(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかる印刷方法及び印刷装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
実施の形態1.
図1、
図2、
図3を用いて、実施の形態1の印刷装置について説明する。なお、
図1、
図2は
図3のA−A断面図である。
実施の形態1の印刷装置の構成について説明する。
印刷装置は、印刷形状に相当する複数の第1の窪み15a、15b、15c、15dが設けられた印刷版11と、第1の窪み15a〜15dに面して印刷版11に接するように設けられた伸縮膜12とを有する。
なお、本明細書では、これ以降、印刷版を版と記述する。
印刷形状とは、印刷しようとする所望のパターンのことであり、例えば太陽電池セルへの用途では、グリッド電極とバス電極とで構成された表銀電極のパターンのことである。
印刷形状に相当する第1の窪み15a〜15dを有する版11が凹版に相当する。
版11は平板形状である。第1の窪み15a〜15dは版11の板厚未満となるように設けられている。
【0014】
版11には、複数の第1の窪み15a〜15dのそれぞれに連通する複数の吸引孔14a、14b、14c、14d(吸引孔14a〜14d)が設けられており、吸引孔14a〜14dからの吸引により、第1の窪み15a〜15dの内部を吸引するように構成されている。
版11の内部には、複数の吸引孔14a〜14dをまとめて吸引するための吸引空間51が設けられており、吸引孔14a〜14dは、それぞれ吸引空間51に繋がっている。
【0015】
吸引空間51には、吸引空間51を吸引するための吸引管53が繋がっており、吸引管53は吸引管53を開閉させる吸引バルブ52(
図1、
図2)を介して図示しない真空ポンプに接続されている。
図1は、吸引バルブ52が閉の状態を示し、
図2は、吸引バルブ52が開の状態を示す。
【0016】
吸引空間51には、吸引空間51を大気圧状態に加圧するための加圧管55が繋がっており、加圧管55は加圧管55を開閉させる加圧バルブ54(
図1、
図2)を介して印刷装置の外側の大気に連通されている。
図1は、加圧バルブ54が開の状態を示し、
図2は、加圧バルブ54が閉の状態を示す。
なお、加圧管55を圧縮機に接続し、吸引空間51に大気圧よりも高い圧力を持つ気体を流入させ、大気圧状態にまで加圧する時間を短縮させても良い。
【0017】
図1は、吸引バルブ52が閉、加圧バルブ54が開の状態を示している。
吸引バルブ52を閉、加圧バルブ54を開とすることにより、吸引空間51は加圧管55を通して大気圧状態まで加圧され、第1の窪み15a〜15dの内部も大気圧状態まで加圧される。よって、第1の窪み15a〜15dの内部が大気圧になる。
伸縮膜12は、上面側、下面側のいずれもが大気圧状態となるので、伸縮膜12を伸縮させる力は働かず、伸縮膜12は平らな形状となる。
【0018】
図2は、吸引バルブ52が開、加圧バルブ54が閉の状態を示している。
吸引バルブ52を開、加圧バルブ54を閉とすることにより、吸引空間51は吸引管53を通して吸引され、吸引空間51の内部及び第1の窪み15a〜15dの気圧が大気圧より低下するため、第1の窪み15a〜15dの形状に沿って伸縮膜12が窪み、第2の窪み18a、18b、18c、18d(第2の窪み18a〜18d)が形成される。つまり、第1の窪み15a〜15dは版11に形成された窪みであって、第2の窪み18a〜18dは伸縮膜12に形成される窪みである。
【0019】
図3は、版11に設けられた印刷形状の一例を表す下面図である。
版11には、印刷形状に相当する第1の窪み15と、第1の窪み15内を吸引する吸引孔14とが設けられている。吸引孔14は、第1の窪み15の全面に渡って多数設けられている。このように多数の吸引孔14を設けることにより、版11の第1の窪み15に沿って伸縮膜12が窪み、印刷形状に相当する第2の窪み18が形成されることになる。
【0020】
なお、版11は、太陽電池セルの表銀電極用の版の模式図である。
第1の窪み15は、光電流を集めるグリッド電極用パターン62a〜62jと、グリッド電極の電流を集め、タブを半田付けして隣り合う太陽電池セルとの相互接続に用いられるバス電極用パターン61a,61bとで構成される。グリッド電極用パターン62a〜62jは、
図1における第1の窪み15a〜15dに相当する。また、
図3においてグリッド電極用パターン62a〜62jの中に設けられている吸引孔14は、
図1における吸引孔14a〜14dに相当する。
グリッド電極は、シャドーロスを減らすためになるべく幅を細くし、抵抗損失を減らすために本数を増やすのが一般的な構成である。一方、バス電極は、タブを半田付けするためにある程度の太さが必要である。
【0021】
このように、太陽電池セルの表銀電極のパターンでは、位置によって太さが異なる形状が必要であるので、第1の窪み15の幅が太いバス電極用パターン61a、61bと、幅が細いグリッド電極用パターン62a〜62jとが混在する。窪みの太さに係らずに第1の窪み15を均一に吸引するためには、第1の窪み15の幅が太いバス電極用パターン61a、61bでは吸引孔14は幅方向に対しても複数配置すればよい。
【0022】
実施の形態1では、太陽電池セルの製造に用いる版11やその印刷方法について説明するが、本願発明は太陽電池セル用途の印刷に限定されるものではなく、印刷材料を盛り上げる必要性がある他の印刷物への適用も可能である。
【0023】
次に実施の形態1の印刷方法について、上述した印刷装置を用いて説明する。
図4は、実施の形態1の印刷方法を、(A)、(B)、(C)、(D)の順での時系列的に示している。
【0024】
印刷装置は、印刷形状に相当する第1の窪み15と第1の窪み15内を吸引する吸引孔14とを有する版11と、第1の窪み15に面する伸縮膜12とを有する。
【0025】
図4(A)は、初期的な状態である初期工程を示している。
版11の第1の窪み15を有する面に接して伸縮膜12が設けられている。
伸縮膜12は窪み15の開口面に沿って平らに設けられている。
伸縮膜12が版11と接触している領域Xでは、伸縮膜12は版11に固定されている。
【0026】
図4(B)は、第1の窪み15内が吸引孔14から吸引された吸引工程を示している。
図4では省略しているが、版11の上側、つまり版11を挟んで伸縮膜12の反対側には吸引空間が存在し、この空間内の空気を吸引すると第1の窪み15の気圧が大気圧よりも低くなるため、伸縮膜12が下面側の大気に押されて伸びて第1の窪み15の形状に沿って窪み、伸縮膜12に第2の窪み18が形成される。
【0027】
図4(C)は、第2の窪み18内に印刷材料13を充填する印刷材料充填工程を示している。
太陽電池セルの電極印刷の用途では、印刷材料13には電極ペーストを使用する。
なお、書籍や雑誌などの印刷の用途では、印刷材料13にはインクを使用しても良い。
【0028】
印刷材料13の充填方法は伸縮膜12に印刷材料13を塗り広げ、
図4(C)には図示しないブレードで掻き取れば良い。そうすることにより第2の窪み18以外の箇所にはみ出した印刷材料13を除去することができるので、印刷材料13を所望の印刷形状に成型することができる。また、印刷材料13の開口面側の端面が平坦になり、次の工程にて印刷材料13が被印刷物へ印刷され易くなる。
【0029】
図4(D)は、吸引孔14からの吸引が解除された吸引解除工程を示している。
被印刷物の正面に版11をセットし、吸引空間の吸引を解除すると、伸縮膜12の復元力により伸縮膜12が復元されて、第2の窪み18に充填されていた印刷材料13が押し出され、被印刷物に印刷される。
【0030】
伸縮膜12は領域Xで版11に固定されているので、第1の窪み15に面する領域の伸縮膜12のみが吸引工程で伸びて吸引工程で復元される。従って、第1の窪み15に相当する印刷形状を有する印刷物を形成することができる。
領域Xで版11と伸縮膜12とが固定されていないと、領域X部分の伸縮膜12も吸引され、吸引解除の際、領域X部分に伸びながら印刷材料13が押し出されるため、印刷物の幅が広がる可能性が有るので、伸縮膜12は領域Xで版11に固定されていることが望ましい。
【0031】
なお、印刷物の幅が広がっても構わない用途では、伸縮膜12を領域Xで版11に固定する必要はない。この場合、伸縮膜12は第1の窪み15が形成された領域の外側で版11に固定されていれば良い。
【0032】
なお、吸引空間の吸引を解除しただけでは印刷材料13が第2の窪み18から押し出されない場合は、吸引空間を加圧し、吸引孔14を加圧して第1の窪み15に圧力を加えることにより第2の窪み18を第1の窪み15から押し出してもよい。
吸引空間を加圧し、吸引孔14を加圧することで、吸引を解除する速度を可変にすることができる。これにより、印刷の速度を上げて、生産性を改善することができる。
【0033】
また、太陽電池セルの用途で印刷材料13として用いられる電極ペーストの場合、印刷圧力を高くすると粘度が下がるチクソ性を示す材料を使用することがある。このような、チクソ性を示す材料の印刷をする場合、吸引空間を加圧して印刷圧力を高くすることにより、印刷材料13の粘度が下がるので、印刷材料13を第2の窪み18から容易に押し出すことができる。また、例えば加圧バルブ(
図1、
図2参照)を開ける速度を調整することによって、印刷材料13のチクソ性に応じて加圧速度(吸引を解除する速度)を調整することもできる。
【0034】
図5は、
図4(C)の印刷材料13の充填方法を詳細に示した図である。
図5は、印刷材料13の充填方法を、(A)、(B)、(C)の順での時系列的に示している。
図5(A)は、伸縮膜12に印刷材料13を塗り広げた印刷材料塗布工程を示している。
印刷材料13を、伸縮膜12の下側の全面に塗り広げ、第2の窪み18の中に充填する。
【0035】
図5(B)、
図5(C)は、印刷材料13を所望の印刷形状に成型する印刷材料成型工程を示している。
ブレード19を伸縮膜12に押し当て、伸縮膜12の下面側の平面に沿って動かすことにより、第2の窪み18以外の箇所にはみ出した印刷材料13を除去し、印刷材料13を所望の印刷形状に成型することができる。また、印刷材料13の開口面側の端面が平坦になるので、次の工程にて印刷材料13が被印刷物へ印刷され易くなる。これにより、被印刷物の歩留まりを向上させることができる。
【0036】
図6、
図7で、従来のグラビア印刷やオフセット印刷と、本願発明の印刷方法との違いについて、模式図を用いて説明する。
【0037】
図6は、従来のグラビア印刷、オフセット印刷の模式図である。
従来のグラビア印刷やオフセット印刷では、版21に設けられた窪みに充填された印刷材料23は、被印刷物22と印刷材料23の粘着力により窪みから引っ張り出されることで被印刷物22に転写される。このため、充填された印刷材料23は形状を保持したままであると仮定すると、印刷されるためには「窪みの内壁25と印刷材料23との粘着力<被印刷物22と印刷材料23との粘着力」でなければならないが、
図6に示すように「被印刷物22と印刷材料23との接触面24の面積<窪みの内壁25と印刷材料23との接触面積(=窪みの内壁25の表面積)」であり、これが転写率を落とす要因であると考えられる。
【0038】
高アスペクト比の印刷物を形成するために窪みを深くすれば、窪みの内壁25の表面積は必然的に増えるため、転写率は低くなる。よって高アスペクト比の印刷物を形成するためには、窪みを深くするのではなく、多重印刷を行わなければならない。
【0039】
図7は、本願発明の印刷方法の模式図である。
伸縮膜12の下方には、印刷材料13の高さ分の間隔を開けて被印刷物22が配置され、伸縮膜12が復元されると印刷材料13が被印刷物22に密着され、被印刷物22に転写される。
被印刷物22としては、太陽電池用途では基板が用いられる。
なお、書籍や雑誌などの印刷の用途では、被印刷物22には紙を使用しても良い。
本願発明では伸縮膜12の復元により印刷材料13を第2の窪み18から押し出すことを特徴としている。従来例と同様に印刷材料13は形状を保持したままであると仮定した場合、印刷される間際では、
図7に示すように印刷材料13と伸縮膜12の接触部36は、この断面では点接触となり、
図7に垂直方向の印刷形状が線状であった場合は印刷面全体では線接触となって、「伸縮膜12と印刷材料13との接触面積<被印刷物22と印刷材料13との接触面24の面積」という関係が成り立つため、印刷材料13の転写率が従来のグラビア印刷やオフセット印刷よりも高くなる。
【0040】
また、印刷物の厚さを厚くしたい場合、従来のグラビア印刷やオフセット印刷では多重印刷を要するが、本願発明では、版11に設けられた第1の窪み15を深くして、伸縮膜12に形成される第2の窪み18を深くし、印刷材料13を充填すれば良い。第2の窪み18が深くても伸縮膜12の復元によって印刷材料13は第2の窪み18から押し出されるため、転写率を落とさずに印刷できる。そのため、1回の印刷で高アスペクト比の印刷材料が形成できる。
【0041】
以上説明したように、実施の形態1の印刷方法によれば、伸縮膜の復元により印刷材料を第2の窪みから押し出すことにより、被印刷物の印刷材料との接触面積が伸縮膜と印刷材料との接触面積よりも大きくなるため、印刷材料の転写率を上げることができる。
また、印刷物の厚みを増やす場合、従来の印刷方法(スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷)では多重印刷を要するが、本発明では第1の窪みの深さを深くし、伸縮膜の窪み(第2の窪み)を深くして、印刷材料を充填すれば良い。第2の窪みが深くとも伸縮膜の復元によって印刷材料は第2の窪みから押し出されるため、転写率を落とさずに印刷できる。そのため1回の印刷で高アスペクト比の印刷物が形成できる。
【0042】
実施の形態2.
図8に、版111の第1の窪み115の深さが版111の板厚と等しい場合の実施の形態2について説明する。
図8は、実施の形態2の印刷方法を(A)、(B)、(C)、(D)の順での時系列的に示している。
【0043】
印刷装置は、印刷形状に相当する第1の窪み115を有する版111と、第1の窪み115に面する伸縮膜112とを有する。
伸縮膜112の下面側が印刷面側である。
実施の形態2では、第1の窪み115の深さが版111の板厚と等しく、第1の窪み115が伸縮膜112と反対側にあって
図8には図示しない吸引空間と繋がっている。つまり、第1の窪み115は、版111を貫通しており、第1の窪み115は実施の形態1で説明した第1の窪み15と吸引孔14とが一体となったものである。
実施の形態1の吸引孔14が第1の窪み115と同じ形状であると考えても良い。
【0044】
図8(A)は、初期的な状態である初期工程を示している。
版111の第1の窪み115を有する面に接して伸縮膜112が設けられている。
伸縮膜112が版111と接触している領域Xでは、伸縮膜112は版111に固定されている。
【0045】
図8(B)、は第1の窪み115内が吸引された吸引工程を示している。
図では省略しているが、版111の上側、伸縮膜112とは反対側には吸引空間が存在し、この空間内の空気を吸引すると吸引空間および第1の窪み115の気圧が大気圧よりも低くなるため、第1の窪み115の形状に沿って伸縮膜112が窪み、第2の窪み118が形成される。
ここで、第1の窪み115は吸引空間に繋がっているため、伸縮膜112は、伸縮膜112の復元力と吸引空間の吸引力とのバランスが取れる深さまで伸びることになる。
即ち、吸引空間の吸引力を変えることにより、第2の窪み118の深さを変えることができる。
【0046】
図8(C)は、第2の窪み118内に印刷材料113が充填された印刷材料充填工程を示している。
【0047】
印刷材料113の充填方法は伸縮膜112に印刷材料113を塗り広げ、
図8(C)には図示しないブレードで掻き取れば良い。
【0048】
図8(D)は、第1の窪み115からの吸引が解除された吸引解除工程を示している。
被印刷物の正面に版をセットし、吸引空間の吸引を解除すると、伸縮膜112の復元力により伸縮膜112が復元されて、第2の窪み118に充填されていた印刷材料113が押し出され、被印刷物に印刷される。
【0049】
伸縮膜112は領域Xで版111に固定されているので、第1の窪み115に面する領域の伸縮膜112のみが吸引工程で伸びて吸引工程で復元される。従って、第1の窪み115に相当する印刷形状を有する印刷物が形成することができる。
領域Xで版111と伸縮膜112とが固定されていないと、領域X部分の伸縮膜112も吸引され、吸引解除の際、領域X部分に伸びながら印刷材料113が押し出されるため、印刷物の幅が広がる可能性が有るので、伸縮膜112は領域Xで版111に固定されていることが望ましい。
【0050】
なお、印刷物の幅が広がっても構わない用途では、伸縮膜112を領域Xで版111に固定する必要はない。この場合、伸縮膜112は第1の窪み115が形成された領域の外側で版111に固定されていれば良い。
【0051】
以上のように、実施の形態2の印刷方法は、吸引空間の吸引力を変えることにより第2の窪み118の深さを変えることができる。この点が実施の形態1の印刷方法と異なる。それ以外は共通である。
【0052】
図9に、版131の第1の窪み135の深さが版131の板厚と等しい場合の版の立体的な構成例について説明する。
図9の下面側が印刷面側である。
第1の窪み135の深さが版131の板厚と等しい場合、第1の窪み135の形状によっては、版131の一部が第1の窪み135に囲まれて保持できない場合がある。その場合の版131の構成例について説明する。
【0053】
第1の窪み135はバス電極用パターン135aとグリッド電極用パターン135bを有する。
版131はバス電極用パターン135aとグリッド電極用パターン135bに囲まれた形状の版片131a,131b,131c,131dを有する。
版片131aと版片131bとは、バス電極用パターン135aの一部でリブ132aにより連結されている。
リブ132aは、バス電極用パターン135aの印刷形状を妨げないように、窪み135の中の、印刷面と反対側の一部で、版片131aと131bとを連結している。
【0054】
同様に、リブ132bは、バス電極用パターン135aの一部で、版片131cと版片131dとを連結している。
図示しないが、版片131a,131b,131c,131dはさらに外側の別の版片とも同様の構成で連結されている。
【0055】
このように、リブ132a,132bを設け、版片131a,131b,131c,131dを連結することにより、第1の窪み135の深さが版131の板厚と等しい場合でも、任意のパターンの第1の窪み135を形成することができる。
【0056】
以上説明したように、実施の形態2の印刷方法によれば、伸縮膜の復元により印刷材料を窪みから押し出すことにより、被印刷物の印刷材料との接触面積が伸縮膜と印刷材料との接触面積よりも大きくなるため、印刷材料の転写率を上げることができる。
また、印刷物の厚みを増やす場合、実施の形態2では吸引空間の吸引力を強くすることにより第2の窪みの深さを深くし、印刷材料を充填すれば良い。第2の窪みが深くとも伸縮膜の復元によって印刷材料は第2の窪みから押し出されるため、転写率を落とさずに印刷できる。そのため1回の印刷で高アスペクト比の印刷物が形成できる。
また、吸引空間の吸引力を変えることにより、第2の窪みの深さを変えることができる。これにより印刷物の高さを変えることができる。
【0057】
実施の形態3.
図10に、版の板厚と等しい第1の窪み115と版の板厚未満の第1の窪み15とを混在させた版121を示す。版121の表面には
図10では不図示の伸縮膜が設置され、版121の裏面は、
図10には図示しない吸引空間と繋がっている。吸引空間の空気を吸引することにより、吸引空間、第1の窪み115及び第1の窪み15の気圧が大気圧よりも低くなるため、第1の窪み115の部分には吸引力に応じた深さの第2の窪みが形成され、第1の窪み15の部分には、第1の窪み15と同じ深さの第2の窪みが形成される。
このように構成された版121を用いることにより、局所的に厚さの異なる電極を同一平面内に形成した太陽電池セルを得ることができる。
例えば、グリッド電極部のみを厚くすることにより、抵抗損失に大きく寄与するグリッド電極の抵抗のみを下げることができる。
【0058】
あるいは、パターンの位置によって第1の窪み15の深さを変えることにより、印刷物の高さを位置によって変えることができる。
例えば、グリッド電極の厚さをバス電極からの距離で変化させ、バス電極から近い位置ではグリッド電極を厚く、バス電極から離れるほどバス電極からの距離に比例してグリッド電極を薄くすることにより、抵抗損失を増やさずに、電極材料である銀ペーストの使用量を減らすことができる。
【0059】
被印刷物の正面に版121をセットし、吸引空間の吸引を解除すると、伸縮膜の復元力により伸縮膜が復元されて、第2の窪みに充填されていた印刷材料が押し出され、被印刷物に印刷される。
【0060】
印刷物の高さを位置によって変える場合、印刷時は、まず被印刷物を伸縮膜に押し当て、吸引の解除とともに被印刷物と伸縮膜との間隔を広げて、印刷材料の最大の高さまで間隔を広げることで、高さの異なる印刷材料を被印刷物に転写することができる。
【0061】
以上説明したように、実施の形態3の印刷方法によれば、伸縮膜の復元により印刷材料を第2の窪みから押し出すことにより、被印刷物の印刷材料との接触面積が伸縮膜と印刷材料との接触面積よりも大きくなるため、印刷材料の転写率を上げることができる。
また、版の板厚と等しい第1の窪みと版の板厚未満の第1の窪みとを混在させることにより、あるいはパターンの位置によって第1の窪みの深さを変えることにより、印刷物の高さを位置によって変えることができる。これによりパターンの位置によって印刷物の高さが異なる印刷物を形成することができる。
【0062】
実施の形態4.
実施の形態1では平板型の版を利用していたが、グラビア印刷、オフセット印刷のように回転する円筒型の版を利用することで、グラビア印刷、オフセット印刷のメリットである高生産性という機能を持たせることができる。
図11を用いて、回転する円筒型の版を利用した実施の形態4の印刷装置について説明する。
実施の形態4の印刷装置の構成について説明する。
【0063】
印刷装置は、印刷形状に相当する複数の第1の窪み215a,215b,215c,215d,215eが外周側に設けられた円筒形状の版211と、第1の窪み215a,215b,215c,215d,215eに面して版211の外周側に接するように設けられた円筒形状の伸縮膜221とを有する。
伸縮膜221が版211と接触している領域では、伸縮膜221は版211に固定されている。
【0064】
版211には、複数の第1の窪み215a,215b,215c,215d,215eのそれぞれに対して窪みの内部を吸引する複数の吸引孔214a,214b,214c,214d,214eが設けられている。複数の吸引孔214a,214b,214c,214d,214eは版211の内周側に連通している。
【0065】
版211の内周の内側には、第1の窪み215a,215b,215c,215d,215eを吸引するための吸引空間251と、第1の窪み215a,215b,215c,215d,215eを加圧するための加圧空間261とを有する固定軸241が設けられている。
【0066】
版211の内外周及び固定軸241の外周は同軸の円筒形状で構成され、版211と固定軸241との間には、版211の内周と固定軸241の外周とで囲まれた吸引円筒空間253が形成される。固定軸241の外周には、吸引円筒空間253の下方の一部を隔離する加圧部シール271が設けられ、版211の内周と固定軸241の外周と加圧部シール271とで囲まれた加圧円筒空間263が形成される。加圧円筒空間263は吸引円筒空間253とは加圧部シール271で隔離されており、加圧円筒空間263と吸引円筒空間253とをそれぞれ異なる気圧にすることができる。
【0067】
吸引円筒空間253は吸引円筒空間吸引孔252で吸引空間251に連通され、吸引空間251は固定軸241の端部で
図11には図示しない真空ポンプに接続されている。
加圧円筒空間263は加圧円筒空間加圧孔262で加圧空間261に連通され、加圧空間261は固定軸241の端部で印刷装置の外側の大気に連通されている。
【0068】
吸引孔214a,214b,214c,214eは吸引円筒空間253に連通されており、第1の窪み215a,215b,215c,215eは吸引されるため、伸縮膜221には第2の窪み222a,222b,222c,222eが形成される。
【0069】
吸引孔214dは加圧円筒空間263に連通されており、第1の窪み215dは大気圧状態となる。第1の窪み215dに面する伸縮膜221には吸引力が働かないため、伸縮膜221は平らな状態である。
【0070】
図12に、
図11の固定軸241の下面図を示す。
固定軸241には、加圧空間261と加圧円筒空間263とを連通する加圧円筒空間加圧孔262が設けられており、その周囲に加圧部シール271が設けられている。
加圧部シール271は、被印刷物である基板281の幅282よりも広い幅で加圧円筒空間263を囲み、固定軸241の外周と、版211の内周とに接するように配置されている。
【0071】
固定軸241には、吸引空間251と吸引円筒空間253とを連通する吸引円筒空間吸引孔252が設けられている。
固定軸241の上端付近の円筒面には、吸引円筒空間253を形成するための第1の吸引部シール291が設けられている。
第1の吸引部シール291は、固定軸241の外周と、版211の内周とに接し、吸引円筒空間253と印刷装置の外側の空間とを隔離するように配置されている。
【0072】
固定軸241の下端付近の円筒面には、吸引円筒空間253を形成するための第2の吸引部シール292が設けられている。
第2の吸引部シール292は、固定軸241の外周と、版211の内周とに接し、吸引円筒空間253と印刷装置の外側の空間とを隔離するように配置されている。
【0073】
加圧円筒空間263は、固定軸241の外周と、版211の内周と、加圧部シール271の内周271aとで囲まれた空間で形成される。加圧円筒空間加圧孔262からの加圧により、加圧円筒空間263に連通された吸引孔214dおよび第1の窪み215dが加圧される。
【0074】
吸引円筒空間253は、固定軸241の外周と、版211の内周と、加圧部シール271の外周271bと、第1の吸引部シール291と、第2の吸引部シール292とで囲まれた空間で形成される。吸引円筒空間吸引孔252からの吸引により、吸引円筒空間253に連通された吸引孔214a,214b,214c,214eおよび第1の窪み215a,215b,215c,215eが吸引される。
【0075】
図13に版211の斜視図を示す。
版211は、太陽電池セルの表銀電極用の版の模式図である。
円筒状の版211の外周表面には、印刷形状に相当する第1の窪み215が設けられている。なお、
図13における第1の窪み215は、
図11における第1の窪み215a,215b,215c,215d,215eに相当する。
第1の窪み215は、光電流を集めるグリッド電極用パターン217a〜217gと、グリッド電極の電流を集め、タブを半田付けして隣り合う太陽電池セルと相互接続するバス電極用パターン216とで構成される。
ここで、第1の窪み215は、被印刷物の平面上の印刷形状を、円筒面上に丸めた形状で形成される。
【0076】
吸引空間251は固定軸241の端部で吸引管255を介して真空ポンプに接続されている。
加圧空間261は固定軸241の端部で加圧管265を介して印刷装置の外側の大気に連通されている。
【0077】
図11に基づいて、実施の形態4の動作について説明する。
版211は、円筒形状で構成され、円筒軸を中心に回転方向212の方向に回転する。
固定軸241は固定されており、回転しない。
固定軸241に設けられた加圧部シール271も回転しない。
【0078】
版211の上端部付近に設けられた印刷材料供給部232より、伸縮膜221上に印刷材料231aが供給される。
印刷材料供給部232の回転方向212の下流側に伸縮膜221に接してブレード233が設けられ、印刷材料231aを伸縮膜221の外周に沿って掻き取る。
【0079】
これにより、第2の窪み222bでは、印刷材料231bは、第2の窪み222b内に充填され、第2の窪み222bの外側にはみ出した印刷材料231aは除去される。
【0080】
版211が回転すると、吸引孔214の内周側開口部が吸引円筒空間253から加圧部シール271の内側に入って加圧円筒空間263に連通するようになる。
図11は、吸引孔214dが、内周側開口部が加圧円筒空間263に連通した状態である。
これにより、吸引孔214dが吸引状態から大気圧状態に変わるため、第1の窪み215dも大気圧状態となり、伸縮膜221が復元されて印刷材料231dが押し出される。
【0081】
版211の下方には、印刷材料231dの高さ分の間隔を開けて被印刷物である基板281が配置され、伸縮膜221が復元されると印刷材料231dが基板281に密着され、基板281に転写される。
【0082】
基板281は、版211の回転に伴い、版211の外周の速度と等しい進行速度で進行方向28
3の方向に進行する。
版211の外周には、印刷形状に相当する第1の窪み215a,215b,215c,215d,215eが設けられ、第1の窪み215a,215b,215c,215eの吸引により、伸縮膜221に第2の窪み222a,222b,222c,222eが形成される。第2の窪み222a,222b,222cに充填された印刷材料231a,231b,231cが、版211の回転と基板281の進行とにより、順に基板281上に転写され、基板281上に印刷形状の印刷物が形成される。
【0083】
基板281を連続的に印刷する場合、基板281の進行方向の長さをW、連続的に投入される基板と基板との隙間をG、版211の印刷面である外周側の半径をRとすると、基板投入ピッチ(W+G)が版211の外周長2πRと等しくなるように版211を構成し、版211が回転する際の外周の速度と等しい進行速度で基板281を進行させれば、複数の基板281を連続的に印刷することができる。
【0084】
以上のように構成することにより、伸縮膜を復元させて印刷材料を伸縮膜に形成された第2の窪みから押し出すので、被印刷物の印刷材料との接触面積が伸縮膜と印刷材料との接触面積よりも大きくなるため、印刷材料の転写率を上げることができる。
また、印刷材料の厚みを増やす場合、従来の印刷方法では多重印刷を要するが、本実施例では伸縮膜に形成された第2の窪みを深くすれば良い。伸縮膜に形成された第2の窪みが深くとも伸縮膜の復元によって印刷材料は伸縮膜に形成された第2の窪みから押し出されるため、転写率を落とさずに印刷できる。そのため1回の印刷で高アスペクト比の印刷物が形成できる。
また、円筒型の版を用いることにより、連続的な印刷ができるようになり、印刷の生産性を向上させることができる。
【0085】
実施の形態5.
図14に実施の形態5の版を第1の窪み側から見た斜視図を示す。
図14の上側が印刷面側である。
版401には幅の広いバス電極用パターン410と、幅の狭いグリッド電極用パターン420とが設けられている。バス電極用パターン410とグリッド電極用パターン420とにより第1の窪みが構成される。
【0086】
版401の上側の印刷面とバス電極
用パターン410とが交差する辺には、バスパターンエッジ411,412,413,414が形成される。
版401の上側の印刷面とグリッド電極
用パターン420とが交差する辺には、グリッドパターンエッジ421,422,423,424が形成される。
版401の上側の印刷面とバス電極
用パターン410とグリッド電極
用パターン420とが交差する点には、パターンコーナー431,432,433,434が形成される。
図14には図示しないが、版401の上側の印刷面に接して、伸縮膜が設けられる。
【0087】
本発明の印刷方法の生産性は伸縮膜の寿命と直結している。バスパターンエッジ411,412,413,414およびグリッドパターンエッジ421,422,423,424は伸縮膜が伸縮した時に伸縮膜と接触するため、ここが鋭利だと伸縮膜が伸縮した時に力が部分的に加わって伸縮膜を傷つけてしまい、伸縮膜の寿命が短くなって、生産性が悪化する。パターンコーナー431,432,433,434では、特にこの傾向は強くなる。このため、バスパターンエッジ411,412,413,414およびグリッドパターンエッジ421,422,423,424およびパターンコーナー431,432,433,434を丸く形成することが必要で、これにより伸縮膜が伸縮したときに版と伸縮膜との接触面積が増えるので、伸縮膜にかかる力が減り、伸縮膜の寿命を延ばし、生産性を上げることができる。
【0088】
図15に
図14のB−B断面図を示す。
図15はバス電極
用パターン410の断面を示す断面図である。
図15の上側が印刷面側である。版401の上には版401に接して
図15には図示しない伸縮膜が設けられ、伸縮膜は、バス電極
用パターン410からの吸引により、バス電極
用パターン410に沿って吸引される。
バスパターンエッジ411,412を丸く形成することにより、伸縮膜が伸縮した時に伸縮膜を傷つけることが無くなり、伸縮膜の寿命を延ばし、生産性を上げることができる。
【0089】
図16に
図14のC−C断面図を示す。
図16はグリッド電極
用パターン420の断面を示す断面図である。
図16の上側が印刷面側である。版401の上には版401に接して
図16には図示しない伸縮膜が設けられ、伸縮膜は、グリッド電極
用パターン420からの吸引により、グリッド電極
用パターン420に沿って吸引される。
グリッドパターンエッジ421,422を丸く形成することにより、伸縮膜が伸縮した時に伸縮膜を傷つけることが無くなり、伸縮膜の寿命を延ばし、生産性を上げることができる。
【0090】
同様に、パターンコーナー431,432,433,434を丸く形成することにより、伸縮膜を傷つけることが無くなり、伸縮膜の寿命を延ばし、生産性を上げることができる。
【0091】
実施の形態5によれば、版の窪みの角であるバスパターンエッジ、グリッドパターンエッジおよびパターンコーナーと伸縮膜との接触面積が増えるので、伸縮膜にかかる力が減り、伸縮膜の寿命が延び、生産性を上げることが可能となる。