(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記構造式(1)で表される化合物は、他の鏡像体が実質的に存在しない鏡像体又は構造式(1)で表される化合物の一つの鏡像体が優勢に存する鏡像体混合物である、請求項1に記載のADHDの治療用薬学組成物。
前記(R)−(ベータ−アミノ−ベンゼンプロピル)カルバメートの鏡像体は約90%又はそれより多い程度にまで優勢に存する、請求項11に記載のADHDの治療用薬学組成物。
前記(R)−(ベータ−アミノ−ベンゼンプロピル)カルバメートの鏡像体は約98%又はそれより多い程度にまで優勢に存する、請求項12に記載のADHDの治療用薬学組成物。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のこれら及び他の対象は、下記の詳細な説明、本明細書に添付の図面及び請求項によってより具体的に理解されるであろう。
【0023】
本発明は、構造式(1):
【化5】
(式中、
Rは、水素原子、炭素原子数1乃至8の低級アルキル基、F、Cl、Br及びIから選択されたハロゲン原子、炭素原子数1乃至3のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基、及び炭素原子数1乃至3のチオアルコキシ基からなる群から選択され;
xは、1乃至3の整数であり、但し、xが2又は3の場合、Rは同じであっても異なっても良く;
R
1及びR
2は互いに同じであっても異なっても良く、かつ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至8の低級アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、及び炭素原子数3乃至7のシクロアルキル基からなる群から選択され;
R
1及びR
2は、結合して、水素原子、アルキル基、及びアリール基からなる群から選択された置換基で置換された5乃至7−員ヘテロ環を形成することができ、上記ヘテロ環化合物は1乃至2個の窒素原子及び0乃至1個の酸素原子を含み、上記窒素原子はお互いに直接連結もしておらず又酸素原子とも連結されていない。)で表される化合物又はそれらの鏡像体、ジアステレオマー、ラセミ体又はその混合物、又は水和物、溶媒和物及び薬学的に許容される塩及びアミドの治療的有効量の治療を必要とする哺乳類への投与を含むADHDの治療方法に関する。
【0024】
本方法は、また、式1a:
【化6】
又は1b:
【化7】
、又はその鏡像体、ジアステレオマー、ラセミ体又はその混合物、又は水和物、溶媒和物及び薬学的に許容される塩及びアミドからなる群から選択された化合物の使用を含む。
【0025】
上記式中、R
x、R
1及びR
2は上記で定義したものと同様である。
【0026】
本方法は、また、好ましくは、式1又はその鏡像体混合物からなる群から選択された(絶対配置Rの)D(又は右旋性)鏡像体の使用を含む。式1bの構造式において、ベータ
炭素に付着されたアミノ基は紙の平面に突き出される。これは、絶対配置(R)の右旋性(D)鏡像体である。
【0027】
好ましくは、下記構造式:
【化8】
で表されるように、構造式1においてR
x、R
1及びR
2は水素でありxは1である。
【0028】
上記化合物は(R)−(ベータ−アミノ−ベンゼンプロピル)カルバメートモノ塩酸と名づけられているO−カルバモイル−(D)−フェニルアラニノールである。鏡像体混合物に対し、O−カルバモイル−(D)−フェニルアラニノールは、好ましくは、約90%又はそれより多い程度にまで、より好ましくは、約98%又はそれより多い程度にまで優勢に存する。
【0029】
式1で表される化合物は当業者によく知られた方法により合成されることができる。式(1)で表される化合物の合成のためのいくつかの反応スキームが文献に記載されている;米国特許5705640号、米国特許5756817号、米国特許5955499号、及び米国特許6140532号。特定の化合物の製造についての代表的な例と上記反応スキームの詳細が下記の文献に記載されている;米国特許5705640号、米国特許5756817号、米国特許5955499号、及び米国特許6140532号、これらは全て参考文献として本明細書に組み込まれる。
【0030】
式(1)で表される化合物の塩は、適切な溶媒中で酸(HX)を用いて上記化合物を処理するか又は当該技術分野において当業者によく知られた手段により製造できる。
【0031】
構造式1から、本発明の化合物の一部が少なくとも一つの及びそれより多くの非対称炭素原子を有することは明らかである。本発明が化合物の立体化学的に純粋な異性体型のみならずこれらのラセミ体もその範囲内に含むことが意図される。立体化学的に純粋な異性体型は当該技術分野に知られた原理を適用することにより得られ得る。ジアステレオ異性体は分別結晶及びクロマトグラフィー技術のような物理的分離方法により分離し得、及び鏡像体は光学的活性酸又は塩基を用いたジアステレオマー塩の選択的結晶化により又はキラルクロマトグラフィーにより互いに分離し得る。純粋な立体異性体は、また、適した立体化学的に純粋な出発物質から合成され得るか又は立体選択的反応を用いて製造され得る。
【0032】
本発明の化合物の製造のための工程のいずれかの間に、関係するいずれかの分子上で感受性基又は反応基を保護することが必要なこと及び/又は望ましいことがある。これは、Protective Groups in Organic Chemistry、ed.J.F.W.McOmie、Plenum Press、1973;及びT.W.Green&P.G.M.Wuts、Protective Groups in Org
anic Synthesis、第3版、John Wiley&Sons、1999に記載されたものと同様の通常の保護基を用いて達成し得る。上記保護基は、当該技術分野に知られた方法を用いて、適切な後続段階で除去され得る。
【0033】
本発明は、上述した式1で表されるフェニルアルキルアミノカルバメートが新規且つ特有の薬理学的特性を有することを見出したことに一部基づいている。このような化合物はいくつかの動物モデルにとってADHD及びADHDと関連する症状の変形を治療する能力を有することを示す。
【0034】
正確な作用メカニズムが十分に理解されていないが、このような化合物はADHDに対して多くの他の知られている治療と同一のメカニズムによって作用しないと知られている。このような理由で、式1で表される化合物は、ADHD及びADHDと関連する症状の変形に対する単独又は付加的治療としての使用に特に適している。
【0035】
したがって、このような化合物は単独で又は他の有用な医薬との組み合わせで向上した効果を提供するために、及び使用される各薬の少量投与という理由で可能で副作用を減少させるために安全に用いることができる。
【0036】
一態様において、本発明はADHDを患っている被験者(subject)の治療方法に関し;上記方法は上記被験者に本発明の一つ以上のカルバメート化合物又はその薬学的に許容される塩の治療的有効量及び薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を供給することを含む。
【0037】
他の形態において、本発明は、また、ADHDを患っている被験者において多動/衝動及び不注意症状を含むADHD症状を減少、抑制又は除去するための方法を提供し、上記方法は上記症状を減少、抑制又は除去するために本発明のカルバメート化合物の有効量の被験者への投与を含む。
【0038】
定義
便宜のため、詳細な説明、実施例及び添付の請求項で用いられる用語が、ここにまとめられる。
【0039】
本発明は特定の方法論、プロトコル、動物種又は属、及び記載されている試薬に制限されず変更可能であることを理解されたい。また、本明細書で用いられる上記用語は特定の実施形態を説明することを目的とし、添付した特許請求の範囲によってのみ制限される本発明の範囲を制限することを意図したものではないこともまた理解されたい。
【0040】
本明細書において、用語「被験者」は、治療、観察又は実験の対象である、動物、好ましくは哺乳類、及び最も好ましくは男性及び女性の両方の人間を意味する。
【0041】
本明細書で用いられる用語「治療的有効量」は、治療される疾病又は障害の一種以上の信号又は症状の軽減を含む、研究員、獣医、医師又は他の臨床医に求められる組織系、動物又は人間内の生物学的又は医薬的反応を引き出す活性化合物又は薬剤の量を意味する。
【0042】
用語「予防的有効量」は、研究員、獣医、医師又は他の臨床医によって求められる組織、システム、動物又は人間における予防を求める生物学的又は医療事象の発生の危険を防止又は減少させる調合薬の量を意味することを意図する。
【0043】
用語「薬学的に許容される塩」は、本発明で用いられる化合物の非毒性塩を意味し、一般的に遊離酸を適切な有機あるいは無機塩基と反応させて製造される。このような塩の例は
、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、カルシウム、エデト酸カルシウム、d−ショウノウスルホン酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩化水素化物、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストラート、エシラート、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシラート、メチルブロミド、硝酸メチル、硫酸メチル、ムチン酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、カリウム、サリチル酸塩、ナトリウム、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシラート、トリエチオジド及び吉草酸塩を含むが、これに制限されない。
【0044】
したがって、本明細書で用いられる用語「治療を必要とする患者」は、抗うつ剤によって治療できるいずれかの気分障害、又は患者の現在の臨床状態又は予後が1種以上の式(1)で表される化合物を単独で投与するか又は他の薬を含むがこれに限定されるものではない他の治療的介入との組み合わせで投与することにより利益が得られる他の障害を含む、上述した症状又は障害のいずれかを現在有しているか又は発症する可能性がある被験者又は患者を意味する。
【0045】
本明細書で用いられる用語「治療する、又は治療」は、軽減;寛解;症状の減少又は患者が被害、病状、又は状態に耐えられるようにすること;変性又は衰弱又は疾病の悪化の速度を遅らせること;悪化の最終段階の消耗性が低くなること;又は被験者の肉体的又は精神的健康を改善すること;等の或る客観的又は主観的なパラメーターを含む、ADHDの被害、病状又は状態及びADHDの症状の変形の予防又は改善が成功した兆候を意味する。症状の治療又は改善は、身体検査、神経学的検査、及び/又は精神鑑定の結果を含む客観的又は主観的パラメーターに基づくことができる。したがって、上記用語「治療」は、男女両方にとって、ある形のADHD治療のための本発明の化合物又は薬剤の投与を含む。場合によっては、本発明の化合物を用いた治療は、他の化合物との組み合わせでADHDの進行を防止、抑制、又は阻止することができる。
【0046】
本明細書で用いられる用語「治療効果」は、ADHDの症状の効果的な改善又は減少を意味する。本明細書で用いられる用語「治療的有効量」は、上述したように、ADHD治療を必要とする被験者又は患者にとって1種以上の本発明の化合物が治療的効果を示すのに十分な量を意味する。
【0047】
用語「被験者」又は「患者」は、本明細書で同意的に用いられ、上記用語は、本発明の組成物を投与することができるヒト患者又は被験者を含む人間を含むがこれに制限されない哺乳類を意味する。上記用語「哺乳類」は、ウサギ、ラット、及びマウス、及びその他の動物などの実験動物のみならず、男女両方を含むヒト患者及びヒト以外の霊長類を含む。
【0048】
即時医薬組成物に対する治療的及び予防的有効量を定めるための方法は当該技術分野によく知られている。例えば、上記化合物は、平均的成人に対し、通常、1日に1乃至2回の投薬計画で約0.1mg乃至400mgの範囲内の1日投与量で用いられることができる。しかしながら、上記有効量は、用いられた特定化合物、投与方法、調剤の強度、投与方法、及び病状の進展によって異なり得る。さらに、患者の年齢、体重、食習慣及び投与の時間を含む、治療を受けている特定患者と関連する要素は、投薬量の調整の必要性をもたらす。
【0049】
上記化合物は、これに制限されるものではないが、静脈内、経口、皮下、筋肉内、皮内及び非経口を含むいずれかの慣用の投与経路によって被験者に投与され得る。投与経路によって、式(1)で表される化合物はどんな形でも構成されることができる。例えば、経口投与に適した形は、丸薬、ジェルキャップ、錠剤、カプレット、カプセル(即時放出型、時限放出型及び持続放出型製剤をそれぞれ含む)、顆粒、及び粉末などの固体形態を含む。経口投与に適した形は、また、溶液、シロップ、エリキシル剤、エマルション、及び懸濁液などの液体形態を含む。さらに、非経口投与に有用な形は、滅菌溶液、エマルション及び懸濁液を含む。
【0050】
本発明の医薬組成物を製造するために、活性成分として式(1)で表される少なくとも一つ以上の化合物又はその塩は通常の薬学的配合技術により薬学的担体と密接に混合される。担体は必須であり、不活性の薬学的賦形剤はバインダー、懸濁化剤、潤滑剤、香料、甘味剤、保存剤、染料及びコーティング剤を含むがこれに制限されるものではない。経口投与形態の組成物の製造には、一般の薬学的担体のいずれかが用いられ得る。例えば、液体経口剤のための適切な担体及び添加剤は水、グリコール、油、アルコール、香料、保存剤、着色剤などを含み;固体経口剤のための適切な担体及び添加剤はでんぷん、糖、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などを含む。非経口的な用途のため、上記担体は、例えば、溶解度の補助などの目的又は保存のために他の成分を含むこともできるが、一般的に滅菌水を含む。注射用懸濁液も製造されることができ、この場合、適切な液体担体、懸濁化剤などが用いられることができる。
【0051】
投与が容易であることから、錠剤及びカプセルは最も有用な経口投与単位剤形を示し、この場合、固形の薬学的担体が明らかに用いられる。必要に応じて、錠剤は、標準技術により糖コーティングされるか腸溶コーティングされ得る。座薬が製造されえ、この場合、ココアバターが担体として用いられることができる。上記錠剤又は丸薬は、持続性作用の利点を与える投与剤形を提供するためにコーティングされるか又は他の方法で調合されることができる。例えば、上記錠剤又は丸薬は内部投薬及び外部投薬成分を含み、上記後者は前者を覆う外皮の形態であることができる。上記二つの成分は、胃での分解を防止し内部成分が損傷なしに十二指腸に通過するようにするか又は放出を遅延させる腸溶層によって分離されることができる。多様な種類の物質がこのような腸溶層又はコーティング剤として用いられることができ、このような物質はセラック、セチルアルコール及び酢酸セルロースなどの物質を備えた多数のポリマー酸を含む。
【0052】
活性薬は、また、小型単層ベシクル、大型単層ベシクル及び多層ベシクルなどのリポソーム運搬システムの形で投与されることができる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン又はホスファチジルコリンなどの多様なリン脂質から形成されることができる。
【0053】
活性薬は、また、化合物分子が結合される個別の担体としてモノクローナル抗体を用いて運搬され得る。活性薬は、また、ターゲッタブル薬物担体(targetable drug carrier)として可溶性ポリマーと一緒に結合されることができる。このようなポリマーは、ポリビニル−ピロリドン、ピラン共重合体、ポリヒドロキシ−プロピル−メタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシ−エチル−アスパルタミド−フェノール、又はパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシド−ポリリシンを含むことができる。さらに、活性薬は、薬の制御された放出を達成するのに有用な生分解性ポリマー群と結合されることができ、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸及びポリグリコール酸の共重合体、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート及びヒドロゲルの架橋又は両親媒性のブロック共重合体である。
【0054】
好ましくは、このような組成物は、経口、非経口、鼻腔内、舌下又は直腸投与のための、又は吸入又は通気による投与のための錠剤、丸薬、カプセル、粉末、顆粒、滅菌非経口溶液又は懸濁液、定量エアロゾル又は液体スプレー、ドロップ、アンプル、自動−注入装置又は座薬などの単位投与剤形である。
【0055】
あるいは、上記組成物は週1回の又は月1回の投与に適した剤形で製造され得;例えば、デカン酸塩などの活性化合物の不溶性塩が筋肉内注入用デボー製剤を提供するために適用され得る。
【0056】
本明細書において上記医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル、粉末、注射剤、ティースプーンフル、座薬などの投与単位あたり、上述したように有効量の運搬に必要な多量の活性成分を含有することができる。例えば、本明細書の上記医薬組成物は、投与単位あたり、約25乃至約400mgの活性成分を含有できる。好ましくは、上記範囲は約50乃至約200mgの活性成分である。
【0057】
本発明の一部の実施形態において、本発明の実施に際して使用に適したカルバメート化合物は、単独で又は少なくとも一つ以上の他の化合物又は治療剤と同時に投与されることができる。この実施形態において、本発明は、患者にADHD及びADHDと関連する症状の変形を治療する方法を提供する。上記方法は、治療を必要とする患者に一つ以上の他の化合物又は治療剤の有効量と一緒に本明細書に開示された上記カルバメート化合物の一つの有効量を投与する段階を含む。
【0058】
本発明の化合物上の置換基及び置換パターンは、本明細書に開示された方法のみならず当該技術分野に知られた技術により容易に合成され化学的に安定した化合物を提供するために、当該技術分野における当業者によって選択されることができる。
【0059】
本発明は、式1で表される単離した鏡像体の使用を含む。好ましい一実施形態において、式1で表される単離したS−鏡像体を含む医薬組成物は、被験者にADHD治療効果を提供するのに用いられる。好ましい他の実施形態において、式1で表される単離したR−鏡像体を含む医薬組成物は、被験者にADHD治療効果を提供するのに用いられる。
【0060】
本発明は、また、式1で表される鏡像体混合物の使用を含む。本発明の一態様において、一種の鏡像体が優勢に存することができる。上記混合物において優勢に存する一種の鏡像体は、上記混合物に存在するどの他の鏡像体よりも多い量で、例えば、50%より多い量で、上記混合物に存在するものである。一態様において、一種の鏡像体は、90%の程度にまで又は91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%又は98%の程度にまで又はそれ以上の程度にまで優勢に存することができる。好ましい一実施形態において、式1で表される化合物を含む組成物において優勢な上記鏡像体は、式1で表されるS−鏡像体である。
【0061】
本発明は、式1で表される化合物の鏡像体及び鏡像体混合物を用いる方法を提供する。式1で表されるカルバメート鏡像体は、フェニル環に隣接した第2の脂肪族炭素上にキラル中心を含有する。
【0062】
単離した一種の鏡像体は、それに対応する鏡像体が実質的に存在しないものである。したがって、単離した鏡像体は、分離技術により分離されるか又は対応する鏡像体がないように製造された化合物を意味する。本明細書で用いられる用語「実質的に存在しない」は、上記化合物が一種の鏡像体の非常に大きな割合で構成されることを意味する。好ましい実施形態において、上記化合物は、少なくとも約90質量%の好ましい一種の鏡像体を含む。本発明の他の実施形態において、上記化合物は、少なくとも約99質量%の好ましい
鏡像体を含む。好ましい鏡像体は、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)及びキラル塩の形成及び結晶化を含む当該技術分野における当業者に知られた方法でラセミ混合物から単離されるか、又は本明細書に開示された方法で製造されることができる。
【0063】
薬剤としてのカルバメート化合物:
本発明は、薬剤として式1で表されるラセミ混合物、鏡像体混合物及び単離した鏡像体を提供する。上記カルバメート化合物は、被験者に抗−ADHD作用を提供するために薬剤として配合される。
【0064】
一般的に、本発明の上記カルバメート化合物は、経口、口腔、局所、全身(例えば、経皮、鼻腔、又は坐剤によって)、又は非経口(例えば、筋肉内、皮下、又は静脈注射)を含む治療薬の投与のために当該技術分野に知られたある方法により医薬組成物として投与されることができる。神経系に直接上記化合物を投与する方法は、ポンプ装置の有無にかかわらず、頭蓋内又は椎間ニードル又はカテーテルを用いた搬送により、例えば、脳内、心室内、脳室内、くも膜下、嚢内、脊髄内又は脊髄周辺経路の投与を含むことができる。
【0065】
組成物は、錠剤、丸薬、カプセル、半固体、粉末、持続放出製剤、溶液、懸濁液、エマルション、シロップ、エリキシル、エアロゾル又は他の適切な組成物の形態であって良く、そして本発明の化合物の少なくとも1種は、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤との組合せを含む。適切な賦形剤は、当該技術分野の当業者によく知られており、これらと組成物の配合方法は、Alfonso AR:
Remington’s Pharmaceutical Science、17th ed.、Mack Publishing Company、Easton PA、1985のような標準参考文献にみられ、その全内容及び目的は、参照することによって本明細書に組み込まれる。適切な液体担体、特に、注入可能な溶液のための適切な液体担体としては、水、水性塩水、水性デキストロース溶液及びグリコールを含む。
【0066】
上記カルバメート化合物は水性懸濁液として提供されることができる。本発明の水性懸濁液は、カルバメート化合物を水性懸濁液の製造に適した賦形剤とともに含んでよい。該賦形剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアカシアゴムのような懸濁化剤及び天然のリン脂質(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合物(例えば、ポリオキシエチレンステアレート)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール由来の部分エステルの縮合物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノ−オレエート)、又はエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール無水物由来の部分エステルの縮合物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノ−オレエート)のような分散剤又は湿潤剤を含んでよい。
【0067】
また、上記水性懸濁液はエチル又はn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエートのような1種以上の保存剤、少なくとも1種以上の着色剤、1種以上の香料、及びスクロース、アスパルテーム又はサッカリンのような1種以上の甘味料を少なくとも1つ含んでよい。配合物の浸透圧濃度は調節されることができる。
【0068】
本発明の方法で用いるための油懸濁液は、カルバメート化合物をラッカセイ油、オリーブ油、ごま油又はココナッツ油のような植物性油、又は液体パラフィンのような鉱油、又はこれらの混合物に懸濁するこより配合できる。上記油懸濁液は、蜜ろう、固形(hard)パラフィン又はセチルアルコールのような増粘剤を含んでよい。味の良い経口調剤薬を提供するためにグリセロール、ソルビトール又はスクロースのような甘味剤を添加しても良い。このような配合物はアスコルビン酸のような抗酸化剤を追加して保存して良い。
注入可能な油ビヒクル(vihicle)の例としては、Minto、J.Pharmacol.Exp.Ther.281:93−102、1997を参考することができる。本発明の上記医薬配合物は水中油エマルションの形態であっても良い。上記油相は上述の食物性油又は鉱油、又はこれらの混合物であって良い。
【0069】
適切なエマルション化剤は、アカシアゴム及びトラガカントゴムのような天然のゴム、大豆レシチンのような天然のリン脂質、脂肪酸及びソルビタンモノ−オレエートのようなヘキシトール無水物から誘導されるエステル又は部分エステル、及びポリオキシエチレンソルビタンモノ−オレエートのような部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物を含む。上記エマルションは、シロップ及びエリキシル剤の配合物などの甘味剤及び香味剤も含んでよい。該配合物は緩和剤、保存剤又は着色剤を含んでよい。
【0070】
上記選択された化合物は、単独又は他の適切な成分と組合せて、吸入によって投与されるエアロゾル配合物に製造されて良い(即ち、これらは吸入により投与されるように噴霧されて良い)。エアロゾル配合物はジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などのような加圧された許容可能な推進剤内に含まれることができる。
【0071】
例えば、関節内、静脈内、筋肉内、表皮内、腹膜内、及び皮下内経路のような非経口投与に適切な本発明の配合物は、抗酸化剤、緩衝材、細菌発育阻止剤、及び上記配合物を受容者の血液と等張状態となるようにする溶質を含むことができる水溶性及び非水溶性の等張滅菌注射溶液と、懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤及び保存剤を含むことができる水溶性又は非水溶性等張の滅菌懸濁液とを含んでよい。使用される許容されるビヒクル及び溶媒は、水及びリンガー溶液、等張食塩水がある。また、滅菌固定油は、通常、溶媒又は懸濁媒質として使用できる。このような目的で合成のモノ−又はジグリセライドを含む混合固定油を用いることができる。さらに、オレイン酸のような脂肪酸は、注射物質を製造するために用いて良い。このような溶液は滅菌され、また、一般的に好ましくない物質を含まない。
【0072】
上記化合物が十分に可溶性である場合、これらはプロピレングリコール又はポリエチレングリコールのような適切な有機溶媒の使用有無に関わらず、生理食塩水に直接溶解されることができる。微細に分散された化合物の分散剤は、水性澱粉又はカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液、又はラッカセイ油のような適切な油で製造されることができる。このような配合物は、慣用のよく知られている滅菌技術により滅菌されることができる。上記配合物は、生理学的状態に近づかせるために、必要に応じて、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどのようなpH調節剤及び緩衝剤、毒性調節剤のような薬学的に許容される補助物質を含んでよい。
【0073】
このような配合物における上記カルバメート化合物の濃度は、広範囲で変えられ、選択された特定の投与方法及び患者の要求により、主に流量、粘度、体重などに基づいて選択されて良い。IV投与のために、上記配合物は滅菌の注入可能な水性又は油性懸濁液のような滅菌の注射剤であって良い。上記懸濁液は、これらの適切な分散剤又は湿潤剤と懸濁化剤とを用いる公知技術により配合されることができる。また、上記滅菌注射剤は1,3−ブタンジオールの溶液のような非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌注射溶液又は懸濁液であっても良い。推奨の配合物はアンプル及びバイアルのような単回投薬又は多回投薬の密封された容器で提示されれて良い。注射溶液及び懸濁液は上述した種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤により製造されることができる。
【0074】
本発明の実施において、用いるのに適するカルバメート化合物は、経口投与されることが好ましい。組成物内の本発明の化合物の量は、組成物の形態、単位投薬のサイズ、賦形剤の種類及び当該技術分野の熟練者によく知られている他の要素により多様であることが
できる。一般的に、上記最終組成物は、例えば、0.000001質量%(%w)から50%w、好ましくは0.00001%wから25%wのカルバメート化合物を賦形剤又は賦形剤らである残余物とともに含んでよい。
【0075】
経口投与のための薬学的配合物は、経口投与に適する投与量で当該技術分野によく知られている薬学的に許容される担体を用いて配合されて良い。該担体は、医薬配合物が錠剤、丸薬、粉末、糖衣錠、カプセル、液体、トローチ剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などのように患者が摂取するのに適した単位投薬形態に配合されることを可能とする。
【0076】
経口投与に適した配合物は(a)水、生理食塩水又はポリエチレングリコール(PEG)400などの希釈剤に懸濁された有効量の医薬配合物のような液体溶液;(b)予め決定された量の活性成分を液体、固体、顆粒又はゼラチンとしてそれぞれ含有するカプセル、小袋又は錠剤;(c)適切な液体内の懸濁液;及び(d)適切なエマルションで構成されることができる。
【0077】
経口用薬学的調剤は、本発明の化合物と固体賦形剤を混合し、任意で得られた混合物を粉砕し、そして、必要に応じて錠剤又は糖衣錠コアを得るために、適切な付加化合物を添加してから、顆粒の混合物を加工することにいよって得られることができる。適切な固体賦形剤は、炭水化物又はたんぱく質フィラーであり、及びラクトース、スクロース、マンニトール又はソルビトールを含む糖;トウモロコシ、小麦、米、ジャガイモ又は他の植物由来の澱粉;メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース又はカルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース;及びアラビック及びトラガカントを含むゴム;並びに、ゼラチン及びコラーゲンのようなたんぱく質を含むが、これに制限されない。
【0078】
必要に応じて、交差結合されたポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、又はアルギン酸ナトリウムのようなその塩などの崩壊剤又は可溶化剤が添加されて良い。錠剤の形態は、1種以上のラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉、微晶質セルロース、ゼラチン、コロイド状シリコンジオキシド、滑石、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、及び他の賦形剤、着色剤、フィラー、結合剤、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、香料、染料、崩壊剤、及び薬学的に相溶性のある担体を含んでよい。トローチ剤型は、スクロースのような香味内剤に活性成分を含むことができ、及び活性成分に加えて当該技術分野に公知の担体を含むゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシアエマルション、ゲルなどのような不活性ベースに活性成分を含む香錠を含むことができる。
【0079】
また、本発明の化合物は、薬を直腸投与するための座薬の形態で投与されても良い。このような配合物は、通常の温度では固体であるが、直腸の温度では液体であるため、直腸で溶けて薬を放出する適切な非刺激賦形剤と薬を混合することで製造されて良い。このような物質は、ココアバター及びポリエチレングリコールである。
【0080】
本発明の化合物は座薬、吸入、粉末及びエアロゾル配合物を含む鼻腔内、眼球内、膣内及び直腸内の経路で投与されても良い(ステロイド吸入器の例として、Rohatagi、J.Clin.Pharmacol.35:1187−1193、1995;Tjwa、Ann.Allergy Asthma Immunol.75:107−111、1995参照)。
【0081】
本発明の化合物は、アプリケータースティック、溶液、懸濁液、エマルション、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、ゼリー、ペイント、粉末、及びエアロゾルとして配合され、局所経路により、経皮的に運搬されることができる。
【0082】
本発明の化合物とともにカプセル化物質を用いることができ、“組成物”という用語は、他の担体の有無に関わらず、カプセル化物質と結合された活性成分を配合物として含むことができる。例えば、本発明の化合物は、体内での遅い放出のために微小球体として運搬されることもできる。一態様において、微小球体は微小球体含有−薬(例えば、ミフェプリストン)の皮内注入により投与されて良く、上記微小球体は皮下に生物分解性及び注射ゲル配合物として(例えば、Gao、Pharm.Res.12:857−863、1995参考)、又は経口投与用微小球体として(例えば、Eyles、J.Pharm.Pharmacol.49:669−674、1997参考)徐々に放出される(Rao、J.Biomater Sci.Polym.Ed.7:623−645、1995参考)。経皮及び皮内経路のいずれも、数週又は数ヶ月持続的に運搬することができる。カシューは本発明の化合物を運搬するために用いることができる。
【0083】
他の形態において、本発明の上記化合物は細胞膜と融合したり、エンドサイトーシスされるリポソームを用いることにより、即ち、細胞表面の膜たんぱく質受容体に結合してエンドサイトーシスの結果をもたらすリポソームに付着されたリガンドを用いることにより運搬されることができる。リポソームを用いることにより、特に、リポソーム表面が目標細胞に特異リガンドを運搬したり、選択的に特定器官に向かう場合、生体内でカルバメート化合物を目標細胞に運搬することに焦点を合わせることができる(Al−Muhammed、J.Microencapsul.13:293−306、1996;Chonn、Curr.Opin.Biotechnol.6:698−708、1995;Ostro、Am.J.Hosp.Pharm.46:1576−1587、1989参考)。
【0084】
本発明の上記医薬組成物は塩として提供されて良く、これに制限されないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含む酸とともに形成されて良い。塩は対応する自由塩基の形態である水性又は他のプロトン性溶媒でより溶解される傾向にある。他の場合において、好ましい調剤薬は、例えば、下記の一部又は全部を含有することができる凍結乾燥された粉末である:ヒスチジン1mM乃至50mM、スクロース0.1%乃至2%、マンニトール2%乃至7%、pH範囲4.5乃至5.5で、これらは使用前に緩衝剤と組み合わされる。
【0085】
薬学的に許容される塩は、薬学的に許容され、かつ所望の薬学的特性を有する塩のことである。このような塩は、化合物内に存在する酸性プロトンが無機又は有機塩基と反応できる場合に形成され得る塩を含む。適切な無機塩は、例えば、ナトリウム及びカリウム、マグネシウム、カルシウム及びアルミニウムのアルカリ金属で形成されたものを含む。適切な有機塩は、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、Nメチルグルカミンなどのアミン塩基のような有機塩基から形成されたものを含む。また、薬学的に許容される塩は親(parent)化合物内のアミン部分と無機酸(例えば、ヒドロクロリック及びヒドロブロミック酸)及び有機酸(例えば、酢酸、クエン酸、マレイン酸、並びに、メタンスルホン酸とベンゼンスルホン酸のようなアルカン−及びアレーン−スルホン酸)との反応により形成された酸付加塩を含んでよい。酸性基が2つ存在する場合、薬学的に許容される塩は、モノ−酸−モノ−塩又はジ−塩であって良く;及び類似して、酸性基が2つ以上ある場合、このような基の一部又は全部は塩化されて良い。
【0086】
本発明に示された化合物は塩化されない形態か、塩化される形態かであることができ、このような化合物の名称は本来(塩化されない)の化合物とその薬学的に許容される塩の両方を含むことを意図する。本発明は化学式(1)で表される薬学的に許容される塩の形態を含む。式1で表される鏡像体の1種より多くのの結晶形態が存在することができ、これも本発明に含まれる。
【0087】
本発明の薬学的組成物は、任意で、カルバメート化合物にADHDの治療に有用な少なくとも1種の他の治療剤をさらに含むことができる。例えば、化学式1で表されるカルバメート化合物は、それら投与を容易にするために、固定用量複合剤内で他のADHD治療剤と物理的に結合されることができる。
【0088】
医薬組成物を配合する方法は、Liebermanなどにより編集された
Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets.Second Edition.Revised and Expanded.Volumes1−3と、Avisなどにより編集された
Pharmaceutical Dosage Forms: Parenteral Medications.Volumes1−2と、Liebermanなどにより編集された
Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems.Volumes1−2.;published by Marcel Dekker,Incのような様々な文献に記載されており、これらの全ての内容及び目的は、本明細書に参考文献として組み込まれる。
【0089】
一般的に、上記医薬組成物は滅菌、実質的に等張、そして、米国の食品医薬局の優れた医薬品製造管理基準(Good Manufacturing Practice(GMP))の規則に完全に従って配合される。
【0090】
投薬計画
本発明は、カルバメート化合物を利用して、哺乳類において抗−ADHD作用を提供する方法を提供する。ADHDを減少又は治療するために必要なカルバメート化合物の量は、治療的又は薬学的有効量として定義される。上記投薬スケジュール及び該用途に有効な量、即ち、投与又は投薬計画は疾病の段階、患者の物理的状態、年齢などを含む様々な要素により決まる。患者のための投薬計画を計算する際には、投与形態も考慮される。
【0091】
当該技術分野の熟練者は、その技術及び本明細書を考慮して過度な実験なしに、本発明を実施するための特定置換カルバメート化合物の薬学的有効量を決めることができる(例えば、Lieberman、Pharmaceutical Dosage Forms(Vols.1−3、1992)参考); Lloyd、1999、The art、Science and Technology of Pharmaceutical Compounding; and Pickar、1999、Dosage Calulations)。また、治療的有効量は、治療的に有益な効果が臨床学的観点から活性成分の毒性又は有害な副作用より上回るものである。さらに、夫々の特定患者、特定投与計画は、個別的な要求及び上記化合物を投与又は監督する人の専門的な診断により、徐々に評価及び調節されるべきである。
【0092】
治療の目的で、本明細書に開示された上記組成物又は化合物は、長時間にわたる連続的な運搬による単回ボーラス(bolus)運搬、又は繰り返される投与プロトコル(例えば、毎時間、毎日又は毎週繰り返されるプロトコル)により患者に投与されることができる。本発明の医薬配合物は、例えば、毎日1回又はそれ以上、週に3回又は週に1回投与されても良い。本発明の一態様において、本発明の上記医薬配合物は、経口で、毎日1回あるいは2回投与される。
【0093】
この文脈で、カルバメート化合物の治療的有効量は、ADHD治療に臨床的に注目すべき結果をもたらす長期治療計画内で繰り返される投薬を含むことができる。この文脈における投与量の決定は、一般的に、ヒト臨床試験を伴う動物モデルの研究に基づいており、被験者において目標となる兆候又は症状の発現又は深刻性を著しく減少させる有効投与量及び投与プロトコルを測定することによって導かれる。この点、適切なモデルは、例えば
、ネズミ科の動物、ラット、豚、猫、人間以外の霊長類及び当該技術分野に知られている他の許容される動物モデル患者を含む。また、有効投与量は、試験管内モデル(例えば、免疫学的及び組織病理学的アッセイ)を利用して決まり得る。このようなモデルを利用して、通常の計算及び調節は、生物学的活性作用剤の治療的有効量を投与するための適切な濃度及び投与量(例えば、所望の反応を誘導するための鼻腔内有効量、経皮内有効量、静脈内有効量又は筋肉内有効量)を決めることを一般的に要求される。
【0094】
本発明の例示的な実施形態において、本化合物の単回投薬形態は標準投薬計画のために製造される。このような方式により、上記組成物は医者の指示によってより少ない投与量に容易に細分化されることができる。例えば、単位投薬は包装された粉末、バイアル又はアンプルに製造されて良く、カプセル又は錠剤状に製造されることが好ましい。
【0095】
本組成物のこのような単位投薬形態である活性化合物は、例えば、患者の特定要求により、単回又は多重の毎日投薬のための約10mgから約1g又はそれ以上の量であって良い。約1gの最小毎日投与量による治療計画を開始することによって、カルバメート化合物の血中濃度は、より少ないか、多い投与量の必要有無を決めることができる。
【0096】
本発明のカルバメート化合物の有効量は、例えば、約0.01mg/kg/doseないし約150mg/kg/doseの経口又は非経口投与されることができる。投与は、好ましくは約0.1mg/kg/dose乃至約25mg/kg/doseであり、より好ましくは約0.2mg/kg/doseから約18mg/kg/doseである。従って、本明細書に記載された投薬単位当たりに含有された上記活性成分の治療的有効量は、例えば、平均体重70kgの患者に対し、約1mg/日乃至約7000mg/日であることができる。
【0097】
また、本発明の方法はADHD治療を提供するために使用されるキットを提供する。治療に有益で添加可能な1種以上の他の化合物と、本発明の1種以上のカルバメートを含む医薬組成物を適切な担体に配合した後、それは適切な容器に配置され、ADHDを治療するためのラベルを付けてられてもよい。さらに、ADHD治療に有用な少なくとも1つの他の治療剤を含む他の薬が容器に入れられ、及び表示された疾病の治療用のラベルが付けられて良い。このようなラベルは、例えば、各薬の量、頻度及び投与方法に関する指示を含むことができる。
【0098】
上述の発明は、明確な理解の目的のために例をもって詳しく説明されており、当業者が、特定の変形及び修正が本開示によって理解され、及び添付の請求の範囲の見地内で、過度な実験なしに実施できることは明らかであり、これは制限するためではなく、例示するためのものであることを示す。下記の実施例は、本発明の特定の態様の説明を提供するためのもので、これにより制限されない。
【実施例】
【0099】
実施例1
試験化合物(O−カルバモイル−(D)−フェニルアラニノール)を3、10又は30mg/kgIPで投与し視覚的弁別の逆転に対する行動遂行を評価するために設計された行動実験を行った。3.0又は30.0mg/kgの試験化合物又はアンフェタミンで処理された動物はビヒクルで処理されたラットと比べて遂行能力の特定の基準レベルに到達するまでより少ない試みを必要とし、優れた精度スコアを得た。したがって、特定投与量における試験化合物はこのような課題においてd−アンフェタミン硫酸塩を用いて得られたことと同様に行動遂行を向上させることを示した。
【0100】
(方法)
トレーニングの開始時、約250gの40匹の成熟雄性ロングエバンスラット(チャールズ リバー 研究所(Charles River Laboratories)、ウィルミントン、マサチューセッツ州)を本研究の被験者として用いた。ラットの各輸送は、一般集団への導入に先立って5日間隔離された。オペラントトレーニングが始まる前、ラットに最小、一週間追加の順応過程がさらに許容された。
【0101】
殺菌した0.9%の生理食塩水に試験化合物3.0、10.0及び30.0mg/mLを溶解した。比較化合物としてのD−アンフェタミンは、0.9%の殺菌生理食塩水にアンフェタミン塩1.0mg/mLを溶解した。
【0102】
オペラントトレーニングが始まった後、ラットを個別に小屋に飼った。食べ物を入手する機会は一日に12−20gに制限して動物を85−90%の自由給餌体重に維持した(非制限ラットと比べて)。ラットに水を持続的に供給し実験の間に体重を増加させ続けた。
【0103】
動物が研究の第I相(Phase I)に関してトレーニング基準に到達した後、これらを治療グループの一つに指定した;グループは第I相における遂行(基準遂行までの日数)に適合された。本研究は混合設計された(投与量レベル×反復トレーニング期間)。5個の投与量レベルは1、3及び10mg/kgの試験化合物、0.9パーセントの生理食塩水(ビヒクル)及び1.0mg/kgのd−アンフェタミン硫酸塩(対照化合物)であり1.0mL/kgで腹腔内(IP)に全て伝達された。
【0104】
動物は、前壁に2個の格納可能な反応レバーを含んだオペラント試験チャンバー(Med Associates社)の10個セットでトレーニングされた。チャンバー内に2個の刺激光があり、各レバー上に設置された。食物マガジンは前壁の2個の反応レバーの間に配置し、食べ物の伝達はマガジン光で信号した。食物ペレットの回収は食べ物マガジン内の光センサーによって検知した。チャンバーの薄暗い照明は前壁の中央上のハウスライトによって提供された。
【0105】
初めは、食べ物を食べるためにはレバーを押すように動物を適応させた。この相の間、両レバーともチャンバー内に伸び、レバーを押すことで、動物は45mgのペレットの報酬を得られた。一旦、反対のレバーを押す回数を超えて5回を超えて押すと、サイドバイアスの使用がレバーを格納することにより抑制される。3日連続レバーを100回押した後、被験者を研究の第I相に移動させた。この相において、動物に照明信号光の下のレバーを押すことを習得させなければならなかった。それぞれの試みの間に、信号光の一つ(ランダムに選択される)がレバーの提示に先立って(30.0秒制限時間)1.0秒間照射された。レバーがチャンバー内に伸びた後、近位のレバーを押すことは、食物ペレットの送達を生じさせる。遠位のレバーを押すことは、5.0秒間ハウスライトが消えることにより信号が送られてタイムアウトを生じさせる。正しいあるいは正しくない押し、又は誤押しの後、レバーは、可変の試行間間隔の間に格納された(ITI;5秒+/−2秒)。この相において安定した反応がなされた後(2日連続で80%以上正しい)、動物は本実験の薬物投与部分でトレーニングを始めた(第II相)。
【0106】
第II相において、動物は、パーセントの精度及び基準に対する試みの数で適応される5個のグループに区分された。各グループ内の動物には、行動トレーニングより1時間前に、試験化合物の3種の投与量(3.0、10.0又は30.0mg/kg、IP)の一つ、アンフェタミン(1.0mg/kg、IP)、又はビヒクル(生理食塩水)を投与した。第II相においての区別は第I相での区別とは反対に、動物は指示ライトより遠位のレバーを押すことにより報酬を得た。動物にトレーニングの約60分前に毎日投与した。トレーニングは、全ての動物が新たな区別に対して80%以上の正しさを2日連続して達
成するまで継続された。
【0107】
データはウィンドウズ用SPSS 12.0(SPSS社製、シカゴ、イリノイ州)を用いて分析した。混合グループ間反復測定ANOVA(mixed between groups repeated measures ANOVA)が反応精度データに対して行われた。第II相から基準データに対する試みに対し、単純ワンウェイANOVAを行った。
【0108】
(結果)
反応精度。試験化合物は、パーセントの精度により測定される視覚的弁別の転換に対して顕著に向上した性能の結果をもたらした。混合設計ANOVAはセッション(F
19,665=365.60、p<0.001)及びグループ(F
4,35=3.08、p=0.028)の顕著な主効果を示したが、さらに重要なことには、セッションの相互作用によって顕著なグループ(F
76,665=1.78、p=0.019)が存在した。グラフの視覚検査(
図1参照)は、ビヒクル及び試験化合物10.0mg/kg投与量が、試験化合物3.0及び30.0投与量の及びd−アンフェタミン1.0mg/kg投与量より低かったことを示す。
【0109】
第II相での基準に対するセッション。試験化合物は、基準に達するよう要求されるセッションの数により測定される視覚的弁別の転換に対して顕著に向上した性能の結果をもたらした(
図2参照)。ワンウェイANOVA(one−way ANOVA)はセッションの効果を示した(F
4,35=4.33、p=0.006)。一対比較(p<0.05)は、試験化合物3.0及び30.0投与量又はd−アンフェタミン1.0mg/kg投与量を毎日投与した動物に要求されるセッションの数と比較して、ビヒクルグループが遂行能力の基準レベルに達するためには追加の試みが必要とされることを確が裏付けられた(注:
図2の星印参照)。10.0mg/kgの試験化合物が投与されたグループはビヒクルグループとは異なっていないが、30mg/kg投与量の試験化合物及びd−アンフェタミンが投与されたグループとは異なっている。
図2において、「*」はLSD一対比較を用いるビヒクル制御と比較してp<0.05を示す。
【0110】
実施例2
皮下に(SC)10、30及び100mg/kgで投与された試験化合物は、ADHDと診断された患者と多少類似する野生型及びホモ接合変異体ドーパミン輸送体ノックアウト(KO)マウスの自発運動に対する影響を決定するために評価された。上記試験化合物は選択的にKOマウスの運動を用量依存的に減少させ、これは、試験化合物がドーパミン輸送体KOマウスにおいて多動の減少に非常に効果的であることを示す。
【0111】
(方法)
雄性及び雌性野生型及びホモ接合変異体ドーパミン輸送体KOマウス(n乃至10マウス/遺伝子型/試薬)は、ビヒクル又は化合物の単回注入の後にオープンフィールドで自発運動に関してテストされた。マウスをオープンフィールドに30分間配置し、ビヒクル(滅菌水)、アンフェタミン2mg/kg、又は3種の濃度の試験化合物(10、30、100mg/kg)をSCに投与した。全ての薬は5mL/kgの体積で提供された。さらに90分間、オープンフィールドに動物を戻した。自発運動は、自動化オムニテックディジスキャン(Omnitech Digiscan)装置で評価した(Accuscan Instruments社製、コロンバス、オハイオ州)。運動を、テストが行われる2時間の間5分間隔で合わせた。水平運動及び自発運動はcmで、占められた総距離という条件で測定され、垂直運動又は立ち上がり運動は垂直ビーム中断の総数という条件で測定され、常同運動は1秒未満の間隔の所定のビーム又はビームらに与えられる繰り返し中断という条件で定量化された。分析のために、10WT及び10KOマウスは、各グル
ープに配属された、ほぼ同数の雄性及び雌性で、各治療グループでテストされた。データは、Statistical Package for Social Scienceプログラム(ウィンドウズ用バージョン11.0;SPSS Science社製、シカゴ、イリノイ州)で分析した。それぞれの従属変数に対する結果は、被験者内比較効果(長時間によるグループの差異)と被験者間比較効果(主効果及び相互作用の試験)に対し、分散繰り返し分析(RMANOVA)で分析された。ボンフェローニ(bonferroni)補正された一対比較は、事後実験として用いられた。p<0.05は重要と考えられた。
【0112】
(結果)
基準値:KOマウスは、WTマウスと比較して、自発、立ち上がり及び常同運動の高い水準を示した。
【0113】
薬物治療:SCのアンフェタミン2mg/kgは、各ビヒクル対照グループと比べて、WTマウスでは自発、立ち上がり及び常同運動を増加させ、KO動物ではそれらを減少させた。上記試験化合物は運動を用量依存的な方法で減少させ、及び100mg/kg投与量はアンフェタミンより効果的に運動を抑制した。代表的な
図3を参照すると、90分間の後注射期間でアンフェタミン(AMPH)及び試験化合物に対する自発運動(移動した距離、cm単位)は低下した。立ち上がり及び常同行動は類似する結果を示した。
【0114】
実施例3
ドーパミン、ノルエピネフリン及びセロトニン輸送体への結合及びドーパミン、ノルエピネフリン及びセロトニン再吸収への効果について試験化合物をテストした。上記試験化合物は、コカインと比べて、ドーパミン及びノルエピネフリン輸送体への弱い結合、及びドーパミン及びノルエピネフリン再吸収への弱い効果を示した。
【0115】
(方法)
未詳(unknowns)の重さを量りDMSOに溶解して10又は100mMのストック液を製造した。結合のための分析緩衝剤で50又は500μMに、又は再吸収のための分析緩衝剤で1又は10mMに、初期希釈液を製造した。DMSOが補充された分析緩衝剤を用いて後続の希釈を行い、0.1%DMSOの最終濃度を維持した。バイオメック2000ロボットワークステーションを用いてピペット操作を行った。
【0116】
テストされた試験化合物の濃度
アッセイ濃度範囲
結合:
hDAT 21.6nM−100μM
hSERT 21.6nM−100μM
hNET 21.6nM−10μM
吸収:
hDAT 31.6nM−10μM
hSERT 31.6nM−100μM
hNET 31.6nM−100μM
【0117】
クローン細胞内のhDAT、hSERT又はhNETへの[
125I]RTI−55の放
射性リガンド結合の抑制:
【0118】
細胞製造:hDAT、hSERT又はhNETインサートを発現するHEK293細胞を直径150mmの組織培養皿上で80%合流点(confluence)まで培養し組織供給源として提供した。細胞膜を下記の通りに製造した。培地をプレートから取り出し
、上記プレートを10mLのカルシウム−及びマグネシウム−遊離リン酸塩−緩衝食塩水で洗浄した。溶解緩衝剤(10mL;2mM HEPES及び1mM EDTA)を追加した。10分後、細胞をプレートから擦り取り、遠心分離管に注ぎ、30,000×gで20分間遠心分離した。上清液を除去し、上記ペレットを12乃至32mLの0.32Mスクロースでポリトロンを用いて設定7で10秒間再懸濁した。上記再懸濁の体積は、細胞株内の結合部位の密度によって決まり、総放射性の10%以下の結合を反映するように選択された。
【0119】
分析条件:各分析チューブは50μLの膜調合液(たんぱく質約10−15μg)、25μLの未詳(unknowns)、非特異的結合を定義するのに用いられる化合物、又は緩衝剤(Krebs−HEPES、pH7.4;25mMのHEPESで緩衝された、NaCl 122mM、CaCl
2 2.5mM、MgSO
4 1.2mM、パーギリン 10μM、トロポロン 100μM、グルコース 0.2%及びアスコルビン酸 0.02%)、25μLの[
125]RTI−55(40−80pMの最終濃度)及び最終体積が
150μLとなるのに十分な量の追加の緩衝剤を含む。[
125]RTI−55の追加前に
膜を未詳(unknowns)と一緒に10分間プレインキュベーションする。上記分析チューブを25℃で90分間インキュベーションした。結合はTomtec 96−ウェル細胞収集器(cell harvester)を用いてGF/Cフィルターによるろ過によって定める。フィルターを6秒間氷却生理食塩水で洗浄した。シンチレーション液を各スクエア(square)に添加しフィルター上に残った放射性をワラック(Wallac)μ−又はベータ−プレートリーダーを用いて決定した。特異的結合は5μMのマジンドール(HEK−hDAT及びHEK−hNET)又は5μMのイミプラミン(HEK−hSERT)の有無で観察された結合における差異として定義される。2又は3個の独立競争実験を2重反復測定で行った。GraphPAD Prismがデータの分析のために用いられ、IC
50値はCheng−Prusoff方程式を用いてK
i値に変換され
た(K
i=IC
50/(1+([RTI−55]/K
dRTI−55)))。
【0120】
組み換え生体アミン輸送体を発現するHEK293細胞内における[
3H]神経伝達物
質吸収の抑制に対するろ過分析:
【0121】
細胞製造:細胞を上述したような合流点(confluence)まで培養した。培地を除去し、細胞を室温でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄した。3mLのKrebs−HEPES緩衝剤の追加に続いて、上記プレートを25℃の水欲で5分間温めた。細胞をやさしく擦り取り、その後、ピペットを用いて粉末にした。多数のプレートからの細胞を合わせた。一つのプレートは、未詳(unknowns)に対する2個の完全曲線に対するデータの製造のために要求される48ウェルに対して十分な細胞を提供する。
【0122】
吸収抑制分析条件:上記分析を96本の1−mLのバイアルで行った。Krebs−HEPES(350μL)及び未詳、非特異的吸収の定義のために用いられる化合物、又は緩衝剤(50μL)をバイアルに添加し25℃の水槽に配置した。特異的吸収は5μMのマジンドール(HEK−hDAT及びHEK−hNET)又は5μMのイミプラミン(HEK−hSERT)の有無で観察された吸収の差異として定義される。細胞(50μL)を添加し未詳で10分間プレインキュベーションした。上記分析は、[
3H]ドーパミン
、[
3H]セロトニン、又は[
3H]ノルエピネフリン(50μL、20nMの最終濃度)の添加によって始まった。0.05%のポリエチレンイミンに予浸されたWhatman
GF/Cフィルターによるろ過を用いて10分後に吸収を終了させて使用した。GraphPAD Prismプログラムを6個の薬濃度それぞれからなる3重曲線に適用することによりIC
50を計算した。各曲線に対する2又は3個の独立測定を行った。
【0123】
(結果)
人間ドーパミン輸送体に対するeDNAを発現するHEK細胞(HEK−hDAT細胞)による放射性リガンド([
125I]RTI−55)結合及び[
3H]ドーパミン吸収に対する効果、人間セロトニン輸送体に対するeDNAを発現するHEK細胞(HEK−hSERT細胞)による放射性リガンド([
125I]RTI−55)結合及び[
3H]セロトニン吸収に対する効果、及び人間ノルエピネフリン輸送体に対するeDNAを発現するHEK細胞(HEK−hNET細胞)による放射性リガンド([
125I]RTI−55)結合
及び[
3H]ノルエピネフリン吸収に対する効果について試験化合物をテストした。
【0124】
HEK−hDAT細胞において、結合部位に対する上記化合物の親和度は、同じ部位に対して、基準化合物のコカインの親和度より低かった。上記試験化合物による[
125I]
RTI−55の変位に対するK
i値は14,200nMであり、[
125I]RTI−55結合のコカイン変位に対するK
i値は236nMであった。吸収分析において、試験化合物
は、2900nMのIC
50値を有し、コカインの効能(IC
50=385nM)と比較して[
3H]ドーパミンの吸収を阻害する作用が弱かった。ヒル係数は結合又は吸収部位との
複雑な相互作用を示した(表1)。
【0125】
HEK−hSERT細胞において、結合部位に対する化合物の親和度は、同じ部位に対して、基準化合物のコカインの親和度より低かった。上記試験化合物による[
125I]R
TI−55の変位に対するK
i値は81,500nMであり、及び[
125I]RTI−55結合のコカイン変位に対するK
i値は361nMであった。吸収分析において、31,8
27は、100μMを超えるIC
50値を有し、コカインの効能(IC
50=355nM)と比較して[
3H]セロトニンの吸収を阻害する作用が弱かった(表2)。
【0126】
HEK−hNET細胞において、結合部位に対する化合物の親和度は、同じ位置に対して、基準化合物のコカインの親和度より低かった。上記試験化合物による[
125I]RT
I−55の変位に対するK
i値は3700nMであり、[
125I]RTI−55結合のコカイン変位に対するK
i値は505nMであった。吸収分析において、試験化合物は、44
00nMのIC
50値を有し、コカインの効能(IC
50=194nM)と比較して[
3H]
ノルエピネフリンの吸収を阻害する作用が弱かった(表3)。
【0127】
【表1】
【0128】
【表2】
【0129】
【表3】
【0130】
上記数値は少なくとも3回の独立の実験からの平均SEMを示し、それぞれは2重(結合分析に対して)又は3重(吸収分析に対して)反復測定で行われた。上記試験化合物に対するK
i又はIC
50が10μMを超える場合、2個の実験だけが行われ、標準誤差は報
告されていない。
【0131】
実施例4
自由に動く覚醒ラットの前頭前皮質及び線条体脳領域内の生体内脳微小透析法でサンプリングされた、細胞外モノアミン作動性神経伝達物質レベルに対して試験化合物をテストした。試験化合物30mg/kgの投与は、線条体ドーパミン及び前頭前皮質ノルエピネフリンの増加の結果をもたらした。
【0132】
(方法)
皮質及び線条体微小透析法ガイドカニューレ及びプローブが慢性的に埋め込まれた雄性スプレーグ−ドーリー(Sprague−Dawley)ラットから脳透析物を収集した。試験化合物(10及び30mg/kg、皮下注射)又はビヒクル(生理食塩水、0.9%NaCl)の異なる投与量の効果は、3個の50分基準サンプル及び8個の連続50分後投与サンプルで評価した。上記化合物の効果を決定するためのHPLC/ECD分析を用いて2個の異なる脳領域に対するドーパミン、ノルエピネフリン及びセロトニンのレベルを分析した。
【0133】
(結果)
試験化合物は、投与量10mg/kgのときは、テストされた脳領域のどこででも細胞外神経伝達物質レベルに対する一貫した効果を示していない。試験化合物は、投与量30mg/kgのときだけ、多少可変的に線条体ドーパミン及び前頭前皮質ノルエピネフリン
が増加し、調査された他の神経伝達物質に対するいかなる顕著な効果も示していない。
【0134】
図4は、3個の基準サンプル及び8個の連続後投与サンプルのうちラットの線条体における細胞外ドーパミン濃度に対する試験化合物(10及び30mg/kg s.c.)又はビヒクル(0.9%NaCl)の投与の影響を示すものであり、
図5は、3個の基準サンプル及び8個の連続後投与サンプルのうちラットの前頭前皮質における細胞外ノルエピネフリン濃度に対する試験化合物(10及び30mg/kg s.c.)又はビヒクル(0.9%NaCl)の投与の影響を示すものである。
【0135】
図4及び5では、個体の平均基準値と比較した平均パーセント変化として、結果が示されている。矢印は、試験化合物を投与した時間を示す。平均値(及び対応するS.E.M.)を、各グループに対してn=12ラットの各50分サンプル期間の間に示す(NB:個別データポイントは、透析物サンプルの付随的な損失のため、少数のサンプルに基づく可能性もある)。
【0136】
引用された参考文献
本明細書に引用された全ての参照文献は、各文献又は特許又は特許出願が、特徴的にそして個別的に、全ての目的のためにその全内容が参照することによって組み込まれることを示すのと同一程度に、その全内容及び全目的のために参照することによって、ここに組み込まれる。
【0137】
本明細書で、参考文献に対する論議は単にその著者の主張を要約するために行われ、何れの参考文献が公知技術を構成すると認めたものではない。出願人は引用された参考文献の正確性及び適切性に対して異意を提議する権利を有する。
【0138】
本発明は本明細書に記載された特定の実施形態の条件により制限されず、これは発明の各実施形態に対する1つの例として意図されている。その技術的思想及び見地から外れない範囲内で本発明の様々な修正及び変更は行うことができ、これは当該技術分野の熟練者には明白である。本明細書に挙げられたものに加えて、本発明の見地内で機能的に同等な方法及び装置は、上述の記載及び添付の図面から当該技術分野の熟練者に自明である。このような修正及び変更は添付の請求項の見地に含まれる。本発明は添付の請求項及びこのような請求項の同等物の全体見地によってのみ制限される。