(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5836612
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】内視鏡またはカテーテルの先端構造
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20151203BHJP
A61B 18/20 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
A61B1/00 300J
A61B1/00 300P
A61B1/00 300D
A61B17/36 350
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-54913(P2011-54913)
(22)【出願日】2011年3月13日
(65)【公開番号】特開2012-187334(P2012-187334A)
(43)【公開日】2012年10月4日
【審査請求日】2014年1月20日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597089576
【氏名又は名称】株式会社リバーセイコー
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】西村 幸
(72)【発明者】
【氏名】西村 誠
【審査官】
冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−056290(JP,A)
【文献】
実開平02−063822(JP,U)
【文献】
特開2010−220797(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/083413(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 − 1/32
A61B 13/00 − 18/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する長尺の挿入部の先端に取り付けられる先端部材と、
該先端部材の先端に配置されるレンズと、
前記挿入部に挿通され、前記先端部材と導通する導線と、
前記先端部材に取り付けられる焼灼用電極と、を有する内視鏡またはカテーテルの先端構造であって、
前記先端部材と前記焼灼用電極とが、少なくとも一部において、レーザー溶接により固着され、
前記先端部材と前記焼灼用電極との間に接着剤が充填され、前記先端部材と前記焼灼用電極との前記レーザー溶接の固着により、前記接着剤の少なくとも一部が削除されることを特徴とする内視鏡またはカテーテルの先端構造。
【請求項2】
前記先端部材内に光ファイバーが配置されており、
該光ファイバーは、ライトガイドファイバーと、前記レンズからの集光を受けるイメージファイバーとを含むことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡またはカテーテルの先端構造。
【請求項3】
前記光ファイバーが、前記挿入部及び前記先端部材に挿通され、前記光ファイバーの先端面が前記先端部材の先端面と面一となるように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の内視鏡またはカテーテルの先端構造。
【請求項4】
前記先端部材と前記焼灼用電極との前記レーザー溶接による固着が、スポット溶接であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の内視鏡またはカテーテルの先端構造。
【請求項5】
前記焼灼用電極が、前記レンズを固定するためのレンズ枠であり、該レンズ枠と前記レンズとが接着剤により固着されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の内視鏡またはカテーテルの先端構造。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の先端構造を有する内視鏡。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の先端構造を有するカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡等の先端構造に関し、特に、体腔内等の目的部位を観察するための内視鏡や血管等に挿入して用いられるカテーテル等の先端構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、内視鏡の挿入部先端においては、挿入部の先端に取り付けられる先端部材に形成された孔にレンズが取り付けられると共に、そのレンズの背面にライトガイドファイバーの端面が配置されている。そのような孔にレンズを固定する場合には、レンズを接着剤により孔に固定するか、これに加えて、固定強度を増加させるために、レンズを固定するレンズ枠等を設け、レンズ枠等にレンズを接着剤により固定し、さらにそのレンズ枠等を先端部材に対し接着等により固定している。そして、この接着剤は、固定のみならず、水漏れ等の防止の役割も兼ねている。
【0003】
このような内視鏡の先端構造としては、例えば特許文献1に記載のものがある。特許文献1に記載の内視鏡の先端構造は、レンズ枠となるカバー部材のレンズ取り付け孔及びレンズの側周面をテーパ状に形成してレンズを孔に嵌め込み、接着剤を充填することにより固定すると共に、カバー部材を先端部材に対して、接着剤により固定している。
【0004】
一方、血管等に挿入されるカテーテル、特に、心臓またはその周辺組織に対して用いられるカテーテルは、先端部材に設けられた電極等によって心筋の焼灼等の処置を行うものである。
【0005】
このように心筋の焼灼等の処置を行うものとしては、例えば、特許文献2に記載のカテーテルがある。特許文献2に記載のカテーテルは、光ファイバーにより伝達されるレーザーを目的部位に照射することによって心筋の焼灼等の処置を行うものとなっている。そしてこの光ファイバーは、挿入部であるカテーテル本体の先端に取り付けられる先端部材に形成された孔に挿通され、先端部材と同一面となるよう揃って配置されており、先端からレーザーを照射するように構成されている。また、先端部材には電極が設けられており、その電極によって心臓組織のマッピングをすることができるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−85326号公報
【特許文献2】特開平11−188107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の内視鏡において、特許文献2のように、電極を設ける構成とし、温度センサーやPH電極として利用する場合や、特許文献2に記載のカテーテルにレンズを設ける構成とした場合、すなわち、レンズ及び電極を有する構成とした場合には、レンズ枠に対するレンズの固定や、電極と先端部材との固定、またはレンズ枠を電極として利用する場合においては先端部材に対するレンズ枠の固定が困難となる。
【0008】
すなわち、先端部材の先端にレンズを取り付けようとした場合、固定及び水漏れ防止等のために、レンズはレンズ枠に対し接着剤を用いて取り付ける必要があり、またレンズ枠や電極と先端部材との固定においても、接着剤を用いて固定及び水漏れ防止を図ることが考えられる。しかしながら、電極を利用するためには、挿入部に挿通される銅等からなる導線を、先端部材を介して電極に対して導通させる必要があるため、電極と先端部材を接着剤のみを用いて固定、またはレンズ枠を電極とした場合においてレンズ枠と先端部材を接着剤のみを用いて固定した場合には、先端部材と電極、または先端部材とレンズ枠との間には接着剤が介在することになり、導通させることができないといった課題を有している。また、電極またはレンズ枠と先端部材とをハンダ付けすれば、導通させることは可能となるが、レンズを固定する為に利用した接着剤にハンダ溶融温度以上の高熱が伝わり、レンズを接着した接着剤が焦げて、水漏れ防止の効果を妨げると共に、レンズの脱落の危険性が高くなる。
【0009】
このような課題に鑑みて、本発明は、内視鏡やカテーテル等の先端構造において、レンズ及び電極を設けた構造とした場合であっても、レンズの脱落の危険性がなく、水漏れ防止の効果も妨げることのない安全性の高い内視鏡等の先端構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、可撓性を有する長尺の挿入部の先端に取り付けられる先端部材と、先端部材の先端に配置されるレンズと、挿入部に挿通され、先端部材と導通する導線と、先端部材に取り付けられる電極と、を有する内視鏡等の先端構造であって、先端部材と電極とが、少なくとも一部において、レーザー溶接により固着されていることを特徴とする。
【0011】
また、先端部材と電極とのレーザー溶接による固着が、スポット溶接であってもよく、先端部材と電極との間に接着剤が充填され、先端部材と電極とのレーザー溶接の固着により、接着剤の少なくとも一部が削除されてもよい。さらに、電極が、レンズを固定するためのレンズ枠であり、レンズ枠とレンズとが接着剤により固着されていてもよく、光ファイバーが、挿入部及び先端部材に挿通され、光ファイバーの先端面が先端部材の先端面と面一となるように配置されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
したがって、上記説明から、本発明の内視鏡等の先端構造によれば、先端部材と電極とが少なくとも一部において、レーザー溶接により固着されていることにより、電極と先端部材とを導通させることができ、電極の外表面で温度センサーやPH電極あるいは心筋の焼灼等の処置を行うことができる。そして、レンズの取り付けに接着剤を用いている場合においても、レーザー溶接部分のみに熱が集中するため、レンズを取り付けた接着剤を焦がす心配がなく、レンズの脱落の危険性がなく、水漏れ防止の効果を妨げることがない。
また特に、先端部材と電極との間に接着剤を充填すると、先端部材と電極との間の水漏れを防止することができ、その接着剤の一部をレーザー溶接により削除した場合においても、その一部のみに熱が集中するため、周囲の接着剤には影響がなく、接着効果と水漏れ防止効果を十分に保つことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の内視鏡等の先端構造が適用される内視鏡の全体構成図。
【
図3】本発明の内視鏡等の先端構造の分解拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る内視鏡等の先端構造を実施するための形態を図面に基づき説明する。
【0015】
図1は、本発明の内視鏡等の先端構造が適用される内視鏡の全体構成図である。
図1に示すように、内視鏡1は、可撓性を有し、筒状のチューブまたはマルチルーメンチューブから構成される長尺の挿入部2と、挿入部2が連結され、挿入部2の湾曲操作をするための操作部3と、後述のライトガイドファイバー10に光を供給するために第1電源装置4と接続可能なプラグ5と、後述のイメージファイバー11からの画像を観察するために接眼レンズ6aを備える接眼部6と、後述する導線12に電力を供給するための第2電源装置7とから構成される。
【0016】
図2は、本実施の形態による内視鏡等の先端構造の拡大断面図、
図3は、先端構造の分解拡大断面図である。
図2及び
図3に示すように、本実施の形態の内視鏡等の先端構造は、挿入部2の先端に取り付けられる先端部材14と、先端部材14の先端に配置されるレンズ15と、先端部材14に取り付けられる電極16と、先端部材14に取り付けられる導線12から構成される。
【0017】
先端部材14は、導電性材料から構成されており、挿入部2内に嵌合する円柱状に形成され、複数の孔14a、14b、14c、14dが形成されている。本実施の形態においては、孔は4つ形成されており、その孔のうち、第1電源装置4からの光を先端に伝達するための光ファイバーであるライトガイドファイバー10を挿通させるための孔14cと、先端側からの画像を接眼部6に伝達するための光ファイバーであるイメージファイバー11を挿通させるための孔14bについては、各ファイバー10、11の挿通を容易にするためにステンレス等からなるパイプ18a、18bが固定されている。
また、孔14aには、単線または撚り線からなる操作ワイヤー19が挿通および固定されており、操作ワイヤー19の後端が固定される操作部3からの牽引操作によって、操作ワイヤー19が操作部3側から牽引されることにより、先端部材14が牽引され、挿入部2の先端付近を湾曲するように構成されている。
さらに、孔14dには、電極16に電力を供給するための銅等から構成される導線12が固定されている。
【0018】
なお、孔の数は、本実施の形態に限られず、挿通する対象の数によって種々の変更が可能であり、また、本実施の形態においては、パイプ18a、18bを2本としたが、これに限られず、操作ワイヤー19を挿通させるための孔14aや導線12を固定するための孔14dについてもパイプを用いてもよい。また、本実施の形態においては、ライトガイドファイバー10およびイメージファイバー11を用いて対象部位を観察するものとしたが、これに限られず、例えば、生体組織の焼灼用のレーザー光を照射するためのファイバーを用いる構成とすれば、心筋や周辺組織の焼灼用カテーテルとして使用することもできる。
【0019】
電極16は、温度センサーやPH電極あるいは生体組織の焼灼用電極として用いられるものであり、導電性材料から構成されており、先端部材14が嵌合する内径を有し、挿入部2と外径が同程度の筒状に形成されている。そして、電極16は、ライトガイドファイバー10から伝達された光を広範囲とし、イメージファイバー11への集光を広範囲とするためのレンズ15を固定するレンズ枠としての機能も有しており、電極16の内周面とレンズ15の外周面との間に接着剤を充填して水漏れ防止及び固定をし、さらに電極16の先端部16aが小径に絞られていることにより、レンズの脱落防止をより強固なものとしている。
【0020】
電極16と先端部材14は、電極16の内周面と先端部材14の外周面とのクリアランス内に接着剤を充填することにより水漏れ防止及び固定をすると共に、レーザーによるスポット溶接を施すスポット溶接部20により固定をより強固なものとしている。そして、このレーザーによるスポット溶接より、スポット溶接部20の部分のみに熱が集中して電極16と先端部材14を溶かすと共に、その部分の接着剤を蒸散させることにより電極16と先端部材14とが溶融して一体になり、このスポット溶接部20、電極16と先端部材14は導通することになる。
なお、レーザーによるスポット溶接を施すスポット溶接部20は少なくとも一か所あればよく、また二か所以上あってもよい。
【0021】
上述した先端構造を組み立てるには、まず、先端部材14の孔14aに操作ワイヤー19を、孔14dに導線12をそれぞれ挿通してレーザーやハンダ等により固定しておくと共に孔14b、14cにパイプ18a、18bを固定しておく。また、これとは別にレンズ15と電極16とを、上述したように、レンズ15の外周面と電極16の内周面とのクリアランス内に接着剤を充填することにより接着する。このように先端部材14と電極16とを別々に組み立てておくと、組み立てが容易且つ水漏れを確実に防止することが可能となる。
【0022】
次に、先端部材14と電極16とを、上述したように、電極16の内周面と先端部材14の外周面とのクリアランス内に接着剤を充填接着し、その後にレーザーによって先端部材14と電極16とを溶融し、スポット溶接部20により固定する。このように固定することにより、スポット溶接部20以外の部分の接着剤は溶けたり焦げたりすることがなく、レンズ15と電極16を充填接着した接着剤に対しても悪影響を与えることがない。
【0023】
先端部材14と電極16との固定の後、ライトガイドファイバー10及びイメージファイバー11の先端面を清拭し、それぞれ先端部材14の孔14b、14cに固定されるパイプ18a、18bに挿通し、先端面がレンズ15に当接する位置、すなわち先端部材の端面と面一となる位置に接着剤により固定する。そして、挿入部2を先端部材14に嵌合し、接着剤等により固定することによって組み立てが完成する。
【0024】
なお、
図2に示すように、挿入部2には、環状の第2の電極21を設けてもよく、この場合には、挿入部2に第2の電極21を嵌合するための凹部2aと、第2の電極21に電力を伝達するための第2の導線22を通すための孔2bを形成し、挿入部2と先端部材14の組み立てよりも前に、凹部2aに第2の電極21を嵌合し、第2の導線22と第2の電極21とを、レーザーやハンダ等により固着しておくことになる。
【0025】
上述したように、本実施の形態によれば、先端部材14と電極16とがレーザーによるスポット溶接部20により溶接されていることにより、先端部材14と電極16との固着が強固なものとなると共に、先端部材14と電極16との導通が可能となり、またスポット溶接部20の部分にレーザーの熱が集中し他の部分には影響がないため、レンズ15と電極16を固定した接着剤を焦がすことがなく、レンズ15の脱落の危険性がなく安全性が高い。また、先端部材14と電極16との間には接着剤を充填して水漏れ防止と固定をしているが、スポット溶接部20以外の部分の接着剤を焦がすことがないため、水漏れ防止の効果を妨げることもない。
【0026】
なお、本実施の形態においては、本発明の先端構造を内視鏡に適用する例を示したが、これに限られず、例えば、カテーテル等、種々の装置の先端構造として適用することが可能である。また、本発明の技術範囲は上述した態様に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 内視鏡
2 挿入部
2a 凹部
2b 孔
3 操作部
4 第1電源装置
5 プラグ
6 接眼部
6a 接眼レンズ
7 第2電源装置
10 ライトガイドファイバー(光ファイバー)
11 イメージファイバー(光ファイバー)
12 導線
14 先端部材
14a〜14d 孔
15 レンズ
16 電極
16a 先端部
18a、18b パイプ
19 操作ワイヤー
20 スポット溶接部
21 第2の電極
22 第2の導線