(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検出装置と、前記1つ以上の調整板と、前記保持部と、前記駆動部とを格納する筐体を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の放射線撮像装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明に係る放射線撮像装置及び放射線撮像システムの実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態において、光は可視光および赤外線を含み、放射線はX線、α線、β線およびγ線を含む。
【0011】
図1は本発明の1つの実施形態に係る放射線撮像装置10の全体概要図であり、
図2は放射線撮像装置10の領域Aに注目した斜視図である。
図1のうち、
図1(a)は放射線撮像装置10の斜視図であり、
図1(b)は放射線撮像装置10を放射線入射方向からみた図であり、
図1(c)は放射線撮像装置10の側面図である。見易さのために、
図1(a)では一部の構成要素を省略している。
【0012】
放射線撮像装置10は、筐体50と、この筐体50内に格納された調整板20および検出装置30とを備えうる。説明のために、
図1において筐体50の一部を透過的に示し、
図2において筐体50を省略している。調整板20は検出装置30の放射線入射側(
図1において左側)に配置され、検出装置30の検出領域34(後述)へ入射される放射線の量を調整する。調整板20は例えば鉛などの重金属材料からなる放射線吸収部材で形成されてもよい。調整板20にはアレイ状に配置された複数の開口21が配されており、この開口21を通過した放射線が検出装置30へ入射しうる。一方で、調整板20に遮られた放射線は検出装置30へ入射しない。
【0013】
検出装置30は筐体50に固定されており、放射線入射側に検出面38を有する。検出装置30は検出面38に配置された複数の検出領域34に入射した放射線の量に応じた信号を生成しうる。検出装置30は入射した放射線の量に応じて信号を検出できれば如何なる構成であってもよく、既存の技術を用いて構成してもよい。以下に検出装置30の構成の一例を簡単に説明する。検出装置30はシンチレータ31と検出基板32とを備えうる。シンチレータ31は、CsI:Tlなどの柱状結晶やGOSなどの粒子状結晶の材料で形成されてもよく、検出装置30内の放射線入射側に配置され、検出装置30へ入射した放射線を可視光に変換する。検出基板32はアレイ状に配置された複数の撮像素子33を有しうる。撮像素子33は、結晶シリコンを用いたCMOSセンサ、非晶質シリコンを用いたPIN型センサやMIS型センサなどであってもよい。シンチレータ31は検出基板32の上に直接形成されてもよいし、粘着材または接着剤などの接続部材を介して検出基板32に貼り合わせて構成されてもよい。放射線撮像装置10の例では検出装置30はシンチレータ31を備えるが、シンチレータを用いずに放射線を電荷に変換する直接方式の検出装置を用いてもよい。
【0014】
放射線源(不図示)と放射線撮像装置10との間に位置する被検体(不図示)に向けて放射線源から曝射された放射線は、被検体による減衰を受けつつ被検体を透過し、調整板20に入射する。調整板20を通過して検出面38へ到達した放射線は、シンチレータ31により可視光に変換され、この可視光が検出基板32に入射し、電荷に変換される。この電荷は、図示しない周辺回路ユニットにより信号として外部に読み出され、画像データを構成する。動画像を撮像する場合にはこの動作が繰り返される。
【0015】
放射線撮像装置10は、レール45と支持部46とをさらに備えうる。レール45は筐体50に固定されており、支持部46は調整板20に固定されている。支持部46の端部はレール45にスライド可能なように嵌めあわされており、これによって、検出装置30の検出面38を覆う位置を検出装置30に対して矢印11の方向およびその逆方向に調整板20が移動可能となる。すなわち、レール45と支持部46とは調整板20が検出装置30の検出面38を覆う位置を検出面38に沿って移動可能なように保持する保持部として機能しうる。後で詳細に説明するように、調整板20が移動可能な位置は、検出装置30に対する高感度位置と低感度位置とを含みうる。調整板20が高感度位置にある場合には、調整板20が低感度位置にある場合よりも検出装置30の感度が高くなる。
【0016】
放射線撮像装置10は、モータ41、ねじ受け部42、精密ボールねじ43およびナット44を含む駆動部をさらに備えうる。モータ41は精密ボールねじ43を右回転および左回転させる。ねじ受け部42は精密ボールねじ43のモータ41とは反対側の端部を回転自在に保持する。ナット44は精密ボールねじ43に取り付けられているとともに、調整板20に固定されている。この駆動部により調整板20を検出装置30に対して移動させることが可能になる。例えば、モータ41が精密ボールねじ43を左回転させた場合に、ナット44はモータ41に近づく方向に移動し、これとともに調整板20は矢印11で示した方向に移動する。他方で、モータ41が精密ボールねじ43を右回転させた場合に、ナット44はモータ41から遠ざかる方向に移動し、これとともに調整板20は矢印11で示した方向の逆方向に移動する。
【0017】
放射線撮像装置10は駆動部の動作を制御する制御部(不図示)をさらに含んでもよい。制御部には調整板20を高感度位置から低感度位置まで移動させるために必要となるモータ41の回転数が設定されていてもよい。調整板20を高感度位置から低感度位置まで移動させることの指示をユーザから受けた場合に、制御部はモータ41を設定された回転数だけ回転させて調整板20を低感度位置へ移動させる。その後、モータ41の回転を停止することによって、調整板20を低感度位置に固定する。他方で、調整板20を低感度位置から高感度位置まで移動させることの指示をユーザから受けた場合に、制御部はモータ41を逆方向に設定された回転数だけ回転させて調整板20を高感度位置へ移動させ、そこで固定する。このように、駆動部は調整板20を高感度位置と低感度位置とに固定可能である。
【0018】
図3および
図4を用いて調整板20の高感度位置と低感度位置とについて詳細に説明する。
図3は
図1の領域Aを放射線入射方向から見た平面図であり、
図4は
図3におけるB−B’線断面図である。説明のために
図3では筐体50を省略し、調整板20を透過的に示している。
図3(a)および
図4(a)は調整板20が高感度位置にある状態を示し、
図3(b)および
図4(b)は調整板20が低感度位置にある状態を示す。検出装置30の検出面38はアレイ状に配置された複数の検出領域34を有する。この検出領域34に入射した放射線がシンチレータ31で可視光に変換され、撮像素子33に到達する。これらの図では、調整板20の開口21と検出領域34とが1対1に対応しているが、1つの検出領域34に複数の開口21が対応してもよい。また、これらの図では、開口21の面積が検出領域34の面積よりも大きいが、開口21の面積は検出領域34の面積と等しくてもよいし、検出領域34の面積よりも小さくてもよい。複数の検出領域34が等間隔に配置されている場合に、複数の開口21も等間隔に配置されてもよい。また、これらの図では開口21の形状は正方形であるが、開口21の形状は、長方形、台形、円形などのような任意の形状でもよい。
【0019】
図3(a)および
図4(a)に示されるように、調整板20が高感度位置にある場合に、開口21は検出領域34全体と重なる。すなわち、検出領域34全面が放射線撮像装置10へ入射した放射線を検出可能である。他方で、
図3(b)および
図4(b)に示されるように、高感度位置から調整板20が矢印11の方向に移動して低感度位置になった場合に、開口21は検出領域34の一部分である領域35のみと重なる。すなわち、放射線撮像装置10へ入射した放射線は、領域35のみに入射し、調整板20と重なる検出領域34の部分(領域35以外の部分)には入射しない。
【0020】
上述のように、調整板20が高感度位置にある場合の実質的な検出領域となる検出領域34の面積は、調整板20が低感度位置にある場合の実質的な検出領域となる領域35の面積よりも大きい。そのため、放射線源が同量の放射線を曝射した場合であっても、調整板20が低感度位置にある場合に検出領域35へ入射する放射線の量は調整板20が低感度位置にある場合に検出領域35へ入射する放射線の量よりも多くなる。このように、調整板20の位置を高感度位置と低感度位置とで切り替えることによって、放射線撮像装置10の感度を容易に切り替えることができる。さらに、高感度位置から低感度位置へ切り替えるために調整板20を移動させる距離は高々撮像素子33の1配列ピッチ分でよい。そのため、調整板20は検出面38を覆う範囲で移動可能であればよく、特許文献2のようにグリッド全体を検出装置の外側に移動させる構成と比較して、放射線撮像装置10を小型化できる。
【0021】
図5は放射線量に対する放射線撮像装置の出力特性を説明するグラフ60である。このグラフの横軸は放射線撮像装置10へ入射した放射線の量を表し、縦軸は放射線撮像装置10の出力値を表す。放射線撮像装置10の出力値は飽和レベルに到達するまでは検出装置30へ入射した放射線の量に比例しうる。グラフ60の実線61は調整板20が低感度位置にある場合の特性を示し、グラフ60の破線62は調整板20が高感度位置にある場合の特性を示す。グラフ60から見て取れるように、曝射放射線量が同じであっても、高感度位置にある場合の出力値は低感度位置にある場合の出力値よりも高い。一般に、静止画撮影に使用される曝射放射線量は動画撮像に使用される曝射放射線量よりも多い。そのため、動画撮影に適した感度で静止画撮影を行う場合には破線62に示すように放射線撮像装置の出力値が飽和レベルに到達して静止画の撮像ができない場合がある。本実施形態に係る放射線撮像装置では調整板20の位置を切り替えるだけで容易に放射線撮像装置10の感度を切り替えることができる。そのため、例えば静止画撮影では調整板20を低感度位置に設定し、動画撮像では調整板20を高感度位置に設定すればよい。また、動画撮像だけを行う場合であっても、単位時間当たりの撮影枚数に合わせて放射線撮像装置10の感度を切り替えてもよい。例えば、7FPSと30FPSとで動画撮像を行う場合に、後者の場合に感度が大きくなるように調整板20の位置を切り替えてもよい。このように、動画撮影と静止画撮影の組合せや、動画撮影での単位当たりの複数の撮影数の組合せなどを含む様々な撮影モードに合わせて放射線撮像装置10の感度を切り替えればよい。
【0022】
以上のように、放射線撮像装置10によれば、調整板20の位置を切り替えるだけで、シンチレータ31や検出基板32の特性やパターンを変更することなく容易に感度調整が可能となる。その結果、放射線撮像装置10は撮影モードに応じて良好な画像を撮影可能となる。
【0023】
上述の実施形態において、調整板20は高感度位置と低感度位置との2箇所に固定可能であったが、モータ41の回転数を設定して、3箇所以上に調整板20が固定可能なように放射線撮像装置10が構成されてもよい。例えば、調整板20を高感度位置と低感度位置との間の位置に段階的に固定可能なように駆動部を構成することによって、放射線撮像装置10の感度を段階的に調整することが可能となる。例えば、調整板20が第3撮影位置にある場合の実質的な検出領域の面積は、高感度位置にある場合の実質的に検出領域の面積よりも小さく、低感度位置にある場合の実質的に検出領域の面積よりも大きくなりうる。
【0024】
続いて、
図6および
図7を用いて本発明の別の実施形態に係る放射線撮像装置70を説明する。
図6は放射線撮像装置70の全体概要図であり、
図7は放射線撮像装置70の領域Cに注目した斜視図である。
図6のうち、
図6(a)は放射線撮像装置70の斜視図であり、
図6(b)は放射線撮像装置70を放射線入射方向からみた図であり、
図6(c)は放射線撮像装置70の側面図である。見易さのために、
図1(a)では一部の構成要素を省略している。放射線撮像装置70は、調整板20の代わりに2枚の調整板22、23を備える点で
図1の放射線撮像装置10と異なり、他の点では同様である。そのため、
図6において
図1と同様の構成要素は同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0025】
調整板22(第1調整板)と調整板23(第2調整板)とはどちらも調整板20と同じ構成であってもよい。すなわち、調整板22、23はそれぞれアレイ状に配置された複数の開口24、25が配されており、鉛などの重金属材料からなる放射線吸収部材で形成されうる。放射線撮像装置70では、2枚の調整板22、23は互いに重なり合って、検出装置30の放射線入射側(
図6において左側)に配置され、検出装置30の検出領域34へ入射される放射線の量を調整する。2枚の調整板22、23の両方の開口24、25を通過した放射線が検出装置30へ入射しうる。一方で、2枚の調整板22、23の一方に遮られた放射線は検出装置30へ入射しない。
【0026】
放射線撮像装置70は、レール45a、45bと支持部46a、46bとをさらに備えうる。レール45a、45bは筐体50に固定されており、支持部46aは調整板22に固定されており、支持部46bは調整板23に固定されている。支持部46aの端部はレール45aにスライド可能なように嵌めあわされており、これによって、検出面38を覆う位置を検出装置30に対して矢印72の方向およびその逆方向に調整板22が移動可能となる。また、支持部46bの端部はレール45bにスライド可能なように嵌めあわされており、これによって、検出面38を覆う位置を検出装置30に対して矢印71の方向およびその逆方向に調整板23が移動可能となる。すなわち、レール45a、45bと支持部46a、46bとは調整板22、23がそれぞれ検出装置30の検出面38を覆う位置を検出面38に沿って移動可能なように保持する保持部として機能しうる。後で詳細に説明するように、調整板22、23が移動可能な位置は、検出装置30に対する高感度位置と低感度位置とを含みうる。調整板22、23が高感度位置にある場合には、調整板22、23が低感度位置にある場合よりも検出装置30の感度が高くなる。
【0027】
放射線撮像装置70は、モータ41、ねじ受け部42a、42b、精密ボールねじ43a、43bおよびナット44a、44bを含む駆動部をさらに備えうる。モータ41は精密ボールねじ43aを右回転および左回転させる。ねじ受け部42aは精密ボールねじ43aのモータ41とは反対側の端部を回転自在に保持するとともに、精密ボールねじ43bの一端を回転自在に保持する。ねじ受け部42aは精密ボールねじ43aと精密ボールねじ43bとを連動させる歯車(不図示)を含んでおり、精密ボールねじ43aと精密ボールねじ43bとを互いに逆方向に回転させる。例えば、精密ボールねじ43aがねじ受け部42aからみて右回転する場合に、精密ボールねじ43bはねじ受け部42aからみて左回転する。ねじ受け部42bは精密ボールねじ43bの端部を回転自在に保持する。ナット44aは精密ボールねじ43aに取り付けられているとともに、調整板22に固定されている。ナット44bは精密ボールねじ43bに取り付けられているとともに、調整板23に固定されている。
【0028】
この駆動部により調整板22、23を検出装置30に対して移動させることが可能になる。例えば、モータ41が精密ボールねじ43aを左回転させた場合に、ナット44aはモータ41に近づく方向に移動し、これとともに調整板22は矢印72で示した方向に移動する。これと同時に、ナット44bはねじ受け部42bから遠ざかる方向に移動し、これとともに調整板23は矢印71で示した方向に移動する。他方で、モータ41が精密ボールねじ43aを右回転させた場合に、調整板22、23は逆方向に移動する。
【0029】
放射線撮像装置70は放射線撮像装置10と同様に駆動部の動作を制御する制御部(不図示)をさらに含んでもよい。制御装置の動作は前述と同様のため、重複する説明は繰り返さない。放射線撮像装置70においても、駆動部は調整板22、23を高感度位置と低感度位置とに固定可能である。
【0030】
図8および
図9を用いて2枚の調整板22、23の高感度位置と低感度位置とについて詳細に説明する。
図8は
図6の領域Cを放射線入射方向から見た平面図であり、
図9は
図8におけるD−D’線断面図である。説明のために
図8では筐体50を省略し、調整板22、23を透過的に示している。
図8(a)および
図9(a)は調整板22、23が高感度位置にある状態を示し、
図8(b)および
図9(b)は調整板22、23が低感度位置にある状態を示す。上述の調整板20に対して行った説明は、調整板22、23に対しても同様に当てはまる。
【0031】
図8(a)および
図9(a)に示されるように、調整板22、23が高感度位置にある場合に、開口24、25はどちらも検出領域34全体と重なる。すなわち、検出領域34全体が放射線撮像装置70へ入射した放射線を検出可能である。他方で、
図8(b)および
図9(b)に示されるように、調整板22、23が低感度位置にある場合に、開口24、25はそれぞれ、検出領域34の一部分のみと重なる。その結果、検出領域34の一部である領域36が開口24、25の両方と重なる。放射線撮像装置70へ入射した放射線は、領域36のみに入射し、調整板22、23と重なる検出領域34の部分(領域36以外の部分)には入射しない。
【0032】
上述のように、調整板22、23が高感度位置にある場合の実質的な検出領域となる検出領域34の面積は、調整板22、23が低感度位置にある場合の実質的な検出領域となる領域36の面積よりも大きい。このように、放射線撮像装置70においても、調整板22、23の位置を高感度位置と低感度位置とで切り替えることによって、放射線撮像装置70の感度を容易に切り替えることができる。また、高感度位置から低感度位置へ切り替えるために調整板22、23を移動させる距離は高々撮像素子33の1配列ピッチ分でよいため、放射線撮像装置70を小型化できる。
【0033】
放射線撮像装置70では、高感度位置から低感度位置へ切り替えるために、調整板23を矢印71の方向(第1方向)に移動し、調整板22を矢印72の方向(第2方向)に移動する。このように、2枚の調整板22、23を反対方向に移動することによって、検出領域34の重心と領域36の重心とのずれを低減できる。ここで、反対方向とは、それぞれの移動方向の成す角が90度よりも大きいことを意味する。特に、2枚の調整板22、23を逆方向、すなわち移動方向の成す角が180度となるように移動することによって、検出領域34の重心と領域36の重心とを一致させることができる。また、検出領域34の形状と領域36の形状とが同一、すなわち検出領域34と領域36とが相似となるように、開口24、25の形状と調整板22、23の移動方向とを設計してもよい。放射線撮像装置70では調整板を2枚有する場合を説明したが、放射線撮像装置70が2枚以上の任意の枚数の調整板を有する場合であっても同様にこれらの調整板の位置を変更することによって放射線撮像装置の感度を調整できる。また、放射線撮像装置10と同様に、放射線撮像装置70においても調整板22、23を高感度位置と低感度位置との間の位置に段階的に固定可能なように駆動部を構成することによって、放射線撮像装置70の感度を段階的に調整することが可能となる。
【0034】
続いて、
図10を用いて本発明の別の実施形態に係る放射線撮像装置80を説明する。放射線撮像装置80は、調整板20の代わりに着脱可能な調整板26を備える点で、
図1の放射線撮像装置10と異なり、他の点では同様である。そのため、
図10において
図1と同様の構成要素は同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0035】
調整板26は調整板20と同じ構造であってもよいが、筐体50に設けられたスリット81を介して放射線撮像装置80に機械的に着脱可能である。調整板26が放射線撮像装置80に装着された場合に、調整板26は検出装置30の放射線入射側(
図9において左側)に配置され、検出装置30の検出領域34へ入射される放射線の量を調整する。調整板26の開口を通過した放射線が検出装置30へ入射しうる。一方で、調整板26に遮られた放射線は検出装置30へ入射しない。
【0036】
放射線撮像装置80の筐体50はスリット81の内側にレール82を有するとともに、調整板26の側面にはレール82に嵌めあわさる溝が形成されている。これにより、放射線撮像装置80のユーザは調整板26を放射線撮像装置80に装着できる。放射線撮像装置80はストッパ83をさらに備えてもよく、スリット81から挿入された調整板26はストッパ83により停止する。ストッパ83により停止した調整板26の位置が後述の撮影位置となる。すなわち、レール82およびストッパ83は、調整板26を取り外し可能に保持するとともに、撮影位置に調整板26を案内するための保持部として機能しうる。また、ストッパ83は調整板26を撮影位置に固定するためのロック機構を有してもよい。ロック機構を有することによって、撮影中の調整板26の位置ずれを防止できる。また、放射線撮像装置80を用いて撮影を行っている間のスリット81の向きによっては、ロック機構を用いずに調整板26を固定できる。例えば、スリット81が放射線撮像装置80の上側や横側を向く場合に、レール82およびストッパ83との摩擦力および垂直抗力によって調整板26が撮影位置に固定されうる。この場合には、レール82およびストッパ83が固定部として機能しうる。
【0037】
図11を用いて調整板26を装着した場合と取り外した場合とについて詳細に説明する。
図11は
図10の領域Gを放射線入射方向から見た平面図である。説明のために
図11では筐体50を省略している。
図11(a)は調整板26を取り外した状態を示し、
図11(b)は調整板26を装着して固定した状態を示す。上述の調整板20に対して行った説明は、調整板26に対しても同様に当てはまる。
【0038】
図11(a)に示されるように、調整板26が取り外された場合に、検出領域34全体が放射線撮像装置10へ入射した放射線を検出可能である。他方で、
図11(b)に示されるように、調整板26が装着された場合に、開口27は検出領域34の一部分である領域37(点線で囲まれた9つの領域の集合)のみと重なる。すなわち、放射線撮像装置80へ入射した放射線は、領域37のみに入射し、調整板26と重なる検出領域34の部分(領域37以外の部分)には入射しない。
【0039】
上述のように、調整板26が取り外された状態にある場合の実質的な検出領域となる検出領域34の面積は、調整板26が装着された状態にある場合の実質的な検出領域となる領域37の面積よりも大きい。すなわち、調整板26を取り外した状態の方が、調整板26を装着した状態よりも高感度になる。このように、放射線撮像装置80においても、調整板26の着脱を行うことによって、放射線撮像装置80の感度を容易に切り替えることができる。放射線撮像装置80の構成では調整板26を移動させる駆動部を設ける必要がないため、上述の放射線撮像装置10、70よりもさらに小型化が可能となる。
【0040】
放射線撮像装置80に調整板26が装着された場合に、1つの検出領域34に対していくつの開口27が重なってもよい。
図11の例では1つの検出領域34に対して等間隔に配置された複数の開口27が重なっている。そして、検出領域34の配列ピッチは開口27の配列ピッチの4倍となっている。このように構成することで、
図12のように調整板26が検出装置30に対して矢印84の方向にずれて固定された場合であっても、実質的な検出領域となる領域37の面積を維持できる。これにより、調整板26と検出装置30との間のアライメントが不要になり、許容される配置誤差の大きな機械的着脱が可能となる。一般に、検出領域34の配列ピッチは開口27の配列ピッチのn倍(nは2以上の整数)であれば、調整板26がずれて固定されたとしても、領域37の面積を維持できる。
【0041】
上述の実施形態を組み合わせた構成も可能である。例えば、放射線撮像装置が複数の調整板を有する場合に、一部の調整板が着脱可能であり、別の一部の調整板が放射線撮像装置内で2つの位置を取りうるように構成されてもよい。また、放射線遮蔽部材は開口の代わりに周囲の領域よりも放射線透過率の高い透過領域を有してもよい。すなわち、調整板は、アレイ状に配置された透過領域と、透過領域よりも放射線透過率の低い領域である遮蔽領域(透過領域以外の領域)とを有してもよい。調整板が高感度位置にある場合に検出領域34が透過領域と重なる部分の面積が、調整板が低感度位置にある場合に検出領域34が透過領域と重なる部分の面積よりも大きくなるように調整板が固定される。これにより、調整板が高感度位置にある場合に検出領域34へ入射される放射線の量は、調整板が低感度位置にある場合に検出領域34へ入射される放射線の量よりも多くなり、放射線撮像装置の感度を調整できる。上述の実施形態では遮蔽領域が調整板に対応し、透過領域が開口に対応する。また、透過領域を遮蔽領域よりも放射線透過率が高い物質で形成してもよいし、透過領域の厚さを遮蔽領域よりも薄くなるように調整板を形成してもよい。さらに、透過領域内で放射線透過率の分布が一様でなくてもよい。例えば、透過領域の中央付近の放射線透過率が最も高く、遮蔽領域へ近づくにつれて放射線透過率が低くなるように放射線透過率が分布してもよい。また、調整板の位置によって実質的な検出領域の面積が異なるようになる検出領域は複数の検出領域うちの一部であってもよい。例えば、検出装置30の内側に位置する検出領域について感度を切り替え、検出装置30の外周に位置する検出領域は常に高感度となるように調整板の開口の大きさを設定してもよい。
【0042】
図13は上述の各種実施形態の放射線撮像装置のX線診断システム(放射線撮像システム)への応用例を示した図である。X線チューブ6050(放射線源)で発生した放射線としてのX線6060は、被験者又は患者6061の胸部6062を透過し、上述の各種実施形態のいずれの放射線撮像装置であってもよい放射線撮像装置6040に入射する。この入射したX線には患者6061の体内部の情報が含まれている。X線の入射に対応してシンチレータ31は発光し、これを光電変換して、電気的情報を得る。この情報はデジタル信号に変換され信号処理部となるイメージプロセッサ6070により画像処理され制御室の表示部となるディスプレイ6080で観察できる。なお、放射線撮像システムは、放射線撮像装置と、この装置からの信号を処理する信号処理部とを少なくとも有する。
【0043】
また、この情報は電話回線6090等の伝送処理部により遠隔地へ転送でき、別の場所のドクタールームなどディスプレイ6081に表示もしくは光ディスク等の記録媒体に保存することができ、遠隔地の医師が診断することも可能である。また記録部となるフィルムプロセッサ6100により記録媒体となるフィルム6110に記録することもできる。