【実施例】
【0018】
図1は、この発明の実施例に係る車両用動力伝達系の制御装置を全体的に示す概略図、
図2は
図1に示す油圧供給機構の油圧回路図である。
【0019】
図1において、符号10はエンジン(原動機)を示す。エンジン10はガソリンを燃料とする4気筒の内燃機関からなり、駆動輪(車輪)12を備えた車両14に搭載される(車両14は駆動輪12などで部分的に示す)。
【0020】
エンジン10の吸気系に配置されたスロットルバルブ(図示せず)は車両運転席床面に配置されるアクセルペダル18との機械的な接続が絶たれて電動モータなどのアクチュエータからなるDBW(Drive By Wire)機構16に接続され、DBW機構16で開閉される。
【0021】
スロットルバルブで調量された吸気はインテークマニホルド(図示せず)を通って流れ、各気筒の吸気ポート付近でインジェクタ20から噴射された燃料と混合して混合気を形成し、吸気バルブ(図示せず)が開弁されたとき、当該気筒の燃焼室(図示せず)に流入する。燃焼室において混合気は点火されて燃焼し、ピストンを駆動してクランクシャフト22を回転させた後、排気となってエンジン10の外部に放出される。
【0022】
クランクシャフト22の回転は、トルクコンバータ(構成要素(断接機構))24を介して無段変速機(Continuously Variable Transmission。以下「CVT」という)26に入力される。
【0023】
即ち、クランクシャフト22はトルクコンバータ24のポンプ・インペラ24aに接続される一方、それに対向配置されて流体(作動油)を収受するタービン・ランナ24bはメインシャフト(入力軸)MSに接続される。ポンプ・インペラ24aとタービン・ランナ24bはロックアップクラッチ(断接機構)24cが係合(オン)されるとき、直結される。
【0024】
CVT26はメインシャフトMS、より正確にはその外周側シャフトに配置されたドライブプーリ(構成要素)26aと、メインシャフトMSに平行なカウンタシャフト(出力軸)CS、より正確にはその外周側シャフトに配置されたドリブンプーリ(構成要素)26bと、その間に掛け回される無端可撓部材からなる動力伝達要素、例えば金属製のベルト26cからなる。
【0025】
ドライブプーリ26aは、メインシャフトMSの外周側シャフトに相対回転不能で軸方向移動不能に配置された固定プーリ半体26a1と、メインシャフトMSの外周側シャフトに相対回転不能で固定プーリ半体26a1に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体26a2からなる。
【0026】
ドリブンプーリ26bは、カウンタシャフトCSの外周側シャフトに相対回転不能で軸方向移動不能に配置された固定プーリ半体26b1と、カウンタシャフトCSに相対回転不能で固定プーリ半体26b1に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体26b2からなる。
【0027】
CVT26は前後進切換機構28を介してエンジン10に接続される。前後進切換機構28は、車両14の前進方向への走行を可能にする前進クラッチ(構成要素(断接機構))28aと、後進方向への走行を可能にする後進ブレーキクラッチ(構成要素(断接機構))28bと、その間に配置されるプラネタリギヤ機構28cからなる。CVT26はエンジン10に前進クラッチ28aを介して接続される。
【0028】
プラネタリギヤ機構28cにおいて、サンギヤ28c1はメインシャフトMSに固定されると共に、リングギヤ28c2は前進クラッチ28aを介してドライブプーリ26aの固定プーリ半体26a1に固定される。
【0029】
サンギヤ28c1とリングギヤ28c2の間には、ピニオン28c3が配置される。ピニオン28c3は、キャリア28c4でサンギヤ28c1に連結される。キャリア28c4は、後進ブレーキクラッチ28bが作動させられると、それによって固定(ロック)される。
【0030】
カウンタシャフトCSの回転はギヤを介してセカンダリシャフト(中間軸)SSから駆動輪12に伝えられる。即ち、カウンタシャフトCSの回転はギヤ30a,30bを介してセカンダリシャフトSSに伝えられ、その回転はギヤ30cを介してディファレンシャル32からドライブシャフト(駆動軸)34を介して左右の駆動輪(右側のみ示す)12に伝えられる。
【0031】
駆動輪(前輪)12と従動輪(後輪。図示せず)からなる4個の車輪の付近にはディスクブレーキ36が配置されると共に、車両運転席床面にはブレーキペダル40が配置される。
【0032】
前後進切換機構28において前進クラッチ28aと後進ブレーキクラッチ28bの切換は、車両運転席に設けられたレンジセレクタ(進行方向切り替え指示手段)44を運転者が操作して例えばP,R,N,D,S,Lなどのレンジのいずれかを選択することで行われる。運転者のレンジセレクタ44の操作によるレンジ選択は、油圧供給機構46のマニュアルバルブ(後述)に伝えられる。
【0033】
レンジセレクタ44を介して例えばD,S,Lレンジが選択されると、それに応じてマニュアルバルブのスプールが移動し、後進ブレーキクラッチ28bのピストン室から作動油(油圧)が排出される一方、前進クラッチ28aのピストン室に油圧が供給されて前進クラッチ28aが係合される。
【0034】
前進クラッチ28aが係合されると、全ギヤがメインシャフトMSと一体に回転し、ドライブプーリ26aはメインシャフトMSと同方向(前進方向)に駆動され、よって車両14は前進方向に走行する。
【0035】
Rレンジが選択されると、前進クラッチ28aのピストン室から作動油が排出される一方、後進ブレーキクラッチ28bのピストン室に油圧が供給されて後進ブレーキクラッチ28bが作動する。従ってキャリア28c4が固定されてリングギヤ28c2はサンギヤ28c1とは逆方向に駆動され、ドライブプーリ26aはメインシャフトMSとは逆方向(後進方向)に駆動され、車両14は後進方向に走行する。
【0036】
PあるいはNレンジが選択されると、両方のピストン室から作動油が排出されて前進クラッチ28aと後進ブレーキクラッチ28bが共に開放され、前後進切換機構28を介しての動力伝達が断たれ、エンジン10とCVT26のドライブプーリ26aとの間の動力伝達が遮断される。動力伝達系(符号48で示す)は、トルクコンバータ24とCVT26と前後進切換機構28とからなる。
【0037】
図2は油圧供給機構46の油圧回路図である。
【0038】
図示の如く、油圧供給機構46には油圧ポンプ(送油ポンプ)46aが設けられる。油圧ポンプ46aはギヤポンプからなり、エンジン(E)10にベルト(図示せず)を介して機械的に接続され、エンジン10によって駆動される。
【0039】
油圧ポンプ46aはリザーバ46bから吸込口46a1を介して吸込まれた作動油ATFを加圧して得た油圧を吐出口46a2から吐出してPH制御バルブ(PH REG VLV)46cに圧送する。
【0040】
PH制御バルブ46cの出力(PH圧(ライン圧。高圧制御油圧))は、一方では油路46dから第1、第2のレギュレータバルブ(DR REG VLV, DN REG VLV)46e,46fを介してCVT26のドライブプーリ26aの可動プーリ半体26a2のピストン室(DR)26a21とドリブンプーリ26bの可動プーリ半体26b2のピストン室(DN)26b21に接続されると共に、他方では油路46gを介してCRバルブ(CR VLV)46hに接続される。
【0041】
CRバルブ46hはPH圧を減圧してCR圧(低圧制御圧)を生成し、油路46iからプーリ圧制御用の第1、第2(電磁)リニアソレノイドバルブ46j,46k(LS-DR, LS-DN)とクラッチ圧制御用の第3(電磁)リニアソレノイドバルブ46l(LS-DR, LS-DN, LS-CPC)に供給する。
【0042】
第1、第2リニアソレノイドバルブ46j,46kはそのソレノイドの励磁に応じて決定される出力圧を第1、第2のレギュレータバルブ46e,46fに作用させ、よって油路46dから送られるPH圧の作動油を可動プーリ半体26a2,26b2のピストン室26a21,26b21に供給し、それに応じてプーリ側圧を発生させる。
【0043】
従って、可動プーリ半体26a2,26b2を軸方向に移動させるプーリ側圧が発生させられてドライブプーリ26aとドリブンプーリ26bのプーリ幅が変化し、ベルト26cの巻掛け半径が変化する。このように、プーリの側圧を調整することで、駆動輪12に伝達するレシオ(変速比)を無段階に変化させることができ、エンジン10の回転(回転駆動力)を任意の値に変速することができる。
【0044】
またCRバルブ46hの出力(CR圧)は第3リニアソレノイドバルブ(LS-CPC)46lのソレノイドの励磁に応じて調圧され、油路46mを介して前記したマニュアルバルブ46oに送られ、そこから前後進切換機構28の前進クラッチ28aのピストン室(FWD)28a1と後進ブレーキクラッチ28bのピストン室(RVS)28b1に供給される。
【0045】
マニュアルバルブ46oは、前記した如く、運転者によって操作(選択)されたレンジセレクタ44の位置に応じてCRバルブ46hの出力を前進クラッチ28aと後進ブレーキクラッチ28bのピストン室28a1,28b1のいずれかに供給する。
【0046】
また、PH制御バルブ46cの出力は、油路46pを介してTCレギュレータバルブ(TC REG VLV)46qに送られ、TCレギュレータバルブ46qの出力はLCコントロールバルブ(LC CTL VLV)46rを介してLCシフトバルブ(LC SFT VLV)46sに供給される。
【0047】
LCシフトバルブ46sの出力は一方ではトルクコンバータ24のロックアップクラッチ24cのピストン室24c1に接続されると共に、他方ではその背面側の室24c2に接続される。
【0048】
LCシフトバルブ46sを介して作動油がピストン室24c1に供給される一方、背面側の室24c2から排出されると、ロックアップクラッチ24cが係合(オン)される。
【0049】
逆に作動油が背面側の室24c2に供給される一方、ピストン室24c1から排出されると、ロックアップクラッチ24cが解放(オフ)される。ロックアップクラッチ24cのスリップ量は、ピストン室24c1と背面側の室24c2に供給される作動油の量によって決定される。
【0050】
CRバルブ46hの出力は油路46tを介してLCコントロールバルブ46rとLCシフトバルブ46sに供給されると共に、油路46tには第4リニアソレノイドバルブ(LS-LC)46uが介挿される。ロックアップクラッチ24cのスリップ量は、第4リニアソレノイドバルブ46uのソレノイドの励磁・非励磁によって調整(制御)される。
【0051】
図1の説明に戻ると、エンジン10のカムシャフト付近などの適宜位置にはクランク角センサ(クランク角度検出手段)50が設けられ、ピストンの微小所定クランク角度位置ごとにエンジン回転数NEを示す信号を出力する。吸気系においてスロットルバルブの下流の適宜位置には絶対圧センサ52が設けられ、吸気管内絶対圧(エンジン負荷)PBAに比例した信号を出力する。
【0052】
DBW機構16のアクチュエータにはスロットル開度センサ54が設けられ、アクチュエータの回転量を通じてスロットルバルブの開度THに比例した信号を出力する。
【0053】
また前記したアクセルペダル18の付近にはアクセル開度センサ18aが設けられて運転者のアクセルペダル操作量に相当するアクセル開度APに比例する信号を出力すると共に、ブレーキペダル40の付近にはブレーキスイッチ40aが設けられて運転者のブレーキペダル40の操作に応じてオン信号を出力する。
【0054】
上記したクランク角センサ50などの出力は、エンジンコントローラ66に送られる。エンジンコントローラ66はCPU,ROM,RAM,I/Oなどからなるマイクロコンピュータを備え、それらセンサ出力に基づいて目標スロットル開度を決定してDBW機構16の動作を制御すると共に、燃料噴射量を決定してインジェクタ20を駆動する。
【0055】
メインシャフトMSにはNTセンサ(回転数センサ)70が設けられ、タービン・ランナ24bの回転数、具体的にはメインシャフトMSの回転数NT、より具体的には変速機入力軸回転数(と前進クラッチ28aの入力軸回転数)を示すパルス信号を出力する。
【0056】
CVT26のドライブプーリ26aの付近の適宜位置にはNDRセンサ(回転数センサ)72が設けられてドライブプーリ26aの回転数NDR、換言すれば前進クラッチ28aの出力軸回転数に応じたパルス信号を出力する。
【0057】
ドリブンプーリ26bの付近の適宜位置にはNDNセンサ(回転数センサ)74が設けられてドリブンプーリ26bの回転数NDN、具体的にはカウンタシャフトCSの回転数、より具体的には変速機出力軸回転数を示すパルス信号を出力する。
【0058】
またセカンダリシャフトSSのギヤ30bの付近にはVセンサ(回転数センサ)76が設けられてセカンダリシャフトSSの回転数と回転方向を示すパルス信号(具体的には車速Vを示すパルス信号)を出力する。駆動輪12と従動輪(図示せず)からなる4個の車輪の付近にはそれぞれ車輪速センサ80が設けられ、車輪の回転速度を示す車輪速に比例するパルス信号を出力する。
【0059】
前記したレンジセレクタ44の付近にはレンジセレクタスイッチ44aが設けられ、運転者によって選択されたR,N,Dなどのレンジに応じた信号を出力する。
【0060】
図2に示す如く、油圧供給機構46においてCVT26のドリブンプーリ26bに通じる油路には油圧センサ82が配置されてドリブンプーリ26bの可動プーリ半体26b2のピストン室26b21に供給される油圧に応じた信号を出力する。リザーバ46bには油温センサ84が配置されて油温(作動油ATFの温度TATF)に応じた信号を出力する。
【0061】
上記したNTセンサ70などの出力は、図示しないその他のセンサの出力も含め、シフトコントローラ90に送られる。シフトコントローラ90もCPU,ROM,RAM,I/Oなどからなるマイクロコンピュータを備えると共に、エンジンコントローラ66と通信自在に構成される。
【0062】
シフトコントローラ90は、それら検出値に基づき、油圧供給機構46の第4のリニアソレノイドバルブ46uなどの電磁ソレノイドを励磁・非励磁して前後進切換機構28とCVT26とトルクコンバータ24の動作を制御する。
【0063】
図3は
図2に示す油圧ポンプ46aの破断平面図である。
【0064】
図示の如く、油圧ポンプ46aは内接型のギヤポンプからなり、CVT26のケースに取り付け可能に構成されたケーシング46a3と、ケーシング46a3に穿設された大略円弧状のスリットからなる前記した吸込口46a1と吐出口46a2と、ケーシング46a3の内部に回転自在に収容されると共に、外周に6個の内歯が形成されたインナ(ドライブ)ロータ46a4と、インナロータ46a4の外周側に、その内歯と部分的に噛合う7個の外歯が形成されたアウタ(ドリブン)ロータ46a5とを備える。
【0065】
油圧ポンプ46aにおいてインナロータ46a4はエンジン10のクランクシャフト22にベルトで接続されるギヤドライブシャフト46a41にスプライン結合され、エンジン10の回転に同期して回転(駆動)される。
【0066】
アウタロータ46a5はインナロータ46a4の外周に7個の外歯がインナロータ46a4の6個の内歯と部分的に噛合ってインナロータ46a4の回転に応じて従動するように配置され、作動油はそれらロータの回転によって吸込口46a1から吸込まれ、内歯と外歯の間を通って吐出口46a2から吐出される。
【0067】
一方、エンジン10の停止に伴って油圧ポンプ46aのロータの回転が停止されると、作動油は徐々にリークして吐出口46a2から内歯と外歯の間を通って吸込口46a1に流れ、そこからリザーバ46b側に戻る。
【0068】
そのとき、エンジン10の停止に伴ってインナロータ46a4がアウタロータ46a5に対して図示の位置で停止されたとすると、インナロータ46a4の内歯のほとんどはアウタロータ46a5の外歯と密接に接触していることから、吐出口46a2から吸込口46a1にリーク(逆流)する作動油の量は微小となる。
【0069】
一方、エンジン10の停止位置が異なってインナロータ46a4がアウタロータ46a5に対して想像線αで示す位置で停止されたとすると、インナロータ46a4の内歯の多くはアウタロータ46a5の外歯と接触しないことから、吐出口46a2から吸込口46a1にリーク(逆流)する作動油の量は増加する。
【0070】
このように油圧ポンプ46aがギヤポンプ、特に内接型のギヤポンプであると、エンジン10が停止されたとき、油圧ポンプ46aの吐出口46a2と吸込口46a1の間の作動油の連通度合いを示す特性は、エンジン10のクランク角度に依存する。
【0071】
図4は、
図3に示す6個の内歯が形成されたインナロータ46a4と7個の外歯が形成されたアウタロータ46a5を備える油圧ポンプ46aについて実験を通じて求められた特性(クランク角度に対して設定される油圧ポンプ46aの吐出口46a2と吸込口46a1の間の作動油の連通度合いを示す特性)を示す説明図である。尚、図示の特性は前記した
図3に示す内歯と外歯を備えたロータ46a4,46a5の場合であり、構造が異なれば相違することはいうまでもない。
【0072】
これにより、エンジン10(換言すれば油圧ポンプ46aの)の停止時のクランク角度をクランク角センサ50から検出し、検出されたクランク角度から連通度合いを示す図示の特性を検索し、交差位置に対応する縦軸のリーク量を求めることで作動油のリーク量を推定することができる。
【0073】
図示の特性において作動油の連通度合い(リーク量)は、インナロータ46a4の内歯が6個であることからクランク角度120度の間で60度ごとに最大値から最小値の間で規則的に増減し、具体的には30度、90度、150度・・・の付近で最小となると共に、1から6までの数字で示される、0度、60度、120度・・・の付近で最小となる。
【0074】
上記した点に鑑み、この実施例においては、エンジン10が停止されたとき、検出されたエンジン10のクランク角度からクランク角度に対して設定される油圧ポンプ46aの吐出口46a2と吸込口46a1の間の作動油の連通度合いを示す特性に基づいて作動油のリーク量を推定し、推定された作動油のリーク量に基づいてI/S(アイドリングストップ)継続時間を設定(あるいは変更)するように構成した。
【0075】
また、油圧ポンプ46aからの作動油のリーク量は作動油の温度(油温)の上昇につれて粘性が低下することから、油温が上昇するにつれて増加する。従って、この実施例においては、作動油の温度を検出すると共に、検出された作動油の温度に基づいてI/S継続時間を設定するように構成した。
【0076】
図5は
図4に示す特性から推定される作動油のリーク量(連通度合い)と油温に基づいて設定されるI/S継続時間の特性を示す説明図である。
【0077】
図示の如く、I/S継続時間は、推定された作動油のリーク量が多く、検出された作動油の温度(油温)が高いほど、短くなるように設定される。
図4に示す特性は油温が80℃のときの値であるが、図示の特性(作動油のリーク量)は、油温がそれよりも上下するにつれて増減することから、クランク角度に加え、油温によってもリーク量を推定し、それからI/S継続時間を設定するようにした。
【0078】
図6はI/S制御を示すフロー・チャートである。図示のプログラムはエンジンコントローラ66によって所定時間、例えば10msecごとに実行される。
【0079】
以下説明すると、S10でフラグFのビットが1にセットされているか否か判断する。このフラグのビットは初期値が0にセットされていることから、S10の判断は通例否定されてS12に進み、I/Sを実行すべきか否か判断する。
【0080】
即ち、交差点などで赤信号に接近しつつある場合などに所定の条件が成立してエンジン10を停止すべきか否か、具体的にはI/Sを実行すべきアイドリングストップ条件が成立してエンジン10を停止すべきか否か判断する。
【0081】
この所定の条件は、ブレーキペダル40が操作される(踏まれる)一方、アクセルペダル18が操作されず(踏まれず)、車速が零あるいはその近傍にあり、かつCVT26のレシオ(変速比)がロー側にあることであり、これらの条件の成否はブレーキスイッチ40a、アクセル開度センサ18a、Vセンサ76、NDRセンサ72、NDNセンサ74の出力から判断される。
【0082】
S12で否定されるときは以降の処理をスキップする一方、肯定されるときはS14に進み、エンジン10を停止し、S16に進み、エンジン10が停止されたときのクランク角度をクランク角センサ50の出力から検出すると共に、油温(作動油の温度)を油温センサ84の出力から検出する。
【0083】
次いでS18に進み、
図5に示す、エンジン10のクランク角度と油温に対して設定される油圧ポンプ46aの吐出口46a2と吸込口46a1の間の作動油の連通度合いを示す特性に基づいて作動油のリーク量を推定する。
【0084】
次いでS20に進み、クランク角度と油温から推定された作動油のリーク量に基づいてI/S継続時間を設定(あるいは変更)する。I/S継続時間は、
図5の左端に示される如く、推定された作動油のリーク量が多く、油温が高いほど、短くなるように設定される。
【0085】
S20では同時にフラグFのビットを1にセットする。即ち、このフラグのビットが1にセットされることはI/S継続時間が設定されたことを意味する。またS20の処理に応じて図示しないルーチンにおいてダウンカウンタを用いてI/S継続時間の時間経過(残り時間)の計測が開始される。
【0086】
従って、次回以降のプログラムループにおいてS10の判断は肯定されてS22に進み、I/S継続時間が経過したか否か判断する。S22で否定されるときは以降の処理をスキップする一方、肯定されるときはS24に進み、エンジン10を始動すると共に、フラグFのビットを0にリセットする。
【0087】
上記した如く、この実施例にあっては、車両14に搭載される原動機(エンジン)10の回転駆動力を車輪(駆動輪12)に伝達する自動変速機(CVT)26と、前記原動機の回転駆動力で駆動され、リザーバ46bから吸込口46a1を介して吸込まれた作動油を加圧して得た油圧を吐出口46a2から吐出して前記自動変速機の構成要素(プーリ26a,26b、前進クラッチ28a,後進ブレーキクラッチ28b、ロックアップクラッチ24c)に供給する油圧ポンプ46aと、所定の条件が成立したときに前記原動機をアイドリングストップ(I/S)継続時間停止させるアイドリングストップ制御手段(エンジンコントローラ66,S10からS14)とを備えた車両用動力伝達系の制御装置において、前記原動機のクランク角度を検出するクランク角度検出手段(クランク角センサ50、エンジンコントローラ66,S16)と、前記原動機が停止されたとき、前記検出された原動機のクランク角度から前記クランク角度に対して設定される前記油圧ポンプの吐出口と吸込口の間の作動油の連通度合いを示す特性に基づいて前記作動油のリーク量を推定するリーク量推定手段(エンジンコントローラ66,S18)と、前記推定された作動油のリーク量に基づいて前記アイドリングストップ継続時間を設定するアイドリングストップ継続時間設定手段(エンジンコントローラ66,S10,S20)を備えるように構成したので、油圧ポンプ46aからの作動油のリークを適正に考慮してI/S継続時間を設定(あるいは変更)することができ、CVT26への作動油の供給不足を回避することが可能となってI/S後の車両14の発進性の低下を防止することができる。
【0088】
また、前記作動油の温度を検出する油温検出手段(油温センサ84、エンジンコントローラ66,S16)を備え、前記アイドリングストップ継続時間設定手段は、前記検出された作動油の温度に基づいて前記アイドリングストップ継続時間を設定する(エンジンコントローラ66,S10,S20)如く構成したので、I/S継続時間を一層適正に設定(あるいは変更)することができ、CVT26への作動油の供給不足を回避することが可能となってI/S後の車両14の発進性の低下を防止することができる。
【0089】
また、前記アイドリングストップ継続時間設定手段は、前記推定された作動油のリーク量が多く、前記検出された作動油の温度が高いほど、短くなるように前記アイドリングストップ継続時間を設定する(S10,S20)如く構成したので、I/S継続時間をより一層適正に設定(あるいは変更)することができ、CVT26への作動油の供給不足を回避することが可能となってI/S後の車両14の発進性の低下を防止することができる。
【0090】
また、前記油圧ポンプ46aがn歯のロータ(インナロータ46a4、アウタロータ46a5)を有するギヤポンプからなり、前記油圧ポンプ46aの吐出口46a2と吸込口46a1の間の連通度合いを示す特性が前記n歯のロータのクランク角度に対する回転特性であると共に、前記リーク量推定手段は、前記原動機のクランク角度を検出し、前記検出されたクランク角度から前記クランク角度に対して設定される前記油圧ポンプ46aの吐出口46a2と吸込口46a1の間の作動油の連通度合いを示す(
図4の)特性に基づいて前記作動油のリーク量を推定する如く構成したので、上記した効果に加え、作動油のリーク量を簡易に推定することができる。
【0091】
尚、上記において原動機としてエンジン(内燃機関)を開示したが、電動モータあるいはエンジンと電動モータのハイブリッドであっても良い。自動変速機もCVTに限られるものではなく、有段変速機であっても良い。