:濃度の最大値―最小値が0.10未満。
B:濃度の最大値―最小値が0.10以上0.15未満でハーフトーン画像上に濃度ムラは見られない。
C:濃度の最大値―最小値が0.15以上で濃度ムラが生じている。
【0078】
【表1-1】
【0079】
【表1-2】
【0080】
【表1-3】
【0081】
【表1-4】
※1 カーボンブラック、サーマックスフローフォームN990(商品名、CANCAB社製)
※2 カーボンブラック、7360SB(商品名、東海カーボン社製)
※3 カーボンブラック、HS500(商品名、東海カーボン社製)
※4 カーボンブラック、シーストGSO(商品名、東海カーボン社製)
※5 PVC樹脂、KR600(商品名、ヴィテック社製)
※6 PMMA樹脂、アクリペットV001(商品名、三菱レイヨン社製)
※7 ポリアミド6樹脂(PA6)、A1030BRL(商品名、ユニチカ社製)
※8 LDPE樹脂、スミカセンG801(商品名、住友化学社製)
※9 アクリロニトリル−ブタジエンゴム(18%NBR)、ニポール401LL(商品名、日本ゼオン社製;ニトリル18質量%)
※10 アクリロニトリル−ブタジエンゴム(29%NBR)、ニポール1043(商品名、日本ゼオン社製;ニトリル29質量%)
※11 アクリロニトリル−ブタジエンゴム(40.5%NBR)、ニポール1041(商品名、日本ゼオン社製
※12 スチレン−ブタジエンゴム(23.5%SBR)、1502(商品名、JSR社製;スチレン量23.5質量%)
※13 クロロプレンゴム(CR)、ネオプレンWRT(商品名、デュポンダウエラストマー社製)
※14 エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エスプレン505A(商品名、住友化学社製)
※15 イソプレンゴム(IR)、IR2200(商品名、JSR社製)
※16 ブタジエンゴム(BR)、BR11(商品名、JSR社製)
【0082】
〔実施例2〜17〕
弾性層に使用した原材料を表1に示した材料に変更した以外は実施例1と同様に弾性層を成形し評価を行った。実施例2〜5及び実施例14〜17のドメインに使用したPMMA、実施例6〜9のドメインに使用したポリアミド6はあらかじめ、高温炉にて溶融した状態で他の材料と一緒に6リットルニーダーTD6−15MDX(商品名、トーシン社製)に投入した。
【0083】
〔実施例18〜26〕
実施例1〜9で得られた弾性ローラを各々外径11.98mmに研磨し、さらに以下の方法にて表面層を作製し、2層構成の現像ローラを得た。それ以外は実施例1と同様の方法にて評価を行った。
【0084】
[表面層の作製]
表面層用材料として、ニッポラン5033(商品名、日本ポリウレタン社製)を使用し、硬化剤としてイソシアネートのコロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を合わせて100質量部とし、その比率は[NCO]/[OH]のモル比の値が1.2となるようにした。さらに、カーボンブラックMA100(商品名、三菱化学社製)を30質量部添加した。上記原料混合液に有機溶剤を加え、ポリウレタン粒子CFB−101−40(商品名、大日本インキ化学工業社製)を5質量部加え、均一分散、混合したものを表面層の原料液とした。
この樹脂原料液中に、実施例1から9で得られた現像ローラをそれぞれ浸漬してコーティングした後、引き上げて乾燥させ、温度160℃にて20分間加熱処理することで、厚み10μmの表面層を弾性ローラの外周に設けた現像ローラを作製した。
【0085】
〔実施例27〕
実施例1と同様に得られた弾性ローラを図5に示した平行平板電極29のプラズマCVD装置内に平行平板電極29との距離を50mmとなるように設置した後、真空ポンプ34を用いて真空チャンバー33内を0.01paに減圧した。その後原料ガスとしてガス供給部30からヘキサメチルジシロキサン蒸気を1.0sccm(ここで「sccm」は、前記原料ガスが温度0℃、1気圧である時の毎分あたり1cmの体積流量を表す。)、酸素及び希ガス供給部31からアルゴンガス22.5sccmの混合ガスを真空チャンバー33内に導入し、真空チャンバー33内の圧力が1.0Paになるように調整した。圧力が一定になった後、高周波電源35により周波数が13.56MHz、70wの電力を、長さが300mmで放電部の総面積が120cmとなる平行平板電極29に供給し平行平板電極29間にプラズマを発生させた。真空チャンバー33内に設置した弾性層を有する弾性ローラは回転装置32にて30rpmで回転させて、300秒間処理を行い厚み1μmの表面層を形成し現像ローラを得た。得られた現像ローラを実施例1と同様に評価を行った。
また、本実施例の現像ローラの被膜表面の元素の存在比率O/Si及びC/SiをX線光電子分光装置Quantum2000(商品名、アルバック・ファイ社製)にて成分分析したところ、それぞれ1.56及び0.32のシリカ膜であった。
【0086】
〔実施例28〜30〕
実施例1のカーボンブラックの添加量を40質量部、50質量部、または20質量部に変更した以外は実施例1と同様の方法にて現像ローラを作製し評価を行った。
【0087】
〔実施例31〜33〕
実施例1のカーボンブラックを以下のものに変えた以外は実施例1と同様の方法にて現像ローラを作製し評価を行った。
実施例31:7360SB(商品名、東海カーボン社製)、
実施例32:HS500(商品名、東海カーボン社製)
実施例33:シーストGSO(商品名、東海カーボン社製)。
【0088】
〔実施例34〕
実施例1から中間領域の材料としてニポール401LL(商品名、日本ゼオン社製)を添加せずにニポール1041(商品名、日本ゼオン社製)に変更した以外は実施例1と同様に評価を行った。
【0089】
〔実施例35〜40〕
実施例1から各材料の添加量を表1に示した量に変更して現像ローラを作製し、実施例1と同様に評価を行った。
【0090】
【表2-1】
【0091】
【表2-2】
【0092】
【表2-3】
【0093】
【表2-4】
【0094】
〔比較例1〕
実施例1からPVCのKR600(商品名、ヴィテック社製)を添加せずに、中間領域の材料としてニポール401LL(商品名、日本ゼオン社製)を40質量部として弾性層を成形した以外は実施例1と同様に評価を行った。
【0095】
〔比較例2〕
実施例1から中間領域の材料としてニポール401LL(商品名、日本ゼオン社製)を添加せずにマトリックスの材料としてブタジエンゴム BR11(商品名、JSR社製)を90質量部にて弾性層を成形した以外は実施例1と同様に評価を行った。
【0096】
〔比較例3〕
実施例1から中間領域の材料としてニポール1041(商品名、日本ゼオン社製)に変更した以外は実施例1と同様に評価を行った。
【0097】
〔比較例4〕
実施例1からドメインの熱可塑性樹脂として低密度ポリエチレンのスミカセンG801(商品名、住友化学社製)に変更した以外は実施例1と同様に評価を行った。
【0098】
〔比較例5〕
実施例1からマトリックスのゴム材料としてBR11を添加せずにニポール1041(商品名、日本ゼオン社製)に変更した以外は実施例1と同様に評価を行った。
【0099】
【表3】
【符号の説明】
【0100】
1・・・軸芯体
2・・・弾性層
3・・・表面層
36・・ドメイン
37・・中間領域
38・・マトリックス
図1
図2
図3
図4
図5
図6