(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記塗布量制御手段は、前記所定期間ごとに前記摩擦力に応じて変化する信号の最大値と最小値の差分を算出することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像形成装置。
前記塗布量制御手段は、前記所定期間における前記差分に基づいて、次の所定期間における前記潤滑剤の塗布量を決定することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
前記塗布量制御手段は、前記差分が第1の値であるときは、前記潤滑剤の塗布量が第1の量となるように前記潤滑剤塗布手段を制御し、前記差分が前記第1の値よりも大きい第2の値であるときは、前記潤滑剤の塗布量が前記第1の量よりも多い第2の量になるように前記潤滑剤塗布手段を制御することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ等の電子写真方式を用いた画像形成装置では、感光体ドラムや中間転写ベルト等の像担持体にトナー画像を生成し、像担持体上のトナー画像を用紙に転写する。そして、用紙上のトナー画像を定着させて画像形成を完了させるプロセスを備えている。
【0003】
このような画像形成装置では、中間転写ベルト等の像担持体上に形成されたトナー画像は、全てのトナーが用紙に転写されるわけではなく、中間転写ベルト上にはわずかながら未転写トナーが残る。そこで、このような未転写トナー及び転写時に用紙から中間転写ベルト上に付着する紙粉などの異物を確実に除去するため、画像形成装置では、中間転写ベルトのクリーニング装置を備えている。
【0004】
クリーニング装置は、中間転写ベルトに摺接して、中間転写ベルト上に残っている粉体を除去する構成を採るため、両者の間に働く摩擦力が問題となる。さらに、クリーニング装置や中間転写ベルトが劣化すると、両者の間の摩擦力が増大し、より一層の劣化が進み、摩擦力の増大につながる。
【0005】
このようにしてクリーニング装置と中間転写ベルトとの間の摩擦力が増大した場合には、当接部からビビリ音が生じることに加え、当接部を異物がすり抜けるようになりクリーニング不良を生じることがある。
【0006】
そこで、画像形成装置では、クリーニング装置と中間転写ベルトとの間の摩擦力を下げるため、中間転写ベルト等の像担持体に潤滑剤を塗布する機構を設け、潤滑剤を塗布し続けることによって摩擦力を小さくしている。
【0007】
しかしながら、潤滑剤が過剰に塗布された場合には、潤滑剤がクリーニング装置でかきとりきれず帯電器等の部材まで運搬され、帯電器等の部材が汚れてしまい画像不良を起こすことがある。このため、潤滑剤は摩擦力を低下させながらも、クリーニング装置を超えて各部を汚染することがない適切な塗布量に制御される必要がある。
【0008】
すなわち、画像形成装置では、中間転写ベルトに対しては適切な量の潤滑剤を塗布することに加えて、固形潤滑剤の過剰な消耗を抑え、かつ帯電器が過剰な潤滑剤で汚れることによって発生する画像不良を防ぐことが求められる。
【0009】
従来の画像形成装置では、回転する潤滑剤塗布ブラシによって、固形潤滑剤のかきとりと像担持体への塗布を行うよう構成する。さらに、像担持体の回転速度に応じて潤滑財塗布ブラシの回転数を適切に変化させることによって、潤滑剤の塗布量が適切な量になるように制御するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施の形態)
以下、本発明の第1実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図2は、本発明の実施の形態に係わる電子写真方式のカラープリンタの全体概略構成図で、900は、カラープリンタ本体である。このカラープリンタ本体900内部には、YMCKの4色に対応した現像装置と、中間転写ベルト906と、用紙供給装置910と、二次転写ローラ907と、定着器911とが配置されている。このように構成されたカラープリンタ本体900では、YMCKの4色に対応した現像装置によって、各色のトナー像をそれぞれ形成する。このように形成された各色のトナー像は、順次中間転写ベルト906上に重ねて転写され、中間転写ベルト906の周回動作によって二次転写ローラ907へ搬送される。
【0019】
この動作に伴って、この二次転写ローラ907へは、用紙供給装置910から引き出された用紙13が搬送されてくる。そして、用紙13上の所定先頭位置に中間転写ベルト906上のカラートナー像の先頭位置が位置合わせされて重ねられた状態で、一対の二次転写ローラ907により挟み付けられて圧接されることにより、カラートナー像が用紙13上に転写される。このカラートナー像が転写された用紙13は、定着器911に搬送され、加熱圧接されて未定着トナー画像を用紙に定着されて画像形成処理が完了する。このようにして画像が形成された用紙13は、用紙搬送路912−5、912−8を搬送されて、トレイ上に搬出され、成果物となる。
【0020】
上述のようなカラープリンタ本体900で用いられる例えばY(イエロー)の現像装置は、感光ドラム901yの周囲に、帯電ローラ902y、レーザーユニット903y及び現像器904yを配置して構成されている。この現像装置でトナー像を形成するときには、まず、感光ドラム901yを
図2に示すように半時計回りに回転させながら帯電ローラ902yにより、感光ドラム901yの表面を所定の電位に帯電させると共に電位を平滑化する。
【0021】
この帯電した感光ドラム901yの表面に対して、レーザーユニット903yは、レーザ光でスキャンして潜像を形成する。表面に潜像が形成された感光ドラム901yは、現像器904yにより潜像がトナーにより現像されて可視化される。この感光ドラム901yの表面上に現像されたトナー画像は、感光ドラム901yが回転しながら中間転写体である中間転写ベルト906に転接することによって転写される。
【0022】
なお、本実施の形態のカラープリンタでは、現像装置がYMCKの4色に対応した4台分が用意されるが、MCKの3色に対応した現像装置は、前述したYの色に対応した現像装置と同様であるので、その説明を省略する。
【0023】
YMCKの4色に対応した4台の現像装置によって4色分のトナー画像が転写された中間転写ベルト906は、二次転写ローラ907の部分へ移動し、用紙搬送路912−2を通り搬送されてきた用紙13にトナー画像を転写する。このとき、中間転写体である中間転写ベルト906である像担持体上には、未転写トナー及び紙粉等の異物が残った状態となる。そこで、このカラープリンタでは、これらを除去するためにクリーニング装置であるクリーニングブレード909が中間転写体である中間転写ベルト906に当接されている。
【0024】
本実施の形態のカラープリンタでは、クリーニング装置であるクリーニングブレード909と中間転写ベルト906の間の摩擦力を低下させるために、固形潤滑剤100を塗布している。この固形潤滑剤100は、起毛ブラシである潤滑剤塗布ブラシ101の回転によって削り取られて潤滑剤塗布ブラシ101に付着する。そして、回転する起毛ブラシである潤滑剤塗布ブラシ101が、中間転写ベルト906に摺接する際に中間転写ベルト906の表面に塗布される。また、本実施の形態では、固形潤滑剤100としてステアリン酸亜鉛を用いるが、それ以外に、潤滑剤として用いることができて電子写真プロセスに用いることができる材料であれば、それを用いても良い。なお、この潤滑剤塗布ブラシの詳細な動作については後述する。
【0025】
次に、クリーニング部及び潤滑剤塗布部の構造について詳細に説明する。
【0026】
クリーニング装置であるクリーニングブレード909は、中間転写ベルト906に当接した状態で中間転写ベルト906が走行することにより、中間転写ベルト906の表面上の未転写トナー等の異物をかきとる。
【0027】
また、クリーニング装置のクリーニングブレード909は、エッジ部が中間転写ベルト906の表面に確実に接するようセットされている。ただ、クリーニングブレード909のエッジ部と中間転写ベルト906の間には、粒径の小さいごくわずかな量のトナーが入るようにして、摩擦力の低減を図っている。
【0028】
このため、用紙13へトナー画像を転写した後に残る未転写トナーの量が極端に少なくなったためにエッジ部と中間転写ベルト906の隙間に存在するトナー量が極端に少なくなる場合には、摩擦力が増大することとなる。
【0029】
例えば、極端に薄い濃度の画像を連続してプリントする場合には、転写すべきトナー量そのものが極端に少なくなるため、結果として未転写トナーの量も極端に少なくなり、両者が直接摺接して摩擦力が増大する状況となる。
【0030】
このようにして両者が直接摺接する状況となった場合には、エッジ部及び中間転写ベルト906の表面が摩耗して劣化が早まるだけでなく、摩擦力の増大によりエッジ部に振動が生じ、いわゆるビビリを生じることになる。
【0031】
また、エッジ部が振動した場合には、エッジ部と中間転写ベルト906との隙間が大きく開いたときに異物が通り抜けてしまい、クリーニングブレード909で未転写トナーを確実に除去することができなくなる。すると、中間転写ベルト906の動作に伴ってトナー及び紙の粉等の異物が帯電器等へ運ばれ、プロセスパーツの汚れを引き起こすことになる。
【0032】
例えばイエローの作像プロセスを例に取ると、この帯電器である帯電ローラ902yが汚れた場合には、帯電不良を引き起こし、感光ドラム901y上に形成される静電潜像を正しく描画することができなくなる。さらに、この場合には、不正確な静電潜像に基づいてトナー画像が現像されるため、画像不良となって成果物に表れる。ここでは、イエローを例にとって説明したが、シアン、マゼンタ、ブラックの各カラーにおいても同様である。
【0033】
そこで、本実施の形態のカラープリンタでは、エッジ部と中間転写ベルト906との間の摩擦力を低減させるために、潤滑剤塗布ブラシ101によって固形潤滑剤100を中間転写ベルト906上に塗布する。すなわち、起毛ブラシである潤滑剤塗布ブラシ101は、図示しない塗布ブラシ駆動モータによって回転駆動されると、回転動作の一部で固形潤滑剤100の表面に摺接してブラシに固形潤滑剤を付着させる。さらに、起毛ブラシである潤滑剤塗布ブラシ101は、回転動作の他部で中間転写ベルト906に摺接した際に、中間転写ベルト906の表面に固形潤滑剤を塗布する。
【0034】
この潤滑剤塗布ブラシ101による中間転写ベルト906への固形潤滑剤の塗布動作では、潤滑剤塗布ブラシ101の回転速度に対応して、中間転写ベルト906上に塗布される潤滑剤の量が変化する。そこで、本実施の形態のカラープリンタでは、中間転写ベルト906上に塗布される潤滑剤の量を調整するため、潤滑剤塗布ブラシ101の回転数を制御する。なお、この回転数の制御については、後述する。
【0035】
上述のように潤滑剤塗布ブラシ101によって中間転写ベルト906の表面に塗布された潤滑剤は、ベルトの走行によってクリーニング部まで運ばれ、クリーニングブレード909のエッジ部に到達する。すると、潤滑剤は、エッジ部と中間転写ベルト906の隙間に入り込み、摩擦力を低減させる。
【0036】
このとき、必要以上に潤滑剤が供給された場合には、そのほとんどがクリーニングブレード909によって除去される。しかし、この場合には、エッジ部と中間転写ベルト906の隙間に入り込む潤滑剤の量が増え、その一部がエッジ部をすり抜けて帯電器に到達し、帯電器を汚すことになる。よって、過剰な潤滑剤の塗布は、好ましくない。
【0037】
ここで、適切な潤滑剤の塗布量は、クリーニングブレード909のビビリや未転写トナーのすり抜けを起こさない量であればよい。また、適切な潤滑剤の塗布量は、クリーニングブレード909と中間転写ベルト906との摩擦力の状態によって変化する。但し、摩擦力の状態は、前述のように未転写トナーの量によっても変化するため、潤滑剤の適切な塗布量を前もって予測し、設定しておくことは困難である。
【0038】
次に、本実施の形態における中間転写ベルトと、潤滑剤塗布ブラシとを駆動するための駆動システムについて詳細に説明する。
【0039】
図1は、本実施の形態における中間転写ベルト及び塗布ブラシ駆動モータの動作を制御するベルト駆動制御ユニットのブロック図であり、PID制御部121及びブラシ回転制御部123が別のブロックとして表現されている。しかし、PID制御部121及びブラシ回転制御部123を単一のCPU若しくはASICで構成し又は不図示のエンジンコントローラ上に同様の機能を実装して構成しても良く、この場合でも同様の効果が得られる。また、本実施の形態では、
塗布量制御手段であるブラシ回転制御部123が単一のCPUで構成されているものとして説明する。
【0040】
中間転写ベルト906は、
駆動手段である中間転写ベルト駆動モータ110によって駆動される。この
駆動手段である中間転写ベルト駆動モータ110は、
駆動制御手段により中間転写ベルト906をプロセススピード[例えば300mm/s]の一定速度で走行させるよう速度制御される。
【0041】
この中間転写ベルト駆動モータ110は、電流指令電圧136を受けてモータの駆動電流を制御するモータドライバを内臓している。この中間転写ベルト駆動モータ110は、
駆動制御手段からの入力される電流指令電圧136を受けて動作するよう構成されている。
【0042】
駆動手段である中間転写ベルト駆動モータ110の出力軸上には、ロータリエンコーダ122が設けられている。このロータリエンコーダ122が検出した回転速度により、中間転写ベルト906の走行速度をセンシングできるように構成されている。そして、センシングされた中間転写ベルト906の走行速度信号は、ベルト駆動制御ユニット120に入力される。
【0043】
ベルト駆動制御ユニット120のPID制御部121は、図示しないエンジンコントローラからプロセススピード指令値131と、中間転写ベルト906の走行速度の差分とを入力して、中間転写ベルト906の速度制御を行う。
【0044】
駆動制御手段として機能するPID制御部121では、一般的なPID制御が行われ、P、I、Dそれぞれのゲインが独立に設定されている。また、PID制御部121は、Iに対応する積分器とDに対応する微分器を備えている。
【0045】
この
駆動制御手段となるPID制御部121は、PID制御の演算結果の数値を、制御出力変換部124へ出力する。制御出力変換部124は、PID制御部121の演算結果を、像担持体駆動手段である中間転写ベルト駆動モータ110へ出力する電流指令電圧136へ変換する。
【0046】
次に、
図1に示すブロック図の主要な信号の波形と動作タイミングについて説明する。
【0047】
なお、本実施の形態のカラープリンタでは、潤滑剤の塗布を中間転写ベルト906の回転中に継続して行うものとしている。しかし、後述する方法による潤滑剤塗布量制御を行う場合には、塗布ブラシ101を離間させる等の方法で意図的に塗布を停止させ、間欠的に動作させるような場合でも本発明を適用できる。
【0048】
本実施の形態のベルト駆動制御ユニットでは、全ての動作が、図示しないエンジンコントローラからのプリント動作ON信号130によって開始される。中間転写ベルト駆動モータ110と潤滑剤塗布用駆動手段である塗布ブラシ駆動モータ111とは、プリント動作ON信号130に同期して動作するように構成されており、プロセススピード指令値131も同様に同期している。
【0049】
次に、速度制御の動作について
図3を参照して説明する。
【0050】
中間転写ベルト906は、プリント動作時にプロセススピードで走行するよう制御される。このときに、適切な量の潤滑剤が塗布されている場合の走行速度と制御出力値との関係は
図3の上段に示すグラフの如くなる。
【0051】
プリント動作時の制御を実行した場合の速度波形は、プロセススピードを中心にした微小な速度変動にとどまっている。また、制御出力値は、速度を一定に保つために速度変動に応じて変化している。
【0052】
このとき、中間転写ベルト906は、クリーニングブレード909と感光ドラム901yとに接触している。このため、プリント動作時の制御を実行した場合の速度波形には、トルク外乱が入力されている状態となっている。そして、ベルト駆動制御ユニットは、トルク外乱に対して反発するように制御出力値を変化させることによって速度制御を実行し、中間転写ベルト906の速度変動を画像不良を生じない所定の範囲に留めるようにしている。
【0053】
このトルク外乱は、主として感光ドラム901の速度変動や、クリーニングブレード909との摩擦によって生じる。このトルク外乱が大きくなったときには、モータの制御の結果である制御出力値の変化を大きくすることによって速度変動を抑えることができる。また、感光ドラム901の速度変動は、帯電器や現像器904が動作する際に発生するトルク変動が中間転写ベルト906に伝達された際にも発生する。
【0054】
しかし、
図3下段に示すように潤滑剤が不足で摩擦が大きくなるときには、制御出力値がとり得る範囲を超えることとなり、中間転写ベルト906の速度変動範囲を許容範囲にとどめることができなくなる。
【0055】
また、速度制御を許容範囲内に抑え速度制御が成り立っている場合においても、クリーニングブレード909との摩擦が増大すると、ブレードエッジ部のビビリや摩擦力変動の結果として電流指令値の変動幅が大きくなる。
【0056】
上述のように、トルク外乱の原因であるクリーニングブレード909の摩擦力の増大を検知するには、制御出力値の変動幅P1が大きくなることを検知すれば良いことが分かる。
【0057】
ここで、制御出力値変動幅P1の大きさに対する摩擦力の増大比率は、
図4の下段に示す関係にある。よって、モータの電流指令値の変化幅からクリーニングブレード909の摩擦力の大きさを推定し、摩擦力の大きさに応じて潤滑剤の塗布量を制御することが可能である。
【0058】
そこで、摩擦力の大きさに応じて潤滑剤の塗布量を制御するため、ブラシ回転制御部123では、後述する所定の周期Tsamp中のPID制御部121の出力する制御出力値133の最大値と最小値を算出する。そして
、塗布
量制御手段であるブラシ回転制御部123は、制御出力値133の最大値と最小値との差を算出して制御出力値の変動幅P1を検知する。すなわちブラシ回転制御部123は、一定のサンプル期間中における制御上の変動幅P1を検出する。
【0059】
この制御出力値幅P1が大きい場合に、ベルト駆動制御ユニットでは、潤滑剤の塗布量を増やして摩擦力を軽減し、小さい場合に、過剰な潤滑剤の塗布を防ぐため潤滑剤の塗布量を減らすよう制御する。
【0060】
例えば
図5に示すように
、塗布
量制御手段であるブラシ回転制御部123は、期間Aで求めた制御出力値幅P1から塗布ブラシの回転速度を決定し、期間Bでの塗布ブラシ回転速度に反映する。同様にブラシ回転制御部123は、期間Bで求めた制御出力値幅P1を用いて定められる塗布ブラシ回転速度を、期間Cでのブラシ回転速度に反映させる。
【0061】
上述のようにして潤滑剤の塗布量を決定するため、ブラシ回転制御部123は、
図4上段に示すデータを持ち、検知した制御出力値の変動幅P1に応じた潤滑剤塗布ブラシの回転数を決定する。このデータは、実機を用いた計測から得ることができるが、クリーニングブレード909や中間転写ベルト906の材質や形状、表面性等によって変化するため、設計が同一である機械固有のデータとなる。
【0062】
また、
図4上段に示されているデータでは、電流指令値変動幅P1が0.02以下となった場合に、塗布ブラシ回転数が0rpmとなるようにデータを構成している。
【0063】
このようなデータ構成とした場合には、制御出力値133の変動幅P1が十分に小さく、摩擦力が低く抑えられている状況において、ブラシ回転数を止めて潤滑剤の塗布を停止させることができる。このようにして潤滑剤の過剰な塗布を防止する場合には、固形潤滑剤100の消耗を抑制し、帯電器汚れも防止することができる。
【0064】
次に、本実施の形態のカラープリンタにおけるブラシ回転制御部で実行されるブラシ回転制御処理の動作の手順について
図6のフローチャートを参照して説明する。
【0065】
ベルト制御ユニットには、不図示のエンジンコントローラからプリント動作ON信号130とプロセススピード指令値131の二つが入力されている。
【0066】
プリント動作開始時には、上位のコントローラからプリント動作ON信号130とプロセススピード指令値131がベルト駆動制御ユニットに入力される。このとき二つの信号は同期して入力される。
【0067】
本実施の形態のカラープリンタでは、プリント動作ON信号がONになると、
図6に示すブラシ回転制御処理が開始する。このとき、ベルト駆動制御ユニットでは、プリント動作ON信号がPID制御部にも入力され、ブラシ回転制御部が動作しているときにPID制御部も動作するように構成されている。
【0068】
ブラシ回転制御処理の動作開始後、ブラシ回転制御部は、ブラシ回転ON信号をONにし、塗布ブラシ駆動モータを回転させる(ステップS701)。
【0069】
次に、ブラシ回転制御部は、速度指令電圧を内部で保持する変数であるSPD1に係数0.1を掛けた電圧に設定する(ステップS702)。なお、動作開始直後のSPD1の初期値は、0である。ここで係数0.1を掛けている理由は、塗布ブラシ駆動モータが入力される速度指令電圧×10rpmの速度になるように制御するためである。塗布ブラシ駆動モータの回転速度は、ブラシ回転ON信号がONの時に、この速度指令電圧に応じた速度となる。
【0070】
次に、ブラシ回転制御部は、Tsamp秒の期間[本実施の形態では10秒]の制御出力値をサンプリングし続け、その間の最大値と最小値をそれぞれOutMaxとOutMinに格納する(ステップS703)。ここでTsamp(一定のサンプル期間)は、制御出力変動の幅(制御上の変動幅)を十分に測定可能な時間に設定されている必要がある。なお、機械の特性によって異なるが、Tsamp(一定のサンプル期間)は、概ね中間転写ベルト906が一周する時間に設定する。このようにTsamp (一定のサンプル期間)を設定した場合には、表面上の摩擦状態を反映した制御出力変化幅を得られる。
【0071】
次に、ブラシ回転制御部は、上述のOutMaxからOutMinを減算することで、Tsamp秒間(一定のサンプル期間中)の制御出力値変動幅P1を求める(ステップS704)。次に、ブラシ回転制御部は、このP1の値を用いて、テーブルを参照し、SPD1の値を更新する(ステップS705)。例えば、P1の値が0.3であった場合にはSPD1の値は10となる。
【0072】
次に、ブラシ回転制御部は、SPD1を更新した後、プリント動作ON信号の状態によって次の動作を分岐させる(ステップS706)。ブラシ回転制御部は、ONであると判別した場合(ステップS706でNO)には、プリント動作を継続しているので、ステップS703へ戻り、再度OutMaxとOutMinを求める動作に移行する。また、ブラシ回転制御部は、OFFであると判別した場合(ステップS706でYES)には、塗布ブラシ回転ON信号をOFFにし、塗布ブラシ駆動モータを停止させ(ステップS707)、ブラシ回転制御部の動作を停止して、本ブラシ回転制御処理を終了する。
【0073】
なお、本実施の形態で説明した潤滑剤塗布量の制御は、像担持体としての中間転写ベルト906に対して適用したものである。しかし、本実施の形態に係る潤滑剤塗布量の制御は、像担持体としての感光ドラム901や感光体ベルトに潤滑剤を供給する場合にも適用できることは勿論である。
【0074】
なお、本発明は、実施の形態に限定されるものでは無く、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、その他種々の構成を採り得ることは、勿論である。
【0075】
(第2実施の形態)
以下、本発明の第2実施の形態について、
図1及び
図7を参照して説明する。なお、本第2実施の形態の説明では、前述した第1実施の形態と同様の部分についての詳細な説明を省略する。
【0076】
本第2実施の形態では、前述した第1実施の形態で説明した制御出力値変動幅P1によって塗布ブラシ101の回転速度を決定していた部分の構成を変更する。すなわち、本第2の実施の形態では、エンコーダ122で検知される像担持体の回転速度変動幅P2を、制御出力値変動幅P1の代わりに用いるように構成する。例えば、PID制御部121とブラシ回転制御部123を個別のICとして実装する場合には、制御出力値133よりもベルト表面速度値132を観測する構成のほうが配置又はコスト面で有利となる場合がある。
【0077】
また、回転速度変動幅P2の算出は、前述した第1実施の形態で説明した方法と同様であるため説明を省略するが、ブラシ回転制御部123への入力が制御出力値133からベルト表面速度値132に変更されている所で異なる。
【0078】
前述した第1実施の形態で説明した制御出力値変動幅P1は、エンコーダで検知された回転速度変動P2が大きいほど大きくなることが知られている。これは、
図1に示すように回転速度制御をフィードバックによって行っていることから理解される。このフィードバック制御では、観測値の微小な変化を元に制御出力を変化させた結果、観測値が所定のふれ幅に収まるように制御する。このようなフィードバック制御では、制御が成り立っている状況においても観測値の微小な変化は存在している。さらに、制御出力値変動幅P1が大きくなる場合には、前述の微小な回転速度変動幅P2も同様に大きくなる性質がある。
【0079】
このように、第1実施の形態で説明した制御出力値変動と同様の挙動は、回転速度の計測結果にも現れる。そこで、回転速度変動の計測結果から所定時間Tsamp期間中にエンコーダ122で検知された像担持体の回転速度における最大値[OutMax]から最小値[OutMin]を引いて算出した回転速度変動幅P2を求める。そして、この求めた回転速度変動幅P2を用いて、予め実験等で求めた
図4に例示するような回転速度変動幅P2に関するグラフを利用し、前述した第1実施の形態と同様のブラシ回転制御処理を行うものである。
【0080】
(第3実施の形態)
以下、本発明の第3実施の形態について、
図8を参照して説明する。なお、本第3実施の形態の説明では、前述した第1実施の形態と同様の部分についての詳細な説明を省略する。なお、第1実施の形態で説明した
図5の説明図の内容は、図中の制御出力値をモータ駆動電流に書き換え、P1をP3に書き換えれば、本第3実施の形態に対応した説明図となる。
【0081】
まず、本第3実施の形態のカラープリンタにおける塗布ブラシ回転数を決定する方法について説明する。本第3実施の形態のカラープリンタでは、
図4に示すモータ駆動電流変動幅P3が、前述した第1の実施の形態における制御出力値変動幅P1と相関がある。
【0082】
ここで、前述した
図5を参照して説明した第1実施の形態と同様に、本第3実施の形態のカラープリンタでは、モータ駆動電流変動幅P3が大きくなっているときに、通常時と比較して摩擦力が大きくなる。そこで、モータ駆動電流変動幅P3が大きくなっているときには、塗布ブラシ回転速度を上げて潤滑剤の塗布量を増やし、摩擦力を低減する必要がある。このように、モータ駆動電流変動幅P3は、制御出力値変動幅P1と類似の特性を持つ。よって、これを利用して本第3実施の形態では、モータ駆動電流変動幅P3を用いて塗布ブラシの回転数を決定するよう構成されている。
【0083】
要するに、本第3実施の形態では、前述した第1実施の形態で説明した制御出力値変動幅P1によって塗布ブラシ101の回転速度を決定していた部分の構成を変更する。すなわち、本第3実施の形態では、中間転写ベルト駆動モータ110のモータ電流変動幅P3から回転速度を決定するよう構成する。さらに、本第3実施の形態でのモータ駆動電流変動幅P3を求める過程において、ブラシ回転制御部123への入力が制御出力値133からモータ駆動電流138になっていること以外は、第1実施の形態と同様である。
【0084】
本第3実施の形態でブラシ回転制御部123がモータ駆動電流変動幅P3を求める過程は、前述した第1実施の形態で、
図5を参照して説明したモータ駆動電流変動幅P1を求める過程と同様である。本第3実施の形態では、ブラシ回転制御部123への入力を制御出力値133からモータ駆動電流138にすること以外は第1実施の形態と同様であるので、第1実施の形態と同様にしてモータ駆動電流変動幅P3を求める。すなわち本第3実施の形態では、ブラシ回転制御部123が、モータ駆動電流138の所定時間Tsamp期間中における最大、最小値を算出することで、モータ電流変動幅P3を求める。
【0085】
ここで、
図8に示す本第3実施の形態に係るカラープリンタでは、像担持体用駆動制御手段として機能するPID制御部121が、制御出力値133を出力する。すると、この制御出力値133は、制御出力変換部124で電流指令電圧136に変換されて中間転写ベルト駆動モータ110へ伝達される。これにより駆動制御される中間転写ベルト駆動モータ110は、駆動中のモータ駆動電流138をブラシ回転制御部123へ出力する。
【0086】
よって、このベルト駆動制御ユニット120では、制御出力値133の変動がそのままモータ駆動電流138に反映される。よって、本第3実施の形態では、所定時間Tsamp期間中に検出された、モータ駆動電流138の最大値[OutMax]から最小値[OutMin]を引いて算出したモータ駆動電流変動幅P3を求める。そして本第3実施の形態では、この求めたモータ駆動電流変動幅P3を、制御出力値変動幅P1の代わりに用いるように構成する。
【0087】
そして、ブラシ回転制御部123は、求めたモータ電流変動幅P3を用いて、予め実験等で求めた
図4に例示するようなモータ電流変動幅P3に関するグラフを利用する。そして、ブラシ回転制御部123は、前述した第1実施の形態と同様に潤滑剤塗布用駆動手段である塗布ブラシ駆動モータ111の回転速度を求め制御する。本第3実施の形態でブラシ回転制御処理を行う場合には、前述した第1実施の形態と同様の効果が得られる。
【0088】
なお、上述した実施の形態では、像担持体としての中間転写ベルト906に適用した場合について説明したが、像担持体が感光体ドラム(例えば、感光ドラム901)である場合にも適用できることは勿論である。