(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
静磁場内の被検体に核磁気共鳴を起こすための励起パルスを送信し、読み出し方向傾斜磁場の極性反転の繰り返しによって発生させた複数のエコー信号を収集し、複数の前記エコー信号に基づいて前記被検体の画像データを再構成するEPI(エコープラナーイメージング)を実行可能な磁気共鳴イメージング装置であって、
位相エンコード方向傾斜磁場の印加を含む前記EPIのエコー信号収集シーケンスを実行することで、発生させた複数の前記エコー信号を第1テンプレートデータとして収集する第1収集部と、
前記位相エンコード方向傾斜磁場の印加を含むと共に、前記第1テンプレートデータの収集時とは前記読み出し方向傾斜磁場の印加開始タイミングをずらした前記EPIのエコー信号収集シーケンスを前記第1テンプレートデータの収集後に実行することで、発生させた複数の前記エコー信号を第2テンプレートデータとして収集する第2収集部と、
前記第1および第2テンプレートデータを用いて、前記エコー信号に含まれる位相誤差の補正、および、前記静磁場を均一化するための磁場補正の双方を行う補正部と
を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
静磁場内の被検体に核磁気共鳴を起こすための励起パルスを送信し、読み出し方向傾斜磁場の極性反転の繰り返しによって発生させた複数のエコー信号を収集し、複数の前記エコー信号に基づいて前記被検体の画像データを再構成するEPI(エコープラナーイメージング)を実行可能な磁気共鳴イメージング装置であって、
位相エンコード方向傾斜磁場の印加を含む前記EPIのエコー信号収集シーケンスにより本スキャンを実行することで、第1の前記エコー信号群を収集する第1収集部と、
前記位相エンコード方向傾斜磁場の印加を含むと共に、前記本スキャンの前記EPIのエコー信号収集時とは前記読み出し方向傾斜磁場の印加開始タイミングをずらした前記EPIのエコー信号収集シーケンスを実行することで、第2の前記エコー信号群を収集する第2収集部と、
前記第1および第2のエコー信号群を用いて、前記本スキャンのエコー信号に含まれる位相誤差の補正、および、前記静磁場を均一化するための磁場補正の双方を行う補正部と
を備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
静磁場内の被検体に核磁気共鳴を起こすための励起パルスを送信し、読み出し方向傾斜磁場の極性反転の繰り返しによって発生させた複数のエコー信号を収集し、複数の前記エコー信号に基づいて前記被検体の画像データを再構成するEPI(エコープラナーイメージング)を含む磁気共鳴イメージング方法であって、
位相エンコード方向傾斜磁場の印加を含む前記EPIのエコー信号収集シーケンスを実行することで、発生させた複数の前記エコー信号を第1テンプレートデータとして収集するステップと、
前記位相エンコード方向傾斜磁場の印加を含むと共に、前記第1テンプレートデータの収集時とは前記読み出し方向傾斜磁場の印加開始タイミングをずらした前記EPIのエコー信号収集シーケンスを前記第1テンプレートデータの収集後に実行することで、発生させた複数の前記エコー信号を第2テンプレートデータとして収集するステップと、
前記第1および第2テンプレートデータを用いて、前記エコー信号に含まれる位相誤差の補正、および、前記静磁場を均一化するための磁場補正の双方を行うステップと
を有することを特徴とする磁気共鳴イメージング方法。
静磁場内の被検体に核磁気共鳴を起こすための励起パルスを送信し、読み出し方向傾斜磁場の極性反転の繰り返しによって発生させた複数のエコー信号を収集し、複数の前記エコー信号に基づいて前記被検体の画像データを再構成するEPI(エコープラナーイメージング)を含む磁気共鳴イメージング方法であって、
位相エンコード方向傾斜磁場の印加を含む前記EPIのエコー信号収集シーケンスにより本スキャンを実行することで、第1の前記エコー信号群を収集するステップと、
前記位相エンコード方向傾斜磁場の印加を含むと共に、前記本スキャンの前記EPIのエコー信号収集時とは前記読み出し方向傾斜磁場の印加開始タイミングをずらした前記EPIのエコー信号収集シーケンスを実行することで、第2の前記エコー信号群を収集するステップと、
前記第1および第2のエコー信号群を用いて、前記本スキャンのエコー信号に含まれる位相誤差の補正、および、前記静磁場を均一化するための磁場補正の双方を行うステップと
を有することを特徴とする磁気共鳴イメージング方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、MRI装置およびMRI方法の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、各図において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態におけるMRI装置20の全体構成を示すブロック図である。
図1に示すように、MRI装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石22と、静磁場用磁石22の内側において軸を同じにして設けられた筒状のシムコイル24と、傾斜磁場コイル26と、RFコイル28と、制御装置30と、被検体Pが乗せられる寝台32とを備える。
【0021】
ここでは一例として、装置座標系の互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を以下のように定義する。まず、静磁場用磁石22およびシムコイル24は、それらの軸方向が鉛直方向に直交するように配置されているものとし、静磁場用磁石22およびシムコイル24の軸方向をZ軸方向とする。また、鉛直方向をY軸方向とし、寝台32は、その天板の載置用の面の法線方向がY軸方向となるように配置されているものとする。
【0022】
制御装置30は、静磁場電源40と、シムコイル電源42と、傾斜磁場電源44と、RF送信器46と、RF受信器48と、シーケンスコントローラ56と、コンピュータ58とを備える。
【0023】
傾斜磁場電源44は、X軸傾斜磁場電源44xと、Y軸傾斜磁場電源44yと、Z軸傾斜磁場電源44zとを有する。また、コンピュータ58は、演算装置60と、入力装置62と、表示装置64と、記憶装置66とを有する。
【0024】
静磁場用磁石22は、静磁場電源40に接続され、静磁場電源40から供給された電流により撮像空間に静磁場を形成させる。
【0025】
上記撮像空間とは、例えば、被検体Pが置かれて、静磁場が印加されるガントリ内の空間の意味である。ガントリとは、静磁場磁石22、シムコイル24、傾斜磁場コイル26、RFコイル28を含むように、例えば円筒状に形成された構造体である。被検体Pが乗せられた寝台32がガントリの内部に移動できるように、ガントリおよび寝台32は構成される。なお、
図1では煩雑となるので、ガントリ内の静磁場磁石22、シムコイル24、傾斜磁場コイル26、RFコイル28を構成要素として図示し、ガントリ自体は図示していない。
【0026】
撮像領域は、例えば、「1つの画像」または「1セットの画像」の生成に用いるMR信号の収集範囲であって、撮像空間の一部として設定される領域の意味である。ここでの「1つの画像」および「1セットの画像」とは、2次元画像の場合もあれば3次元画像の場合もある。ここでの「1セットの画像」とは、例えば、マルチスライス撮像などのように、1つのパルスシーケンス内で「複数の画像」のMR信号が一括的に収集される場合の、「複数の画像」である。撮像領域は、例えば、装置座標系によって3次元的に規定される。ここでは一例として、撮像領域は、厚さの薄い領域であればスライスと称し、ある程度の厚みのある領域であればスラブと称することとする。
【0027】
シムコイル24は、シムコイル電源42に接続され、シムコイル電源42から供給される電流により、この静磁場を均一化する。静磁場用磁石22は、超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源40に接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。なお、静磁場電源40を設けずに、静磁場用磁石22を永久磁石で構成してもよい。
【0028】
傾斜磁場コイル26は、X軸傾斜磁場コイル26xと、Y軸傾斜磁場コイル26yと、Z軸傾斜磁場コイル26zとを有し、静磁場用磁石22の内側で筒状に形成されている。X軸傾斜磁場コイル26x、Y軸傾斜磁場コイル26y、Z軸傾斜磁場コイル26zはそれぞれ、X軸傾斜磁場電源44x、Y軸傾斜磁場電源44y、Z軸傾斜磁場電源44zに接続される。
【0029】
X軸傾斜磁場電源44x、Y軸傾斜磁場電源44y、Z軸傾斜磁場電源44zからX軸傾斜磁場コイル26x、Y軸傾斜磁場コイル26y、Z軸傾斜磁場コイル26zにそれぞれ供給される電流により、X軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzが撮像領域にそれぞれ形成される。
【0030】
即ち、装置座標系のX、Y、Z軸方向の傾斜磁場Gx、Gy、Gzを合成して、論理軸としてのスライス選択方向傾斜磁場Gss、位相エンコード方向傾斜磁場Gpe、および、読み出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場Groを任意に設定できる。スライス選択方向、位相エンコード方向、および、読み出し方向の各傾斜磁場Gss、Gpe、Groは、静磁場に重畳される。
【0031】
RF送信器46は、シーケンスコントローラ56から入力される制御情報に基づいて、核磁気共鳴を起こすためのラーモア周波数のRFパルス(RF電流パルス)を生成し、これを送信用のRFコイル28に送信する。RFコイル28には、ガントリに内蔵されたRFパルスの送受信用の全身用コイルや、寝台32または被検体Pの近傍に設けられるRFパルスの受信用の局所コイルなどがある。
【0032】
送信用のRFコイル28は、RF送信器46からRFパルスを受けて被検体Pに送信する。受信用のRFコイル28は、被検体Pの内部の原子核スピンがRFパルスによって励起されることで発生したMR信号(高周波信号)を受信し、このMR信号は、RF受信器48により検出される。
【0033】
RF受信器48は、検出したMR信号に前置増幅、中間周波変換、位相検波、低周波増幅、フィルタリングなどの各種の信号処理を施した後、A/D(analog to digital)変換を施すことで、デジタル化された複素データである生データ(raw data)を生成する。RF受信器48は、生成したMR信号の生データをシーケンスコントローラ56に入力する。
演算装置60は、MRI装置20全体のシステム制御を行うものである。
【0034】
シーケンスコントローラ56は、演算装置60の指令に従って、傾斜磁場電源44、RF送信器46およびRF受信器48を駆動させるために必要な制御情報を記憶する。ここでの制御情報とは、例えば、傾斜磁場電源44に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報である。
【0035】
シーケンスコントローラ56は、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源44、RF送信器46およびRF受信器48を駆動させることにより、X軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy、Z軸傾斜磁場GzおよびRFパルスを発生させる。また、シーケンスコントローラ56は、RF受信器48から入力されるMR信号の生データ(raw data)を受けて、これを演算装置60に入力する。
【0036】
図2は、
図1に示すコンピュータ58の機能ブロック図である。コンピュータ58の演算装置60は、MPU(Micro Processor Unit)86と、システムバス88と、画像再構成部90と、画像データベース94と、画像処理部96と、表示制御部98と、補正部100とを備える。
【0037】
MPU86は、撮像条件の設定、撮像動作および撮像後の画像表示において、システムバス88等の配線を介してMRI装置20全体のシステム制御を行う。
【0038】
「撮像条件」とは、例えば、スピンエコーやEPIなどの内のどの種類のパルスシーケンスにより、どのような条件でRF信号等を送信して、どのような条件で被検体からMR信号を収集するか、の意味である。
【0039】
「撮像条件」の各項目としては、例えば、撮像空間内での位置的情報としての撮像領域、フリップ角、繰り返し時間(TR:Repetition Time)、スライス数、位相エンコード方向及び周波数エンコード方向のステップ数、EPIやスピンエコー法などのパルスシーケンスの種類、などが挙げられる。
【0040】
また、MPU86は、撮像条件設定部としても機能し、入力装置62からの指示情報に基づいてパルスシーケンスを含む撮像条件を設定し、設定した撮像条件をシーケンスコントローラ56に入力する。そのために、MPU86は、表示制御部98を制御して、撮像条件の設定用画面情報を表示装置64に表示させる。
入力装置62は、撮像条件や画像処理条件を設定する機能をユーザに提供する。
【0041】
画像再構成部90は、内部にk空間データベース92を有する。画像再構成部90は、k空間データベース92に形成されたk空間において、シーケンスコントローラ56から入力されるMR信号の生データをk空間データとして配置する。画像再構成部90は、k空間データに画像再構成処理を施して、被検体Pの各スライスの画像データを生成し、生成した画像データを画像データベース94に保存する。
【0042】
画像処理部96は、画像データベース94から画像データを取り込み、これに所定の画像処理を施し、画像処理後の画像データを表示用画像データとして記憶装置66に記憶させる。
【0043】
記憶装置66は、上記の表示用画像データに対し、その表示用画像データの生成に用いた撮像条件や被検体Pの情報(患者情報)等を付帯情報として付属させて記憶する。
【0044】
表示制御部98は、MPU86の制御に従って、撮像条件の設定用画面や、撮像により生成された画像データが示す画像を表示装置64に表示させる。
【0045】
補正部100は、目的とする画像用のMR信号の収集(本スキャン)の前に、プレスキャンとして行われるテンプレートショット1、2の収集データに基づいて、以下の2つを行う。
【0046】
第1に、補正部100は、静磁場不均一性を補正(均一化)するための磁場補正マップを生成する。
【0047】
第2に、補正部100は、本スキャンで収集されたMR信号から画像データを再構成する際にMR信号に含まれる位相誤差の影響を取り除くための位相補正データを生成する。以下、これらの詳細について説明する。
【0048】
図3は、本スキャンおよびテンプレートショット1、2の各パルスシーケンスの一例を示すタイミング図である。
図3の上段、中段、下段はそれぞれ、本スキャン(MAIN SCAN)、テンプレートショット1(TEMPLATE SHOT 1)、テンプレートショット2(TEMPLATE SHOT 1)の各パルスシーケンスを示し、各横軸は経過時間tを示す。
【0049】
図3の上段、中段、下段において、RFはRFパルス、Gssはスライス選択方向の傾斜磁場、Gpeは位相エンコード方向傾斜磁場、Groは読み出し方向傾斜磁場、Signalはエコー(MR信号)をそれぞれ示す。なお、本実施形態の特徴の1つとして、テンプレートショット1、2で位相エンコード方向傾斜磁場Gpeが印加される点が挙げられる。
【0050】
図3の本スキャンでは一例として、スピンエコー系のシングルショットEPIを示す。即ち、フリップ角が90°の励起パルス(RFパルス)の印加後、実効エコー時間の約半分が経過したタイミングで180°励起パルスが印加され、MR信号が収集される。ここでは一例として、テンプレートショット1は、本スキャンと同じパルスシーケンスとする。
テンプレートショット1、2のパルスシーケンス上の違いは、次の2点のみである。
【0051】
第1の相違点として、テンプレートショット2では、位相エンコードステップパルスの「印加開始のタイミング」、および、読み出し方向傾斜磁場Groの印加開始のタイミングをテンプレートショット1よりもエコー間隔の2倍の時間幅で遅らす。
【0052】
ここでの「印加開始のタイミング」とは、例えば、180°RFパルスの印加開始時刻を基準とするものである。なお、ここでは一例として、本スキャンおよび各テンプレートショット1、2について、90°RFパルス、180°RFパルスの印加開始タイミングは共通である(後述の第2の実施形態のテンプレートショット2’、第3の実施形態のテンプレートショット3についても同様)。
【0053】
また、上記「エコー間隔」とは、読み出し方向傾斜磁場Groの極性が反転してから再反転するまでの時間幅であり、以下、「Gro反転間隔」と表記する。これにより、テンプレートショット2における90°励起パルスの印加時を基準としたエコー(MR信号)の発生開始タイミングは、テンプレートショット1の場合よりもGro反転間隔の2倍の時間幅で遅れる。
【0054】
また、上記「位相エンコードステップパルス」とは、
図3の位相エンコード方向傾斜磁場Gpeの例では、最初に印加されるプレパルスを除く他の位相エンコード方向傾斜磁場パルスであり、Gro反転間隔で印加される。プレパルスは、
図3では横軸(時間軸)の下側に台形状で示すものである。位相エンコード方向傾斜磁場Gpeについては、始めに印加されるプレパルスだけが他とは異なり、2番目以降に所定の時間間隔で印加される位相エンコードステップパルスは、互いに同じである。
【0055】
これら位相エンコードステップパルスが読み出し方向傾斜磁場の反転に同期して印加されることで、傾斜磁場の反転に伴って連続発生する各MR信号に位相エンコード方向の位置的情報が付与される。
【0056】
第2の相違点として、位相エンコード方向傾斜磁場Gpeのプレパルスの印加強度の時間積分値の絶対値がテンプレートショット1、2で異なる(両者の印加タイミングは同じである)。
【0057】
具体的には、k空間データの中心ラインには、位相エンコードステップがゼロのタイミングで受信したMR信号が配列される。位相エンコードステップがゼロとは、シングルショットのEPIの場合、所定間隔で順次印加される位相エンコードステップパルスの合算面積が、位相エンコード方向傾斜磁場Gpeのプレパルスの面積に等しくなるタイミングである。ここでの面積とは、信号強度の時間積分値の絶対値である。また、ここでの位相エンコードステップがゼロとは、通常のスピンエコー法で位相エンコードステップを変えてその都度MR信号を収集する場合に、位相エンコード方向傾斜磁場Gpeを印加せずに収集するステップに対応する。
【0058】
テンプレートショット1では、以下の2つのタイミングが同じにされている。一方は、スピンエコー法による90°および180°RFパルスの印加により、選択スライスにおける全水素原子核のスピンの位相(各スピンの横磁化ベクトルの方向)が揃い、MR信号強度が最大になるべきタイミングである。このタイミングは、実効エコー時間(EFFECTIVE ECHO TIME)として、
図3では縦方向の破線で示す。他方は、位相エンコード方向傾斜磁場によって信号強度が最大になるべきタイミング、即ち、位相エンコードステップがゼロのタイミングである。
【0059】
即ち、テンプレートショット1では、位相エンコード方向傾斜磁場Gpeにおいて、始めのプレパルスの面積は、その直後の位相エンコードステップパルス5個の合算面積に等しい。この場合、
図3に破線で示す実効エコー時間において、信号強度が最大のMR信号が収集され、このデータがk空間の中心ラインに配置される。
【0060】
一方、テンプレートショット2の位相エンコード方向傾斜磁場Gpeでは、始めのプレパルスの面積は、その直後の位相エンコードステップパルス4個の合算面積に等しい。さらに、テンプレートショット2では、テンプレートショット1よりも読み出し方向傾斜磁場の印加開始タイミングを遅らせた分、MR信号の発生開始タイミングも2エコー分遅れる。従って、テンプレートショット2では、(時間的に早い方から)4つ目の位相エンコードステップパルスの印加直後に収集されるMR信号が、位相エンコードステップゼロに該当して、k空間の中心ラインに配置される(このMR信号が、最大強度となる)。
【0061】
即ち、テンプレートショット2では、k空間中心ラインのMR信号(位相エンコードステップがゼロのタイミングでの収集信号)は、テンプレートショット1よりも、収集タイミングが1エコー分遅れる。このため、テンプレートショット2から得られる位相画像は、テンプレートショット1から得られる位相画像よりも、静磁場の不均一性等によって位相が進んだものとなる。
【0062】
従って、上記のテンプレートショット1、2の収集データの差分を用いることで、位相誤差を補正するための位相補正データ、および、磁場補正マップを生成できる。
このように、第1の実施形態の原理として以下の2条件が言える。
【0063】
第1の条件として、磁場補正マップの生成の点から、テンプレートショット1、2で、位相エンコードステップがゼロに対応するMR信号の発生タイミングを、(例えばGro反転間隔の自然数倍で)ずらすことが望ましい。ここでの「ずらす」とは、例えば、位相エンコード傾斜磁場Gpeのプレパルスの印加開始時、或いは、180°RFパルスの印加開始時を基準としてずらす。
【0064】
第2の条件として、位相補正データの生成の点から、位相エンコードステップがゼロのタイミングにおける読み出し方向傾斜磁場Groの極性を、テンプレートショット1、2で互いに逆にする。上記タイミングでの読み出し方向傾斜磁場Groの極性を反転させた2つのテンプレートショットのデータの差分により、静磁場不均一性による位相誤差成分が消去され、位相誤差成分のみを抽出できるからである。
【0065】
従って、磁場補正マップを生成せずに、位相補正データを生成する場合、上記第1の条件を満たす必要はなく、テンプレートショット1、2で、位相エンコードステップがゼロに対応するMR信号の発生タイミングを同じにしてもよい(後述の第2の実施形態および
図12参照)。
【0066】
同様に、位相補正データの生成を考慮せずに、磁場補正マップの生成のみに着目した場合、上記第2の条件を満たす必要はない。即ち、位相エンコードステップがゼロのタイミングにおける読み出し方向傾斜磁場Groの極性は、2つのテンプレートショットで同じにしてもよい。この点は、後述の第3の実施形態のテンプレートショット1、3と、
図14で説明する。
【0067】
第1の実施形態では、磁場補正マップおよび位相補正データを生成するため、テンプレートショット1、2は、上記第1および第2の条件を満たす。
【0068】
具体的には、
図3のテンプレートショット1の例では、破線で示す実効エコー時間において、位相エンコードステップがゼロとなり、このタイミングの読み出し方向傾斜磁場Groの極性はマイナスである。
【0069】
一方、テンプレートショット2では、テンプレートショット1の場合よりもGro反転間隔だけ(1エコー分だけ)遅れたタイミングにおいて、位相エンコードステップがゼロとなり、このタイミングの読み出し方向傾斜磁場Groの極性はプラスである。
【0070】
また、テンプレートショット1、2間でずらすMR信号の発生開始タイミングは、Gro反転間隔を基準として、
図3の例ではその2倍としているが、他の自然数倍の時間幅で遅らせてもよい。これは、位相エンコードステップパルス、および、読み出し方向傾斜磁場Groの印加開始タイミングを適宜ずらすことで実現できる。
【0071】
本実施形態では、上記のテンプレートショット1、2の収集データを用いて、磁場補正マップおよび位相補正データを生成するが、位相補正データの生成方法について先に説明する。
【0072】
まず、テンプレートショット1で収集される各MR信号(以下、テンプレートデータ1という)から、搬送周波数の余弦関数を差し引く等の処理をして、k空間データの実数部分を得る。また、テンプレートデータ1から、搬送周波数の正弦関数を差し引く等の処理をして、k空間データの虚数部分を得る。以下、
図4を用いてk空間データの作成手段の一例について具体的に説明する。
【0073】
図4は、位相エンコード及び周波数エンコードのマトリクス要素数が256×256の場合に、k空間でのMR信号の配列順の一例を示す模式図である。
図4において、TRは繰り返し時間(Repetition Time)であり、横方向のTsはサンプリング時間(Sampling Time)であり、縦方向は位相エンコードステップ(Phase Encode Step)である。
【0074】
通常のスピンエコー法のようなパルスシーケンスでは、位相エンコードを256回変えて、収集した256ラインのMR信号からそれぞれ、搬送周波数の余弦関数又は正弦関数を引く。この処理後の256のMR信号を、
図4のように位相エンコードステップ順に下から−127、−126、・・・−1、0、1、・・・127、128のように並べる。これにより、256×256のマトリクス要素からなるマトリクスデータ、即ち、k空間データの実数部分又は虚数部分を得る。
【0075】
一方、本実施形態のようなシングルショットのEPIでは、位相エンコードステップがゼロのタイミングの前に4ライン分のMR信号しか収集できなければ、収集数は(256/2)+4=132ラインとなる。この場合、収集されなかった124ラインは、k空間上では例えばデータとしてゼロが入る。
【0076】
テンプレートショット1の場合、位相エンコードステップが−127〜−6の各ラインには、MR信号のデータとして、例えばゼロが入る(
図4参照)。そして、テンプレートショット1で収集されるMR信号は、
図3のように、時間順に位相エンコードステップが−5、−4、−3、−2、−1、0、1、・・・127、128の順番となる。即ち、テンプレートショット1では、時間的に最も早く収集されるMR信号は、k空間において位相エンコードステップが−5のラインに配置される。また、テンプレートショット1では、時間的に6番目に早く収集されるMR信号は、k空間において位相エンコードステップがゼロのライン(k空間の中心ライン)に配置される。
【0077】
ここで、
図4の横方向では、例えば、各MR信号のサンプリング時間Tsを256で等間隔に割ったΔTs毎に、MR信号の強度をマトリクス値にする。これにより、実数と虚数についてそれぞれ、256行256列のマトリクスデータが求まる。これをk空間データとする。
【0078】
次に、テンプレートデータ1から得たk空間データの実数部分の中心ラインのデータに1次元フーリエ逆変換を施すことで、横軸を周波数、縦軸をスペクトル強度とするデータを得る。次に、この1次元フーリエ逆変換後のデータを−∞から+∞(単位はヘルツまたはラジアン)までで周波数積分した値をReal1とする。
【0079】
同様に、テンプレートデータ1から得たk空間データの虚数部分の中心ラインのデータを1次元フーリエ逆変換後に、−∞から+∞までで周波数積分した値をImag1とする。次に、逆正接(arctangent)を用いた次式によって、テンプレートデータ1の位相角度Ph1を算出する。
【0080】
Ph1=arctan(Imag1/Real1) …(1)
【0081】
同様に、テンプレートショット2で収集される各MR信号(以下、テンプレートデータ2という)から、搬送周波数の余弦関数または正弦関数を差し引く等の処理をして、k空間データの実数部分および虚数部分をそれぞれ得る。次に、テンプレートデータ2から得たk空間データの実数部分の中心ラインのデータを1次元フーリエ逆変換後に、−∞から+∞までで周波数積分した値をReal2とする。
【0082】
同様に、テンプレートデータ2から得たk空間データの虚数部分の中心ラインのデータを1次元フーリエ逆変換後に、−∞から+∞までで周波数積分した値をImag2とする。そして、次の(2)式によって、テンプレートデータ2の位相角度Ph2を算出する。
【0083】
Ph2=arctan(Imag2/Real2) …(2)
【0084】
上記の位相角度Ph1、Ph2を位相補正データとして、本スキャンで収集したMR信号から画像データを再構成する際に、位相補正データに基づいて位相補正を行う。
【0085】
次に、磁場補正マップの生成方法について、位相エンコードステップ数および周波数エンコード数が共に256の場合を例に説明する。但し、位相エンコードステップ数および周波数エンコードステップ数については、256以外でもよい。
【0086】
まず、第1位相画像として、テンプレートデータ1から得たk空間データの実数部分および虚数部分を用いて、縦横の画素数が256×256の位相画像を生成する。具体的には、k空間データの実数部分の256×256の各マトリクス要素と、k空間データの虚数部分の256×256の各マトリクス要素とで、同じ位置にあるもの同士の比に基づき逆正接を算出する。
【0087】
例えばk空間データの実数部分の第1行第1列目のマトリクス要素の値をaとし、k空間データの虚数部分の第1行第1列目のマトリクス要素の値をbとする。
【0088】
そして、θ=arctan(b/a)で与えられる角度θを算出し、これを第1位相画像における、第1行第1列目のマトリクス要素値とする。同様にして256×256の全てのマトリクス要素値を算出後、算出したマトリクス要素値のデータに2次元フーリエ変換を施すことで、画素数256×256の第1位相画像を得る。
さらに、テンプレートデータ2の位相画像も同様にして生成し、これを第2位相画像とする。
【0089】
次に、(同じ位置にある画素同士で)第1位相画像の各画素値と、第2位相画像の各画素値との差分を算出後、所定の係数を乗じることで差分画像(画素数256×256)を生成する。具体的には、例えば第1位相画像の第1行第1列目の画素値をθ1とし、第2位相画像の第1行第1列目の画素値をθ2とする。そして、以下の(3)式で与えられるθsubを差分画像の第1行第1列目の画素値とする。
【0090】
θsub=γ×(θ1−θ2)/DT …(3)
【0091】
(3)式において、γは水素原子の磁気回転比(42.6MHz/T)であり、DTはテンプレートショット1、2でずらしたデータ収集開始の時間差(秒)である。
【0092】
図3の例では、Gro反転間隔の2倍がDTとなる。他の画素についても(3)式によって同様に画素値を算出することで、差分画像を生成する。このようにして生成した第1位相画像と第2位相画像との差分画像を磁場補正マップとする。
【0093】
より詳細には、
図3のテンプレートショット1では、スピンエコー法に基づく実効エコー時間でのMR信号のデータがk空間の中心ラインに配置されるように、位相エンコード方向傾斜磁場Gpeが印加される。スピンエコー法に基づく実効エコー時間でのMR信号のデータは、90°および180°RFパルスの印加により、選択スライス内の全水素原子核のスピンの位相が理想的には揃っており、これがk空間の中心に配置されれば、ほぼ対称的な磁場マップとして第1位相画像が生成される。
【0094】
一方、テンプレートショット2では、前述のように、スピンエコー法の90°および180°RFパルスの印加によってMR信号が最大強度になるべきタイミングと、位相エンコードステップがゼロになるタイミングとが、Gro反転間隔だけずれる。
【0095】
このため、テンプレートショット2では、位相をずらした分だけ非対称な磁場マップとして、第2位相画像が生成される。即ち、テンプレートショット2では、テンプレートショット1の場合よりも磁場が不均一な磁場マップとして、第2位相画像が生成される。従って、上記のように第1位相画像と第2位相画像との差分画像を生成することで、これを磁場補正マップとして活用できる。
【0096】
図5は、テンプレートデータ1から得られる第1位相画像の一例を示す模式図である。
図5では、簡単化のため、画素数を20×20の粗めにしている(後述の
図6、
図7も同様)。また、
図5では、画素値が大きい画素ほど白く(輝度レベルを高く)、画素値が小さい画素ほど黒くしている(後述の
図6、
図7、
図8、
図9も同様)。
図5に示すように、テンプレートショット1からは、ほぼ対称的な磁場マップとしての第1位相画像が得られる。
【0097】
図6は、テンプレートデータ2から得られる第2位相画像の一例を示す模式図である。
図6に示すように、テンプレートショット2からは、テンプレートショット1の場合よりも対称性の悪い第2位相画像が得られる。
【0098】
図7は、第1位相画像と第2位相画像とを用いて(3)式に基づいて得られる差分画像(磁場補正マップ)の一例を示す模式図である。
図7に示すように、テンプレートショット1、2からそれぞれ得られる位相画像の差分を取ることで、画素値の高低の勾配として、位相差が表れる。
【0099】
図8は、磁場補正マップによる静磁場不均一性の補正を本スキャン前に行わずに、均一なファントムを撮像して得られる画像の一例を示す。
【0100】
図9は、磁場補正マップによる静磁場不均一性の補正を本スキャン前に行ってから、
図8と同一のファントムを撮像して得られる画像の一例を示す。
【0101】
図10は、磁場補正マップによる補正を行わない場合(
図8)と、行う場合(
図9)との違いを説明するための模式図である。
図10は、
図8の画像に存在する4箇所の歪み領域を抽出し、歪み領域122、124、126、128としたものである。
【0102】
磁場補正マップによる補正を行わない場合、
図8と
図10との対比で示されるように、4箇所の歪み領域122、124、126、128が表れている。磁場補正マップによる補正を行う場合、
図9に示すように、歪み領域122はファントムの左上側の外縁に、歪み領域124はファントムの右上側の外縁に、歪み領域126はファントムの右下側の外縁に、歪み領域128はファントムの左下側の外縁にそれぞれ移動している。これにより、歪みが大きく改善され、本来均一なはずのファントムが
図8の場合よりも均一に改善されている。
【0103】
図11は、第1の実施形態におけるMRI装置20の動作の流れを示すフローチャートである。以下、前述の各図を適宜参照しながら、
図11に示すステップ番号に従って、MRI装置20の動作を説明する。
【0104】
[ステップS1]MPU86(
図2参照)は、入力装置62を介してMRI装置20に対して入力された撮像条件に基づいて、MRI装置20の初期設定を行う。この初期設定において、位置決め画像の撮像時におけるRFパルスの暫定的な中心周波数等が設定される。
【0105】
[ステップS2]シーケンスコントローラ56は、不図示の寝台制御系を駆動して、撮像空間となるガントリ内の磁場中心に被検体Pの撮像部位が位置するように、寝台32(
図1参照)移動させる。撮像部位とは、頭部、胸部、腹部、腰部、脚部などの被検体Pのどの部分を撮像領域として画像化するか、の意味である。
【0106】
次に、MRI装置20は、位置決め画像のデータ収集用のRFパルス等を送信し、MR信号をRF受信器48により検出する。RF受信器48は、MR信号に所定の信号処理を施し、デジタル化したMR信号である生データを生成し、これをシーケンスコントローラ56に入力する。
【0107】
シーケンスコントローラ56は、MR信号の生データを画像再構成部90に入力し、画像再構成部90は、この生データに所定の処理を施して位置決め画像の画像データを生成し、これを画像データベース94に入力する。
【0108】
画像処理部96は、入力された画像データに所定の画像処理を施し、記憶装置66は、画像処理後の位置決め画像の画像データを記憶する。この後、表示制御部98は、MPU86の指令に従って表示装置64に位置決め画像を表示させ、これに基づいて関心領域等の撮像条件が設定される。
【0109】
[ステップS3]MRI装置20は、以下の<1>〜<4>のフローに従って、位相補正データおよび磁場補正データを生成するための2種類のテンプレートショットをプレスキャンとして実行後、目的とする画像用のデータ収集(本スキャン)を実行する。
【0110】
なお、以下のテンプレートショット1、2は、空間的に互いに同一の領域であって、本スキャンの撮像領域と同一の領域に対してそれぞれ行う。
【0111】
<1> MPU86は、テンプレートショット1のパルスシーケンスとして、例えば、ステップS2までに入力された撮像条件に基づいて設定される本スキャンのパルスシーケンスと同じものを設定する(
図3参照)。次に、MPU86は、テンプレートショット1のパルスシーケンスをシーケンスコントローラ56に入力し、収集開始を指令する。
【0112】
これにより、MRI装置20は、テンプレートショット1のパルスシーケンスに従って、データ収集用のRFパルス等を送信し、MR信号をRF受信器48により検出する。
【0113】
シーケンスコントローラ56は、RF受信器48により検出および生成されたMR信号の生データを画像再構成部90に入力する。
【0114】
画像再構成部90は、k空間データベース92に形成されたk空間に、この生データをテンプレートショット1のk空間データとして配置する。
【0115】
<2> MPU86は、テンプレートショット2のパルスシーケンスとして、位相エンコードステップパルスの、および、読み出し方向傾斜磁場Groの印加開始のタイミングをテンプレートショット1よりも遅らせたものを設定する。また、位相エンコードステップがゼロのタイミングにおける、テンプレートショット1、2の各読み出し方向傾斜磁場Groの極性を逆にする。テンプレートショット1、2の違いの詳細については、
図3を用いて説明済なので、説明を省略する。
【0116】
次に、MPU86は、テンプレートショット2のパルスシーケンスをシーケンスコントローラ56に入力し、収集開始を指令する。これにより、上記(1)と同様にしてk空間データベース92に形成されたk空間において、テンプレートショット2のk空間データが配置される。
【0117】
<3> 補正部100は、画像再構成部90のk空間データベース92からテンプレートショット1、2のk空間データをそれぞれ取得し、テンプレートショット1の位相画像である第1位相画像と、テンプレートショット2の位相画像である第2位相画像とを生成する。
【0118】
次に、補正部100は、第1位相画像と第2位相画像とを用いて、(3)式によって差分画像を生成し、この差分画像を磁場補正マップとしてMPU86に入力する。第1および第2位相画像と、差分画像の生成方法については、前述した通りである。
【0119】
<4> 磁場補正マップに基づいて静磁場を均一化するための補正(シミング)を行ってから、設定された撮像条件に従って本スキャンのMR信号の収集が行われる。
【0120】
そのために、MPU86は、磁場補正マップが示す磁場の不均一性を相殺して静磁場を均一化するオフセット磁場を計算する。そして、MPU86は、静磁場にオフセット磁場が重畳して印加されるように、シーケンスコントローラ56を介して各部を制御する。なお、一般に静磁場の不均一成分における2次以上の成分は、例えばシムコイル24への供給電流の調整でシミング可能である。また、静磁場の不均一成分における1次成分は、例えばX軸、Y軸、Z軸傾斜磁場コイル26x、26y、26zへの各供給電流の調整でシミング可能である。
【0121】
具体的動作としては、まず、静磁場電源40により励磁された静磁場用磁石22によって撮像空間に静磁場が形成される。そして、入力装置62からMPU86に撮像開始指示が入力されると、MPU86は、本スキャンのパルスシーケンス等を含む撮像条件をシーケンスコントローラ56に入力する。
【0122】
シーケンスコントローラ56は、入力されたパルスシーケンスに従って傾斜磁場電源44、RF送信器46およびRF受信器48を駆動させることで、スライス選択方向傾斜磁場Gss、位相エンコード方向傾斜磁場Gpe、読み出し方向傾斜磁場Groを撮像領域に形成させると共に、RFコイル28からRF信号を発生させる。
【0123】
このとき、傾斜磁場電源44からX軸、Y軸、Z軸傾斜磁場コイル26x、26y、26zへの供給電流には、上記オフセット磁場を生成させる分が重畳され、静磁場がほぼ均一化されたのと等価になる。
【0124】
そして、被検体P内の核磁気共鳴により生じたMR信号がRFコイル28により受信されて、RF受信器48により検出される。RF受信器48は、検出したMR信号に前述の所定の信号処理を施して、MR信号の生データを生成し、これをシーケンスコントローラ56に入力する。
【0125】
シーケンスコントローラ56は、生データを画像再構成部90に入力し、画像再構成部90は、k空間データベース92に形成されたk空間において、生データをk空間データとして配置する。
【0126】
MRI装置20は、以上の<1>〜<4>の処理を1スライスのデータ収集として、全スライスのデータ収集を行う。
【0127】
[ステップS4]補正部100は、全てのスライスに対してそれぞれ位相補正データを算出する。補正部100は、各々の位相補正データを、各位相補正データの算出対象となった各スライスとそれぞれ関連付けて画像再構成部90に入力する。
【0128】
具体的には、補正部100は、テンプレートデータ1のk空間データの実数部分および虚数部分の各中心ラインを1次元フーリエ逆変換した各データの各周波数積分値を算出後、前述のように逆正接を用いてテンプレートデータ1の位相角度Ph1を算出する。補正部100は、同様にしてテンプレートデータ2の位相角度Ph2を算出し、位相角度Ph1、ph2を、当該テンプレートデータ1、2に対応するスライスの位相補正データとする。
【0129】
[ステップS5]画像再構成部90は、k空間データベース92からk空間データを取り込み、これにフーリエ変換を含む画像再構成処理を施すことで、各スライス毎に画像データを再構成する。
【0130】
この画像再構成処理において、画像再構成部90は、スライス毎に別々に算出した位相補正データを用いて、MR信号に含まれる位相誤差の影響を取り除く補正を併せて行う。なお、位相補正データを生成するまでの処理は従来とは異なるが、位相補正データを生成後の位相誤差の補正処理については従来技術と同様でよいため(特許文献2等を参照)、詳細な説明を省略する。
【0131】
画像再構成部90は、上記のようにして全スライスの画像データを生成し、これらを画像データベース94に保存する。画像処理部96は、画像データベース94から画像データを取り込み、これに所定の画像処理を施すことで2次元の表示用画像データを生成し、この表示用画像データを記憶装置66に保存する。
【0132】
[ステップS6]表示制御部98は、MPU86の制御に従って表示用画像データを記憶装置66から取得し、表示用画像データが示す画像を表示装置64に表示させる。以上が第1の実施形態のMRI装置20の動作説明である。
【0133】
このように第1の実施形態では、各エコーに対応する位相エンコード方向傾斜磁場の印加を含むと共に、エコーの発生開始タイミングを互いにずらしたテンプレートショット1、2を本スキャン前に実行してテンプレートデータ1、2を得る。
【0134】
そして、テンプレートデータ1、2に基づき磁場補正マップと位相補正データを生成するため、本スキャンでの静磁場を均一化する補正と、本スキャンのMR信号の収集後における位相誤差の補正とを一括的に行うことができる。
【0135】
このとき、磁場補正マップに基づいて静磁場を均一化する補正を先に行ってから、本スキャンのMR信号を収集後、位相補正データに基づく位相誤差の補正を行う。即ち、本スキャンのMR信号は、磁場補正マップに基づいて良好に均一化された静磁場が印加された撮像領域から収集される。従って、位相誤差の補正の精度を向上できる。
【0136】
さらに、撮像スライスと同一断面からの収集データに基づいて磁場補正データを生成して、各スライス毎に静磁場の不均一性の補正を行うため、静磁場の補正効果が高くなる。
【0137】
従って、EPIにおける位相誤差に起因する画像歪みを従来よりも低減可能である(
図8、
図9参照)。
【0138】
なお、各エコーに含まれる位相誤差の内、静磁場不均一性に起因するものと、その他の原因によるものとを補正する方法は様々なものがあるが、従来はそれぞれ単独で行われていた。
【0139】
(第2の実施形態)
第2および第3の実施形態のMRI装置は、装置構成としては、第1の実施形態のMRI装置20と同様である。第2の実施形態では、磁場補正マップに基づく静磁場を均一化する補正を行わず、位相誤差の補正のみを行う。以下、第1の実施形態との違いに焦点をおいて、第2の実施形態について説明する。
【0140】
図12は、第2の実施形態において、スピンエコー系のシングルショットEPIとしての本スキャン、テンプレートショット1、2’のパルスシーケンスの一例を示すタイミング図である。
図12において、横軸等の書式は、
図3と同じであり、
図12の上段の本スキャン、および、中段のテンプレートショット1はそれぞれ、第1の実施形態の本スキャン、および、テンプレートショット1と同じである。
【0141】
図12において、下段のテンプレートショット2’(TEMPLATE SHOT 2’)のみ、第1の実施形態のテンプレートショット2とは異なる。
【0142】
例えば位相エンコード傾斜磁場Gpeのプレパルスの印加開始時を基準として、テンプレートショット2’では、位相エンコードステップがゼロに対応するMR信号の発生タイミングは、テンプレートショット1と同じである。磁場補正マップを生成するには、テンプレートショット1、2で、位相エンコードステップがゼロに対応するMR信号の発生タイミングをずらすが、第2の実施形態では磁場補正マップを生成しないからである。
【0143】
テンプレートショット2’では、位相エンコード傾斜磁場Gpeのプレパルスの面積(強度の時間積分値の絶対値)は、始めの4つの位相エンコードステップパルスの合算面積に等しい。即ち、テンプレートショット2’では、時間的に5番目に収集されるMR信号が位相エンコードステップゼロに対応し、このMR信号の強度が最大になる。
【0144】
ここで、位相エンコードステップがゼロに対応するMR信号の発生タイミング(
図12では縦の破線で示す実効エコー時間)に着目する。このタイミングにおける読み出し方向傾斜磁場Groの極性は、テンプレートショット1ではマイナスであり、テンプレートショット2’ではプラスである。位相補正データを得るためには、位相エンコードステップがゼロのタイミングにおける読み出し方向傾斜磁場Groの極性を、テンプレートショット1、2’で互いに逆にすることが望まれるからである。
【0145】
以上のテンプレートショット1、2’を用いることで、第1の実施形態と同様の原理で位相補正データを生成できる。
【0146】
図13は、第2の実施形態におけるMRI装置20の動作の流れを示すフローチャートである。以下、
図13に示すステップ番号に従って、第2の実施形態のMRI装置20の動作を説明する。
【0147】
[ステップS21]第1の実施形態のステップS1と同様に、MRI装置20の初期設定が行われる。
【0148】
[ステップS22]第1の実施形態のステップS2と同様に、位置決め画像の画像データが生成され、これが表示装置64に画像表示され、関心領域等の撮像条件が設定される。
【0149】
[ステップS23]MRI装置20は、以下の<1>〜<3>のフローに従って、位相補正データを生成するための2種類のテンプレートショットをプレスキャンとして実行後、本スキャンを実行する。なお、テンプレートショット1、2’は、空間的に互いに同一の領域であって、本スキャンの撮像領域と同一の領域に対してそれぞれ行う。
【0150】
<1> MRI装置20は、第1の実施形態のステップS3の<1>と同様に、テンプレートショット1のパルスシーケンスを実行する。これにより、テンプレートショット1のk空間データが、k空間データベース92に形成されたk空間に配置(記憶)される。
【0151】
<2> MPU86は、前述したテンプレートショット2’のパルスシーケンスを設定後、このパルスシーケンスをシーケンスコントローラ56に入力し、収集開始を指令する。これにより、k空間データベース92に形成されたk空間において、テンプレートショット2’のk空間データが配置される。
【0152】
<3> 磁場補正マップに基づく静磁場均一化の補正を行わずに、設定された撮像条件に従って、本スキャンのMR信号の収集が行われる。MR信号収集の具体的動作については、磁場補正マップが用いられないことを除き、第1の実施形態のステップS3の<4>と同様である。
【0153】
MRI装置20は、以上の<1>〜<3>の処理を1スライスのデータ収集として、全スライスのデータ収集を行う。
【0154】
[ステップS24]補正部100は、テンプレートショット1、2’のk空間データを用いることで、第1の実施形態のステップS4と同様に、全スライスに対してそれぞれ位相補正データを算出する。補正部100は、算出した各位相補正データを、算出対象の各スライスと関連付けて画像再構成部90に入力する。
【0155】
[ステップS25]第1の実施形態のステップS5と同様に、画像再構成部90は、各スライス毎の位相補正データに基づいてMR信号に含まれる位相誤差を補正しつつ、各スライスの画像データを再構成する。この後、第1の実施形態のステップS5と同様に、表示用画像データが生成され、記憶装置66に保存される。
【0156】
[ステップS26]第1の実施形態のステップS6と同様に、表示用画像データの画像表示が行われる。以上が第2の実施形態のMRI装置20の動作説明である。
【0157】
このように第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の原理でEPIにおける位相誤差を低減できる。なお、従来技術では、位相誤差を低減させるテンプレートショットにおいて、位相エンコード方向傾斜磁場Gpeを印加していなかった。
【0158】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第1の実施形態と同様に、磁場補正マップに基づく静磁場を均一化する補正と、位相誤差の補正とを行う。第3の実施形態では、3つのテンプレートショットを行う。以下、第1の実施形態との違いに焦点をおいて、第3の実施形態について説明する。
【0159】
図14は、第3の実施形態において、スピンエコー系のシングルショットEPIとしてのテンプレートショット1、2’、3のパルスシーケンスの一例を示すタイミング図である。
図14において、横軸等の書式は、
図3と同じである。
【0160】
第3の実施形態の本スキャンのパルスシーケンスは、第1の実施形態の本スキャンおよび第3の実施形態のテンプレートショット1と同じであるので、図示していない。
【0161】
図14の上段に示すテンプレートショット1(TEMPLATE SHOT 1)は、第1の実施形態のテンプレートショット1と同じである。
【0162】
図14の中段に示すテンプレートショット2’(TEMPLATE SHOT 2’)は、第2の実施形態のテンプレートショット2’と同じである。第3の実施形態では、テンプレートショット1、2’を用いることで、第2の実施形態と同様に位相補正データを生成し、位相誤差の補正を行う。
【0163】
図14の下段に示すテンプレートショット3(TEMPLATE SHOT 3)は、磁場補正マップの生成用である。第3の実施形態では、テンプレートショット1、3を用いることで、第1の実施形態と同様にして磁場補正マップを生成し、静磁場均一性の補正を行う。磁場補正マップの生成のためには、テンプレートショット1、3で、位相エンコードステップがゼロに対応するMR信号の発生タイミングをずらすことが望ましい。
【0164】
従って、テンプレートショット3では、位相エンコードステップがゼロに対応するMR信号の発生タイミングは、テンプレートショット1よりもGro反転間隔の1倍だけ遅れている。ここでの「遅れ」とは、例えば、位相エンコード傾斜磁場Gpeのプレパルスの印加開始時を基準とする。
【0165】
テンプレートショット3では、位相エンコード傾斜磁場Gpeのプレパルスの面積(強度の時間積分値の絶対値)は、始めの5つの位相エンコードステップパルスの合算面積に等しい。即ち、テンプレートショット3では、時間的に6番目に収集されるMR信号が位相エンコードステップゼロに対応してk空間の中心ラインに配置され、このMR信号の強度が最大になる。
【0166】
ここで、位相エンコードステップがゼロに対応するMR信号の発生タイミングに着目する。このタイミングは、テンプレートショット1では、
図14の縦方向の破線で示す実効エコー時間に対応するが、テンプレートショット3では、テンプレートショット1よりも1エコー分遅れる。
【0167】
そうすると、位相エンコードステップがゼロに対応するMR信号の発生タイミングにおける読み出し方向傾斜磁場Groの極性は、テンプレートショット1、3の双方においてマイナスである(
図14参照)。即ち、第1の実施形態では、テンプレートショット2は位相補正データおよび磁場補正マップの双方の生成に用いられるため、このタイミングにおける読み出し方向傾斜磁場Groの極性を逆にしている。位相補正データの生成のためには、それが望まれるからである。
【0168】
しかし、第3の実施形態のテンプレートショット3は、位相補正データの生成には用いられない。磁場補正マップの生成のみに着目した場合、位相エンコードステップゼロのタイミングにおける読み出し方向傾斜磁場Groの極性を、2つのテンプレートショットで互いに逆にする必要はない。
【0169】
図15は、第3の実施形態におけるMRI装置20の動作の流れを示すフローチャートである。以下、
図15に示すステップ番号に従って、第3の実施形態のMRI装置20の動作を説明する。
【0170】
[ステップS31]第1の実施形態のステップS1と同様に、MRI装置20の初期設定が行われる。
【0171】
[ステップS32]第1の実施形態のステップS2と同様に、位置決め画像の画像データが生成され、これが表示装置64に画像表示され、関心領域等の撮像条件が設定される。
【0172】
[ステップS33]MRI装置20は、以下の<1>〜<5>のフローに従って、位相補正データおよび磁場補正マップを生成するための3種類のテンプレートショットをプレスキャンとして実行後、本スキャンを実行する。なお、テンプレートショット1、2’、3は、空間的に互いに同一の領域であって、本スキャンの撮像領域と同一の領域に対してそれぞれ行う。
【0173】
<1> MRI装置20は、第1の実施形態のステップS3の<1>と同様に、テンプレートショット1のパルスシーケンスを実行する。これにより、テンプレートショット1のk空間データが、k空間データベース92に形成されたk空間に配置(記憶)される。
【0174】
<2> MRI装置20は、第2の実施形態のステップS23の<2>と同様に、テンプレートショット2’のパルスシーケンスを実行する。これにより、テンプレートショット2’のk空間データが、k空間データベース92に形成されたk空間に配置(記憶)される。
【0175】
<3> MPU86は、前述したテンプレートショット3のパルスシーケンスを設定後、このパルスシーケンスをシーケンスコントローラ56に入力し、収集開始を指令する。これにより、k空間データベース92に形成されたk空間において、テンプレートショット3のk空間データが配置される。
【0176】
<4> 補正部100は、画像再構成部90のk空間データベース92からテンプレートショット1、3のk空間データをそれぞれ取得する。補正部100は、テンプレートショット1の位相画像である第1位相画像と、テンプレートショット3の位相画像である第2位相画像とを生成する。
【0177】
次に、補正部100は、第1位相画像と第2位相画像とを用いて、前述同様に(3)式によって差分画像を生成し、この差分画像を磁場補正マップとしてMPU86に入力する。
【0178】
<5> 第1の実施形態のステップS3の<4>と同様にして、磁場補正マップに基づいて静磁場を均一化するための補正を行ってから、設定された撮像条件に従って本スキャンのMR信号の収集が行われる。
【0179】
MRI装置20は、以上の<1>〜<5>の処理を1スライスのデータ収集として、全スライスのデータ収集を行う。
【0180】
[ステップS34]補正部100は、テンプレートショット1、2’の各k空間データを用いることで、第1の実施形態のステップS4と同様に、全スライスに対してそれぞれ位相補正データを算出する。補正部100は、算出した各位相補正データを、算出対象のスライスと関連付けて画像再構成部90に入力する。
【0181】
[ステップS35]第1の実施形態のステップS5と同様に、画像再構成部90は、各スライス毎の位相補正データに基づいてMR信号に含まれる位相誤差を補正しつつ、各スライスの画像データを再構成する。この後、第1の実施形態のステップS5と同様に、表示用画像データが生成され、記憶装置66に保存される。
【0182】
[ステップS36]第1の実施形態のステップS6と同様に、表示用画像データの画像表示が行われる。以上が第3の実施形態のMRI装置20の動作説明である。
このように第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0183】
(実施形態の補足事項)
[1]第1〜第3の実施形態では、
図3、
図12、
図14に示したように、本スキャンとテンプレートショット1とでパルスシーケンスを全く同じにする例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。本スキャンとテンプレートショット1とでパルスシーケンスに若干の変更を加えてもよい。
【0184】
但し、位相エンコードステップパルス、および、読み出し方向傾斜磁場Groの印加開始のタイミングを除き、テンプレートショット1、2、2’3のパルスシーケンスは同じにすることが望ましい。条件を変えると、位相の差分のみを抽出することが困難となりうるからである。以上の点については、以下の補足事項[2]、[3]についても同様である。
【0185】
[2]第1および第3の実施形態のように、磁場補正マップに基づく静磁場均一性の補正を行った上で本スキャンのMR信号の収集を行う場合、各テンプレートショット1、2、2’、3は、本スキャンの前に行うことが望まれる。この場合、本スキャンの前に、磁場補正マップが生成されていないと、磁場補正マップに基づく静磁場均一性の補正を実行できないからである。この場合、各テンプレートショット1、2、2’、3は、どれを先に行ってもよい。
但し、例えば以下の変形例のように、本スキャンのMR信号の収集時に、磁場補正マップに基づく静磁場均一性の補正を実行しない場合、各テンプレートショット(2、2’等)は、本スキャンの後に行ってもよい。
【0186】
具体的には、第1〜第3の実施形態において、テンプレートショット1を行わないで、本スキャンで収集されたエコー信号群(MR信号群)から得られるデータに基づいて、位相誤差の補正を行ってもよい。この場合、例えば、本スキャンのMR信号をテンプレートデータ1として、(1)式により位相補正データを計算する。これによりテンプレートショット1を省略できるので、撮像時間を短縮できる。
【0187】
ここで、第1および第3の実施形態では、磁場補正マップに基づきシムコイル24等を用いて静磁場を均一化した上で本スキャンを実行するとの説明をした。しかし、以下のような第1および第3の実施形態の変形例を考える。具体的には、第1の実施形態においてテンプレートショット1を省略し、本スキャンで得られたデータを用いる変形例では、シムコイル24等を用いた静磁場均一化の代わりに、例えば、以下の処理を行えばよい。即ち、本スキャンで収集されたMR信号群をテンプレートデータ1とし、これと、テンプレートデータ2とに基づいて、本スキャン後のステップS4において磁場補正マップの生成も行う。そして、磁場補正マップに基づき歪み量を算出し、MR信号に位相補正を施して再構成した画像データに対して、歪補正(画素の移動)を行うことができる。
【0188】
第3の実施形態においてテンプレートショット1、3を省略し、本スキャンにより得られたデータを用いる変形例も、上記第1の実施形態の変形例と同様にすればよい。
【0189】
[3]第1〜第3の実施形態ではスピンエコー系のシングルショットのEPIの例を述べた。上記各実施形態の原理は、フィールドエコー系などの他のEPIにも適用可能であると共に、シングルショットEPIに限らずマルチショットEPIにも適用可能である。
【0190】
図16は、FIDタイプ(自由誘導減衰信号:Free Induction Decay)のシングルショットEPIでの本スキャン、テンプレートショット1”、2”のパルスシーケンスの一例を
図3と同様に示すタイミング図である。
【0191】
図16において、上段、中段、下段はそれぞれ、本スキャン、テンプレートショット1”、テンプレートショット2”の各パルスシーケンスを示す。
図16では、テンプレートショット1’、2’で読み出し方向傾斜磁場Groの印加開始をエコー間隔の2倍ずらしているが、これは一例にすぎず、2倍以外の自然倍ずらしてもよい。
【0192】
[4]上記各実施形態では、スライスを撮像領域として設定し、2次元的な画像データを生成する例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。撮像領域は、スラブであってもよい。また、生成する画像データは、2次元画像用の画像データでも、3次元的なボリュームデータであってもよい。
【0193】
[5]MRI装置20として、静磁場磁石22、シムコイル24、傾斜磁場コイルユニット26、RFコイル28が含まれるガントリの外にRF受信器48が存在する例を述べた(
図1参照)。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。RF受信器48がガントリ内に含まれる態様でもよい。
【0194】
具体的には例えば、RF受信器48に相当する電子回路基盤をガントリ内に配設する。そして、受信用RFコイルによって電磁波からアナログの電気信号に変換されたMR信号を、当該電子回路基盤内のプリアンプによって増幅し、デジタル信号としてガントリ外に出力し、シーケンスコントローラ56に入力してもよい。ガントリ外への出力に際しては、例えば光通信ケーブルを用いて光デジタル信号として送信すれば、外部ノイズの影響が軽減されるので、望ましい。
【0195】
[6]請求項の用語と実施形態との対応関係を説明する。なお、以下に示す対応関係は、参考のために示した一解釈にすぎず、本発明を限定するものではない。
【0196】
静磁場用磁石22、シムコイル24、傾斜磁場コイル26、RFコイル28、制御装置30の全体(
図1参照)が、EPIシーケンスに基づく本スキャンにおいてMR信号を収集する機能は、請求項記載の撮像データ収集部の一例である。
【0197】
静磁場用磁石22、シムコイル24、傾斜磁場コイル26、RFコイル28、制御装置30の全体がテンプレートショット1を実行してMR信号を収集する機能は、請求項記載の第1収集部の一例である。但し、テンプレートショット1を実行せずに、本スキャンのMR信号をテンプレートデータ1として(1)式により位相補正データを計算する場合、静磁場用磁石22、シムコイル24、傾斜磁場コイル26、RFコイル28、制御装置30の全体が本スキャンのMR信号を収集する機能は、請求項記載の第1収集部の一例である。
【0198】
静磁場用磁石22、シムコイル24、傾斜磁場コイル26、RFコイル28、制御装置30の全体がテンプレートショット2(または2’)を実行してMR信号を収集する機能は、請求項記載の第2収集部の一例である。
【0199】
静磁場用磁石22、シムコイル24、傾斜磁場コイル26、RFコイル28、制御装置30の全体がテンプレートショット3を実行してMR信号を収集する機能は、請求項記載の第3収集部の一例である。
【0200】
位相補正データおよび磁場補正マップを生成する補正部100の機能、位相補正データに基づいて位相誤差の補正を行う画像再構成部90の機能、磁場補正マップに基づいて本スキャン前に静磁場を均一化するための磁場補正を行う傾斜磁場電源44、傾斜磁場コイル26、制御装置30の全体の機能は、請求項記載の補正部の一例である。
【0201】
[6]本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。