(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ノッチが外縁部に形成された円盤状の基板が当該基板の厚さ方向に複数枚重ねて貼り合わされた貼合基板の各基板間の回転ズレ量を検出する貼合基板の回転ズレ量計測装置であって、
各基板の中心位置のズレ量である中心位置ズレ量を取得する中心位置ズレ量取得手段と、
各基板のノッチの形状情報を取得するノッチ形状取得手段と、
前記ノッチの形状情報から各基板のノッチ位置を求め、当該各ノッチ位置から各基板間におけるノッチ位置のズレ量であるノッチ位置ズレ量を算出するノッチ位置ズレ量算出手段と、
前記中心位置ズレ量及び前記ノッチ位置ズレ量に基づいて、各基板間の回転ズレ量を算出する回転ズレ量算出手段とを備え、
前記複数の基板の中の何れか1つを基準基板とし、
前記中心位置ズレ量取得手段は、前記基準基板の中心位置である基準中心位置と前記基準基板以外の基板の中心位置との間のズレ量を前記中心位置ズレ量として取得し、
前記ノッチ位置ズレ量算出手段は、前記基準基板のノッチ位置である基準ノッチ位置と前記基準基板以外の基板のノッチ位置との間のズレ量を前記ノッチ位置ズレ量として算出し、
前記回転ズレ量算出手段は、前記ノッチ位置ズレ量から前記中心位置ズレ量を差し引いた値を用いて、前記基準基板の中心位置及び前記ノッチ位置間を結んだ直線と、前記基準基板以外の基板の中心位置及びノッチ位置間を結んだ直線とがなす角度を算出し、前記算出した角度を前記回転ズレ量として算出する貼合基板の回転ズレ量計測装置。
前記ノッチ形状取得手段は、前記ノッチの開口部の正面側から全ての基板のノッチ形状の画像を取得し、取得した画像を前記形状情報として出力するレーザー顕微鏡である請求項2に記載の貼合基板の回転ズレ量計測装置。
前記ノッチ形状取得手段は、前記ノッチを挟んで前記基板の厚さ方向に所定間隔離れた位置に配置され、前記貼合基板の一方の面側又は両面側から前記ノッチの形状情報を取得する請求項1記載の貼合基板の回転ズレ量計測装置。
ノッチが外縁部に形成された円盤状の基板が当該基板の厚さ方向に複数枚重ねて貼り合わされた貼合基板の各基板間の回転ズレ量を検出する貼合基板の回転ズレ量計測方法であって、
各基板の中心位置のズレ量である中心位置ズレ量を取得する中心位置ズレ量取得ステップと、
各基板のノッチの形状情報を取得するノッチ形状取得ステップと、
前記ノッチの形状情報から各基板のノッチ位置を求め、当該各ノッチ位置から各基板間におけるノッチ位置のズレ量であるノッチ位置ズレ量を算出するノッチ位置ズレ量算出ステップと、
前記中心位置ズレ量及び前記ノッチ位置ズレ量に基づいて、各基板間の回転ズレ量を算出する回転ズレ量算出ステップとを備え、
前記複数の基板の中の何れか1つを基準基板とし、
前記中心位置ズレ量取得ステップは、前記基準基板の中心位置である基準中心位置と前記基準基板以外の基板の中心位置との間のズレ量を前記中心位置ズレ量として取得し、
前記ノッチ位置ズレ量算出ステップは、前記基準基板のノッチ位置である基準ノッチ位置と前記基準基板以外の基板のノッチ位置との間のズレ量を前記ノッチ位置ズレ量として算出し、
前記回転ズレ量算出ステップは、前記ノッチ位置ズレ量から前記中心位置ズレ量を差し引いた値を用いて、前記基準基板の中心位置及び前記ノッチ位置間を結んだ直線と、前記基準基板以外の基板の中心位置及びノッチ位置間を結んだ直線とがなす角度を算出し、前記算出した角度を前記回転ズレ量として算出する貼合基板の回転ズレ量計測方法。
ノッチが外縁部に形成された円盤状の基板が当該基板の厚さ方向に複数枚重ねて貼り合わされた貼合基板の各基板間の回転ズレ量を検出する貼合基板の回転ズレ量計測装置であって、
各基板の中心位置のズレ量である中心位置ズレ量を取得する中心位置ズレ量取得手段と、
各基板のノッチの形状情報を取得するノッチ形状取得手段と、
前記ノッチの形状情報から各基板のノッチ位置を求め、当該各ノッチ位置から各基板間におけるノッチ位置のズレ量であるノッチ位置ズレ量を算出するノッチ位置ズレ量算出手段と、
前記中心位置ズレ量及び前記ノッチ位置ズレ量に基づいて、各基板間の回転ズレ量を算出する回転ズレ量算出手段とを備え、
前記ノッチ形状取得手段は、
前記ノッチの開口部の正面側に配置され、全ての前記基板のノッチの形状情報を同時に取得し、
前記基板の周方向に沿って複数の角度から前記ノッチを含む前記基板の外縁部を照射する光源と、
前記光源が出射した光が前記ノッチを含む外縁部で反射した反射光を受光し、当該反射光の輝度情報を前記ノッチの形状情報として出力する撮像部とを備え、
前記ノッチ位置ズレ量算出手段は、前記輝度情報から各基板のノッチ位置を求める貼合基板の回転ズレ量計測装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法は、半導体ウェハの中心からオリエンテーションフラットまでの距離計測値を用いて直径を求める方法であり、高精度の測定は望めない。特許文献2の方法は、予め半導体ウェハに回折格子状のパターンを作成することが必要となる。また、特許文献3の方法は、貼合ウェハを薄膜化した後の計測方法であり、貼り合わせた時点での測定ができない。
【0006】
そして、半導体ウェハに結晶方向を示すノッチが外縁部に形成されている場合、互いのノッチ位置を合致させて貼り合わせが行われるが、貼り合わせ工程において微小ながら位置ズレが発生した場合、この位置ズレをミクロンレベルで検出する手段が従来なかった。
【0007】
本発明の目的は、半導体ウェハ等の基板を貼り合わせた貼合基板における各基板間の回転ズレ量を精度良く計測する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による回転ズレ量計測装置は、ノッチが外縁部に形成された円盤状の基板が当該基板の厚さ方向に複数枚重ねて貼り合わされた貼合基板の各基板間の回転ズレ量を検出する貼合基板の回転ズレ量計測装置であって、各基板の中心位置のズレ量である中心位置ズレ量を取得する中心位置ズレ量取得手段と、各基板のノッチの形状情報を取得するノッチ形状取得手段と、前記ノッチの形状情報から各基板のノッチ位置を求め、当該各ノッチ位置から各基板間におけるノッチ位置のズレ量であるノッチ位置ズレ量を算出するノッチ位置ズレ量算出手段と、前記中心位置ズレ量及び前記ノッチ位置ズレ量に基づいて、各基板間の回転ズレ量を算出する回転ズレ量算出手段とを備
え、前記複数の基板の中の何れか1つを基準基板とし、前記中心位置ズレ量取得手段は、前記基準基板の中心位置である基準中心位置と前記基準基板以外の基板の中心位置との間のズレ量を前記中心位置ズレ量として取得し、前記ノッチ位置ズレ量算出手段は、前記基準基板のノッチ位置である基準ノッチ位置と前記基準基板以外の基板のノッチ位置との間のズレ量を前記ノッチ位置ズレ量として算出し、前記回転ズレ量算出手段は、前記ノッチ位置ズレ量から前記中心位置ズレ量を差し引いた値を用いて、前記基準基板の中心位置及び前記ノッチ位置間を結んだ直線と、前記基準基板以外の基板の中心位置及びノッチ位置間を結んだ直線とがなす角度を算出し、前記算出した角度を前記回転ズレ量として算出する。
【0009】
この構成によれば、ノッチ形状取得手段により貼合基板を構成する基板のノッチ形状が取得され、取得された形状情報からノッチ位置ズレ量算出手段によりノッチ間の位置ズレが算出される。そして、回転ズレ量算出手段によりノッチ位置ズレ量と基板間における中心位置ズレ量とを用いて基板間の回転ズレが算出されている。そのため、回転ずれ量を精度良く求めることができる。
【0010】
尚、本発明における基板とは、半導体、ガラス、サファイア等、主に電子回路基板に用いられる材質で構成された円盤状の板のことを言う。そして、貼合基板は、半導体基板同士、ガラス基板同士等の同じ材質の基板を貼り合わせた構成の他に、半導体基板とガラス基板等の異なる材質を貼り合わせた構成も含まれる。また、ノッチとは、基板の外縁部に形成された略半円形状(窪み形状)の切り欠き部のことを言う。
【0012】
例えば、貼合基板が2枚の基板(基板A及び基板B)によって構成されており、基板Aを基準基板とした場合を考える。この場合、まず、基板Aの中心から基板Bの中心までの距離を示す中心位置ズレ量が中心位置ズレ量取得手段により取得される。そして、ノッチ形状取得手段により基板Aのノッチの形状情報と基板Bのノッチの形状情報とが取得される。そして、各形状情報を用いて基板Aのノッチ位置から基板Bのノッチ位置までのズレ量を示すノッチ位置ズレ量がノッチ位置ズレ算出手段により算出される。そして、中心位置ズレ量及びノッチ位置ズレ量を用いて、基板Aの中心及びノッチ位置を結んだ直線と、基板Bの中心及びノッチ位置を結んだ直線とがなす角度が、回転ズレ量として回転ズレ量算出手段により算出される。そのため、回転ズレ量を精度良く求めることができる。
【0013】
尚、貼合基板が3枚以上の基板(基板A、基板B及び基板C)で構成されており、基板Aを基準基板とした場合、回転ズレ量算出手段は基板Aと基板Bの回転ズレ量、基板Aと基板Cの回転ズレ量を算出すればよい。
【0014】
また、上記構成において、前記ノッチ形状取得手段は、前記ノッチの開口部の正面側に配置され、全ての前記基板のノッチの形状情報を同時に取得することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、ノッチ形状取得手段は貼合基板を構成する全ての基板のノッチの形状情報をノッチ開口部の正面側から同時に取得する。そのため、ノッチ位置ズレ量算出手段は基準基板に対する他の基板の位置関係を同時に取得された1つの形状情報から解析することができる。つまり、ノッチ位置ズレ量算出手段は基準基板のノッチ位置から他の基板のノッチ位置までの距離(ノッチ位置ズレ量)を正確に測定することができ、ノッチ位置ズレ量の計測精度を向上させることができる。
【0016】
また、上記構成において、前記ノッチ形状取得手段は、前記基板の周方向に沿って複数の角度から前記ノッチを含む前記基板の外縁部を照射する光源と、前記光源が出射した光が前記ノッチを含む外縁部で反射した反射光を受光し、当該反射光の輝度情報を前記ノッチの形状情報として出力する撮像部とを備え、前記ノッチ位置ズレ量算出手段は、前記輝度情報から各基板のノッチ位置を求めることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、ノッチ位置ズレ算出手段は、ノッチを含む基板の外縁部で反射した光の輝度情報を用いてノッチ位置を解析し、ノッチ位置ズレ量を求めることができる。また、ノッチ形状取得手段は、光源と撮像部とによって構成されるため、比較的安価に実現することができる。
【0018】
また、上記構成において、前記ノッチ形状取得手段は、前記ノッチの開口部の正面側から全ての基板のノッチ形状の画像を取得し、取得した画像を前記形状情報として出力するレーザー顕微鏡であることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、ノッチ位置ズレ算出手段はレーザー顕微鏡が取得したノッチ形状の画像からノッチ位置を解析するため、正確にノッチ位置を求めることができる。その結果、ノッチ位置ズレ量を精度良く算出でき、回転ズレ量を正確に求めることができる。
【0020】
また、上記構成において、前記ノッチ形状取得手段は、前記ノッチを挟んで前記基板の厚さ方向に所定間隔離れた位置に配置され、前記貼合基板の一方の面側又は両面側から前記ノッチの形状情報を取得することが好ましい。
【0021】
この構成によれば、ノッチ位置ズレ量算出手段は、貼合基板の一方の面側又は両面側から取得したノッチの形状情報を用いて、基準基板に対する他の基板の位置関係を解析することができると共に、基準基板のノッチから他の基板のノッチまでの距離を測定することができる。
【0022】
また、上記構成において、前記ノッチ形状取得手段は、前記ノッチから前記基板の厚さ方向に所定間隔離れた位置に配置され、前記貼合基板の前記一方の面側から前記ノッチを撮影して第1形状情報を出力する第1撮像部と、前記ノッチから前記基板の厚さ方向に所定間隔離れた位置に配置され、前記貼合基板の前記他方の面側から前記ノッチを撮影して第2形状情報を出力する第2撮像部とを備え、前記ノッチ位置ズレ量算出手段は、前記第1形状情報及び前記第2形状情報から各基板のノッチ位置を求めることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、ノッチ形状取得手段が、貼合基板の厚さ方向の両側から(つまり、貼合基板の表裏方向から)基板のノッチ形状を撮影することによって、ノッチの形状情報を取得する。よって、少なくとも2台のカメラ等の撮像部をノッチから所定間隔離れた位置に配置すればよく、簡単にノッチの形状情報を取得することができる。
【0024】
また、上記構成において、前記ノッチ形状取得手段は、前記ノッチから前記基板の厚さ方向に所定間隔離れた位置に配置され、前記貼合基板の前記一方の面側から前記ノッチを照射する赤外光源と、前記ノッチから前記基板の厚さ方向に前記所定間隔離れた位置であって、前記貼合基板の前記他方の面側に配置され、前記赤外光源が出射した赤外光のうち、前記基板を透過した透過光を受光して、前記透過光の強度情報を前記ノッチの形状情報として出力する赤外線カメラとを備え、前記ノッチ位置ズレ量算出手段は、前記強度情報から各基板のノッチ位置を求めることが好ましい。
【0025】
基板は赤外光を透過させる性質を持つ。この性質を利用して、ノッチ形状取得手段を、赤外光源及び赤外線カメラを備えた構成とすることで、簡単にノッチの形状情報を取得することができる。
【0026】
また、本発明の一態様による回転ズレ量計測方法は、ノッチが外縁部に形成された円盤状の基板が当該基板の厚さ方向に複数枚重ねて貼り合わされた貼合基板の各基板間の回転ズレ量を検出する貼合基板の回転ズレ量計測方法であって、各基板の中心位置のズレ量である中心位置ズレ量を取得する中心位置ズレ量取得ステップと、各基板のノッチの形状情報を取得するノッチ形状取得ステップと、前記ノッチの形状情報から各基板のノッチ位置を求め、当該各ノッチ位置から各基板間におけるノッチ位置のズレ量であるノッチ位置ズレ量を算出するノッチ位置ズレ量算出ステップと、前記中心位置ズレ量及び前記ノッチ位置ズレ量に基づいて、各基板間の回転ズレ量を算出する回転ズレ量算出ステップとを備
え、前記複数の基板の中の何れか1つを基準基板とし、前記中心位置ズレ量取得ステップは、前記基準基板の中心位置である基準中心位置と前記基準基板以外の基板の中心位置との間のズレ量を前記中心位置ズレ量として取得し、前記ノッチ位置ズレ量算出ステップは、前記基準基板のノッチ位置である基準ノッチ位置と前記基準基板以外の基板のノッチ位置との間のズレ量を前記ノッチ位置ズレ量として算出し、前記回転ズレ量算出ステップは、前記ノッチ位置ズレ量から前記中心位置ズレ量を差し引いた値を用いて、前記基準基板の中心位置及び前記ノッチ位置間を結んだ直線と、前記基準基板以外の基板の中心位置及びノッチ位置間を結んだ直線とがなす角度を算出し、前記算出した角度を前記回転ズレ量として算出する。
【0027】
この構成によれば、各基板の中心位置ズレ量とノッチ位置ズレ量とを用いて各基板の回転ズレ量が算出されているため、各基板間の回転ズレ量を精度良く算出することができる。
【0028】
また、本発明の一態様による貼合基板の製造方法は、ノッチが外縁部に形成された円盤状の半導体基板とノッチが外縁部に形成された円盤状の支持基板とを貼り合わせて貼合基板を製造する貼合基板の製造方法であって、前記ノッチが重なるように前記半導体基板と前記支持基板とを貼り合わせる貼合ステップと、前記支持基板が貼り合わされた前記半導体基板の回転ズレ量を上記の回転ずれ量計測方法を用いて計測する回転ズレ量計測ステップと、前記回転ズレ量計測ステップにより計測された回転ズレ量に基づき、前記貼合基板を検品する検品ステップとを備える。
【0029】
この構成によれば、貼合基板の回転ズレ量が定量的に求められ、求められた回転ズレ量から貼合基板が検品されているため、貼合基板が不良品であるか否かを精度良く測定することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ノッチ形状取得手段により貼合基板を構成する基板のノッチ形状が取得され、取得された形状情報からノッチ位置ズレ量算出手段によりノッチ間の位置ズレが算出される。そして、回転ズレ量算出手段によりノッチ位置ズレ量と基板間における中心位置ズレ量とを用いて基板間の回転ズレが算出されている。そのため、回転ずれ量を精度良く求めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。尚、以下の実施の形態では、本発明における基板を半導体ウェハとして説明し、貼合基板を半導体ウェハを複数枚貼り合わせた貼合ウェハとして説明する。但し、これは一例であり、本発明における基板は、半導体、ガラス、サファイア等、主に電子回路基板に用いられる材質で構成された円盤状の板のことであるため、半導体ウェハに限定されるものではない。
【0033】
まず、本実施の形態における貼合ウェハを構成する半導体ウェハ間の中心位置ズレ量、ノッチ位置ズレ量、及び回転ズレ量について説明する。尚、以下の実施の形態では2枚の半導体ウェハによる貼合ウェハを例に説明するが、半導体ウェハの貼り合わせ枚数はこれに限らない。
【0034】
図1は、貼合ウェハWの各部を示す符号を説明するための図である。貼合ウェハWは、半導体ウェハS1及びS2(以下、適宜まとめて「半導体ウェハS」という)が貼り合わされている。紙面手前側が半導体ウェハS1、紙面奥側が半導体ウェハS2であり、半導体ウェハS1に隠れた半導体ウェハS2の輪郭は点線で示している。点O1は半導体ウェハS1の中心、点O2は半導体ウェハS2の中心を示す。
【0035】
また、半導体ウェハS1の外縁部にはノッチN1が、半導体ウェハS2の外縁部にはノッチN2が形成されている。ノッチN1及びN2(以下、適宜まとめて「ノッチN」という)は、半導体ウェハS1及びS2の結晶方向を示すために形成された略半円形状(窪み形状)の切り欠き部である。
【0036】
また、NK1はノッチN1の肩部、NK2はノッチN2の肩部を示している。ノッチ肩部とは、半導体ウェハSの円周部とノッチNの境目付近をいう。更に、NB1はノッチN1の底部、NB2はノッチN2の底部である。ノッチ底部とは、ノッチNの外縁部において最も半導体ウェハSの中心位置に近い部分をいう。尚、以下では、ノッチ肩部NK1及びNK2をまとめて「ノッチ肩部NK」、ノッチ底部NB1及びNB2をまとめて「ノッチ底部NB」と適宜表記する。
【0037】
半導体ウェハS1及びS2を貼り合わせる際、半導体ウェハS1及びS2の中心及びノッチN1及びN2を一致させることによって互いの貼り合わせ位置の調整が行われる。しかしながら、この工程において半導体ウェハS1及びS2の中心、ノッチの位置が僅かながらずれることがある。
図1は、中心及びノッチがずれた状態で重ね合わされた状態を示している。
図1において、紙面に向かって左右方向をx座標、上下方向をy座標として説明する。
【0038】
本発明における貼合ウェハの回転ズレ量計測装置は、回転ズレ量を求めるために、まず(1)半導体ウェハS1の中心位置O1と半導体ウェハS2の中心位置O2の中心位置ズレ量の測定を行う。この中心位置ズレ量の測定では、基準ウェハである半導体ウェハS1の中心位置O1を座標(0,0)としたときの、半導体ウェハS2の中心位置O2の座標(x1,y1)が測定される。この測定によって、半導体ウェハS1の中心位置O1から半導体ウェハS2の中心位置O2までの距離を知ることができる。
【0039】
次に、(2)ノッチN1とノッチN2との位置ズレ量の測定を行う。ノッチ位置ズレ量の測定では、ノッチ底部NB1からノッチ底部NB2までのx方向の距離であるx2(
図2参照)が測定される。
【0040】
図2は、回転ズレ量を説明するための図である。ここで、基準ウェハである半導体ウェハS1のノッチ底部NB1の座標を(0,y2)、半導体ウェハS2のノッチ底部NB2の座標を(x2,y2)とする。
【0041】
通常、精密器具等を用いてノッチN1とノッチN2とが一致するように半導体ウェハS1及びS2の重ね合わせが行われるが、仮にノッチ位置がずれたとしても、そのズレ量はミクロンレベルである。従って、本実施の形態ではノッチ底部NB1とノッチ底部NB2とのy方向のズレ量は無視し、x方向のズレ量のみを測定するとし、
図2ではノッチ底部NB1及びNB2のy座標は共にy2として示している。しかしながら、ノッチ底部NB2のy方向のズレ量を加味して、半導体ウェハS1及びS2の回転ズレ量を求めても勿論構わない。
【0042】
そして、(3)半導体ウェハS1に対する半導体ウェハS2の回転ズレ量の算出を行う。x方向における中心位置ズレ量をx1、ノッチ位置ズレ量をx2、半導体ウェハS1、及びS2の半径をr、ノッチN1及びN2の半導体ウェハの半径方向の深さをd1とすると、回転ズレ量θは、式(A)で表される。
【0043】
θ=tan
−1{(x2−x1)/(r−d1)}・・・(A)
【0044】
つまり、中心位置O1及びノッチ底部NB1間を結んだ直線Q1と、中心位置O2及びノッチ底部NB2間を結んだ直線Q2(又は、直線Q2をx方向に中心位置ズレ量x1だけ平行移動させた直線Q3)とのなす角が回転ズレ量θとなる。尚、式(A)は一例であり、式(A)以外の計算式を用いて回転ズレ量θを求めても構わない。
【0045】
図3は、本発明における貼合ウェハWの回転ズレ量計測装置1の電気的構成を示したブロック図である。回転ズレ量計測装置1は、ノッチ形状取得部200(ノッチ形状取得手段)、ノッチ位置ズレ量算出部210(ノッチ位置ズレ量算出手段)、回転ズレ量算出部220(回転ズレ量算出手段)、インターフェース(I/F)部230(中心位置ズレ量取得手段)及び制御部240を備える。
【0046】
ノッチ形状取得部200は、ノッチNの形状情報を取得するものである。ノッチ位置ズレ量算出部210は、ノッチ形状取得部200が取得した形状情報を用いてノッチN1とノッチN2との位置ズレ量を算出する。I/F部230は、中心位置ズレ量計測装置2から送られた中心位置ズレ量を受信して回転ズレ量算出部220へ出力する。回転ズレ量算出部220は、中心位置ズレ量計測装置2が計測した中心位置ズレ量と、ノッチ位置ズレ量算出部210が算出したノッチ位置ズレ量とを用いて貼合ウェハWの回転ズレ量を算出する。
【0047】
制御部240は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)等によって構成され、回転ズレ量計測装置1を構成する各機能部への指示信号の出力、データ転送等を行って回転ズレ量計測装置1を統括的に制御するものである。尚、以下では、コンピュータ9がノッチ位置ズレ量算出部210、回転ズレ量算出部220、I/F部230、及び制御部240を有する構成として説明する。
【0048】
中心位置ズレ量計測装置2は、半導体ウェハS1及びS2の直径及び中心位置のズレ量を測定する。尚、本実施の形態では、中心位置ズレ量計測装置2は、回転ズレ量計測装置1に含まれない形態として説明するが、回転ズレ量計測装置1が中心位置ズレ量計測装置2を含んだ構成であっても構わない。その場合、外部装置とのデータ送受信を行うI/F部230は不要となり、中心位置ズレ量計測装置2が中心位置ズレ量取得手段に相当する。まず最初に(1)半導体ウェハS1の中心位置O1と半導体ウェハS2の中心位置O2の中心位置ズレ量の測定方法について説明する。
【0049】
(1)中心位置ズレ量の測定方法
図4は、中心位置ズレ量計測装置2の全体構成を模式的に示す図である。この中心位置ズレ量計測装置2は、半導体ウェハS1及びS2の直径及び中心位置ズレ量を測定する装置であり、輪郭測定部3、エッジ形状測定部4、コンピュータ5を備えて構成される。ここで、中心位置ズレ量計測装置2は、例えば、特開2012−7898号公報に記載された手法を採用すればよい。以下、説明する。
【0050】
輪郭測定部3は、貼合ウェハWの厚み方向(矢印T方向)の投影像から、半導体ウェハS1及びS2を合わせた輪郭形状を検出する。このため、輪郭測定部3は、貼合ウェハWを搭載し回転するターンテーブル31と、貼合ウェハWの外周縁部付近に位置し、貼合ウェハWの半径方向に一定の幅を有するスリット光を貼合ウェハWの厚み方向に照射し、ターンテーブル31の回転に伴う受光光束の幅の変化から、貼合ウェハWの外形形状を検出する光学系32とを備えて構成される。
【0051】
図5は、輪郭測定部3による貼合ウェハWの輪郭形状の測定原理を説明するための図である。光学系32は、貼合ウェハWの半径方向Xに延びるスリット光322を発生するスリット光源321と、そのスリット光322の貼合ウェハWの外縁部付近を通過した光を受光するラインセンサ323と、スリット光源321とラインセンサ323とを相互に対向させて、貼合ウェハWの外縁部付近に保持する保持部材324とを備えて構成される。スリット光源321は、スリット光322として、相互に平行で且つ貼合ウェハWの半径方向Xに延びるスリット光を出射する。
【0052】
従って、ターンテーブル31で貼合ウェハWを回転することで、固定位置に設けた光学系32によって、貼合ウェハWの輪郭の微小な凹凸を、スリット光の幅の変化から検出することができる。具体的には、式(B)のように、スリット光の基準位置(センサ基準位置)P1からの幅の変化分(影の部分の距離)Sに、ターンテーブル31の中心P0から基準位置P1までの距離Lを加算することで、外径(輪郭)Cを求めることができる。
【0054】
こうして測定された貼合ウェハWの輪郭位置データに基づき、コンピュータ5が円フィッティングを行うことで、フィッティング直径、平均直径、及び中心位置を計算することができる。
【0055】
一方、エッジ形状測定部4は、ターンテーブル41で貼合ウェハWを回転することで、固定位置に設けた光学系42によって、接線方向から照射した照明光による投影像から、周方向Eの複数点における半導体ウェハS1及びS2それぞれの外縁部の形状を検出する。
【0056】
図6は、エッジ形状測定部4による貼合ウェハWの外縁部形状の測定原理を説明するための図である。光学系42は、散乱光420を放射する点光源421と、散乱光420から平行光422を作成するコリメータレンズ423と、エッジ付近を通過した平行光422を集光する両側又は物体側テレセントリック構造のテレセントリックレンズ424と、テレセントリックレンズ424で集光された投影画像を受光する画像センサ425とを備えて構成される。更に、光学系42は、画像センサ425に像側テレセントリック構造で光を入射するテレセントリックレンズ426及び開口絞り427を備える。
【0057】
図7は、画像センサ425での撮像画像の一例及びその撮像画像から輪郭形状を抜出した結果を示す図である。
図7は、半導体ウェハS1及びS2が相互に等しい直径の真円で、外縁部の所定の基準位置から135°(315°(=180°+135°))の直径線方向にズレた状態を示している。尚、所定の基準位置としては、例えば半導体ウェハS1のノッチN1のノッチ底部NB1を採用することができる。例えば、半導体ウェハS1のノッチ従って、45°(225°(=180°+45°))の位置では、
図7(a)で示すように、半導体ウェハS1及びS2の外縁部は中心からほぼ等距離にある。これに対して、135°の位置では、
図7(b)で示すように、半導体ウェハS1の外縁部が、半導体ウェハS2の外縁部よりも飛び出している。反対に、315°の位置では、
図7(c)で示すように、半導体ウェハS2のエッジが、半導体ウェハS1の外縁部よりも飛び出している。
【0058】
これらの
図7(a)〜(c)の撮像画像から、コンピュータ5が輪郭形状を抜出した結果を、それぞれ
図7(d)〜(f)に示す。
図7(d)で示すように、相互に等しい直径で真円の半導体ウェハS1及びS2のズレ方向(135°(315°))とは直角方向の45°(225°)の位置では、半導体ウェハS1及びS2の外縁部端面A1は揃っている。このとき、輪郭測定部3で測定された半導体ウェハS1の半径をr1とすると、半導体ウェハS1及びS2の半径は、共にr1となる。
【0059】
これに対して、
図7(e)で示すように、ズレが最大となる135°の位置では、半導体ウェハS1の外縁部が、半導体ウェハS2の外縁部よりもA2だけ飛び出している。このとき、輪郭測定部3で測定された半導体ウェハS1の半径をr1とすると、半導体ウェハS2の半径はr1−A2となる。同様に、
図7(f)で示すように、ズレが最大となる315°の位置では、半導体ウェハS2の外縁部が、半導体ウェハS1の外縁部よりもA3だけ飛び出している。このとき、輪郭測定部3で測定された半導体ウェハS2の半径をr2とすると、半導体ウェハS1の半径はr2−A3となる。
【0060】
そして、半導体ウェハS1及びS2の直径が相互に等しい場合は、A2=A3である。こうして求めた複数の箇所の半導体ウェハS1及びS2の直径から、コンピュータ5は、半導体ウェハS1及びS2の直径及び中心位置ならびに中心位置ズレ量を算出する。
【0061】
例えば、輪郭測定部3による測定結果から円フィッティングにより半導体ウェハS1の半径がr1、半導体ウェハS2の半径がr2として算出されたとする。また、エッジ形状測定部4による測定により
図7(a)〜(c)に示す測定結果が得られたとする。この場合、基準位置から135°の位置では半導体ウェハS2の半径はr1−A2と算出される。また、基準位置から315°の位置では半導体ウェハS2の半径はr1+A3と算出される。コンピュータ5は、これらの結果から輪郭測定部3による半導体ウェハS1、S2の外縁部の測定結果を補間し、補間後の測定結果に対して、再度、円フィッティングを行い、半導体ウェハS1、S2の中心位置、及び半径r1、r2を求める。
【0062】
半導体ウェハS1、S2が
図2に示すようにズレている場合、輪郭測定部3は、半導体ウェハS1、S2のそれぞれについて外縁部の全域を測定することができない。例えば、
図2において、点線で示す半導体ウェハS2の左半分の領域や、実線で示す半導体ウェハS1の右半分の領域は測定できない。よって、この測定結果から円フィッティングを行った場合、半導体ウェハS1、S2は、それぞれ、外縁部の半円の輪郭情報から半径及び中心位置が算出されてしまう。これでは、半導体ウェハS1、S2の半径及び中心位置を正確に求めることができない。
【0063】
また、例えば、半導体ウェハS2の半径が半導体ウェハS1の半径よりも小さく、半導体ウェハS2が半導体ウェハS1の内部に完全に隠れてしまう場合がある。この場合、輪郭測定部3の測定結果は半導体ウェハS2の外縁部の情報を含んでいない。
【0064】
そこで、本実施の形態では、輪郭測定部3に加えて更にエッジ形状測定部4により貼合ウェハWの外縁部の形状を検出している。これにより、輪郭測定部3により得られた測定結果を補間して、半導体ウェハS1、S2のそれぞれの外縁部の全域の形状を測定することができ、半導体ウェハS1、S2のそれぞれの半径及び中心位置を正確に求めることができる。
【0065】
尚、
図7の例では、エッジ形状測定部4の測定結果のうち、3箇所の測定結果を示しているが、エッジ形状測定部4は、60°刻み、45°刻み、30°刻み、10°刻み、5°刻み、1°刻みというように、より多くの箇所を測定してもよい。
【0066】
(2)ノッチ位置ズレ量の測定方法
次に、ノッチ位置ズレ量の測定方法について説明する。
【0067】
図3に示すノッチ形状取得部200は、少なくとも、半導体ウェハS1のノッチ底部NB1に対する半導体ウェハS2のノッチ底部NB2の位置が識別可能なようにノッチN1及びN2の形状情報が取得できればよい。以下では、ノッチ形状取得部200の形態として、まず(2−1)鏡面反射を用いる方法、(2−2)レーザー顕微鏡を用いる方法、を例に挙げてノッチNの開口部側からノッチN1及びN2の形状情報を同時に取得する方法について説明する。更に(2−3)カメラ群を用いる方法、(2−4)赤外線カメラを用いる方法、を例に挙げて貼合ウェハWの厚さ方向(表裏方向)からノッチNの形状情報を取得する方法について説明する。
【0068】
(2−1)鏡面反射を用いる方法
図8は、鏡面反射を用いてノッチNの形状情報を取得し、回転ズレ量を算出する場合における回転ズレ量計測装置1の構成を示した図である。光源201とカメラ202(撮像部)とはノッチ形状取得部200に相当する。光源201は、光ファイバの出射端や発光ダイオード等であり、貼合ウェハWの外縁部から所定間隔離れた位置であってノッチNの開口部正面側に配置され、ノッチNに向けて光Bを出射する。
【0069】
また、光源201は、複数の角度からノッチNを含む貼合ウェハWの外縁部を照射する。つまり、光源201は、ノッチ底部NBを中心とする1つの平面上であって、周方向Eに沿って円弧上に位置するように配置される。
【0070】
ノッチNの照射方法としては、光源201が矢印Fに示すように周方向Eに沿って所定角度の範囲を移動しながらノッチNを照射する方法、あるいは、周方向Eに沿って所定角度毎に光源201を複数配置し、順次光を出射させる方法等が考えられる。
【0071】
前者の場合、高額又は特殊な光源を用いる場合(例えば、半導体ウェハSの特性により特別に強力な光源が必要な場合)に、光源の数が1個で済むというメリットがある。光源201を移動させる場合は、光源201を周方向Eに沿って移動させるモーター等を含む駆動装置(不図示)が必要となる。
【0072】
そして、一般的で安価な光源を使用する場合、後者の構成にすることでモーター等の装置が不要となり、比較的簡単且つ安価に光源ユニットを構成することができる。尚、駆動装置の駆動制御や複数の光源に対する点灯制御は、コンピュータ9の制御部240によって行われる。
【0073】
尚、
図8において点線で示した光源201は、移動中の光源、又は複数配置された光源201を分かり易く示したものであり、ノッチNに対する照射位置を限定するものではない。
【0074】
カメラ202は、ノッチNの開口部正面側であって貼合ウェハWの外縁部から所定間隔離れた位置に固定され、光源201が出射した光BのうちノッチNを含む貼合ウェハWの外縁部で鏡面反射(正反射)した反射光Rを受光して光電変換することにより、反射光Rの二次元の輝度分布を画像として出力するものである。カメラ202の焦点は、ノッチ底部NBに設定されている。
【0075】
図9は、ノッチNの開口部正面(ノッチ底部NBの面角度に対して法線方向にある位置)から光を照射したときのカメラ202による撮影画像の一例である。光源201が出射した光Bのうち、鏡面反射した反射光Rがカメラ202に入射する。つまり、カメラ202による撮影画像は、反射光Rの輝度分布を表す画像となる。つまり、この画像において、輝度のピーク位置(ピーク輝度位置)は、光Bが鏡面反射した位置に相当する。
【0076】
即ち、
図9における白い部分は、上側が半導体ウェハS1のノッチ底部NB1及びノッチN1以外の半導体ウェハS1の外縁部、下側が半導体ウェハS2のノッチ底部NB2及びノッチN2以外の半導体ウェハS2の外縁部に該当する。ノッチNにおけるノッチ底部NB以外の縁部については、鏡面反射した光がカメラ202に入射しないため、画像には表れない。従って、図中のカッコで示した部分がノッチN1及びN2に相当する。
【0077】
また、外縁部における鏡面反射位置の面において、その法線方向を基準とした光の入射角と反射角とは等しい。このことから、カメラ202の撮影画像におけるピーク輝度位置と、外縁部に対する光Bの照射方向(光源201の位置からノッチ底部NBへ向かう方向)とに基づいて、外縁部において光Bが鏡面反射した位置と、その鏡面反射した位置の面角度とを一意に算出することが可能である。
【0078】
図10は、光の照射方向等を示す符号を説明するための図である。
図10(a)は、
図8に示した回転ズレ量計測装置1を上方から見たときの平面図であり、貼合ウェハWとして半導体ウェハS1のみ示している。そして、
図10(b)は、ノッチN1の拡大図である。
【0079】
図10(a)に示すように、ノッチ底部NB1とカメラ202とを結ぶ直線の方向(以下、「カメラ正面方向」という)を基準としたときの光Bの照射角度をφとする。また、貼合ウェハWの外縁部における光Bの鏡面反射位置Nxと、カメラ正面方向に直交する面(以下、撮像画像におけるX−Y平面に相当する面という意味で「X−Y面」という)とがなす角を面角度θsとする。ここで、鏡面反射位置Nxとは、光Bを鏡面反射させた貼合ウェハWの外縁部上の位置を示す。また、面角度θsは、X−Y面を基準としたときの鏡面反射位置Nxにおける貼合ウェハWの外縁部の傾きを表す。
【0080】
図11は、面角度θsの測定原理について説明するための図である。カメラ202がテレセントリックレンズ方式のカメラである場合、カメラ202内に入射する反射光Rの方向と、カメラ202の正面方向とがほぼ平行となるため、撮像画像におけるピーク輝度位置は光Bの鏡面反射位置Nxに相当する。更に、光Bの入射角と反射角とがなす角(照射角度φ)は、鏡面反射位置Nxの法線で2等分される。そのため、(90−θs−φ/2)=(90−φ)となり、次の式(C)が成立する。
【0082】
従って、ノッチ位置ズレ量算出部210が、カメラ202が撮影した画像のピーク輝度位置から鏡面反射位置Nxを特定でき、更に、光源201の位置に応じて定まる光Bの照射角度φ(既知の角度)から、鏡面反射位置Nxにおける面角度θsを特定できる。
【0083】
つまり、制御部240が、光源201を点灯させたまま
図8における矢印Fの方向に移動させる(光源201が複数配置される場合は、点灯を順次切り替えさせる)ことによって、光Bの照射角度φが切り替わる。そして、ノッチ位置ズレ量算出部210は、カメラ202を通じてノッチNの画像を取得し、この画像から複数の光Bの照射角度φの各々についての面角度θs、即ち、ノッチNを含む貼合ウェハWの外縁部の面角度θsの分布を求めることができる。
【0084】
尚、貼合ウェハWの外縁部の形状や反射率が異なると、反射光Rの明るさが異なってくる。反射光Rの明るさが異なると、撮影によって鮮明度の異なる画像となってしまいピーク輝度位置を精度良く解析できなくなる。従って、最適な明るさの反射光Rを得るために、光源201の光強度、カメラ202の感度又は露光時間等、照射条件や撮影条件を変化させて撮影することが望ましい。
【0085】
図12は、ノッチ位置ズレ量算出部210による演算結果を示したグラフである。横軸は半導体ウェハS1及びS2の周方向、縦軸は径方向を示している。また、縦軸及び横軸の目盛り間隔は200μmである。ノッチ位置ズレ量算出部210は、カメラ202が撮影した画像からノッチN1及びN2の面角度θsを算出し、隣り合う面角度θsを連結することによってノッチNの形状を求め、その形状を関数でフィッティングする。
図12では二次関数を用いてノッチ形状を表しているが、二次関数の他に、他の次数の多項式、円等で表してもよい。
図12において、グラフNG1はノッチN1の形状を、グラフNG2はノッチN2の形状を表している。
【0086】
尚、ノッチ位置ズレ量算出部210が求めたグラフは、グラフの示すノッチの形状及び横軸の位置情報(x座標)に大きな意味があり、縦軸の位置情報(y座標)は特に意味を持たない。理由は、ノッチ形状取得部200によるノッチNの形状測定(つまり、
図9に示すカメラ202が撮影した画像)から得られる情報は、x方向の座標値とx方向各位置での面角度θsのみである。ノッチNの形状を再現する際には、x方向各位置での面角度θsを左端(又は右端)から順に積算していくが、積算の最初の点のy方向の座標値を決めることはできない。従って、
図12に示す縦軸(y座標)には意味がない。
【0087】
そして、ノッチ位置ズレ量算出部210は、グラフNG1の中心軸nb1及びグラフNG2の中心軸nb2を求め、中心軸nb1のx座標と中心軸nb2のx座標との差分Zを求める。この差分Zがノッチ位置ズレ量に相当する。尚、中心軸nb1は、グラフNG1の頂点と半導体ウェハS1の中心位置とを繋ぐ直線を採用することができる。また、中心軸nb2も中心軸nb1と同様、グラフNG2の頂点と半導体ウェハS2の中心位置とを繋ぐ直線を採用することができる。
【0088】
回転ズレ量算出部220は、I/F部230を介して中心位置ズレ量計測装置2から取り込んだ中心位置ズレ量と、ノッチ位置ズレ量算出部210が算出した差分Z、即ちノッチ位置ズレ量とを用いて回転ズレ量を算出する。上記にて示した式(A)を用いて回転ズレ量を求める場合、x2が差分Zとなる。こうして回転ズレ量算出部220は、回転ズレ量θを求めることができる。
【0089】
θ=tan
−1{(x2−x1)/(r−d1)}・・・(A)
【0090】
尚、上記ではノッチ位置ズレ量算出部210は、ノッチ底部NBの位置を解析してノッチ位置ズレ量を求めることとして説明したが、更にノッチ肩部NKの位置も解析することでノッチ位置を求め、ノッチ位置ズレ量を算出するようにしてもよい。ここでノッチ位置とは、半導体ウェハS1の場合、ノッチ底部NB1とノッチ肩部NKの3点によって定まる位置である。
【0091】
しかしながら、カメラ202の焦点がノッチ底部NBに設定されている場合、ノッチ肩部NKはピントがずれて撮影されるため、ノッチ位置ズレ量算出部210がノッチ肩部NKの位置を正確に検出できない可能性がある。あるいは、ノッチ肩部NKの曲率がノッチ底部NBの曲率に比べて大きいため、ノッチ肩部NK付近の面角度θsが正確に算出されないことから、ノッチ肩部NKの正確な位置が求められない可能性もある。
【0092】
そこで、ノッチ位置ズレ量算出部210は、ノッチ底部NBの検出位置とノッチ肩部NKの検出位置に対して重み付け平均値を取る。つまり、ノッチ底部の検出位置は重要度が高く、ノッチ肩部の検出位置は重要度が低くなるように重み付け平均値を取ることで、最良なノッチ位置を算出することができる。
【0093】
(2−2)レーザー顕微鏡を用いる方法
図13は、レーザー顕微鏡を用いてノッチNの形状情報を取得する場合における回転ズレ量計測装置1の構成を示した図である。レーザー顕微鏡203はノッチ形状取得部200に相当する。レーザー顕微鏡203は、レーザー光源、光学レンズ及び受光素子等で構成され、ノッチNの開口部正面側であって、貼合ウェハWの外縁部から所定間隔離れた位置に配置されている。レーザー顕微鏡203は、レーザー光源の出射したレーザー光のうちノッチNで反射した光を光学レンズを介して受光素子で受光する。そして、受光素子が受光した光を光電変換してノッチNを視覚的に拡大した画像を生成し、その画像をコンピュータ9へ出力する。
【0094】
コンピュータ9のノッチ位置ズレ量算出部210は、レーザー顕微鏡203が撮影した拡大画像からノッチ底部NB1とノッチ底部NB2との位置を解析し、ノッチ位置ズレ量x2を算出する。そして、回転ズレ量算出部220は、I/F部230を介して中心位置ズレ量計測装置2から取り込んだ中心位置ズレ量x1と、ノッチ位置ズレ量算出部210が算出したノッチ位置ズレ量x2とを用いて、上記した式(A)等を用いて回転ズレ量θを算出する。
【0095】
以上、説明したように、(2−1)鏡面反射を用いる方法及び(2−2)レーザー顕微鏡を用いる方法の場合、ノッチ形状取得部200はノッチN1及びN2の形状情報を同時に取得することができる。そのため、ノッチ位置ズレ量算出部210は半導体ウェハS1に対する半導体ウェハS2の位置を1つの形状情報から解析することができ、ノッチN1からノッチN2までの距離を正確に測定することができる。従って、ノッチ位置ズレ量を精度良く求めることができ、回転ズレ量を正確に算出することができる。
【0096】
(2−3)カメラ群を用いる方法
図14は、カメラ群を用いてノッチNの形状情報を取得する場合における回転ズレ量計測装置1の構成を示した図である。カメラ204(第1撮像部)及びカメラ205(第2撮像部)はノッチ形状取得部200に相当する。以下、カメラ204及びカメラ205をまとめて「カメラ群300」という。カメラ群300は、貼合ウェハWを挟んで厚さ方向(矢印T方向)に互いに対向し、且つノッチNから所定間隔離れた位置にそれぞれ配置されている。
【0097】
つまり、カメラ204は半導体ウェハS1側であって、ノッチN1から半導体ウェハSの厚さ方向に所定距離離れた位置に配置されてノッチN1を撮影する。このとき、カメラ204の焦点はノッチN1の外縁部に設定される。また、カメラ205は半導体ウェハS2側であって、ノッチN2から半導体ウェハSの厚さ方向に所定距離離れた位置に配置されてノッチN2を撮影する。このとき、カメラ205の焦点はノッチN2の外縁部に設定される。そして、カメラ204及び205は撮影した画像をコンピュータ9へ出力する。
【0098】
半導体ウェハSの表面が鏡面である場合、半導体ウェハSを照射する光源として同軸落射光源を用いることが望ましい。同軸落射光源を用いることで、半導体ウェハSの表面で反射した光のみがカメラ群300側に向かい、半導体ウェハSの外縁部や半導体ウェハSの背景で反射した光はカメラ群300に向かわない。こうすることで、ノッチ位置ズレ量算出部210による半導体ウェハSの輪郭抽出の画像処理が容易になる。
【0099】
図15は、カメラ群300が撮影した画像の一例を示した図である。
図15(a)はカメラ204が撮影した画像71であり、
図15(b)はカメラ205が撮影した画像72である。ノッチ位置ズレ量算出部210は、カメラ204及び205が撮影した画像71及び72をそれぞれ取り込み、両画像からノッチ底部NB1及びノッチ底部NB2の位置を解析して、位置ズレ量を算出する。
【0100】
例えば、紙面左右方向をx軸、紙面上下方向をy軸としたとき、ノッチ位置ズレ量算出部210は画像71からノッチ底部NB1の位置を解析し、その位置を画像内における座標に変換する(座標(xa,ya))。同様に、ノッチ位置ズレ量算出部210は画像72からノッチ底部NB2の位置を解析し、その位置を画像内における座標に変換する(座標(xb,yb))。そして、ノッチ位置ズレ量算出部210は、ノッチ底部NB1のx座標とノッチ底部NB2のx座標の差(xaとxbの差)をノッチ位置ズレ量として導き出す。
【0101】
尚、カメラ204及び205は、事前に互いの撮影視野の相対関係を予めキャリブレーションしておくことが望ましい。例えばある物体をカメラ204とカメラ205とで同時に撮影した場合、カメラ204の撮影画像とカメラ205の撮影画像との中心にその物体の中心があることが理想である。しかしながら、カメラ204とカメラ205との位置を精密に一致させることは困難であり、同じ物体を同時に撮影しても、カメラ204とカメラ205とが撮影した画像における物体の位置が異なる場合がある。
【0102】
そこで、カメラ204とカメラ205との撮影視野の中心の誤差を予め測定(キャリブレーション)しておく。そして、ノッチ位置ズレ量算出部210はノッチ位置ズレ量を算出する際に、その誤差を用いて位置補正することにより、正確なノッチ位置ズレ量を求めることができる。
【0103】
(2−4)赤外線カメラを用いる方法
図16は、赤外線カメラを用いてノッチNの形状情報を取得する場合における回転ズレ量計測装置1の構成を示した図である。赤外線カメラ207(赤外線カメラ)と赤外光源206とはノッチ形状取得部200に相当する。赤外線カメラ207と赤外光源206とは、貼合ウェハWを挟んで厚さ方向(矢印T方向)に互いに対向し、且つノッチNから所定間隔離れた位置にそれぞれ配置されている。尚、
図16では、赤外線カメラ207を半導体ウェハS1側、赤外光源206を半導体ウェハS2側に配置しているが、逆でも構わない。
【0104】
赤外光源206は、半導体ウェハS2側からノッチNを含む貼合ウェハWの外縁部に向けて赤外光Irを照射する。半導体ウェハSを透過した赤外光Irは赤外線カメラ207が取り込み、光電変換して画像を生成する。半導体ウェハSの平面部に入射した赤外光Irはそのまま透過するが、外縁部に入射した赤外光は屈折又は反射するために赤外線カメラ207に入射しない。従って、ノッチ位置ズレ量算出部210は、赤外線カメラ207が撮影した画像を解析することで、半導体ウェハSの外縁部を求めることができ、更にノッチ底部NBの位置を算出することができる。
【0105】
図17は、赤外線カメラ207が撮影した画像73を示した図である。ノッチ位置ズレ量算出部210は、赤外線カメラ207が撮影した画像73からノッチ底部NB1及びノッチ底部NB2の位置を解析して、位置ズレ量を算出する。
【0106】
例えば、紙面左右方向をx軸、紙面上下方向をy軸としたとき、ノッチ位置ズレ量算出部210は画像73からノッチ底部NB1及びNB2の位置を解析して、その位置を画像内における座標に変換し、座標(xc,yc)及び座標(xd,yd)を求める。そして、ノッチ位置ズレ量算出部210は、ノッチ底部NB1のx座標とノッチ底部NB2のx座標との差(xcとxdとの差)をノッチ位置ズレ量として算出する。
【0107】
以上、説明したように、(2−3)カメラ群を用いる方法及び(2−4)赤外線カメラを用いる方法では、ノッチ位置ズレ量算出部210は、ノッチ形状取得部200が貼合ウェハWの一方の面側又は両面側から取得したノッチN1及びN2の形状情報を用いて、半導体ウェハS1に対する半導体ウェハS2の位置関係を解析することができ、更に、ノッチN1からノッチN2までの距離をノッチ位置ズレ量として求めることができる。そして、回転ズレ量算出部220は、このノッチ位置ズレ量と中心位置ズレ量を用いて回転ズレ量を求めることができる。
【0108】
(貼合ウェハの製造方法)
次に、本実施の形態における貼合ウェハWの製造方法について説明する。本実施の形態における貼合ウェハWの製造方法は、上記の回転ズレ量検出装置による回転ズレ量検出方法を用いて貼合ウェハWを検品することを特徴とする。
【0109】
以下の説明では、貼合ウェハWとしては、ノッチが外縁部に形成された円盤状の半導体基板とノッチが外縁部に形成された円盤状の支持基板とを貼り合わせて製造される貼合ウェハWを採用する。また、以下の説明では、貼合ウェハWとして、CCDやCMOSイメージセンサ等を採用する。
【0110】
図18は、本発明の実施の形態における貼合ウェハWの製造工程を示す図である。まず、
図18(a)に示すように、半導体基板1801及び支持基板1802を用意する。半導体基板1801は半導体ウェハとして供給される。支持基板1802も同様なウェハ形状の基板として供給される。
【0111】
半導体基板1801にはシリコン(Si)基板等が用いられる。半導体基板1801の第1の主面1801aには、例えば、フォトダイオード等の受光部や、受光部により受光された信号を流す配線層等が設けられている。
【0112】
支持基板1802としては、例えばガラス基板等の光透過性部材が適用される。本実施の形態における支持基板1802は、第1の主面1801aに設けられた受光部の光透過性保護部材としても用いられる。そして、支持基板1802としては、例えばホウ珪酸ガラス、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス等を含むガラス基板が使用される。このような支持基板1802として、半導体基板1801とほぼ同サイズ、もしくは若干大きいサイズのガラス基板等を用意し、これを半導体基板1801の第1の主面1801a上に配置する。
【0113】
次に、
図18(b)に示すように半導体基板1801の第1の主面1801aの受光部を除く外周領域に接着剤層1803を塗布する。次に、
図18(c)に示すように半導体基板1801と支持基板1802とを貼り合せる。接着剤層1803としては、感光性や非感光性のエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等を含む接着剤が採用される。接着剤層1803は真空中でのラミネートやロールコート等を適用して形成される。
【0114】
半導体基板1801と支持基板1802とは、接着剤層1803を介して熱プレス(真空熱プレス等)して貼り合される。
【0115】
半導体基板1801と支持基板1802とを貼り合せるにあたって、
図1に示すノッチNが用いられる。すなわち、半導体基板1801の外縁部に設けられたノッチN1と、支持基板1802の外縁部に設けられたノッチN2とが重なるように、半導体基板1801と支持基板1802とが貼り合せされる。
【0116】
次に、
図19に示すように、半導体基板1801に対して、薄厚化工程が実施される。すなわち、半導体基板1801において、第1の主面1801aとは反対側の第2の主面1801bが、機械研削、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)、ウェットエッチング、或いはドライエッチング等により加工され、半導体基板1801の厚さが所定の厚さまで減少させて薄厚化される。
【0117】
図20は、本発明の実施の形態による貼合ウェハ製造装置のブロック図である。貼合ウェハ製造装置は、回転ズレ量計測装置1及び中心位置ズレ量計測装置2に加えて、更に貼合部2001及び検品部2002を備えている。
【0118】
貼合部2001は、
図18、
図19に示す貼合工程を実施する装置である。具体的には、貼合部2001は、半導体基板1801を保持する第1ステージと、支持基板1802を保持する第2ステージと、半導体基板1801に接着剤層1803を塗布する塗布機構と、半導体基板1801のノッチN1及び支持基板1802のノッチN2とを位置決めして、半導体基板1801及び支持基板1802を貼り合わせる貼合機構等を備えている。
【0119】
検品部2002は、例えば、コンピュータにより構成され、回転ズレ量算出部220により算出された貼合ウェハWの回転ズレ量が既定値以上であるか否かを判定する。そして、検品部2002は、回転ズレ量が既定値以上である場合、貼合ウェハWが不良品であると判断する。一方、検品部2002は、回転ズレ量が既定値未満である場合、貼合ウェハWは良品であると判定する。そして、検品部2002は、貼合ウェハWが不良品であると判断した場合、図略の表示装置に該当する貼合ウェハWが不良品であることを表示し、該当する貼合ウェハWが不良品であることをユーザに報知すればよい。或いは、不良品の貼合ウェハWと良品の貼合ウェハWとを振り分ける図略の振分機構を設け、検品部2002は、この振り分け機構に不良品の貼合ウェハWと良品の貼合ウェハWとを振り分けさせてもよい。